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木材利用研究論文報告集 7, -7, 8. () 埼玉県八潮市地点本地点は, 中川低地の沖積面にあたり平坦な地形で, 地層は第四紀完新世に形成された沖積層から成り, 地表面から順に東京下町低地の有楽町層, 七号地層, 基底礫層に相当する地層が堆積していた. 微地形は自然堤防 旧流路 後背湿地であった

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Academic year: 2021

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(1)

軟弱地盤に打設したテーパー状

木製地盤補強材の鉛直載荷試験

三村 佳織

1

・水谷 羊介

1

・中村 博

1

・伊藤 智栄

1

・原 忠

2 1正会員 兼松サステック株式会社 ジオテック事業部技術部 (〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町三丁目) E-mail:k-mimura@ksustech.co.jp 2正会員 高知大学教授 防災推進センター副センター長 (〒783-8502 高知県南国市物部乙 200) 近年,地球温暖化問題が深刻化し早期解決が喫緊の課題となっている中,温室効果ガスである二酸化炭 素を長期間貯蔵できる木材の有効性が見直されている.しかし,木材は自然素材で強度や形状のバラツキ が懸念されることから小さい方(末口)の径を用いた安全側の設計となっており,コスト面などで他工法 に劣る部分があった.本研究では,埼玉県八潮市および熊本県熊本市の軟弱地盤を対象に,両端の径が同 じストレート状木材と片端の径のみ小さく先細りになっているテーパー状木材の 2 種類を打設し,実大載 荷試験により一本あたりの支持力を求めた.その結果,テーパー状木材において最も支持力が高くなるこ とが分かった.さらに,既往指針の式から支持力を求めることにより,木製地盤補強材の設計方法の妥当 性について考察した.

Key Words:wooden pile, bearing capacity, loading test, skin friction, taper shape

1. はじめに

明治時代に西洋のレンガ造など重い建物の建築技術が 入ったことで,日本でも地盤によっては杭が必要になっ てきた1),2).そこで,1950 年代まで地盤改良として木材 が使用されていたが,その後 1955 年に木材資源の枯渇 を防ぎ,森林の開発保全を目的とした「木材資源利用合 理化方策」が閣議決定され 3),徐々に土木工事の主要材 料に木材が使用されることは少なくなってきた.このよ うな背景を受け,各種設計書から木杭に関する記述が減 り,1976 年には道路橋示方書で,1988 年には建築基礎 構造設計指針で一切の記述が姿を消した 4).高度経済成 長期以降になると,地球温暖化解決に向けた持続可能な 社会形成が求められるようになり,二酸化炭素を固定化 し地中に長期間貯蔵できるという木材の有効性が見直さ れてきた.近年では,土木・建築構造物基礎の軟弱地盤 対策や液状化対策としての木材利用が既に実用段階にあ り,今後もさらなる発展が期待される5) 木材は上に向かって成長していくという性質から,あ る区間で切断した場合に上部の径が下部と比較して小さ く先細りになったテーパー形状を有している.径が一様 な直杭と比較して,テーパー形状は高い支持力を有する ことが過去の研究事例より多数報告されている 6~9).異 なるテーパー角を有する鋼管や木杭に対しての実大施工 試験などは実施されているが,同条件下で表面積を等し くした複数種類の杭を比較した実大試験や設計面まで反 映された研究事例は少ない 10~12).そのため,木材を地 盤改良材として用いる場合,自然素材であることから強 度や形状などのバラツキが懸念され,小さい方(末口) の径を用いた安全側での設計が行われており,コスト面 などで他工法に劣る部分があった.そこで,本実験では 木材,コンクリート,鉄の 3 種類に対して行った載荷試 験結果より木材の支持力について検討し,新たな木製地 盤補強材の設計法を考察する.

2. 実験の概要

本実験は,埼玉県八潮市および熊本県熊本市の地盤特 性の異なる 2地点で実施した.

