2016 微積 I.0.1
微積分及び演習 I
数理情報学科・1年次配当・前期学科固有科目・必修・3単位 飯田 晋司 [email protected]
ティーチング・アシスタント (TA)
玉井 数馬 さん
b黒川 孟 さん
d森田 直樹 さん
a,d森本 晃平 さん
b臼井 宏毅 さん 野田 康矢 さん
b,c他の科目の TA a: 計算機基礎実習 I , b: 線形代数及び演習 I , c: 物理数学及び演習 I , d: 学科チューター
☆ 教科書は『微分積分入門』桑村雅隆 著,裳華房 です。各自で購入しておいてください。
後期の「微積分及び演習 II」でも使います。
プリント中の
¨
§
¥
桑村 ¦ はテキスト,“桑村『微分積分入門』(裳華房) ”を示します。
¨
§
¥
川薩四 ¦ はテキスト,“川野,薩摩,四ツ谷『微分積分+微分方程式』(裳華房) ”を示します。
オフィスアワー: 木曜 6 講時 (1-513),金曜 3 講時 (1-542)
url: http://www.math.ryukoku.ac.jp/ iida/lecture/lecture.html
2016 微積 I.0.2
.
☆成績評価の方法
(1) Placement Test(数学) 補習課題 1 ∼ 5 ( http://maple.st.ryukoku.ac.jp/ ) を提出し,
(2) 演習課題を 9 回以上提出したうえで,予定されている 2 回の小テストの両方に 60 点以上 をとるか,あるいは定期試験に 60 点以上をとることで合格とします。最終成績は,合格 の場合は小テストの平均点と定期試験の点数の高い方,不合格の場合は定期試験の点数,
となります。
☆ 演習課題の提出について
• 解答は配布する演習解答用紙に書いてください(丁寧な字で,明らかに暗算で答がわか る場合以外は解答の手順もしっかり書いてください)。
• 解けた問題はTAか担当教員に見せてチェックを受けてください。問題がすべて解ければ,
解答用紙を提出し,TAが持っている記録シートに印を記入してもらってください(確か に自分の欄に印が記入されたか必ず確認すること)。
• チェックは演習の時間内に受けてください。月 5 の演習時間内に完成できなかった場合は,
飯田のオフィスアワー時間 (同じ週の木 6 あるいは金 3) にもチェックが受けれます。
• チェックを受ける時間がとれなかった場合,解答用紙を翌週の月曜日の 13:00 から 13:30
の間に 1-513 の飯田に提出することができます。この場合,解答に誤りが多いときは 1 回
未満 (0.5 回など) の提出回数と数えます。
• TAの人数と演習の時間が限られているので,効率良くチェックを受けられるように各自 で工夫してください。昨年までの経験によると,できた問題からどんどんチェックを受け るのがいいでしょう。一気に大量のチェックを受けようとすると効率が悪くなります。
• チェックを受ける問題の順番は自由です。難しい問題は後回しにして,解ける問題から始 めるとよいでしょう。
☆ もし「講義が難しくてついていけない」とか「演習問題がどうしても解けない」とい うときには,講義や演習中にTAや担当教員に質問する以外に以下の方法を試してみ てください(他の講義についても同じ)。
• チューター制度を利用:主に大学院生が毎週決まった時間に質問を受け付けてくれます。
具体的な時間と場所は掲示されます。
• オフィスアワーを利用:各教員は質問を受け付ける時間を設定しています。これも掲示を 参照してください。ちなみに,飯田のオフィスアワーは木曜日の 6 講時と金曜日の 3 講時 です。
• 数理情報基礎演習に参加:金曜日3講時に開講されています。登録をしていない人の参加 も OK です。
• 友達を作る:一人で解決しようとして迷路にはまり込んで出られなくなってしまう人が結
構います。上級生や教員に質問するのはちょっと,という人はとりあえず同級生の間で教
え合う関係を築くことをお勧めします。
2016 微積 I.1
1 関数と微分
¶ ³
微積分の主役は「関数」です。関数を「極限の計算」を使って調べます。
µ ´
1.1 関数とは
例題 1.1 半径 r の球の体積 V を r の式で表しなさい
解説 答えは V = V (r) = 4πr
3/3 です。V (r) という書き方は,半径 r の値に体積の値が対 応していることを表します。つまり,体積を半径の関数と考えているということです。この場 合の r を独立変数,V を従属変数,独立変数の範囲を定義域,従属変数の範囲を値域と言いま す。
例題 1.2 底面が 1 辺の長さ d の正方形で,高さが h であるような四角柱の表面積 S を d と h の式で表しなさい。
解説 S = S(d, h) = 2d
2+ 4dh です。これは,二つの独立変数 d と h に従属変数 S が対応す る 2 変数関数の例です。同様に,独立変数の数に応じて 3 変数関数,4 変数関数…が考えられ ます。2 変数以上の場合を多変数関数と呼びます。
注意 ! 数学では,y = f (x) のように,独立変数は x,従属変数は y とすることが多いです。
2 変数関数の場合は z = f (x, y) のように独立変数には x, y が,従属変数には z がよく使われ ます。しかし,例題のように,x, y, z 以外の文字が使われる場合もあるので,記号に惑わされ ないように注意しましょう。
例題 1.3 関数 f (x) = x
2− 2x − 3 のグラフを描きなさい。
解説 放物線 y = x
2を x 方向に 1,y 方向に − 4 平行移動した図 1.1 の曲線になります。関 数のグラフが描ければ,関数の感じがよくわかります。
注意 ! ¨ § 桑村 p.6 ¥ ¦ 定理 1.1 より y = x
2を x 方向に 1,y 方向に − 4 平行移動したグラフを表す 関数は
y = (x − 1)
2− 4 = x
2− 2x + 1 − 4 = x
2− 2x − 3 (1.1) となります。
0 x
y
−3
−1 3
図 1.1 y = x
2− 2x − 3
2016 微積 I.2
.
