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また 流通 取引慣行ガイドラインによれば ( 第 2 部第二 非価格制限行為 3 流通業者の販売地域に関する制限 4 流通業者の取引先に関する制限 5 小売業者の販売方法に関する制限 ) メーカーによる流通業者の販売地域の制限 ( 厳格な地域制限 地域外顧客への販売制限 ) 流通業者の取引先に関する

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公益財団法人公正取引協会主催「独占禁止法研究会(平成25年度)」 不公正取引 II-資生堂東京販売事件・花王化粧品販売事件判決、 ソニー・コンピュータエンタテイメント審決- I 不公正な取引方法としての拘束条件付取引 拘束条件付取引は、独禁法19条が禁止する不公正な取引方法の一般指定12項に定め があり、「法第2条第9項第4号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相 手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引 すること。」と定める。 2条9項4号は再販売価格の拘束、一般指定11項は排他条件付取引をそれぞれ定める。 再販売価格の拘束も排他条件付取引も、本来、拘束条件付取引に含まれるのであるが、そ れぞれ明確化して独立させて定められていることから、再販売価格の拘束は専ら2条9項 4号、排他条件付取引は専ら一般指定11項のそれぞれ適用を受け、いずれについても一 般指定12項の適用を受けることはない。 一般指定12項が定める拘束条件付取引は、「相手方とその取引の相手方との取引その 他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。」であ る。 行為要件は、「相手方の事業活動を拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること」 である。このうち、「拘束」については、「再販売価格の拘束の有無は、メーカーの何ら かの人為的手段によって、流通業者がメーカーの示した価格で販売することについての実 効性が確保されていると認められるかどうかで判断される。」(公取委・流通・取引慣行 ガイドライン(平3・7・11最新改正平22・1・1)第2部第一「再販売価格維持行 為」2「再販売価格の拘束」(2))に準じて判断されることになる。 実質要件は、「不当に」である。「不当に」とは、(自由)競争の減殺を意味する公正 競争阻害性のことであり、競争の回避効果(競争停止)又は競争者の排除効果(他者排除) が認められる場合に、競争の減殺を意味する公正競争阻害性の要件は満たされる。したが って、本来、市場を画定し、画定された市場において、競争の回避効果又は競争者の排除 効果が認められるか否かを判断するべきことになるはずである。しかし、流通・取引慣行 ガイドラインには、(第2部第二「非価格制限行為」2「流通業者の競争品の取扱いに関 する制限」を除き)そのような考え方は示されていない。 流通・取引慣行ガイドラインによれば、取引の相手方の価格の拘束は、それ自体で、直 ちに、競争の回避効果が認められ、競争の減殺を意味する公正競争阻害性の要件が満たさ れ、不公正な取引方法として違法となる(第2部第一「再販売価格維持行為」2「再販売 価格の拘束」(1)、第3部第二「総代理店契約の中に規定される主要な事項」1独占禁 止法上問題となる場合」(1)「再販売価格の制限」。この解釈・運用方針は、知的財産 ガイドライン(平19・9・28最新改正平22・1・1)にも引き継がれ、例えば、特 許ライセンス契約においてライセンサーがライセンシーの特許製品の販売価格を拘束する ことは、それ自体で、拘束条件付取引に該当し、原則として、不公正な取引方法として違 法となる(第4「不公正な取引方法の観点からの考え方」4「技術の利用に関し制限を課 す行為」(3)「販売価格・再販売価格の制限」。)。

