平成
23
年度
学士学位論文
仮想窓通信方式における
通信者属性付加に関する研究
An attribute expression of the virtual window system
communicators
1120265
松岡 奈穂
指導教員
島村 和典
2012
年
3
月
1
日
要 旨
仮想窓通信方式における
通信者属性付加に関する研究
松岡 奈穂
現在,遠隔地間のコミュニケーション方法としてテレビ電話やビデオチャットなどのサー ビスが普及している.これらのサービスはカメラを固定し通信を行うため,対面・対話のよ うなノンバーバル情報を取得できない.このような問題を解決するため,Virtual Window Systemが提案されている.Virtual Window Systemは,窓に見立てたディスプレイによっ て通信者の空間同士を仮想的に繋げるシステムである.Virtual Window Systemは,通信 者の立ち位置に応じてディスプレイに表示される景観画像が変化するという特徴を持つ.Virtual Window Systemは,遠隔地間のコミュニケーションを想定したシステムである ことから,通信相手がよく知る人物ではない,または初対面の可能性も十分に考える.通信 中に得られるノンバーバル情報以外にも,通信者自身の情報を交換できれば,コミュニケー ションをより円滑に行うことができる.そこで,通信者の情報を属性情報として付加表示す る機能を提案する.
本稿では,従来のVirtual Window Systemで取得できるノンバーバル情報に加え,通信 相手の基本情報を属性情報として付加表示することで,Virtual Window System使用者の コミュニケーション支援を図る.
属性情報として扱う情報の取得は通信者がすでに使用しているSocial Networking Service
を利用する.また,属性情報表示にはAugmented Realityを用いる.Augmented Realityは 多様性があることから,Augmented Realityの活用は属性付加表示に限らず,今後Virtual Window Systemにさらなる付加価値を生み出す可能性があると考えられる.
提案したシステムと既存の類似サービスを比較し,提案システムの有効性を示した.類似 サービスでは,属性情報はサービス毎に登録の必要があり,表示はディスプレイ上のみであ る.しかし,提案システムではSocial Networking Serviceを有効活用し,属性情報の登録・ 取得ができる.属性情報表示においては,提案システムではディスプレイ上だけでなく通信 者の携帯端末上への属性情報表示が可能である.
キーワード Virtual Window System,属性情報, Social Networking Service, Augmented Reality
Abstract
An attribute expression of the virtual window system
communicators
Naho MATSUOKA
The video conferencing telephone and the video chat become popular now as com-munication systems between two remote places. The service cannot obtain nonverbal information as a facing conversation because the fixed cameras lacks sufficient transfer-ring function of nonverbal information. To solve the problem, Virtual Window System has been proposed. Virtual Window System is a system which connects the remote spaces on the display assumed as a window. While Virtual Window System stands is activated the scene image as the opponent vista changes by the correspondent’s position. Because Virtual Window System is the system which assumed as the communication tool between distant places. The communication would be more smoothly if the correspon-dents can exchange information of the opponent correspondent including her nonverbal information, during the communication. A function adding the information of the other correspondent as an attribute and displaying the attribute during the communication is proposed.
In this paper, the communication support for a Virtual Window System is aimed by indicating the attribute would be added to the communication partner’s basic informa-tion of the conveninforma-tional Virtual Window System. The communicainforma-tion partner’s basic information explaining her would be derived from a social networking system data base. Augmented Reality is used for an attribute information displaying. Since Augmented
Reality technologies are various, it is thought that the practical use of Augmented Re-ality may produce the further value to Virtual Window System not only an attribute overlaid on a display.
Comparison of the proposed system and the existing similar service had classified the validity of the proposal system. With similar service, attribute information has the necessity for registration in every service. In the proposal system, Social Networking Service might effectively perform the registration and the acquisition of attribute infor-mation. The attribute information indication could be also displayed on the handheld unit weared by the correspondent.