例題 1.4 f(x, y) = √
x
2+ y
2は xy 平面上の点 (x, y) に原点からの距離を対応させる 2 変数 関数です。z = f (x, y) はどのような曲面を表すか,概形を描きなさい。また,xy 平面に「等 高線」を描きなさい。
解説 関数の意味から図 1.2 をイメージしてみましょう。
0 x
y z
図 1.2 z = √
x
2+ y
2のグラフと「等高線」
1.2 おなじみの関数(その1)〜 べき関数 x α 〜
x
2n, n = 1, 2, · · ·,x の偶数べき
x y
y=x2
y=x4
x→±∞
lim x
2n= ∞ . (2.1) m < n の場合,
| x | < 1 なら x
2m> x
2n,
| x | > 1 なら x
2m< x
2n. (2.2)
x
2n+1, n = 0, 1, · · ·,x の奇数べき
x y
y=x3
y=x5
x→−∞
lim x
2n+1= −∞ , lim
x→∞
x
2n+1= ∞ . (2.3) m < n の場合,
| x | < 1 なら | x
2m+1| > | x
2n+1| ,
| x | > 1 なら | x
2m+1| < | x
2n+1| . (2.4) 1
x
2n, n = 1, 2, · · ·
x y
2
1 x
y=
4
1 x
y=
2
1 x
y=
4
1 x
y=
x
lim
→01
x
2n= ∞ , lim
x→±∞
1
x
2n= 0 . (2.5) m < n の場合,
| x | < 1 なら 1
x
2m< 1 x
2n,
| x | > 1 なら 1
x
2m> 1
x
2n. (2.6)
2016 微積 I.3
1
x
2n+1, n = 0, 2, · · ·
x y
1
x
y=
3
1
x
y=
1
x
y=
3
1
x
y=
x→
lim
0−01
x
2n+1= −∞ , lim
x→0+0
1
x
2n+1= ∞ ,
x→±∞
lim 1
x
2n+1= 0 . (3.1)
m < n の場合,
| x | < 1 なら 1
| x
2m| < 1
| x
2n| ,
| x | > 1 なら 1
| x
2m> 1
| x
2n| . (3.2) x
1/n, n = 1, 2, · · · ,(x ≥ 0) ¨ § 桑村 § 1.6 ¥ ¦
x y
1/2 x
y=x =
3
1/3 x
y=x =
x
lim
→∞x
1/n= ∞ . (3.3) m < n の場合,
x < 1 なら x
1/m< x
1/n,
x > 1 なら x
1/m> x
1/n. (3.4)
1.3 おなじみの関数(その2)〜指数関数と対数関数〜
例題 1.5 指数関数について復習しなさい(→ ¨ § 桑村 § 1.8 ¥ ¦ , ¨ § 川薩四 § 5.1 ¥ ¦ )。
解説 指数関数とは,a を正の数( a 6 = 1 で,底と呼びます)として,f(x) = a
xの形の関数 で,f(1) = a
1= a です。指数関数の基礎をまとめておきましょう。
(1) 底が a > 1 なら単調増加関数で, lim
x→∞
a
x= ∞ , lim
x→−∞
a
x= 0 となります。
(2) 0 < a < 1 なら単調減少関数で, lim
x→∞
a
x= 0, lim
x→−∞
a
x= ∞ となります。
(3) 指数法則
a
x+y= a
xa
y, a
xy= (a
x)
y, a
−x= 1
a
x, a
0= 1 (3.5) が成り立ちます。
(4) 微積分での指数関数の代表が f (x) = e
xです( e は自然対数の底と呼ばれる無理数で,
e = 2.718281828459045 · · · です)。なぜ代表なのかはまたいずれ。
注意 ! e
xを exp(x) と書く場合があります。
指数関数は数学以外にもいろんな所に登場します。例を探してみましょう。
2016 微積 I.4 例題 1.6 対数関数について復習しなさい(→ ¨ § 桑村 § 1.9 ¥ ¦ , ¨ § 川薩四 § 5.2 ¥ ¦ )。
対数関数とは,a を正の数( a 6 = 1 で,やはり底と呼びます)として,独立変数 x に x = a
yと なる y を対応させる関数で,log
ax と書きます。つまり,指数関数の逆関数(後出)です。指 数関数の値が必ず正であることに対応して,対数関数の定義域は x > 0 です。対数関数の基礎 をまとめておきましょう。
(1) a > 1 なら単調増加関数で, lim
x→∞
log
ax = ∞ , lim
x→+0
log
ax = −∞ となります。
(2) 0 < a < 1 なら単調減少関数で, lim
x→∞
log
ax = −∞ , lim
x→+0
log
ax = ∞ となります。
(3) 指数法則に対応して,
log
axy = log
ax + log
ay , log
ax
y= y log
ax , log
aa = 1 , log
a1 = 0 (4.1) が成り立ちます。
(4) 底が e の対数を自然対数と呼び,単に log x と書きます( ln x と書くこともあります)。
対数関数もいろんな所に登場します。例を探してみましょう。
例題 1.7 対数関数の底の変換公式 ¨ § 桑村 p.26 ¥ ¦
log
ac = log
bc
log
ba (4.2)
を導きなさい。
解説 a = b
logbaなので,
c = a
logac= (
b
logba)
logac= b
logba logacより log
bc = log
ba log
ac . (4.3)
1.4 おなじみの関数(その3)〜三角関数〜
例題 1.8 三角関数について復習しなさい(→ ¨ § 桑村 § 1.7 ¥ ¦ , ¨ § 川薩四 § 5.3 ¥ ¦ )。
解説 三角関数 cos x, sin x は単位円上の点について,点 (1, 0) から反時計回りに測った弧長
(逆回りは負の値とする)にその点の座標を対応させる関数です。なお,単位円の弧長という のは弧度法での角度のことです(単位はラジアン,微積分での角度は弧度法で表すのが標準で す)。三角関数について基礎の基礎をまとめておきましょう。