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また、流通・取引慣行ガイドラインによれば(第2部第二「非価格制限行為」3「流通 業者の販売地域に関する制限」、4「流通業者の取引先に関する制限」、5「小売業者の 販売方法に関する制限」)、メーカーによる流通業者の販売地域の制限(厳格な地域制限、 地域外顧客への販売制限)、流通業者の取引先に関する制限(帳合い取引の義務付け、仲 間取引の禁止、安売り業者への販売禁止)及び小売業者の販売方法の制限(価格広告・表 示の制限)において、メーカーの商品の価格が維持されるおそれがある場合には、拘束条 件付取引に該当し、不公正な取引方法として違法となる。メーカーの商品の価格が維持(ブ ランド内の価格競争が回避)されるおそれがある場合に当たるか否かは、①対象商品をめ ぐるブランド間競争の状況(市場集中度、商品特性、製品差別化の程度、流通経路、新規 参入の難易性等)、②対象商品のブランド内競争の状況(価格のバラツキの状況、当該商 品を取り扱っている流通業者の業態等)、③制限の対象となる流通業者の数及び市場にお ける地位、④当該制限が流通業者の事業活動に及ぼす影響(制限の程度・態様等)を総合 的に考慮して判断される。 さらに、流通・取引慣行ガイドラインによれば、メーカーが小売業者の販売方法を制限 すること(①商品の説明販売の指示、②商品の宅配指示、③商品の品質管理条件の指示、 ④自社商品専用の販売コーナーや棚場の設置指示)は、商品の安全性の確保、品質の保持、 商標の信用の保持等、当該商品の適切な販売のための合理的な理由が認められ、かつ、他 の取引先小売業者に対しても同等の条件が課せられている場合には、それ自体は独禁法上 問題となるものではない。 II 資生堂東京販売事件・花王化粧品販売事件判決(平10・12・18審決集45・ 455(461)、判時1664・3(14)、判タ992・94(98)) 1 事案の概要 資生堂東京販売(以下、「資生堂販売」という。)は、最大手の化粧品メーカー資生堂 の卸売会社であるが、化粧品小売業者の富士喜との間で、昭和37年から、有効期間1年 の特約店契約を締結・継続してきた。当事者双方に異議がないときはさらに1年間自動更 新されるが、有効期間中であっても、両当事者は、文書による30日前の予告をもって中 途解約できる解約条項の定めがあった。特約店は、化粧品の販売に当たり、顧客に化粧品 の使用方法等を説明したり、化粧品について顧客からの相談に応ずる(以下、「対面販売」) 義務が課されていた。資生堂販売は、対面販売を義務付ける理由として、化粧品の販売に よって発生するおそれのある皮膚に関するトラブルの発生を未然に防止すること及び化粧 品の販売は単なる「もの」の販売ではなく、それを使用して美しくなるとの機能を販売す ることが大切であるから、顧客に化粧品の上手な使い方を教えるために必要であることを 挙げている。特約店において顧客が説明を受けずに購入し、特約店側もこれに応じている 例も少なくないが、なお相当数の資生堂化粧品が、専用コーナーを設けている特約店にお いて、店員が顧客と面接し、相談や説明をして販売されていた。 富士喜は、昭和60年2月ころから、単に商品名、価格、商品コードを記載しただけの カタログを事務所等の職場に配布して電話やファクシミリでまとめて注文を受けるという 方法によって、2割引で販売しており、資生堂化粧品についても同じ方法により販売して いた。この場合、商品説明は、電話で問い合わせに答える程度であり、顧客と対面しての

