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International Association of P2M Journal of the International Association of P2M Vol.8 No.2, pp , 2014 研究論文 P2M 支援 ICT プラットフォームの構築に向けた要件調査 Requ

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研究論文

† 千葉工業大学 社会システム科学部 プロジェクトマネジメント学科

P2M 支援 ICT プラットフォームの構築に向けた要件調査

Requirements Survey for Constructing an ICT Platform Supporting the P2M

田隈 広紀

Hironori TAKUMA

† P2M 理論の標準化とさらなる普及を目的に、P2M を支援する ICT プラットフォームの構築に 必要な要件調査を行った。プログラム統合化とコミュニティ形成を促すプラットフォームの要件 事項をサーベイし、さらに P2M の有識者へプラットフォームの利活用に関する聞き取り調査を 行った。これらを元に ICT を利用した P2M 支援プラットフォームの要件事項を考察した。 この結果、Web 上にプログラムアーキテクチャを共有するコンテンツを構築し、これを軸に 各種分析や情報共有を行うサブコンテンツを連動させ、さらにプログラムの進行やメンバの階層 に応じた情報登録を可能にする実装イメージが導出された。 今後は調査結果を元にプロトタイプ化を行い、要求事項のさらなる具体化を図っていく。 キーワード: P2M、ICT、プラットフォーム、統合マネジメント、コミュニティマネジメント、サ ーベイ、聞き取り調査

Aiming at the standardization and making more spread of the P2M concepts, the author carried out re-quirements survey for the ICT platform supporting the P2M. The author carried out rere-quirements survey for the platform promoting the formation of community and integration of the program and moreover hearing survey to P2M experts concerning the utilization of the platform. Requirement items for the P2M supporting platform using ICT were studied based on these surveys.

Consequently, contents sharing program architecture were constructed on the web, sub contents carrying out various analyses or information sharing were connected based on these and furthermore implementa-tion image making possible progress of the program or informaimplementa-tion registraimplementa-tion according to hierarchy of members were derived.

In future, prototyping of the ICT system will be made and more concrete requirement items be made up based on the survey results.

Keywords: P2M, ICT, Platform, Integration Management, Community Management, Hearing Survey

1. 緒言

社会的課題の解決や、国際競争力の維持向上のため、科学技術駆動型のイノベーション推進 が注目されている。政府は産学官が相互作用し、持続発展するための「イノベーション・エコ システム」の確立を目指し、種々の施策を打ち出している[1]。こうした施策が重視する共通事 項に「目的志向」「中長期的視点」「異分野の融合」「場の創出」が挙げられる。例えば文部科 学省(2010)の「イノベーション促進のための産学官連携基本戦略」では、多様なセクタの人材 が出口イメージを共有しつつ、戦略的な共同研究を効率的に生み出す「場」を整備し、リサー チ・アドミニストレータ等のマネジメント人材を積極登用して推進することを提言している[2]

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ここで前述の「場」のように、中長期のミッション達成に向け、多様な人材が連携・共働す る論理的な基盤を、「プラットフォーム」と称する組織が増えてきている。例えば内閣府の「科 学技術イノベーション戦略協議会」は、政府のミッションである「復興・再生」「グリーンイ ノベーション」「ライフイノベーション」を達成するために、産学官の関係者が幅広く参画し て共働を促すプラットフォームとして創設された[3] P2M は、まさにこうしたイノベーション促進や構造改革を実現するための知識体系である。 そしてプラットフォームを、プログラムの共同作業を促進する仕組みに位置づけている。P2M の正式名称は「Project & Program Management for Enterprise Innovation」であり、2001 年に日本 で発信されたマネジメント知識体系である。P2M では、プロジェクトを「価値創造事業」と位 置付け、欧米版のプロジェクトマネジメント理論を包括して、事業家の立場で投資から回収の ライフサイクルをコントロールする [4]。P2M におけるプログラムマネジメントの定義は「複数 のプロジェクト群が自律分散的に活動でき、これらを統合的にコントロールする体制を整備す るアーキテクチャマネジメントや、これらに関連するプログラム戦略・価値評価に関するマネ ジメント」である[5]。そしてミッションプロファイリング・コミュニティ・アーキテクチャ・ アセスメントの4基盤を構築し、プログラム活動の統合化・最適化を図る。 ここで「コミュニティ」は、知的資源の一体化を目的とした基盤で、人間系・情報系・文化 系の基盤から構成される。その属性としては「全体に共有する意義としてのコンテキスト」「プ ログラムに必要な広い視野を持つ専門的な人材の創造力」「共通の場での協業」「自由なネット ワーク環境でのコミュニケーション」「プログラムに要求される知的水準の高いコンテンツ」 「経験と知恵を投入する集中」の 6 つが挙げられている[6] プログラムのプロセスは、初期の P2M 理論では「標準プロジェクトモデル」と呼んでいる。 これはミッションの達成と不確実性への対応を前提とした、プロジェクトのアーキテクチャモ デルである [6]。このモデルを実務で構成するプロセスとして、下記が紹介されている [7] (1) スキームモデル (a) ミッションプロファイリング (b) プログラム戦略の立案 (c) プログラムアーキテクチャの立案 (d) アセスメントの指標とマイルストン設定 (2) システムモデル (a) プログラム実行の統合マネジメント実施 (b) 個別プロジェクトの遂行 (3) サービスモデル (a) 収益の確保 (b) アセスメントの実行(成果の評価) (c) ナレッジの蓄積 (d) 新スキームへのリニューアル