key words Virtual Window System, Attribute information, Social Networking Ser-vice, Augmented Reality
目次
第1章 序論 1 1.1 諸言. . . 1 1.2 研究背景 . . . 1 1.2.1 カメラの固定視点による影響 . . . 2 1.2.2 ノンバーバル情報 . . . 21.3 Virtual Window System . . . 3
1.4 Virtual Window Systemの構成について . . . 4
1.5 研究目的 . . . 5
1.6 結言. . . 5
第2章 Social Networking ServiceとAgumented Reality 6 2.1 諸言. . . 6
2.2 Social Networking Service . . . 6
2.3 Augmented Reality . . . 7 2.3.1 ARマーカ . . . 7 2.3.2 各情報付加技術の比較 . . . 9 2.4 結言. . . 10 第3章 属性付加表示 11 3.1 諸言. . . 11 3.2 属性付加 . . . 11 3.2.1 SNS連携 . . . 11 3.2.2 付加する属性項目 . . . 12 3.3 属性情報表示 . . . 13
目次 3.3.1 携帯端末上に表示 . . . 13 3.3.2 重畳表示による属性情報表示 . . . 15 3.3.3 属性情報重畳表示領域決定 . . . 15 3.3.4 属性情報重畳表示の開始と終了 . . . 16 3.3.5 通信者の位置同定 . . . 19 3.4 結言. . . 19 第4章 提案方式の比較と考察 20 4.1 諸言. . . 20 4.2 比較. . . 20 4.3 考察. . . 21 4.4 結言. . . 23 第5章 まとめ 24 5.1 今後の課題 . . . 24 謝辞 25 参考文献 26
図目次
1.1 通信者の立ち位置による景観画像の変化 . . . 4 2.1 ARマーカ . . . 9 2.2 ARマーカの数値化 . . . 9 3.1 属性情報付加から携帯端末上に属性情報を表示するまでの処理フロー . . . . 14 3.2 携帯端末における属性情報表示例 . . . 14 3.3 景観画像分割例 . . . 15 3.4 属性情報重畳表示例 . . . 16 3.5 手認識の処理の流れ . . . 17 3.6 検知可能な手の動き . . . 17 3.7 属性情報重畳表示の開始・終了までの流れ . . . 18 3.8 通信者位置情報 . . . 19 4.1 類似サービスの概念図 . . . 22 4.2 提案システムの概念図 . . . 22表目次
1.1 コミュニケーションにおけるノンバーバル情報 . . . 3
2.1 AR利用方法 . . . 8
2.2 各情報付加技術の比較 . . . 10
第
1
章
序論
1.1
諸言
本章では,本研究の背景と目的,及び先行研究であるVirtual Window Systemについて 述べる.
1.2
研究背景
遠隔地とのコミュニケーション方法として,手紙や固定電話,チャットなど様々な種類が 挙げられる.近年ではチャット,電子メールなどによる文字や音声,テレビ電話やテレビ会 議システム,ビデオチャットが普及している. 文字のみ,音声のみの情報伝達方法は現在でもよく利用されるコミュニケーションツール であるが,相手の表情や景観といった視覚的情報が得られず,対面・対話と比べて伝達する 情報量が大幅に減少してしまう.それに対して,テレビ電話やビデオチャットなどは音声と 映像による情報伝達を行うため,相手の反応を確認しながらこにゅにケーションが行える. しかし対面・対話と同等のコミュニケーションを行えるとはいえない.これは,相手空間を 映すカメラが固定されていることによって,対面・対話でのコミュニケーション時よりも伝 達する情報量が減少しているためだと考えられる.カメラが固定された状態のテレビ電話や ビデオチャットは,一定の方向から映した映像しか通信相手には見えない. 本研究ではこの情報量不足に着目した.まず,カメラの固定視点が起因する情報量伝達の 不足と,ノンバーバル情報について述べる.1.2 研究背景
1.2.1
カメラの固定視点による影響
カメラを使用するテレビ電話やビデオチャットを利用する際,カメラは基本的に固定され ている.カメラを固定する方法では,通信相手に送信する動画像は安定させることができる が,その動画像が通信相手が望んでいる空間であるとは限らない.通信相手が望む空間にす るためには,カメラの位置や角度を調整する必要がある.また,通信中に通信相手が望んで いる空間を保ち続けるには,通信相手の立ち位置が変わる度にカメラの調節を行わなけれ ばならない.これでは円滑なコミュニケーションが行えているとはいえない.これらの原因 はカメラの固定視点による視界領域の制限によるものである.カメラを固定することによっ て,対面・対話時のコミュニケーションと比較すると,コミュニケーションに必要な相手空 間の情報量が不足していることがわかる.1.2.2
