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粉飾決算と過年度損益修正 1. 概要 経営上の諸般の事情により やむを得ず粉飾して架空売上や架空在庫を計上する場合があります 前期以前の 過年度の決算が間違っていた場合は 会計上は当期の期首で修正できます ただし 過年度の損失を当期に損金算入すれば その事業年度に損金計上すべきであり 過年度の損失は

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Academic year: 2021

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 粉飾決算と過年度損益修正

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粉飾決算と過年度損益修正

1.概要 経営上の諸般の事情により、やむを得ず粉飾して架空売上や架空在庫を計上する場合があります。前期以前の 過年度の決算が間違っていた場合は、会計上は当期の期首で修正できます。 ただし、過年度の損失を当期に損金算入すれば、「その事業年度に損金計上すべきであり、過年度の損失は当期 の損金ではない」という理由で更正処分をされます(法法 22③三)。つまり、会計上の修正は当期で出来ても過去の 損失を当期の税務上の損金に計上することは出来ません(国税不服審判所 平成 18 年 11 月 21 日裁決事例、東京 地裁 平成 22 年 9 月 10 日判決 係属中)。 2.設例 ①架空売上の計上 :264 百万円(平成 12 年 3 月期) ②減価償却の停止 :318 百万円(平成 16 年 3 月期) ③架空在庫の計上 :124 百万円(平成 20 年 3 月期) これらについて、平成 24 年 3 月期決算で会計上は期首・貸借対照表と株主資本等変動計算書で処理した。 平成 24 年 3 月期の貸借対照表と損益計算書は、以下の通り。 (金額単位:百万円) 諸資産 22,000 諸負債 18,000 資本金 1,000 利益剰余金 3,000 原価 242,500 売上高 245,000 当期利益 2,500

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3.会計処理 上記の①~③の粉飾決算について、従来は損益計算書の特別損失に「過年度損益修正損」として計上していまし た。しかし、平成 23 年 4 月 1 日以降開始する事業年度からは、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」 が適用されます。このため、期首の資産・負債・純資産に修正内容を反映させます。 区分 会計処理 ①会計上の変更 A)会計方針の変更 遡及処理する(遡及適用) B)表示方法の変更 遡及処理する(財務諸表の組み替え) C)会計上の見積もりの変更 遡及処理しない ②過去の誤謬の訂正 遡及処理する(修正再表示) 平成 24 年 3 月期の期首時点の具体的な会計処理は、以下の通りです。 (金額単位:百万円) 売上高 264 売掛金 264 減価償却費 318 減価償却累計額 318 売上原価 124 棚卸資産 124 利益剰余金 706 売上高 264 減価償却費 318 売上原価 124 上記の①~③の粉飾決算については、会計上は②過去の誤謬の訂正に該当するので当期首の資産・負債・純資 産を修正再表示して誤謬の内容を注記表に注記します(会計規 102 条の 5)。上記事例のケースでは、以下の注記 例が考えられます。 当社は、会計上の誤謬により平成 12 年 3 月期に売上高を、平成 16 年 3 月期に固定資産を、平成 20 年 3 月期に棚卸資産を過大 に計上していた。この会計上の誤謬は修正再表示により訂正されるため、当期首の貸借対照表は売掛金が 264 百万円、固定資産が 318 百万円、棚卸資産が 124 百万円減少することにより、利益剰余金が 706 百万円減少する。この結果、当期の株主資本等変動計算 書の期首利益剰余金を 706 百万円減少させている。なお、仮装経理に該当するものは、売上高と棚卸資産に関するものである。

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平成 24 年 3 月期で上記設例の誤謬を訂正した場合の株主資本等変動計算書の記載例は、以下の通りです。 (金額単位:百万円) 株主資本 1,000 利益剰余金 当期首残高 1,206 過去の誤謬の訂正による累積的影響額 △706 遡及処理後当期首残高(X) 500 当期変動額 当期純利益 2,500 当期変動額計(Y) 2,500 当期末残高(X+Y) 3,000 4.税務処理 会社が過大申告していた場合は、その事実を修正経理した確定申告書を提出するまで税務署長は更正をしない ことが出来ます(法法 129①)。具体的な修正経理とは、損益計算書の特別損失に「過年度損益修正損」として明示 する事です。この取扱いは、過年度の仮装経理を修正した事実を明確に表示することを義務付けることで粉飾決算 を防止し、真実の経理の公開を確保しようという趣旨によるものです(大阪地裁 平成元年 6 月 29 日判決)。税務上は、 上記設例①~③の損失は別表四で加算・留保つまり自己否認して提出し、税務署長に職権による減額更正の嘆願 書や上申書を提出することになります。納税者が過大申告をした場合は、法定申告期限から 1 年以内ならば更正の 請求が出来ます(通則法 23①)。1 年超 5 年以下の場合は、実務上は「嘆願の請求」をして税務署長に任意で減額更 正をお願いすることになります。5 年を超えると、納めすぎた税金は還付されません(通則法 70②)。 ①については法定申告期限から 5 年経過しているため、減額更正の対象となりません。②は会計上の判断や選択 の結果であり仮装経理ではないので、減額更正の対象となりません。③は平成 25 年 5 月までに更正されると、更正の 日の属する事業年度から 5 年間で納付すべき法人税額から順次控除されます。 仮装経理によって過年度に過大納付された法人税額は、減額更正が行われても通常の更正の請求のように還付 加算金がついたり直後に還付される訳ではありません。更正年度以後 5 年間の通常の法人税額から、順に税額控除 することとされています(法法 70①、135③)。但し、その更正年度の前年度に納付法人税額がある場合には、その分