注意 ! cos x , sin x は cos(x) sin(x) のことです。誤解の余地のない場合は括弧を省略しても かまいません。cos xy のように cos(xy) か cos(x)y のどちらか迷う可能性のある場合は 括弧を使った方がよいでしょう。
(1) 三角関数 cos x と sin x は以下の関係で結ばれています。
cos
2x + sin
2x = 1 (4.4)
注意 ! cos
2x は (
cos(x) )
2のことです。
(2) 三角関数 cos x, sin x は周期が 2π の周期関数です。
2016 微積 I.5 (3) 加法定理と呼ばれる関係が成り立ちます(指数関数についての指数法則と関係あるので
すが,それはまた別の話)。
cos(x ± y) = cos x cos y ∓ sin x sin y , (5.1) sin(x ± y) = sin x cos y ± cos x sin y . (5.2) 特に,x = y とすると,2倍角の公式が得られます:
cos(2x) = cos
2x − sin
2x = 2 cos
2x − 1 = 1 − 2 sin
2x , (5.3)
sin(2x) = 2 sin x cos x , (5.4)
(4) 三角関数は他にもありますが,すべて cos x と sin x から作られます。
tan x = sin x
cos x , cot x = cos x
sin x , sec x = 1
cos x , cosec x = 1
sin x (5.5)
例題 1.9
y = 2 sin (
πx − π 5
)
(5.6) のグラフの山の位置 (y = 2 となる x の値),谷の位置 (y = − 2 となる x の値),および x 軸を 横切る位置 (y = 0 となる x の値) をそれぞれ求めなさい。また, − 2 ≤ x ≤ 1 の範囲でのグラ フの概形を描きなさい。
解説 山の位置は πx − π
5 = π
2 + 2πn より x = 1 5 + 1
2 + 2n (
= 0.7 + 2n )
, n = 0 , ± 1 , ± 2 · · · (5.7) を満たす x となります。
谷の位置は πx − π
5 = 3π
2 + 2πn より x = 1 5 + 3
2 + 2n (
= 1.7 + 2n )
, n = 0 , ± 1 , ± 2 · · · (5.8) を満たす x となります。
y = 0 となるのは πx − π
5 = πn より x = 1 5 + n
(
= 0.2 + n )
, n = 0 , ± 1 , ± 2 · · · (5.9) を満たす x となります。
以上より,− 2 ≤ x ≤ 1 でのグラフの概形は以下のようになります:
-2 -1.5 -1 -0.5 0.5 1
-2 -1 1 2
x
y
2016 微積 I.6
.
1.5 合成関数と逆関数
・合成関数 ¨ § 桑村 § 1.4.1 ¥ ¦
{ y = f (u),u = g(x) } あるいは y = f ( g(x) )
で定義される関数。
例えば f (u) = e
−u, g(x) = x
2の場合,y = f(g(x)) は y = e
−x2= exp( − x
2) のことを意味 します。
y = e
−x2-4 -2 2 4 x
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 y
u = x
2-4 -2 2 4 x
-2 2 4 6 8 10
u
y = e
−u0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 y -2
2 4 6 8 10 u
注意 ! 2 つの関数,f と g を用いて作られる g(f(x)) や f(g(x)) のような関数を合成関数と呼 びます。g(f (x)) の代わりに (g ◦ f)(x) と書く場合があります。( ¨ § 桑村 § 1.4.1,p.7 ¥ ¦ )
・逆関数 ¨ § 桑村 § 1.4.2 ¥ ¦
任意の x について g(f (x)) = x である場合,g(x) を f (x) の逆関数と呼び,f
−1(x) と書き ます。
注意 ! f
−1(x) 6 = 1 f(x)
関数 y = e
xと逆関数 y = log x の図
-4 -2 2 4 x
-4 -3 -2 -1 1 2 3 4 y
例えば a
xと log
a(x) は互いに逆関数。
y = f (x) のグラフと y = f
−1(x) のグラフは直 線 y = x に対して線対称となります。
関数 y = x
2− 1 と逆関数 y = ± √
x + 1 の図
x y
交 点 の 座 標 は ( − 1, 0),(0, − 1),
( 1 − √ 5
2 , 1 − √ 5 2
)
,
( 1 + √ 5
2 , 1 + √ 5 2
)
。
2016 微積 I.7
1.6 連続関数
¶ ³
例えば √
x, x
3といった関数は連続関数です。連続性のおかげで, √
4.001 はほぼ 2 に等 しい,(1.999)
3はほぼ 8 に等しい,といった近似計算が可能になります。
µ ´
関数の極限値 ¨ § 桑村 § 3.2 ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 § 1.2 ¦
実数 x が限りなく a に近づくとき,f(x) がある実数 α に限りなく近づくならば x → a のとき f (x) の 極限値 は α である
あるいは
x → a のとき f(x) は α に 収束 する とかいい,
x
lim
→af (x) = α (7.1)
と表します。
(参考) 上の 限りなく近づく とは
『任意の ( どんな小さな ) 正の数 ε に対しても,適当な正の数 δ をとると, 0 < | x − a | < δ の すべての x に対して |f (x) − α| < ε となる』
ということを意味します。
なお,x を左から (x < a ) a に近づけた場合の極限を左側極限と呼び
x→
lim
a−0f (x) (7.2)
と表します。また,x を右から (x > a ) a に近づけた場合の極限を右側極限と呼び
x→
lim
a+0f (x) (7.3)
