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ASEAN+3債券市場フォーラム(ABMF)第8回会合について

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ASEAN+3 債券市場フォーラム(ABMF)第 8 回会合について

日証協・平成 24 年 4 月 17 日~19 日 さる4 月 17 日~19 日の 3 日間にわたりマニラにおいて、本協会がナショナル・メンバー を派遣しているアジア債券市場の標準化・調和化の検討プロジェクト「ASEAN+3 債券市場 フォーラム(略称 ABMF)」の第 8 回目の会合(自主規制機関の問題を話し合う任意参加の SRO ワーキング・グループ会議を含む)が開催された。 【会議のポイント】 1. ABMF の上部機構である ABMI タスク・フォース 3(TF3)会合(3 月にカンボジアに て開催)で了承を得た第2 フェーズにおける ABMF 活動計画についての方向性の確認。

2. ABMF メンバー各国の国内プロ向け債券市場の相互認知(mutual recognition)による アジア共通債券市場の形成を前提とした、サブ・フォーラム1(SF1)第 2 フェーズの作業 概要の提示と質疑応答(今回会議のメインテーマ)。 3. SF1 ではその他情報セッションとして、アジアの国内格付スケールの相対評価分析、ユ ーロMTN プログラムの概要、東京プロボンド・マーケット上場第 1 号銘柄(ING Bank, N.V.)の紹介、日本における起債可能期間(発行ウィンドウ)についての情報共有。 4.本年 4 月に公表された第 1 フェーズ報告書の配信状況の説明と、内容更新プロセスの方 法についてのADB 事務局からの提案。 5.なお、これまでABMF での協議に加わらなかったシンガポールが今回の会議から参加。 また、将来の標準化されたアジア債券市場における自主規制機関(SRO)問題を専門に議 論する任意参加者によるSRO WG の初会議が開催。 6.次回の第9 回 ABMF 会議は、ソウルで 9 月 4 日~6 日に開催されることが決定。 Ⅰ.ABMF 設立の趣旨及びこれまでの ABMF 議論の経緯 ABMF は、日本の呼びかけで 2003 年に始まったアジア債券市場育成イニシアティブ(Asian

Bond Markets Initiative:通称 ABMI~アブミ~)1の中で各国債券市場の規制面を審議するタス

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ク・フォース 3(TF3)の下部機関として、2010 年秋に、金融当局者以外に幅広く市場関係者の

参加を要請し設立されたものである。(設立の趣旨詳細については「参考2」参照)

ABMF は、東南アジア諸国連合(ASEAN)に中国、韓国、日本の 3 か国を加えた ASEAN+3 の債券市場の規制面、インフラ面を含めたさらなる標準化・調和化を推進し、アジアに眠る巨大な 貯蓄を投資に導くための方策について実務レベルの協議と作業を行うことを目的とし、各国の債券 市場を取り巻く規制面の共通化を話し合うサブ・フォーラム 1(SF1)と、市場インフラの共通化 を協議するサブ・フォーラム 2 の二つの部会をもつ。本協会からは、SF1 に審議メンバーとして 職員1 名と協会員の証券会社から 2 名の委員(ナショナル・エキスパート)を派遣している。 2010 年 9 月に第 1 回目の ABMF 会議が東京で開催されて以降、これまでマニラ、クアラルンプ ール、済州島、バリ、北京、香港、マニラと計8 回の会議が開催され、アジア債券市場の共通化・ 標準化に関する協議及び関連市場調査が実施されてきた。第6 回目の北京会議(2011 年 12 月)ま でが第1 フェーズと位置付けられ、第 7 回目の香港会議(2012 年 2 月)から第 2 フェーズの議論 が開始されている。 第1フェーズ 2010 年 9 月 21 日 ABMF-J 第 1 回会議(於:証券保管振替機構) 9 月 28 日 第 1 回国際会議(於:東京、三田合同庁舎) 11 月 11 日 ABMF-J&ABMF-K 合同会議(於:ソウル) 12 月 6 日 ABMF-J 第 2 回会議(於:財務省) 12 月 13 日~14 日 第 2 回国際会議(於:マニラ) 2011 年 1 月 17 日 ABMF-J&ABMF-K 合同会議の 2 回目のイベントとして「韓国債券市場セ ミナー」(於:早稲田大学)開催 2 月 8 日 ABMF-J 第 3 回会議(於:財務省) 2 月 16 日~17 日 第 3 回国際会議(於:クアラルンプール) 6 月 23 日 ABMF-J 第 4 回会議(於:財務省) 6 月 30 日~7 月 1 日 第 4 回国際会議(於:済州島) 9 月 1 日 ABMF-J 第 5 回会議(於:財務省) 9 月 12 日~13 日 第 5 回国際会議(於:バリ) 12 月 5 日 ABMF-J 第 6 回会議(於:財務省) 12 月 8 日~9 日 第 6 回国際会議(於:北京) 第2フェーズ いるアジア地域の債券市場を強化しようとの趣旨で、2003 (平成 15)年に日本政府の呼びかけで ASEAN+3 の財務大臣会議で合意がなされ始まったものである。ABMF が設立される一昨年までの 7 年間、政府間の 協議を中心にアジア債券市場の共通化・標準化の議論を行ってきた。この間、アジアでは、ADB 等の国際 機関やJBIC 等の政府系金融機関による現地通貨建て債券の発行等を通じ、債券の発行体及び種類の多様化 が進展。また、2010 年 11 月には、域内の企業が発行する社債に保証を供与することで、現地通貨建て債 券の発行を支援し、域内債券市場の育成に貢献するための「信用保証・投資ファシリティ(CGIF)」が設 立されている。

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3 2012 年 2 月 3 日 ABMF-J 第 7 回会議(於:財務省) 2 月 8 日~9 日 第 7 回国際会議(於:香港) 4 月 10 日 ABMF-J 第 8 回会議(於:財務省) 4 月 17 日~19 日 第 8 回国際会議(於:マニラ) 第8 回マニラ会議・サブ・フォーラム 1 の模様(4 月 18 日) Ⅱ. マニラ会議の議論要旨 1.本会議(2012 年 4 月 17 日~18 日) (1) SF1の活動計画についての報告(セッション 1&2) ① アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)の TF3 の合意 初日(17 日)に行われた SF1 の会議では、フィリピン証券取引委員会のフアンニタ・クエト 委員長の歓迎挨拶の後、セッション1 として早稲田大学の犬飼教授(ADB コンサルタント)よ り、ABMF の第 2 フェーズにおける SF1 の活動方針について、3 月 2 日にカンボジアのシエム・