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図1は上記プロセスを、スキーム、システム、サービスから構成される 3S モデルの関連性 と共に示した概念図である。前述の「コミュニティ」は、これらの活動全体を支援する基盤で あり、そのデザインはプラットフォームマネジメントの手順の中で行われる。そこではコミュ ニケーション(ネットワークによる人材交流)、人材結集(オープンな風土づくり)、魅力ある テーマとリーダシップの 3 要素を踏まえ、人的交流による価値創造の場づくりを進める[6] 図1 P2M の適用手順と 3S モデルとの関連イメージ(参考文献[7]から引用) 以上の概念から P2M におけるプラットフォームとは、プログラムの 3S モデル全体を、価値 創造活動で必要な規範・ルール・人的交流・情報処理等を提供することで支援する仕組みとい える。このような考え方に沿い、P2M 及びそれを支援するプラットフォームの実証研究が、既 に複数報告されている。例えば田隈ら(2013)は、研究開発を支援するための ICT ツールとして、 P2M 理論および、その支援ツールであるロジックモデルとバランススコアカードを用いた研究 計画支援システム「いのらぼ」を実装し、大学研究にてその有効性を確認している[8]。ここで は特に、複数技術の統合化や、ステークホルダ間の利害調整に対する効果の検証を行っている。 また和田ら(2012)は企業の研究開発の効率化と活性化を図るため、実務に対して P2M における プラットフォームの概念を適用し、その有効性を確認している[9]。和田らの研究では、プログ ラムにおける「開発型」と「オペレーショナル型」の両方に、共働の場が必要であることを示 している。これは現在定義されているプログラムの種類に関わらず、プラットフォームの有用 性があることを示唆している。さらに中山ら(2011)は、環境事業と地域活性化を両立するプロ グラムにおいて、参加者の意識共有を図る基盤の構築と、事業を実行するために必要となる ICT ツールの構築を、プラットフォーム理論に基づき行っており、その有効性を確認している[10] しかしこれらの実証研究は、プラットフォームの有効性を単体の事例で確認した段階である。 上述した先行研究では、適用事例を重ねることによる追証及び、理論の再整理と深掘りを、共 に今後の課題に挙げている。本研究では、P2M の導入・運営を支援するプラットフォームを、 ICT を利用して実装することを目指し、その要件を調査する。そしてそれを、P2M 支援プラッ トフォーム導入の効果の仮説として導出する。上記の ICT プラットフォームが実装されれば、 P2M 理論の導入を容易化でき、加えて既存の理論と手法のさらなる具体化、有機的な結合、標 準化、普及が実現されるものと思料する。

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2. 研究方法

研究の目的である要件調査の方法を記す。先行研究のサーベイは、主に国際 P2M 学会誌の 関連研究からプラットフォームに関連する理論・概念を抽出し、これを筆者にてアブダクティ ブに整理する。これに加えて、他学会のジャーナルや著書から適宜理論を引用し、要件抽出の 補強を図る。聞き取り調査は、P2M 有識者として東京農工大学大学院の亀山秀雄教授及び、そ の研究室に所属する実務経験を有する博士後期課程の学生 8 名を対象に行った。方法として、 本研究の目的と ICT プラットフォームのイメージを示したうえで、この妥当性や補強要素を、 実務の視点から助言頂く方式とした。聞き取りに要した時間は、約1時間である。 以上の調査結果を元に、4 章にて ICT プラットフォームの概念図及び、要求機能とその実現 方式を考察する。これらを、ICT にて P2M 支援プラットフォームを構築・導入した際に得られ る効果の仮説として導出する。なお、この仮説は上記の趣旨及び手順にて筆者が考察し導出し たものであり、試行実験等による実用性の検証は行っていないことを付言する。