と表します。 ¨ § 桑村 p.52 ¥ ¦
¨
§
¥
川薩四 § 1.4 ¦ x → a のとき f (x) の 極限 が存在する場合は
x→
lim
a−0f (x) = lim
x→a+0
f (x) = lim
x→a
f (x) (7.4)
となっています。
関数の連続 ¨ § 桑村 § 3.3 ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 § 1.5 ¦
関数 f(x) が x = a で連続であるとは, x → a のとき f (x) の極限が存在し,その値が f(a) に等しいことを意味します:
関数 f (x) が x = a で連続 ⇔ lim
x→a
f (x) = f (a) . (7.5)
2016 微積 I.8 これは,x を a にどんどん近くすると関数の値の方も f (a) にいくらでも近くできる,とい う「近似の可能性」を表したものです。
(例) f (x) = 1
x
2は x = 0 で連続ではありません。
x
lim
→−0f (x) = ∞ , lim
x→+0
f (x) = ∞ (8.1)
となり,左極限も右極限も発散し,極限が存在しません。
(例) f (x) = x
| x | は x = 0 で連続ではありません。 ¨ § 桑村 例題 3.5 ¥ ¦
x
lim
→−0f (x) = lim
x→−0
x
− x = − 1 , lim
x→+0
f (x) = lim
x→+0
x
x = 1 (8.2)
となり,左極限および右極限はそれぞ存在しますが,一致しません。
例題 1.8 次のように定義された関数 f (x) が x = 1 で連続となるように定数 c の値を定めな さい。
f (x) =
c (x = 1 のとき) x
3− 1
x − 1 (x 6 = 1 のとき) 解説
x
lim
→1f(x) = lim
x→1
x
3− 1
x − 1 = lim
x→1
(x
2+ x + 1) = 3 なので,c = 3 であれば x = 1 で連続になることがわかります。
例題 1.9 次のように定義された関数 f (x) が x = 0 で連続となるように定数 c の値を定めな さい。
f (x) =
c (x = 0 のとき) sin(2x)
x (x 6 = 0 のとき) 解説
x
lim
→0sin(2x)
x を求めるために,教科書 ¨ § 桑村 p.70 ¥ ¦ の例題 3.19
x
lim
→0sin x
x = 1 ¨
§
¥
川薩四 (5.9) ¦ (8.3)
を用います:
x
lim
→0f (x) = 2 lim
x→0
sin(2x)
2x = 2 (8.4)
より c = 2 とすれば f (x) は x = 0 で連続となります。
(参考) 次のように定義された関数 f(x) が x = 0 で連続となるように定数 c の値を定めな さい。
f(x) =
c (x = 0 のとき)
x sin ( 1
x )
(x 6 = 0 のとき) (8.5)
2016 微積 I.9
解説 ¯¯
¯¯ sin ( 1
x
)¯¯ ¯¯ ≤ 1 なので
x
lim
→0¯¯ ¯¯ x sin ( 1
x
)¯¯ ¯¯ ≤ lim
x→0
| x | = 0 . (9.1)
従って, c = 0 とすれば f(x) は x = 0 で連続となります。
-1 -0.5 0 0.5 1
-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
x y
-0.1 -0.05 0 0.05 0.1
-0.075 -0.05 -0.025 0 0.025 0.05
x y
-0.01 -0.005 0 0.005 0.01
-0.005 0 0.005 0.01
x y
x sin ( 1
x )
の x = 0 付近でのグラフ
多変数関数の場合も同様です。例えば,ある 2 変数関数 f (x, y) が (x, y) = (a, b) で連続か不 連続かどうかは,
lim
(x,y)→(a,b)
f(x, y) = f (a, b) (9.2)
となっているかを確認すればわかります(→ ¨ § 桑村 p.167 ¥ ¦ )。ただし,(x, y) → (a, b) というのは,
点 (x, y) を点 (a, b) にどんどん近づけるということを意味します。(9.2) は (x, y) を どのように (a, b) に近づけても,f(x, y) が f(a, b) に近づくことを意味します。
1.7 中間値の定理
¨
§
¥ 桑村 p.56 ¦
¨
§
¥ 川薩四 p.15 ¦
例題 1.10 方程式 x
2− 2 = 0 は 1 ≤ x ≤ 2 の範囲に少なくともひとつ実数解をもつことを示 しなさい。
解説 f (x) = x
2− 2 とおくと f (x) は連続関数です。f(1) = − 1 < 0, f(2) = 2 > 0 なので,中 間値の定理より方程式 f(x) = 0 は x = 1 と x = 2 の間に少なくとも一つの解を持つことがわか ります。グラフをイメージすれば直感的に区間 (1, 2) の内部に実数解が存在することがわかる と思います(数学的にちゃんとした解説は→ 教科書)。実数解が具体的な式で求められない場 合でも,中間値の定理を使えば,実数解があるかどうかは確認できるのです。
(参考) 解の存在する区間, (1, 2) ,の中点 x = 3/2 での関数の値 f (3/2) = 1/9 > 0 を調べることに より,解の存在する範囲を更に狭めることができます。この例の場合, f (1) < 0 , f (3/2) > 0 なので,区間 (1, 3/2) 内に少なくとも一つの解が存在することがわかります。この手順を繰り 返すことで,方程式 f (x) = 0 の数値解を好みの精度で求めることができます。 ( → 2 年の科目
「数値計算法」 2 分法 )
2016 微積 I.10 (参考) 実数の厳密な定義は省略します。 ( 無限の ) 小数
m . a
1a
2a
3· · · , m 整数 , a
k= 0 ∼ 9 (10.1) と思って下さい。ただし
0.999 · · · = 1.000 · · · (10.2)
等が成り立っています。