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説明、相談等は全く予定されていなかった。そこで、資生堂販売は、そのような販売方法 は、対面販売義務に違反するので、これを是正するよう勧告し、両者の折衝・合意により、 富士喜は今後カタログ販売をせず対面販売することなどを取り決めた。資生堂販売は、こ の一連の折衝過程において、富士喜の値引き販売を問題にしたことはなかった。しかし、 この合意にもかかわらず、富士喜が従来の販売方法を変更する態度を全く示さなかったこ とから、資生堂販売は、解約条項に基づき、特約店契約を解約し、出荷を停止した。 そこで、富士喜が、解約の効力を争い、特約店契約に基づき商品の引渡しを受けるべき 地位にあることの確認及び注文済み商品の引渡しを求める訴えを提起した。 花王化粧品販売(以下、「花王販売」という。)事件もほぼ同様の事実関係であった。 大手化粧品メーカー花王の卸売会社である花王販売は、化粧品の小売店江川企画との間で、 同様の特約店契約を締結し、特約店は、花王販売の指導に従い、顧客に化粧品の使用方法 等を説明したり、化粧品について顧客からの相談に応じたりして、積極的に推奨販売する こと(以下、「カウンセリング販売」という。)が義務付けられ、これに伴う義務として、 特約店契約を締結していない他の小売業者に卸販売することも禁止されていた。特約店の 中には、顧客に説明をすることなく販売している例もあるが、その場合にも顧客から要望 がある場合などに必要に応じてカウンセリング販売を行う態勢はとられており、相当多数 の花王化粧品が、特約店におけるカウンセリング販売によって販売されていた。江川企画 は、特約店契約締結の約1年後から、供給を受けた花王化粧品の大部分を花王販売が特約 店契約を締結していない富士喜(その販売方法は、販売に際して顧客と対面しての説明・ 相談等を全く予定されていなかった。)に卸販売するに至った。花王販売は、江川企画の 販売方法に疑念を抱き、販売方法を尋ねたが、店頭販売のほか職域販売と答えたものの、 その具体的な内容や販売先は明らかにしなかった。花王販売は、何度も販売先を明らかに するよう求め、販売先への美容インストラクターの派遣も求めたが、江川企画はこれを拒 絶したことから、大量の花王化粧品を卸販売しているものと推測し、解約条項に基づき、 特約店契約を解約し、出荷を停止した。 そこで、江川企画が、解約の効力を争い、特約店契約に基づき商品の引渡しを受けるべ き地位にあることの確認及び注文済み商品の引渡しを求める訴えを提起したのに対し、花 王販売は、江川企画が特約店契約上の地位を有しないことの確認を求めた。 2 判旨 (1)拘束条件付取引の内容は様々であるから、その形態や拘束の程度等に応じて公正な 競争を阻害するおそれを判断し、それが公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれがある と認められる場合に、初めて相手方の事業活動を「不当に」拘束する条件を付けた取引 に当たるというべきである。 (2)メーカーや卸売業者が販売政策や販売方法について有する選択の自由は原則として 尊重されるべきであることにかんがみると、これらの者が、小売業者に対して、商品の 販売に当たり顧客に商品の説明をすることを義務付けたり、商品の品質管理の方法や陳 列方法を指示したりするなどの形態によって販売方法に関する制限を課することは、そ れが当該商品の販売のためのそれなりの合理的な理由に基づくものと認められ、かつ、 他の取引先に対しても同等の制限が課せられている限り、それ自体としては公正な競争

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秩序に悪影響を及ぼすおそれはなく、相手方の事業活動を「不当に」拘束する条件を付 けた取引に当たるものではない。 (3)販売方法に関する制限を課した場合、販売経費の増大を招くことなどから多かれ少 なかれ小売価格が安定する効果が生ずるが、このような効果が生ずるというだけで、直 ちに販売価格の自由な決定を拘束しているということはできない。 (4)特約店契約を締結していない小売店等に対する卸売販売の禁止は、カウンセリング 販売の義務に必然的に伴う義務であり、カウンセリング販売の義務付けた約定が独禁法 19条に違反しない場合には、卸売販売の禁止も、同様に同条に違反しない。 3 検討 本件判決は、メーカーの販売業者に対する販売方法の制限につき、不公正な取引方法と しての拘束条件付取引の公正競争阻害性に係る判断の枠組みを示したものとして重要であ る。特に、化粧品という商品の特性に着目したものではあるが、ブランドイメージの保持 が公正競争阻害性の判断において考慮される要素であることを認めた点も重要である。 また、対面販売ないしカウンセリング販売の義務付けという小売業者の販売方法に関す る制限の拘束条件付取引該当性につき、公取委の流通・取引慣行ガイドラインに依拠して いる点も注目される。もっとも、ガイドラインが、販売方法の制限は、「商品の安全性の 確保、品質の保持、商標の信用の維持等、当該商品の適切な販売のための合理的な理由が 認められ、かつ、他の取引先小売業者に対しても同等の条件が課させられている場合には、 それ自体は独占禁止法上問題となるものではない」というのは、EU 競争法上の EU 特有の 選択的販売制度(selective distribution system)の許容要件から借用してきたものである。EU では、元来、メーカーが販売店を自由に選択することに制約があったことから、高技術品 や高ブランド品について、客観的・質的な要件に基づき販売店を選択することを許容する 選択的販売制度が導入されたのである。しかし、日本では、元来、メーカーが販売店を選 択することは自由であり、EU 競争法上の選択的販売制度の許容要件の借用は必要がなか ったものである。メーカーの販売方法に関する制限は、「商品の安全性の確保、品質の保 持、商標の信用の維持等、当該商品の適切な販売のための合理的な理由が認められ、かつ、 他の取引先小売業者に対しても同等の条件が課させられている場合には、それ自体は独占 禁止法上問題となるものではない」のはよいとしても、逆に、当該商品の適切な販売のた めの合理的な理由が認められなければそれ自体で違法となるわけではないし、他の取引先 小売業者に対しても同等の条件が課させられていなければそれ自体で違法となるわけでも ないのである。メーカーの販売方法に関する制限が拘束条件付取引に該当し違法とされる のは、競争の回避効果又は競争者の排除効果が認められ、競争の減殺を意味する公正競争 阻害性の要件が満たされる場合である。 第一次育児用粉ミルク事件最高裁判決(昭50・7・10(11))は、「単に事業者 において拘束条件をつけることが事業経営上必要あるいは合理的であるというだけでは」 公正競争阻害性がないとはいえいないとして、事業経営上の必要性ないし合理性を公正競 争阻害性の判断要素から除外している。これに対し、本件判決は、他社の商品とは区別さ れた顧客の信頼というブランドイメージの保持を公正競争阻害性の判断要素として認めて いる。そこで、両判決の違いないし連続性が問題となるが、第一次育児用粉ミルク事件は