リープ(Siem Reap)で行われた ABMF の上部組織である ABMI の TF3 会合における ADB 事 務局報告の内容について以下のような説明があった。

まず、ABMF 第 2 フェーズの活動目的として、2013 年末までに以下の課題に取り組むことが 了承された。

ⅰ.完全開示要件を免除されたプロ向け証券/債券市場(Asian QIB Market 又はアジア 地域内プロ証券市場~Asian Intra-Regional Professional Market (AIR-PSM)と呼ぶ) への焦点の絞りこみ。

ⅱ.段階的アプローチにより、地域内で標準化された債券発行プログラム (Asian

Multi-Currency Bond Issuance Program(AMBIP)と呼ぶ)の導入。 ⅲ.最終的に、統合された域内プロ証券市場の創設。

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4 また、そのアプローチ方法としては以下のステップを踏む; ・相互認知(Mutual recognition)に基づく。 ・二国間(bilateral)アプローチの積み重ね、又は当初から多国間(multilateral)アプ ローチの採用のいずれかによる。 ・規制当局のABMF への参加を促す。(AMBIP 実現のためのキーポイント) ② SF1 第 2 フェーズの作業課題の概要 引き続き、犬飼教授より、作業課題について以下の説明があった。 [大原則] ・第1 フェーズで収集したデータ(マーケット・ガイド及び比較分析)を最大限活用。 ・ABMF メンバー機関及び市場現地調査参加者への制約時間と影響をできるだけ縮小。 ・ただし、第1 フェーズで未調査の事項について詳細な追加情報の提供が肝心。 [作業の詳細] ⅰ.主要な目的 ・各国国内プロ証券市場を最も効率的に連結するために、開示制度、ドキュメンテーション、 発行体、プロ投資家、引受人その他の仲介者の現状及び必要なレベルの類似性及び違いにつ いての調査、審議及び評価を行う。 ⅱ.審議の範囲 ・各国市場のプロ向け及び一般の債券発行プロセスに影響を与える法規制。 ・プロ向け債券及び一般債券の各発行プロセスに関する市場慣行。(なお、質問票の内容を各 国市場の成熟度によって3 つの階層に分類する~後述参照。) (審議対象となる主要な論点) -プロ投資家について以下の類似概念の共通項を認定する:

(a) professional investor / (b) sophisticated investor / (c) qualified investor / (d) accredited investor / (e) QIB / (f) specified investor / (g)institutional investor / (h)High Net Worth (HNW)/(i)その他の類似の概念

-「適用除外(exempted)」市場、又は「適用除外(exempted)」取引の条件を相互認知す る。 -発行市場での販売及び流通市場での再販についての「転売制限」の方法についての調査。 -プロ市場又は適用除外市場での開示情報・開示ルールのレベル感の標準化。 -プロ市場に適合した証券のタイプ(現状及び将来の市場における)。 -各国の規制環境(規制、自主規制規則、その他の決定要因)ごとのプロ市場又は適用除外 市場に基づくプロ市場参加者の行動規範。 -投資家保護/その執行の現状及び狙いとする方向性。 -「債券市場関連自主規制機関」の現状及び狙いとする方向性。 (債券市場関連SRO の詳細)

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5 の目的/SRO の活動に法的根拠を与える法律/SRO の債券関連業務に関する定款の内容 /SRO はどのようにかつどの分野で規制当局を補完するか/自主規制の内容/各市場ご とのSRO 規則の概要/執行力の詳細/対象となる機関数(人数)/自主規制部門の人数) ⅲ.目標とする主要な成果 ・標準化された発行プログラムに関連したドキュメンテーション、及びオファリング・メモラ ンダムに関する用語。 ・標準化された「新発債引受プロセス」。 ・流通市場メーキングの可能性及びその標準化されたルール及び慣行。 ・「適格発行体」の統一化された概念。 ⅳ.2013 年末までの具体的な行動 ・(二国間及び多国間相互認知手続きに関する)規制当局の参加。 ・専門グループ会合(Focal Group Meeting)の活用。

・質問票と市場訪問を通じて、プロ市場のための標準化された債券発行の市場ニーズを検証。 ・特に焦点を絞った分野(下記参照)についての調査及び協議の実施。 ・AMBIP に基づいたパイロット発行の実現。 ⅴ.フォーカスすべき主要な論点 ・内部/外部の事前承認プロセス。 ・内部/外部の承認プロセス。 ・域内のプロ市場への上場プロセス。 ・内部/外部承認のための申請書類(ドキュメンテーション)。 ・起債スケジュール(市場にローンチされるまでの時間) ・起債プロセス:ウィンドウ・パラメータ(限定された起債可能期間) ・起債後プロセス ・市場仲介者 ・関連インフラ(決済/清算等) ・その他の要件(コンフォート・レター、デューディリジェンス等) この後、フォーカスすべき主要な論点のそれぞれについて、さらに掘り下げた調査の内容・方法 について説明が行われた。 ③ 質問票の方法、作業及び現地調査日程 最後に、犬飼教授から、第2 フェーズ用質問票の考え方と作業日程、及び各国市場訪問スケジュ ール案が示された。 まず、質問票は、プロ市場等の成熟度に応じ、対象を3 つの階層(グループ)に分けて行うこと が提案された。一つ目はプロ市場が存在する国・地域(シンガポール、香港、日本の3 か国は、プ ロ限定市場の存在、適用除外制度の存在、規制された私募市場の存在という3 要素を満たすグルー プとして A グループとする。韓国、マレーシア、タイ及びフィリピンは、一定分野についてプロ 市場の存在が認められるグループとしてグループA’とする)、二つ目はプロ市場が存在しない市場

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6 (インドネシア、ベトナム:B グループ)、三つ目はその他の国(中国:C グループ)に分けるこ ととされた。また、各国からの報告責任者(市場「チャンピオン」と呼ぶ)を決めること。また、 質問票の様式は4 月 30 日までに各メンバーに対し配布され、各メンバーは 5 月 24 日までにフィ ードバックを行うこととされた。 プ ロ 投 資 家 限定 市 場 の存在 (開示要件の)適用除外 制度の存在 規制された私募市場の 存在 グルーピング 中国 (銀行間市場のみ) × × グループC 香港 ○ ○ ○ グループA インドネシア × × × グループB 日本 ○ ○ ○ グループA 韓国 (2012 年に QIB 市場 開設の予定) 現時点× (QIB 市場) 現時点× (QIB 市場) グループA’* マレーシア × ○ ○ グループA’ フィリピン × ○ ○ グループA’ シンガポール ○ ○ ○ グループA タイ × ○ ○ グループA’ ベトナム × × 法律上規定はあるが実 際に規制されていない グループB (出所)犬飼教授プレゼン資料 “SF1- Developing a Common Bond Issuance Program (AMBIP)” p.40 を基

