ク マ ー リ ラ の 比 一量 説 に つ い て ( 薄 田 ) 二 五 四
ク
マ
ー
リ
ラ
の
比
量
説
に
つ
い
て
蒔
田
徹
クマーリラは Sloka-vaika (全1846頽) の amuana-paric-cheda ( 18 8 頚 ) に お い て そ の 比 量 説 を の べ て い る が、 そ の 内 容 は 大 謹 二 つ の 部 分 に 分 け て 考 え ら れ る。 即 ち、 比 量 の 成 立 條 件、 形 式、 諸 誤 謬 に つ い て 述 べ る 前 牟 の 部 分 と、sanya ( 同、 普 遍 ) の 解 繹 を め ぐ つ て 比 量 と 現 量 等 の 他 の 量 と の 關 係 を 論 じ、 陳 那 學 派 の 読 を 斥 け て 自 ら の 量 論 を 圭 張 す る 後 牛 の 部 分 と で あ る。 こ の う ち 後 牛 の 部 分 に つ い て は 別 の 機 會 を 待 ち い ま 前 牛 の 部 分 に つ い て、Umbeka; sloka-vatkhya (tatpatytika) (ed. by S. K.
Ratha Satri, Madas Univ. S.S.No.13, 1940) とptha
Sarhi Mista; Nyaya-ratnakar (ed. by Rama Sartri Tail
anga. C.S.S. N O.11, 1 898 ) の 二 註 を 参 照 し つ ゝ、 概 要 を の べ て み た い。 ( A ) 比 量 め 成 立 の た め の 條 件。 か れ は ﹁遍 充 關 係 ( vya p ti ) ﹂ を 決 定 的 な 述 語 と し て 用 い、 こ れ を 比 量 す な わ ち 推 論 の 成 立 條 件 と す る。 こ れ は 彼 の 詐 纏 が そ の 封 象 と し て い る シ ヤ バ ラ ス ヴ ア ー ミ ソ の 比 量 の 定 義 中 に あ る jnatasambdha ( 二 物 間 の 既 知 の 關 係 ) と い う 語 に 代 置 せ る も の で あ る。 既 知 と は あ る 二 つ の も の の 結 合 關 係 が 過 去 に 繰 返 し て 認 識 さ れ た こ と (e.g 触 毫 所 等 に お け る 火 と 煙 ) に も と つ い て 既 に 知 ら れ て い る と い う こ と で、 そ の と き に は 一 方 (e k a des a ) が 謹 相 (linga ) と し て 他 方 を 知 ら し め (gamaka ) 論
證の因 (hetu) となり得他方は liin, gamya, sadhya となる。
そしてここで gamaka=所遍 (vyapya), gamya=能遍 (vyapaka)
で あ り そ れ 以 外 で は な い、 と 定 義 さ れ る ( 第 4 頽、 以 下 教 字 の み 記 す )。 例 を あ げ れ ば 牛 性 と 有 角 性 ( 8 )、 煙 性 と 火 性、 ( 聲 で な く 一 般 の ) 所 作 性 と 無 常 性 (Umb ) の ご と く で あ る が、 い つ れ も、 所 遍 た り し た が つ て 謹 相 た り 得 る も の は 他 方 に 甥 し て 時 聞 塞 間 的 に 等 し い (sama ) ( い わ ゆ る 同 延 ) か 叉 は 劣 つ て い る (nyuna ) ( 被 包 擾 ) か で な け れ ば な ら な い ( 5 )、 と 言 わ れ る。 そ う す れ ば 二 物 A B の 間 に A な ら ば B、 B な く ば A も な し と い う 必 然 關 係 が 決 定 す る 謬 で あ る と 言 え る。 筆 者 は か ね て 遍 充 關 係 の 述 語 と し て の 系 譜 及 び こ れ と 因 の 三 相 と の 關 係 を 少 し く 考 え た が ( 本 誌 前 號 に 要 旨 掲 載 )、 本 書 に お け る こ の 語 の 重 要 さ は 法 構 の 場 合 よ り も 一 層 大 き い と 言 つ て 差 支、 兄 な い。 そ れ は 后 者 が 遍 充 關 係 を 因 の 第 二 第 三 相 の 表 現 と 同 覗 し、 し た が つ て 後 世 の 正 理 學 徒 の 爲 し た よ う に 宗 法 相 ( paksad h a rmata ) ( 第 一 相 ) と 遍 充 關 係 と の 二 つ で も つ て 比 量 の 成 否 を 規 定 す る こ と も 可 能 で あ る か に 見 え る の に 封 し て、 ク マ ー リ ラ は 因 の
