Ⅱ−1
自己評価を含めた学習ノートを作成する
一回一回の授業で、生徒は何を学び、何 に疑問を持ったのかを「学習ノート」を点 検することにより、生徒の理解状況と教師 の授業展開上の問題点を把握する。また、 生徒自身は、それを記入することで自己の 学習状況を点検・評価することにもなる。 1 「学習ノート」について ( ) 1クラスに1 ノートを3冊用意し、授業 終了時にあらかじめ決めた順番に従い、3 人の生徒に学習ノート(<資料>参照)を渡 していく。その理由は、授業前に渡すと授 業中に記入してしまう生徒がいるからであ る。また、生徒にノートに記入させること で授業を振り返らせる効果も期待してい る。本来なら全生徒に渡し、回収したい。 しかし、教師が限られた時間内で処理する のが困難なことと、丁寧に見る必要がある ことなどを考慮すると、1時間の授業につ き3名程度に書かせるのが適当である。こ の方法によれば、2単位授業では、1人あ たり1年間に20回、3単位授業なら30回 程度ノート当番が回ってくることになる。 必ずコメント ( ) 回収した学習ノートは、2 。これは生徒の学習に対 を朱書きして返す 。 、 する一つの評価でもある 今日の高校生は 小・中学校で意欲、関心、態度などをさま ざまな方法で評価されてきている。このよ うな評価に慣れている生徒にとって、内容 に関する感想や意見などを好意的に評価し てもらうことは、次回記入することへの動 機づけ(インセンティブ)になる。 また、生徒の疑問に対して回答が適切に 行われれば、生徒の学習意欲を向上させ、 新たな分野への関心を深めることにもな る。地理歴史科・公民科は知識伝達的で一 方通行的な授業になりがちな教科である。 うえでも効果 双方向的な人間関係をつくる がある。 ( ) 今後の教育は、知識をいかにたくさん3 覚えるかではなく、知識をどのように応用 し、利用するかに重点が置かれる。生徒に 授業を振り返らせ、学習したことを考えさ せる方法として学習ノートを利用すること ができる。生徒は、自分自身が何が理解で きて、何が理解できていないかが分からな い場合がある。自分自身は、今何がわから 疑問点 ないのかを常に意識させることで、 とすることができる。 克服の一助 ( ) 生徒は、評価欄(学習ノート④)に適4 切に自己評価することが多い。ただ、いい 加減な評価をする生徒もいるのでうまく書 かせる工夫が必要である。 2 学習ノート活用の実際 ( )まず学習当日、自分が何を学んだか1 を確認させるために、学習内容を記録さ せる(①)。さらにその学習中に生じた疑 問点を記録させる(②)。その疑問点を教 師が確認し、回答を朱書きすることによ り生徒の学習を追跡調査する。 ( ) 次に、生徒に1時間の学習内容の難2 易度を判定させる(③)。およそ3段階と し、教師側の授業展開の反省材料として 生かす。その一方で、生徒自身の自己評 価も求める(④)。これもおよそ3段階と して、学習終了後自分自身がどれだけの ものを得たか、内容をどれだけ理解した かを生徒の自己反省として生かす。 ( ) 最後に当日の授業の感想や意見を書3 かせ、授業から得た結果を自らがどのよ う に 受 け 止 め て い る か を 確 認 さ せ る (⑤)。またこれら項目以外で、心に残る ものを何でも書かせる場を設ける(⑥)。3 個人ノート ( ) 各個人のノートを提出させ、生徒の学1 習状況の確認と学習の誤りの修正を行う。 単に検印を押すだけのノート提出は実質的 な効果はなく、生徒自身もきれいなノート をつくることのみに関心を持つので勧めら れない。また一度にクラス全員のノートを 提出させてもコメントは書けないし、丁寧 に見ることもできない。せいぜい1日に4 ∼5冊程度にした方がよい。そのかわり回 収は順番でもランダムでもよいから毎時間 行う。そして1行でも2行でもいいから必 必ずほ ずコメントを入れておく。そこでは が大切である。 める部分を記しておくこと 生徒に先生から認められているという意識 を持たせるためである。 授業メモなどの本人なりの疑問やポイン トを書いたり、記録を残すノートのとり方 についても指導する。疑問や何気ない落書 きや意見などにもコメントをすると生徒も いろいろ書くようになり、コミュニケーシ ョンも図られる。 ( ) ノート点検をしていて意外に多いの2 が、誤字である。板書されたものをそのま ま写しているにもかかわらず、誤字の多い ノートがある。この誤字も丁寧に見る必要 がある。さらに、他の手本になるような工 夫を凝らしたノートもあり、生徒の一面を 垣間見ることができる。優れたものは、ク ラスで紹介する。 〈資料〉
1年
倫理学習ノート
授業内容をどれだけ理解したか?④
月 日 曜日 番 氏名 a理解できた b多少分からないところがあった 本日のテーマ・単元 c全く理解できなかった 本日、何を学んだか? 本日の授業の意見や感想は?①
⑤
本日、疑問に思ったこと②
質問、その他何でも⑥
授業内容は、どのくらい難しかったか?③
a易しかった bやや難しかった c大変難しかったⅡ−2
生徒の素朴な疑問を生かす