に作成。なお、韓国は、当初グループC に分類されたが、韓国側の要請でグループ A’に変更。 また、各国市場訪問調査は6 月 11 日より開始され、8 月 23 日まで実施するとされた。各国市場 訪問は6 回に分けて実施されることとされ、審議の結果、当初の案を若干修正し、下記のとおりと することに決定。なお、これはSF1 と SF2 に共通とする。 (第1 回目)マレーシア(6 月 11 日~12 日)、ベトナム(13 日~15 日) (第2 回目)タイ(6 月 25 日~26 日)、シンガポール(28 日~29 日) (第3 回目)韓国(7 月 9 日~10 日)、日本(12 日~13 日) (第4 回目)中国(上海)(7 月 23 日~24 日)、中国(北京)(26 日~27 日) (第5 回目)インドネシア(8 月 6 日~7 日)、香港(9 日~10 日) (第6 回目)フィリピン(8 月 22 日~23 日) ④ 質疑応答 犬飼教授の上記作業方針の説明に対し、下記のようなコメント、質問等があった。

まず、韓国のKOFIA(特にそのアドバイザーを務めることになった Jeonju 大学の Jeong 教

授)より、アジアにおけるプロ市場の統合方法について、これまで日本がABMF で提唱してい

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7 でつないで共通化したプロ債券市場を形成していく(つまり各国のルール144A 市場同士の連結) という犬飼教授の構想は、前回の香港会議で初めて明らかにされたものであることから、韓国と して受け入れられるかまだ決められず、もっと時間をかけて協議すべき事項であるとした。韓国 としては、レギュレーションS のようなオフショア型の市場モデルもアジア共通債券市場のモデ ルとして検討する意義があることから、各国国内プロ債券市場の連結を前提とした作業案の詳細 を検討するのは時期尚早であり、基本的な市場モデルについてもっと時間をかけて議論すべきと した。特に、提案された調査項目の内容は詳細すぎる感があり、事情は変化するので、よりシン プルな内容にすべきとの主張がされた。また、相互認知(mutual recognition)の範囲は、準備 が十分整った市場同士で行うのか、アジア全体を視野に入れたものか明確にすべきあること。各 プロセスの承認に関しては、誰が承認するのか、開示情報の内容とレベルは規制当局ではなく市 場参加者が決めるものではないか、などのコメントがあった。 これに対し、犬飼教授を含め日本側出席者からは、各国プロ向け債券市場を相互に結んでいく という考え方は、これまで時間をかけてABMF の場でコンセンサスを得てきており、急に出て きたアイデアではない。Jeong 教授は、前回の香港会議には参加していないので、その経緯が十 分把握されていないようなので、別途、これまでの経緯について説明を行う用意があると回答。 また、韓国が最近スタートさせたプロ向け債券市場(QIB 市場)は、SMEs の資金調達の場と して位置づけられており、プロ向け債券市場としての十分な性格に欠けるとの説明がなされた。 なお、犬飼教授は、我々は過去の市場の話をしているのではなく、将来の市場を論じているの であり、米国の制度であるルール144A やレギュレーション S といった枠組みで議論するのでは なく、我々独自の市場概念と用語で議論することを勧めたいとした。特に、レギュレーションS 型市場については香港会議(本年2 月開催)でも様々な解釈があり、この用語は使わないとのコ ンセンサスがあったはずである。 韓国側からは、同国の QIB 市場の解釈について誤解があるのではないかとの指摘がされた。 また、将来のABMF が目指す市場の姿や、関連する概念や用語(terminology)について必ずし も現時点ではメンバー間でコンセンサスができておらず、今回提案されている詳細な質問票に回 答するのは、むずかしいと主張。また、質問票の対象を3 層に分ける場合の、根拠についても納 得できない点があるとの意見が表明された(この点、タイの代表からも同様の質問あり)。犬飼 教授からは、これらの点も含め質問票の回答方法について、別途、ビデオ・コンファレンス等の 機会を通じて、これからも関係者間で十分なコンセンサス・メイキングを図りたいとの表明があ った。 一方、他の日本側関係者より、ABMF でのアジア共通債券市場の創設に向けた取り組みに関 連して具体的なパイロット・イッシューの可能性が高まっているとの指摘があった。既に、東京 プロボンド・マーケットでは民間発行体による第1 号発行プログラムの上場と、それに基づく起 債が実現しており、今後アジアの公的セクターによる同様の上場・起債が期待されるとの意見が あった。同様に、日本の財務省国際局地域協力課の岩井企画官より、第2 フェーズの目標の実現 を強力に支援するために、アジア開発銀行(ADB)自身が、東京プロボンド・マーケットに同

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行の発行プログラムを上場する予定であることが表明された。

(2) アジアにおける国内スケール格付けの相対評価分析(セッション 3)

アジアにおける格付の問題について再度、アジア格付機関協会(ACRAA)を代表して JCR-VIS Credit Rating Agency Ltd.社長兼 CEO のファフィーム・アフマド氏より概略以下のような報告が

あった。今回の報告は、主として ABMI の枠組みの中で最近開始された信用保証投資ファシリテ ィー(CGIF)の実施を支援するため、現在アジア地域の地場格付機関により実施されている各国 ごとの格付けを横断的に比較する尺度を見出そうとの視点からのものである。 予想デフォルト・カーブを描くために互いに依存し合う三つの方法を採用し、データはACRAA のメンバーとなっている7 ヶ国(インド、韓国、マレーシア、パキスタン、フィリピン、台湾。タ イ)の格付機関が行った公社債への格付事例より選んでいる。分析結果によれば、現在、各国の格 付レベルごとの予想平均デフォルト率は下表のようにばらつきがある。 インド パキスタン 韓国 マレーシア タイ 台湾 フィリピン AAA 0.16 0.49 0.05 0.32 0.37 0.07 0.37 AA+ 0.21 0.64 0.06 0.42 0.48 0.10 0.49 AA 0.26 0.81 0.08 0.53 0.60 0.12 0.61 AA- 0.51 1.58 0.16 1.03 1.17 0.23 1.19 A+ 0.79 2.47 0.24 1.61 1.83 0.37 1.86 A- 1.19 3.69 0.37 2.41 2.74 0.55 2.78 A- 1.95 6.04 0.60 3.95 4.49 0.90 4.57 BBB+ 3.05 9.46 0.94 6.18 7.03 1.41 7.14 BBB 5.18 16.09 1.60 10.52 11.96 2.40 12.16 BBB- 7.46 23.16 2.30 15.14 17.22 3.45 17.50

