中央アンデスの民話とアマゾンの神話 : 栽培植物
・労働・死の起源
著者 友枝 啓泰
雑誌名 国立民族学博物館研究報告
巻 5
号 1
ページ 240‑300
発行年 1980‑03‑30
URL http://doi.org/10.15021/00004535
国立民族学博物館研究報 告 5巻1号
中 央 ア ン デ スの 民話 と アマ ゾ ンの 神話
栽 培 植 物 ・労 働 ・死 の 起 源
友 枝 啓 泰*
Central Andean Folktales and Amzonian Myths : The Origin of Cultivated Plants, Labor and Death
Hiroyasu TOMOEDA
In the southern part of the Central Andes there are numerous versions of a popular fox-tale, in which the fox hero travels to the heavens and crashes to the ground on his return. Some versions end with the origin of cultivated plants which spill from the stomach of the gluttonous hero who devoured them at a celestial banquet.
Dispersion after disjunction (high/low) is an invariant feature which characterizes story-formation (combination and functioning of tale elements) of all the versions. And this pattern recurs in the cortamonte, one of the popular carnival activities in the northern part of the Central Andes. In this activity numerous participants in the festival fell a tall tree erected in an open square (dis- junction) and rush to possess the objects with which it was decorated
(dispersion).
Although information on the magico-religious motive or symbo- lic meaning of the Andean cortamonte is lacking, its formation is quasi- identical with the story of some upper Amazonian (montana) myths, which relate that humans obtained various cultivated plants from the fruits of an original tree which they had felled. Andean fox-tales and the Amazonian myths thus coincide in their message and pattern.
The Amazonian myths treat not only cultivated plants but also human mortality, which originates as if it were forced on those who felled the miraculous tree. In the Central Andes the message of this simultaneous origin of cultivated plants and man's mortality is transmitted in a more attenuated form by another popular tale,
*国 立民族学博物館第2研 究部
友枝 央央 アンデ スの民話 とアマゾ ンの神 話
"Chiwaco the Liar
," a transformation of the fox-tale.
In these versions the thrush hero, acting as spiteful mediator between the celestial God and terrestial humans, is the source of various aspects of human life, such as agriculture, herding, or cooking and eating. Here, man's mortality is treated indirectly or in a reduce of form because human beings are forced to labor hard to obtain foodstuffs and their teeth, which wear-out, represent man's mortality.
When man participates actively in the origin process of cul- tivated plants, as in the Amazonian cases, he experiences death simultaneously. Participating passively in the same process only as the recipient of messages from the God, as in the chiwaco-tale, lessens his mortal experiences to a degree of labor and pains, which gives a certain negative value to the plants derived. When he does not participate in the process, as in the fox-tale, only the dispersive aspect of the origin process remains constant and seems to be stressed.
Our final observation on an Andean children's play, sachatiray (cutting tree), validates these arguments.
は じめ に
1.大 食 キ ツ ネの 墜 落 死 ロ.木 を切 り倒 す 罪
皿.嘘 つ き チ ワ コ の 証 言 IV.子 供 の 遊 び 一 ま と め 一
は じ め に
中央 ア ンデ スを 西 か ら東 へ 自動車 を使 って 旅 行 した 人 は,た った一 日 の う ち に海 岸, 高 地,熱 帯 雨 林 と激 し く変 化 す る 自然環 境 とそ こ に生 活 す る人 々のi著しい相 違 を 印 象 づ け られ る。反 対 に海 岸,高 地,あ るい は上 流 ア マ ゾ ン沿 い に 南 北 に長 旅 を した 人 は, む しろ相 似 た よ うな 景 観 の連 続 を経 験 す る。む ろ ん二 人 の 旅 行 家 の 観 察 は 単純 にす ぎ, 実 際 は東 西 の 環 境 変 化 は も っ と連 続 的 な もの だ し,異 な る地 域 間 の 社 会 的,経 済 的交
流 は頻 繁 で,人 々の 生 活 様 式 の 共 通性 は見 か け以 上 に大 きい。 ま た似 た よ うな 山地 農 民 の生 活 に も相 違 が あ り,・た とえ ば南 部 高 地 で 沢 山 飼 育 さ れ て い る リャマ,ア ルパ カ は北 へ 行 くにつ れ て 数 を 減 じ,北 部 高 地 で そ れ を 見 るの は稀 で あ る。 中央 ア ンデ ス を 一 つ の 文化 的 ま とま りを 有 した 統一 体 と見徹 す 場 合,そ の 内 部 に お け る類 似 性 と多 様 性 は当 然 の前 提 とな る。 ペル ー の ポ ピュ ラー ・ソ ング の中 で も コス タcosta,シ エ ラ 241
国立民族学博物館研究報告 5巻1号 sierra,モ ン ター ニ ャmontafiaの 鮮 や か な対 照 とそ れ を 統 一 す る"わ が ペル ー"が 讃 美 さ れ る。