-607-二 相 論 を 全 く 採 ら ぬ ど こ ろ か、 第 嚇 相 の 問 題 に つ い て も、 宗 圭 辮 は 未 確 定 の 一 方 ( 所 立 ) に 關 し て は 未 知 の 樹 象 で あ り 既 定 の 一 方 ( 因 ) に 關 し て は 既 知 の 甥 象 で あ る ( 25 ) と 言 い、 眞 に 比 量 の 封 象 と な る のは限定するものと限定されるものとの關係(viesesaavisesyab-hava ) に あ つ て 然 も い つ れ が、 限 定 者 が あ る か は 場 合 に よ つ て 異 る と こ ろ の 圭 辮 賓 僻 ( 有 法 と 法 ) の 爾 方 で あ る ( 34. 3 5 ) と 述 べ て、 宗 圭 辮 の 二 重 性 と い わ ば 現 實 性 に 注 意 を 携 う べ き こ と を 圭 張 し て 暗 に こ の 読 を 斥 け、 遍 充 關 係 一 本 に よ つ て 比 量 の 成 否 を 規 定 す る か に 見 え る か ら で あ る。 但 し 何 れ の 方 が 理 論 的 整 合 を 得 て い る か は 今 は 問 わ な い こ と と す る。 ( B ) 比 量 の 形 式。 爲 自 爲 他 二 種 比 量 を 認 め、 宗 因 喩 三 支 作 法 を 探 る。 そ し て 喩 は 遍 充 關 係 の 表 現 ( 1 0 9 ) で、 (anvaya に も と つ く ) 同 法 喩 ( 110 ) と ( vya t ireka に も と つ く ) 異 法 喩 (121-2 ) の 二 が あ り、 倶 に 述 べ る こ と が 望 ま し い ( 1 1 8 ) と す る 黙 は 原 則 的 に 法 構 以 前 の 新 因 明 読 や、 疑 わ れ る こ と ば あ つ て 竜 明 に そ の 影 響 下 に あ る と 筆 者 な ど に は 信 ぜ ら れ る プ ラ シ ャ ス タ パ ダ の 比 量 読 と 骨 格 を 同 じ く し て い る。 異 る 黙 と 言 え ば、 陳 那 の 爾 喩 倶 述 に 翼 す る 理 由 と し て 言 わ れ る 所 謂 ﹁遮 詮 ﹂ ﹁ 止 濫 ﹂ の う ち 前 者 は 考 え ら れ な い。 ア ポ ー ハ 読 へ の 反 駁 と 註 繹 に は 言 う が、 遮 詮 は 宗 で 壼 き て い る 何 と な れ ば 何 ら か と に か く 述 定 さ れ た と い う こ と は そ れ と 矛 盾 し た も の の 否 定 が 爲 ぎ れ た の で あ り 矛 盾 し な い 屯 の を 否 定 し た の で は な い (e.g. 青 は 白 等 の 否 定 で 長 さ な ど の 否 定 で な い ) か ら と 言 う の で あ る。 ま た 爲 自 爲 他 二 種 比 量 に 關 連 し て 命 題 と し て の 喩 の 形 式 に sadharaa sb-heda と a sadarana, bheda の 二 類 を あ げ る こ と ( 實 例 省 略 ) は 新 し い 考 え で は な い か と 思 わ れ、 全 構 命 題、 特 ( 及 び 輩 ) 稻 命 題 の 旺 別 と 言 つ て 差 支 え な い で あ ろ う。(134-137, 25-26 ) ( C ) 誤 謬 論 ( 1 ) 遍 充 の 誤 れ る も の。 ( イ ) v in dhyavasi n 読 は samany a の 間 の 遍 充 關 係 で は な い。 ( 担 ) す べ て 聖 教 に 矛 盾 せ る も の ま た 矛 盾 を 藏 す る も の (Haitu k a た ち も 斥 け た と 言 う ) (16-7, 143 ) * * * い つ れ も 具 騰 的 に 誰 を 指 す か は 分 明 で な い。 