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失念で損金計上した場合や租税特別措置法の特例の適用失念のケースも適法なので更正の請求は出来ません。 税務上も粉飾決算を未然に防止するために、違法な仮装経理を行うことに厳しい取扱いがなされています。上記事 例のケースで、平成 24 年 3 月期の法人税申告書の記載例は以下の通りです。 <別表四> 区分 総額 留保 社外流出 ① ② ③ 当期利益又は当期欠損の額 3,000 3,000 加算 減算 仮計 3,000 3,000 <別表五(一)> Ⅰ 利益積立金額の計算に関する明細書 区分 期首利益積立金 期中増減 期末 減少 増加 売掛金 264 264 固定資産 318 318 棚卸資産 124 124 繰越損益金 500 500 3,000 3,000 Ⅱ 資本金等の額の計算に関する明細書 区分 期首資本金等の額 期中増減 期末 減少 増加 資本金 1,000 1,000 上記のうち、売掛金と固定資産に関する会計と税務の差異は法律上更正することができません。このため、売掛金 は永久に、固定資産は税務上の減価償却が終了するまで別表五に残存することになります。棚卸資産は任意での 更正の嘆願が受け入れられた場合に、会計との差異が解消します。

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5.平成 21 年度税制改正 粉飾していた会社が民事再生法や会社更生法の適用を申請しても、上記取扱いの例外となりませんでした。つま り、原則通り更正に伴い減額された法人税額も 5 年の繰越控除後の還付となっていました。このため、事業再生スキ ームでは過大納付法人税の還付を早期化するために破産を選択したり、連結納税制度を適用したり、解散するスキ ームが良くあります(旧・法法 134 条の 2③二、国税不服審判所 昭和 46 年 9 月 27 日裁決事例)。平成 21 年度税制 改正により、株主責任と経営者責任が追及された以下のようなケースでは、繰越控除制度の適用を終了し仮装経理 法人税額の早期還付が認められるように手当てされました(法法 135③④)。 ① 会社更生法等の更正手続開始の決定があった場合 ② 民事再生法の規定による再生手続開始の決定があった場合 ③ ①、②に準ずる一定の会社整理の場合(法令 174 の 2②) この改正は、平成 21 年 4 月 1 日以後に生じる企業再生事由について適用されます。 6.平成 23 年度税制改正 平成 22 年 12 月 16 日に公表された政府の平成 23 年度税制改正大綱では、当初の申告要件の廃止や納税者の 更正の請求期限の 1 年から 5 年への延長が予定されています。更正の請求期限の延長により、上記の粉飾決算また は税務上の仮装経理に関する取り扱いに変更が生じるかどうかについて、今後の動向が注目されます。

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7.その他の留意事項 (1)消費税の取り扱い 消費税では、上記の法人税のような仮装経理の取扱いがありません。つまり、架空売上を計上した場合でも、過大 納付した消費税等は 1 年以内の更正の請求でしかリカバリーできません。 (2)上場企業の会計上の取り扱い 上場企業では巨額の過年度損益修正を当期の損益計算書に計上するか、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関 する会計基準」に従い当期の有価証券報告書等を修正再表示して管轄の財務局に提出するか、を金額的重要性に 応じて検討する必要があります(企業会計基準委員会 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 平成 21 年 12 月 4 日 第 21、65 項)。この会計基準は、平成 23 年 4 月 1 日以降に開始する事業年度から適用されます。従 来は、過年度の損益計算を修正する場合は、「過年度損益修正損益」を当期の損益計算書の特別損益に計上して いました。今後はこの会計基準が適用されて、修正額を損益計算書ではなく貸借対照表の期首の繰越利益剰余金 等に反映することになります。会計上の粉飾決算・税務上の仮装経理があった場合は、この期首の訂正が修正経理 に該当します(法法 129①、法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理 について(情報)Q5、Q8)。

Reference Purpose Only

本レターに掲載している情報は、一般的なガイダンスに限定されています。この文書は、個別具体的ケースに対する会計・税務のア ドバイスをするものではありません。会計上の判断や税法の適用結果は、事実認定や個別事情によって大幅に異なることがありえます。 また、解説の前提となる会計規則や税制が変更されている可能性もあります。実際に企画・実行される場合は、当事務所の担当者にご 確認ください。

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