ここで は中 央 ア ンデ ス に広 く共 有 され て い る 二 つ の 民話 グ ル ー プ,カ ー ニバ ル の行 事,子 供 の遊 び,お よび 中 央 ア ンデ ス に接 す るモ ン ター ニ ャ(上 流 ア マ ゾ ン)に 住 む 諸 族 の神 話 や 儀 礼 を 考 察 の 対 象 とす る。 そ して,そ の 内 容 が 相 互 に ど の点 で一 致 し, どの 点 で相 違 す る か を明 らか にす る過程 を通 じて,こ れ らの 事 象 が,考 察 の対 象 と な った 限 りに お いて,一 つ の ま と ま りを な して い る こ とが 強 調 され る。地 域 性 を明 らか にす る こ とは 必ず し も本 稿 の主 た る関 心 で は な い が,結 果 的 に は扱 う事 象 間 の一 致 や 相 違 に は大 ま か な地 域 差 との相 関が み られ る 。
特 に本 稿 で は中 央 ア ンデ ス の諸 事 象 を 上 流 アマ ゾ ン地 域 の神 話 や 儀 礼 との 関 連 で 扱 って い る。Steward等 に よ る南 ア メ リカ文 化 領 域 の設 定 以 来,中 央 ア ンデ ス とア マ ゾ ン地 域 は,決 して 両 者 間 の 関 連 が無 視 され た わ けで はな い が,と か く異 な る文 化 領 域 と して別 個 に扱 わ れ る研 究 上 の傾 向を 生 ん で い る。 しか し場合 に よ って は両 地 域 を 一 体 と して扱 う こ とも,今 後の研究にと って有効で あろう。特 に上流 アマゾ ヒと中央 ア ンデ ス の よ うに,過 去 現 在 にわ た って不 断 の交 流 を 繰 り返 して きた 隣…接地 帯 につ い て は,そ れ が い え る。 本 稿 の試 み は,あ る意 味 で は,上 流 ア マ ゾ ン の神 話 に 中 央 ア ン デ スの 民 話 を 解 釈 させ る こ とで あ る。
上 に述 べ た 理 由 か ら,本 稿 で は一 つ の 民 話 の 数 多 い ヴ ァー シ ョ ン間 の比 較,あ る い は タイ プの 異 な る民 話 や 神話 間 の比 較 を して い く こ とに な る の で,そ の記 述 操 作 の便 宜 上,民 話 や 神 話 を,1.話 に よ って 意 味 され る もの と して の テ ー マ あ るい はメ ッセ ー ジ,2.話 を 形 づ くる諸 要 素 の組 合 わ せ と機 能 と して の 構 成,3.そ の具 体 的構 成 の 基本 に あ る原 理 と して の パ ター ンあ るい は形 式,と い う三 つ の 局 面 に分 けて お く。
こ こで扱 う中央 ア ンデ スの 民 話 や行 事 の資 料 はす で に 出版 され た もの が殆 どで,ど ち らか とい えぱ フォ ー ク ロア に 興 味 を抱 く入 々 に よ って 発 表 され て い る 。 そ の大 半 は 非 専 門 的 立 場 で書 かれ,部 数 の 少 な い地 方 の郷 土 誌 と して 出版 され た り,学 術 的 性 格 の うす い 定 期 刊 行 物 に掲 載 され た もの が 多 い 。1930年 以 後 発 表 され て きた こ う した記 録 は,こ れ まで に相 当 の量 に及 ん で い るが,今 日に 至 る ま で研 究 資 料 と して 殆 ど利 用 され な い ま ま に,散 逸 して しま う傾 向 にあ る。 この 時 点 で こ う した 断片 的 な 記 録 を一 つ に ま とめ整 理 して お くこ とは,分 析 の成 果 い か ん に か か わ らず,今 後 のア ンデ ス社 会 の 研 究 に と って役 立 つ もの と考 え る。
本 研 究 は1978年 に認 め られ た 文 部省 在 外 研 究(長 期)の 成 果 の一 部 で あ り,ま た そ の大 要 は研 究 ノー トと して す で に発 表 した[友 枝 1979:46‑55]。 本館 の共 同研 究 会
友枝 中央アンデスの民話とアマゾンの神話
(中 央 ア ンデ ス農 牧 社会 の 民族 学 的研 究)に お い て,共 同研 究 員 の 諸 氏 か ら本 稿 の 内容 につ い て の貴 重 な示 唆 を得 た ことを 記 し,こ こに 感 謝 の 意 を表 す る。
1.大 食 キ ツ ネの墜 落 死
中 央 ア ン デ ス 高 地 の 農 民 社 会 に 伝 わ る 伝 説1eyenda,寓 話 倣bula,民 話cuentoの 類 は,こ れ ま で に数 多 く採 録 され て い るが,若 干 の 研究 を別 にす れ ば,分 析 の 対 象 と
して取 り上 げ られ る こ とが な か った 。 同 じ南 ア メ リカ で も,熱 帯 低 地 に住 む諸 部族 の 神 話 の分 析 が,Levi‑Straussを は じめ と して 多 くの人 々 の関 心 を 集 め て い るの に対 し, この 事 実 は対 照 的 で あ る。
こ こで は,そ う した ア ンデ ス民 話 の う ちか ら,栽 培植 物 の起 源 を 扱 って い る 神話 的 性 格 を有 す る もの,お よ びそ れ と関 係 す る一 連 の 民話 を取 り上 げて,分 析 を試 み る 。 これ らの 民話 が,そ れ 自体 で 意 味 の あ る全 体 を 形成 す る ば か りで な く,ア ンデ ス 高地 農 民 の 思 考 様 式 や 観念 体 系 に それ が 深 い か か わ りを もち,ま た 熱 帯 低 地 の 神話 群 と も 充 分 に意 味上 の 関 連 を有 し,全 体 構 造 の 一 環 で あ る こ とを 明 らか にす るの が本 稿 の 目 的 で あ る6
まず 分 析 の 出発 点 と して取 り上 げ るの は,キ ッネ の行 為 に よ って 天 界 か ら栽 培 植 物 が人 間 界 に もた らされ た とい う,ボ リビア 領 ア ンデ ス高 地 の民 話 で,目 下 手 も とに あ る資 料 の う ちで は,栽 培 起 源 を扱 った 話 と して 一番 早 い時 期 に採 録 され て い る。
民話1‑一 大 昔 キ ツネの 口 は小 さ くてe一鳥 は今 と同 じ く木 を 住 み 家 と して い たが,天 界 で 食 事 を して い た。 あ る 日 コ ン ドル に 出 会 った キ ッ ネ は,地 上 の動 物 が噂 に だ け 聞 く天 上 の 宴 会 に招 待 して くれ と頼 む 。 天 上 で は腐 った 肉を 食 べ ず,旨 い食 物,と りわ け砂 の よ うに 見 え る物 を食 べ て い る とい う こと で あ った 。 コ ン ドル は不 作 法 な 振 舞 い,特 に骨 を か じる不 作 法 を せ ぬ こ とを条 件 に,天 界 にキ ッ ネをつ か んで 連 れ て行 く。 天 界 で催 され た宴 会 に は,沢 山 の トウモ ロコ シ,キ ヌア,カ ニ ャワ,食 肉 鳥 の た めの 肉が あ り,宴 会 の あ と もキ ツ ネ は ぐず ぐず して いて,コ ン ドル が食 べ た あ との骨 を か じって い るの を見 つ か り,コ ン ドル は罰 と して キ ッ ネを 置 き去 りにす る。歎 い て い る キ ツ ネ は,ロ ー プ を持 って 来 た パ パ チ ウチ と い う鳥1)の 助 け を得 て, 天 界 か ら降 りて来 るが,途 中 で 出会 った イ ンコの 群 れ を,下 痢 の イ ン コ,汚 れ た イ
1)ボ リビアで パ パ チ ウチpapachiuchiと 呼ん で い るの は,高 地で は ご く普 通 に見 か ける小 鳥 (Elena・FortUn前 ボ リビア文 化 庁 長官 に よ る教 示1979)。 種 類 な ど につ い て 詳 しい こ とは解 ら なか った。papa‑chiuchiだ とす れ ばpapa一 ジ ャガ イモ, chiuchi一 小 鳥 の ひ な。
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国立民族学 博物館研究報告 5巻1号 ン コ,役 立 た ず2)と 三 度 に わ た って 侮 辱 し,最 後 に ロ ー プ を 噛 み 切 られ て 落 下 す る 。 マ ン トを 広 げ て くれ と 助 け を 求 め た が,誰 も そ れ が 聞 こ え な か っ た か,聞 こ う と し な か っ た か で,地 上 に 衝 突 し,熟 れ た オ レ ン ジ の よ う に 破 裂 し,そ の 腹 か ら天 上 で
