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過去26年間のスギ花粉飛散パターンのクラスター分析

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は じ め に スギ花粉症患者の重症度はその年の飛散数に大きく左 右される.しかし大飛散の年でもその年の飛散パターン によって比較的楽に過ごせた年,かなり辛かった年など 患者の印象は微妙に異なっている.たとえばスギ花粉飛 散の最盛期が3月中旬で3月下旬に多くの花粉が飛散す る年は,最盛期が3月上旬で3月下旬にはほとんど本格 飛散が終了する年に比べて治療期間も長く重症例が多い という印象が強い.このように花粉総飛散数のみではな く,飛散パターンも患者の重症度に関与している可能性 があり,抗原回避や治療計画に役立つ有益な情報であ る.今回は過去26年間のスギ花粉の飛散パターンを旬別 飛散数の分布で示し,パターンのクラスター分析を行っ たので報告する. なお,スギ,ヒノキは最近の DNA に基づく植物分類 に従い,両者ともヒノキ科に属するので,宇佐神らは空 中花粉調査ではスギ型花粉,ヒノキ型花粉の呼称を提案 している1) .この意見に追従するが,本報告ではスギ型 花粉をスギ,ヒノキ型花粉をヒノキと略した. 対象・方法 空中花粉調査は1987年から2012年までダーラム型花粉 捕集器を用いたスライド落下法で行った.設置場所は 1998年6月までは国立津病院,同年7月からは,三重中 央医療センター屋上で,スライドは毎日交換した.花粉 は Phöbus Blackly 液で染色後,顕微鏡 下200倍 で 同 定 し,花粉数は 1cm2 あたりに換算した.各年の花粉総飛 散数および2月上旬から4月下旬までの1旬あたりのス 伊藤由紀子 国立病院機構 三重中央医療センター 耳鼻咽喉科 日耳鼻 117: 681―687,2014

過去26年間のスギ花粉飛散パターンの

クラスター分析

スギ花粉症患者や医療従事者にとっては,花粉飛散数の予測値以外に,花粉の 飛散期間,最盛期の時期,終了時期などの飛散パターンも抗原回避や治療の計画 に役立つ有益な情報である.今回はスギ花粉の飛散パターンの分類を行い,飛散 パターンの実例を示した. 空中花粉調査は1987年から2012年までダーラム法で行った.過去26年間のスギ 花粉飛散数を調べた.各年の2月上旬∼4月下旬までの1旬あたりの花粉飛散数 を変数としたクラスター分析を行った. クラスター分析の結果,飛散数の少ない谷の年11年は1群にまとまり,飛散数 の多い山の年15年は 2A,2B,2C 群に分類された.1群ではほぼ左右対称の飛 散パターンであり,3月下旬には飛散数が速やかに減少した.2A,2B 群は最盛 期より後半に多く飛散するタイプ,2C 群は最盛期より前半に多く飛散するタイ プであった.2A 群では3月下旬の飛散割合が非常に高く,引き続きヒノキの最 盛期に移行した.本格飛散日数は1群,2A,2B,2C 群ではそれぞれ38,47,47, 51日であった.2群は1群より約10日長かったが,2A,2B,2C 間に有意差はな かった. 2A群のように最盛期より後半の3月下旬の飛散量が非常に多いパターンでは 引き続きヒノキの大量飛散時期に移行するため,有症期間の長期化や重症化が懸 念された.飛散パターンという新しい概念を取り入れることで,花粉症の適切な 治療に役立てたい. キーワード : スギ花粉症,空中スギ花粉,クラスター分析, 飛散パターン分類