ノンバーバル情報
コミュニケーションは,大きく分けてバーバル言語とノンバーバル言語の2つを伝達して 実現される.バーバル言語は文章や会話の言葉による情報を指し,ノンバーバル情報は表 情や身体動作といった言葉以外の情報を指す.どちらもコミュニケーションを行う上で必要 なものであるが,特にノンバーバル情報はコミュニケーションにおいて占める割合が多く, バードウィステル氏(1970)によると65∼70%,メラビアン氏(1968)においては93%で あると報告されている.コミュニケーションにおけるノンバーバル情報を表1.1に示す.コ ミュニケーションにおけるノンバーバル情報は,主に視覚や聴覚など人の感覚によって得ら れる情報であるといえる.対面・対話におけるコミュニケーションは,会話によるバーバル 情報の伝達を行い,口調,身振り手振りなどの動作,場の雰囲気といったノンバーバル情報 の伝達を行っている.このことから,人間同士のコミュニケーションでは重要なものと考え られる.1.3 Virtual Window System 表1.1 コミュニケーションにおけるノンバーバル情報 分類 例 機能 周辺言語 音律情報,音質 ピッチ構造(ピッチ,高さ) 時間構造(スピード,高さ) 振幅構造(強さ) イアコン 感性情報伝達(情感表示) 調整子 受託,納得,疑問,驚き 拒否,スピーチの継続 可聴化 身体動作 表情 視線,まばたき,瞳孔 うなずき 身振り,手振り 姿勢(構え) 表象,例示子 場 引き込み現象 対人距離,空間,接触 対人関係 諸関係 その他(身体的特徴,生理的現象, 衣服,装飾品など) 関係の成立
1.3
Virtual Window System
現在,これらの研究背景で述べた問題点を解決するための遠隔地間コミュニケーション ツールの一つとして,Virtual Window Systemが提案されている[1].これは,遠隔地間の 空間と空間を仮想的な窓で接続し,あたかも隣り合った空間であるようにコミュニケーショ ンを行うことができるシステムである. 空間を表示するディスプレイは,実世界の窓をメタファとしたディスプレイを用いており, 通信者の立ち位置によってディスプレイに表示される相手空間の景観画像が変化する特徴を 持つ.この通信者の立ち位置による景観画像の変化を図1.1に示す.通信者が 1⃝ の地点に 近づくほど通信相手の空間をより広角な視野の景観画像を表示し,通信者が 2⃝ の地点に近
1.4 Virtual Window Systemの構成について づくほど挟角な視野の景観画像を表示する.また 3⃝, 4⃝の地点に通信者が近づいていくと, 通信者の位置から対格方向を見たような相手空間の景観画像が表示される.この特徴から, 通信者が視覚する相手空間の景観は固定された視野でなく,実際に窓を覗き込むような自由 な相手空間の景観を取得することができる. 図1.1 通信者の立ち位置による景観画像の変化
1.4
Virtual Window System
の構成について
Virtual Window Systemは,大きく分けて通信者の位置同定,通信者の位置に対応した 相手空間の景観画像の生成,景観画像の表示の 3つの機能から構成されている.これら 3
つの機能からなる Virtual Window System の動作の流れは,まず通信者の位置同定を行 う.そして,位置同定によって得られた通信者の位置座標をもとに,相手空間の景観画像 を生成する.景観画像の生成が終了すると,生成された画像を仮想窓に表示する.Virtual Window Systemについての通信者の位置同定と相手空間の景観画像生成について先行研究
1.5 研究目的
が行われている[2][3].
1.5
研究目的
従来のVirtual Window System で取得できるノンバーバル情報に加え,通信相手の基 本情報を属性情報として付加表示することで,Virtual Window System使用者のコミュニ ケーション支援を図ることを目的とする.既存の類似サービスにおいても,通信者の属性情 報を付加表示する機能は付属されているものもある.しかし,各サービス毎に属性情報を登 録する必要があり,また登録した属性情報はそのサービスもしくはそのサービスに関連した 連携サービスのみにしか活用できない.
1.6
結言
本章では,研究背景と研究目的について述べた.次章ではシステムに用いる Social Networking ServiceとAugmented Realityについて述べる.第
2
章
Social Networking Service
と
Agumented Reality
2.1
諸言
本章では,提案システムに用いるSocial Networking ServiceとAugmented Realityに ついて述べる.
