1988年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性
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(2) 北海道大学地球物理学研究報告 Geophysical Bulletin of Hokkaido University, Sapporo, Japan. No.72, March 2009, pp.331-352. 331. 1988 年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性 高木. 朗充. 気象庁気象研究所. (2009 年 1 月 13 日受理). . .
(3). . . . . Akimichi TAKAGI Meteorological Research Institute, Japan Meteorological Agency (Received January 13, 2009). Meakandake volcano is located southwest on the Akan caldera rim, the eastern part of Hokkaido. Four small eruptions occurred at Meakandake from January to February, 1988. Seismic activity was higher for one year including this eruption stage. Research Center for Earthquake Prediction of Hokkaido University (RCEP) installed temporal seismic array on the northwest flank of the volcanic edifice twenty days before the first eruption in order to clarify characteristics of seismicity associated with volcanic activity. Daily number of earthquakes became suddenly decreased, three days before the first eruption. And hypocenters were estimated to be very shallow by seismic amplitude ratios. After March 1988, deep low frequency events occurred frequently. During the observation, so various types of waveforms were recorded that we classified seismograms broadly in two groups. One is“simple event”and the other is“complex event”. Mechanism of“complex event”is not so simpler than that of“simple event”.“Simple event”is subclassified into three; HF, LF and PT.“Complex event”is subclassified into four; TD, TS, LD, and T. Dominant frequency of waveforms of“simple event”splits to 6 − 8 Hz and 10 − 13Hz, which correspond to LF and HF, respectively. There were four seismic swarms after eruptions. Waveforms in every swarm were so similar one another. Although they were, namely, earthquake family, they were able to be classified to LF and HF. And their first motions of.
(4) 332. 高木. 朗充. seismograms were the same direction. In order to explain these characteristics, we proposed the tensile crack model with Doppler effect. Ⅰ. はじめに 雌阿寒岳は北海道東部 (Fig. 1) の阿寒カルデラの西南壁上に噴出した安山岩質の火山で, 阿 寒富士を含めた 10 の噴出中心からなる複式火山の総称である. このうちポンマチネシリ火口及 びナカマチネシリ火口では活発な噴気活動が継続している. 雌阿寒岳の有史以降の明らかな火山活動は過去 100 年程度しか記録されていない. 記録に残 る活動は 1927 年の鳴動が最初である (横山・他, 1976). また地質学的研究から, 1955 年の 噴火活動までの約 100 年間に, 両火口から小規模な水蒸気爆発が少なくとも 10 回発生してい る (和田・他, 1997). 1954∼1964 年には小噴火が断続的に発生し, 1956 年の噴火では南東 90km の浜中村茶内まで降灰が観測された (気象庁, 2005). しかし, その後しばらく火山活動 は静穏な時期が続いた.. 43.5. km 5. 0. 10. Oakandake L.Akan Fuppushidake Furebetsudake 43.4. Meakandake. Nonaka spa a L.Onneto m 00 10. 45. 50. 0m. 75. Akanfuji Akanfu A Ak Akanf fu f. 0m 44. KNP SAPPORO. TSK. Meakandake. 43. URH. 42. 140. 43.3 143.9. 144.0. 144.1. 141. 142. 143. 144. 145. 144.2. Topographic map around Meakandake volcano. Insert map shows locations of active volcanoes in Hokkaido, including Meakandake. A square box over Meakandake indicates the area of seismic observation in Fig. 3..
(5) 1988 年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性. 1987 年 8 月以降, 札幌管区気象台がポンマチ ネシリ第 1 火口の噴気温度を測定したところ上. m 1500. 333. Plume and Fumarole (Pon-machineshiri) Max height Average height Temp. of fumarole Eruption. 1000. 600 400 200. 500. 昇を確認し, 10 月には 510℃に達していた. ま た噴気活動も活発化していた. この雌阿寒岳では. 0. 0. 1975. 1980. 1985. 1990. 1995. 2000. 2005. Earthquake (All). N / Month 1000. 気象庁により 1972 年以降, 地震計による連続観. 800. 800 600. 測が行われているが, 1987 年 12 月 9 日から始 まった地震活動は, 観測開始以来最大の群発地震 活動となった (Fig. 2). 翌 1988 年 1∼2 月には 24 年ぶりにポンマチネシリ第 1 火口からの噴火. 400 200 0. 1975 N / Month 300. 1980. 1985. 1990. 1995. 2000. 2005. Deep Low Frequency Earthq. (TD,TS). 200. 100. 活動が再開した. 噴火はいずれも小規模な水蒸気. 0. 1975. 爆発で, 周辺に弱い降灰があった. 雌阿寒岳の噴火は, その後 1996 年, 1998 年, 2006 年, 2008 年と, 2∼8 年の間隔で発生し, 長期的にはやや活発なステージに入った. 1988 年の噴火はこのステージの最初の活動である.. 1980. 1985. 1990. 1995. 2000. 2005 after SMO,JMA. Temporal variations of monthly plume height (top), number of volcanic earthquakes (middle) and number of deep low-frequency earthquakes (bottom) since 1973, after Sapporo District Meteorological Observatory.. 1988 年の噴火前後の雌阿寒岳火山の地震活動 を明らかにするため, 北海道大学地震予知観測地域センター (以下, RCEP), 北海道大学有珠 火山観測所, 北海道大学地球物理学教室は 1987 年 12 月 16 日から現地に地震観測網を展開し た. この小論では, 雌阿寒岳の 1988 年噴火前後の地震活動を報告し, その活動の特徴を考察す る.. Ⅱ. 観測データ 1987 年 12 月 16 日夕方からカセット磁気テープによるアナログ連続記録で臨時地震観測を 開始した. Fig. 3 に地震観測点の配置図を示す. 観測点は当初 5 点を約 300m 間隔で配置し, 12 月 19 日からはトリガー方式に変更した. 12 月 26 日 14 時 57 分からは観測点を再配置し, NTT 回線で札幌の北海道大学 RCEP への伝送を開始した. P1, P2, P3 の 3 点は, トリパタイトアレイとしてポンマチネシリ火口の北西約 2km に 910 m, 505m, 610m の間隔で配置した. この 3 点は上下動 1 成分である. P1, P3 はそれぞれ登 山道の 4 合目と 2 合目にあたる. このアレイの北西には気象庁の地震計小屋があり, ここに 3 成分の地震計を設置し, P4 とした. さらに 1988 年 1 月 18 日 17 時 50 分からは噴気活動の モニタリングのため, ポンマチネシリ火口のすぐ南側に上下動 1 成分の地震計を設置し P0 と した. なお地震計は, P4 が勝島製作所製 PMK-110, P4 以外はマークプロダクツ社製 L4-C で, いずれも 1 秒速度計である. Table 1 に観測点座標を示す. 5 観測点 7 チャンネルの波形データを雌阿寒岳山麓の野中温泉に集め 60dB の利得で増幅す る (P0 のみ 54dB). ここで P1 の信号をアナログ出力し, 毎秒 1mm の紙送りでドラムに書か.
(6) 334. 高木. 朗充. .