3. 要件調査の結果

先行研究のサーベイと聞き取り調査の結果と考察結果を記す。 3.1. 文献調査の結果 研究方法の手順に従い、文献調査を行った結果を記す。手順として、まず「プラットフォー ム」が P2M の導入・運営全体を支援するとの認識から、全体構成として「プラットフォーム 全体の構成と要求機能」をサーベイにて定義する。さらにより具体的な要求機能を定義するた め、プログラムマネジメントの中核概念である「統合化」と「コミュニティ形成」の 2 つの観 点を定めて文献調査を行い、それぞれのマネジメントに求められる要件事項を抽出・整理する。 3.1.1. プラットフォーム全体の構成と要求機能 ビジネス・行政・学術領域では「プラットフォーム」という用語を、ヒト・モノ・カネ・情 報等の資源を集め、所定の目的を果たすための基盤という共通理解のもと、複数の応用的解釈 をしている。根来・足代(2011)はこうした解釈を整理するべく、プラットフォームの共有範囲 や対象物に基づき、3 つの分類を提案している[11]。これによれば「不特定多数のプレイヤーグ ループ内やグループ間の意識的相互作用の場を提供する製品・サービス」を、プラットフォー ム製品論における「媒体型プラットフォーム論」と定義している。さらに発展的議論として、 このプラットフォームを拡張し、ビジネスではなく社会に対して適用する「社会プラットフォ ーム論」という用語を提案している。これは P2M で論じられるプラットフォームの役割に適 合する解釈である。本項ではこの定義に類する先行研究から、プラットフォーム全体の構成と 要求機能の導出を試みる。 小原(2011)は P2M 理論におけるプラットフォームを「人間系、情報系、文化系におけるコミ

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ュニケーション、知識獲得のために形成された協働作業のための特定の場と機能」と定義して いる[12]。この研究の中で小原は、初期の P2M 標準ガイドブックでのプラットフォームの概念 を「プログラムに参加するメンバの環境インフラを意味する。その基本仕様標準は、人間系、 情報系、文化系に関する知的資産を利用するために、知識、情報の資源利用のフローアクセス と新たな経験や知見をストックさせる構造と機能を充足する。プラットフォームのデザインは、 メンバの人的交流を促進し、コラボレーションによる知識生産性を高める重要な手段となる」 と引用し、これを用いたマネジメントを構成する基本ロジックを、下記の通り定義している。 (1) プラットフォーム経済性原理:ハード・ソフト・ヒューマンウェアの基盤と事業展開 (2) アライアンス戦略:安定調達・競争回避・知識結合・学習内部化による競争優位の構築 (3) 価値デザイン戦略:クリティカルマスを重視した産業生態系における市場開発と連携 (4) プラットフォームデザイン:ネットを用いた信頼・協働・取引の機会創出 (5) ライフサイクルスピード:知識融合による製品開発と市場ライフサイクルの同期化 (6) メンタルモデルと組織:人間のメンタルモデルと価値観を支援するプラクティスの重視 さらに小原(2013)はビジネスモデルの進化要素とプラットフォームのリンクの重要性を提案 している[13] 。これによれば「ビジネスモデルの本質は、狭義の顧客満足と利益方程式ではなく、 ダイナミックな社会問題解決による成果方程式である」とし、さらに「ビジネスモデルの進化 に現在と過去を比較し、その変化を「新基準」(D1)と「CSF(主要成功要因)検出」(D2)に利 用して高度化するために事業部門と全社がプラットフォームを持つ」として、ビジネスモデル に「動態的な場を設置」することを提案している。図2はその動態図を示している。ここで「価 値判断(戦略ビジョン)」「事業判断(プロジェクト提案)」「利益行動(組織行動)」の3つの 次元と知識創造の場を、経営業績が決定される理論として挙げている。 図2 P2Mビジネスモデルと統合機能要素検出の場の動態図(参考文献[13]より引用) これに加え、Simone ら(2012)は、プラットフォームを用いたエコシステムによるイノベーシ ョンマネジメントを図るうえでの主要な作業を、下記の通り定義している[14]1 1 原文は下記の通り。

「(1)Envisioning and leading overall platform and ecosystem evolution (2)Empowering and stimulating economic value creation activities of autonomous third party companies to enhance the platform’s overall value proposition

(3)Encouraging goal congruence of autonomous partners (4)Evaluating information about the overall system evolution as well as about emerging opportunities and threats within the ecosystem (5)Ensuring strategic coherence and appro-priability of returns by maintaining control over platform and ecosystem evolution」