2.2
Social Networking Service
ICT総研の調査によると,2011年12月時点の日本国内のネットユーザは9,510万人に 達しており,Social Networking Service(以下SNS)利用者はそのうちの 45%にあたる
4,289万人である.さらにSNS利用者数は年々増加する傾向にある[9].このように, SNS は多くのユーザから利用されている. 提案システムの使用にあたり,属性情報を登録する際に一つひとつ入力・登録すると通信 者に手間をかけさせることになる.これは,提案システムに限らず既存の類似サービスの属 性情報登録時においても同様の問題である.しかし,同じような情報を保有したSNSを利 用することによってその問題点を解決することができる.このことから,提案システムでは SNSに登録しているユーザ情報を属性情報として利用することにした.
2.3 Augmented Reality
2.3
Augmented Reality
Augmented Reality(以下AR)は,現実の環境から知覚に与えられる情報にコンピュー タが合成し作りだした情報を付加できる技術である.ARを用いることで,情報付加の他, 位置情報に基づいたコンテンツの閲覧,他のユーザとの情報共有などが可能となる. ARマーカと呼ばれる識別子をリーダーで読み取り,カメラに映した景観上に情報を付加 表示させるARをマーカ型ARという.また,現在ARマーカを必要としないマーカレス 型AR,位置情報を取得しARを利用する位置情報型ARも研究・実用が進んでいる.表 2.1にAR利用方法を示す. AR機器の他,スマートフォンを始めとした携帯端末でARを利用することが可能である.2.3.1
AR
マーカ
ARマーカは,マーカ型ARに用いられる識別子である.マーカ型ARではARマーカを 読み取ることで情報付加を実現する. 代表的なARマーカは正方形で基本的に外枠で囲われた領域にパターンを描いてできてい る[8].外枠でARマーカの検出を行い,パターン描画領域内のパターンに応じてマーカを 判別する.ARマーカを図2.1に示す. ARマーカにはいくつかの制約がある,その制約は以下の通りである. 1. ARマーカの形は基本的に正方形である. 2. 基本的に外枠,パターン描画領域の割合が1:2:1である. 3. 2の割合が極端に崩れていなければ外枠は変更可能であるが,変更できる限界は外枠と パターン描画領域の割合が3:14:3である. ARマーカの数値化を図2.2に示す.ARマーカ全体から白領域を検出する.検出した白 領域を分割し,解像度をもとに数値化する.ARマーカから作成されたデータファイルは数 値化するとパターンファイルとしてデータ化され,1分割につき1数値が当てはまる.なお,2.3 Augmented Reality 表2.1 AR利用方法 方式 特徴 実例 マーカ型 ARマーカと呼ばれる定型フォー マットを認識し,ARマーカのパ ターンに応じたデータや画像を画 面上に表示させることができる. ARカタログ(IKEAの例:家具の オブジェクト情報を付加したAR マーカを,家具を配置したい場所 に置き読み取る.ARマーカを読 み取ると,実物を置かなくても実 際に家具を配置したような景観が 得られる.) マーカレス型 AR マーカのように決められた フォーマットに従う必要はなく, ロゴや画像を AR マーカの代わ りに利用可能である.また,特定 の画像をマーカとして認識するの ではなく,画像の特徴を抽出し, その特徴に応じて 3D空間のマッ ピングを行ってその空間に画像を 合成する手法もある. SmartAR:物体自体を高速認識 し,カメラの動きに付加情報を追 従させ,現実の3D空間上に広が りをもって表示できる. 位置情報型 GPS や 電 子 コ ン パ ス を 利 用 し ユーザの位置や向いている方向 を取得すると,位置情報に応じた データや画像をユーザの画面上に 表示する. セカイカメラ,Layar
2.3 Augmented Reality 数値は0∼255である.パターンファイルは縦横の分割数である解像度を元にデータ化する. 図2.2の場合解像度は4×4であるため,全体を16分割して数値化する.解像度は変更可 能であり,解像度を上げることによって細かいパターンであっても認識率は十分なものであ る.しかし,解像度が上がると負荷が高くなる. 図2.1 ARマーカ 図2.2 ARマーカの数値化
2.3.2
各情報付加技術の比較
QRコードとAR,仮想窓上に重畳表示する方法の各情報付加技術の比較を 2.2に示す. 表1.1からわかるように,ARは扱えるデータ形式も多く多様性がある.そのことから,属 性情報表示に限らず,今後VWSにさらなる付加価値を生み出す可能性があると考え,本研 究で用いる方法としてARを第一候補と考えた. また,ARを除くQR コードと重畳表示を比較すると,識別子,リーダーが不要なことか ら,重畳表示はQRコードよりも手間がかからない方法であるといえる.提案システムで採2.4 結言 用する技術はシステム使用者が負担の少ない方法が望ましいと考え,重畳表示を第二候補の 方法とした.重畳表示は,ARだけではシステムに不十分な場合に補完利用する. 表2.2 各情報付加技術の比較 扱う情報 識別子 リーダー QRコード 文字 QRコード バーコードリーダー AR 文字,画像,音声,映 像,3DCG,リンク ARマーカ WEBカメラ 重畳表示 文字 不要 不要
2.4
結言
本章では,SNS 利用による属性情報付加の問題解決について述べた.また,各情報付加 技術について比較し,ARを提案システムに用いることに決定した理由を述べた.次章では, 属性付加表示について述べる.第
3
章
属性付加表示
3.1
諸言
本章では,Virtual Window Systemの追加機能である属性付加表示について述べる.