(7) The list of seismic stations.. km 0. 1. 0.5. Latitude. Longitude. Height. [Deg.]. [Deg.]. [m]. P0. 144.00838E. 43.38161N. 1340. UD. 42. Mark Products L4C. P1. 143.99792E. 43.39195N. 980. UD. 60. Mark Products L4C. P2. 143.98704E. 43.39003N. 799. UD. 60. Mark Products L4C. P3. 143.99077E. 43.39363N. 859. UD. 60. Mark Products L4C. P4. 143 98649E 143.98649E. 43 39523N 43.39523N. 731. Code. 43.40. P4 Nonaka spa. P3. P1. Naka -machinehsiri. Note. [dB]. UD NS EW UD,NS,EW. NONAKA TESHIKAGA SPA. VOLCANO. Katsushima PK-110. 60. JMA Sismic Station. 12 50 m. P0 UD P2 UD. UD P4 NS 144.000. 144.025. Distribution of seismic stations. Seismometers on the north-west flank of Meakandake are arranged as a tripartite array. A station near the summit crater was installed in order to monitor volcanic tremor activity.. NTT AMP /PCM MODEM. 500m. P3 UD. 800m. P1 UD. Mt.Akanfuji. REAL TIME TREMOR MONITOR. all. 1000m. 1000m. 750m. P0. SAPPORO all. 4000m. 1st crater. 143.975. Gain. Pon -machinehsiri. P2. 43.75. Component. 300m. EW Pickup 1Hz. DRUM. HDDR. Reprod.. NTT RELAY. MT OPD. DIGITAL DATA. PCM. TELE. SYS.. ANALOG DATA 18CH all PEN RECORDER. 1mm/min. 1mm/sec. P1. LONG TERM RECORDER 4mm/sec. Block diagram showing the transmission of seismic data from Meakandake to Research Center for Earthquake Prediction, Hokkaido University.. せた. 野中温泉からは臨時 NTT 回線で弟子屈局を経て, 通常回線により札幌の北海道大学 RCEP 伝送される. ここではサンプリング周波数 92.3Hz の信号で処理され, リアルタイムで P0 の微動レベルをモニターした. また, 伝送されたデータは北海道内の他の地震観測点のデー タとともに高密度ディジタル記録テープに収録されるので, ここから雌阿寒岳のチャンネルを選 択して磁気テープに保管する. また群発活動期や継続時間の長い地震記録は, この他に光ディス クにバックアップした. A/D 変換はフルスケール 10 ビットであり, 振幅値で±2.785mkine と なる. アナログデータとして, 遠地地震との識別を行うため北海道内の他の観測点も含めた 18 チャ ンネルの波形データを, 毎分 15mm の紙送りで常時ペンレコーダーに記録させた. また, 活動 を概観するために P1 記録を毎分 240mm の紙送りで常時ペンレコーダー記録紙に書かせた. Fig. 4 にデータ伝送のブロックダイアグラムを示す. 小論で解析の対象にした期間は, テレメータ化後の 1987 年 12 月 26 日から 1988 年 12 月 2 日までである. 解析処理の手順は以下の通りである. まず 18 チャンネルのペンレコーダー記録 紙を用いて, 雌阿寒岳の地震であるか遠地地震であるかを大別した. 雌阿寒岳の地震とする条件 を, 1) 雌阿寒岳観測網 7 チャンネルだけで確認できる地震動であり, 2) このうち 2 観測点以 上で確認でき, 3) P1 の波形が 18 チャンネル記録紙上で peak to peak の最大振幅 2mm 以上の ものとした. P1 の平均的なノイズレベルは記録紙上で 1mm 以下である. この記録紙上 2mm の地震記録を換算すると, peak to peak の最大振幅/2 (以下, 単に最大振幅とする) は 43kine となる..
(8) 1988 年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性. 335. 解析対象期間の地震総数は 9464 個であった. この中から解析の対象とする地震を, P1 の最 大振幅の下限値により以下のとおりとした. これを満たす地震 2959 個であった.. 期間. P1 最大振幅の下限値. 1987/12/26∼1988/1/6. 40kine. 1988/1/7∼1988/10/17. 100kine. 1988/10/18∼1988/12/2. 200kine. この基準を満たした 2959 の地震記録について, 7 チャンネル全波形の最大振幅, P 相, 震動 継続時間, P4 の S 相, 及び P1 の初動から 5 秒間のスペクトル計算を行った. 解析処理は DEC 社による 32 ビットコンピューター VAX を使用し, FORTRAN で自作した対話式プログラムで 験測処理等を行った.. Ⅲ. 地震活動 Fig. 5 に 1987 年 12 月∼1988 年 12 月の北 海道大学の観測網, 及び気象庁の観測点による地 震活動を示す. Fig. 5 (b), (c) は日別地震回数. RCEP (a). Eruption. Tremor level P1. 200. であり, 計数のための基準観測点は, それぞれ. 100 0. P1 と気象庁 A 点 (RCEP の P4) である. 気象 庁は A 点で S-P 時間が 4.0 秒以内かつ最大振幅. µkine 400 300. 1987 1988. (b). N/DAY. 200. Earthquake (All). 150. 0.05m 以上の地震を雌阿寒岳の地震と定義して. 10/18 666 11/14 718. 100 50. いる. 気象庁の頻度分布図から, それまで静穏だっ. NO DATA. 0. 1987 1988. た地震活動は 12 月 9 日に活発化したことがわ かる. 北海道大学の地震観測は 1987 年 12 月 16. JMA (c). N/DAY. 150. Earthquake (All). 10/18 296 11/14 215. 100. 日からであり, 12 月 9 日∼13 日の地震活動の. 50. 詳細はわからないが, 12 月 28, 29 日には 100 回を超えた. 1988 年 1 月 2 日午後にはこの群 発活動は終了し, 地震数は 3 日 7 回, 4 日回, 5. 0. (d). 1987 1988 N/DAY 60. Deep Low Frequency Earthq. (TD,TS). 40. 20. 日 3 回と減少した. その後 5 日から 6 日未明の. 0. 1987 1988. 小噴火に至った. この前日の 1 月 4 日夕方から は, P1 での連続微動レベルが急激に増大した (Fig. 5 (a)). この微動振幅の大きい状態は 2 月 末まで続き, 3 月になって減少した. 確認された 4 回の小噴火 (1998 年 1 月 5∼6, 8 日, 2 月 7 ∼8, 18 日) は, いずれも微動レベルの高い時. Seismic activity observed by RCEP and JMA from December, 1987 to December, 1988. (a) Tremor level at P1 of RCEP. (b) Daily number of volcanic earthquakes by RCEP. (c) Daily number of volcanic earthquakes by JMA. (d) Daily number of deep low frequency earthquakes by JMA..
(9) 336. 高木. 朗充. 期に発生した. 一方, 地震回数は 2 月末から再び増加し始めたが, 表面現象の変化はなかった. その後, 小規模で短時間の群発活動が数回発生したが, 1988 年 10 月中旬以降, 大規模で長時 間の群発地震活動期に入り, 1988 年 10 月 18 日に日地震発生数 666 回に至った. 地震回数は 増減を繰り返しながら 11 月 14 日に 718 個回発生した後, 活動は急激に衰え 12 月には静穏化 した. また, 1988 年の活動で注目すべき特徴の一つとして, 低周波地震動が多発したことであ る (Fig. 5 (d)). この活動は 2008 年 11 月噴火の直前でも見られた. この期間の地震の規模別頻度の特性を見る. 雌阿寒岳山体に対して観測点が北西側に偏在して いることから, 正確な震源及びマグニチュードを求めることができない. このため, 地震の規模 は基準観測点の振幅値で置きかえた. P1 は震源域に近いと考えられるポンマチネシリ火口によ り近いため, 地震記録はスケールアウトすることが多い. そのため, 次に火口に近い P2 振幅の 累積頻度分布を示す (Fig. 6). 期間を通した最大振幅の下限は, P1 で 200kine 以上とした. 地震総数 1852 個から求められた b 値は 1.57 であった. この値は日本の通常の地震活動と比べ て大きいが, 火山体で観測される b 値は一般に大きいので著しく大きいとは言えない. Fig. 7 に期間を通した地震活動度を示す. Fig. 7 (a) は P1 振幅値を示し, 1987 年の一時期 を除き, スケールアウトする振幅は 2785kine である. 震源をポンマチネシリ火口直下と仮定 した場合, 渡辺 (1971) の式から, この振幅値はマグニチュード 0.2 に相当する. 同様に, 1000 kine で−0.3, 100kine で−1.5 となる. Fig. 7 (b) は P1 で記録された主要動の振幅スペク トルから計算された卓越周波数を示す (時間ウィンドウ 5.5 秒間 (512 データ) の FFT による ピーク周波数で, 以下全て同様). 1∼2Hz, 6∼8Hz, 10∼13Hz の 3 つの帯域で卓越する周波. Number. (a) μkine. 10000. 1000. Amplitude P1(UD) NO DATA. Nall (P2) = 1852 100. 1000. 10. b-value = 1.57 1987 1988. (b) Hz 20. 100. NO DATA. 15. HF. 10. 10 100. Dominant freq. P1(UD). LF. 5. TD,TS,T. 1000. μkine. 2785. 10000. Cumulative number of volcanic earthquakes of Meakandake by using velocity amplitudes at P1. b-value is estimated to be 1.57.. 0 1987 1988. Temporal variations of velocity amplitudes (a) and dominant frequencies (b) of earthquake waveforms observed at P1. There are three split band of dominant frequencies. One is 1 − 2 Hz, another is 6 − 8 Hz, and the other is 10 −13 Hz. Each band corresponds to the waveform type of (TD, TS, T), LF and HF, respectively (Fig. 14)..