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(1) プラットフォームとエコシステムの総合的な進化のビジョンを描き、リードする (2) プラットフォームの全体価値を高めるため、提携企業に権限委譲を行い、自律的な価値創 造活動を刺激する (3) 自律的な参加者に共通の目標のビジョンを描く (4) エコシステム全体が進化するための情報を機会と脅威に関する情報と同様に評価する (5) プラットフォームとエコシステムの進化を維持するため、戦略の一貫性とリターンの占有 可能性を確保する 以上の小原、Simone らの定義を元に、プラットフォームの全体構成と要求機能を下記の通り 考察した。 【プラットフォームの全体構成(Architecture of Platform の頭文字を整理番号の前に付す)】 AP-1:ハードウェア、ソフトウェア及びヒューマンウェアにて構成される AP-2:プログラムに参加する組織やメンバがアクセス可能な手段で提供される AP-3:「本社」と「事業」のレベルで扱う情報が切り分けられ、かつ連動する AP-4:プログラムの外部環境に対する情報が取得可能に構成されている 【プラットフォームの機能(Function of Platform の頭文字を整理番号の前に付す)】 FP-1:市場環境に応じてプログラムの基準と指標を同期させる機能を持つ FP-2:人的交流による協働と知識獲得を支援する FP-3:プログラムのビジョンや戦略を論理的に描きメンバと共有できる機能を持つ FP-4:プログラムメンバ内でリーダシップを発揮するためのイニシャテイブ確保を支援する 上記要件を、P2M を支援する ICT プラットフォーム全体の設計思想に位置づける。さらによ り具体的な支援機能を抽出するため、次項よりプログラムの統合マネジメント及びコミュニテ ィマネジメントの視点からの要件を抽出する。 3.1.2. 統合マネジメントツールとしての要件分析 まず P2M における「統合」の対象を定義する。小原(2009)は、P2M におけるプログラムマネ ージャに要請される「創造的統合マネジメント」のステップとして、第 1 に「初期のプログラ ム形成における構想理解と持続的な事業価値向上の提案能力が期待される」、第 2 に「新知識 獲得や新情報収得による追加投資、機能、用途変更など状況変化に適応して、期待価値の実現 提案が随時要請されるとしている[15]。そしてこの実現には「本社方針との調整に柔軟で高頻度 なコミュニケーションが不可欠であり、プロファイリングの拡張、プラットフォームの創設、 コミュニケーション、継続的提案、オプション変更の職能が求められる」としている。 さらに小原(2010)は日本的社会風土を反映したマネジメントシステムを、「共通の目的」「協 働の意思」「コミュニケーション」を組織編制の原理とし、明確性と曖昧性を調和した論理構

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成の下で、ミドル層が中核となり構成する自律分散型の仕組みと定義している[16](ここでいう 仕組みは、秩序・ルール・制度・組織・機構・システム・モデル等の文脈を包括する)。また そのシステムが備えるべき性質の一つに、「複雑系」を挙げている。「複雑系」の性質を持つ組 織は、活性力・創発性・自立性が高く、変革期においても高い成果を上げることが可能になる。 小原はさらに、こうした性質は日本企業が風土として従来から備えていたものであり、この知 見に対して、バブル期に課題であった「ビジネス」と「ファイナンス」の視点を補いつつ、海 外に通用する論理説明を構築することが重要であると提言している。 次に上記要素の統合化にあたって、具体的にどのような環境が求められるか。出口(2013)は、 プログラムのように多様で異なる境界条件をシナリオに組み込み、それを評価する技術はまだ 開発途上にあるとしている[17]。そしてプログラムにおけるシナリオ共有や合意形成には「異領 域の知識・専門・価値観をトランスレーション(翻訳)して共通する知の検討と構築を行う」 ことが必須になるとしている。またこうした検討は、何らかの意味でプログラムとプロジェク トに切り分けた状態で、参加型アプローチにて行われるべきとしている。さらに、プログラム のシナリオ設計を恣意的なものにしないため、フォワード型での検証の必要性も提言している。 リスク対策においても、ビジネス・プログラム・オペレーションのレベルに切り分けて解釈 する必要がある。武富(2010)は、プログラムオーナが監視し、管理をしなければならないプロ グラム活動におけるリスクをビジネスリスク、プログラムマネージャ及びプロジェクトマネー ジャの責任範囲内で収まるリスクを各々プログラムリスク、プロジェクトリスク(オペレーシ ョンリスク)として捉えることが出来るとした[18] オペレーショナル型プログラムを支援するプラットフォームの実装事例として、韓国の都市 再生事業における iPMIS(Intelligent Program Management Information Systems の略)が挙げられ る[19]。iPMIS では、都市再生という大規模事業を支援するため、種々のシミュレーションやデ ータマイニング、モデリング等の機能が提供された。さらに事業の環境変化や多様化に耐えう る拡張性と標準の導入や参加者間でのコミュニケーションを支援するポータルプラットフォ ームの追加も行っている。iPMIS における要求機能とその実現方式を表1に記す。 表1 iPMIS におけるプログラム支援機能の実現方式(参考文献[19]より引用) 要求された機能 iPMIS における実現方式 プログラムマネジメントのソフトな側面 シミュレーションによるオープンかつ一貫した情報管理支援 プロセスの多様化 概念プロセスマップ機能のプラグ&プレイ プロジェクト種類毎の異常値モデル モデルのプラグ&プレイ 建築の監督管理 建物管理データの可視化支援 多様な参加者間でのコミュニケーション Web ベースのポータルプラットフォーム 標準的なデータ交換プロトコル XML ベースのデータ交換 以上より、P2M における「統合化」に求められる機能を下記通り定義する。