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ギおよびヒノキ花粉飛散数を集計した. 過去26年間の2月上旬∼4月下旬までの1旬あたりの スギ花粉飛散数を変数としたクラスター分析2)3) を行っ た.統計解析ソフトは SYSTAT(10.2)2) を用いた.飛 散パターン相互の類似度を旬別飛散数のカイ2乗(χ2 ) 値で表した.また,類似したパターンを一つのクラスタ ーにまとめる手法には完全連鎖法(Complete linkage method)を用いた.各クラスターをデンドログラムに 配置するときは,クラスター間のχ2 値を距離の値に換 算した.近距離にあるほど飛散パターンがよりよく類似 している. 分類された各群について,旬別スギ花粉飛散数を用い スギ飛散パターンの棒グラフを作成した.さらに 2A, 2B,2C 群については,スギ飛散パターンにヒノキ花粉 の旬別飛散数を追加して,スギ・ヒノキ飛散パターンの グラフを作成した.また各群の最盛期の旬とその飛散数 割合,最盛期前と後の飛散比率,3月下旬以降の飛散数 割合を比較した.さらに1日あたりのスギ花粉飛散数10 個/cm2以上を本格飛散日として,開始日から終了日ま での日数を調べ,各群間の本格飛散日数の有意差を調べ た. 1. スギ花粉総飛散数 過去26年間のスギ花粉飛散数の 年 次 変 動 を み る と (図1),飛散数の多い山の年と飛散数の少ない谷の年が ほぼ2年周期で交互に繰り返される隔年リズムがみられ た.なお山と谷の分類については後述する.全観測年の うち15年は山の年 で 平 均 飛 散 数 は7,607個/cm2 (最 小 2,350∼最大18,202),11年は谷の年で平均飛散数は1,639 個/cm2 (最小392∼最大3,012)であり,山の年 と 谷 の 年の平均飛散数比は4.6倍であった. 2. クラスター分析のデンドログラム 山の年,谷の年を別々に飛散パターンの分類を行った 結果,図2のように距離20あたりを分岐点とすると,谷 の年では距離15以内にすべての年が含まれ,これらの年 を1群とした.山の年では3群に分類され,これらを 2A,2B,2C 群とした. 3. スギ飛散パターン 分類された各群におけるスギ飛散パターンを図3に示 した.1群では最盛期は3月上旬で飛散はほぼ左右対称 分布であった.2A 群では最盛期は3月中旬で,3月下 旬の飛散数が他の群に比べて非常に多く,4月上旬によ うやく飛散数が減少した.2B 群では最盛期は3月上旬 で,3月中旬の飛散数は多いが3月下旬には飛散数が減 少した.2C 群では最盛期は3月上旬で,それ以前の2 月下旬の飛散数が多いが,3月中旬から飛散数は減少 した.3月下旬の平均飛散数を比較すると,2A 群では 2,912個,2B 群では856個,2C 群では329個であった. これら4群の特徴を表1に示した.各群に属する飛散 年次,スギ花粉総飛散数の平均値,最盛期の旬とその飛 散数割合,最盛期前と後の飛散比率,3月下旬以降の飛 散数割合および平均飛散数を示した.平均スギ総飛散数 は1群と2群間で大きく異なっており,2群の中では 2 A群が最も多く,9,420個/cm2 であった.最盛期の飛散 数 割 合 は 2A 群 が44.8%と 最 も 高 く,2C 群 が 最 低 で 図 1 スギ,ヒノキ花粉飛散数の年次変動 過去26年のスギ,ヒノキ飛散数は大きな年次変動をもち,互いに同調している. 117―682 伊藤=スギ飛散パターン分析 2014

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図 2 旬別スギ飛散数のクラスター分析 全26年の旬別飛散数のクラスター分析を,谷の年11年と山の年15年別々に行った.クラスター間の類 似度はカイ2乗値として,またクラスター間を距離でデンドログラムに示した.谷の年11年は飛散パ ターン1群に,山の年15年は 2A 群(5年),2B 群(6年),2C 群(4年)に分類された. 図 3 スギ飛散パターン スギ飛散パターンを旬別飛散数の棒グラフで示した.飛散の最盛期,3月下旬の飛散数, 飛散の減少期などを示す.