日々の歴史授業では、限られた時間数 の中で教科書の内容をとにかく終了するこ とに気が向き、ややもすると生徒の理解を 確認できないままに授業を進めてしまうこ とがある。知識詰め込み型の授業展開にな りがちであり、取り扱う地域や時代も偏り がちなのである。こうした授業展開では、 生徒の歴史に対する「なぜ?」という素朴 な疑問の芽を摘み取ってしまい、学ぶ喜び を奪い取っている可能性がある。 そこで、生徒がふと思う素朴な疑問に目 を向け、それに答えることにより、また、 生徒自身がその疑問を調べ、自ら解決する ことにより、歴史への関心を高め、歴史的 思考力が育成できる授業の工夫について考 える。 1 「予習ノート」の作成 (1) 方法 生徒は、授業で扱う範囲をあらかじめ教 科書を中心に資料集、用語集などを参考に しながらノートにまとめて授業に臨む。そ の際、必ず予習の段階で生じた「なぜ」を ノートに書き留めておく。 (2) 効果 生徒は漫然と授業に臨むのではなく、疑 問を持って臨むことにより、より主体的な 授業参加となる。 あらかじめ基礎的知識を持って授業に臨 むことにより授業の円滑化・効率化が図ら れる。また、予習してあることにより板書 事項の簡略化が図られ、生徒も板書事項の 書き写しの作業が軽減され、教師の講義に 集中できる。 (3) 予習ノートの評価 毎時間の予習のチェックは、授業の進度 の妨げとなるため適宜行うと良い。予習ノ ートを点検し、評価の対象とすることで生 徒の意欲づけにすることもできる。 2 「世界史授業ノート<なぜ>」 (1) 方法 ① 各クラスに<世界史ノート「なぜ」>を 置き、生徒に自由に授業の中で生じた疑問 点を記入させる。その際には必ず記名をさ せる。 ② ノート係の生徒を置き、ノートの管理 を任せるとともに、定期的に教師に提出さ せる。 ③ 生徒から出された疑問点は授業の復習 の際に生かすとともに、適切なものを選び 、 。 長期休業中の課題とし 生徒に考えさせる ④ また、定期的に「世界史通信」を発行 し生徒の疑問に答える努力も必要である。 (2) ねらい 生徒の素朴な疑問を把握する手段とす る。疑問を発表する場所を設けることによ り、疑問を持つ習慣を付け、主体的な授業 参加を促す。教える側からすれば、疑問に 答える中で生徒とのコミュニケーションを 培う。 (3) 課題 歴史の好きな特定の生徒が良い疑問を出 す傾向がある。質の高い疑問をクラスで提 示することで、関心の低い生徒をも授業に 引きつけ、前向きに取り組むよう指導した い。素朴な疑問を生かした授業展開例「アヘン戦争と南京条約」
時 間 学習内容と活動 導入 予習ノ−トの確認 (1)18世紀末の清朝の混乱 ・どうして民衆は白蓮教徒の乱などを起こしたのか。 (2)イギリスの三角貿易 ・なぜ、18世紀後半になるとイギリスは中国貿易を独占できたのか。 展 ・なぜ、清朝は当時貿易制限をしていたのか。 ・教科書にある「中華の立場」とはどのような立場のことか。 ・どうしてイギリスでは、お茶を飲むようになったのか。当時、イギリスが輸入 していた「茶」は緑茶か。緑茶と紅茶の違いはなにか。 ・アヘンとはどのようなものか。アヘンとモルヒネやヘロインとは同じか。ヘロ 開 インとヒロイン(女主人公)とは同じような音だが、関係はあるのか。 ・なぜ、イギリスはインドにアヘンを作らせたのか。 ・なぜ、イギリスは三角貿易のような回りくどいことをしたのか。 ・中国に持ち込まれたアヘンの量はどれくらいか。 ・銀の流出は、民衆にとってどんな影響を及ぼすのか 「地丁銀制」はどう影響。 を受けたのか。 ・なぜ、イギリス産の綿布は中国で売れなかったのか。 (3)アヘン戦争 ・イギリス議会では、アヘンのために戦争をすることは不名誉なことである、と する意見もあったがなぜ開戦したのか。チャーチスト運動の高揚と関係がある のか。 ・イギリスの勝因、清の敗因は何か。武器の違いはどうだったのか。 ・戦争が始まると、中国政府は、なぜ林則徐を罷免したのか。 ・平英団とはどんな意味か。なぜ平英団と中国の正規軍とは団結して戦わなかっ たのか。 (4)南京条約 ・関税自主権を奪われることがなぜ不平等なのか。関税自主権とは何か。 ・なぜイギリスは香港を奪ったのか。租界とは何か。 ・なぜ、イギリスは上海を開港させたのか。 ・賠償金1200万両って現在の日本円でいくらくらいか。 ・大国中国が敗れたことは日本にどのような影響を及ぼしたのか。 ・戦争後アヘンの輸入はどうなったのか 。。 まとめ 次回の授業範囲の予習を指示する。 ( )から( )は予習ノ−トおよび1 4 「世界史ノ−ト<なぜ>」に記された生徒の疑問点の一部 である。生徒自身から出された疑問点を授業の中に適切に組み入れることにより、授業が より興味深くなるように思われる。Ⅱ−3
発問を工夫して生徒に発表させる
「自ら学び、自ら考え判断する力を育て る」という観点から、生徒が質問にきちん と答えることができるようになる授業展開 を考えてみたい。 1 ポイント 質問に答えられるようになるには、次の 4つのことが必要である。 知識 (1) 知らないことは答えられない。従って、 答える道具としての、また、判断の材料と しての基礎知識は不可欠である。 表現力 (2) 自分の思っていることを正確に相手に伝 えることは難しい。従って段階を追って繰 り返し練習することが大切である。まず、 思っていることを文字にする練習(書くこ と)から始める。書くことにより、修正も できる。また、書く場所をプリントだけで なく、前に出て、黒板に書かせるなど変え ることも効果的である。 統合力 (3) 自分の意見を客観視できるようにする。 そのためには他人の意見を聞き、比較・分 、 。 析し 統合する力を養うことが必要である 、 。 