(10) 1988 年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性. (a) µkine. 337. Amplitude P2(UD). 1000. Eruption 100. NO DATA 10. (b) 3.0. Amplitude ratio P2/P3. Temporal variations of seismic activities accompanied with eruptions in terms of velocity amplitudes (a) and amplitude ratios P2/P3 (b). Several days earlier than the first eruption, which occurred on 5 January, the number of earthquakes decreased (a), and the amplitude ratio became large to 1.5 from 1.2 (b).. 2.0. NO DATA 1.0. 0. 1987 December. 1988 January. 数をもつ地震が発生していることがわかる. Fig. 8 に 1 月の噴火を含む, 1987 年 12 月 26 から 1988 年 1 月 31 日までの地震活動を示 す. 基準観測点 P1 は噴火前 6 日間欠測であったので P2 を用いた. P2 の振幅変化を Fig. 8 (a) に, P3 に対する P2 の振幅比を Fig. 8 (b) に示す. 噴火 3 日前の 1 月 2 日午前までは地震活 動は活発で, 振幅比の平均は 1.2 であった. 同日午後から地震数は急減し, 振幅比は 1.5 に増 大した. これは震源が浅くなったことを示す. その後 1 月 7 日以降は, 振幅比は 1 月 2 日より 以前の状態よりも小さくなり, 約 1.0 となった. これらは噴火活動に伴って震源域が移動して いることを意味する.. Ⅳ. 波形分類 一般に火山性地震の波形は構造性地震より複雑であり, P 波や S 波初動は不明瞭である. 火 山体内部が岩脈や熱水等の貫入, あるいは熱変成や応力変形のため, またより浅部では火山砕屑 物の堆積のために極めて不均質であるため, 観測される地震波形は単純ではない. しかし, 雌阿 寒岳で観測された地震波形の中には, 伝播経路の不均質性だけでは説明が困難な, 多様な震動波 形がある. これらは震源での単純な破壊とは考えられない. 観測された地震を単純な破壊に近いか否かで, Simple event と Complex event に大別した. この 2 種以下にも細かな分類が可能であった.. 1. Simple event Simple event は継続時間が約 10 秒程度より短い震動波形であり, P 波初動は比較的明瞭で ある. 破壊の震源過程は単発のパルスに近いと推定できるが, 構造性地震と比べると波形は複雑 である. S 相は上下成分観測点での同定は困難である. Fig. 9 に Simple event の 1343 全ての P1 に お け る 卓 越 周 波 数 の 頻 度 分 布 を 示 す . Simple event の 卓 越 周 波 数 は , 6∼8Hz と 10∼13Hz の 2 つの頻度のピークを持ち, それぞれ全体の 27%と 44%を占める. これに対し,.
(11) 338. 高木. Dominant frequency of Simple event. N 300. 朗充. (a) LF 1988.10.18 11:01:39. LF. 250. 1sec. μkine kine 10000. Max : 6.9 Hz. P1(UD). HF. 1691 μkine. Spectrum P1. 1000. P2(UD) 1647 μkine. P3(UD). 200. 100. 1165 μkine. N = 1343 (P1). P4(UD) 1230 μkine. 10. P4(EW). 150. 2016 μkine. P4(NS). 1. 1343 μkine. 100. 0.1. 1. 10. 100. Hz. (b) HF. 50. 1988.10.15 18:30:30. 1sec. μkine kine 10000. P1(UD). 0. 1468 μkine. 5. 10. Frequency. 15. Hz. Histogram of dominant frequency of Simple event observed at P1. There are two peaks, 6 − 8 Hz and 10 − 13Hz, which correspond to LF and HF, respectively.. P2(UD). Spectrum P1 Max : 11.9 Hz. 1000. 791 μkine. P3(UD) 411 μkine. 100. P4(UD) 411 μkine. P4(EW). 10. 1100 μkine. P4(NS) 1325 μkine. 1. 0.1. 1. 10. 100. Hz. Seismograms and amplitude spectra of LF (a) and HF (b).. この 2 つのピークに挟まれた 8∼10Hz は 11%にすぎない. そこで Simple event の中で, 概ね 8Hz 以下のものを LF, 10Hz 以上のものを HF と名付けた. LF 及び HF の波形例と P1 の振幅 スペクトルを Fig. 10 に示す. また, LF と HF は観測期間を通して発生している. Fig. 7 (b) の 3 つの帯域のうちの 2 つは, LF と HF に対応する. Simple event の中に, 主要動が始まる直前から微小な先駆波を確認できるものが 81 存在し た. 群発地震活動期には, 振幅の小さな微小地震の直後に振幅の大きな地震が発生して見かけ上, 同じように見えることはまれにある. しかし, この型の波形記録は群発地震活動期でなくても見 られる. 先駆波の継続時間は一定ではなく, 1∼5 秒間と広がりがあり, 主要動の継続時間や振 幅との相関は見られない. この型の地震を PT と名付けた. PT を周波数から見ると, 先に分類 した LF に属する場合と HF に属する場合の両方あった.. 2. Complex event Complex event とは震動継続時間が 10 秒を超え, Simple event とは明らかに異なり, 単純 な弾性破壊では説明することが困難と考えられる震動記録とした. この違いの原因は震源過程に あると推定される. Complex event の型のひとつに, 震動周波数が 1Hz に振幅スペクトルのピークをもつ単色地 震があり, 480 回観測された. これを TD とする (Fig. 11 (a)). 規模は小さく P1 振幅で最大 180kine 程度だが, 震動継続時間は 30 秒から 1 分間と長く, 波形包路線は滑らかな紡錘型を している. 主要動のスペクトルはどの観測点でも 1Hz の鋭いピークを持つ. TD は初動の正確 な同定が困難であり, S 波の認識も難しい. Simple event は, 雌阿寒岳の地震観測網の外では 検知できないが, TD は雌阿寒岳から遠い TSK (弟子屈, 東北東 33km), KNP (訓子府, 北北.