食 べ た 物 が 飛 び 散 っ た の で,地 上 に は ト ウ モ ロ コ シ,キ ヌ ア,カ ニ ャ ワ が あ る よ う に な っ た[PAREDEs 1953:23‑25, repr.1973:57‑56]。
こ の 話 はParedesが ボ リ ビ ア 領 ポ ト シPotosi県,ノ ル ・チ チ ャ スNor Chichas地 方 の ケ チ ス ラQuechisla村 でDominga Titizanoか ら聞 い た も の で,再 録(1973) の 資 料 か ら判 断 し て,1949年 当 時 の もの で あ る 。 同 じ ボ リ ビ ア 領 の ス ク レSucre県 で,
ご く最 近Anibarroも ケ チ ュ ア 語 で 語 られ た も の を 採 録 して い る 。Aarne‑Thompson に 従 っ た 民 話 の 形 式 分 類 を 目 的 と し て,Anibarroは ボ リ ビ ア 高 地 の 数 多 い 民 話 を 直 接 に 採 集 して い る が,下 記 の 民 話 は そ の 一 つ で あ る 。Anibarroに よ る と,こ の 話 は ボ リ ビ ア 領 の,特 に ケ チ ュ ア 語 農 民 の 間 に 広 く伝 わ って い る よ う で,彼 女 自 身 で 六 つ の ヴ ァ ー シ ョ ン を 集 め て い る[ANIBARRo l 976:361]。 た だ し他 の 五 つ が 栽 培 植 物 起 源 を 扱 っ て い る か 否 か は わ か ら な い 。
民 話2 コ ン ドル が キ ッ ネ を 天 上 の 宴 会 に 誘 い,背 中 に 乗 せ て 連 れ て 行 く。 酒 に 酔 っ た キ ツ ネ と 喧 嘩 を し た コ ン ドル は,寝 込 ん だ キ ッ ネ を 置 き 去 り に し て,地 上 に 帰 って しま う 。 自 分 で 編 ん だ ロ ー プ を 伝 って 降 り て 来 た キ ツ ネ は,途 中 で 出 会 っ た イ ン コ の 群 れ を 侮 辱 し,仕 返 し に ロ ー プ を 切 られ る 。 キ ッ ネ は 敷 物 を 広 げ て くれ と 助 け を 求 め た が,人 々 が か わ り に 大 き な 石 を 据 え た の で,そ れ に 衝 突 し て 死 に,胃 袋 か ら天 界 で 食 べ た キ ヌ ア,ク イ ミ,ト ウ モ ロ コ シ(二 種 類)が 飛 び 散 り,人 々 は そ れ を 畑 に 蒔 い た[ANIBARRo 1976:360‑361]。
二 つ の 民 話 に 出 て く る 起 源 植 物 の う ち,ト ウ モ ロ コ シ,キ ヌ ア は ア ンデ ス 高 地 で ご く一 般 的 な 栽 培 作 物 と な っ て い る 。 カ ニ ャ ワkafiahuaは キ ヌ ア と 同 じ 仲 間 の 植 物 でChenopodiecm Pandicaale Acllen[CARDENAs l969:116],ク イ ミcoimiは ミユ ミ millmiと も い わ れAmaranthus caudatus L.で あ る[CARDENAs 1969:119]。 Oblites に よ る と ク イ ミ はChenopodium millmiま た はChenopodium montanum[1969:215],
キ ヌ ア と 同 じ 仲 間 と い う こ と に な る 。 な おSoukupの 分 類 で はAmaranthzts caudatus L.と な っ て い る[1970:18]。 分 類 学 上 い ず れ を と る べ き か 解 らな い が,同 じ 名 称 で 地 域 に よ っ て 違 った 植 物 を 呼 ん で い る 可 能 性 もあ る3)。 い ず れ に して も ア ンデ ス 高 地 2)三 回 に わ た る侮 辱 の ケ チ ュ ア 語 表 現 とParedesの ス ペ イ ン語 訳 は,10ros kkecha siquis(loros
c◎ndiarrea), ioros klgechi michis(loros trapos sucios), loros kkechichis(10rgs insigni丘cantes)。
3)Cardenasは ボ リ ビ ア 領 に 関 す る 有 用 植 物 の 分 類, Oblitesの は ボ リ ビ ア 領 テ ィ テ ィ カ カ 高 原 のCallahuaya農 民 の 薬 用 植 物 の 分 類, Soukupの は ペ ル ー 領 の 植 物 俗 名 の 分 類 で あ る 。
友枝 中央 アンデ スの民話 とアマゾ ンの神話 の 一 部 で は 現 在 栽 培 さ れ て い る 。
数 多 くの ボ リ ビ ア 民 話 を 比 較 検 討 し たAnibarroは,結 論 と して,殆 ど の 話 が 植 民 地 期 に ス ペ イ ン人 に よ って も た ら さ れ た も の の 残 存 で あ り,純 粋 に イ ンデ ィ オ 伝 統 で あ る 民 話 は 見 当 らな か った と 述 べ て い る 。 した が っ て 民 話2も そ の 例 外 で は な く, Anibarroの 分 析 に よ れ ば,ス ペ イ ン か ら持 ち 込 ま れ た 動 物 民 話 に 組 み 込 ま れ て 神 話 的 要 素 が 残 っ て い る と い う こ と に な る[ANIBARRo l976:42]。 民 話 の タ イ プ や モ チ ー フ の 分 類 だ け で 起 源 を 同 定 す る こ と に は 無 理 が あ る と し て も,一 般 的 に い っ て ,今 日 の ア ンデ ス 民 話 の 多 く が ス ペ イ ン に 由 来 し て い る の は 確 実 で あ ろ う。
キ ッ ネ が も た ら し た 栽 培 植 物 の テ ー マ は,ペ ル ー 領 ア ン デ ス で も い くつ か 採 録 さ れ て い る 。Moroteが ク ス コCuzco県 で 集 め た"天 界 へ の 旅"を 扱 っ た 十 三 の 民 話 の う ち で,三 つ は 明 らか に 栽 培 植 物 の 起 源 に 触 れ た もの で,民 話 の 内 容 は 上 記 二 例 と あ ま
り違 わ な い 。
民 話3 コ ン ドル が 夜 明 け を 待 っ て い る所 へ 食 物 を あ さ る キ ツ ネ が 来 て,挨 拶 を 交 し た あ と,コ ン ドル が 天 上 の 宴 会 へ 行 く と 知 る 。 キ ッ ネ の 願 い を 聞 い て,行 儀 よ く す る と と を 条 件 に,コ ン ドル は キ ツ ネ を 背 中 に 乗 せ て 連 れ て 行 く。 チ チ ャ 酒 を 飲 み, た ら ふ く食 べ た キ ツ ネ は,他 の 鳥 た ち と 喧 嘩 を し,そ れ を 恥 じ た コ ン ドル は,酔 っ て 寝 込 ん だ キ ッ ネ を 置 き去 り に す る 。 天 か ら降 り る 途 中 で イ ン コ を 鼻 曲 り,お い ぼ れ ニ ワ ト リと 侮 辱 す る 。 キ ツ ネ が ふ とん,わ らを 広 げ て くれ と 空 か ら叫 ぶ の を 聞 い た ネ ズ ミ が,棘,押 し ピ ン,割 れ た び ん の 破 片 を ま い た の で,墜 落 した キ ツ ネ は 破 一 一裂 し,一そ の 腹 か ら天 界 で 嫁 ま の ま ま 食 べ た ジ ャーガ イ モ1一 ト ゥ モ ロ コ シ,オ ユ コ4)∫『
大 麦 が 散 り,今 あ る 地 上 の 人 間 の 食 糧 と な っ た5)[MOROTE 1958:8]。
民 話4 山 の 上 で 会 った コ ン ドル が"以 前 に 行 った 所"へ 行 く と 知 った キ ッ ネ は, 連 れ て 行 く よ う頼 む 。"そ の 時 不 作 法 を し た か ら"と コ ン ドル は 拒 絶 した が,結 局 承 知 す る 。 唯 一 の 獣 の 出 現 は 他 の 招 待 客 を 驚 か し,キ ツ ネ は 宴 席 で む さ ぼ り食 い, 酔 っ て 寝 込 ん で しま う。 天 の 木 に 縛 った ロ ー プ を 伝 って 降 り る キ ッ ネ は,途 中 で 大 き い く ち ば し,役 立 た ず と イ ン コ を 侮 辱 す る 。 墜 落 して 腹 が 破 裂 し,空 腹 で な ま の ま ま 食 べ た トウ モ ロ コ シ,小 麦,ジ ャ ガ イ モ が 散 り,こ の 最 初 の 種 か ら作 物 が 全 世 界 に 広 ま った[MOROTE l 958:8‑9]。