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32.7%であった.2B 群と 2C 群では平均総スギ飛散数 はほぼ同等だが,最盛期前と後の飛散比率では,2B 群 が1対5.0に対し 2C 群では1対0.4と大きく異なってい た.3月下旬以降の飛散数割合は 2A 群35.4%,2B 群 18.5%,2C 群5.9%であった. 4. スギ・ヒノキ飛散パターン 2A,2B,2C 群のスギ・ヒノキ飛散パターンを図4に 示した.2A 群では3月中旬から4月上旬まで連続して 3,000個/cm2以上のスギ,ヒノキ花粉の飛散がみられ た.2B 群では3月下旬に,2C 群では3月中旬と下旬に スギ,ヒノキ花粉の飛散がいったん1,000個/cm2 程度に 減少し,その後4月上旬から4月中旬にヒノキ花粉飛散 の最盛期がみられた. 5. 各群のスギ本格飛散日数 スギ本格飛散日数平均の比較(図5)では,2A,2B, 2C群の間には有意差はなかったが,1群と2群全体の 比較では,2群は1群より飛散日数が10日有意に長かっ た. スギ花粉飛散数の多い年では飛散期間も長く,重症例 が多いことは耳鼻咽喉科医をはじめ一般によく知られて いる.スギ花粉飛散数はほぼ隔年リズムで増減するが, 飛散数が多い年でも飛散パターンの違いによって患者の 表 1 スギ飛散パターン4群の比較 飛散リズム 飛散パターン 谷の年 山の年 1群 2A群 2B群 2C群 年次 1987,1989,1992 1994,1996,1998 2000,2002,2004 2006,2010 1991,1995 2001,2005 2008 1988,1993 1997,1999 2011,2012 1990,2003 2007,2009 平均スギ総飛散数(個/cm2 ) 1,639 9,420 6,761 6,613 最盛期 最盛期の飛散数割合 3月上旬 42.9% 3月中旬 44.8% 3月上旬 36.9% 3月上旬 32.7% 最盛期前と後の飛散比率 1 : 1.2 1 : 1.8 1 : 5.0 1 : 0.4 3月下旬以降の飛散数割合 平均飛散数(個/cm2 10.5% 168 35.4% 3,377 18.5% 1,250 5.9% 389 飛散パターン4群に属した年次および飛散パターンの特徴をまとめた.平均スギ総飛散数,最盛期, 最盛期の大きさ,最盛期の偏り,3月下旬以降の飛散減少期の飛散数と割合を示した. 図 4 スギ・ヒノキ飛散パターン 各群についてスギとヒノキ飛散の2重花粉曝露の状況を示す. 117―684 伊藤=スギ飛散パターン分析 2014