例題 1.11 方程式 2 cos x − x = 0 は 0 ≤ x ≤ π/2 の範囲に少なくともひとつ実数解をもつこ とを示しなさい。
解説 f (x) = 2 cos x − x とおくと f (0) = 2 > 0, f (π/2) = − π/2 < 0 なので,方程式 f (x) = 0 は x = 0 と x = π/2 の間に少なくとも一つの解を持つことがわかります。
( ) f x
/ x π
例題 1.12 直線状のゴムを図のように引きのばすとき,引きのばす前後で位置の変わらない 点が存在することを示しなさい。
x x
0
0
1
1
x
0( )
0f x
解説 図のように x 軸上にゴムを置き,ゴムの左端の座標を x = 0,右端の座標を x = 1 とし ます。ゴムの座標 x (0 ≤ x ≤ 1) の点が,引きのばされた後には座標 f(x) に移動したとしま す。図より,f (0) < 0,f(1) > 1 なので,g(x) = f (x) − x とすると,
g(0) = f(0) < 0 , g(1) = f(1) − 1 > 0 (10.3)
となります。関数 f (x) は [0 , 1] で連続と考えられるので,g(x) も連続。従って,g(x
0) = 0 と
なる x
0∈ (0 , 1) の存在がわかります。f (x
0) = x
0なので,座標 x = x
0の点がゴムを引きのば
す前後で位置が変わらない点となります。
2016 微積 I.11
1.8 微分係数,導関数
¶ ³
次のやりとりを数学的に解説できますか? 微分の概念の理解の第一歩です。
ある日の京滋バイパス瀬田付近,白バイ警官の「その乗用車,止まりなさい ! 」の声,
ブレーキを踏むドライバー:
警官「 90 キロ出てましたよ。速度超過違反 30 キロで免許停止です。」
ドラ「 90 キロって時速 90 キロ,つまり 1 時間で 90 キロですか ? 」 警官「そうですが,何か ? 」
ドラ「 1 時間って,運転してまだ 5 分なので 90 キロも走ってません。」
警官「いえ,このままいけば 1 時間で 90 キロ走る,ということです。」
ドラ「あと 10 分で自宅に着くのでそんなに走りません。」
µ ´
微分係数 ¨ § 桑村 p.45 ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 p.20 ¦
h
lim
→0f(a + h) − f(a)
h (11.1)
この値が定まるとき,関数 y = f (x) は x = a で微分可能であるといいます。また,この極限 値を関数 y = f (x) の x = a における微分係数とよび
f
0(a), y
0|
x=aとか df(x) dx
¯¯ ¯¯
x=a
, dy dx
¯¯ ¯¯
x=a
(11.2) と表します。関数によっては極限が定まらないこともあり,その場合は微分不可能であると言 います。
導関数 ¨ § 桑村 p.59 ¥ ¦ ¨
§
¥ 川薩四 p.21 ¦
関数 y = f (x) を考えます。各 x の値にこの x における微分係数を対応させる関数を y = f(x) の 導関数とよび
f
0(x), y
0とか df (x) dx , dy
dx (11.3)
と表します。すなわち
f
0(x) = lim
h→0
f (x + h) − f (x)
h (11.4)
です。
注意 ! 微分係数を示す記号 (11.2) に現れた |
x=aは x に a を代入するという操作を意味しま
す。つまり,微分係数 f
0(a) は導関数 f
0(x) の x = a における値のことです。。
2016 微積 I.12
式 (11.1) でいきなり h = 0 を代入すると分子と分母がともに 0 になるため,h → 0 の極限を
とる必要があります。定義 (11.1) に従って,微分係数を数値計算した例を示します:
(例) f(x) = x
2,a = 1,f
0(1) = 2
h 0.5 0.1 0.01 0.001
f (a + h) − f (a) 1.25 0.21 0.0201 0.002001 (f(a + h) − f(a))/h 2.5 2.1 2.01 2.001 (例) f(x) = sin(x),a = 0,f
0(0) = 1
h 0.5 0.3 0.1 0.01
f(a + h) − f(a) 0.479 0.296 0.0998 0.001 (f (a + h) − f (a))/h 0.959 0.985 0.998 1.0 (微分可能でない例) f (x) = x sin
( 1 x
)
,a = 0
h 0.5 0.1 0.01 0.001 0.0001
f (a + h) − f (a) 0.455 -0.0544 -0.00506 0.000827 -0.0000306 (f (a + h) − f (a))/h 0.909 -0.544 -0.506 0.827 -0.306
例題 1.13 微分の定義 (11.4) にしたがって,関数 x
2と √
x (x > 0) の導関数をそれぞれ求め なさい。
解説
lim
h→0
(x + h)
2− x
2h = lim
h→0
2xh + h
2h = 2x . (12.1)
また,
h
lim
→0√ x + h − √ x
h = lim
h→0
( √
x + h − √ x)( √
x + h + √ x) h( √
x + h + √ x)
= lim
h→0
h h( √
x + h + √
x) = 1 2 √
x (12.2)
なので,いずれも微分可能で,導関数はそれぞれ 2x, 1 2 √
x となります。
例題 1.14 例題 1.13 と同じ計算を他の関数に変えて,極限の計算を練習しなさい。
解説 例えば,x
3や 1/x は比較的簡単に計算できます。とりあえず自力でトライしてみましょ
う。答えはそれぞれ 3x
2, − 1/x
2です。
2016 微積 I.13 接線;微分係数の図形的意味
x = a で微分可能な関数 f (x) で表される曲線 y = f(x) は x = a の近くでは直線で近似でき ます。その直線を曲線 y = f (x) の点 (a, f (a)) での接線と呼び,接線の傾きが x = a での微分 係数 f