民 話5 キ ツ ネ を 宴 会 に 連 れ て 行 く の は ハ ゲ タ カ で,キ ッ ネ は 行 儀 良 く す る と約 束 4)オ ユ コ011coは ア ンデ ス 高 地 の 根 茎 類 の 一 つ で, Ullucu tubercurosus Lozano[SouKuP 1970:
358]。
5)採 録 し た 民 俗 学 者 のMoroteは 後 出 の 民 話9の ケ チ ュ ア 語 テ キ ス トを 記 述 し た あ と,他 の ヴ ァ ー シ ョ ン の 重 複 部 分 を 省 略 して い る 場 合 が あ る の で,記 述 の 一 部 に 欠 け た と こ ろ が あ る 。
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国立民 族学博物館研究報告 5巻1号 した が,天 界 の も の を 許 し な く食 べ る 。 天 界 か ら降 り る 途 中 で イ ン コ を 腹 す か し と 呼 ん で 侮 辱 す る 。 ネ ズ ミが キ ッ ネ の 落 下 を 知 っ て 棘 の 毛 布 を 広 げ,そ の 上 に 落 ち た キ ッ ネ の 腹 が 破 裂 し,天 界 で 食 べ た トウ モ ロ コ シ,小 麦,ジ ャ ガ イ モ が 散 り,そ れ を 人 々 が 植 え た[MOROTE l 958:8]。'
Anibarroが 指 摘 す る よ う に,か り に こ れ ら の 民 話 の 起 源 が ス ペ イ ン に あ る に し て も,そ の 構 成 に は ア ンデ ス 的 特 徴 が あ り,か つ そ れ が 話 の 展 開 に き わ め て 重 要 で あ る こ と を,こ こで 指 摘 して お か ね ば な らな い 。 主 人 公 で あ る キ ッ ネ と コ ン ドル の 対 立 的 関 係 は,こ の 話 の 大 事 な ポ イ ン トで あ る が,そ の 原 因 は 前 者 の 不 作 法 に あ り,ま た そ の 不 作 法 は キ ッ ネ の 空 腹 あ る い は 負 欲 に 由 来 す る 。 こ の 場 合 に 限 らず,ア ン デ ス 民 話 の キ ッ ネ は し ば し ば 空 腹 あ る い は 貧 欲 な 主 人 公 と し て 登 場 し,し か も獲 物 で あ る 相 手 の 計 略 に か か っ て,所 期 の 目 的 を 果 せ な い 。 一 般 的 に い っ て,ア ンデ ス の 民 話 で は,
キ ッ ネ は 最 終 的 に は か ら か わ れ た り騙 さ れ る 存 在 で あ っ て,自 分 の 計 略 や 企 て は 失 敗 して し ま う。 ア ンデ ス の 農 民 に と って,キ ツ ネ は トウ モ ロ コ シ畑 を 荒 ら し,家 畜 を 襲 う害 獣 で あ り,キ ッ ネ に 出 会 う の は何 か に つ け て 悪 い し る しだ と さ れ る6)。
一 方 人 々 は コ ン ドル を 尊 敬 の 態 度 で 扱 い,空 に 飛 ん で い る の を 見 か け る と,そ の 方 向 に む け て コ カ 入 れ 袋 を 振 った り,コ カ の 葉 を 口 で 吹 い て,一 種 の 捧 げ 物 と す る 。 コ ン ドル は 山 の ス ピ リ ッ ト(ア ブapu,ア ウ キauquiな ど と 呼 ば れ,非 常 に 重 要 な 神 格 で あ る)の 使 い,あ る い は そ の 直 接 の 体 現 者 と考 え られ て い る 。 世 界 最 大 の 猛 き ん で あ る コ ン ドル は,食 物 習 性 の 点 で は 腐 肉 食 で,し た が っ て 生 き た 動 物 を 襲 う の は ま れ で あ る 。
民 話5で は キ ツ ネ を 天 界 に 連 れ て 行 くの が ハ ゲ タ カ に な って い る が,腐 肉 食 の 鳥 で あ る こ と で は コ ン ドル と性 質 を 同 じ く して い る 。Moroteの テ キ ス トで はbuitreと な っ て お り,こ れ は 腐 肉 食 の 鳥 一 般 を さ す 。 筆 者 が ア プ リマ クApurimac県 で コ ン ド ル ・ラ チ7)に 関 し て 得 た 資 料 で は,buitreはc6ndorと 殆 ど 区 別 す る こ と な く用 い ら れ て い る 。 い ず れ に し て も,キ ッ ネ と 対 立 関 係 に お か れ る 存 在 が 腐 肉 食 性 の 鳥 で あ る の は 明 ら か で,肉 食 に 関 し て は キ ツ ネ は 生 肉 食 で あ る。
こ の 腐 肉 食 の コ ン ドル は 良 い 食 事 マ ナ ー の 代 表 で,人 々 が 集 ま っ て 静 か に 行 儀 良 く 食 べ る有 様 を,コ ン ドル の よ う に 食 事 を す る と い い 表 す こ と が あ る 。 ま た コ タ バ ンバ スCotabambas村(ア プ リ マ ク県)で は,12月8日 の 祭 りで,主 催 者 の 提 供 す る 骨 つ 6)キ ッネ の否 定 的価 値 は人 々 の 日常 的態 度 や 民話 の 内容 に 限 られ る もので,呪 術 的 局面 で の価 値 等 は また 別 の 問題 で あ る。た とえ ば キ ッネ の尾 の先 を 所有 して い ると幸 運 に恵 まれ る と い う 考 え は広 く認 め られ る。
7)捕 獲 した コ ン ドル を 牛 の背 中 に結 びつ けて 行 な う闘 牛 の一 種[c£ 友 枝 1978b:62‑63]。
友枝 中央 アンデ スの民話とアマゾンの神話
き の 肉 料 理 を き れ い に 食 べ る こ と が 要 求 さ れ る が,そ の 行 為 は コ ン ドル の 口 で 食 べ る と 形 容 さ れ て い る[ANoNIMo 1971:200, c£ 友 枝 1978b:66]。
ク ス コ県 チ ュ ン ビ ビル カ スChumbivilcas地 方 で,カ ー ニ バ ル の 頃 行 な わ れ る 家 畜 の 増 殖 儀 礼 で も,コ ン ドル の 食 事 行 為 が 表 現 さ れ て い る 。 殺 した 犠 牲 動 物 の 肉 を 塩 な しで 料 理 し,コ ン ドル の 大 将 に な っ て い る 呪 術 師 が 目 と 舌 を 食 べ,残 り を コ ン ドル そ の 他 の 食 肉 鳥 に な っ て い る 参 加 者 が 食 べ る 。 そ の あ と主 催 者 の 義 理 の 息 子(DH)が, 骨 を 一 本 残 らず 集 め,二 本 ず つ 揃 え て 数 え,最 後 に 一 本 残 る と 良 い し る し だ と さ れ る 。 骨 は 儀 礼 を 行 な う場 所 の 近 く に 穴 を 掘 っ て 埋 め る[ROEL 1966:32]。 し た が っ て, 民 話1の キ ッ ネ が 骨 を か じ る 不 作 法 は,空 腹 あ る い は 食 欲 ゆ え の 過 剰 な 行 為 で あ り,
コ ン ドル に 対 す る 一 種 の冒?と な る 。
民 話1は 唯 一一の 例 外 だ が,そ の 他 の 話 の 中 で は コ ン ドル は キ ツ ネ を 背 中 に 乗 せ て い る 。 これ も コ ン ドル の 食 物 習 性 と 関 連 が あ り,生 き た 動 物 を め った に 襲 わ な い と い う コ ン ドル の 爪 は,あ ま り発 達 して お らず,獲 物 を 持 ち上 げ た りす る の に 適 し て い な い 。 ア プ リマ ク 県 の 農 民 は コ ン ドル の 足 は ニ ワ ト リの よ う だ と い って い る 。 コ ン ドル と キ ツ ネ に は 空(鳥)/地(獣),腐 肉/生 肉 の 対 比 が あ り,農 民 た ち は そ れ ぞ れ を 尊 敬/
軽 蔑 の 態 度 で 扱 い,行 儀 の 良 さ/悪 さ の 代 表 と して い る 。
キ ツ ネ の 墜 落 は 侮 辱 した 相 手 の イ ン コ に 仕 返 し と し て ロ ー プ を 切 られ る た め に 生 じ る 。 イ ン コ は 民 話 の 中 に あ ま り登 場 して い な い の で,そ の 性 格 が は っ き り しな い が,
トウ モ ロ コ シ畑 を 荒 らす 害 鳥 と して 人 に 嫌 わ れ て い る8)。 こ の 鳥 は 群 れ に な っ て 集 中 的 に 畑 を 襲 う こ とが あ り,ア ヤク チ ョ県 の 一 部 で は こ う しだ こ と が お き る と,農 民 た ち は 畑 の 所 有 者 に 不 幸 が あ る 前 兆 だ と い う(Pascual Castroア ヤ ク チ ョ大 学 人 類 学 専 攻 生 に よ る教 示1978)。 イ ン コ に 与 え ら れ た こ う し た 否 定 的 価 値 は む し ろ キ ツ ネ と の 共 通 点 で あ る 。Moroteに よ れ ば イ ン コ は 民 話 の 中 で は お し ゃべ り,噂 好 き と し て 登 場 す る よ う で[MOROTE 1958:30],キ ッ ネ も 好 奇 心 の 強 い 存 在 で あ っ て,こ の 民 話 的 性 質 の 面 で も一 致 して い る 。