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再販売価格の拘束が問題となったのであり、本件でも再販売価格の拘束が問題となったと すれば、同じ結論が導かれたものと考えられる。本件判決も、販売方法の制限を手段とし て再販売価格の拘束を行っていると認められる場合には、独禁法上問題となり得ると判示 しているからである。本件判決は、対面販売ないしカウンセリング販売を手段として再販 売価格の拘束を行っているとか、特約店契約の解約が値引販売を理由とするものであると いう事実は認定できないと判示している。 III ソニー・コンピュータエンタテイメント審決(平13・8・1審決集48・3、判時 1760・39、判タ1072・267) 1 事案の概要 被審人ソニー・コンピュータエンタテイメント(以下、「SCE」)は、プレイステーシ ョン(以下、「PS」という。)という家庭用ゲーム機(以下、専用機を「PS ハード」、 PS ハード用ソフトを「PS ソフト」という。)の製造販売及び PS ハード用周辺機器、並び に PS ソフトの仕入販売業を営む事業者であった。SCE は、1996(平8)年度には、 ゲーム機及びゲームソフトの各販売分野で出荷額が1位の最有力の事業者であった。SCE は、ソフト製造業者の PS ソフトをほぼ一手に仕入販売しており、PS ソフトの供給面で独 占的地位にあった。 一方、小売業者は、卸売業者を主体とした多段階流通を通じて仕入れるために見込み発 注が行い、ソフトの需給不均衡が生じやすかった。これらは、過剰在庫処分としての値引 き販売、横流し、抱き合わせ販売や、品切れによる中古ソフト販売の原因となっていた。 中古ソフト市場は新品ソフトの売れ行きに影響し、ソフト製造業者及び新品ソフト販売業 者の損失となっていた。 SCE は、このような従来の流通システムの問題点を認識し、一般消費者に直結した「直 取引システム」を構築し、ソフト製造業者、SCE 及び販売業者が利益を挙げられる事業方 針の構築を企図した。そして、PS 製品の販売を委ねる小売業者及び卸売業者との間で、① 値引き販売の禁止(小売業者は PS ソフトの販売に当たっては希望小売価格で販売するこ と)、②中古品取扱い禁止(小売業者は PS ソフトの中古品の取り扱いをしないこと)、 ③横流し禁止(小売業者は PS 製品を一般消費者のみに、また、卸売業者は取引先小売業 者のみに販売すること)という3つの販売方針を採用することを決定した。SCE は、19 94(平6)年9月中旬以降、この3つの販売方針を受け入れた小売業者及び卸売業者と 特約店契約を締結し、特約店との取引を開始するとともに、この販売方針に反する販売業 者への出荷停止や契約解除を行った。 1996年5月、公取委の立入検査が行われるに至ったが、1997(平9)年11月 ごろに、ようやく、希望小売価格の90%ないし94%程度の価格での値引き販売が一般 化することとなった。 2 審決 2-1 主文 (1)SCE は、PS ソフトの販売に関し、自ら又は取引先卸売業者を通じて、新たに発売さ れた PS ソフトについて、小売業者に対し、原則として希望小売価格で販売するように