(2)

(1) 埼玉県八潮市地点 本地点は,中川低地の沖積面にあたり平坦な地形で, 地層は第四紀完新世に形成された沖積層から成り,地表 面から順に東京下町低地の有楽町層,七号地層,基底礫 層に相当する地層が堆積していた.微地形は自然堤防・ 旧流路・後背湿地であった.図-1(a)に本地点の地盤調査 結果を示す.N 値が概ね 2 以下の極めて軟弱なシルト層 が,GL-0.8~4.3m 程度まで堆積する粘性土地盤であった. 図-2(a)に使用した試験杭の全景を,図-3 に試験杭の配 置図を示す.養生効果の影響を考慮するため,1 週間, 1 ヶ月,4 ヶ月,1 年の 4 期間を設定して載荷試験を実施 した.一度載荷試験を行った試験杭は地盤との摩擦が切 れてしまい,適切な養生効果を検証できないことから, 区画ごとに木製地盤補強材,鋼管杭,RC 杭の試験杭を それぞれ施工した.表-1 に試験杭の仕様を示す.鋼管 杭(Sst)は先端閉塞のストレート状で,RC 杭(Ctp)は テーパー状である.木製地盤補強材はストレート状 (Yrst)およびテーパー状に成形したスギ(Yrtp)の 2 種類と,表皮を剥いたテーパー状のスギ(Ybtp)を作製 した.使用した木製地盤補強材は材のバラツキを考慮す るため,約 2000 本の中から「欠け」や「曲がり」の著 しいものを除去し,直径を計測した上で条件に合う材料 を選定した.材長は全て 5.0m である.なお,径は各試 験杭の表面積が等しくなるように設定した. 施工重機は圧入力型の重機(コマツ:Padra BA-100) を使用し末口を下にした状態で,無回転圧入にて GL-4.0m まで貫入した.いずれの試験杭も最大圧入力は 20.0 ~30.0kN 程度であった.今回,先行掘削は行っておらず, 施工時に圧密は完了しているため,座屈や沈下の検討は していない. (2) 熊本県熊本市地点 本地点は,阿蘇火山西の熊本台地およびそこから西方 有明海に向かって広がる熊本平野西端部に位置する.付 近は緑川と白川に挟まれた地域で,軟弱な有明粘土層が 標高-30m 付近の深さまで厚く堆積しており,表層には 緑川や白川の氾濫原堆積物である砂層が薄く分布してい た.図-1(b)に本地点の地盤調査結果を示す. GL-0.0~ 0.8m まで砂質シルトが堆積し,GL-0.8~6.0m 程度までは N 値が概ね 2 以下のシルト質砂層が堆積している軟弱な 砂質地盤であった. 図-2(b)に使用した試験杭の全景を,表-1 に試験杭の仕 様を示す.試験杭は,長さ 6.0m の熊本県産スギ材で, 成形したストレート状と表皮を剥いたテーパー状の 2 種 類を打設した.養生期間は 1週間である. 施工重機は,圧入力型の重機(コマツ:Padra BA-100)を使用し,無回転圧入にて GL-6.0m まで貫入した. いずれの杭も最大圧入力は 20.0~36.0kN 程度であった. Wsw Na Nsw 0 0 0 0 0 1.00 6.15 2.55 5.15 24 56 56 5.45 0 0 0 20 36 36 56 0 12 0 0 0 0 0 り数 調査名 土 質 区 柱 標 4.4 3.3 3.0 3.0 0 5.8 5.8 5.8 3.6 4.4 14 6 9 9 5 0 14 14 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 1.00 2.3 1.5 1.5 1.5 2.3 0 0 0 0 3.6 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 2.3 1.00 0 3 0 0 0 0 0 0 0.75 0.75 0.50 0.50 0.50 0.75 25 25 25 25 25 0.75 0.75 0.75 0.75 0.75 1.25 1.00 0.75 25 25 25 25 25 25 25 3.50 3.25 3.00 2.75 2.50 N 値 (回) 0 6 5 (m) 状 図 4 3 2 1 転 数 深 量 さ 3.00 25 25 25 25 25 25 4.25 4.00 25 25 5.00 5.50 5.25 2.25 2.00 1.75 1.50 1.00 1.00 1.00 25 6.00 5.75 3.2 25 4.75 分 (kN) (回) (回) 1.5 4 0 ~ 10 (m) 0.50 20 ~ 30 (m) (㎝) 4.50 1.50 2.00 3.75 25 0.75 0 2.3  八潮載荷試験場 深 度 10cmごとの 打撃回数 荷 換算N値 及び N値 1 1.00 標準貫入試験 スウェーデン式サウンディング試験 25 0.25 半 換 入 重 0 0.50 調査日 回 1半 m回 当転 尺 貫 10 1 / 50 0 / 55 0 / 55 1 / 50 2 / 30 0 / 30 1 / 20 ハンマー自沈 4.00 4.50 3.55 ハンマー自沈 0 / 30 1 / 20 調査場所 孔 内 水 位 10 ~ 20 貫 入 算 埋 土 シ ル ト シ ル ト 質 細 砂 打 撃 回 数 / 貫 入 量 (cm) 5 (m) 1 / 20 1 2010年9月30日  埼玉県八潮市八條地内 側点 標高 1 KBM-1.50m 1.75 (a)埼玉県八潮市地点 砂 質 シ ル ト シ ル ト 質 砂 調査場所 標準貫入試験 スウェーデン式サウンディング試験 調査名  熊本載荷試験場 調査日 換算N値 10cmごとの 打撃回数 打 撃 回 数 / 貫 入 量 (cm) 貫 荷 半 標 柱 土 孔 深 貫 1半 換 尺 状 質 内 度 入 入 重 算 及び 図 区 水 0 ~ 10 10 ~ 20 転 当転 り数 (回) 回 m回 N N値 分 位 さ 数 値 Wsw Na Nsw (m) (m) (m) (m) (㎝) (kN) (回) (回) 5 10 1 / 30 20 ~ 30 深 量 1 / 30 0.25 25 0.25 0 0.50 25 1.00 2 8 0 0.8 0.75 25 1.00 0 0 3.4 1.00 25 1.00 0 0 3.0 3.0 1 1.25 25 1.00 2 1.50 25 1.00 2 8 8 2.5 1 / 30 1 / 30 2.5 1.75 25 1.00 2 8 2.5 2.00 25 1.00 0 2 2.25 25 0.75 0 2.0 2.50 25 1.00 0 0 0 2.0 1.5 2.75 25 0.75 0 0 3.00 25 1.00 0 0 1.5 0 2.0 3 3.25 25 0.75 0 0 1.5 3.50 25 0.75 0 0 1.5 1 / 30 1 / 30 1 / 30 1 / 30 3.75 25 0.50 0 0 1.0 4.00 25 0.75 0 0 1.5 4 4.25 25 1.00 0 0 2.0 2 / 30 4.75 25 0.50 4.50 25 0.50 0 1 / 15 1 / 15 0 1.0 0 1.0 5.15 5.00 25 0.75 0 0 0 1.5 5 5.25 25 1.00 2 8 5.50 25 1.00 0 0 2.5 5.45 2.5 2.0 5.75 25 1.00 2 8 2.8 6.15 6.00 25 1.00 3 6 12 2013年12月12日  熊本県熊本市南区海路口町地内 側点 標高 1 KBM-0.087m 4.15 4.45 3.15 3.45 2.15 2.45 1.15 1.45 0.40 (b)熊本県熊本市地点 (■:標準貫入試験結果,●:スウェーデン式サウンディング試験結果) 図-1 地盤調査結果 木材利用研究論文報告集17, 1-7, 2018. 12