ま た イ ン コ に 対 す る"汚 れ た 尻"と い う キ ッ ネ の 侮 辱 は,大 食 を い い 表 して い る と 解 さ れ(cf. P.284),大 き な く ち ば しに 対 す る 侮 辱 は キ ツ ネ の 大 口 に 通 じ る 。 コ ン ド ル と違 っ て,む し ろ イ ン コ と キ ツ ネ は 性 質 を 同 じ く し,天/地 で 両 者 の 対 比 が さ れ て い る の で あ ろ う 。 ペ ル ー 領 中 部 の ワ ロ チ リHuarochiri地 方 で 採 られ たi6世 紀 末 の 古 い 神 話 の 記 録 に も,コ ン ドル,キ ッ ネ,イ ン コ の 対 照 的 扱 い が 見 られ る の は 興 味 深
8)中 央 ア ンデ ス に は 少 く と も三 種 の イ ン コが 棲 息 す る よ う で,Bo1borhynchus a.aurifrons(Psilo‑
pisiagon a. aurifrons), Bolborhynchus andicolus(B.・orbygnesius), Aratinga zvagteri frontata[KOEPCKE 1970:74]。 高 地 で 普 通 に 見 か け る の は 二 番 目 の も の ら し く,小 形 で 尾 が 短 い 。
247
国立民族学博物館研究報 告 5巻1号 い9)。 栽 培 植 物 の 起 源 を 扱 った キ ツ ネ 民 話 は,ペ ル ー 南 部 の プ ノPuno県 に も あ り, こ の 話 で は キ ッ ネ の 大 食 が 別 の 形 で 強 調 さ れ,民 話1‑5に は な い 星 の 女 の エ ピ ソ ー ドが 加 わ って い る 。
民 話6 キ ッ ネ の 頼 み を 聞 き 入 れ,コ ン ドル が 天 界 の 祭 に 連 れ て 行 く 。 た らふ く食 べ た あ と も 帰 り た が らな い キ ツ ネ を 残 して,コ ン ドル は 行 って し ま う 。 キ ツ ネ は そ の あ と星 の 女 に 会 い,家 に 泊 め て も ら う 。 次 の 日女 が 一 粒 の カ ニ ャ ワ を 煮 る よ う い い つ け る と,大 食 の キ ッ ネ は 勝 手 に 十 粒 を 料 理 す る 。 煮 え た カ ニ ャ ワ は 量 が 増 え て ふ き こ ぼ れ,キ ツ ネ は 食 べ き れ ず,家 の 中 に あ ふ れ る。 そ れ を 見 た 星 の 女 は 大 喰 い trag6nと 非 難 す る 。 悲 観 し た キ ッ ネ はu・・一 プ を 編 ん で 腰 に巻 き,星 の 女 に 手 伝 っ て も ら い,下 界 へ 降 り る が,途 中 で イ ン コ を 見 か け,ジ ャ ガ イ モ の 舌,チ ュ ー ニ ョ の 舌,お 前 を 殺 す と 侮 辱 した の で,仕 返 し に ロ ー プ を 切 ら れ る 。 ふ と ん を 広 げ て く れ と キ ッ ネ は 助 け を 求 め る が,誰 も そ れ を 聞 か ず,岩 の 上 に 墜 落 し,腹 が 破 裂 して 沢 山 の カ ニ ャ ワ が 散 り,人 々 は そ れ を 植 え た[RAMIREz 1955:235r236]。
厳 密 に い え ば こ の 話 は 果 して プ ノ 県 で 採 ら れ た か ど う か は っ き り し な い し,民 俗 学 者 の 記 録 で も な い 。 し か し,民 話1の パ パ チ ウ チ と 同 じ に,キ ッ ネ の 助 力 者 で も あ る 星 の 女 の エ ピ ソ ー ドは,次 の ヴ ァ ー シ ョ ン を 導 く上 で 重 要 な 意 味 を 有 して い る 。 これ は 星 の 女 を 妻 に し た 男 の 話 で,"天 界 へ 昇 っ た 若 者"と 題 さ れ て い る 。Liraに よ って ケ チ ュ ア 語 で 採 録 さ れ,彼 とArguedasの 共 訳 に よ って,1949年 に ス ペ イ ン語 で 発 表 さ れ て い る 。 採 録 地 は ク ス コ県 の マ ラ ン ガ ニMarangani地 方 で あ る 。
民 話7 夫 婦 者 が 一 人 息 子 に 畑 の 不 寝 番 を い い つ け た が,若 者 は 明 け 方 に 眠 っ て し ま い,ジ ャ ガ イ モ を 盗 ま れ る 。 次 の 日 も ほ ん の ち ょ っ と眠 っ た す き に 盗 ま れ,三 日 目 の 番 を して い る と,多 勢 の 美 し い 女 が ジ ャ ガ イ モ を 掘 る の を 見 る 。 自 分 の 妻 に と 望 ん で 一 人 を 捕 え た が,他 の 女 は 天 へ 昇 って し ま う 。 両 親 に 秘 密 で 二 人 の 生 活 を 始 め,そ の あ と 女 の 反 対 を 押 し 切 っ て,若 者 は 両 親 の 家 へ 連 れ 帰 り,一 緒 に 生 活 す る が,そ れ で も家 の 外 へ 出 さ ず 他 の 人 に は 秘 密 に して お く。 二 人 の 間 に 生 れ た 子 供 が 死 ん だ あ と,男 の 留 守 中 に 女 は 天 界 へ 戻 っ て し ま う 。 妻 を 探 し ま わ る 若 者 か ら事 情 を 聞 い た コ ン ドル は 同 情 して,二 匹 の リ ャ マ を 提 供 す る こ と を 条 件 に,若 者 を 天 界 9)ク ニ ラヤCun五rayaの 神 は 自分 が生 ませ た娘 を連 れ て逃 げ る女 神 のカ ビヤ カCavillacaを 追 い,途 中で 出会 う動 物 に女 の居 場所 を 訊 ね,近 くにい る と答 え た コ ン ドル に は長 命 と死 ん だ獣 肉 を食 う ことを 認 め,プ ー マ には敬 愛 され悪 人 の飼 う リャマ を 食 う権 利 と大 祭 で 踊 り手 の 頭 に 飾 られ る名誉 を与 え,タ カを 幸 運 の鳥 と し,他 の鳥 を食 う権 利 と頭 飾 りの 名誉 を 与 え る。 一方 遠 くて 追 いつ け な い と答 えた スカ ンク に は 日中 の 出歩 きを 禁 じ,臭 気 を 放 って嫌 わ れ る と し, キ ッ ネ には憎 しみ を抱 く人 間 に追 わ れ,殺 され皮 をふ みつ け に され ると し,イ ンコ には騒 が し い 叫 び声 で人 に気 付 か れ お どか され畑 か ら追 わ れ る鳥 とす る[AVILA l966;25‑27]。
友枝 中央 アンデ スの民話 とアマゾンの神話
へ 連 れ て行 く。一 匹の リャ マを食 べ て しま って か ら,コ ン ドル は若 者 を 乗 せ て 飛 び 立 ち,途 中 で 肉 を要 求 す るた び に,若 者 は も う一 匹 の リャマ の 肉 を切 って 与 え,そ れ が な くな る と,落 と され るの を 恐 れ て,自 分 の 尻 の 肉 を切 り与 え る10)。一 年 が か りで 旅 を して天 界 の海 へ 着 き,そ こで水 浴 して コ ン ドル も男 も若返 る。 コ ン ドル は 女 に会 う方 法 を教 え,男 は祭 で 教会 へ 集 ま った女 た ちの う ち,一 番 後 に い るの を捕 え る (星 の 女 は見 た 目に どれ も同 じで 見 分 けが つ か な い)。 女 は若 者 を 家 に案 内 し, 腹 を す か し寒 が って い る男 に,キ ヌ アを少 量渡 して,料 理 を い い つ け る。 空 腹 の男 が勝 手 に量 を 増 や して煮 る と,出 来 上 った キ ヌア は量 が増 え て 家 の 中 に あ ふ れ て し ま う。 それ を 見 た 女 は 男 の勝 手 な行 為 を 叱 責 し,両 親 に も会 わ せ ず,一 年 後 に は若 者 か ら遠 ざか り,姿 を 見せ な くな る。 悲 しん で い る 男 に会 った コ ン ドル は,二 匹 の リャマ の提 供 を 条 件 に,男 を地 上 に連 れ 帰 る こ とを承 知す る。 途 中 の 海 で再 び 若返 り,天 界 か ら無 事 に 両 親 の も とへ 帰 った 男 は,す で に年 老 い た二 人 と一緒 に,悲 し み の ま ま に再 婚 す る こ と もな く生 涯 を過 した 〔ARGuEDAs 1949:105‑114, LIRA l965:127‑‑14011), repr・LARA 1973:311‑320]。