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【統合化の機能(Function of Integration の頭文字を整理番号の前に付す)】 FI-1:プログラムの構想・目的・意思の統合化 FI-2:事業と本社方針(組織全体のビジネス・ファイナンスの情報を含む)の統合化 FI-3:プログラムの投資・機能・状況変化・リスクの情報の統合化 FI-4:プログラムにおける新規提案や代替案の生成 FI-5:シナリオ・モデルのバックキャスティングな生成とフォアキャスティングな評価 FI-6:ビジネス・プログラム・プロジェクトで切り分けられた自律分散的な環境の提供 FI-7:標準的・透過的なフォーマットによる情報授受 3.1.3. コミュニティツールとしての要件分析 P2M におけるコミュニティの役割は緒言に記したが、要約すると「プログラムメンバが知的 創造を行う共通の場」と理解できる。本項ではプラットフォームがこの役割を果たすための要 件事項として、扱う情報項目及び、情報交換・共有において留意するべき事項を抽出する。 プログラムメンバが活発に情報共有を行う環境を実現するための情報項目と留意事項を抽 出するうえで、現代における人的交流の社会的基盤となりつつある「ソーシャルメディア」を 対象とした諸研究が参考となる。ソーシャルメディアは、2000 年頃から広まった「Web2.0」の コンセプトを使ったサービスの一つとして登場し、今日ではバーチャルな世界での新たなコミ ュニケーション手段として確立されている。 根来・村上(2012)は、メンバ間のつながりの強さを「相互共有性の深度」と「相互関係性の 濃度」が決定づけるとし、それぞれを高める要因を表2の通り定義している[20] 表2 相互共有性の深度と相互関係性の濃度を決定する要因(参考文献[20]より引用) 共有性の深度を決定する要因 関係性の濃度を決定する要因 情報の共有 目的・関心の共有 場の共有 経験の共有 アイデンティティの共有 コンテキストの共有 コミュニケーションの頻度 リアルの世界での接触頻度 双方向性の程度 応答性の程度 さらに根来・村上の分析では、特に「相互共有性」は目的・場・経験・帰属性・暗黙知をメ ンバ間でシェアする重要な観点であり、「会員制ネットコミュニティ」のようなある程度「管 理された」コンテンツが、この実現に最適であることを示している。村本・菊川(2003)による と、管理者が一定の強制力を持って設定するインフラを「ハードインフラ」、参加者が自生的 に形成されるインフラを「ソフトインフラ」と称して、その特徴を表3の通り定義している[21] これによれば、本研究で実装を目指すプラットフォームはある程度目的や運営方法を絞ったも のが想定されるため、ハードインフラで課題となる「廃れない」ための工夫が求められる。

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表3 ハードインフラとソフトインフラの特徴(参考文献[21]より引用) 特徴 ハードインフラ ソフトインフラ 定義 管理者が一定の強制力を持って設定するインフラ 参加者によって自生的に形成されるインフラ 管理事項 ・明記された規制・規約・運営ポリシ ・個人情報の登録範囲や取り扱い ・コミュニケーション促進の工夫 ・場の雰囲気 ・コミュニティ内の独自プロトコル (絵文字、短縮語、言い回し等) ・発言の質やレベル感 リスク 廃れる(人が寄り付かなくなる) 荒れる(自浄作用が効かなくなる) では、ハードインフラにおける人的交流は、どのように制御されるべきか。Jörg ら(2013)は、 会員制ソーシャルメディアである facebook 上で売買されるアプリケーションの開発者を管理 するうえで、厳しい規約や制限を設けることよりも、インセンティブによって「柔らかく」コ ントロールした方が、市場の変化応じて適切なコントロールが可能になることを報告している [22]2。また荒井ら(2012)は、ステークホルダを効果的に関与させ、共創・協働の関係を構築する ためのパタンモデルとして「SIPS モデル」を紹介している[23]。この SIPS とは「共感する