そこで 意見交換・討論する機会を設ける 度胸 (4) 人前で話すのも訓練が必要である。これ 少人数のグル も段階をおっていく。まず、 話す。ここでは気楽に話すことを ープ内で クラス全 目的とする。そして慣れてきたら の発表に移る。 員の前で この4点を念頭において、発問を工夫し プリントを補助手段として、生徒に発表さ せる授業展開を考えてみる。 2 質問の留意点 。 (1) どんな質問をするのか 中心となる箇所(キーポイント)を明確 にする 「なぜ○○は、キーポイントを重。 んじたのか?」 ・そのキーポイントはできるだけ平易な言 葉で表現する。 ・そのキーポイントを念頭において、身近 な質問を提示する。 ・質問は具体的なものにし、体験を語らせ ると様々な答えが期待できる。 どう導いていくのか。 (2) ・思っていることを文字にさせる。段階的 に質問が設定されたプリントを用いる。こ 、 。 のプリントは あとで見直すこともできる 発表の機会を設け、思っていることを言 葉にする。聞く側の生徒は気が付いたこと 、 。 をメモする習慣をつけ 聞き取る力を養う ・共通点、相違点を見つける。発表を聞く ことにより、自分の意見を軌道修正し、客 観的な意見に修正する。 。 (3) どのように授業をまとめるか ・発表の様子をほめる。 ・多様な意見が出た場合に備え、論点を設 定しておく。 ・プリントを回収し、代表的な意見、少数 意見などを次回の授業で紹介し、導入とす る。 その他 (4) ・発表は授業の後半で行い、時間調整をそ こで行う。何度か行うことで慣れさせる。(倫理:ソクラテス−2時間…本時はその1時間目)
授業展開例
指導内容 学 習 活 動 指導上の留意点 導 エピソード ・寒中でも素足、悪妻クサンチッペ ・疑問を残して考え 入 を紹介 …なお平然とするソクラテス(死刑でも) るきっかけにす (15分) →一体ソクラテスはどんな人なんだろう? る。 ソクラテス 講義 ・「 知 り た い ! 」を が活動を始 「彼以上の知者はいない」との神託 矛 キーポイントにす めるまでの 「自分は知者ではない」という自覚 盾 る。 様子 ↓知りたい!(神託の意味とは?) 探求心 展 ( 分)5 ①自分以上の知者を探そう!: →アテネ市民の思い違いを知る ・堕落したアテネの 大切なものを何でもないものと、 民主政に触れる。 何でもないものを何かしらのものと。 ・ 汝自身を知れ」「 ↓さらに知りたい!(神の意図とは?) の新解釈 ②思い違いを正そう!:使命感 ・ソクラテスの思想 →気付くきっかけをつくる(問答法) は、新たな疑問・ →無知の自覚から魂は磨かれる(徳) 解釈を加えて発展 →徳があってこそ金銭や名誉に価値あり する。 開 プリントによる学習 ソクラテス が「知りた 「なぜソクラテスはしつこく訊ねたか?」 ・知ることは面白い という =途中でガイドする質問を口頭でする= ことと同時に使命 い」 気持ちを重 「なぜ芸能レポータの取材もしつこいか?」 という論点で。 んじた理由 「新聞記者の取材は?警察の取調べは?」 ・ガイドの質問は生 を考える。 「しつこく訊ねて彼らは何を得るのか?」 徒の状況により調 (25分) ・質問の答えを記入し、自分の考えを整理 整する。 =自分の意見を発表 発表学習 最初は4∼5人のグループ内で発表 ・時間に応じて発表 慣れたらクラス全員の前で発表する する人数を指定 ・発表者との共通点、相違点をメモする。 ・様子を見て、軌道 ・自分の意見をまとめ直す。 修正する。 ま ソクラテス ・知りたい!(愛知)=前進・発展する力 ・発表の様子を評価 と から学んだ 物事の正しい使い方を身につけること する。 め こと 思い違いはないかと絶えず確認すること ・プリントを回収し ( 分)5 ⇒「知りたい!」が幸福へのカギとなる 評価して返却。Ⅱ−4
授業内小テストを工夫する
「歴史の学習は歴史事象を暗記すること ではない 」とよく言われるが、歴史は細。 かい歴史的事象(要素)から構成されてお り、歴史の因果を考えたり、現代との比較 や歴史的教訓をその中から学ぶ際にも、歴 史事象の構成要素を踏まえる必要がある。 そのため、授業内において小単元ごとに小 テストを実施し、基礎的な歴史事実を確認 することが望ましい。ここでは従来の小テ 、 「 、 ストの在り方について 生徒が 自ら学び 自ら考える」姿勢を育成するという観点か ら再考してみる。 1 小テストの目的 ( ) その後の歴史に大きな影響を与えた事1 件の原因と結果を中心に小テストを構成 し、生徒の歴史的思考力を育成するととも に、主体的に授業に参加する姿勢を育成す る。 ( ) 小テストの一部において、生徒に歴史2 の流れを記述させることにより単に歴史事 象を構成する要素を問うだけでなく、総合 的に歴史を把握する能力を養う。また、生 徒の表現力をも育成する。 2 小テストの方法および留意点 ( ) 所用時間は1 10 分以内で終了できる程 度のものとし、授業進度に大きな影響を与 えないようにする。1回のテストの出題範 囲や問題数も生徒の負担が過重にならない ように小単元ごとにし、せいぜい 20 問程 度にする。また、生徒が、適切な準備をし て臨めば、合格できる程度の難易とする。 ( ) 基準点を決めておき、基準点に達しな2 い生徒には追試験や口頭試験等を行い、基 礎的基本的事項の定着を図る。 ( ) 小テストの取り組み状況は、学期末の3 評価や学年末の評定に加味することによ り、生徒の学習の励みとする。 ( ) 市販のテスト問題を利用するよりも担4 当教師自らが作成したテストの方が生徒の レベルにも合い、生徒側の取り組む姿勢も 良くなる。日々の授業においても、その時 代を特徴づけるキ−ワ−ドや歴史知識の構 造<右下図参照>を意識して授業を展開する と、生徒にも授業のポイントがつかみやす くなる。 3 小テストの形式 生徒のテスト慣れを防ぐ意味で、多様な 問題形式をとるよう工夫する。 一問一答(短答)形式 ・ ∼は何か(誰か、いつか、どこか )、 完成式(空欄補充) ・ 文中の空所ア∼エに適語を補え。 訂正式 ・ 文中の誤りを1カ所、訂正せよ。 真偽式(正誤式) ・ 文が正しければ⃝、間違っていれば ×をつけよ。 組み合わせ式 ・ 下から選び、その番号を答えよ。 再配列式 ・ 古い順に並べよ。 などを使って ・地図や写真、年表、史料 出題する形式 4 効果 このような小テストを繰り返すうちに生 。 、 徒の授業に向かう態度が変化する 例えば 教師が指示をしないのに教科書の重要箇所 に自主的にアンダ−ラインを引く生徒、機 械的に板書事項をノ−トに書き写すだけで なく、講義を積極的に聴きポイントを書き 留める生徒などが現れ、主体的に授業に臨 む姿勢がみられるようになる。授業内小テスト実施例
単元名「ギリシア世界」
( 、 ( ) 教科書のゴシック文字を中心に一問一答形式で問題を作成し1 、歴史の構成要素 いつ を行う。また、地理的認識を深める意味で必要に応じて どこで、誰が、何をした)の確認 地図問題を付け加える。 ( ) その時代に大きな影響を与えた事件について2 原因、結果、その影響を確認する。 また、1つの制度が成立する原因、成立過程、その制度がどのように実施されたかを問 う。問題の内容、形式は事前に生徒に示しておく。 サラミス湾の海戦の勝利は、アテネの民主政にどのような影響を与えたか 「例題」 説明せよ。 「解答例」 三段櫂船のこぎ手として活躍した無産市民の発言力が増した。それによ り彼らは選挙権を手に入れた。このことにより、アテネの民主政は一部の貴 族だけでない直接民主政に発展した。 今までに得た知識を使いその時代を表現させる(時 ( ) 生徒にある特定の時代を提示し、3 。そのことにより生徒が、その時代の知識の定着度を体系的に(自らの言 代・事象釈釈) 葉として)とらえているかどうか確認できる。また、生徒はその時代の証言者のような思 いを持ち、より強くその時代をイメ−ジでき、表現力をも育成できる。 紀元前5世紀の中頃から紀元前4世紀末のアテネについて述べよ。 「例題」 (150字程度) ペロポネソス戦争の最中にペリクレスを失ったアテネは、デマゴ−ゴス 「解答例」 による衆愚政治に陥った。かつての重装歩兵に代わり、帰属意識の薄い傭 兵を雇い対外戦争に臨んだ。その結果、アテネは没落しマケドニアに滅ぼ された。 歴史知識の構造 【参考】 時代解釈 事象解釈 事象記述(下線部は事象の構成要素) 時代 ギリシア・ポリス社会は、中小土地所有市民を中核とする戦士共同体であり、戦士 解釈 の任務を果たす限りにおいて、自由と参政権が保障された。 事象 ポリスは、ポリス間の抗争の慢性化と貨幣経済の浸透による中小土地所有 解釈 民の没落により重装歩兵市民団が解体すると、衰亡していった。 、 。 ・前431年 アテネとスパルタ間にペロポネソス戦争が起こった 事象 ・ペロポネソス戦争後、ポリス間の抗争が慢性化した。 記述 ・市民皆兵の原則が崩れ、戦闘には、傭兵が多数用いられた。 ・前338年、ギリシア連合軍は、カイロネイアで、マケドニアに 敗北した。Ⅱ−5
史料を読ませ、考えさせたい
1 史料について 史料とは歴史を組み立てる骨組みであ り、また、我々に正しい歴史認識を与えて くれるものである。従って、史料を抜きに した歴史の学習は考えられない。 歴史は、史料の検討を経ることによって 書き換えられる一方、史料をもとにして研 究され、定着した研究成果を教科書の記述 。 、 、 にして教えている 従って 原点に戻って 生徒自身が自ら史料を読解、分析すること によって、なぜ、教科書に記述されるよう な「事実」になるのかを知り、そのことに 、「 、 」 よって 自ら学び 自ら考え判断する力 を育てていくことができる。 2 史料の学習について 日本史の授業においては、多くの学校で 『 』 。 補助教材として 史料集 を使用している 100 このなかに掲載されている史料の数は 近くに及んでおり、時間的な制約もありそ の一つ一つを丹念に扱うことは難しい。そ のため、史料の出典、生み出された歴史的 背景、口語訳、内容の説明、歴史的意義、 後世に与えた影響などについて、教師が一 方的に説明を加えている場合が多い。この ような授業形態からは、生徒が自ら学び、 考える姿勢は生まれない。従って、まず、 生徒自身で史料を読ませることが重要であ ろう。そのうえで次のようなことに注意し ながら、史料を使った日本史の授業を展開 していきたい。 3 史料選択上の留意点 生徒に史料を提示する場合、次のような 点に留意したい。 ・どのような授業を構想し、その構想の なかで、どのように史料を生かしてい くのか。 ・生徒にとって、歴史的なイメージが浮 かびやすい史料であるか。 ・史料が生徒の読み取り能力を超えてい ないか。また、その史料を読むことに よって、その背景にある歴史的事実や 史料の意義が理解できるか。 