(3)

3.

杭の載荷試験と先端抵抗力および周面摩擦力

載荷試験は,地盤工学会基準『杭の鉛直載荷試験の方 法・同解説』に準拠し13),施工から 5 日後に実施した. 荷重を段階的に一定時間保持しながら増加させる単サイ クルの段階載荷とし,荷重保持時間は新規荷重で 30 分 とした.図-4 に載荷試験のイメージ図を示す. 第一限界抵抗力は logP-logS 曲線に現れる明瞭な折れ 点の荷重から求め,極限鉛直支持力(杭径の 10%沈下 した時の支持力,Ra)は荷重変位量曲線より押込み抵抗 が最大になったときの荷重から求めた.木材の頭部と先 端部にひずみゲージを中心から左右対称の位置に計 2 箇 所ずつ取り付け,各箇所に取り付けたひずみゲージの平 均値から抵抗力を式(1)により求めた.写真-1 にひずみ ゲージの取り付け状況を示す.木材のヤング率は頭部に 取り付けたひずみゲージ値を用いて算出したが,取り付 け位置が木口面に近かったことから偏荷重を受けた可能 性があり14),特異値を示した.そのため,後日,熊本県 産スギ材を用いて縦圧縮試験を行い求めたヤング率 7214(N/mm2)を採用した.なお,縦圧縮試験で得られ たヤング率は木材工業ハンドブックに示されている公称 値15)とほぼ同等の結果が得られたことを確認している. Pi iEiAi (1) ここに, i P:i 断面における軸方向力(i 断面は末口断面) i  :i断面における軸方向ひずみ i E :i 断面におけるヤング率 i A :i 断面における杭体断面積 式(1)で得られた先端抵抗力から式(2)により周面摩擦 力を求めた. p a f R R R   (2) ここに, f R :周面摩擦力 a R :極限鉛直支持力 p R :先端抵抗力 第 二 限界 抵抗 力( Krst (木材・ストレート) Kbtp (木材・テーパー) Ctp (RC・テーパー) Sst (鋼管・ストレート) Ybtp (木材・テーパー) Yrtp (木材・テーパー) Yrst (木材・ストレート) (a)埼玉県八潮市地点 (b)熊本県熊本市地点 図-2 使用した試験杭の全景 図-3 試験杭の配置図 表-1 試験杭の仕様 Sst 鋼管 ストレート 0.165 0.165 Ctp RC テーパー 0.140 0.193 Yrst ストレート 0.160 0.160 Yrtp 0.150 0.178 Ybtp 0.149 0.176 Krst ストレート 0.140 0.140 Kbtp テーパー 0.140 0.180 熊本県 熊本市 木材 末口(m) 元口(m) 埼玉県 八潮市 木材 テーパー 地点 No. 材質 形状 図-4 載荷試験のイメージ図 写真-1 ひずみゲージの取り付け状況 (RC・テーパー) (鋼管・ストレート) (木材・ストレート) (木材・テーパー) (木材・テーパー) 木材利用研究論文報告集17, 1-7, 2018. 12