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重症感が異なっている印象があり,本報告でスギ飛散パ ターンの分析を試みた. 山の年,谷の年の分類 : スギ花粉数の年次変動は極め て大きいため,クラスター分析ではあらかじめ山の年と 谷の年の2群に分けて行った.その理由は比較的飛散数 の多い山の年の飛散パターンの違いを明らかにすること に重点を置いたためである.山の年,谷の年は樹木のバ イオリズムにおける表年,裏年の意味で,これまで飛散 数予測の際の変数として活用してきた4)5) .前年秋冬期 (10∼12月)のスギ花粉飛散数と翌年開花期の飛散数の 変動リズムが同調することから6) ,秋冬期花粉数に基 づいて分類している.具体的には,秋冬期花粉数が10 個/cm2 以上ならば翌春は山の年,10個/cm2 未満ならば 谷の年と判定してきた.そのため少数例ではあるがスギ 総飛散数において,山の年の最小花粉数と谷の年の最大 花粉数に逆転がみられた.近年スギ総飛散数,秋冬期花 粉数ともに有意な増加傾向がみられ(未発表データ), 2006年以降秋冬期花粉数の臨界値を15個/cm2に改正し て判定している.最近夏の猛暑の影響で,規則正しい隔 年周期の乱れが頻繁に起こるようになり,山の年が増加 してきた.2008年は前年冬期花粉数が23.9個/cm2であ ったため山の年の分類となった. スギとヒノキの飛散パターン : スギ花粉飛散数とヒノ キ花粉飛散数との間には高い正の相関(r=0.937,p< 0.01,1987∼2012)があり,ほぼ同調した隔年リズムを とるので,スギ飛散数が多い年はヒノキ飛散数も多い. スギ花粉症患者の多くはヒノキ飛散期にも発症し,大量 飛散年では春の花粉症状の終了時期を遅らせる.1995年 (2A 群)の調査では,スギ花粉症患者113名のヒノキ IgE 抗体陽性率は80.5%であり,さらに患者の70%はスギ花 粉飛散終了後も症状が持続していた7) .スギ・ヒノキ花 粉飛散数は症状の強さや有症期間に密接に関連している が,特にスギ飛散の最盛期とヒノキ飛散の最盛期との時 間的な間隔が短いほど症状の重症化につながると考えら れる.2A 群ではスギの最盛期が3月中旬と遅く3月下 旬の飛散数が非常に多いため,ヒノキの最盛期まで連続 して前記のように3,000個以上のスギ・ヒノキ混合花粉 の飛散がみられた.長期間大量の抗原曝露を受けること により,鼻粘膜の過敏性がますます亢進し,上気道のア レルギー性炎症が重症化するのではないかと推測され る.このような飛散パターンの年は,当院では春の花粉 シーズン後半の4月以降から5月にかけて鼻閉や咳を長 期間訴える例をしばしば経験している.花粉シーズンの 後半にはいわゆる priming effect により抗原感受性が上 昇することが知られている8) .すなわち,花粉飛散量が ピーク時よりも減少しているにもかかわらず強い症状を 有すること,また通常では発症しない他の感作抗原に対 しても発症することがあるとされている.この時期にさ らに多量のヒノキの抗原曝露を受けることにより,ます ます慢性的なアレルギー炎症9) としての症状が誘発され るものと推察される.通常ヒノキ飛散期の方が,スギ飛 散期よりも症状は軽度であるが,スギ飛散の priming effectが働き,ヒノキ飛散期の症状が増強するのではな いかとも考えられる. スギ飛散パターンとスギ花粉症患者の受診動態 : 最近 の大量飛散年で飛散パター ン の 異 な っ て い る2009年 (2C 群)と2011年(2B 群)について受診動態や治療状 況を比較した.イネ科や通年性抗原合併例を除外したス ギ花粉症患者のうち,両年とも当科で加療した同一患者 61例について4月以降にも再診した患者の割合を調べた と こ ろ,2009年 で は34.4%,2011年 で は60.7%で あ っ た.またこれらの患者に対する抗アレルギー剤投与日数 は2009年で は 平 均55.1日,2011年 で は69.2日 で あ り, 2009年より約2週間有意に長かった(paired t―test,p< 0.01).2B 群は 2C 群より最盛期後の飛散比率が高いた め,2011年では4月以降も症状が軽減せず,追加処方が 必要であった例が多かったものと思われる. 過去の報告では西端,斉藤10) による東京都5カ所の実 態調査において,スギ花粉飛散のピークが3月上旬であ った1990年とピークが3月中旬であった1991年の4月の 図 5 各群のスギ本格飛散日数 本格飛散は1日あたり花粉10個/cm2 以上とし, 飛散パターンごとの本格飛散日数を比較した.山 の年の3群間には有意差はなく,山の年3群と谷 の年1群との間に有意差があった.