(出所)Faheem Ahmad 氏プレゼン資料 “Mapping National Scale Ratings across Sovereigns in Asia”を基 に作成 (下表も同様)

上記の予想平均デフォルト率に基づけば、例えば各国格付機関が付与したAA 格付の各国相対評

価は下記マトリックスのようになる。

(AA)↓ インド パキスタン 韓国 マレーシア タイ 台湾 フィリピン インド AAA A+/A AAA AAA/AA+ AA-/A+ AAA パキスタン A+/A A-/BBB+ AA/AA- AA/AA- A/A-

AA/AA-韓国 AAA AAA AAA AAA AAA/AA+ AAA

マレーシア AA-/A+ AAA/AA+ A/A- AA+/AA A+/A AA+/AA タイ AA-/A+ AAA/AA+ A- AA/AA- A/A- AA+/AA

台湾 AAA AAA AA/AA- AAA AAA AAA

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9 なお、検証過程の詳細は省略するが、本報告では結論として次のことが言える; ⅰ.(各国格付機関の国内スケールによる格付が)時間の経過により、国際的格付スケール(S&P, Moody’s, Fitch の 3 社が提供する格付を指す)への収斂度が高まることは予想し得る。 ⅱ.これには、経済成長、改善するマクロ政策の枠組み、より強いソブリン・バランスシートが 支援材料となる。これらの全てが特定の国とその国を本拠とする機関の財務的強靭さと信用 力を増加させる。 ⅲ.時の経過により、おそらくA+以上の格付を有する国内スケールのデフォルト・カーブは、 より国際格付機関のそれに近似する。 ⅳ.但し、国内格付機関のデフォルト・カーブは、国内格付機関の格付ユニバースの中の格付さ れた主体間のデフォルト相関が比較的高いために、国際格付機関のものより鋭角的なものに とどまる可能性がある。 ACRAA は、この分析結果に基づき、今後も各国の信用デフォルト率(CDRs)について標準化 されたフォーマットでデータ収集を行い、CDRs の動きを通じて格付の質及び各国間の相対格付を モニターし、各国の適正なCDRs のレベルを決定するとしている。 (3) クロスボーダー債券取引の取引後調和化に関する欧州の展望~EMTN に関する概観を含む (セッション 4) インターナショナル・エキスパートのドイチェ・バンクのブーン・ヒオン・チャン氏より、ユー ロ・ミディアム・ターム・ノート(EMTN)プログラムの概略と、欧州で導入される証券版ターゲ ット2(T2S)について報告があった。後者は、SF2 に関連する事項なので、ここでは前者のテー マに関する報告のみ概要を記載する。 既に定着して久しいユーロMTN プログラムは、アジア共通の債券発行プログラム AMBIP の導 入にあたり大いに参考となる先行事例であるが、これは2003 年に施行された EU の目論見書指令 (Prospectus Directive)に基づくものである。この目論見書指令は、有価証券が EU 加盟国内で 公募されるかその規制市場で取引される場合に発行される目論見書の内容、承認プロセス、配布方 法についての要件を調和化することを目的としており、単一の登録制度、「発行登録制度」を規定 している。その意味で、ABMF のルールメイキングの在り方にとって重要な示唆を持つ。なお、 EMTN は、資金調達を継続的に実施する発行体により利用され、投資家の射程の最大化、資金調 達ソースの多様化、異なる市場へのアクセス、革新的な資金調達ソリューション、簡易なドキュメ ンテーション、発行コストの低減化、発行体プロファイルの向上、大型発行枠(10 億~30 億ドル) の設定、多通貨・多数のトランシェ発行、機会をみてのドローダウン、英国法によるオファリング・ サーキュラー作成などが特徴となっている。

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10 ETMN プログラムの関係当事者一覧 関係当事者 責任範囲 アレンジャー ・法律顧問とともに全てのドキュメンテーションの構成を考え、ドラフティングを行う。 プログラムを規制する法律的義務、証券取引所の規制について助言を与える。 ・発行体とともに、起債戦略と適正な資金調達目標を策定する。 ・発行体のディーラー・グループに対しリーダーシップを発揮する。MTN の最初の実行 について、通常MTN プログラムの条件に習熟したディーラーがなる。 ・プログラムの毎年の見直しをアレンジし、ディーラー・グループとデューディリジェン スで連携する。 プログラム・デ ィーラー 強力な販売力をもつ関連銀行の大集団が通常ディーラーに指名される。ディーラーは、投 資家への販売、市場トレンドと投資家の選好度についての継続的な情報収集及び裁定機会 を提供する。 発行体法律顧問 ・オファリング・サーキュラーのドラフティングに関する第一義的な責任者 ・プログラムと発行される債券の上場手続きに関して上場代理人と協働する。 ・法的ドキュメンテーションの見直しとデューディリジェンスの支援 ・法律意見書の提供 アレンジャー/ ディーラーの法 律顧問 ・法的デューディリジェンスを実施し、アレンジャー/ディーラーのデューディリジェン スを支援する。 ・オファリング・サーキュラーの見直し ・法的ドキュメンテーションの第一義的な責任者 ・法律意見書の提供 監査人 オファリング・サーキュラーの財務開示に関して、また最後の監査日以降の発行体の財務 状況又は営業結果についての変化について、アレンジャー/ディーラーへのコンフォー ト・レターの提供。 トラスティー及 び主支払代理人 ・トラスティーとして、債券保有者の代表として行為し、コベナンツの違反又はデフォル ト事由がある場合に債券に関するコベナンツの執行又は償還の促進に一義的に責任を 有する。 ・支払代理人として、クーポンや元本の支払いのように債券に関しての資金送金について 責任を有する。 上場代理人 ・証券取引所と連携し、プログラム及びその後の債券の上場についての要件について助言 する。 金融専門印刷会 社 ・仮目論見書及び最終目論見書の両方の印刷と配布を行う。 (出所)ブーン・ヒオン・チャン氏のプレゼン資料(p.5, p.7)を基に作成。 EMTN プログラムに関するドキュメンテーション概観 開示要件 ・発行体は、ビジネス戦略、産業の概況、設備投資、及び資金調達計画について開示を求 められる。 ・発行体は、最新の財務状況開示を加えることを求められる。