(4)

4. 実験結果

以下では,鋼管杭および RC 杭と木製地盤補強材の材 質,養生期間,形状の違いを比較した結果を示す. (1) 材質の違いによる極限鉛直支持力の関係 図-5 に極限鉛直支持力と養生期間の関係を示す.破 線は鋼管杭および RC 杭を,実線は木製地盤補強材をそ れぞれ示している.鋼管杭の杭周面状況は非常に滑らか であり,油分も付着しているため,他の試験杭と比較し て極限鉛直支持力が著しく低下していることがわかる. RC 杭は鋼管杭と比較して極限鉛直支持力は高く,スト レート状の木製地盤補強材(Yrst)とほぼ同等の極限鉛直 支持力を有していた.木製地盤補強材が高い支持力を有 する理由として,円周方向に貼り付けたひずみゲージの 計測結果から時間の変化に伴い,最大で周長約 470mm の 0.14%程度の膨張傾向が認められたことが考えられる. 既往研究より,材と地盤の接触部に存在する水分の吸収, 膨張や地盤のせり出しなどにより,材と地盤の密着性が 高くなることが指摘されている16) (2) 養生期間の違いによる極限鉛直支持力の関係 図-6 に各試験杭における養生期間毎の極限鉛直支持 力を示す.灰色は周面摩擦力,黒色は先端抵抗力をそれ ぞれ示している.鋼管杭は期間が長くなるに従い,極限 鉛直支持力は 28.8kN から 35.5kN と高くなった.RC杭は 一週間の極限鉛直支持力が高い値を示したものの,その 他は鋼管杭と同様に期間が長くなるに従い 31.8kN から 42.0kN と高くなった.木製地盤補強材については明瞭な 結果は得られなかったが,養生期間が長くなるに従い極 限鉛直支持力が増加する傾向にあった.本実験で使用し た試験杭は全て,先端が軟弱地盤で止まっているため, 先端抵抗力は材質,形状の違いによらずほぼ一定であり, 周面摩擦力の増加により極限鉛直支持力は増加している ことがわかった.施工直後は試験杭周面の地盤が乱され ることで周面摩擦力が低下するが,無排土施工のため周 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 1 10 100 1000 10000 極 限 鉛直 支持 力( kN ) 養生期間(日) Sst Ctp Yrst Yrtp Ybtp Krst Kbtp 図-5 極限鉛直支持力と養生期間の関係 75.5 40.3 49.0 42.3 49.3 1週間1週間1ヶ月4ヶ月 1年

Ybtp,Kbtp

50.6 32.335.0 40.5 35.3 1週間1週間1ヶ月4ヶ月 1年

Yrst,Krst

47.8 45.5 49.5 49.3 1週間 1ヶ月 4ヶ月 1年

Yrtp

28.8 30.3 30.3 35.5 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 1週間 1ヶ月 4ヶ月 1年 極 限 鉛直支持 力( kN