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させ、卸売業者に対し、取引先小売業者に原則として希望小売価格で販売させるように していた行為を取りやめていることを確認しなければならない。 (2)SCE は、PS ソフトの販売に関し、自ら又は取引先卸売業者を通じて、小売業者に対 し、PS ソフトを一般消費者のみに販売するようにさせ、卸売業者に対し、PS ソフトを 小売業者のみに販売するとともに取引先小売業者に一般消費者のみに販売させるように している行為を取りやめるとともに、取引先小売業者及び卸売業者との間で締結してい る特約店契約中の関係条項を削除しなければならない。 (3)SCE は、前記(1)及び(2)に基づいて採った措置を、SCE の営業・販売企画担 当の役員及び従業員、取引先小売業者及び卸売業者並びに取引先卸売業者の取引先であ る小売業者並びに一般消費者に周知徹底しなければならない。 (4)SCE は、今後、前記(1)の行為と同様の行為により小売業者の販売価格を制限し、 又は前記(2)の行為と同様の行為により取引先小売業者若しくは卸売業者の事業活動 を制限してはならない。 2-2 理由 (1)SCE の3つの販売方針は、SCE の PS 製品、なかんずく PS ソフトの直取引を基本と する流通政策の一環として、これを実現させるために関連した一体的なものとして決定 され、実施されたものであり、中古品取扱い禁止と横流し禁止が、一体的に行われてい る値引き販売禁止行為を補強するものとして機能していると認められるときには、再販 売価格の拘束行為に包含されるものとみるのが相当である。 (2)再販売価格の拘束行為は、原則として公正競争阻害性を有する違法なものであると ころ、本件の値引き販売禁止については、これを含む販売方針の受入れが特約店契約締 結の条件である旨を小売業者や卸売業者に説明していたこと、及び、営業部幹部が営業 担当者に対し、全体ミーテイング等の場で販売方針の受入れを要請するように指示してい たことなどから、かかる販売方針は単なる要請や方針の表明にとどまらない事業活動の 拘束に当たる。そして、特段の正当な理由も認められないことから、公正競争阻害性を 有する。 (3)中古品取扱いの禁止行為は、ソフト製造業者及び新品ソフト販売業者の利益を図る とともに、ソフト製造業者の PS ソフトの積極的な開発を促すことが目的であり、新品 PS ソフトの再販売価格維持を目的とすると積極的に認めるに足りる証拠はない。ただ し、中古品販売の禁止は、新品 PS ソフトの販売価格に影響が及ぶこととなるから、中 古品販売の禁止行為が新品 PS ソフトの再販売価格の拘束行為の実効的な実施に寄与し、 同行為を補強するものとして機能している。しかし、1997(平9)年11月ごろに、 値引き販売禁止が消滅したため、その時点で中古品取扱い禁止行為の公正競争阻害性も なくなった。 (4)中古品取扱いの禁止行為が再販売価格の拘束行為と一体として行われ、同行為を補 強するものとして機能しており、中古品取扱いの禁止行為を含む全体としての再販売価 格の拘束行為が公正競争阻害性を有するものである以上、仮に PS ソフトに頒布権が認 められる映画の著作物に該当し、中古品取扱いの禁止行為が外形上頒布権の権利の行使 とみられる行為に該当するとしても、知的財産保護制度の趣旨を逸脱し、あるいは同制 度の目的に反するものである。