(12) 1988 年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性. 西 50km), URH (浦幌, 南西 55km) の地震観 測点 (Fig. 1) でも記録され, 波形はいずれの観. 339. (a) TD 10sec. 1988.03.06 22:50:42. 60 µkine. P3(UD). 10. 49 µkine. には雌阿寒岳の観測点の地震記録とともに,. Max : 0.9 Hz. 100. P2(UD). 測点においても共通の特徴を示す. Fig. 11 (a). P1(UD). µkine kine 1000. P1(UD) 87 µkine. P4(UD) 46 µkine. 1. KNP(UD) 16 µkine. KNP と URH の記録も示す. 波形振幅は P1 で. URH(UD). 0.1. 24 µkine. 0.1. 1. 10. 100. Hz. 最も大きいことから, TD の震源は雌阿寒岳直下 の深部と推測される (西村・他, 1988). TD は. (b) TS 1988.07.25 04:13:27. µkine kine 1000. 100. RCEP. 最初の噴火直前の 1988 年 1 月 5 日に初めて観 測され, その後増加した. 3 月に頻発し 4 月中. P1(UD) 1.1 Hz. 10sec. 500 µkine 10. P1(UD) 391 µkine. JMA. 0.5 µm. 1. A(UD) 0.4 µm 0.1. 旬まで続いた (Fig. 5 (d)). 同種の地震動は, この活動の 2 年半前の 1985 年 7 月に, 十勝平 野での長周期微動のアレイ観測中に偶然観測され. 0.1. 1. 10. 100. Hz. Seismograms and amplitude spectra of TD (a) and TS (b).. ている. 松島 (1987) は地震波の到来方向から, 屈斜路火山のマグマ起因の震動である可能性を示したが, 屈斜路火山と同じ方向の雌阿寒岳火山 の震動であった可能性が高い. また, このような地震動が火山体で群発した例はこの 1988 年の 雌阿寒岳が最初と思われる. その後, 十勝岳, 岩手山, 富士山等, いくつかの活火山直下のモホ 面付近で同様の震動が発生していることが確認され (鈴木, 1992;鵜川, 2007 等), 深部低周 波地震と名づけられているが, 雌阿寒岳で 1988 年に発生した TD も深部低周波地震であった可 能性が強い. TD ほど鋭い卓越周波数ではないものの, 同様に 1Hz にスペクトルピークをもつ単色地震が, 1988 年 7 月中旬から 8 月中旬にかけて多く発生した. これは TS とされ, 138 回発生した (Fig. 5 (d)). Fig. 11 (b) に TS の波形例を示す. 上段が P1 上下成分の 1Hz 速度計記録, 下段が気 象庁 A 点上下動の 1 秒 5000 倍変位記録 (62F 型電磁式ドラム式すす書き記録をデジタイズし たもの) である. 地震計の特性が異なるという理由もあり, 気象庁の波形記録には短周期成分が 全く見られないが, P1 の記録は高周波成分も重畳している. しかし P1 の振幅スペクトルを見 ると, TD と同様に 1Hz 付近のスペクトルピークを確認できる (Fig. 11 (b)). TS は TD より 規模が大きく, TD は P1 で最大 180kine 程度であったが, TS は 1000kine を超えることも ある. しかし, 雌阿寒岳の観測点以外では観測されていないことから, TS の震源は TD ほど深 部ではないと推測される. なお, TD, TS は気象庁による命名である. LD は震動継続時間が 10∼40 秒と長い (Fig. 12). 振幅は TD や TS と比べるとはるかに大 きく, P1 でスケールアウトしてしまうものが 7 回あった. 特徴的なパルスが主要動の前に入り, 徐々に振幅を増して紡錘型を形成するのが特徴である. そして, このパルスの極性は必ず押しで ある (Fig. 12 の▲印). この発生メカニズムは明らかにされていない. LD は 1988 年 11 月 10 日から 14 日の群発活動で頻発しており 111 回観測された. 単振動で減衰が極めて小さい地震も発生した. これを T 型と呼ぶ. T 型は浅間山等いくつか の火山で観測例がある (浜田・他, 1976). 雌阿寒岳の地震観測網のテレメータ化後, P1 で 550.
(13) 340. 高木. LD P1(UD). 朗充. 1sec. T P4(UD). 1sec. 1988.11.13 20:52:11 2785 μkine. 1988.08.18 03:19:02 174 μkine Dominant freq. 1.6 Hz. 1988.11.13 23:11:30 2785 μkine. 1988.10.10 02:31:52 206 μkine Dominant freq. 1.1 Hz. 1988.11.13 23:57:21 2148 μkine. 1988.10.24 09:04:22 119 μkine Dominant freq. 1.4 Hz. 1988.11.14 01:22:42 1561 μkine. 1988.11.02 22:12:52 141 μkine Dominant freq. 1.4 Hz. 1988.11.14 02:02:18 1311 μkine. 1988.11.13 08:15:34 277 μkine Dominant freq. 1.4 Hz. 1988.11.14 03:47:21 2785 μkine. 1988.11.13 09:11:15 293 μkine Dominant freq. 1.4 Hz. 1988.11.14 04:54:04 1909 μkine. Other P4(UD) 1988.10.31 13:50:37 826 μkine 1988.11.14 05:07:10 1474 μkine. Seismograms of T-type observed at P4. For reference, a seismogram of other type is shown together.. 1988.11.14 09:47:45 1349 μkine. 1988.11.14 09:52:38 2785 μkine. Remarkable phase. Number. Seismograms observed at P1. Solid triangles indicate initial upward phases.. HF. 1988.10.15 18:30:30 1474 µmkine. 1sec 1sec. LF. 1988.10.18 11:01:39 1702 µkine. 1sec. 1sec. kine 以下の小規模な T 型地震が 6 回観測され. PT. 1988.10.25 05:41:05 1272 µkine. た. T 型地震は, テレメータ化する以前の 1987. 1sec. TD. 1988.03.06 22:50:42 173 µkine. TS. 1988.10.10 02:31:52 261 µkine. 1sec. 138. LD. 1988.11.14 09:52:38 2785 µkine. 1sec. 111. T. 1988.11.13 09:11:15 212 µkine. 1sec. 6. 10sec. 年 12 月 9 日から, 既に気象庁の地震計により とらえられている. Fig. 13 に T 型の P4 記録と, 比較のため Simple event の波形も示す. T 型の 卓越周波数はいずれも 1.1∼1.6Hz である. なお,. る.. 480. Total 2959. 火口に最も近い P1 の波形記録も 1∼2Hz のスペ クトルピークをもつが, 高周波震動も重畳してい. 81. precursor. Seismograms and number of events for all types of HF, LF, PT, TD, TS, LD, and T.. 1988 年雌阿寒岳噴火前後の地震波形はこのよ うに多様であり, それぞれの典型的な波形例と観測された回数を Fig. 14 に示す. なお, HF と LF は明瞭に区分できない場合があるので, 計数はできない.. Ⅴ. 震源決定 1. みかけ速度 震源決定を行うには地震波速度構造を知る必要であるが, 火山体の詳細な速度構造は明らかに されていない. そこで比較的 P 波初動の読み取り精度が高いと考えられる, 354 個の Simple.