Sst

■周面摩擦力 ■先端抵抗力 43.8 31.8 40.0 42.0 1週間 1ヶ月 4ヶ月 1年

Ctp

図-6 各試験杭における養生期間毎の極限鉛直支持力 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 極限鉛直支持力( kN ) ストレート テーパー 40.3 75.5 Yrst 32.3 50.6 Kbtp Krst Ybtp 図-7 形状の違いによる極限鉛直支持力の関係 木材利用研究論文報告集17, 1-7, 2018. 12

(5)

面地盤の戻り圧力も発生し,養生期間が長くなるにつれ て周面摩擦力が増加したと考えられる. (3) 形状の違いによる極限鉛直支持力の関係 図-7 に八潮市地点および熊本市地点におけるストレ ート状とテーパー状の木製地盤補強材の極限鉛直支持力 の関係を示す.熊本市地点と養生期間を合わせるために 八潮市地点は養生期間が一週間の結果を用いて比較を行 った.八潮市地点では極限鉛直支持力がストレート状木 材は 32.3kN であったのに対し,テーパー状木材は 40.3kN,熊本市地点でも 50.6kN が 75.5kN とテーパー状 において極限鉛直支持力が高くなっていることがわかっ た.周面摩擦力度で比較した結果においてもストレート 状木材を 1 とした場合にテーパー状木材は八潮市地点で 1.36,熊本市地点で 1.34 と大きくなった.本実験で使用 した木製地盤補強材のテーパー角はいずれも 0.16~0.20° と決して大きくはなかったものの,テーパー角の有無が 支持力の向上に大きく関係していることがわかった. テーパー状木材の極限鉛直支持力増加に関する詳細な メカニズムについては今後検討する必要があるが,打設 時に末口を下にして圧入することから,木製地盤補強材 と地盤との間に隙間が生じにくく密着性に優れていたと 考えられる.

5. テーパー効果の評価

(1) テーパー角と支持力の関係 テーパー状木材の末口径に径を揃えたストレート状の 「末口 st」,元口径に径を揃えたストレート状の「元口 st」,そして,テーパー状の「tp」の 3 種類のモデルケ ースを設定した.表-2 に各モデルケースの諸元を,図-8 にイメージ図をそれぞれ示す.元口 st は載荷試験を行 っていないため,ストレート状木材の単位面積あたりの 先端抵抗力および周面摩擦力値から求めた. 表面積が大きくなった分,周面摩擦力は大きくなるた め,元口 st の周面摩擦力が最も大きくなるかと思われ たが,元口 st が 57.2kN であるのに反して tp は 68.0kN と 約 1.2 倍大きな値を示した.これはテーパー状木材の周 面摩擦力が,ストレート状と比較して約 1.2 倍大きな値 を示すとの既往の研究成果17)に類似している. (2) 既往指針によるテーパー効果の比較 本節では,現在木杭の設計に用いられている小規模建 築物基礎設計指針18)から支持力を算定し,テーパー効果 を比較する.現在,建築物の約 9 割が戸建て住宅であり, スウェーデン式サウンディング試験から得られた換算 N 値により設計が行われている.そのため,今回は各地点 の換算 N値より木材の支持力を求めた. 木材の許容支持力 Raは長期許容鉛直支持力 Ra1と採用 した許容圧縮力 Ra2のうち,小さい値とする.ただし, 今回,載荷試験で確認した結果,部材の強度は十分に確 表-2 各杭の諸元 末口st 元口st tp 末口st 元口st tp m 0.074 0.085 0.085 0.070 0.090 0.090 m 0.074 0.085 0.074 0.070 0.090 0.070 ° 0.00 0.00 0.16 0.00 0.00 0.19 m 4.0 4.0 4.0 6.0 6.0 6.0 m2 0.017 0.023 0.023 0.015 0.025 0.025 m2 0.017 0.023 0.017 0.015 0.025 0.015 m2 1.870 2.147 2.009 2.639 3.393 3.016 kN 29.9 34.7 40.3 50.6 67.3 75.5 kN 1.8 2.4 1.2 6.1 10.1 7.5 kN/m2 105.0 105.0 67.4 397.6 397.6 486.6 kN 28.1 32.3 39.1 44.5 57.2 68.0 kN/m2 15.0 15.0 19.5 16.9 16.9 22.6 熊本県熊本市 単位周面摩擦力 単位先端抵抗力 周面摩擦力 先端抵抗力 第二限界抵抗力 周面積 元口断面積 末口断面積 材長 テーパー角 元口半径 末口半径 項目 埼玉県八潮市 図-8 モデルケースのイメージ図