3.2
属性付加
提案方式における属性付加機能は,通信者がもとより使用している SNS を利用する.
SNSにある登録情報を取得し,通信者の属性情報として扱う.この機能を実現するために,
Virtual Window SystemにはSNSと連携するためのシステム(以下 SNS連携システム) を付加する[7].
3.2.1
SNS
連携
通信者の属性情報の取得方法として,通信者が利用しているSNSにあるデータを取得す る.既にSNSにあるデータを利用することで,通信者がVirtual Window Systemの属性 機能を使用するためだけに属性情報を新たに登録する必要が無くなる.
まず,Virtual Window Systemの通信者はVirtual Window Systemが持つSNS連携シ ステムにアクセスする.次に,SNS 連携システムからSNSにアクセスし,通信者の認証を 行う.認証終了後,通信者が利用しているSNSから登録されている情報を取得する.取得 した情報は属性情報としてVirtual Window System内で保持・管理される.
3.2 属性付加 VWS 内で管理している属性情報を参照する.そして,通信者の属性情報を付加したAR マーカを生成し,仮想窓上に表示する.
3.2.2
付加する属性項目
提案システムで付加する付加属性情報項目を表3.1に示す. 表3.1 付加属性情報項目 属性 属性を付けることによる 利点 備考 氏名 相手が誰なのかを明確化 生年月日 年齢がわかることによる 対人関係の影響 連絡先(メールアドレス, 電話番号) 連絡先を別の方法で教え る手間を省く 住所 同上 職業・所属組織(所属する 会社名や学校名) ビジネスでVWSを使用 する場合など,相手との 対人関係を認識できる 役職(学年) 同上 「職業・所属組織」に 関連する属性 趣味,嗜好 話題提供 属 性 情 報 登 録 に 利 用 し た SNS 他 コ ミュニ ケ ー ション ツールとでも繋がりを持 つきっかけができる URL 同上 会 社 HP,個 人 HP, BLOGなど3.3 属性情報表示
3.3
属性情報表示
属性情報表示について述べる.ARを用いて携帯端末上に表示する方法と,仮想窓上に重 畳表示する方法を提案する.3.3.1
携帯端末上に表示
携帯端末上に属性情報を表示する場合,通信者の持つ携帯端末にARマーカの読み取り機 能が搭載されている必要がある.仮想窓上に表示された ARマーカを携帯端末で読み取る と,携帯端末上で通信相手の属性情報が表示される. 属性情報付加から携帯端末上に属性情報を表示するまでの処理フローを図3.1に示す.離 れた空間Aと空間Bがあり,それぞれの空間に通信者A,通信者Bがいるものとする.ま た,空間Bの仮想窓となるディスプレイをディスプレイB,通信者Bが持つARマーカを 読み取る携帯端末を携帯端末Bとする.図3.1は通信者Aの属性情報が通信者Bの持つ携 帯端末上に表示されるまでの処理を表している.なお,SNS連携システム,データベース,ARソフトウェアはVirtual Window Systemの一部として属す.
通信者Aは利用しているSNSに属性情報を登録している.SNS連携システムがSNS上 にある属性情報を要求,取得し,取得した属性情報はVirtual Window System内のデータ ベースに格納される.ARソフトウェアはデータベースにある通信者Aの属性情報を取得す ると,それをもとに ARマーカを生成する.生成した ARマーカ情報はデータベースに格 納される.Virtual Window System起動時にデータベースから生成したARマーカを呼び 出しディスプレイBに表示する.携帯端末BによってARマーカを読み取り,通信者Bの 持つ携帯端末Bに属性情報が表示される.