實 例 は、 非 法 ( a bh a rm a tv a ) 誤 謬 (mithyatv a ) 昇 天 の 因 ( S v a r g ahetu t v a ) 無 常 (an ityatva ) に 封 し て 夫 々 殺 生 ( 禁 ぜ ら れ た る こ と ) 襯 念 ( 矛 盾 せ る 襯 念 ) 人 間 の 供 犠 途 行 ( 儀 軌 に 定 め ら る る こ と ) 勤 勇 無 間 所 獲 性 ( 所 作 性 ) が 誤 れ る 遍 充 關 係 に あ り、 括 孤 の 中 の も の を 正 し い と す る。 ( 1 7-2 1 ) (Umb ) 第 一 例 は 後 世 の 遍 充 關 係 の 規 定 上 upadhi ( 制 約 附 加 條 件 ) の 論 に 屡 々 用 い ら れ ( た と え ばS. D. S. Carvaka 章 )、 第 四 例 は 新 因 明定読の破斥である。頽では勤勇無間所護性のほか
Nyaya-vai-Sesika でも用いられる有類性 (jatimattva) 感官所得性
(indri-yakatva ) も 誤 り と し て い る の が 注 目 さ れ る。 ( 2 ) 似 宗 以 下 似 宗 似 因 似 喩 の 三 は 正 理 學 読 と 似 る 黙 が 少 く、 因 明 論 の 影 響 下 に 立 つ も の と 思 わ れ る。 然 も、 い ま 天 主 の ﹁入 正 理 論 ﹂ (Nyaya-pravesa ) が 果 し て 陳 那 読 の 忠 實 に し て 簡 潔 な 租 述 で あ る と す れ ば、 こ れ に 封 比 す る の が 最 も 適 當 の よ う に 思 わ れ、 法 構 の ﹁正 理 一 滴 論 ﹂ に 翼 す る よ り も 要 當 で あ ろ う。 法 構 の 誤 謬 論 と は い く つ か の 黙 で か な り 意 見 を 異 に す る 場 合 が あ る。 ( イ ) す で に 認 め ら れ て い る こ こ と の 立 宗。e.g. 限 現 量 で 象 が 見 ら れ て い る と ぎ そ の こ と を 宗 と す る へ (P.Sarathi Mista の 例 ) ( 5 7 ) ⋮ 相 符 極 成 (N.P ) ( ロ ) 言 語 上 の 矛 盾。e.g. 余 は 生 あ る 限 ク マ ー リ ラ の 比 量 読 に つ い て ( 薄 田 ) 二 五 五
-608-ク マ ー リ ラ の 比 量 読 に つ い て ( 蒔 田 ) 二 五 六 り 黙 す ﹂ ﹁ 余 の 母 は 石 女 た 軌 ﹂(62-3 )= 自 語 相 違 (N.P. ) ( ハ ) 既 得 の 結 論 と の 矛 盾。e.g 触 佛 教 徒 が 聲 常 住 と 立 宗 す る と き (64 ) 騒 自 謝 相 違 ( N.P ) ( 二 ) 世 間 の 認 め る と こ ろ と の 矛 盾。e.g. 瞬 ﹁Sasin は 月 な ら ず ﹂ (64 )= 世 問 相 違 ( N.P. ) ( ホ ) 現 量 と の 矛 盾。e.g. ﹁ 聲 は 聞 か れ ず ﹂ ( 5 9 )= 現 量 相 違 (N.P. ) ( へ ) 比 量 と の 矛 盾。e.g. ﹁ 聲 は 非 聞 性 な り ﹂ (60 )= 比 量 相 違 (N.P. ) ( ト ) 警 喩 量 と の 矛 盾。e.g. ﹁牛 と 水 牛 に は 類 似 な し ﹂ (65-66 ) ( チ ) 義 準 量 と の 矛 盾。e.g. 家 に 在 ら ず と 知 ら れ て お り ( し か も ) 生 存 し て い る チ ャ イ ト ラ が 戸 外 に も 居 な い と 言 わ れ た 場 合 (66-67 )。 ( り ) 無 鐙 量 と の 矛 盾。e.g. ﹁ 兎 に 角 あ り ﹂ (6 9 ) ( ヌ ) 有 法 と 法 ( 圭 辮 と 賓 僻 ) の 自 相 (svarupa ) 及 び 差 別 相 (visesa ) 上 の 矛 盾。e.g. ﹁ 雪 は 火 を 有 す ﹂ ﹁ 儀 軌 に 定 め ら れ た る 非 法 は 少 量 の 苦 の 因 た り ﹂ ﹁ 一 切 の 認 識 は 如 實 義 な 疹 ず ﹂ ( 7 1-4 )
(3) 似因不成 (asiddha) 疑惑 (sandeha) 矛盾 (viparita)