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再診患者数を比較すると,1990年より1991年で明らかに 多い傾向がみられた.東京都での1990年の飛散パターン は今回の分類の 2C 群に,1991年は 2A 群に相当する. また宇佐神は2013年浜松市(静岡)のスギ,ヒノキ花 粉の飛散は3月に多かったが,4月には例年にみられる ピークを形成しなかったため,4月から受診患者も急減 したと報告している11) .本報告には2013年の事例は含ま れていないが,当地域でもスギ飛散のピークは3月上 旬,ヒノキのピークは3月下旬であり,4月は飛散数が 少なく受診患者も急減した.このように飛散パターンは 患者の受診動態にかなり影響を及ぼすと考えられる. スギ飛散パターンの予測 : 2A,2B,2C 群に属する年 の2月の平均気温をみると,2A 群では平年値より低い 年が多く(−1.3∼+0.2℃),2B 群では平年値より低い 年,高い年が混在し(−1.3∼+0.9℃),2C 群ではすべ での年で平年値より高く(+0.6∼+2.7℃),2003年以 外の 2C 群では2.0℃以上高かった.したがって2月の 平均気温がかなり高い年では最盛期が早く,最盛期以前 の飛散割合も高くなる可能性が大きい.逆に2月の平均 気温が低く,3月上旬まで平年値以下の年では最盛期が 遅くなり最盛期以降の飛散割合が高くなると予想され る. 最盛期の予測には最大飛散日の予測がポイントとな る.最大飛散日の予測についてはスギ飛散開始日からの 平均気温の積算値で推定する方法を検討中であるが,ま だ予測式を作成できる段階には至っていない.本格飛散 日数と最大飛散日の花粉数はスギ花粉総飛散数予測値か ら推測できるので12) ,さらに最大飛散日の時期を設定す ることによって表1にある飛散パターンの特徴をある程 度推定できるものと思われる. スギ飛散の最盛期の時期や本格飛散の終了はいつなの か,患者や医療従事者にとって重要な関心事ではある が,今まであまり注目されたことがなかった.花粉シー ズン中にどのような治療がいつまで必要か,適切な治療 には花粉飛散の進行や終了の情報が不可欠である.3月 上旬までに飛散パターンの特徴がつかめれば,臨床の現 場に活かせるのではないかと思う. 過去26年のスギ花粉の旬別飛散数を用いたクラスター 分析では,飛散パターンは4群に大別された.飛散パタ ーン 2A 群では(26例中5例),シーズン後半に飛散数 が偏り,後続のヒノキ飛散に移行した.スギ花粉の抗原 感受性の上昇あるいはスギ,ヒノキの多重抗原曝露など に伴い,有症期間の長期化や重症化が懸念された.飛散 パターンという新しい概念を取り入れることで,花粉症 の適切な治療に役立てたい. 参 考 文 献 1)宇佐神 篤, 袴田哲司, 原田隆雄 : 浜松市におけるスギ 花粉飛散数の2011年結果と2012年予測. 東海花粉症研究 会誌 2012; 23: 26―43.

2)SYSTAT : Statistics Ⅰ, Version 10.2 Edition. Evanston, Illinois, USA : Systat, 2003(Hulinks 日本語版 ; 39―62頁). 3)佐藤義治 : 多変量データの分類. Part II クラスター分

析. 朝倉書店 ; 2009: 87―170頁.

4)Ito Y, Hattori R, Mase H, et al : Forecasting methods for sugi(Cryptomeria japonica D. Don)pollen count show-ing an alternate dispersal rhythm. Allergol Int 2008 ; 57 : 321―329. 5)伊藤由紀子, 服部玲子, 間瀬広樹, 他 : 三重県津市久居 地区でのスギ, ヒノキ科花粉の2012年予測と2011年飛散 結果についての所見. 東海花粉症研究会誌 2012; 23: 18―25. 6)伊藤由紀子, 服部玲子 : 秋冬期のスギ(Cryptomeria ja-ponica)花粉飛散について―過去24年間の花粉飛散状況 と秋冬期花粉飛散に関するアンケート調査―. 職業・環 境アレルギー誌 2012; 19: 49―55. 7)伊藤由紀子, 高橋志光, 松浦 徹, 他 : スギ花粉症の症 状終了時期に関する検討―1995年の症状終了時期の調査 と症状終了時期に関与する要因について―. アレルギー 1996; 45: 1277―1284.