3.3 属性情報表示
図3.1 属性情報付加から携帯端末上に属性情報を表示するまでの処理フロー
3.3 属性情報表示
3.3.2
重畳表示による属性情報表示
Virtual Window System通信者の中には,ARに対応した機器を所持していない通信者 がいることも考えられる.その場合はARによる属性情報表示の機能を利用できず,通信相 手の属性情報を確認することができない.ARによる属性情報表示機能を利用しない通信者 に対しては,仮想窓上に属性情報を表示することでARによる属性情報表示機能利用と変わ りなく属性情報を確認できるようにする.
3.3.3
属性情報重畳表示領域決定
まず,相手空間の景観画像を取得し,景観画像をメインウィンドウの幅,高さそれぞれ半 分の大きさを持つ4つの領域に分割する.分割した領域にはそれぞれ1から4の番号を割り 当てる.景観画像分割例を図3.3に示す.次に,通信者の顔を検出する.そして,通信者の 顔を検出できた領域を除く領域に割り当てた番号のもっとも数値が低い領域を属性情報重畳 表示領域に決定する.通信者の顔が含まれない領域に属性を表示させることで,描画された 通信相手に属性情報が重なることなく,取得するノンバーバール情報の損失を最小限に抑え る.属性情報重畳表示例を図3.4に示す.図3.4の場合,領域2で顔を検出している.領域 2を除く領域で割り当てられた番号の数値がもっとも低いのは領域1である.よって属性情 報を重畳表示する領域は領域1に決定・表示される. 図3.3 景観画像分割例3.3 属性情報表示 図3.4 属性情報重畳表示例
3.3.4
属性情報重畳表示の開始と終了
提案システムでは要求契機に応じて属性情報を重畳表示する. 携帯端末を使用して属性情報を確認する通信者には仮想窓上への属性情報重畳表示は不要 である.また,通信者が属性情報の確認を済ませた後は属性情報を表示する必要がなくな る.属性情報の表示を必要としなくなっても,通信を行っている間は継続して属性情報の重 畳表示を続けるとすると,不要な表示によってノンバーバル情報が減少してしまうという問 題がある.そこで,通信者が属性情報の表示を開始・終了を決定できる方法を提案する. 属性情報重畳表示の開始と終了を決定入力する方法として,ジェスチャによる入力を行う. 現在,ジェスチャ認識による入力の開発,実用化が進んでいる[10][11]. ジェスチャ入力の他にコントローラによる入力といった機器に依存する方法が挙げられる が,手が塞がる,入力のボタン操作を覚える必要がある,コントロールを紛失する可能性 があるといった問題点がある.ジェスチャ入力であればコントローラが不要なため,コント ローラによる入力の問題点を解消することができ,通信者の負担にならない.株式会社モル フォによって製品化されているジェスチャ認識では,顔検出,被写体自動追尾,動きベクト ル解析技術を利用してジェスチャ認識を行う[11].ジェスチャ認識は,まずカメラが撮影し た画像から通信者の顔を検出し,顔の位置をもとにジェスチャの認識領域を決定してから, その領域内での手の動きを追従することで実現する. 検知可能な手の動きを図3.6に示す.本研究では,4の「回転」動作を属性情報の表示開3.3 属性情報表示 始,1の「手を振る」動作を属性情報の表示終了に割り当てる.通信相手を囲むように円を 描いて手を回転することで属性情報を表示する.これは通信者に通信相手の属性情報を確認 するための動作であることを意識させることが狙いである. 手のジェスチャの処理手順を図3.5に示す.まず,カメラで通信者を捉え,ジェスチャの 認識領域内における手領域を抽出する.手領域抽出には肌色抽出とラベリングを用いる.次 に特徴量抽出,手形状認識を行い,ジェスチャ入力を行う手を認識する.そして動きベクト ル解析による手動作抽出を行い,通信者がどういうジェスチャをし,そのジェスチャがどう いったコマンドにあたるのか判断・操作反映する. 属性情報重畳表示の開始・終了までの処理の流れを図3.7に示す. 図3.5 手認識の処理の流れ 図3.6 検知可能な手の動き
3.3 属性情報表示
3.4 結言
3.3.5
通信者の位置同定