(14) 1988 年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性. event の P1, P2, P3 の走時からみかけ速度と 波動到来方位を推定した. みかけ速度の頻度分布 を Fig. 15 (a) に示す. みかけ速度は 2.0km/sec. 341. (a). (b). N 100. E. N = 354. 10. 80. 20. 60. 30. 以上に分布した. P 波の表層伝播速度は少なくと. 40 40 20. もこれより小さいので, P 波の伝播速度を. 7.5 2.5 5.0 Aparent velocity. 2.0km/sec と仮定した. また, 波動到来方位の頻 度分布は, アレイの南東方向にピークをもつ (Fig. 15 (b)), これは雌阿寒岳ポンマチネシリ 火口の方向に一致する. 雌阿寒岳に展開した地震観測網 (Fig. 3) は,. Pon -machineshiri. 50 Number. 0 10.0. S. km/sec. Histogram of apparent velocities (a) and azimuth angle of incident seismic waves (b). Apparent velocity ranges over 2.0km per sec. Frequency peak of azimuth angles trends the direction of Pon-machineshiri crater.. 山頂の 1 点を除けば雌阿寒岳北西山腹の狭い範 囲に配置されている. このうちの P1, P2, P3 で P 相初動を読み取り, 平面波を仮定して波動 の到来方位と入射角をトリパタイト決定する. P1, P2, P3 は上下動成分のみなので S 波初動 の同定が困難である. 3 成分観測点である P4 はノイズレベルが高く P 波初動の読み取り精度は 高くないが, S 相の読み取りは可能であるので, S-P 時間は P4 の験測値で用いる.. 2. 走時解析による二層速度構造の仮定 P1 で 200kine 以上の全地震 304 個の P0/P3 振幅比の頻度分布を求めると, 振幅比 15∼20 に. (a) Travel time. ピークがあるが, より震源が浅い地震と推定され. sec 0.8 0.6. る振幅比がより大きいものも存在する. そこで,. 0.4. Average. P0/P3 振幅比が極めて大きい地震の震源は, 山. 0.2. S. 頂火口に近い P0 近傍のごく浅部であると仮定し,. m 2500. 2000. 1500. 1000. 500. Distance. 地表面に対して水平な二層速度構造を推定した. P0/P3 振幅比が 50 以上の地震のうち, P 波初. (b) 1500m. 1000m. 示す. これらの地震は, 火口近くの P0 近傍の同. 500m. して扱かった. P1, P3, P4 観測点は直線上に 配置しているとし, この直線上の走時を二層構造 で説明できるような震源の位置を, P0 付近で探 索したところ, P0 と P1 の間の第 1 火口付近に あればよいことがわかった. P0, P1 を直達波, P4 は第 2 層を経由した屈折波, その間の P3 を 直達波と屈折波が同時に到達した点 (クロスオー バーポイント) とすれば, Fig. 16 に示す S の時. Pon-machineshiri. S. 0.0 0.09. SE P0. P1. 動が明瞭な 9 つの地震の走時を Fig. 16 (a) に. 一の震源であると仮定し, 走時はそれらの平均と. NW. 225. P4. P3. V1 V2. H. D V1=2.474km/sec V2=2.985km/sec H=274m. Estimate of a two-layer structure of seismic velocities by travel time analysis. (a) : Travel times of nine shocks having higher amplitude ratio (P0/P3). Simple S indicates the most probable hypocenter by using their averaged travel time. P-wave velocity of upper and lower layers is 2.474 and 2.985 km per sec, respectively. Thickness of upper layer (H) is estimated to be 274m (b)..
(15) 342. 高木. 朗充. 刻が震源の走時と相対的な発震時となる. 水平二層構造では表層, 下層の伝播速度 , と, クロスオーバーポイントの震央距離 がわかれば, 表層の厚さ は以下のように求められる.. . . (1). この走時解析によって得られた, 山体斜面に沿った水平二層構造は以下のとおりである. 表層の P 波速度: . 2474m/sec. 下層の P 波速度: . 2985m/sec. 表層の厚さ: . 274m. (震源:P0 から 225mP1 寄りの地表面). この走時解析による速度構造は多くの仮定に基づいているため, 高い精度はない. 表層の伝播 速度 は, クロスオーバーポイントに依存するが, それを震源からの最遠点である P3 と仮定 したので, それにより得られた は, 考えられ得る最大値である. 表層の伝播速度は少なくと もこれより大きくはないことを意味する. また Fig. 16 の震源 S は考えられる最も東寄りを示し ていることになり, 相対的な発震時は考えられる最も遅い時刻を示していることになる. また, 震源の深さは地表面近くに仮定したが, 実際はより深部にあることを考えると, 伝播速 度はさらに小さいものと推定される. 見かけ速度の頻度分布から推定される表層の伝播速度は 2000m/sec 以下だったことと調和的である. 表層の厚さは速度コントラストに大きく支配され るが, この程度の結果であれば大きく変わることはなく, 妥当な値が得られたと考えられる. そこで今後の震源決定における速度構造を, 山体の斜面に対して等厚の二層構造とし, 今後は 以下の値を用いる. 表層の P 波速度: . 2000m/sec. 下層の P 波速度: . 2500m/sec. 表層の厚さ: . 300m. また, S 波速度は P 波速度の 1/1.73 とする (ラメ定数, ).. 3. 震源 地震観測網は雌阿寒岳山体を取り囲んでいないため, 通常の震源決定は困難である. そこで, 観測網の一部をトリパタイトアレイとみなし, 伝播する地震波を平面波と仮定して到来方向を推 定し, P4 の S-P 時間から震源決定をおこなった. 1987 年 12 月 26 日から 1988 年 12 月 2 日までに発生した地震の波動到来方向を決める為 に用いたアレイは, P1, P2, P3 からなり, 平面は雌阿寒岳の西側山腹に位置し, E9°S の方向 に 11.7°の勾配を持つ. この勾配は無視できる範囲の値ではないので円山 (1965) により傾斜.
(16) 1988 年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性. 343. km 1. 0. N. A 12 50 m. 43.400. AZIMUTH. m. 1982. 10. 00. 1987-1988. PROFILE LINE 43.375. 75 0m. B 143.975. A. 144.000. 144.025. Naka -machineshiri. 144.050. B. PROFILE. DIP. km 1000m 0. 0 10. E. 20. 1. 30. 0m. 40 -1000m. 50 60. -2000m. 70 -3000m. S. -4000m. Hypocenters of all events from December, 1987 to December, 1988. Hypocenters were distributed 2 km beneath and were the fringe of Ponmachineshiri crater. Depth distribution is shown along the profile AB on the bottom.. 80. Pon -machineshiri. 90. Distribution of azimuths and dip angles of incident seismic waves. Open circles indicate events of the 1987 − 1988 swarm, and solid diamonds of the 1982 swarm.. 補正を施して波動到来方向を決定した. P4 で S 相を験測できた 661 の震源を Fig. 17 に示す. 震央はポンマチネシリ火口を中心に分布し, その重心は, 最も激しい噴気活動を継続していた ポンマチネシリ第 1 火口にあたる. 相の読み取り精度を 0.05 秒とした場合, 震源決定誤差は± 150m 程度となるが, 平面波近似をするには震央距離が近すぎるため, 実際の決定精度はさらに 悪いものと考える. よって, 観測期間中の絶対的な震源の時間変化を議論するのは困難であり, 実際時間的な変化を認めることもできなかった. 雌阿寒岳では今回の活動以前の 1982 年 3 月にも群発地震活動があった. その震央は今回の 震源域とは異なり, ナカマチネシリ火口から北西 2km までの地域であったことが報告されてい る (西村・山下, 1982). Fig. 18 に 1982 年の群発活動と 1987−1988 年の群発活動の地震動 の到来方位を示す. ただし, 両者の到来方位を求めるために使用したアレイの配置は異なる.. Ⅵ. 波形相似性と震源集中度 火山地域では, 波形相似性の高い地震が起こることが知られている (例えば, 馬越・他 (2002) 等). 雌阿寒岳でも, 1988 年噴火直後の 4 回の群発活動期に, 波形相似性の高い地震 が発生した. そこで, 群発活動期の P1 振幅が 200kine 以上 (D 群のみ 400kine 以上) の全.
(17) 344. 高木. 朗充. ての地震について解析した. Table 2 に 4 回の 群発地震活動について示す.. .
