微分積分学および演習Ⅰ 演習問題 3
2018年度前期工学部・未来科学部1年 担当: 原 隆(未来科学部数学系列・助教)
自習課題
Seatwork assignment
※ 必ず1度自分なりに解いてみてから解答をチェックすること!!
(解答は講義用ウェブページからダウンロード出来ます) Try to give your solutionsbefore checking the answer.
You can download the answer from the webpage of this class.
問題3-1. (逆三角関数の微分法)
以下の関数を微分しなさい。逆三角関数の定義されている 値域 (範囲)に注意すること。
(1) f(x) = arctanx (1
4π≤arctanx <5 4π
)
(2) f(x) = arccosx (−π≤arccosx≤0) (3) f(x) = arcsinx
(
−5
2π≤arcsinx≤ −3 2π
)
(4) f(x) = arccos(x+ 2) (π≤arccos(x+ 2)≤2π) (5) f(x) = (Arctanx)3 (6) f(x) = arcsin(2x)
(3
2π≤arcsin(2x)≤ 5 2π
)
(7) f(x) = 1
Arccosx (8) f(x) = arctan(ex) (π ≤arctan(ex)<2π)
(4) 以降で出題されているような 逆三角関数の微分と積・商・合成関数の微分法のハイブリッド問題 は苦手とする人が非常に多いです。でも、逆三角関数だって所詮はただの“関数”なんだから、他の関数 (三角関数、指数関数、対数関数などなど) と同じように扱えば良いはず。「逆三角関数」というあまり馴 染みのない関数が登場して 変に身構え過ぎるから、いつもの「微分計算のルーティーン」と違うことを やらかしてドツボに嵌ってしまうのです。
というわけで、結局のところ皆さんが 如何に逆三角関数と慣れ親しんでいるか が逆三角関数のからむ 微分の問題をスマートに解けるかどうかの分かれ目となります。ここで出題された問題に限らず色々な 問題を解いて、早く逆三角関数と“お友達” になれるように頑張ろう!!
問題3-2. (展開係数と微分係数)
3次の多項式関数f(x) = (2x+ 1)3−5(x3+ 1)−14(x+ 1)2+ 4(5x+ 4)−x を考えよう。
(1) f(x) を f(x) =a0+a1x+a2x2+a3x3 という形で表したときの xn の係数an (n= 0,1,2,3)を求 めなさい。
(2) f(x) をf(x) =b0+b1(x−1) +b2(x−1)2+b3(x−1)3 という形で表したときの (x−1)n の係数 bn
(n= 0,1,2,3)を求めなさい。
【解答】
問題3-1.
(1) f(x) = arctanx (1
4π ≤arctanx < 5 4π
) y=f(x) = arctanx とおくとx= tany
(1
4π ≤y < 5 4π
)
と書き直せる。
逆関数の微分法より
f′(x) = dy dx = 1
dx dy
= 1
(tany)′ = 1
tan2y+ 1 = 1 x2+ 1. したがって
f′(x) = 1 1 +x2 .
注: 講義でも注意したように、逆正接関数f(x) = arctan(x) に関しては考えている範囲によら ずに f′(x) = 1
1 +x2 が成り立ちます!
(2) f(x) = arccosx (−π≤arccosx≤0)
y=f(x) = arccosx とおくとx= cosy (−π≤y≤0)と書き直せる。
O siny≤0
y 逆関数の微分法より
f′(x) = dy dx = 1
dx dy
= 1
(cosy)′ =− 1 siny.
ここでsin2y= 1−cos2y で、しかも−π ≤y ≤0の範囲で siny≤0 だから(図を参照)、siny=−√
1−cos2y=−√
1−x2. したがって f′(x) =− 1
siny = 1
√1−x2 .
(3) f(x) = arcsinx (
−5
2π ≤arcsinx≤ −3 2π
)
y=f(x) = arcsinx とおくとx= siny (
−5
2π≤y ≤ −3 2π
)
と書き直せる。
O cosy≥0 y
逆関数の微分法より
f′(x) = dy dx = 1
dx dy
= 1
(siny)′ = 1 cosy.
ここで cos2y = 1−sin2y で、しかも −5
2π ≤ y ≤ −3
2π の範囲で cosy ≥ 0 だから (図を参照)、cosy =√
1−sin2y =√
1−x2. した がって
f′(x) = 1
cosy = 1
√1−x2 .
(4) f(x) = arccos(x+ 2) (π≤arccos(x+ 2)≤2π)
t=x+ 2,y= arccos(x+ 2) = arccos(t) とおくと t= cosy (π ≤y≤2π)と書き直せる。合成関数 の微分法により
f′(x) = dy dx = dy
dt · dt dx = dy
dt · d
dx(x+ 2) = dy dt が成り立つ。
O
siny≤0 y
逆関数の微分法より dy
dt = 1 dt dy
= 1
(cosy)′ =− 1 siny.