4 指導過程 ( ) 歴史的知識の確認…発問などによっ1 て、これまでの学習に対する理解度・定 着度を確認する。 ( ) 史料の前提となる歴史的事実を学習さ2 せる。 ( ) 生徒自身に史料を読ませる。最初は教3 師からの説明をしないほうが望ましい。 ( ) 史料の出典、内容、歴史的背景などに4 ついて解説する。 、 。 ( ) 生徒に 史料に関する疑問を提起する5 ( ) 生徒自身によってその疑問を解決させ6 る。 ( ) 史料から読み取ることができる歴史的7 事実や全体像について説明を加えてい く。 5 留意点 補助教材として、史料集に掲載されてい ない史料を見つけ、生徒に紹介することも 必要であろう。その際には、生徒に古語辞 典を持たせるなどして、自分の力で史料を 読み取ろうとする姿勢を育むことも重要で ある。また、生徒に親しみを持たせるため に、身近な史料として、愛知県内の史料を 生徒に紹介するのもよい その際には。 、『愛 知県史』や各市町村史が参考になる。史料を使った授業展開例(鎌倉時代の荘園の武士の関係について考える )
。
過程 指 導 内 容 と 活 動 留 意 点 ・ 資 料 地頭の設置について復習させる。 公武二重支配とはどのよう 導入 発問①地頭の役割・権限は何か。 なことをいうのか。また、そ の原因はどこにあるのか、考 発問②地頭の設置後、どのような問題が起こ えさせる。 ってきたか (地頭の非法)。 ・鎌倉時代のある史料を読ませながら、わか 史料の写真を見せることに らない用語をあげさせる。 よって、身近なものとしてと らえさせる。 佐渡国雑掌申、年貢未進 史料の読みについては、説 展開 事 重訴状遣之、結解以後無 明を加えておく。 沙汰云々、甚無謂、早速可令究済 状、依仰執達如件、 東寺百合文書・関東御教書 正応四年八月五日 陸奥守(花押) についても説明する。 (1291) 相模守(花押) 一宮地頭殿 (東寺百合文書25『関東御教書 )』 ・史料の内容について発問しながら、時代背 〔社会関係〕 景や語句などを説明する。 京 都 鎌倉幕府 発問③この史料は誰から誰にあてた書状であ るか。 ↓ 発問④陸奥守、相模守とはどのような肩書を 東 寺 (守 護) 持ったどのような人物であるか。 発問⑤雑掌とはどのような役割、任務を持っ ↓ ↑年貢 ↓ た人々か。 発問⑥東寺百合文書とはどのような史料であ 雑 掌 ← 地 頭 るか。 『一宮地頭による年貢の徴収が順調でなかっ たため、東寺の雑掌の訴えによって、幕府が 年貢の納入を一宮地頭に命じた 』。 荘園 年貢 発問⑦当時の社会関係を図示させる。 終結 わずかな史料から、多くの事実が推測できる 県内の荘園については、『愛 ことを理解させる。 知県史』第1巻第2,3期な 愛知県内の他の史料を紹介する。 どを参考にするとよい。Ⅱ−6
時代を代表する人物により、生徒の興味を引き出したい
平常の日本史の授業においては、通史を 追う形で授業が進められることが多いが、 ともすれば経過を追うばかりで、そこに現 れてくる歴史的事項や人物、それを取り巻 く因果関係などを知識として詰め込むとい うことになりかねない。こうした場合は授 業そのものが平板となり、歴史の豊かさを 感じさせないものとなる危険性も高い。生 徒にとっては、一方的な受け身の学習に終 始し、そこに登場する人間やその営みに感 動を覚えないものとなってしまう。そのよ うな難点を補うものとして、人物を中心に した学習がある。 1 人物学習とは 歴史を動かすのは人である。人の考え方 や行動によって、歴史は動いていく。しか も、小説やドラマ、映画の主人公として、 取り上げられることも多く、彼らに触れる ことにより歴史に対する親近感も生まれて くる。歴史上の人物に焦点を当てることに よって、歴史に興味・関心を抱かせ,学習 過程を通じて生徒自身が人物に共感や反発 を感じながら、自らの生き方を内省する姿 勢を育むことができる。 2 通史学習と人物学習 人物学習を行う場合に問題となるのは、 通史学習との関係であるが、次の3形態が 考えられる。 (1) 年間の授業をすべて人物学習により構 成する方法。 (2) 人物学習と通史学習を並行して行う方 法。 (3) 通史学習のなかに人物学習を取り込む 方法。 このなかで、多く取り上げられるのが3 番目の方法である。この方法の利点は,年 間指導計画のなかに組み込むことが容易で あり、通史学習と人物学習が互いに補完的 役割を果たし、平板な通史学習に変化を与 えることができることがあげられる。 3 取り上げる人物の留意点と具体例 次のような観点で、取り上げる人物を選 定したい。 ・歴史上著名な人物であり、その生き方 が比較的明確で共感しやすく、その人 物に関する逸話も多い。 ・歴史の変革期に生き、その中で一定の 働きをしている。 ・その人物の生涯を追うことで、歴史の 核心や流れをつかむことができる。 ・その人物と比較できる人物が存在して いる。 ・郷土を代表する人物で生徒が親近感を 持つことができる。 以下のような人物は好例である。 聖徳太子と蘇我馬子、平清盛と源頼朝、 織田信長・豊臣秀吉・徳川家康、西郷隆盛 と大久保利通 4 指導過程の例 (1)生徒に質問し、その人物のイメージ を仮に形成する。 (2)その人物に関する逸話を紹介する。 (3)その人物の業績を取り上げ、歴史的 な役割を説明する。 、 (4)その人物に対する疑問点を投げかけ 生徒に考えさせたうえで解答を示す。 (5)その人物の評価の視点を与える。 (6)余裕があれば、取り上げた人物に関 する図書を読ませたり、ビデオを見せ る。人物を中心とした授業展開例(大久保利通と西郷隆盛)