(18) The list of four swarms including earthquake family. Swarm. Period. A. 1. 波形相似性 それぞれの地震群の中における波形相似性を見 るため, 相互相関係数を求めた. 地震波形は初動. Number of earthquake All. > 200 kine. Family. Ratio(%). 1988/7/30 - 7/31. 142. 26. 17. 65. B. 1988/8/15 - 8/16. 38. 17. 12. 71. C. 1988/9/14 - 9/15. 89. 18. 14. 78. D. 988/ 0/ 8 1988/10/18. 666. 5 51*. 17*. 33. * >400. kine (P1). から 5.5 秒間のウィンドウを用い (以下, 同様), P1, P2, P3 の 3 点について行った. Fig. 19 に A 群の P1 の波形と, 相互相関係数を示す. 波 形相関の高い地震群 (Family) とそうでない地震の相関係数のコントラストは比較的明瞭であ る. このことは P2, P3 の記録でも同様であり, また A 群以外でも同様である. 相 互 相 関 係 数 が ど の 地 震 に 対 し て も 概 ね 60% 以 上 で あ る 地 震 の グ ル ー プ を 相 似 地 震 群 (Family) と定義する. その結果, A, B, C 群は相似地震群の占める割合が 65∼78%と極めて 高かったが, D 群は 33%と低かった (Table 2). 次に 4 つの相似地震群どうしの相似性を調べた. 各群での代表的な地震を 3 つずつ, 計 12 の波形相関を各観測点について求めた. Fig. 20 に P1 記録による結果を示す. A 群と D 群, 及 び B 群と C 群はそれぞれで相関が高いが, (A, D) 群と (B, C) 群の間では低い. これは P2, P3 記録でも同様であった. また, P 相を含む 1 秒間のウィンドウ, 及び S 相を含む 2 秒間の ウィンドウにおいても相関を求めたが, 同様の結果であった. このことは, A 群と D 群, 及び B 群と C 群の震源域が, それぞれ極めて近いことを示唆する. さらに, 3 種類の帯域のバンドパスフィルター (2∼4Hz, 4∼8Hz, 8∼16Hz) をかけた波形. Swarm A P1(UD). Cross correlation. 1 sec. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1314 1516 17 18 1920 2122 2324 25 26 1988.07.31 00:58:49. Family. 223 µkine 277 µkine. 1988.07.30 23:11:46. 348 µkine. 1988.07.30 23:38:58. 734 µkine. 1988.07.30 23:40:14. 206 µkine. 1988.07.30 23:52:50. 250 µkine. 1988.07.31 00:29:24. 310 µkine. 1988.07.31 00:36:36. 696 µkine. 1988.07.31 00:42:04. 826 µkine. 1988.07.31 00:47:52. 239 µkine. 1988.07.31 01:10:06. 674 µkine. 1988.07.31 01:15:34. 348 µkine. 1988.07.31 01:19:20. 223 µkine. 1988.07.31 01:35:45. 952 µkine. 1988.07.31 01:46:46. 756 µkine. 1988.07.31 01:56:11. 359 µkine. 1988.07.30 22:30:20. 359 µkine. 1988.07.30 22:30:32. Others. 2785 µkine. 1988.07.30 21:18:06 1988.07.30 22:41:45. 674 µkine. 1988.07.30 22:44:09. 369 µkine. 1988.07.30 22:49:28. 277 µkine. 1988.07.30 23:13:51. 391 µkine. 1988.07.30 23:32:32. 315 µkine. 1988.07.30 23:37:06. 206 µkine. 1988.07.31 02:12:00. 212 µkine. 1988.07.31 02:45:34. 320 µkine. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26. 63 85 55 73 53 68 71 54 69 59 60 55 67 61 61 73 49 81 47 60 51 81 68 74 85 59 67 56 69 52 79 69 61 70 60 76 82 68 78 77 70 66 59 83 65 79 70 79 77 70 65 66 86 70 81 83 66 81 71 78 62 70 77 68 81 87 85 52 82 68 78 62 69 67 65 73 74 84 81 56 76 72 69 66 57 75 67 77 71 75 74 84 64 85 76 76 62 77 81 70 82 88 86 79 68 80 56 81 69 68 59 66 74 66 76 77 75 69 80 74 71 45 78 66 56 60 55 68 63 66 64 66 65 69 67 75 40 26 42 36 50 41 42 39 37 38 35 48 54 35 41 30 35 43 41 38 44 41 32 35 46 44 43 36 37 46 35 40 29 31 81 38 22 46 49 40 32 28 33 62 30 33 45 43 53 31 39 36 30 24 52 47 51 48 47 39 38 49 44 53 53 48 46 58 49 60 69 36 30 38 64 38 60 55 53 58 42 60 53 59 55 54 56 68 55 61 56 42 42 53 39 57 45 61 55 41 47 69 58 47 53 64 62 43 46 67 63 52 21 20 28 41 37 26 13 20 16 30 11 22 15 29 17 18 20 22 24 18 18 15 13 10 34 16 17 15 34 39 27 22 29 32 38 31 15 32 34 33 25 22 41 32 20 22 16 12 21 28 45 11 16 17 20 20 14 18 15 20 11 16 19 13 15 14 19 15 19 17 15 13 16 16 15 26 10. Seismograms and cross correlations of swarm A. Correlation among the earthquake family (No.1- 17) is clearly higher than that for the family and others (No.1826)..
(19) 1988 年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性. P1(UD) Family A. Family B. Family C. Family D. 345. Cross correlation 1 sec. 1988.07.31 00:47:52. 239 µkine. 1988.07.31 00:58:49. 2785 µkine. 1988.07.31 01:10:06. 674 µkine. 1988.08.15 20:33:36. 250 µkine. 1988.08.15 22:35:36. 250 µkine. 1988.08.15 22:42:06. 734 µkine. 1988.09.14 10:31:53. 261 µkine. 1988.09.14 10:59:30. 228 µkine. 1988.09.14 12:20:36. 598 µkine. 1988.10.18 18:58:46. 674 µkine. 1988.10.18 19:55:36. 1806 µkine. 1988.10.18 22:13:35. 875 µkine. A1A2A3 B1B2B3C1C2C3 D1D2D3 A1 A2 79 A3 87 83 B1 20 24 16 B2 16 24 19 88 B3 16 17 13 88 83 C1 33 26 23 81 75 77 C2 20 20 19 73 77 72 77 C3 33 25 23 77 74 79 89 69 D1 60 67 63 20 14 18 19 20 19 D2 65 67 67 16 17 17 20 20 20 90 D3 63 67 66 15 13 14 17 21 19 94 90. Seismograms and cross correlations of family A, B, C and D. Correlation between A and D is high as well as, that between B and C.. 相関に関しても, 同様に A 群と D 群, 及び B 群と C 群はそれぞれで相関が高いが, (A, D) 群 と (B, C) 群の間では低かった. この傾向は, 高周波の帯域ほど強かった.. 2. 地震波到来方向の分布 相似地震どうしの最大相互相関係数は, 8Hz 以上の高周波成分についても概ね 70%以上と高 い. 「相似地震どうしの震源は近く, 伝播経路の影響は等しいと仮定できるから, 高周波成分の 違いは僅かな震源の違いと考えられる. 相似地震どうし震源は, 地震波の伝播速度の 1/4 波長 内にある」 という Geller and Mueller (1980) の仮説に従えば, 雌阿寒岳の相似地震群は, 30∼60m の範囲の震源域で発生していることになる. このように各群では震源域は集中していると考えられるので, 波形の相似性を利用した走時の 推定を行った. 一般に相似地震群の中のマスターイベントの波形に対して, 他の地震波形の最大 相互相関を求めることで, 各観測点の走時を推定して震源を求める. しかしサンプリング周期を 上回る分解能はない. そこで, クロススペクトル法 (Ito, 1985) を用いた高精度の走時決定を 行い, 地震波到来方位と入射角をトリパタイト決定した. この方法による 4 つの群の地震波到来方向の再決定の結果は, Fig. 21 のようになった. 到来 方位で 7∼11°以内, 入射角で 9∼17°以内に集中した. 手動験測による結果が, 到来方位で 18 ∼68°, 入射角で 25∼65°バラツキが大きいことと比べると, 集中度はより高まった. 各群のマ スターイベントの到来方位, 入射角, 及び地震群の集中度を Table 3 に示す. A−D 間, あるいは B−C 間の波形相関が高いことから, それぞれ震源域が近接している可能 性が高いが, 同一地震群内の地震どうしの相関ほど高くはない. 特に 8Hz 以上の高周波帯域の 相関は, A 群内の地震どうし, D 群内の地震どうしでは 80%以上であるが, A 群の地震と D 群 の地震の相関は 60∼69%とやや低いため, それぞれの震源域は完全には互い重複していない可.
(20) 346. 高木. 朗充. Distribution of azimuths and dip angles of incident seismic waves from the master event and others of four families, determined by cross-spectral analysis method (Ito, 1985). Large symbols indicate master events.. 能性がある. これを確認するために, A 群と D 群をたすきがけにして波動到来方向の推定を行っ. .