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(5)SCE の流通政策の一環としての横流し禁止の販売方針は、それ自体、取扱い小売業 者に対して PS ソフトの値引き販売を禁止する上での前提ないしはその実効確保措置と して機能する閉鎖的流通経路を構築するという側面、及び、閉鎖的流通経路外の販売業 者への PS 製品の流出を防止することにより外からの競争要因を排除するという側面の 両面において、PS ソフトの販売段階での競争が行われないようにする効果を有してい る。値引き販売禁止行為は1997年11月ごろに消滅し、横流し禁止行為の公正競争 阻害性の根拠のうち、閉鎖的流通経路内での値引き販売禁止の前提ないし実効確保とし ての意味が失われたとしても、閉鎖的流通経路外への PS 製品の流出を防止し、外から の競争要因を排除する効果が直ちに失われるものではなく、PS ソフトの販売段階での競 争を制限する PS ソフトの横流し禁止行為には、現時点でも公正競争阻害性が認められ る。 (6)著作物再販適用除外の対象となる「著作物」は著作権法上の著作物の「複製物」で あり著作権法上の「著作物」とは概念を異にし、また、著作物の再販適用除外制度の立 法経緯や立法趣旨に照らしても、独禁法23条4項の「著作物」を著作権法上の著作物 と同様に解すべきであるという根拠は見当たらない。 3 検討 本件審決は、値引き販売の禁止、中古品取扱いの禁止、横流し販売の禁止の3つの行為 は、一体的に行われ、中古品取扱い禁止と横流し禁止は、一体的に行われている値引き販 売禁止行為を補強するものとして機能していると認められるときには、再販売価格の拘束 行為に包含されると判断しているところに特徴がある。もっとも、横流し禁止については、 それだけにとどまらず、別途、それ自体でも、拘束条件付取引に該当するとも判断してい るところにも特徴がある。 中古品取扱いの禁止については、被審人は、中古品取扱いは、映画の著作物である PS ソフトに認められる著作権法上の頒布権の侵害行為であり、中古品取扱いの禁止は著作権 法による権利の正当な行使であって、公正競争阻害性がない、あるいは、独禁法21条に より独禁法の適用がないと主張していた。これに対し、本件審決は、独禁法21条は、著 作権法等による権利の行使とみられるような行為であっても、競争秩序に与える影響を勘 案した上で、知的財産保護制度の趣旨を逸脱し、又は同制度の目的に反すると認められる 場合には、当該行為が同条にいう「権利の行使と認められる行為」とは評価されず、独禁 法が適用されることを確認する趣旨で設けられたものである(現行知的財産ガイドライン (平)第2「独占禁止法の適用に関する基本的な考え方」1「独占禁止法と知的財産法」 参照)とし、本件では、中古品取扱いの禁止が再販売価格の拘束と一体として行われ、再 販売価格の拘束を補強するものとして機能しており、中古品取扱いの禁止を含む全体とし ての再販売価格の拘束が公正競争阻害性を有するものである以上、PS ソフトが頒布権の認 められる映画の著作物に該当し、中古品取扱いの禁止が外形上頒布権の行使とみられる行 為に当るとしても、知的財産保護制度の趣旨を逸脱し、又は同制度の目的に反するもので あることはいうまでもない、として被審人の主張を退けている。著作権法上、著作物の再 販売価格の拘束は権利の行使とは認めておらず、著作物であっても再販売価格の拘束が行 われれば独禁法が適用される。そこで、中古品取扱いの禁止が仮に著作権法上頒布権の行

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使として認められているとしても、本件では、著作権法上権利の行使と認められない再販 売価格の拘束の実効性確保のために行われているのであるから、著作権保護制度の趣旨を 逸脱し、又は同制度の目的に反しており、独禁法が適用されるとしたものとみられる。 このように、本件では、独禁法と著作権法の関係につき困難な問題が提起されていたが、 その後、最高裁(最判平14・4・25民集56・4・808)が、ゲームソフトを含む 映画の著作物につき、劇場用映画を除き、その複製物は一旦適法に公衆に譲渡されると頒 布権(譲渡権)は消尽すると判示したことから、困難な問題が解消されることになった。 PS ソフトは、販売業者を通じて消費者まで販売されており、中古品については、すでに頒 布権は消尽し頒布権は及ばず、独禁法と著作権法とが矛盾しかねないという問題は解消さ れるに至っている。 もう1つ独禁法と著作権との関係が問題となったのは、独禁法23条4項が定める著作 物再販制度に関連してである。独禁法23条4項は、「著作物を発行する事業者又はその 発行する物を販売する事業者が、その物の販売の相手方たる事業者とその物の再販売価格 を決定し、これを維持する正当な行為についても」同1項と同様に、独禁法の適用をしな い、と定めているからである。ここに定める「著作物」が、著作権法上の「著作物」であ るとすると、本件 PS ソフトは、映画の著作物であるから、その再販売価格の拘束に独禁 法の適用がなく、これの実効性確保手段である中古取扱い禁止も横流し禁止も再販売価格 の拘束を維持する「正当な行為」であるということになる。しかし、本件審決は、①独禁 法23条4項が定める「著作物」は、市場において実際に流通する個々の商品であるとこ ろ、公取委が著作物再販制度の対象としている書籍、雑誌及び新聞は著作権法上の著作物 の「複製物」に当たり、また、レコード盤並びにこれに準ずる音楽用テ-プ及び音楽用 CD は著作権法上の「商業用レコード」であって、著作物の「複製物」に当たるのであり、著 作物再販制度の対象となる「著作物」と著作権法上の「著作物」とは概念を異にすること、 また、②昭和28年の独禁法改正により導入された23条4項による著作物再販制度は、 当時の書籍、雑誌、新聞及びレコ-ド盤(著作物4品目)の定価慣行を追認する趣旨で導 入されたという立法経緯や立法趣旨に照らしても(その後、公取委は、レコード盤と機能 ・効用が同一であるとして音楽用テープおよび音楽用 CD も対象に入れることとなった。)、 23条4項の「著作物」を著作権法上の著作物と同様に解すべきとする根拠は見当たらな いとしている。しかし、このような解釈は、公取委の有権解釈であるが、まだ裁判所でオ ーソライズされた物ではない。 被審人は、中古品取扱い禁止及び横流し禁止は、非価格制限行為であり、非価格制限行 為については、資生堂販売・花王販売事件最高裁判決を援用し、拘束条件付取引の公正競 争阻害性の判断に当たっては、その形態・拘束の程度等に応じて個別に公正競争阻害性の 有無が判断されるべきであり、これらを一体のものとして評価することは許されないと主 張した。これに対し、本件審決は、拘束条件付取引のうちでも非価格制限行為には、様々 な内容・態様・程度のものが包括的に含まれており、その公正競争阻害性がそれぞれの実 態に応じて個別に判断されるものであることは当然であり、上記両最高裁判決の判断過程 に照らし、その趣旨にも沿うものであるとしつつ、しかし、本件のように、複数の非価格 制限行為が同時に行われている場合や価格制限行為も併せて行われている場合に、ある非 価格制限行為の公正競争阻害性を判断するに当たっては、同時に行われている他の非価格