(Sympathize)→確認する(Identify)→参加する(Participate)→共有する(Share & Spread)」 の手順を表している。 さらに、プログラムメンバが場を創出した後、どのような形で合意を形成し、共創する環境 を提供すればよいか。猪原(2011)によれば、合意と合意形成の捉え方は下記のとおりである[24] (1) 合意は集団の状態を、合意形成は集団の状態が合意に至る過程を指す (2) 同意(agree)、全員一致(unanimous)、関心・懸念(interests)という 3 つの言葉は、合意形成研究 のキーワードである (3) 「自分にとって最も望ましい案」以外の案も受け入れる可能性がある個人を想定する (4) 同意(agree)は個人の状態、合意(consensus)は集団の状態を指し、集団に属するすべての個人 が同意したとき「集団が合意した」という そして猪原は、この合意形成を支援するツールを「コミュニケーション手段提供型」「合意 プロセス支援型」「合意形成プロセス代行型」の 3 つに分類し、それらに求められる機能を下 記のとおり提案している。 (1) 合理的な意思決定モデルをもつこと (2) 参加者間のコミュニケーション手段をもつこと (3) 発散的思考と収束的思考を支援すること (4) 価値判断のトレードオフ分析手段をもつこと (5) 多角的な分析手段をもつこと (6) 最終的な合意結果を正当化する理由付けができること 2 原文は下記の通り。

「Our results show that social media channels do not necessarily have to be managed through hard exclusion of par-ticipants, but can also be steered through “softer” changes in reward and incentive systems.」

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(7) 合意形成に至るまでのプロセスを重視すること (8) 合意結果に対する総合的な評価ができること (9) 情報技術を利用し、話し合いの効率化を図ること

以上より、P2M におけるコミュニティ形成に求められる機能を下記の通り定義する。 【コミュニティ形成の機能(Function of building Community の頭文字を整理番号の前に付す)】 FC-1:参加者の目的・関心・経験・場を共有する機能 FC-2:コミュニケーションの頻度・双方向性・応答性を維持する機能 FC-3:情報交流によるインセンティブ付与 FC-4:メンバ間の合意形成プロセスの効率化・合理化・可視化の支援・代行 FC-5:メンバ間が交流する場を共感→確認→参加→共有の手順で提供 3.2. 聞き取り調査 2 章に記した環境にて聞き取り調査を行った結果は、下記の通りである。なお実際は多くの ご助言・ご指導を頂戴したが、その中でも特に本研究で目的とする ICT プラットフォームの要 件をより具体的にする示唆を与える事項を抜粋し、これを実装に向けた具体的要件として記す。 (1) プログラムアーキテクチャの共有に用いるツールは、情報量や表現の適切さから「ロジッ クモデル」をベースにしたものが良いと考える (2) これに加え、ステークホルダ把握・戦略立案・リスク分析・意思決定支援等が必要になり、 これらの機能を、ロジックモデルを軸に提供してはどうか (3) プログラムの進行は 3S モデルに従うため、プラットフォームでもこれを意識した情報登 録・共有・評価・分析が提供される必要がある (4) 重複投資を避け、資源や知見を有効に活用するため、実行計画や成果をプログラム間で関 連付け可能にするとよい(プラットフォーム上に複数プログラムの情報を管理可能にする) (5) プログラムメンバ個々人に対するプログラムのプレゼンスを高め、その情報に対するアク セスの頻度と質を高めるため、身近なツール(スケジューラ、todo リスト、メモ帳等)と の連動が可能になるとよい

4. P2M 支援プラットフォームの要件整理

3 章の結果を元に、表4の通り ICT プラットフォームの要件と実装方式を考察した。FP-2 と FI-5 の実装にあたり、山本(2009)はこの具体的手法に ABM(Agent Based Modeling)、実践知教 育(Action Learning)をそれぞれ提案しているため、これを採用する[25]。以上の結果として図

3のように、Web 上でロジックモデルをベースとしたプログラムの全体像を策定・共有するコ ンテンツを稼働させ、これを軸に各種分析や情報共有を行うサブコンテンツを連動させて、プ ログラムの進行やメンバの階層に応じた情報登録を可能にする実装イメージが導出された。