0(a) となります。
・f(x) = x
2,a = 1,接線 y = 2x − 1
-1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2
-3 -2 -1 0 1 2 3 4
x y
0.6 0.8 1 1.2 1.4
0 0.5 1 1.5 2
0.9 0.95 1 1.05 1.1
0.8 0.9 1 1.1 1.2
・f(x) = sin(x),a = 0,接線 y = x
-3 -2 -1 0 1 2 3
-3 -2 -1 0 1 2 3
x y
-1 -0.5 0 0.5 1
-1 -0.5 0 0.5 1
x y
-0.4 -0.2 0 0.2 0.4
-0.4 -0.2 0 0.2 0.4
x y
・(微分可能ではない例) f(x) = x sin ( 1
x )
は x = 0 で微分可能ではないので,x = 0 の近 くをどれだけ拡大してもグラフは直線に近づきません。
-1 -0.5 0 0.5 1
-0.2 0 0.2 0.4 0.6 0.8
x y
-0.1 -0.05 0 0.05 0.1
-0.075 -0.05 -0.025 0 0.025 0.05
x y
-0.01 -0.005 0 0.005 0.01
-0.005 0 0.005 0.01
x y
注意 ! x = 0 以外では微分可能。例えば x = 0.01 の充分近くでは直線で近似できます。
x y
x y
x y
2016 微積 I.14
『曲線 y = f (x) が x = a の近くでは直線で近似できる』という文の意味を,関数
f(x) = x
3+ x
2+ x + 1 (14.1)
について,a = 1 の場合に考えてみます。x = 1 の近くの領域のみを考えるということは,
x = 1 + h として, | h | が小さい場合を考えるということです。f(x) を h のべきでまとめると f (x) = f (1 + h) = (1 + h)
3+ (1 + h)
2+ (1 + h) + 1 = 4 + 6h + 4h
2+ h
3(14.2) となります。(14.2) の最初の 2 項,
4 + 6h = 4 + 6(x − 1) = − 2 + 6x , (14.3) が曲線 y = f (x) を近似する直線で,残りの 2 項,4h
2+ h
3,は直線で近似しきれない誤差を表 しています。曲線を近似する直線と元の曲線との差が h より小さい h
2のオーダーの量である ことが重要です。もし,直線の傾きが 6 ではなく,例えば 5 なら式 (14.2) は
f (1 + h) = 4 + 5h + h + 4h
2+ h
3(14.4) となり,元の曲線との差が h
1のオーダーの量になります。つまり,直線 − 2 + 6x は,元の曲線 y = f (x) との差が x = 1 の近くで最も小さくなるように傾きを選んだ直線になります。
( ) y = f x
x
a a h +
( ) O h
( )
2O h
一般に,曲線 y = f(x) 上の点 (x = a , y = f (a)) を通る傾き A の直線は次の式
y = f(a) + A (x − a) (14.5)
で表されます。傾き A をうまく選んで,曲線 y = f (x) との差が x = a の近くで h
2のオーダー の量になる場合,直線 (14.5) を曲線 y = f (x) の点 (a, f (a)) での接線と呼びます:
f (a + h) = f(a) + A h + O(h
2) . (14.6) ここで O(h
2) は大きさが h
2のオーダーの量を表します。
注意 ! ランダウ (Landau) の記号 ¨ § 桑村 付録 E ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 p.114 ¦
lim
h→0
¯¯ ¯¯ g(h) h
n¯¯ ¯¯ ≤ 有限の値 (14.7)
2016 微積 I.15 であるとき,g(h) を h
nで抑えられる無限小 といい
g(h) = O(h
n) (15.1)
と書きます。O がランダウの記号で O(h
n) と表される部分が,h → 0 のとき h
nと少なくとも 同程度に小さい量 であることを示しています。O(h
n) = (何らかの係数) × h
nと思ってよいで しょう。O は「程度」を表す “order” の頭文字です。ランダウの記号は,具体的に h のどんな 式かはわからなくても,極限や収束を考えるとき「どのくらい小さいか」の程度を表せる便利 な記号です。
微分係数の定義の式 (11.1) に式 (14.6) を代入すると f
0(a) = lim
h→0
f (a + h) − f (a)
h = lim
h→0
A h + O (h
2)
h = lim
h→0
(A + O (h)) = A (15.2) となり, x = a での微分係数 f
0(a) が 点 (x = a, y = f(a)) を通る接線の傾きを与えることが わかります。
接線の式 ¨ § 桑村 p.79 ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 p.21 ¦ '
&
$
%
h が小さいとき
f (a + h) = f (a) + f
0(a) h + O(h
2) (15.3) となります。(15.3) 右辺の最初の 2 項は x = a,y = f (a) を通る,曲線 y = f (x) の接線を表 す式となります:
y = f (a) + f
0(a) (x − a) . (15.4) 注意 ! h = x − a → 0 のとき,点 (x = a, y = f (a)) を通るどんな直線でも曲線 y = f (x) と
の差は 0 に近づくが,直線の傾きが f
0(a) でなければその差は O(h) となります。こ の意味で,接線は x = a の近くで曲線を一番良く近似する直線といえます。
注意 ! 式 (15.3) より,さらに近似を進めるとどうなるかについては,後のテイラー (Taylor)
展開のところで説明します。
(参考) 微分係数の定義の式 (11.1) , f