天 界 と地 上 界 の 上 下 移 動 を 軸 に展 開 す る民 話6と7は,そ の構 成 が 全 く同 じで あ る。
両 者 間 に生 じる変 化 は,民 話 の構 成 要 素 間 の関 係 の あ り方 あ る い は機 能 に 関 した もの で あ る 。 まず 民 話6は 天/地 に お い て地 上 界 を 栽 培 植物(カ ニ ャワ)前 と して い る の に 対 し,民 話7は 栽 培 植 物 後 を扱 って い る(夫 婦 は特別 立 派 な ジ ャガイ モ 畑 を 所有 し て い た とあ る)。 栽 培 植 物 起源 で は,コ ン ドル はキ ツ ネ と対 立 的関 係 丑ζお か れ るが, 若 者 に一は友 好 的 で あ り助力 者 で あ る。
結 果 的 に主 人 公 の キ ツ ネ は墜 落死 す る が,若 者 は無 事 地 上 に生 還 す る。 つ ま り,民 話7は 栽 培 植 物 起 源 の キ ツネ 民話 の構 成 を踏 襲 しな が ら,あ た か も時 代 を 起 源 後 に移 行 させ て しま った よ うで,栽 培 植 物起 源 の テ ー マ に変 え て,若 返 り(永 生 き)を 扱 っ て い る。 た だ し,現 実 に存 在 す る 栽 培植 物 を起 源 論 的 に説 明 す るの と違 って,現 実 に 存 在 しな い若 返 りは エ ピソ ー ド的 に 扱 わ れ て い る。 コ ン ドル が永 生 きで あ る とか 若 返 りの 秘 密 を 知 って い る とい う考 え 方 は,ア ンデ ス の農 民 の 間 に広 く認 め られ る12)。
10)つ ま り若 者 の尻 の 肉 は コ ン ドル の食 う死 肉 の一 部 で あ る。 《腐 肉化 す る主 入 公》 は ア マ ゾ ン の火 の 起源 神 話 の 中 に もあ り,こ の一 致 は興 味 深 い 。
11)Liraの 採 録 したケ チ ュア語 民 話 の い くつ か が, Arguedasと の 共 訳 で1949に 発 表 され,後 に ケ チ ュア語 の テ キス トと一 緒 に学 術研 究 誌 のFolklore Americanoに 発 表 され た。
12)コ ン ドル は老 い る こと もな い し自然 に死 ぬ こ と もな い。 自分 の老 いを 知 り,く ちば しが 摩 粍 し,脚 にふ るえを お ぽ え,羽 毛 の輝 きを 失 い,目 が お と ろ え る と,サ ル カ ンタ イ山 の近 くの ワ イ ナ コチ ャ湖 に行 って,水 浴 を して若 返 る。 コ ン ドル が 自分 の 命 を絶 つ とき は,高 い所 か ら落 下 して 自殺 す る[PAcHEco 1967:185‑186]。
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国立民族 学博物 館研究報告 5巻1号 上述 の 同一 構 成 の二 つ の民 話 間 に生 じた メ ッセ ー ジの 変形(栽 培 植 物起 源 →若 返 り)
と全 く同 じ現 象 が,熱 帯低 地 ア マ ゾ ンの神 話 に も指 摘 で きる こ とは,注 目を 要 す る。
中 央 ア ンデ ス に接 す る ペル ー領 東 部 熱 帯 低 地(い わ ゆ る モ ン タ ーニ ャmontafia地 帯) の,マ チゲ ンガMachiguenga族 と ピー ロPiro族 の神 話 間 に生 じて い るの が そ れで, 両 部族 は と もに ア ラ ワ ク語 系 で,隣 接 し合 った 地 域 に 居住 して い る。
マ チ ゲ ンガ族 の栽 培 植物 の起 源 神 話 の要 約 は ほぼ 次 の 通 りで あ る:昔 人 間 が 土 だ け を 食 べ て い た時 代,天 界 か ら人間 の姿 で降 りて 来 た月 が,あ る娘 と結 婚 し,人 間 界 に マ ニ オ ック や他 の栽 培 植物 と料理 の仕 方 を 教 え る。 その 後 出 産 が原 因で 女 が死 に(以 前 に 生 れ た子 供 た ちが 太 陽 や星 にな る),娘 を死 なせ た と怒 る 義 母 は月 に 女 の死 体 を 食 べ るよ うに 強 い,月 はや む な く実行 す る。 天 界 へ 戻 った 月 は そ れ以 来 食 人 者 と な っ て,人 間 が死 ぬ と,そ の魂 を 捕 え,料 理 して食 べ る[PEREIRA I942:240‑244]。
一 方 永 遠 の生 命 を扱 う ピー ロ族 の神 話 の要 約 は次 の 通 りで あ る:突 然 死 んで しま っ た ピー ロ の若 者 が,月 と と もに 天界 か らや って 来 て,生 前 の婚 約 者 との結 婚 の祭 が催 され る 。月 は そ の席 で天 界 か ら持 参 した若 返 りの マサ トmasato酒(マ ニ オ ック の発 酵 酒)を 提 供 す る が,見 か けが 異 様 だ った ので 人 々 に拒 絶 され る 。 夜 明 け に月 と若 者 は天 界 に戻 って しま い,一 年 後 に若 者 が妻 と母 親(テ キ ス トか ら月 の酒 を飲 んだ と判 断 で きる)を 天 界 に連 れ 去 り,そ こか らは誰 も戻 って 来 な い[ALvAREz l960:76‑
79]。
ピー ロ族 は何 故 人 間 は若 返 りを手 に 入 れ そ こな った か とい う観 点で テ ー マ を扱 うが, それ は栽 培植 物以 後 の 出来 事 で あ る(神 話 に 畑 や人 間 の作 る マ サ ト酒 がで て くる)。
また 民話7の 主 人 公 と 同 じ に,月 の マサ トを飲 んだ 娘 と母 親 は永 遠 の生 命 を得 て,別 の 世 界 に住 ん で い る か ら,獲 得 した 若 返 りが や は りエ ピソー ド的 に も扱 わ れて い る こ
と にな る。
マチ ゲ ンガ族 の栽 培 植 物 起 源 の テ ー マは,ピ ー ロ神 話 の 若 返 りの テ ー マ に移 行 す る が,両 神 話 の 基 本構 成 は 同 じで あ る。 ま た,天/地 の上 下 軸 を移 動 す る コス モ ロ ジカ ル な神 話 構 成 は,民 話6‑7に も共 通 す る。 す な わ ち,ア ンデ ス 高地 農 民 の栽 培 植 物 起 源 の 民 話 と,熱 帯 低地 モ ンタ ー ニ ャの マチ ゲ ンガ族 の 栽 培 植 物 起 源 の 神話 は,話 の 基 本 形 式 が 同 じで あ る。 そ れ だ け に と ど ま らず,そ の変 形 と して 若 返 りの テ ー マを 有 す る話 を,そ れ ぞ れ が導 い て い る点 まで,一 つ の セ ッ トにな って一 致 して い る13)。
目下 の と こ ろ,数 多 い キ ッ ネ民 話 の 中 で,栽 培 植 物 の 起 源 を 扱 った の は,上 記 の 六
13)Pereira, Alvarez採 録 に よ る神 話 の 詳 し い 内 容,お よ び そ れ を 含 む モ ン タ ー ニ ャ諸 族 の 神 話 の 分 析 結 果 に つ い て は 友 枝[1976:159‑184]参 照 。
友枝 中央 アンデスの民話 とアマゾ ンの神話
例 に 限 ら れ る 。 以 下 に あ げ る の は,テ ー マ が 無 数 の キ ツ ネ の 発 生 に 変 形 して い る ヴ ァ ー シ ョ ン で,そ の 一 つ は 言 語 学 者 のFar飴nに よ り ク ス コ 地 方 で ケ チ ュ ア 語 で 採 録 さ れ,厳 密 に ス ペ イ ン語 と 英 語 に 訳 さ れ て い る 。