ここで、sin2y= 1−cos2y で、しかもπ ≤y≤2π の範囲でsiny≤0 だから(図を参照)、siny=−√
1−cos2y=−√
1−t2. したがって f′(x) =− 1
siny =+ 1
√1−t2 = 1
√1−(x+ 2)2 .
※t=x+ 2を 代入し戻してやる のを忘れないこと。
【別解】 y=f(x) = cos−1(x+ 2)とおくとx+ 2 = cosy なので、x= cosy−2 (π≤y≤2π)と書き直 せる。したがって逆関数の微分法より
f′(x) = dy dx = 1
dx dy
=− 1 siny
であるが、上記と同様にしてsiny=−√
1−cos2y=−√
1−(x+ 2)2 なので
f′(x) =− 1
siny = + 1
√1−(x+ 2)2
となる。
(5) f(x) = (Arctanx)3 合成関数の微分法より
f′(x) = 3(Arctanx)2(Arctanx)′
であるから、y= Arctan (x) とおくとx= tany (
−1
2π < y < π 2
)
と書き直せる。逆関数の微分法 より
(Arctanx)′= dy dx = 1
dx dy
= 1
(tany)′ = 1
1 + tan2y = 1 1 +x2 が成り立つので、
f′(x) = 3(Arctanx)2(Arctanx)′= 3(Arctanx)2 1 +x2 となる。
(6) f(x) = arcsin(2x) (3
2π≤arcsin(2x)≤ 5 2π
) t= 2x,y= arcsin(2x) = arcsin(t) とおくとt= siny
(3
2π≤y≤ 5 2π
)
と書き直せる。合成関数の 微分法により
f′(x) = dy dx = dy
dt · dt dx = dy
dt · d
dx(2x) = 2dy dt が成り立つ。
O cosy≥0 y
逆関数の微分法より dy
dt = 1 dt dy
= 1
(siny)′ = 1 cosy.
ここで、cos2y= 1−sin2yで、しかも 3
2π≤y≤ 5
2πの範囲でcosy ≤0 だから(図を参照)、cosy =√
1−sin2y=√
1−t2. したがって f′(x) = 2
cosy =+ 2
√1−t2 = 2
√1−4x2 .
※合成関数の微分法で出て来る 2 倍 を忘れないようにしよう。
【別解】 y=f(x) = arcsin(2x)とおくと 2x= siny なので、x= 1 2siny
(3
2π≤y ≤ 5 2π
)
と書き直せ る。したがって逆関数の微分法より
f′(x) = dy dx = 1
dx dy
=− 1 1 2cosy であるが、上記と同様にしてcosy =+√
1−sin2y=√
1−(2x)2 なので f′(x) = 1
1 2siny
= 2
√1−4x2 となる。
(7) f(x) = 1 Arccosx 商の微分法より
f′(x) = −(Arccosx)′ (Arccosx)2 .
y= Arccosxとおくと、x= cosy (0≤y≤π). (主値の範囲に注意)
O siny≥0
y 逆関数の微分法より、
(Arccosx)′= dy dx = 1
dx dy
= 1
(cosy)′ =− 1 siny.
ここで、sin2y = 1−cos2y で、しかも 0 ≤y ≤π の範囲でsiny ≥0 だから (図を参照)、siny = √
1−cos2y = √
1−x2. したがって (Arccosx)′=− 1
√1−x2. 以上より
f′(x) = −(Arccosx)′
(Arccosx)2 = 1
√1−x2(Arccosx)2
(8) f(x) = arctan(ex) (π ≤arctan(ex)<2π).
t=ex,y= arctanex = arctantとおくと、t= tany (π ≤y <2π). 合成関数の微分法より
f′(x) = dy dx = dy
dt · dt dx = dy
dt ·(ex)′=exdy dt. 一方、逆関数の微分法より
dy dt = 1
dt dy
= 1
(tany)′ = 1 tan2y+ 1
= 1
t2+ 1 == 1
(ex)2+ 1 = 1 e2x+ 1. 以上より
f′(x) =ex·dy
dt = ex e2x+ 1
【解説】 逆三角関数の微分が絡んだ微分法の総合演習。後半の問題がすらすら解ける様になれば、微 分法に関しては自信を持っても良いでしょう。
前半部 (1)–(4)に関しては、何度も出題したためかかなり正答率が高かったです。この調子で頑張り ましょう。一方、(6) 以降に関しては、出来ている人と全く手が出ていない人とでかなりはっきりと差 が出ました。
(6)で多かったのが、「y = 1
Arccosx とおくとx = 1
cosy だから……」というタイプの誤答でした。
このタイプの誤答をした人は、おそらく「どんなときでもArccos とかを cos に変えて、x と y を置 き換えたらO.K.」と言う風に誤解をしてしまっているようですが、これは全くの嘘です! あくまでも Arccosは cos の逆関数だから
y= Arccosx ⇔ x= cosy
が成り立つのです。したがって、どんなときでもArccos を cos に変えれば良いといった安易な思い込 みは直ぐに捨て去って下さい!!