過程 学 習 内 容 と 活 動 留 意 点 導 大久保と西郷について 発問①両者について、思い浮かべられることをあ 入 西郷隆盛の知名度が大久保利 10 げよ。 分 両者に関係する史跡(上野公園銅像、城山など) 通に比べて、高いことに気づ 両者の性格を示すエピソード かせる。 展 ( )両者の生い立ち…薩摩藩下級武士の出身1 どのような経緯で藩内の主導 開 西郷… 斉彬が登用,自殺未遂,2度の流罪 権を握ったか説明する。 大久保…久光が登用,西郷を救う。 ( )倒幕運動 倒幕運動で、二人はどのよう 35 2 分 薩摩藩 公武合体運動→倒幕運動 な役割を果たしたか。 ( )3 1866∼68年の動向 西郷が軍事的指導者として 蛤御門の変,薩長同盟,倒幕の密勅,大政奉還 活躍したのに対して,大久 王政復古の大号令,御箇条の御誓文,戊辰戦争 保は朝廷工作に終始した。 ( )明治初期の行動(4 1871∼1873) 廃藩置県,徴兵令,地租改正 明治初期の両者の功績・行動 西郷… 「私学校」設立,留守政府の主導権 を追いながら,両者が対立す 大久保…欧米へ派遣,参議就任 るに至った原因について生徒 ( )両者の対立5 に考えさせる。 西郷… 征韓論から西南戦争敗北,自害 西南戦争に勝利した大久保が 大久保…征韓論排斥から西南戦争制圧,暗殺 翌年,暗殺されたことに注目 させたい。 , ( )幕末∼明治初めの両者に関する学習をふまえ6 次の発問を行い,生徒に考えさせる。 2人の相違点 発問②西郷隆盛がなぜ,多くの国民に親しまれて 大久保…富国強兵政策を導 いるのか。その一方で,大久保利通は人気 入して,近代化を がないのはなぜか。 図る。 発問③両者の共通点は何か。 西郷…封建的発想から脱却 発問④両者は最終的にどのような政府をめざした できていない。 のか。また,後世にどのような影響をもた らしたか。 発問⑤両者のどちらを支持するか。 終結 疑問について,いろいろな考え方を紹介しなが 生徒に生き方を考えさせるこ 5分 ら,幕末から明治初期の政治をまとめる。 とが大切である。Ⅱ−7
生徒が自ら調べ、発表する授業を行いたい
知識教授型授業においては、知的好奇心 を触発されず、授業への参加意欲があまり 見られない生徒たちにおいても、調べ学習 や発表学習を導入することで、興味・関心 を持ち、自ら調べ、考え、授業に臨むよう になるものである。 1 他者理解から自己表現へ 専門知識の一方的伝達という授業から< 行為する知>ということを念頭に置いた授 業への転換が必要である。知とは行為なの であり、その行為は、必然的に他者とのコ ミュニケーションを含み、新しい認識を創 造する。そして、それが他者に向かっての <論>として成り立つためには、次の4点が 必要である。 新しい現象や事実の「発見」 (1)発見 の報告。 ある現象や事実について新し (2)発明 「 」 、 い解釈や説明理論を 発明 し 新たな理解を提示する。 新旧のさまざまな現象 (3)総合・関連 や事実、さまざまな解釈や説明 理論、それらを関連させ、総合 することで新たな理解を提示す る。 上記の発見、発明、 (4)批判・再解釈 総合・関連についての批判や評 価、説明や解析。 この( )から( )の行為を授業の場で展開1 4 すること、すなわち「他者=教師」が一方 的に知識を提供する授業から 「自己=生、 徒」が自ら積極的に調べ、発表する主題学 習の場などを設定していく授業への転換と 理解することが必要である。 2 調査・発表学習の効果 日本史や世界史の授業で、各時代の文化 、 、 、 や その時代背景となる社会経済 衣食住 産業技術の発展、信仰など生徒たちが自ら 関心を寄せるものを調べ、発表させること 、 、 によって 生徒自身の知的好奇心を刺激し 調べる楽しみを実感させることができる。 さらにそれを共同作業で行い、発表するこ とで、他者理解・自己表現をともに満足さ せる学習を行うことができる。 3 調査・発表学習の指導計画 ( ) 主題を提示し、生徒たちに何を調べる1 かを決めさせ、それに基づき調査グループ を編成する。 ( ) 生徒たちを各グループに分け、図書館2 などで調べさせる。 ( ) 生徒たちに調べた結果を発表させる。3 ( ) 発表結果に基づき、自己評価並びに他4 者をも評価させる。 4 調査・発表学習実施の際の注意点 ・ はじめは、特にコメントを加えず、自 由な発想で考えさせる。調べる内容が絞 れない場合は、方向づけをする。 ・ 適切な資料を調べることができるよう にアドバイスし、また生徒と一緒になっ て考える。その際、主題から調査テーマ がそれないように助言する。 ・ OHPの使用方法なども指導する。 ・ 聴く態度の育成に努める。 ・ 発表内容や方法等について、良かった 点を評価する。 ・ 全体として、生徒たち自身が 「知的、 な楽しみ」を見出すことができ、自らの 在り方生き方を考えることのできるよう にアドバイスする。自ら調べ、それを発表する授業案例(主題学習: 江戸時代の教育 )
「
」