民 話8 キ ッ ネ が コ ン ドル に 会 い,天 界 の 祭 に 連 れ て 行 く よ う頼 み,コ ン ドル は 背 中 に 乗 せ て 運 ぶ 。 小 人 た ち14》 が 祭 を 催 して い て,主 催 者 は 肉 入 りの ス ー プ を ひ っ き り な し に 提 供 す る 。 祭 が 済 ん で コ ン ドル が 帰 りを 誘 っ て も,も っ と食 べ た い キ ッ ネ は 拒 絶 し,主 催 者 も い な く な っ て 一 入 取 り残 さ れ る 。 そ の あ と キ ツ ネ は 星 の 女 に 会 い 宿 泊 を 許 さ れ る 。 あ る 日 星 の 女 に一 粒 の カ ニ ャ ワ を 料 理 す る よ う い い つ か った キ ッ ネ は,量 が 少 な い と思 っ た の で,勝 手 に十 粒 を 取 り 出 して 料 理 す る 。 煮 え た カ ニ ャ ワ は あ ふ れ だ し,キ ッ ネ が い く ら食 べ て も 減 らず,そ れ を 見 た 星 の 女 は,自 分 た ち の カ ニ ャ ワ を 食 い つ ぶ す 大 食 と い っ て,キ ッ ネ を 非 難 す る 。 悲 観 した キ ッ ネ は ロ ー プ を 編 み,女 に 手 伝 っ て も ら い,そ れ を 伝 っ て 降 り る が,途 中 で 見 か け た イ ン コ を い わ れ な し に,ジ ャ ガ イ モ の 舌,チ ュ ー ニ ョの 舌,お 前 を 殺 す と 侮 辱 し,イ ン コ に ロ ー プ を 切 られ る 。 墜 落 す る キ ッ ネ は 助 け を 求 め た が,誰 も 聞 か ず,地 面 に 衝 突 し て 破 裂 し,そ の 腹 か ら何 千 何 百 と い う キ ツ ネ が 生 れ た[FARFAN 1943:119‑
122]。
Farfan採 録 の 話 は 星 の 女 の エ ピ ソ ー ドを 含 み,プ ノ 県 の 民 話6と 全 く 同 じで,結 末 の 起 源 物 が 植 物 の カ ニ ャ ワ か ら無 数 の キ ツ ネ に 変 わ っ て い る 。 大 食 の キ ツ ネ が 食 べ た 神 秘 的 カ ニ ャ ワ が 地 上 に 散 っ て,現 実 の カ ニ ャ ワ に な る か,現 実 の 害 獣 の 起 源 と な る 一 一か で
,一粒 の 小 さ い 穀 物 の 力 三 ヤ ワ や キ ヌ ア は,し ば しば 無 数 性 の シ ン ボ ル と し て,増 i殖儀 礼 で も用 い られ て い る[友 枝 1978a:36‑37]。 無 数 の キ ツ ネ の 発 生 はMorote
も 同 じ ク ス コ 地 方 で 採 録 し て い る 。
民 話9 コ ン ドル が キ ッ ネ を 背 中 に 乗 せ て 一 緒 に 天 界 の ミサ を 聞 き に 行 く。 キ ッ ネ が 悪 さ を し た の で,コ ン ドル に 置 き 去 り に さ れ る 。 キ ッ ネ は ロ ー プ を 自 分 で 編 み, そ れ を 伝 っ て 降 り る 途 中 で,通 り か か っ た イ ン コ を 鼻 曲 り と 侮 辱 し,ロ ー プ を 切 る な と 警 告 し て 噛 み 切 られ て し ま う 。 墜 落 す る キ ッ ネ は 毛 布 を 広 げ て くれ と 助 け を 求 め た が,ネ ズ ミが 尖 っ た 石 こ ろ を 置 い た の で,衝 突 し て くだ け,七 つ の 谷 に 散 った 破 片 か ら沢 山 の キ ツ ネ が 増 え た[MOROTE 1958:6‑7]。
Moroteは こ の 話 を ケ チ ュ ア 語 で 記 録 し,十 一 の モ チ ー フ に 分 け た 上 で,他 の ヴ ァ ー シ ョ ン と の 比 較 を 行 っ て い る 。 民 話8の 場 合 は 天 界 の カ ニ ャ ワ の 粒 が 無 数 の キ ツ ネ 14)ケ チ ュア語 テ キ ス トでrunachakunaと あ り, runa =人 間, cha一 縮 小辞, kuna・=複 数 で Farfanの 訳 はenanitos(小 人 た ち)。
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国立民族学博物館研究報 告 5巻1号 を 生 ん で い る よ う だ が,天 界 で 食 事 を し て い な い この 話 で は,キ ッ ネ の 破 片 が キ ツ ネ に な って い る 。 キ ッ ネ の 天 界 へ の 旅 は ミサ を 聞 き に 行 くた め で,食 物 の 動 機 は な い が, そ の 不 作 法 な 振 舞iいは 依 然 と して 同 じ で あ る 。
民 話10 コ ン ドル が キ ッ ネ を 天 界 に 連 れ て 行 く。 コ ン ドル は 天 界 で は"紳 士caba‑
11ero"に な っ て,白 い え り巻 き を し黒 服 を 着 て い る 。 キ ツ ネ は た ら ふ く食 べ,料 理 場 へ 入 っ て 肉 を 盗 み,テ ー ブ ル の 下 に も ぐ っ て 骨 を 探 し,天 界 の 犬 と 争 い,テ ー ブ ル を ひ っ く り 返 し,コ ン ドル の え り巻 き を ワ イ ンで 汚 して しま う 。 酔 っ て 地 上 へ 帰 る の を 拒 絶 し,コ ン ドル を 嚇 か す 。 置 き 去 り に され て か ら,三 カ 月 か け て ロ ー プ を 編 み,地 上 へ と ど くか ど う か を 先 端 に 取 り つ け た 空 缶 の 音 で 確 か め て,ロ ー プ を 伝 って 降 り,途 中 で イ ン コ を 侮 辱 し て,最 後 に ロ ー プ を 切 られ る 。 は じ め は 早 く降 り て い る と 感 違 い す る が,途 中 で 気 付 い て 毛 布,わ ら,ふ と ん を 広 げ て く れ と助 け を 求 め,そ れ を 聞 い た ネ ズ ミが 固 い 棘 を 置 い た の で,そ の 上 に 衝 突 し,破 片 が 大 き い の や 小 さ い の や,雄 や 雌 や の 沢 山 の キ ツ ネ に な っ た[MOROTE l958:9]。
民 話11天 界 で 宴 会 が あ り,キ ツ ネ は 不 作 法 に 振 舞 い,宴 会 の テ ー ブ ル を ひ っ く り 返 し,小 さ い コ ン ドル と 肉 片 を 争 う 。 見 捨 て られ て か ら,誰 か の 助 け を か り て ロ ー プ を 編 み,そ の ロ 一一プ が イ ン コ に 切 られ た[MOROTE l958:8]。
Moroteが 記 述 を 省 略 し て い る の で,こ の 話 の 細 部 は 不 明 だ が,モ チ ー フ の 比 較 を し た 表[MOROTE l 958:18]か ら判 断 して,少 く と も無 数 の キ ツ ネ の 発 生 だ と い う こ と は わ か る 。 民 話1‑6の 栽 培 植 物 起 源 を 扱 う グ ル ー プ と 民 話8‑11の グ ル ー プ を 比 較 して み る と,起 源 物 以 外 に は,そ の 構 成,内 容 に 明 ら か な 違 い と い った もの は 認 め られ な い 。 民 話8は 天 界 の カ ニ ャ ワ が キ ッ ネ に 変 じ て い る か ら,栽 培 植 物 起 源 と キ ツ ネ 起 源 の 中 間 に 位 置 して い る とい え る 。
民 話10は コ ン ドル を 紳 士 と 表 現 し て お り,不 作 法 な キ ツ ネ に 対 置 さ れ る コ ン ドル の 行 儀 の 良 さ が,民 話 の 表 現 内 容 か ら直 接 に 確 認 で き る で あ ろ う。 キ ッ ネ の 発 生 に 関 し て,民 話8は カ ニ ャ ワか ら生 れ た 無 数 の キ ツ ネ,民 話9は 七 つ の 谷 に 分 け られ た 無 数 の キ ッ ネ,民 話10は 大 小,雌 雄 に 分 け られ た 無 数 の キ ッ ネ で,同 じ く無 数 の キ ッ ネ で あ って も,分 類 の 仕 方 が 異 な って い る 。Moroteが 集 め た ク ス コ の ヴ ァ ー シ ョ ン の う ち,結 末 に つ い て 数 の 上 で 一 番 多 い の は,単 に キ ツ ネ の 死 に 終 る も の で,他 地 域 の 話 を 含 め る と こ の 数 は も っ と 多 く な る 。 資 料 の 上 か ら は,何 らか の 起 源 を 扱 う ヴ ァー シ ョ ン は 中 央 ア ンデ ス 南 部 に 限 ら れ る 。
民 話12 キ ッ ネ が コ ン ドル に 招 待 さ れ て 天 界 へ 行 き,コ ン ドル は 立 派 な 紳 士 に 姿 を 変 え る 。 動 物 の キ ツ ネ は テ ー ブ ル に つ け ず,調 理 場 を 駈 け ま わ り,骨 か じ りを し,
友枝 中央 アンデスの民話とアマゾンの神話
棒 で 叩 か れ て 逃 げ て い る 間 に,コ ン ドル に 取 り残 さ れ る 。 キ ツ ネ は イ ン コ に 出 口 を 訊 ね,イ ン コ は ロ ー プ を 編 む こ と を 教 え,下 界 へ 降 り る キ ツ ネ の ロ ー プ を 支 え て 助 け る 。 途 中 イ ン コ に 会 っ た キ ツ ネ は 鼻 曲 り と 侮 辱 し,ロ ー プ を 切 られ て 墜 落 す る 。 助 け を 求 め ら れ た 精 霊 は キ ッ ネ の い う通 り羽 根 を 広 げ た が,キ ッ ネ は 別 の 方 角 に 落 ち た[MoRoTE 1958:10ユ 。