(21) The list of azimuth and dip angle of incident seismic waves from the master event and others of four families.. た. A 群の地震を D 群のマスターイベントに対. Family. して (あるいは B 群の地震を C 群のマスターイ. A. Master event. AZI. B. 1988.8.15 22:42:08. 結果, A 群の震源域は D 群と (B 群の震源域は. C. 1988.9.14 12:20:36. C 群と) ほとんど変わらなかった. つまり, A 群. D. 1988.10.18 19:55:36. All events. Range of incident wave Cross-spectrum method. (Number). 147.1°. AZI. 140.1. DIP. 33 1 33.1. AZI. 130.5. 151.3°. Without this method. 136.7 154.7°. (17). 1988.7.31 00:58:49. ベントに対して), 高精度相対地震決定を行った. と D 群, B 群と C 群は同一の震源域である可能. Incident wave. DIP. 45.1°. AZI. 137.7°. 50 50.6° 6° 137.7°. 29.0 29 0 54.7° 54 7° 123.7 144.5°. (12) DIP. 76.5°. AZI. 135.3°. DIP. 61.6. AZI. 133.5. 76.5° 138.0°. 56.4 81.7° 121.0 150.5°. (14) DIP. 69.7°. AZI. 145.1°. DIP. 67.0. AZI. 140.7. DIP. 37.8. 75.8° 148.2°. 37.6 85.2° 110.1 178.8°. (17) DIP. 43.4°. 49.4°. 11.2 76.0°. AZI : Azimuth angle from N clockwise. DIP : Dip angle from vertical.. 性が高い.. Ⅶ. 相似地震のメカニズム 1. 波形相似性とスペクトル 雌阿寒岳で発生した群発地震活動では, 数多くの相似地震が観測された. この地震群では震源 が近接しており, 震源メカニズムも同じであることが予想される. また, Simple event の地震 を卓越周期 8Hz 以下の LF と, 10Hz 以上の HF に分類できることを示した. これらは相反する 特徴ではあるが, 波形相関が高い相似地震にもかかわらず, 卓越周期が 8Hz 以下と 10Hz 以上 に分かれるものがあった. Fig. 22 に, 2 つの相似地震の P1 における記録とスペクトルを示す. 波形相関のウィンドウは波形全体の 5 秒間, スペクトルのウィンドウは初動部分の 0.7 秒間で ある. 波形相関は 82%と高いが, 初動部分のスペクトルには違いがあり, それぞれの卓越周波 数は 6Hz と 13Hz である. このことを含む, 相似地震の観測波形の特徴は以下のとおりである..
(22) 1988 年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性 1 sec. 1) 初動部分の卓越周波数が低周波側にシフト する LF と高周波側にシフトする HF が多く 存在する. この傾向はいずれの観測点でも同. 347. 1988.11.08 00:47:27. 365 μkine. 1988.11.08 01:03:32. 561 μkine. LF HF. Cross correlation :. 82%. 様である. FFT Window 0.7 sec. 2) 初動の極性は同じである.. Correlation Window 5 sec. 3) 相似地震群の中では, LF よりも HF の方が. 5.8Hz. 13.0Hz. Normalized. 4) 1), 2), 3) の傾向は, 地震の規模によらな. Normalized. 多く観測される.. HF. LF. い. Hz. Hz 1. 2. 破壊伝播効果 以上の特徴について考察する. 波形相関が高い ことは, 震源位置が近く地震メカニズムが似てい るためと推定される. 一方, 初動部分のスペクト. 10. 100. 1. 10. 100. Seismograms and amplitude spectra of LF and HF. Although these two are similar earthquake with a correlation of 82 %, dominant frequency in the window of initial phase are 5.8 Hz and 13.0Hz, respectively.. ルの違いは既存割れ目の開口の伝播方向による違 いではないかと推定した. その根拠を以下に示すような断層破壊のドップラー効果を考える. 観測点における変位記録 は, 一般的に, :. 震源時間関数. :. 媒質のグリーン関数. :. 断層の破壊伝播効果を表す関数. (2). と表せる (Fig. 23 (b-1)). 破壊伝播する震源断層を Fig. 23 (a-1) のように考える. 観測点は相対的に破壊伝播方向対し て 方向にあるとする. 伝播が等速で unilateral と仮定すると, 破壊伝播の効果 は, Fig. 23 (b-3) のような box-car 型で表すことができる. このパルス幅 は, 以下のように表され る.. . . . :. 断層の長さ. :. 破壊伝播速度. :. 地震波速度. (3).
(23) 348. 高木. 朗充. Doppler effect model to explain characteristics of seismograms of earthquake families oc1988. Rupture curred in Meakandake, propagates along a tensile crack fault (a). Seismogram recorded at seismic station (b1, 2) and time function of rupture-propagation effect (b3).. このとき, 変位波形 のパルス幅 は, . (4). と表すことができる. ここで は, (2) 式の による部分のパルス幅である. 観測波 形は速度記録であるから, 速度波形 のパルス幅 は半分になり (Fig. 23 (b-2)), 以下の ように表せる.. . . . . .
(24). (5). 一方, Fig. 23 (a-2) のように震源の反対方向にも同じ震源距離をもつ観測点 B があるとする. B で観測されるパルス幅は,. . . .
(25). (6). となる. このとき A, B で観測される速度波形のパルス幅の差 は, 以下のとおりとなる. .
(26)
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(32). (7). 3. クラックモデルによる解釈 Fig. 24 のように熱水やガスのような流体が詰まった流体だまり A, B を考える. ここで A と B はすでに長さ L の割れ目でつながっており, 通常は固着しているとする. A と B の流体圧を それぞれ , とする. Ⅵ1. で示した相似地震の特徴 1) ∼4) を解釈する. 1) の卓越周期の 2 種類の存在については, 破壊伝播の効果によって説明できる. HF が観測さ.
(33) 1988 年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性. 349. れるのは, Fig. 24 の A の上端で発生した破壊が 断層に沿って F 上を B の下端に向かって進行す る場合であり, LF はその逆であると考える. 2) の初動極性が常に押しであるという観測結 果は, 地震の発生機構が既存断層での開口の進行 によるものと考えれば説明できる. 震源が剪断破 壊であれば, 初動極性は断層面の方向によって依 存する. 3) LF よりも HF の方が多く観測された事実 は以下のように考える. もし であれば, 流体は下方の A から上方の B に向かって移動す. Schematic illustration to model the generation of LF and HF in the same family. Difference of LF or HF is dependent on the direction of the rupture propagation with fluid material along the tensile fault.. る傾向が強くなる. その結果, 既存断層では観測 点方向に高周波にするドップラー効果をもたらすような, 開口伝播が相対的に多くなるはずであ る. 火山活動が高まる時期により となることは調和的である. 4) の, 1), 2), 3) の特徴が規模によらないという事実は, この地震は既存断層 F が有限長 を持つためである. F の簡単な断層長の見積もりを行う. Fig. 24 のように雌阿寒岳の震源域でこのような破壊が 起こるとする. 断層面は, P1 方向に正のドップラー効果が生じる方向におく. 震源を火口直下 2.5km, P 波速度 2.5 km/sec, 2 つの相似波形の卓越周期を Fig. 22 の 5.8Hz と 13.0Hz とする と, . であるので, (7) 式より断層長は,
(34) m となる. 2 つの相似地震のス ペクトルシフトを破壊伝播のドップラー効果から求めた割れ目断層の長さは 120m 以上となっ た.. Ⅷ. まとめと議論 1988 年 1∼2 月に雌阿寒岳の小噴火が発生した. その直前から噴火後約 1 年後に地震活動が 静穏になるまでの期間の地震活動と地震特性の詳細に明らかにした. 期間中に発生した火山性地震の数は 9464 回であった. そのうち継続時間が 10 秒以下と以上 のものを大別して, Simple event と Complex event とした. Simple event には LF, HF, PT の 3 種, Complex event には TD, TS, LD, T の 4 種に分類できた. Simple event のスペクトル頻度分布は, 8Hz 以下と 10Hz 以上に明瞭に分かれたため, 低周 波側を LF, 高周波側を HF とした. Minakami (1960) は浅間山の火山性地震を高周波の A 型 地震と低周波の B 型地震に分類したが, 雌阿寒岳の HF と LF をこれにあてはめれば, いずれ も A 型地震に分類される. 雌阿寒岳の噴火活動に伴う A 型地震を, さらに周波数で細分するこ とができた. このような分類は十勝岳 (松島・他, 1987), 三宅島 (宇平・他, 1984, 宮崎・沢 田, 1984), 恵山 (勝井・他, 1983) 等でも例がある. PT は主要動の直前に微小な先駆波を伴.