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表4 P2M 支援プラットフォームの要件事項と実装方式 整理番号 要件事項 実装方式 プラットフォームの全体構成 AP-1 ハードウェア、ソフトウェア及びヒューマンウ ェアにて構成される ICT システムに加え人的運用によって実装する AP-2 プログラムに参加する組織やメンバがアク セス可能な手段で提供される Web 上のコンテンツとして実装する AP-3 「本社」と「事業」のレベルで扱う情報が切り分けられ、かつ連動する FI-6 にて実現 AP-4 プログラムの外部環境に対する情報が取得可能に構成されている 本社レベルでの情報に外部環境の情報を含ませ、これをプログラムへ反映することで実現 プラットフォームの機能 FP-1 市場環境に応じてプログラムの基準と指 標を同期させる機能を持つ FI-6 の切り分け間で、FI・FC の各機能にて統合化・コ ミュニティ形成を図ることで実現 FP-2 人的交流による協働と知識獲得を支援 する FI-4 及び FC の各機能及び、人的な実践知教育にて 実現 FP-3 プログラムのビジョンや戦略を論理的に描 きメンバと共有できる機能を持つ FI と FC の各機能にて実現 FP-4 プログラムメンバ内でリーダシップを発揮するためのイニシャテイブ確保を支援する FI-3 及びその情報に基づく人的なプラットフォームリーダシップにて実現 統合化の機能 FI-1 プログラムの構想・目的・意思の統合化 ロジックモデルの制作・共有機能の実装と FC の各機能との連動にて実現 FI-2 事業と本社方針(組織全体のビジネス・ ファイナンスの情報を含む)の統合化 経営指標の分析機能と FI-1 との連動にて実現 FI-3 プログラムの投資・機能・状況変化・リス クの情報の統合化 SWOT 分析及びリスク分析機能と FI-1 との連動にて 実現 FI-4 プログラムにおける新規提案や代替案の生成 データマイニング機能(プログラム上の指標及びテキスト情報の分析)の実装

FI-5 シナリオ・モデルのバックキャスティングな生成とフォアキャスティングな評価 ABM 機能と FI-1 との連動にて実現

FI-6 ビジネス・プログラム・プロジェクトで切り分 けた自律分散的な環境の提供 FI-1 の情報登録をビジネス・プログラム・プロジェクトの 単位で分担する形で実装 FI-7 標準的・透過的なフォーマットによる情報 授受 データフォーマットの標準化及び言語選択機能、ロー カル用語辞典登録機能等を組合せて実現 コミュニティ形成の機能 FC-1 参加者の目的・関心・経験・場を共有す る機能 プログラム参加者の情報交換ポータルを実装 FC-2 コミュニケーションの頻度・双方向性・応答性を維持する機能 FC-1 を、自動更新や携帯デバイスとの連動にて実装 FC-3 情報交流によるインセンティブ付与 情報の更新回数や貢献度を評価する機能を実装し、報奨制度と連携させて実現 FC-4 メンバ間の合意形成プロセスの効率化・ 合理化・可視化の支援・代行 AHP 等の意思決定支援機能を実装 FC-5 メンバ間が交流する場を共感→確認→ 参加→共有の手順で提供 検索コンテンツ等を介してプログラム内外に情報を露 出させ、プラットフォームに引き込む仕組みを実装

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図3 P2M 支援プラットフォームの実装イメージ

5. 結言

本研究では、P2M の導入・運営を支援するプラットフォームの実装に向けた要件調査を、関 連研究のサーベイと聞き取り調査にて行った。また導出された要件事項に沿って、ICT を利用 してプラットフォームを実装する際の、全体構成イメージと要求機能の実現方式を考察した。 今後はこの結果を元に ICT プラットフォームをプロトタイプ化して、実用面での有用性確認 と拡張を図っていく。並行して、本研究で定義した要件事項の妥当性確認や、最新の P2M 研 究によるアップデートを継続的に行う。引き続き関係各位からのご指導を賜りたい。

参考文献

[1] 経済産業省「日本の強みを活かした元気の出るイノベーションエコシステム構築に向けて」、 2011 [2] 文部科学省「イノベーション促進のための産学官連携基本戦略 ~イノベーション・エコシス テムの確立に向けて~」、pp.4-12、2010 [3] 内閣府「科学技術イノベーション戦略協議会について」、内閣府政策統括官、p.6、2012 [4] 国際 P2M 学会「P2M コンセプト(2009 年度春季研究発表大会基調講演資料)」、国際 P2M 学 会 P2M コンセプト研究会、2009 [5] 日本プロジェクトマネジメント協会「新版 P2M プロジェクト&プログラムマネジメント標準 ガイドブック 」、日本能率協会マネジメントセンター、pp.83-84、2007 [6] 小原重信「P2M プロジェクト&プログラムマネジメント-標準ガイドブック(上巻)プログ ラムマネジメント編 」、PHP 出版、pp.69-70、p.89、pp.95-102、2003