0(a) = lim
h→0
f(a + h) − f (a)
h ,を書き換えた式
h
lim
→0f (a + h) − (
f(a) + f
0(a)h )
h = 0 (15.5)
は,元の関数の値 f (a + h) と接線の値 f(a) + f
0(a)h との差が h より早く 0 に近づくことを意 味しています。このような量を h よりも高次 ( 高位 ) の無限小と呼び, o(h) と書きます。 (15.3) 右辺中の h
2のオーダーの量, O(h
2) ,は確かに h よりも高次の無限小ですが,例えば h
3/2な ども h より高次の無限小となります。従って, (15.3) は,より正確には
f(a + h) = f (a) + f
0(a) h + o(h) (15.6)
と書くべきです。しかし, f(x) が何回でも微分可能な場合は (15.3) が成り立つので,ここで
は説明を簡略にするためこのように表しました。
2016 微積 I.16
.
曲線と接線の差 ∆(h) = f(a + h) − f (a) − f
0(a) h の計算例を示します。。
(例) f(x) = x
2,a = 1,f
0(1) = 2
h 1 × 10
−11 × 10
−21 × 10
−31 × 10
−4∆(h) 1 × 10
−21 × 10
−41 × 10
−61 × 10
−8∆(h)/∆(10h) 1 × 10
−21 × 10
−21 × 10
−2(例) f(x) = sin(x),a = 0,f
0(0) = 1
h 1 × 10
−11 × 10
−21 × 10
−31 × 10
−4∆(h) − 1.67 × 10
−4− 1.67 × 10
−7− 1.67 × 10
−10− 1.67 × 10
−13∆(h)/∆(10h) 1 × 10
−31 × 10
−31 × 10
−3(例) f (x) = x sin ( 1
x )
,a = 0.01,f
0(0.01) = − 86.7 · · ·
h 1 × 10
−31 × 10
−41 × 10
−51 × 10
−6∆(h) 9.40 × 10
−23.65 × 10
−32.67 × 10
−52.55 × 10
−7∆(h)/∆(10h) 3.88 × 10
−27.32 × 10
−39.53 × 10
−3例題 1.15 (例題 1.10) で考えた方程式,
f(x) = 0 , ただし f (x) = x
2− 2 , (16.1)
は区間 (1 , 2) 内に解を持つことがわかっています。また,関数 f(x) は x = 2 の近くで接線
g(x) = f(2) + f
0(2)(x − 2) (16.2)
で近似できます。方程式 g(x) = 0 を解いて,方程式 f (x) = 0 の近似解を求めなさい。
なお,このように,ある点の関数の値と微分係数から方程式の数値解を計算する方法をニュー
トン (Newton) 法と呼びます。(→ 2 年の科目「数値計算法」)
解説 f (x) の導関数は f
0(x) = df (x)
dx = 2x なので,f (x) の x = 2 での接線の方程式は
g(x) = 2 + 4(x − 2) = 4x − 6 (16.3)
となります。従って g(x) = 0 より x = 3
2 = 1.5 が方程式 f (x) = 0 の近似解となります (図 17-1)。正確な解は x = √
2 = 1.4142 · · · となります。
正確な解の近くに近似解が得られた場合は,この手続きをもう一度くり返すことで,近似の 精度を上げる (近似解と正確な解の誤差を減らす) ことができます。f(x) の x = 3/2 での接線 の方程式は
h(x) = 1 4 + 3
( x − 3
2 )
= 3x − 17
4 (16.4)
となるので,h(x) = 0 より x = 17
12 = 1.4166 · · · が方程式 f (x) = 0 のより精度の高い近似解と
なります (図 17-2)。
2016 微積 I.17
x ( )
f x
( ) g x
2
3 2
図 17-1
x ( )
f x
( ) g x
( ) h x
2
17
12 3
2
図 17-2
1.9 微分の基本的公式
'
&
$
%
(1) 関数の和,差や定数との積の微分 ¨ § 桑村 p.62 ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 (p.22) ¦
d dx
(
a f(x) + b g(x) )
= a df (x)
dx + b dg(x)
dx , a, b は定数 , (17.1) あるいは (
a f (x) + b g(x) )
0= a f
0(x) + b g
0(x) , a, b は定数 . (17.2) (2) 関数の積の微分 ¨ § 桑村 p.62 ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 (p.22) ¦
d dx
(
f (x) g(x) )
= df (x)
dx g(x) + f (x) dg(x)
dx , (17.3)
あるいは (
f(x) g(x) )
0= f
0(x) g(x) + f (x) g
0(x) . (17.4) (3) 合成関数 y = f (g(x)) の微分 ¨ § 桑村 p.66 ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 (p.25) ¦
df(g(x))
dx = df(u) du
¯¯ ¯¯
u=g(x)
dg(x)
dx , あるいは
(
f (g(x)) )
0= f
0(g(x)) g
0(x) . (17.5)
・(2) の解説 x = a の近くで
f (a + h) = f (a) + f
0(a) h + O(h
2) , (17.6) g(a + h) = g(a) + g
0(a) h + O(h
2) (17.7) となります。これより以下が得られます
f (a + h) g(a + h) = f (a) g(a) + (
f
0(a) g(a) + f (a) g
0(a) )
h + O(h
2) . (17.8)
2016 微積 I.18
.