(6)

認されたため,ここでは Ra1の結果から Raを求めた.木 材の長期許容鉛直支持力 Ra1は式(3)により求めた. Ra11/3(RpRf) (3) ここに, 1 a R :杭状地盤補強の長期許容鉛直支持力(kN) p R :杭状地盤補強先端部における極限先端支持力 (kN) f R :杭状地盤補強周面の地盤による極限摩擦力 (kN) また,極限先端支持力 Rpおよび極限摩擦力 Rfは次式 (4)および(5)により求めた. 杭状地盤補強先端部の下部地盤が砂質土の場合 Rp NAp (4) ここに,

:先端支持力係数,埋込み杭と同様の200を 採用する19) N :杭状地盤補強先端から下に 1D,上に 1D の範囲 における N値の平均値 p A :杭状地盤補強の先端断面積(m2 RfD(dLi) (5) ここに, D :杭状地盤補強径(m) d  :杭状地盤補強に作用する各層の極限周面摩擦力 度(kN/m2)で粘性土の場合 c d   ,砂質土の 場合d 10/3N とする i L:各層の層厚(m) 図-9 に極限鉛直支持力の実測値と設計値の関係を示 す.設計値は実測極限鉛直支持力と比較するため,長期 許容鉛直支持力を 3 倍した値を記載している.八潮市地 点の載荷試験結果では,tp の実測値は 40.3kN となり, 末口径で計算した設計値は 28.8kN,元口径で計算した設 計値は 33.4kN であった.熊本市地点の載荷試験結果も 同様に tp の実測値は 75.5kN,末口径で計算した設計値 は 32.4kN,元口径で計算した設計値は 46.0kN となって おり,計算の結果,テーパー状木材を使用する際には元 口径で計算しても適切な支持力計算が行われていること がわかった.テーパー状木材を地盤改良材として用いる 場合には元口径で設計したとしても安全側であり,十分 に支持力が期待できる可能性が示唆された.

6. まとめ

軟弱地盤で材質や形状の異なる部材に対して載荷試験 を行った結果,以下のような知見を得た. (1) 表面積を等しくした場合,鋼管杭や RC 杭と比 較して,ストレート状木材は RC 杭と同等程度, テーパー状木材は両者よりも高い極限鉛直支持 力を有していた. (2) ストレート状木材とテーパー状木材を比較する と,テーパー形状で極限鉛直支持力が高くなる ことがわかった.テーパー角の有無が支持力の 向上に大きく関係すると考えられる. (3) テーパー状木材の元口径に径を統一したストレ ート状木材と比較して,テーパー状木材の周面 摩擦力は約 1.2倍大きな値を示した. (4) テーパー状木材を用いる場合,元口径で計算を 行っても安全側の設計が期待できる可能性が示 唆された.

28.8

33.4

32.4

46.0

40.3

75.5

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

埼玉県八潮市

熊本県熊本市

極限鉛直支持力(

kN

末口st(設計値)

元口st(設計値)

tp(実測値)