(6)でどうしてもy= 1
Arccosx とおきたいのであれば、
Arccosx= 1
y ⇔ x= Arccos (1
y )
としなければなりません(勿論この状態で逆関数の微分法を用いても答えに辿り着くことが出来ます。
チャレンジしてみよう)。
ただ、このように何でもかんでも最初から「y=f(x)」とおくよりも、略解の様に取り敢えず積/商/ 合成関数の微分法を用いて計算出来るところまで計算して、逆三角関数の微分が出てきたら「y=. . .」 とおいて逆関数の微分法を用いる方が恐らくやり易いのではないかと思います。(6)だったら、これは 商の微分法が使える形なので、
f′(x) = −(Arccosx)′ (Arccosx)2
と計算しておいて、分子の (Arccosx)′ を計算する段階になって始めて y= Arccosx とおくようにす れば、後は普通の逆三角関数の微分(つまり(1)–(4) でやったようないつものやり方) と全く同じ様に して解くことが出来ます。(7)以降も同様で、どれもこれも見た目は取り付きにくそうですが、積/商/ 合成関数の微分法を用いて丁寧に分解していけば実はそれほど恐るるに足らぬ問題ばかりとなってい ます。
(6)以降の問題に手が付けられなかった人は、最初は略解を見ながらでも良いので、もう一度しっか り復習しましょう!
問題3-2.
(1) 等式
(∗)0: a0+a1x+a2x2+a3x3=f(x)
= (2x+ 1)3−5(x3+ 1)−14(x+ 1)2+ 4(5x+ 4)−x に於いてx= 0 を代入して、 a0= 13−5·1−14·1 + 4·4−0 = −2 を得る。
等式(∗)0 の両辺を微分して (右辺の微分は合成関数の微分法を用いよう) (∗)1: a1+ 2a2x+ 3a3x2=f′(x)
= 3(2x+ 1)2·2−5·3x2−28(x+ 1) + 4·5−1
= 6(2x+ 1)2−15x2−28x−9 x= 0 を代入して a1= 6·12−15·02−28·0−9 = −3 を得る。
等式(∗)1 の両辺を微分して
(∗)2: 2a2+ 6a3x=f′′(x) = 12(2x+ 1)·2−30x−28 x= 0 を代入して、 2a2= 24·1−30·0−28 =−4. よってa2= −2 を得る。
等式(∗)2 の両辺を微分して
(∗)3: 6a3=f′′′(x) = 24·2−30 = 18 よってa3= 3 を得る。
以上より f(x) =−2−3x−2x2+ 3x3 である。
(2) 等式
(♯)0: b0+b1(x−1) +b2(x−1)2+b3(x−1)3
=f(x) = (2x+ 1)3−5(x3+ 1)−14(x+ 1)2+ 4(5x+ 4)−x に於いてx= 1 を代入して、 b0= 33−5·2−14·22+ 4·9−1 = −4 を得る。
等式(♯)0 の両辺を微分して
(♯)1 : b1 + 2b2(x − 1) + 3b3(x − 1)2 = f′(x) = 6(2x + 1)2 − 15x2 − 28x − 9 x= 1 を代入して、 b1= 6·32−15·12−28·1−9 = 2 を得る。
等式(♯)1 の両辺を微分して
(♯)2 : 2b2 + 6b3(x − 1) = f′′(x) = 24(2x + 1) − 30x − 28 x= 1 を代入して 2b2= 24·3−30·1−28 = 14. よってb2= 7 を得る。
等式(♯)2 の両辺を微分して
(♯)3: 6b3=f′′′(x) = 18 よってb3= 3 を得る。
以上より f(x) =−4 + 2(x−1) + 7(x−1)2+ 3(x−1)3 である。
【解説】 展開係数を求める問題。すみません、ここまで面倒な計算になるとは思っていませんでし た。かなりの人が計算ミスをしていて、完全正解者は数えるばかりと言う惨憺たる結果となってしまい ました。。もしテストに出すとしてももっと計算が簡単なものを出しますので、単なる計算ミスだけの ひとはそれほど気にしないで下さい。
ただ、a5= 3840 など明らかに an = f(n)(a)
n! の n!で割る 部分が抜けている答案が少なからず散 見されたのは気になりました。講義でやった様に「微分して x= 0 (またはx = 1) を代入する」操作 を繰り返していけば、「n!で割る」部分を忘れることは無いと思うのですが……。それと同様に、
a0+a1x+a2x2+a3x3+a4x4+a5x5の微分が a1+a2x+a3x2+a4x3+a5x4 (?!)
などと書いてある答案も見られました((xn)′=nxn−1 ですよ!)。単なるケアレスミスだとは思います が、注意する様にしましょう。