の 三 が 籔 え ら れ 大 膿 因 明 読 の 不 成 不 定 相 違 の 三 似 因 に 比 定 で き る。 ( a ) 不 成 因 あ ま り 整 然 と 解 説 さ れ て は い な い が 聲 の 無 常 の 立 讃 に 當 つ て 所 作 性 や 徳 性 (gunatva ) を 因 と す れ ば ミ ー マ ソ サ ー 派 (yajmika ) に と つ て 不 成 と な り (= 随 一 不 成N.P. )、 煙 が 霧 等 と 疑 わ し い に も 抱 ら ず こ れ を 因 と す る 場 合 に は 三 檬 ( 立 者 に と つ て と 敵 者 に と つ て と 双 方 に と つ て ) の 不 成 が あ る と 言 う。 こ れ はN.P. の 爾 倶 不 成 と 猫 豫 不 成 が 一 つ に な つ て 三 種 と ざ れ た も の で あ る。 そ し て N.P. の 所 依 不 成 に 相 當 す る も の は ﹁ ア ー ト マ ソ は 遍 在 す。 一 切 庭 に 於 て 纒 験 さ る ゝ は た ら き を 有 つ が 故 に ﹂ を 佛 教 徒 に と つ て の 所 依 不 成 の 例 と し て あ げ、 煙 の 場 合 同 檬 三 種 が あ る と す る。 ( 77-8 1) ( b ) 疑 惑 ( 不 定 ) 因。 ( イ ) 所 立 及 び そ の 否 定 に 何 れ も 存 す る も の を 因 と す る 場 合。e.g. ﹁ 聲 は 常 佳 な り、 所 量 性 の 故 に ﹂ と い う と き こ の 因 は 同 品 (e.g. 虚 塞 ) に も 異 品 (e.g. 窺 ) に 毛 共 通 に 存 す る。 な お 他 に 例 が 三 つ あ が つ て い る が こ の 四 つ が 共、 同 晶 一 分 輔 異 品 遍 韓、 異 品 一 分 轄 同 晶 遍 韓、 倶 品 一 分 韓、 の 四 不 定 因 に 相 當 す る こ と はU mbeka が そ う 註 繹 す る こ と か ら も 知 れ る。 ( ロ ) 爾 者 か ら 排 斥 さ れ る も の を 因 と す る 場 合。e.g. ﹁ 地 は 常 佳 な り、 香 を 有 す る が 故 に ﹂= 木 共 不 定 (N.P. ) ( ハ ) 互 に 矛 盾 し た 結 合 關 係 が 二 つ あ つ て 決 定 不 能 な る 場 合。e.g. ﹁ 風 は 現 量 所 得 な ら ず 無 形 な る が 故 に ﹂ と ﹁ 風 は 現 量 所 得 な り 燭 の 鍔 象 た る が 故 に ﹂= 相 蓮 決 定 (N.P. ) ( 詳 読 は 省 く が こ の 問 題 に つ い て ク マ ー リ ラ はN.P., プ ラ シ ャ ス タ パ ー ダ と 伺 意 見 で 法 構 と は 稽 異 る。 ) ( 84-9 5 ) ( C ) 相 違 因 ( イ )e.g. 所 作 性 ( 因 ) と 常 佳 性= 法 自 相 相 違 (N.P. ) ( 官 ) ﹁ 語 が 本 質 的 に 語 尾 攣 化 を 有 す る か ら 野 象 と の 結 合 關 係 の 決 定 以 前 に す で に 本 質 的 に 意 味 を も つ ﹂ と 言 う と き 11 法 差 別 相 違 (N.P. ) ( ハ ) ﹁samavaya はdravya 等 と 異 る ﹃ こ こ に 何 々 あ り ﹄ と い う 襯 念 の 因 た る が 故 に ﹂ と 言 う と ぎ= 有 法 自 相 相 違 (N.P. ) ( 二 ) 同 因 に よ り ﹁samavaya は 一 (ekatva ) な り ﹂ と 言 う と き= 有 法 差 別 相 違 (N.P. ) ( ホ ) Sautrantikas に 甥 し て ﹁ ア ー ト マ ソ の 存 在 は 常 佳 な り、 ( 盧 塞 の 如 く ) 部 分 を 有 せ ざ る が 故 に ﹂ と 言 う と ぎ は 法、 有 法 爾 方 の 自 相 に 相 違 す る。 ( へ ) ﹁ 眼 等 は 他 の た め の も の で あ る。 ( 臥 且 ハの 如 く ) 積 集 性 の 故 に ﹂ と 言 う と ぎ は 爾 方 の 差 別 に 相 違 す る。 ( 96-107. 實 例 に つ い て は 更 に 註 解 を 要 す る が 余 白 な く 似 喩 を 列 塁 す る こ と も 省 略 す る ) ( 4 ) 似 喩。 要 す る に 遍 充 關 係 の 不 正 確 或 は 逆 を 述 べ た も の が 似 喩 と さ れ こ れ もN.P. に 比 定 し 易 い。