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11 オファリング・ サーキュラー ・上場目的の開示書類 ・プログラムから発行可能な債券の様々な種類の要項と条件及びどのような形式をとるか を記載する。 ・グローバルMTN の場合、発行会社の営業・財務パフォーマンスと見通し及び将来の計 画の概要を記載したMD&A が求められる。 ディーラー契約 プログラムの設定及び債券の発行を規定する発行体とディーラー間の契約合意書。シンジ ケート発行の場合の引受契約書(Subscription Agreement)を合意されたフォームを含む。 代理人契約 債券の発行・支払プロセスを扱う発行体と代理人の間の契約合意書。 信託証書 トラスティーに債券保有者を代理して行為する権限を付与する発行体とトラスティー間の 契約合意書。 プロシジャー・ メモランダム 個別発行(drawdown)の手続き及びプロフォルマ・プライシング・サプリメントを記載 したもの。 法律意見書 ・プログラム関連書類の準拠法及び各国法に関して求められる法律意見書。 ・グローバルMTN プログラムの場合は、10b5 意見書も発行体法律顧問より求められる。 コンフォート・ レター オファリング・サーキュラー掲載の財務諸表に関するコンフォートを提供し、最後の監査・ レビュー日より重大な変更があるかについて論じた監査人書簡。 オフィサー・サ ーティフィケー ト オファリング・サーキュラー内の全ての情報は真実かつ正確であり、発行会社のビジネス 又はその見通しについて不利益を及ぼす重大な変化は存在しなかったことを表明する CEO 及び/又は CFO からの証明書 プライシング・ サプリメント その後の個別発行(drawdown)のために求められるもので、債券の要項及び条件を記載 した書類で、取引所に提出されるもの。 (出所)上記資料p.6 を基に作成。 (4) 東京プロボンド・マーケットの概要及び第 1 号案件の紹介と、日本の債券市場の現状の起 債可能期間(発行ウィンドウ)(セッション 5) ① 東京プロボンド・マーケットの概要及び第 1 号案件 これまでに既に紹介済であるが、東京プロボンド・マーケットの概要(法的根拠、プロ投資家 の範囲、格付要件と主幹事登録要件、開示制度の内容)及びそのメリット(上場関連手数料)等 について、東京証券取引所の飯田一弘氏より、以下のとおり改めて説明があった。 また、ABMF の議論の中で、プロ向け債券市場のモデルとして日本が前面に出してアピール をしていた東京プロボンド・マーケットの第1 号案件が、本年 3 月 30 日にようやく ING Bank N.V.の 2000 億円(25 億米ドル相当額)のプログラム(期間 1 年、自動更新条件付)上場により 実現し、同発行体は、さっそく当該プログラムに基づいた第1 回目の発行(drawdown)を 4 月 16 日払込で行ったことが報告された。詳細は以下のとおり。

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上場第1 号銘柄の第 1 回発行の内容

発行体 ING Bank N.V.

信用格付 Aa3: Moody’s / A+: S&P / A+: Fitch 上場地 Tokyo PRO-BOND Market 募集される証券 固定利付シニア無担保債券 投資家 特定投資家及び日本の非居住者(転売制限がかかる) 発行額 507 億円(6 億 3000 万米ドル相当) 満期 2 年 条件決定日 2012 年 4 月 10 日 払込日 2012 年 4 月 16 日 上場日 2012 年 4 月 17 日 満期日 2014 年 4 月 16 日 クーポン 1.40%半年払い、365 日計算、非調整 発行価格 100.00 再募集スプレッド 2 年物日本円スワップ・オファー・レート+100bp 準拠法 日本法 額面 1 億円 財務代理人 みずほコーポレート銀行 決済 証券保管振替機構(JASDEC)の一般振替制度による ジョイント主幹事 バークレイズ・キャピタル、野村證券、SMBC 日興証券 (出所)飯田一弘氏、延廣玲子氏の各プレゼン資料を基に作成。 飯田氏によれば、ユーロ市場での発行との違いは、準拠法が日本法であること、決済は日本の 証券保管振替機構の一般債振替制度を用いたものであること、経過利子の計算は日本の慣行に従 うことなどであり、これまでのサムライ債と異なるのは、英文開示でよいこと、ドキュメンテー ションなどのコストが低く抑えられること(一方で、流動性は低いこと)などである。 ② 日本の債券市場の現状の起債可能期間(発行ウィンドウ) 野村證券の延廣玲子氏より、市場プレイヤーの立場でみた日本の債券市場の発行ウィンドウの 現状について報告があった。 外国発行体が、日本で公募により債券発行を考える場合、以下の点を考慮する必要がある。 ⅰ.市場環境 ・休暇シーズン、年度末 ・経済上の重要な事象の日程、国債入札、政治的イベント等 ・発行体の収益公表、ブラックアウト期間 ⅱ.法的要件 ・年次有価証券報告書(ASR)、半期報告書(Semi-ASR)、四半期報告書(QSR)

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13 ・有効な一括登録のためのクーリング・オフ期間 ⅲ.引受要件 ・デューディリジェンス手続き(コンフォート・レターを含む) ・十分なマーケッティング期間 上記の要因により、発行ウィンドウについては、現状では、日本の発行体については、投資家 が活動する約200 営業日の中で 100 営業日程度である。これは、発行期間中に新たな開示イベ ントが生じないようにすることや、一括発行登録に基づき頻繁に起債する発行体にあっては、 ASR 及び QSR 提出後にデューディリジェンスを行うがこれには 1~2 週間を要することなどが 原因である。一方、海外発行体の場合は、ASR の提出のタイミングや、収益発表の前の個々の ブラックアウト期間、母国で公表されるそれらの情報の翻訳に要する期間などに依存する。通常、 発行登録による起債の場合は準備に3~4 週間かかる。 (5) 第 1 フェーズ報告書の配信方法及び今後のデータ更新に関する管理方法 ADB 事務局より、以下のような説明が行われた。 ① 第 1 フェーズ報告書の配信状況 2012 年 4 月 4 日に ADB から公表された第 1 フェーズ報告書は、SF1 と SF2 合わせて 1,532 ページ(PDF のファイル・サイズで 9.4MB)に昇る膨大なものであるが、ADB のホームページ をはじめ、以下のような機関・団体のメディアを通じても世界に配信されている。

(ASIFMA/BPAM/Euroclear/KSD/NTT Data Japan/Omgeo/SMPG/SWIFT/早

稲田大学、その他国際エキスパート7 社の顧客ネットワークを通じて配信) 第1 フェーズ報告書の構成 概 観 第 1 巻 (Volume 1) サブ・フォーラム 1: 比較分析及び債券市場ガイド サブ・フォーラム1 の概観 第 1 部:ASEAN+3 債券市場比較分析及び ABMF サブ・フォーラム 1 の次のフェーズ (2012-2013)へのインプリケーション 第2 部:11 か国の債券市場ガイド *第 1 巻に含まれる主要な情報 ‐債券市場の構造・種類・特徴 ‐発行及び流通市場の法的枠組み ‐債券取引及び取引市場インフラ ‐クロスボーダー域内市場の実現に対する障害 ‐証券決済制度の内容 ‐コスト及び課金方法