[7] PMAJ IT-SIG「IT 分野のための P2M プロジェクト&プログラムマネジメントハンドブック」、 日本能率協会マネジメントセンター、pp.48-61、2012 外部へ情報露出 して誘引 プログラムアーキテクチャ共有 (+ABM による検証) データ 分析 プログラムの進捗やユーザの 役割別の情報登録・更新 新提案につながる 知見の抽出 連動ツール(ポータル、SWOT 分析、 リスク分析、ステークホルダ分析等) 交流頻度・双方 向性・応答性を 確保する機能 実績情報 Web 上で複数組織 の人材が交流可能

(13)

[8] 田隈広紀、桜井誠、亀山秀雄「ロジックモデルとバランススコアカードを用いた研究計画支援 システムの有効性」、化学工学論文集 Vol.33, No.9、pp.256-264、2013 [9] 和田義明、亀山秀雄、中村昌允「企業 R&D におけるプラットフォームマネジメントの実践」、 国際 P2M 学会誌 Vol.6, No.2、p.99、2012 [10] 中山政行、野地英昭、林和希、十河直人、亀山秀雄「P2M 理論を応用した地域活性化環境プラ ットフォーム構築」、国際 P2M 学会誌 Vol.5, No.2、p.54、2011 [11] 根来龍之、足代訓史「経営学におけるプラットフォーム論の系譜と今後の展望」、早稲田大学 IT 戦略研究所ワーキングペーパー No.39、p.5、2011 [12] 小原重信「P2M プラットフォームマネジメント文脈と論理 ~クロスボーダー型協働と超サー ビス製造業への能力強化~」、国際 P2M 学会誌 Vol.5, No.2、p.3, p.13、2011 [13] 小原重信「P2M 視点による次世代ビジネスモデル ~先端的変革を促進する総合商社のクロス インテグレーション効果~」、国際 P2M 学会誌 Vol.7, No.2、p.14、2013

[14] Simone Scholten, Ulrich Scholten "Platform-based Innovation Management: Directing External Innova-tional Efforts in Platform Ecosystems", Journal of the Knowledge Economy Vo.3, No.2、p.176, 2012 [15] 小原重信「P2M プログラムマネジメント開発への省察と実現価値向上への試論」 ―欧米にお ける最新研究の潮流と進化への論点―」、国際 P2M 学会誌 Vol.4, No.1、p.14、2009 [16] 小原重信「P2M における日本的社会風土と仕組みづくり志向の組織行動 -増加するあいまい 使命を管理する論理と原則を築く-」、国際 P2M 学会誌 Vol.4, No.2、pp.5-11、2010 [17] 出口弘「P2M フレームワークのトランスレーショナルな拡張について」、国際 P2M 学会 2013 年度 春季研究発表大会予稿集、pp.106-115、2013 [18] 武富為嗣「P2M によるリスクマネジメントのフレームワーク」、国際 P2M 学会誌 Vol.4, No.2、 p.95, p.97、2010

[19] Ju-Hyung Kim, Ja-Young Yoon, Kyung-Hwan Kim and Jae-Jun Kim "A Conceptual Model of Intelli-gent Program Management Information Systems (iPMIS) for Urban Renewal Mega Projects in Korea", Journal of Asian Architecture and Building Engineering, p.61, 2009

[20] 根来龍之、村上建治郎「ソーシャルメディアにおける、相互共有性と相互関係性についての研 究 ~ ツイッターのメディア特性の分析 ~」、早稲田大学 IT 戦略研究所ワーキングペーパー No.46、pp.20-21、2012

[21] 村本理恵子、菊川曉「オンライン・コミュニティがビジネスを変える―コラボレーティブ・マ ーケティングへの転換」、NTT 出版、2003

[22] Jörg Claussen, Tobias Kretschmer, and Philip Mayrhofer "The effects of rewarding user engagement – The case of Facebook apps", Information Systems Research Vol.24, No.1, p.186, 2013

[23] 荒井祐介、木嶋恭一、出口弘「地域活性化のコミュニティマネジメントとして価値協奏プラッ トフォーム戦略」、国際 P2M 学会誌 Vol.7, No.1、p.6、2012 [24] 猪原健弘「合意形成学」、勁草書房、p.104, pp.162-171、2011 [25] 山本秀男「不確実な環境下の価値創造プログラムマネジメント」、国際 P2M 学会誌 Vol.4, No.1、 p.24、2009 査読 2013 年 12 月 11 日 受理 2014 年 2 月 10 日

参照

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