時間 学 習 内 容 と 活 動 留 意 点 ・ 資 料 。 1 提示された主題を吟味する 1 ( )元禄・化政文化期の時代背景、文化1 ( )幕藩体制が行き詰まってきた時期1 時 の特色について考える。 であることを考えさせる。 間 ( )経済の発達のなかで、都市民を中心 ( )現実肯定的な「浮世」という考え2 2 に現世肯定的な文化、また批判精神が育 が、やがて退廃的・批判的傾向の文化 っていたことを理解する。 へ変化していくことを考えさせる。 2 寺子屋教育について理解する。 庶民教育の在り方を考える。学習内容 読み書き算盤、さらには現在の教育分 について仮説を立てる。 類と関連させる。 3 調査事項を決定する。 江戸時代の文化形成者とそれを支えた 調べる内容を絞れるように、方向付け 時代背景について考え、何を調べるかを をする。 決める。 4 図書館で調べる。 2 ( )種々の資料を収集する。 ( )適切な資料に当たれるよう(主題か ・ 1 1 3 らそれないよう)助言し、また、生徒 時 と一緒になって考える。 間 ( )調べた内容をプリントしたり、B紙2 ( )個性的で多様な発表方法もアドバ2 等にまとめる。 イスする。 5 調べた内容について発表する。 4 。 ・ ( )他のグループの発表を聴き、質問内1 ( )聞いている側も積極的に参加する1 5 容を1つは考える。 時 ( )さまざまな方法を駆使して調べ、内2 ( )発表内容や方法等について、良か2 間 容を発表する。 った点を評価する。 ( )「知的な楽しみ」が文化発展の源 6 江戸文化の発展の原因を考える。 1 6 ( )何が、情熱を導き出したか。1 であることに気づかせる。 時 ( )その後の社会にいかなる影響を与え2 ( )生徒自らの「文化・学問に対する2 間 たか。 姿勢」を振り返らせる。 ( )尾張の人々(地域の人々)の、教育3 ( )尾張の人々の教育や学問に関する3 、 、 への情熱について考える。 ビデオを提示して その意識の高さと それを継承していくことの大切さを認 識させる。 7 自己評価と他者の発表を評価する。Ⅱ−8
追体験のできる場を設定したい
歴史の授業においては、過去の事実から 何を学び、現在の自分たちの生活改善にい かに役立てていくのかを考えることが重要 である。そのためには、過去の事実を傍観 、 、 させるのではなく 自分の問題として考え 判断させるように授業内容や形態を変えな くてはならない。そうした経験が、歴史か ら教訓を学ぶ姿勢を作ることになる。 1 教材作製の手順 教材の作製については、次の2段階をと る。 ( ) 過去の事件を自分の問題として考えさ1 せるために、難しい言葉や概念を簡単な言 葉に置き換え、理解できるようにする。 、 、 ただし 言葉を置き換えることによって 本来の意味と違ってこないよう注意する。 、 ( )2 過去の事実を生徒に追体験させたり 追思考させたりすることにより歴史に参加 「 自 分 な ら ど の よ う に 考 させる。その際、 ということ え、どのように行動したのか」 を明らかにさせる。また、事実・史料に基 づきながらも生徒の自由な発想を尊重した い。 2 方法 歴史的事実を通して生徒に考えさせるた めには、実際に判断する場面を設定する必 要がある。具体的な場面としては、歴史上 の選挙や国民投票、国会での議論、太平洋 戦争直前の御前会議、極東裁判の場面など がこれにあたる。そのような場面で、実際 に「自分が投票する」という場面を想定し たり 「戦争反対の立場で演説する」とい、 う場を与えたりすることで、自ら考え、判 断するという行為を歴史の場面を舞台にし て行わせることができる。 また、用意する史料・資料については、 できるだけその時代、その場所にいた人の 考えを知ることができるものが望ましい。 例えば、その時代の人間が書いた文章を用 意したり、その国の教科書を用いたりする ことがよい。 生徒の考え、判断を知る方法としては、 提出が一般的であるが、学期に1 レポート 回くらいは、グループ発表や、討論、また は、選挙を再現するようなロールプレイを 行うこともできる。 3 世界史における追体験場面の例 ・王安石の新法の施行に対して、旧法党 と新法党が論戦を行う。 ・第一次世界大戦後のパリ講和会議にお ける各国代表を演じさせる。 ・アメリカ南北戦争の時の北部代表と南 部代表とをホワイトハウスで議論させ る。 ・アヘン戦争後の、清とイギリスとの講 和条約締結の模様を演じさせる。 ・イギリスのチャーチスト運動の指導者 として演説をさせる。 4 評価 レポート提出では、以下の視点で評価す る。 ・事実に基づいて論理が展開されている か。 ・自分自身の考えが反映されているか。 ・自分の考え方以外の考え方にも配慮さ れているか。 これらの評価の観点ををあらかじめ提示 し、事後に優秀な作品を紹介することによ り、生徒に対して目標、判断基準を示すこ とができる。ロールプレイにより追体験する:世界史「フランス2月革命期(1848年)」