(35) 350. 高木. 朗充. うものであり, HF, LF に関わらず見られた. Complex event の TD, TS はともに継続時間が 30 秒以上と長く, 卓越周波数は 1Hz 付近の 単色である. これらは, 噴火が停止し微動レベルが下がった 1988 年 3 月以降に多発した. TD は 50km 以上離れた地点でも観測された. 初動の読みは不明瞭であるが, 震源はこれらの走時 から雌阿寒岳の火口直下 20km 付近と推定される. 同じ単色地震でも遠い観測点では検知され なかった TS は, 高周波成分が重畳し震源の推定は困難であったが, 観測範囲が狭いことから TD の震源よりも浅いと考えられ, 概ね雌阿寒岳の直下と推定される. 2000 年頃から雌阿寒岳 周辺の地震観測網が高密度になり, 現在では直下に深部低周波地震が発生することが知られるよ うになったが, 1988 年噴火後に頻発した TD, TS は現在観測されている深部低周波地震であっ た可能性がある. これらの単一周期の成分を持つ地震の発生メカニズムはわからない. 伊豆大島に発生した 1 つの単色地震のメカニズムを, Ukawa and Ohtake (1987) は 2 つのマグマだまりを結ぶパイ プの中に生じる traction-force によって説明している. 雌阿寒岳で発生した TS はこの伊豆大島 の地震の様に広域では観測されていないので詳細な解析は困難であるが, TD を含む単色地震は 断層の剪断断破壊のような簡単なメカニズムでは説明できない. おそらく流体の運動に起因する 共鳴による可能性が大きい. 1987 年 12 月から活発な地震活動が始まったが 1988 年 1 月 2 日に静穏になり 1 月 5 日未 明に小噴火を起こした. その後, 2 ヶ月間に計 4 回の噴火があった. この間, 地震活動は活発 ではなかったが微動レベルは上昇していた. 噴火により内部圧力が開放され, ガスの通り道が確 保されたため, 地震活動はやや鎮静化したものの, 噴気活動は活発化したものと思われる. 二層の速度構造の仮定によって震源決定を行った. トリパタイト決定した震源は期間を通じて, 噴火活動をしたポンマチネシリ直下約 2.5km に集中したが, 最初の噴火の 3 日前からは地震回 数は減少する一方で, 山頂近くの観測点の振幅比がやや大きくなった. これは震源が浅くなった ことを示す. その後の顕著な震源の時間変化はなかった. 1988 年 4 月以後, 小規模な群発地震活動が間欠的に発生し, 同年 10 月∼11 月には最大規 模の群発活動を迎えたが, 再び噴火を迎えることなく翌 12 月には静穏化した. この群発の中に は相似性が高い地震群があり, それらの震源はごく近傍にあると推定された. また相似地震であっ ても初動部分のスペクトルが異なるものがあり, 破壊伝播のドップラー効果を考慮したモデルを 適用することで説明できることを示した. 火山体では数多くの空隙が存在し, ここにマグマ活動 に伴うガスや熱水等の流体が充填されていると考える. その流体だまりの圧力差によってその間 を結ぶ既存断層に tensile crack が生じ, 同一の断層からスペクトルの異なる相似地震群が発生 したという考えは不自然ではない. クロススペクトル法によって相似地震群の震源域が集中して いることを明らかにしたが, これはこのモデルを支持している. 断層規模は 120m 以上と推定 された. Hill (1977) は, クラックとクラックの端をつなぐ様に多数の共役断層系が形成されると考 え, この断層のすべりによって火山性地震が生じると考えた. しかし, このモデルでは初動の極.
(36) 1988 年雌阿寒岳の噴火活動に伴う地震活動の特性. 351. 性が常に押しであるという事実を説明できないので, 雌阿寒岳の地震の発生機構には適用できな い. また, Shimizu et al. (1987) は三宅島の地震活動において剪断割れ目を伴う引張り割れ目 モデルを考えたが, 彼らの点震源のモデルでは同様に雌阿寒岳の今回の地震を説明することはで きない. 今回観測された, 卓越周波数の異なる初動が押しの相似地震群については, これまでの 解釈とは異なる火山性地震の発生メカニズムを提案することに成功した.. 謝辞. 小論は, 修士論文の一部をまとめたものである. 本研究を進めるにあたり, 西田泰典先. 生, 中西一郎先生からは多くの御指導を頂きました. また, 笠原稔先生からは観測から研究の進 め方に至るまで, 終始親身に御指導を授かり, 本研究の進むべき方向に導いて頂きました. Ⅵ章 では西村裕一氏には丁寧なご指導を頂きました. 竹中博士氏には, Ⅶ章の議論において極めて有 益な御意見とヒントを頂きました. 観測にあたっては, 鈴木貞臣先生, 宮町宏樹先生, 前川徳光 氏, 松島健氏, 市川隆一氏の協力を得て行いました. 北海道大学地震予知観測地域センターの皆 様には, 貴重なデータを利用させて頂きました. 菅野智之氏には札幌管区気象台の観測データを 提供して頂きました. 鴨川凌子氏, 土子さな枝氏にはデータの整理を手伝って頂きました. 以上 の方々には, ここに記して感謝いたします.. 文. 献. Geller, R.J. and C.S.Mueller, 1980. Four similar earthquakes in Central California, Geophys.Res.Let., , 821-824. 浜田信生・神宮博・生本光二, 1976. 減衰の遅い終期微動を伴う火山性地震について, 火山, , 167-183. Hill, D.P., 1977. A model of earthquake swarm, J.Geophys.Res., , 1347-1352. Ito, A., 1985. High resolution relative hypocenters of similar earthquakes by cross-spectral analysis method, J.Phys.Earth., , 279-294. 勝井義雄・横山泉・岡田弘・坪俊影, 1983. 恵山 (北海道防災会議編), 99 pp. 気象庁編, 2005. 日本活火山総覧 (第 3 版), 635 pp. 円山卓男, 1965. 三点観測点における傾斜補正, 東京大学地震研究所彙報, , 409-420. 松島喜雄・西村裕一・鈴木敦夫・岡田弘, 1987. 十勝岳で観測される火山性地震のスペクトル解析−特に単 純なスペクトル構造をもつ地震について−. 火山, , 317-328. 松島健, 1987. 北海道東部で発生した“単色地震”について, 北海道大学地球物理学研究報告, , 45-52. Minakami.T., 1960. Fundamental research for predicting volcano eruptions (part1), Bull.Earthq.Res.. Inst., , 497-544 宮崎努・沢田宗久, 1984. 1983 年三宅島噴火に関連した地震活動, 火山, , 55-67. 西村裕一・道脇正則・笠原稔, 1988. 1988 年雌阿寒岳小噴火活動に伴い群発した 「単色地震」. 火山, , 231 (演旨). 西村裕一・山下済, 1982. 雌阿寒岳における 1982 年 3 月の群発地震活動, 北海道大学地球物理学研究報告, , 65-76. Shimizu.H., S. Ueki and J. Koyama, 1987. A tensile shear model for the mechanism of volcanic.
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