行 儀 の 良 い 紳 士 の コ ン ドル に 対 す る 動 物 の キ ッ ネ の 食 物 を め ぐ る 不 作 法 が 顕 著 で あ る が,結 末 は キ ッ ネ の 死 だ け で あ る 。 民 話1‑6か ら 判 断 し て,こ の キ ツ ネ は 栽 培 植 物 を もた らす 条 件 を 充 分 に 備 え て い る 。 精 霊 の 助 け は こ れ ま で に な い 新 しい 要 素 だ が,
カ ト リ ッ ク 要 素 は以 下 の い くつ か に も 見 られ る し,す で に 民 話9の キ ッ ネ の 動 機 は 天 界 の ミサ を 聞 き に 行 く こ と で あ っ た 。
民 話13 コ ン ドル は 天 界 で 悪 さ を せ ぬ よ う 忠 告 し て お い た が,酔 っ た キ ツ ネ は 約 束 を 守 らず,怒 っ た コ ン ドル は 眠 っ て い る キ ツ ネ を 置 き 去 り に す る 。 イ ン コ に 会 っ て 侮 辱 す る 。 墜 落 し な が らわ らを 広 げ て くれ と叫 ぶ が,地 面 に 衝 突 し て 破 裂 し た [MOROTE 1958:10]。
民 話14 ハ トの 結 婚 式 が 天 界 で あ り,他 の 鳥 た ち が 祭 を し,そ れ を 知 っ た 蛙 が ひ そ か に 自 分 の 体 を コ ン ドル の 脚 に 縛 り つ け,天 界 へ 行 く。 ワ イ ン を 沢 山 飲 ん で 酔 っ て 寝 て し ま い,取 り残 さ れ た 蛙 は チ フ ワchijwaの 繊 維 でu一 プ を 編 み,一 端 を 木 に 結 ん で 伝 っ て 降 り て 来 る が,途 中 で イ ン コ を トウ モ ロ コ シ 泥 棒 と の の し り,ロ ー プ を 切 られ て 墜 落 し た[MoRoTE 1958:10]。
チ フ ワ と い う 植 物 が 何 で あ る か は っ き り し な い が,テ ィ テ ィ カ カ 湖 周 辺 の ア イ マ ラ 語 農 民 が チ ジ ワchilliwaと 呼 ん で い る 植 物 と 同 じ か も 知 れ な い 。 こ れ は 高 原 に 生 育 す る禾 本 科 の 茎 の 細 い 草 で,丈 が30セ ン チ 位 あ り,ト ト ラ舟 を 作 る と き な ど の 丈 夫 な ロ ー プ を 編 む の に 利 用 して い る(山 本 紀 夫 国 立 民 族 学 博 物 館 助 手 に よ る 教 示1979)。
民 話14の 主 人 公 は キ ツ ネ で は な く,カ エ ル で,目 下 の と こ ろ 中 央 ア ンデ ス の キ ツ ネ 民 話 の 唯 一 の 例 外 で あ る 。 話 の 構 成 に は 殆 ど 変 化 が な い と い え る が,先 に 指 摘 し た コ ン ドル と キ ツ ネ の 対 立 性 に つ い て は,民 話14に は そ の 要 素 が な い 。 カ エ ル は コ ン ドル に そ れ と 知 られ ず に 天 界 へ 自 分 を 運 ば せ て い る 。
民 話15 キ ッ ネ と コ ン ドル が い て,キ ッ ネ が ワ シ6guilaに 召 使 い と して で も い い か ら天 界 へ 連 れ て 行 く よ う頼 み,コ ン ドル の 脚 に つ か ま って 行 く。 他 の 鳥 た ち は キ ツ ネ が ひ な を 喰 わ な い よ う に,キ ッ ネ の ロ を 縫 い つ け る よ う に い う が,キ ツ ネ は 忠 告 を 忘 れ て ワ シ の ひ な を 喰 っ て し ま う 。 ワ シ は キ ッ ネ を 喰 う こ と に す る[MOROTE 1958:8]。
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国立民族学博物館研 究報告 5巻1号 採 録 者 が 指 摘 す る よ う に,こ の 話 の 中 で は コ ン ドル と ワ シ が 混 同 して 使 わ れ て い る 。 先 に コ ン ドル が ハ ゲ タ カ に 変 わ っ て い る 話(民 話5)を あ げ た が,そ れ と違 っ て,民 話15で は 栽 培 植 物 起 源 へ の 言 及 は お ろ か,話 の 構 成 自 体 が くず れ て お り,Moroteが 十 一 に 分 け た モ チ ー フ の う ち 四 つ し か 含 ん で い な い 。 コ ン ドル と ワ シ の 食 物 習 性 の 違 い を 無 視 した 混 同 は,民 話 の 構 成 自 体 を 弱 化 して い る 。 カ エ ル が 主 人 公 に な っ た 場 合 と あ わ せ て 考 慮 さ れ る べ き 点 で あ ろ う 。
民 話16 コ ン ドル が ハ ゲ タ カ と の 争 い に 勝 ち,コ ン ドル の 友 人 が 天 界 で 祝 宴 を 開 く。
コ ン ドル に 連 れ て 行 って も ら っ た キ ッ ネ は,行 儀 良 くす る と 約 束 し た に も か か わ ら ず,不 作 法 に 振 舞 い,そ れ を 恥 じ た コ ン ドル は キ ッ ネ を 置 き 去 り に す る 。 ロ ー プ を 切 断 す る の は イ ン コ で,コ ン ドル が キ ッ ネ の 死 体 を 川 に 投 げ 捨 て,そ れ が 割 れ た ガ ラ ス び ん の 上 に 落 ち た の で,死 体 が 切 れ ぎ れ に な っ た[MOROTE 1958:8]。
民 話12以 後 こ こ で 扱 っ て い る キ ツ ネ 民 話 の 結 末 は,主 人 公 の 単 な る 墜 落 死 で,民 話 16も そ の 一 つ で あ る 。 た だ 単 な る 墜 落 死 と若 干 違 って い る の は,死 体 の 再 処 理(コ ン
ドル が 死 体 を 川 に 投 げ 捨 て る)の 結 果 と し て,キ ツ ネ の 死 体 が 破 片 化 し て い る 。 死 体 の 破 片 化 の 特 別 な 強 調 は,地 上 界 で わ ざ と 仕 掛 け た 固 い 物 や 尖 った 物 の 上 に 落 下 す る と い う点 に も見 られ る(民 話2‑3,5,9‑10)。 ま た 全 体 的 に い って,表 現 内 容 と し て 主 人 公 の 衝 突 と 破 裂 が 強 調 さ れ る 傾 向 に あ り,た と え ば 柔 らか い 物 の 上 に 落 ち る の を 期 待 す る が 実 現 しな い 。 あ る い は 破 裂reventar,こ な ご な に な るdespedazarと い っ た 表 現 が 用 い られ て い る 。 栽 培 植 物 が そ う し た 過 程 と して 発 生 す る と い う こ と は, 注 目 し て お か ね ば な らな い 。 民 話16の 死 体 再 処 理 と破 片 化 は 単 純 死 を 扱 う話 と無 数 の キ ッ ネ の 発 生 を 扱 う話(民 話8‑11)の 中 間 に 位 置 して い る 。
民 話17 コ ン ドル が キ ツ ネ を 天 上 の 祭 に 招 待 し,キ ツ ネ は 角 笛 と太 鼓 を 持 っ て,コ ン ドル の 背 に ま た が って 行 く。 コ ン ドル は 宴 席 に 着 くが,キ ツ ネ の た め の 席 は な く, テ ー ブ ル の 下 に 這 い 込 ん で 不 作 法 を 働 き,怒 った コ ン ドル に 置 き去 り に さ れ ジ 編 ん だ ロ ー プ を 伝 って 降 り る 途 中 で イ ン コ を 侮 辱 し,地 面 に 落 下 し破 裂 し た[MOROTE l958:8‑9]。
こ の 話 に あ る 楽 士 と して の キ ッ ネ の 参 加 は,他 の 地 域 の 民 話 に も あ り,次 の は リマ Lima県 ヤ ウ ヨYauyo地 方 の も の で あ る 。
民 話18数 羽 の コ ン ドル が 種 々 の 楽 器 の 演 奏 者 と し て 祭 に 行 く と知 った キ ツ ネ は, 一 番 後 ろ の コ ン ドル に,リ ャ マ 肉 の 提 供 を 申 し 出 て 連 れ て 行 っ て も ら う。 宴 会,踊 り の 祭 が 一 週 間 続 き,帰 りた が らな い キ ツ ネ を 無 理 や り 乗 せ て,コ ン ドル は 地 上 へ 帰 る 。 酔 っ た キ ツ ネ は コ ン ドル が 旋 回 し た と き に 振 り落 さ れ,大 声 で 助 け を 求 め て