ε [epsilon] イプシロン
一方 F (x) = f(x) g(x) とすると,
F (a + h) = F (a) + F
0(a) h + O(h
2) (18.1) となります。ただし,F (a) = f (a) g(a)。式 (17.8) と式 (18.1) の h の 1 次の係数を比べて
F
0(a) = f
0(a) g(a) + f(a) g
0(a) (18.2) となることがわかります。
・(3) の解説
y = f (u),u = g(x) とします。x = a の近くでは関数 u = g(x) は次の直線 (1 次関数) u = g(a) + dg(x)
dx
¯¯ ¯¯
x=a
(x − a) (18.3)
とほぼ等しくなります。また, b = g(a) とすると,u = b の近くでは関数 y = f (u) は直線 y = f(b) + df(u)
du
¯¯ ¯¯
u=b
(u − b) (18.4)
とほぼ等しくなります。1 次関数と 1 次関数の合成は 1 次関数となります。実際,式 (18.3) と式 (18.4) より合成関数は
y = f (b) + df (u) du
¯¯ ¯¯
u=b
([
g (a) + dg(x) dx
¯¯ ¯¯
x=a
(x − a) ]
− b )
(18.5)
b=g(a)
= f (b) + df (u) du
¯¯ ¯¯
u=g(a)
dg(x) dx
¯¯ ¯¯
x=a
(x − a) (18.6)
となります。この直線の傾き, df (u) du
¯¯ ¯¯
u=g(a)
dg(x) dx
¯¯ ¯¯
x=a
, が合成関数 y = f(g(x)) の x = a で の微分係数を表します。
注意 ! 関数 f や g と,それらの接線の差まで考慮すると以下のような導出となります;
g(a + h) = g(a) + dg(x) dx
¯¯ ¯¯
x=a
h + O(h
2) , (18.7)
f(b + ε) = f (b) + df(u) du
¯¯ ¯¯
u=b
ε + O(ε
2) (18.8)
より, ε = dg(x) dx
¯¯ ¯¯
x=a
h + O(h
2) と考えて
f(g(a + h)) = f (
g(a) + dg(x) dx
¯¯ ¯¯
x=a
h + O(h
2) )
(18.9)
= f (g(a)) + df(u) du
¯¯ ¯¯
u=b
( dg(x) dx
¯¯ ¯¯
x=a
h + O(h
2) )
+ O(ε
2) (18.10)
= f (g(a)) + df(u) du
¯¯ ¯¯
u=g(a)
dg(x) dx
¯¯ ¯¯
x=a
h + O(h
2) (18.11)
が得られます。上の式 (18.11) の h の一次の係数から合成関数 y = f (g(x)) の x = a での微
分係数がわかります。
2016 微積 I.19
2 微分の計算
.
α [alpha] アルファ exp(f(x)) = e
f(x)2.1 基本的な関数の導関数
'
&
$
%
・ x のべき ¨ § 桑村 p.78 ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 p.76 ¦
dx
αdx = α x
α−1, α は実数 . (19.1)
ただし x > 0 (α が整数の場合は x 6 = 0)。
・ 三角関数 ¨ § 桑村 p.73 ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 p.72 ¦
d sin(x)
dx = cos(x) , d cos(x)
dx = − sin(x) . (19.2)
・ 指数関数 ¨ § 桑村 p.76 ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 p.66 ¦
de
xdx = e
x. (19.3)
・ 対数関数 ¨ § 桑村 p.76 ¥ ¦
¨
§
¥ 川薩四 p.68 ¦
d log( | x | )
dx = 1
x . (19.4)
例題 2.1 指数関数と対数関数が互いに逆関数ということから成り立つ恒等式
f(x) = e
logf(x)(19.5)
を用いると,
x
α= exp (
α log(x) )
(19.6) となります。これを用いて x
αの導関数を求めなさい。ただし α は実数で,x > 0 とします。
解説 f (u) = e
u,g(x) = α log(x) とすると exp (
α log(x) )
= f(g(x)) となります。合成関数
の微分の式 (17.5) より d exp
(
α log(x) )
dx = de
udu
¯¯ ¯¯
u=αlog(x)