通信者の位置同定には,先行研究である位置同定法により算出された(r,θ,φ)値と 通信者までの距離Lを使用する[3].この通信者位置情報を図3.8に示す.rとφは仮想窓か ら見た空間の(y,z)平面における通信者の顔の中心座標の高さとなり,rとθは仮想窓か ら見た空間の(x,z)平面における通信者の位置となる.先行研究で提案されている通信者 の位置同定法は,カメラより取得した画像から肌色領域を抽出し,目と顔のパターンマッチ ングを行い三次元位置を導出する. 図3.8 通信者位置情報3.4
結言
本章では,属性情報付加表示について述べた.次章では提案方式の有効性と考察について 述べる.第
4
章
提案方式の比較と考察
4.1
諸言
本章では,提案方式を既存の類似サービスとの比較を行い考察し,提案システムの有効性 について述べる.4.2
比較
提案方式の有効性を示すため,類似サービスとの比較を行った.今回は属性情報付加表示 に関してのみの比較を行う. 既存の類似サービスの概念図を図4.1に示す.また,提案システムの概念図を図4.2に示 す.通信者Aと通信者BはSNSを利用しているが,類似サービスには属性情報を取得する 機能を持っていないため,連携はできない.属性情報を付加するには各サービス毎に直接属 性情報を登録する必要がある.一方提案サービスは,SNS連携システムによってSNSと連 携し,Virtual Window Systemの活用のためにSNSから属性情報を取得できる.属性情報表示方法を比較すると,類似サービスではサブウィンドウもしくはWEBブラウ ザ上に属性情報が表示される.開くウィンドウもしくはWEBブラウザのサイズがごく小さ いものであっても,通信映像を隠し,ノンバーバル情報を減少するという問題がある.提案 システムでは携帯端末上に属性情報を表示させる方法を提案した.これは携帯端末上表示は 提案システム独自の新機能である.通信相手の映像はディスプレイ上で,属性情報は携帯端 末で確認することができる.
4.3 考察 属性情報重畳表示は類似サービスと同じく通信映像を隠すという問題があるが,提案シ ステムの場合は図3.4 の提案システムの属性情報表示例のように属性情報を表示させるサ ブウィンドウを透過させるため,欠如するノンバーバル情報を最小限に抑えることができ る.また,属性情報重畳表示方法においても,類似サービスと提案システムでは大きく異 なる.類似サービスでは,機器を手にして属性情報重畳表示の開始・終了を行う.例えば, Personal Computerを用いて類似サービスを利用している場合はマウスのクリックで属性 情報重畳表示の開始・終了の入力をする.その他の場合でもコントローラなど,機器を使用 した属性情報重畳表示の開始・終了の入力操作が考えられる.提案システムでは,属性情報 重畳表示にはジェスチャ入力を用いる.そのため,通信者に操作用の機器を持たせなくとも 属性情報表示の開始・終了を行える.
4.3
考察
従来提案されていたVirtual Window Systemにおける通信者情報の取得は,通信を開始 し通信映像から得られる情報のみを行っていた.提案した属性情報付加表示機能によって, 通信映像によるノンバーバル情報の取得に加え,通信者同士が通信映像に映らないような互 いの情報を交換することが可能となり,より円滑なコミュニケーションを行えると考えられ る.また,ARによる属性情報表示によって,通信者が持つ携帯端末上への属性情報表示が 可能となる.これは想定外の人物に属性情報の公開してしまうといった事態を防ぐことがで きる.さらに,属性情報表示においては,ARを使用しない通信者に対して仮想窓上に重畳 表示する方法を提案した.仮想窓上における属性情報の重畳表示はジェスチャ入力によって 表示の開始・終了が行われ,通信者が特別な機器を用いる必要がなく,複雑な操作を必要と しないことから直観的な操作が可能である.これらのことから,属性情報付加表示すること でVirtual Window Systemは新しいコミュニケーションツールとしての価値を高められる と考えられる.
4.3 考察
図4.1 類似サービスの概念図
4.4 結言
4.4
結言
本章では既存の類似サービスとの比較を行い考察し,提案システムの有効性について述べ た.次章では本研究のまとめを述べる.