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14 ‐市場規模・統計及び負債市場の発展史 ‐イスラム債券市場の存在 第 2 巻 (Volume 2) サブ・フォーラム 2: 取引フロー及び決済インフラに関する情報 サブ・フォーラム2 の概観 第1 部:ASEAN+3 における債券市場とそのインフラ 第2 部:各国の債券市場とそのインフラ 第3 部:債券市場インフラ・ダイアグラム、国内債券取引フロー、及びクロスボーダー債 券取引フロー *第 2 巻に含まれる主要な情報 ‐債券市場及びそのインフラ・ダイアグラム ‐国内債券取引フロー ‐照合 ‐決済サイクル及びオペレーション時間 ‐付番及びコード化における標準化 ② データ更新の管理方法 [基本的な更新方法と、アドホック更新チーム体制] 報告書内容の更新は、情報データの取集、見直し・更新、ABMF メンバーによる確認、ABMF ウェブサイトを利用した公表の4 段階のプロセスで行われることとし、必要に応じて、ADB 事 務局、SWIFT 及びその他の可能なエキスパートが参加して行う。また、ABMF メンバー各機関 とも連携して、次のような作業手順で行う。 (出所)ADB 事務局プレゼン資料を基に作成。 情報データ 収集 見直し 更新 ABMF メンバー による確認 公表 (ABMF ウェ ッブサイト) 更新チーム (ADB 事務局、SWIFT、その他) -情報・データ収集支援 -見直し・更新支援 -ABMF メンバー確認の促進 ABMF メンバー -情報・データのインプット -見直し・更新の提供 -修正・更新の確認 ADB 事務局

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15 [更新日程] アドホックないし部分的改定は、各ABMF メンバーより直接の請求がある場合や、更新チー ムにより行われた改定をABMF メンバーが確認した場合。 一方、定期的更新は、1 年に 1 回行う。ABMF メンバーは、各年度末に、マーケット・ガイ ドの修正の必要性を見直し、チェックする。更新チームは、収集した情報を提供し、定期的更新 手続きを促進する。 [翻訳の問題] 幾つかのメンバー国は報告書の各国言語への翻訳に関心を持っている。この場合、著作権の関 係で、ADB と関心を持つ機関との間で、翻訳に関するライセンス契約(TLA)を締結すること とする(契約ひな形は ADB から当該メンバー国へ提供可能)。但し、翻訳後も英語版のみが正 式な報告書である。 2.SRO ワーキング・グループ会合(4 月 19 日開催) 先の第7 回香港会議で創設が合意された SRO ワーキング・グループの第1回会合が本会議の日 程とは別枠で4 月 19 日に、ABMF 開催地フィリピンの PDS グループの主催により初めて開催さ れた。会合には、8 か国・地域から 20 名が参加(この他、ADB 関係者 6 名がオブザーバーとして、 また、会合の事務局としてPDS グループの職員 5 名が参加)。正規の参加者の中には、フィリピン 証券取引委員会のフアニタ・クエト理事長も含まれる。 なお、今回は欠席したが、シンガポール及びタイの各ABMF メンバーも参加の意向を表明して いるため、現時点では10 か国が参加してのスタートとなった。 参加団体の性格は、下表にみるように多様であり、必ずしも自主規制の専門機関だけではない。 SRO ワーキング・グループのメンバー構成 参加メンバー 国・地域 参加団体名 団体の性格 参加 人数 中国 The National Association of Financial Market

Institutional Investors

(銀行間取引の)自主規制機 関

3 香港 Hong Kong Monetary Authority 規制当局 1 インドネシア PT Kliring Penjaminan Efek Indonesia 清算機関 1

KSEI 決済機関 1

Indonesia Stock Exchange 取引所 1

日本 日本証券業協会 自主規制機関 1

韓国 Korea Financial Investment Association 自主規制機関 2 Korea Capital Market Institute シンクタンク 1

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16

Jeonju University 大学 1

マレーシア FMA Malaysia (CIMB Investment Bank Berhad) 広域型業者団体 1 フィリピン Philippine Dealing System Holdings Corp. 取引所 2 Securities Exchange and Commission 規制当局 1 Bureau of the Treasury 金融当局 1 Bankers Association of the Philippines 業者団体 1 シンガポール* Singapore Exchange 取引所 1 タイ* Thai Bond Market Association (債券分野の)自主規制機関 1 ベトナム Hanoi Stock Exchange 取引所 1 (今回の初回会合には、シンガポール、タイの2 か国は不参加。中国については電話会議方式で参加。) 会合は、PDS グループのビンセント・カスティージョ氏(社長兼 CEO)を今回の座長に指名し、 主として、以下のポイントで議論を行った。 ・ 各団体の自己紹介 ・ 本ワーキング・グループの目的に関する議論 ・ ワーキング・グループのガバナンス ・ 具体的な作業案 なお、日本からは本協会のみ参加となったが、主として次のような発言を行った。 ⅰ.主催者のPDS グループの用意した議案には賛成する。但し、参加者の顔ぶれからすると、 多様なバックグランドの機関が参加しており、SRO ワーキング・グループの性格について 共通のコンセンサスを形成するには多尐困難さがあるだろう。 ⅱ.地域内の債券発行共通プログラムの導入をサポートするためには、メンバー各国のSRO の フレームワークの質の同等性が前提となる。例えば、投資家保護の枠組みは健全なプロ市場 にとって重要な意味があり、メンバー各国を通じて同等性を有する必要がある。したがって、 地域内の債券発行共通プログラムの創出に十分な基礎を与えるために、各国それぞれの SRO の現在のフレームワークを検証すべきである。 ⅲ.債券共通発行プログラムを開始する前に、相互認知(mutual recognition)の十分な基礎が なければならない。アジア広域型SRO の創設を目的とする前に、相互認知の実現に向けた 検証と確認作業がまずありきである。 会合は、途中休憩をはさんで約3 時間行われ、最後に以下の決議を行って閉会した。 ‐決議No.01-01 5.2012

「ASEAN+3 SRO ワーキング・グループは、地域内での SRO の協調のための継続的な委員会 とする」

‐決議No.01-02 5.2012

「ASEAN+3 SRO ワーキング・グループのメンバー間で、(チャーター、ルールなど)の情報 交換を行うものとする」

(17)