図-9 極限鉛直支持力の実測値と設計値の関係 木材利用研究論文報告集17, 1-7, 2018. 12

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さらなる木材の地中利用促進のためには,耐久性や部 材耐力などの諸条件も含めた検討が必要となる.本研究 内容は 2 現場で行った数箇所の載荷試験より得られた結 果であることから,今後,同様の試験を行いテーパー効 果を検証していきたい. 謝辞:埼玉県八潮市地点で行った実験は日本合板組合連 合会の「地域材利用加速化支援事業のうち国産材原料転 換技術開発事業」の一つとして実施されたものであり, 試験費の一部を日本合板組合連合会より支援を受けて実 施されました.また,実験にご協力頂いた飛島建設株式 会社の沼田淳紀様,福井工業高等専門学校の吉田雅穂教 授,(社)土木学会木材工学特別委員会(土木における木 材の利用拡大に関する横断的研究会)地中海洋利用小委 員会の委員の方々に感謝の意を表します.熊本県熊本市 地点で行った実験は熊本県の県産木材利用開発推進事業 の一つとして実施されたものであり,試験費の一部を熊 本県より支援を受けて実施されました.また,実験にご 協力頂いた高原木材株式会社の皆様,熊本大学の大谷順 教授にここに記して感謝の意を表します. 参考文献 1) 杉村義広:日本における杭基礎の起源と変遷,土と 基礎 Vol.54,No.6,pp.1-4,2006. 2) 塩井幸武:土木(道路)における杭基礎の変化・変 遷について,土と基礎 Vol.54,No.6,pp.9-12,2006. 3) 木材資源利用合理化方策,農林省,pp.3-4,1955.1. 4) 土木における木材の利用拡大に関する横断的研究 会:温暖化緩和策に向けた具体的な木材利用技術の 研究,(社)土木学会木材工学特別委員会,pp.1-2, 2010. 5) 沼田淳紀,外崎真理雄,濱田政則,久保光,吉田雅 穂,野村崇,本山寛:丸太打設地盤改良による地球 温暖化防止対策の可能性,第 8 回環境地盤工学シン ポ ジ ウ ム 発 表 論 文 集 , 地 盤 工 学 会 , pp.399-404 , 2009.7. 6) 佐々木隆光,末政直晃,中村和之,橋爪秀夫:テー パー杭の鉛直支持力に関する基礎的研究,第 38 回地 盤工学研究発表会,pp.1407-1408,2003.7. 7) 富永晃司,陳群麗,田村昌仁,岩井明彦:テーパー 杭の水平抵抗に関する解析法,日本建築学会構造系 論文集,第 622 号,pp.115-120,2007.12. 8) 富永晃司,陳群麗:テーパー剛杭の鉛直押込み力~ 沈下量関係の一解析法~,日本建築学会構造系論文 集,第 603 号,pp.77-83,2006.5. 9) 三浦哲彦,呉文経,中村六史,一瀬智郎:軟弱粘土 中杭の周面支持機構に関する実験的考察,土木学会 論文集,No.517,Ⅲ-31,pp.63-72,1995.6. 10) 水谷羊介,中村博,今野雄太,沼田淳紀:木杭の支 持力に関して(その 2.試験結果と考察),第 46 回地 盤工学研究発表会,pp.867-868,2011.7. 11) 中村博,水谷羊介,中島憲一,増田貴之:木杭の支 持力特性(その 2.鉛直載荷試験について),第 42 回 地盤工学研究発表会,pp.1223-1224,2007.7. 12) 増田貴之,水谷羊介:松杭の支持力特性(その 2), 第 41 回地盤工学研究発表会,pp.1401-1402,2006.7. 13) 杭の鉛直載荷試験方法・同解説 第一回改訂版, (社)地盤工学会,2002.5. 14) 三村佳織,水谷羊介,原忠,野口昌宏:丸太のヤン グ率に関する一考察,木材利用研究論文報告集 13, (社)土木学会木材工学委員会,pp.74-78,2014.7. 15) 森林総合研究所:改訂 4 版木材工業ハンドブック, 丸善株式会社,2004.3. 16) 水谷羊介,中村博,今野雄太:木杭の支持力機構に ついて(その 2.支持力と摩擦抵抗力),日本建築学 会大会学術講演梗概集,日本建築学会,pp.639-640, 2009.8. 17) 本山寛,沼田淳紀,吉田雅穂,久保光:スギ丸太打 設による軟弱地盤対策実験,地盤工学ジャーナル, Vol.7,No.2,pp.409-420,2012.5. 18) 一般社団法人日本建築学会:小規模建築物基礎設計 指針,pp.181-192,2008.2. 19) 一般社団法人日本建築学会:小規模建築物基礎設計 指針,pp.186,2008.2. (2018. 8.31 受付)

VERTICAL LOADING TEST OF TAPERED WOODEN PILE ON SOFT GROUND

Kaori MIMURA, Yosuke MIZUTANI, Hiroshi NAKAMURA,

Tomoharu ITO and Tadashi HARA

In recent years, the effectiveness of the wood that can store greenhouse gas carbon dioxide for a long term is reviewed while early solution to serious climate change becomes the urgent problem. However, wood is a natural material and has concerns about variations in strength and shape, so it is designed on the safe side using the smaller diameter. Therefore, it was inferior to other construction method due to cost aspect etc. In this study, two kinds of straight timber and tapered timber were driven in soft ground about Saitama Prefecture Yashio City and Kumamoto Prefecture Kumamoto City, and bearing capacity was ob-tained by loading test. As a result, it was found that the bearing capacity in the tapered timber was the highest. Furthermore, the validity of the timber pile design was considered by finding the bearing capaci-ty from the formula of the guidelines.

参照

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