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制限行為あるいは価格制限行為により影響を受けている市場環境を踏まえた上でなされる べきことは当然であり、他の行為の存在ないしはそれによる影響を切り離して当該非価格 制限行為の公正競争阻害性を判断すべきであるとする被審人の主張は採用できないとして 退けている。 本件審決は、横流しの禁止につき、再販売価格の拘束の実効確保措置として機能する側 面とは別に、閉鎖的流通経路外の販売業者への PS 製品の流出を防止することにより外か らの競争要因を排除するという側面があり、この側面において、PS ソフトの販売段階での 競争が行われないようにする効果があり、現時点でも公正競争阻害性が認められるとして いる。これに対し、被審人は、本件横流しの禁止には資生堂販売・花王販売事件最高裁判 決にいう「それなりの合理性」が認められると主張したが、本件審決は、本件の横流し禁 止は、販売業者の取引先という、取引の基本となる契約当事者の選定に制限を課すもので あるから、その制限の形態に照らして販売段階での競争制限に結びつきやすく、この制限 により当該商品の価格が維持されるおそれがあると認められることから、公正競争阻害性 を有し、拘束条件付取引に該当し、「それなりの合理性」が認められるとしても、それだ けでは公正競争阻害性がないということはできないとして被審人の主張を退けている。本 件審決が、本件横流しの禁止により当該商品(PS ソフト)の価格が維持されるおそれがあ ると認められることから、公正競争阻害性を有すると判断するのは、SCE が取り扱う PS ソフトは、他の家庭用ゲーム機用ソフトとは互換性がなく、SCE の独占的なものであるこ とに基づくものではないかとみられる。 他方、本件審決は、本件横流しの禁止により当該商品(PS ソフト)の価格が維持される おそれがあると認められるとしても、例外的に当該行為の目的や当該目的を達成する手段 としての必要性・合理性の有無・程度等からみて、当該行為に公正な競争秩序に及ぼすそ れがあるとはいえない特段の事情が認められる(「それなりの合理性」を超えた特段の事 情ということを意味するようにみえる。)ときには、公正競争阻害性はないものと判断さ れるという注目すべき解釈を示している。もっとも、本件審決は、被審人が、本件横流し の禁止には、①実需の把握、②一般消費者への商品情報の提供の確保、③輸出の防止、④ 債権の保全の目的があると主張したが、このような目的に合理性が認められるとしても、 こうした目的は競争制限効果の小さい他の代替的手段によっても達成できるものであっ て、横流しを禁止すべき必要性・合理性は低いというべきであるとして被審人の主張を退 けている。

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契約先業者 ( 売り手 ) 販売事業者 ( 買い手

排出量取引セミナー に出展したことのある クレジットの販売・仲介を 行っている事業者の情報

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再エネ電力100%の普及・活用 に率先的に取り組むRE100宣言

「特殊用塩特定販売業者」となった者は、税関長に対し、塩の種類別の受入数量、販売数