8)Connell JT : Quantitative intranasal pollen challenges III. The priming effect in allergic rhinitis. J Allergy 1969 ; 43 : 33―44. 9)寺田哲也 : 花粉曝露室を用いて何がわかるか?JOHNS 2013 ; 28 : 39―42. 10)西端慎一, 斉藤洋三 : 花粉症患者の実態調査成績―スギ 花粉症患者の医療機関受診数について―. JOHNS 1994 ; 10 : 287―296. 11)宇佐神 篤 : 花粉症の研究∼13年のヒノキ科花粉飛散数 とスギ花粉症∼. 日鼻誌 2013; 52: 343. 12)伊藤由紀子, 小林加奈, 佐子詠美, 他 : シーズン中にお けるスギ, ヒノキ花粉飛散数の再評価と飛散終了時期の 予測について. アレルギー 2013; 62: 1343. 117―686 伊藤=スギ飛散パターン分析 2014

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統計解析に関してご指導いただきました三重大学名誉教 授,塩谷 格先生に深謝いたします.また過去26年間スライ ドの交換に協力していただいた当科の先生方に深謝いたしま す. 本稿の要旨は2013年5月17日,第114回日本耳鼻咽喉科学 会学術講演会で口演した. 利益相反に該当する事項はない (2013年10月15日受稿 2014年3月14日受理 急載) 別刷請求先 〒514―1101 津市久居明神町2158―5 三重中央医療センター耳鼻咽喉科 伊藤由紀子

Clustering Sugi―pollen Dispersal Patterns for the Past 26 Years Yukiko Ito, M.D.

Department of Otorhinolaryngology, National Hospital Organization, Mie chuo Medical Center, Tsu

Background : Pollinosis caused by the pollen of Sugi(Cryptopmeria japonica)trees is the most significant allergic disease occurring in the spring in Japan. For pollinosis patients and medical staff, it is important to know when the pol-len dispersion would reach maximum or when the polpol-len count would decrease as well as knowing what would the total density of pollen grains be. These sorts of information could be useful for the purpose of disease prevention and decid-ing on the therapeutic regimen. In this study, we presented the sugi―dispersal patterns and cited several examples of the dispersal pattern.

Methods : Airborne pollen grains were collected using a Durham sampler. Total annual pollen counts/cm2 were examined. The sugi―dispersal patterns were classified into several groups by cluster analysis using variables of ten days pollen counts distribution from February to April for the past 26 years.(1987―2012).

Result : The annual pollen count revealed an alternate rhythm consisting of an “on” year(high pollen count)and an “off” year(low pollen count). The results of the cluster analysis showed eleven off―years classified as one group(group 1),and fifteen on―years classified into three groups(groups 2A, 2B, and 2C).

The dispersal pattern in group 1 was almost symmetrical with the pollen count rapidly decreasing until late―March. On the other hand, the patterns in group 2 were asymmetrical. In group 2A and 2B a high rate of dispersion was indi-cated after maximum dispersion, whereas in group 2C the high rate of dispersion was indiindi-cated before maximum disper-sion. In group 2A, a major dispersion of almost 3000 grains was noted in late―March, and immediately proceeded to the cypress(Chamaecyparis)pollen season without any decrease seen in pollen dispersion.

The periods of dispersion of over 10 pollen grains/cm2

per day were 38, 47, 47 and 51 days in groups 1, 2A, 2B and 2C, respectively. That in group 2 was significantly longer than that in group 1, but there was no significant differences between groups 2A, 2B and 2C.

Conclusion : In conclusion, in the dispersal pattern whereby a major dispersion was seen in late―March and pro-ceeded to the cypress pollen season such as in group 2A, patients’ symptoms might be prolonged or be more serious. This new concept of dispersal pattern could very well be useful for clinical management of pollinosis.

Keywords : Sugi pollinosis, airborne pollen dispersion, cluster analysis, dispersal pattern Nippon Jibiinkoka Gakkai Kaiho(Tokyo)117 : 681―687, 2014

図 2 旬別スギ飛散数のクラスター分析 全26年の旬別飛散数のクラスター分析を,谷の年11年と山の年15年別々に行った.クラスター間の類 似度はカイ2乗値として,またクラスター間を距離でデンドログラムに示した.谷の年11年は飛散パ ターン1群に,山の年15年は 2A 群(5年),2B 群(6年),2C 群(4年)に分類された. 図 3 スギ飛散パターン スギ飛散パターンを旬別飛散数の棒グラフで示した.飛散の最盛期,3月下旬の飛散数, 飛散の減少期などを示す.

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