第
5
章
まとめ
本研究では,Virtual Window Systemの追加機能として,SNS と連携し通信者の情報を 取得する属性付加機能と,ARを用いて携帯端末上に属性情報を表示する属性情報表示機能 を提案した.Virtual Window SystemにおけるARの活用は,今後の展望に期待できる. また,通信者がARを使用できる機器を持っていない場合は属性情報を確認することができ ないが,補完方法として仮想窓上に属性情報を表示させる方法を提案した.仮想窓上への属 性情報重畳表示にはジェスチャ入力を用いる.そのため,通信者に操作用の機器を持たせな くとも属性情報表示の開始・終了を行える. 最後に,提案システムと類似サービスとの比較を行い,SNS 連携利用による属性情報登 録の負担の解消を示し,提案システムにおける表示方法ではノンバーバル情報の損失を最低 限に抑えコミュニケーションを円滑に行えるという有効性を示した.
5.1
今後の課題
今後の課題として以下が挙げられる. • 付加情報の多様化 本研究では,ARを属性情報付加表示に活用し,文字情報を付加表示させることを想 定した.しかしこれは多種の情報を扱えるARの特性を十分に生かしきれているとはい えない.今後は文字情報以外にも多様な情報を情報属性情報として付加表示させること が期待できる.また,今回は提案システムにARマーカを用いたが,物体認識を応用す謝辞
本研究を進めるにあたり,指導員および論文審査の主査として,多くのご指導,ご鞭撻を いただきました情報システム工学学科島村和典教授に心より深く感謝いたします.また,副 査として御助言いただきました情報システム工学科の坂本明雄教授と酒居敬一講師に心より 感謝いたします. 同じHCIグループである修士1年の野崎翔太氏には,研究についてアドバイス,激励を いただき,心より感謝いたします. また,修士2年の重松史哉氏と森木峻氏,修士1年の稲葉海斗氏にはグループの枠を超 え,貴重な助言をいただきました。心より感謝いたします。 研究室の同輩としてともに高め合った松野遼太氏,山下寛晃氏,和田倫弥氏に感謝いたし ます.共に励まし合い過ごした日々は精神的な支えとなりました。そして,これまでの学生 生活を経済面と精神面共に支えてくれた両親と祖父母,学校生活や日常生活において助言し 支えてくれた姉に心より感謝いたします. 最後に,公私共に未熟な私を支え,研究生活を充実したものにしていただいた研究室メン バー,およびOBの方々に心より感謝いたします.参考文献
[1] 西崎新悟,島村和典,“IP通信環境における遠隔空間の仮想窓接続方式に関する研究 ”, 平成18年度高知工科大学学士学位論文,2006. [2] 西崎新悟,島村和典,“ 仮想窓接続メタファーに基づく空間相互接続システムの研究 ”, 平成20年度高知工科大学修士学位論文,2008. [3] 岩城和徳,島村和典,“ パターンマッチングと肌色領域抽出の手法を用いた Virtual Window Systemにおける通信者の位置同定法 ”,平成20年度高知工科大学学士学位 論文,pp.11-20,2008. [4] 宮川篤志,島村和典,“ 仮想窓通信方式におけるCG重畳表示方式に関する研究 ”,平 成21年度高知工科大学学士学位論文,pp.7-9,2009.[5] 野崎翔太,島村和典,“ クラウド型Virtual Window Systemの処理構成に関する検討 ”,
平成22年度学士学位論文,2011. [6] 吉田允, 島村和典,“ 仮想窓通信方式におけるCG 重畳表示構造に関する研究 ”,平成 22年度学士学位論文,2011, pp.9-12. [7] 松岡奈穂, 野崎翔太, 島村和典,“ 仮想窓通信方式における通信者属性付加に関する一検 討 ”, 平成23年度電気関係学会四国支部連合大会講演論文集, 2011, p.330 [8] 翁姫雅,“ 切紙細工に基づくARマーカーのデザインと検証 ”,平成22年度慶応義塾大 学大学院メディアデザイン研究科修士論文,p.13,2010. [9] ICT総研,http://www.ictr.co.jp/topics 20111227.html,2011-11. [10] XBOX,http://www.xbox.com/ja-JP/kinect,2012-2 [11] 株 式 会 社 モ ル フォ ,http://www.morphoinc.com/products/GestureControl.html, 2012-2. [12] 岩崎義将,池永剛,“ 曲率に基づく特徴点抽出とラベリングによる追跡を行う実時間ハ ンドジェスチャインタフェース ”,火の国シンポジウム2011,2011-3.