★本時の目標( )それぞれ立場の違いや役割を明確にすることによって、考える目標を明1 らかにする。 ( )選挙に向けての政策を検討し、実際に投票を行うことによって、追体験2 させる。 説 明 事 項 質 問 事 項 君たちの目的は政府から社会主義者を排除する (1)役割の確認 【ブルジョワ】… ことである。選挙までには、農民の支持をとりつけねばならない。 …君たちの目的は、貧富の差がない理想社会の 【社会主義者】 建設である。労働者を保護することが必要である。 …君たちは、強力な武力をもって二月革命の達成に 【労働者】 。 。 貢献した 後は自分たちの権利の拡大に努めなければならない 【農民】…君たちは、二月革命では、活躍ができなかった。こ れからの行動次第では、君たちの将来が大きく変わる。 (2)第二共和政臨時 社会主義者に質問する 「正式な政府発足に向けての選挙で、君たちが当選するために 政府 は、どのような形態の選挙の実施を要求するべきだろうか 」。 (3)臨時政府の政策 ブルジョワに質問する 普通選挙法施行、 「社会主義者が打ち出した政策は、労働者の支持を圧倒的に受 労働時間の短縮、 けるような内容である。選挙に勝つためには、どうしたらよい 失業者救済のため のだろうか 」 に国立工場設置。 。 (4)ブルジョワ側の 一般市民に質問する 「税金によって運営される国立工場でさしたる仕事もせずに失 反撃 業者が賃金をもらっていることをどう思うか 」 国立工場では、で 。 農民に質問する きるだけ仕事がな 「農民の立場から見ると、社会主義という考えは望ましいか 」 い状態にしてお 。 ブルジョワと社会主義者に質問 き、仕事のない日 「選挙を前に、選挙運動を行おう。どんな選挙運動を行うか 」 にも労働者に給料 。 労働者と農民に質問する を支払う。 「選挙では、ブルジョワと社会主義者のいずれに投票するか。 (5)4月総選挙 その理由は何か 」 社会主義勢力没落 。 (6)国立工場廃止の 労働者と農民に質問する 「この布告をどのように思うか 」 布告(6月) 。 この一連の動きの中で最終的に勝利をしたのはブルジョワである。社会主義 まとめ 者が失脚する原因を作った労働者の行動に対する評価を、レポートとして提出させ、 評価を行う。Ⅱ−9
オリジナルの政策を立案してみる
「歴史に" if "はありえない」という主旨 の言葉をよく耳にする。しかし、歴史的な 事実は、一定の歴史的条件の中で、様々な 可能性の中から必然性を持って選択された ものである以上、なぜそれが選択されたの か、よりよい他の選択あるいは異なるポイ ントを主眼においた選択はなかったのかに ついて常に検証されるべきであろう。歴史 教育にとって" if "は重要な視点である。 1 ねらい ( ) 具体的で有効な政策を自ら立案しよう1 とすることはその時代のおかれている状況 や条件、他分野との関連など、通史学習の 中で時代を総合的にとらえ直そうとする目 を育てることになる。 ( ) 一見有効と思われる政策なのに実際に2 は実現しなかったのは、その段階では必要 な条件が整っていないからだ、ということ に生徒たちは気付く。このことは後の段階 でなぜそういう政策が必要なのか、そのた めの条件がどのように整えられたのかを理 解しようとする動機付けとなる。 ( )3 『高等学校学習指導要領 においては、』 日本史A・B共に「目標」として「国民とし ての自覚と国際社会に主体的に生きる日本 人としての資質を養う」とある。「国民とし ての自覚」を持つためには、「主権者として の社会参加」が求められる。主体的に判断 、 、 し 責任を担う意識を育てていくためにも 地理歴史科・公民科の各科目においてこう した経験を重ねていくことが必要である。 歴史教育においても、過去から教訓を得る という役割にとどまらず、現在いかに行動 すべきかを考えるための方法を身につける シミュレーションの役割を果たしうると考 える。 2 テーマ例と方法 平安初期…律令制を立て直すには? ( )1 世紀…公地公民制に頼らずにど ( )2 10 うやって収益を確保するか? 承久の乱後、鎌倉幕府は何をなすべ ( )3 きか? 建武政権が生き残るには? 南北 ( )4 or 朝の内乱を短期で収束させるには? 戦国時代をどう生き延びるか? ( )5 …戦国大名の生き残り戦略 寛政の改革で何をすべきだったか? ( )6 公武合体か尊王攘夷か? ( )7 インフレをどう打破するか? ( )8 …松方財政を立案する 昭和恐慌を回避するには? ( )9 …第一次世界大戦まで遡って考える 昭和恐慌後の3つの選択 (10) …①戦争しない。②日中全面戦争を しない。③対米開戦を回避する。 ( ) 前提となるイメージの作り易さでは近1 現代史の方が、また、論理的な展開の面白 さでは経済史的分野が適している。 ( ) 設定としては、2 ( )今後の展開を予想する。A ( )他の展開の可能性を探る。B という二通りが考えられる。 (A)の場合は、教科書等で予習をしたの では意味がないので、手掛かりとなる情報 を限定する必要がある。(B)の場合は、あ る程度先まで学習を進めた後に振り返って 検討してみるのが効果的で テーマ例の( )、 6 ( )( )(7 9 10)がこれに適している。 ( ) 既習事項を総合的に使いこなせる事が3 前提となるため、グループ学習で知識を補 い合うことが望ましい。少なくとも自由に 話し合う時間を確保する必要がある。3 留意点 ( ) 単なる思いつきや非現実的なプランが1 出てきがちである。次のような手順を踏ん で検討していく内容を指導する。 ①状況の分析(事態の原因の解明) ②戦略(ねらいの明確化) ③戦術(方法・手段の立案) ④アセスメント(必要な条件の確認、 メリット・デメリットの事前評価) ⑤決断 ( )政策立案という内容の性質上、為政者2 の立場に傾き、民衆からの視点が欠落しが ちである。主権者としての資質を育てると いう観点から、普段からこの視点について 十分に配慮・留意する必要がある。