17 ‐決議No.01-03 5.2012 「ASEAN+3 SRO ワーキング・グループの役割は、『メンバー間の合意の可能性を除外せず、 ABMF と連携して、特に SRO の枠組み(例えば、その仕組み、共通要件及び協調の在り方に ついてのデザイン)作りの方法を含む ASEAN+3 地域内債券市場を推進するために参加者同 士が協調して努力する』こととする。」 ‐決議No.01-03 5.2012 「ASEAN は、この努力に主導権を発揮する」 3.今後のスケジュール 4 月末までに 5 月 2 日~3 日 5 月 3 日 5 月 24 日 6 月~8 月 6 月 11 日~12 日 6 月 13 日~15 日 6 月 25 日~26 日 6 月 28 日~29 日 7 月 9 日~10 日 7 月 12 日~13 日 7 月 23 日~24 日 7 月 26 日~27 日 8 月 6 日~7 日 8 月 9 日~10 日 8 月 22 日~23 日 9 月 4 日~6 日 ・第2 フェーズ用の質問票(クエスチョネア)をメンバーに送付 ・AFDM+3 及び AFMM+3(マニラにて) -ABMI(ABMF)に関する進捗報告 ・ABMI 10 周年記念セミナー(マニラ) ・質問票回答期限 ・各国現地調査 (第1 回目)マレーシア (同 上)ベトナム (第2 回目)タイ (同 上)シンガポール (第3 回目)韓国 (同 上)日本 (第4 回目)中国(上海) (同 上)中国(北京) (第5 回目)インドネシア (同 上)香港 (第6 回目)フィリピン -当初ドラフトに含むべき提案書の検討 -(SF1 について)共通発行プログラムの提案書の起草 -(SF2 について)メッセージ標準の調和に関する提案 ・第9 回 ABMF 国際会議(ソウルにて) (以降、四半期ごとの国際会議の開催予定)

(18)

18

(参考1)

会議日程 [1 日目](2012 年 4 月 17 日)サブ・フォーラム 1 の会合 時 間 テーマ スピーカー 09:00-09:10 歓迎挨拶 *フアニタ E クエト:フィリピン証券委員会 理事長 09:10-09:20 開会挨拶 *村木徹太郎 SF1 議長:東京 AIM 09:20-10:20 セッション1:債券発行共通プログラム の開発(パート1) *犬飼重仁教授:ADB コンサルタント 10:40-12:00 セッション2:債券発行共通プログラム の開発(パート2) ・質疑応答 *犬飼重仁教授:ADB コンサルタント 13:30-15:00 セッション3(インフォメーション・セ ッション):国内スケール格付とアジア 各国ソブリンとの関連づけ ・報告 ・質疑応答 *ファフィーム・アフマド:ACRAA 15:00-16:00 セッション4(インフォメーション・セ ッション):債券のクロスボーダー取引 の取引後の調和化に関する欧州の展望 ~EMTN に関する概観も含む ・報告 ・質疑応答 *ブーン・ヒオン・チャン:ドウチュ・バンク 16:20-17:20 セッション5(インフォメーション・セ ッション):その他の論点に関して ・東京プロボンド・マーケットに関す るケース・スタディ:ING N.V. ・日本の債券市場における現状の起債 ウィンドウ ・質疑応答 *飯田一弘:東京 AIM *延廣玲子:野村證券 17:20-17:50 セッション6:SF1 のその他の論点 ・フェーズ 1 報告書のアップデート及 び取扱い ・フェーズ1 報告書の配布 ・質疑応答 *ジェー・ソン・リー:ADB 事務局 *マチアス・シュミット:ADB 事務局 17:50-18:00 ADB 事務局による総括 *ジェー・ソン・リー:ADB 事務局 18:00-18:10 閉会挨拶 *村木徹太郎 SF1 議長

(19)

19 [2 日目](4 月 18 日)サブ・フォーラム 2 の会合(日証協はオブザーバーとして参加) 時 間 テーマ スピーカー 09:00-09:10 歓迎挨拶 *赤松範隆:アジア開発銀行地域経済統合室次 長 09:10-09:20 開会挨拶 *ジョン・ヒュン・リー:KSD 09:10-10:40 セッション 7:フェーズ 2 活動のフォ ーカス(パート1) ・報告 ・その他の論点及びアプローチ ・質疑応答 *乾泰司:ADB コンサルタント *河合真児:ADB 事務局 *アントニーノ・A・ナクピル:PDS グルー プ 11:00-12:00 セッション 8:フェーズ 2 活動のフォ ーカス(パート2) ・質疑応答 13:30-14:30 セッション9(インフォメーション・セ ッション):スタンダード及び市場慣行 の管理データ・ベース ・報告 ・質疑応答 *アレキサンドル・ケッチ:SWIFT 14:30-15:30 セッション10(インフォメーション・ セッション):他の論点に関する情報 ・LEI の議論に関する最近の進捗 ・LEI に関する追加情報 ・質疑応答 *森剛厳:三菱東京 UFJ 銀行 *レベッカ・ターナー:ASIFMA 15:50-16:20 セッション11:SF2 の他の論点 ・フェーズ1 報告書のアップデート ・フェーズ1 報告書の配布 ・質疑応答 *ジェー・ソン・リー:ADB 事務局 *マチアス・シュミット:ADB コンサルタン ト [総括セッション] 16:20-16:50 今後の作業計画及び総括 ・質疑応答 *ジェー・ソン・リー:ADB 事務局 16:50-17:00 閉会挨拶 *ジョン・ヒュング・リーSF2 座長

(20)

20

(参考2)

1.ABMF 設立の背景

ABMF は、日本の呼びかけで 2003 年に始まったアジア債券市場育成イニシアティブ(Asian Bond Markets Initiative:通称 ABMI~アブミ~)の中で各国債券市場の規制面を審議するタス

ク・フォース3 の下部機関として、2010 年秋に、金融当局者以外に幅広く市場関係者の参加を要

請し設立されたものである。

ABMF は、東南アジア諸国連合(ASEAN)に中国、韓国、日本の 3 か国を加えた ASEAN+3 の債券市場の規制面、インフラ面を含めたさらなる標準化・調和化を推進し、アジアに眠る巨大な 貯蓄を投資に導くための方策について実務レベルの協議と作業を行うことを目的とし、各国の債券 市場を取り巻く規制面の共通化を話し合うサブ・フォーラム1 と、市場インフラの共通化を協議す るサブ・フォーラム2 の二つの部会をもつ。本協会からは、SF1 に審議メンバーとして職員1名 と協会員の証券会社から2名の委員(ナショナル・エクスパート)を派遣している。 アジアで最大の債券市場を形成している日本の経験が、このプロジェクトで一つの市場育成の模 範として生かされれば有意義であり、また、アジアの債券市場がより標準化され整備されることに より、日系企業の現地通貨建債券発行による資金調達もこれまで以上に活発化し、日本の証券ビジ ネスにとってもビジネスチャンスとなるとともに、日本の社債市場の国際化・活性化にも結びつく ことが期待される。 なお、ABMF の議論の基本的方向性は、以下の通りである。

(1)ABMF の結成に先行して、ABMI のタスク・フォース 4 の下で実施された Group of Experts

(GoE)の市場インフラの調査及びその報告書の結果を踏まえ、再度、規制の枠組みの観点を 加え、市場関係者も含んだ形で多様なアジア各国の債券市場の制度的枠組みについて質問票 (クエスチョネア)を確定し、それに基づく再調査を行い、標準化、調和化の提言を行う。 (2)調査に際し、アジア最大の債券市場を持つ日本が率先して、自らの市場構造、制度の徹底的 洗出しを行い、各国に調査項目の模範例を提示する。なお、中国と並び、日本に次ぐ債券市 場の規模を持つ韓国も同様の模範例を提示する。 (3)各国の制度の洗い出し、調和化というボトムアップ・アプローチに加え、アジア全域にユー ロボンド市場に類似したプロ向け債券市場をトップダウンで創出する。(但し、後者は、前 者の作業の進展状況を見ながら、各国の理解を徐々に得ることとする。)

(21)

21 2.ASEAN+3(日本を除く)の現地通貨建て債券市場の規模 1997 2002 2008 2009 2010 中国 57.74 342.3 2212.64 2567.08 3052.04 香港 44.87 68.09 92.46 144.03 163.75 インドネシア 2.81 55.7 70.04 98.9 106.46 韓国 36.09 486.18 816.7 1016.25 1149.15 マレーシア 54.5 78.82 166.11 185.4 246.55 フィリピン 16.7 27.41 56.69 63.08 73.31 シンガポール 23.77 61.14 127.54 140.79 178.66 タイ 10.06 46.92 140.94 176.86 224.63 ベトナム 0 0.28 13.29 12.04 15.32 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 1997 2002 2008 2009 2010 ベトナム タイ シンガポール フィリピン マレーシア 韓国 インドネシア 香港 中国 (注)数値は国債及び社債の発行残高の合計。 (出所)アジア開発銀行”AsianBondsOnline” (10 億米ドル) アジア通貨危機の時に比 べ、アジア債券市場は格段 に厚みを増している

(22)

22 3.ABMF の位置づけ Task force 1 現地通貨建て債券の 発行の促進 Task force 2 現地通貨建て債券の 需要の促進 Task force 3 規制枠組みの改善 共同議長: 日本(財務省)、マレーシア Task force 4 債 券 市 場 関 連 イ ン フ ラの改善 2010 年 5 月「ASEAN+3 債券市場フォーラム」 (ABMF : ASEAN+3 Bond Market Forum)設置(合意)

2010 年 9 月第1回会合(東京)、同年 12 月第 2 回会合(マニラ)、2011 年 2 月第 3 回会合(クアラルンプール)、同年 6 月第 4 回会合(韓国済州島)、同 年 9 月第 5 回会合(バリ)、同年 12 月第 6 回会合(北京)、2012 年 2 月第 7 回 会合(香港)、同年 4 月第 8 回会合(マニラ) ○ 2つのサブ・フォーラムが設置 (SF1)各国市場の規制及び市場慣行に係る情報収集(当初のナショナル・メン バー:日証協、東証、全銀協、ナショナル・エキスパート:日本の証券会社 2 社) (SF2)市場インフラ、メッセージ・フォーマット等の調和化によるアジア全域 の債券取引決済の効率化、STP 化の促進(保振等が参加) GOE (Group Of Experts) 保振、外資系証券会社が 参加 2010 年 4 月 23 日 GOE 報告書「クロスボー ダー債券取引・決済 上の障害の特定及び 除去を提言」 「ABMF国内検討グループ(ABMF-J)」設置:2010 年9月 21 日の第1回 会合以降、ABMF 国際会議の開催時期に合わせ 1~2 週間前に定期的に開催 ASEAN+3 財務大臣会議 ASEAN+3 財務大臣・中央銀行総裁代理会議 アジア債券市場イニシアティブ(ABMI)

(23)

23

4.ABMF 第 1 フェーズの議論に参加した各国メンバー・エキスパート機関(SF1/SF2 両方)

参加国 参加機関 参加国 参加機関

Brunei Brunei Monetary Authority Korea Korea Securities Depository (KSD) Cambodia National Bank of Cambodia Korea Korea Exchange (KRX)

Cambodia Securities and Exchange Commission of Cambodia

Lao PDR Ministry of Finance of Lao PRD

China People’s Bank of China Lao PDR Securities and Exchange Commission Office, Bank of the Lao PDR

China China Security Regulatory Commission Malaysia CIMB Investment Bank China China Securities Depository and Clearing

Corporation (CSDDC)

Myanmar Central Bank of Myanmar

China China Central Depository and Clearing Corporation Ltd. (CCDC)

Philippines Bureau of Treasury of the Philippines

China Shanghai Clearing House (SHCH) Philippines Securities and Exchange Commission of the Philippines

China China Foreign Exchange Trade System /National Interbank Funding Center (CFET)

Philippines Philippine Dealing System Holdings Corporation/PDS Group

Hong Kong Hong Kong Monetary Authority (HKMA) Philippines Bankers Assoc. of the Philippines (BAP) Indonesia Ministry of Finance of Indonesia Thailand Securities and Exchange Commission Indonesia Indonesia Stock Exchange (IDX) Thailand Thai Bond Market Assoc. (ThaiBMA) Indonesia Indonesian Capital Market and Financial

Institutions Supervisory Agency (BAPEPAM-LK)

Viet Nam Vietnam Bond Market Association (VBMA)

Indonesia Indonesian Central Securities Depository (KSEI)

Viet Nam Vietnam Securities Depository (VSD)

Japan Tokyo AIM, Tokyo Exchange Group Viet Nam Vietnam Securities Depository (VSD) Japan Japan Securities Dealers Association Viet Nam Hanoi Stock Exchange (HNX) Japan Japanese Bankers Association

(Sumitomo Mitsui Banking Corp.)

Int’l Expert Citibank

Japan Nomura Securities Co. Ltd Int’l Expert Deutsche Bank AG Japan Daiwa Securities Capital Markets Co. Ltd. Int’l Expert J.P.Morgan Japan Japan Securities Depository Center

(JASDEC)

Int’l Expert HSBC

Japan Mizuho Corporate Bank Int’l Expert State Street Korea Korea Financial Investment Association

(KOFIA)

Int’l Expert SWIFT

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