純財産学説の研究
−シェアーの所論を手掛りとして−
上野清貴
Abstract
Net asset theory is a theory explaining that accounting purpose is to calculate business net asset and that accounting structure is explained by a equation of A(asset) -P(liability)
= K(capital). The characteristics of this theory are; (l ) asset calculation nature, (2) meta-account nature of capital accounts, and (3) minus nature of liability accounts. The disadvantages of this theory are that (l) minus nature of liability accounts can not explain accounting facts, and (2) this
theory can not make true income statement nor balance sheet.
I まえがき
純財産学説とは,会計目的を企業の純財産 を計算することにおき,資産(積極財産)−
負債(消極財産)=資本(純財産)というい わゆる資本等式に基づいて会計構造論を展開 する学説である。勘定理論的には,これは,
複式簿記の本質が財産勘定(資産勘定および 負債勘定)と資本勘定の対立的記録計算によ
る純財産の二重表示にあるとし,しかもこれ らの勘定は物的な性質を有しているので,物 的二勘定学説と呼ばれている。
この物的勘定学説は,複式簿記の生成以来 簿記教育において一般的であった人的勘定学 説に対する批判として発生したものである。
人的勘定学説では,簿記における勘定の記録 計算対象は企業の経済財ではなく,経済財の 背後にある人との関係であり,対人的な債権
・債務関係である。そこでは,すべての勘定 は擬人化されるので,簿記におけるすべての 勘定の合理的かつ科学的な説明がつかなくな り,簿記教育の上でも次第に使用されなくな ってきた。そして,それにとって代わったの
が,勘定の計算対象を物的な経済財自体にお く物的二勘定学説にはかならない。
純財産学説は長い発展の歴史をもってい る。すでに19世紀の初頭以来,少数の論者に よって断片的ながらも主張されている。しか し,19世紀末から20世紀初めにかけてのこの 学説の全盛期における代表的な主張者として は,ベスタ(Besta),スプレーグ(Sprague),
ヒュックリ(H凸gli),シェアー(Schえr)が 挙げられ〔安平,1979b,266頁〕,さらに,そ の中でもシェアーが最も代表的な提唱者であ ろう。そこで,本稿では彼の所論を手掛りと して,純財産学説を総合的に検討していくこ とにする。
具体的には,まずシェアーの所論にしたが って純財産学説の概要を説明し,とりわけ,
この学説の基本的会計等式たる資本等式とこ れに基づく簿記記帳規則を中心に説明する。
これによって純財産学説の全容が明らかとな
るので,これに基づいて,次に純財産学説の
いくつかの特質を従来とは異なる視点から明
らかにする。そしてさらに,これらの特質を
批判的に検討するという方法で,純財産学説
に内在する固有の問題点を解明し,最後に,
純財産学説の会計構造論において果たした役 割と位置づけについて論じることにしたい。
E 純財産学説の概要
上述したように,純財産学説とは,会計目 的を企業の純財産を計算することにおき,資 産(積極財産)‑負債(消極財産)=資本(純 財産)といういわゆる資本等式に基づいて会 計構造論を展開する学説である。本節の目的 は,かかる学説の概要をシェアーの所論にし たがって説明することにあるが,その主要な 論点は,資本等式が導き出される過程の解明 とかかる資本等式を複式簿記において記帳す る規則を見出すことにある。すなわち,その 論点、は,資本等式たる会計構造の導出過程の 解明とかかる会計構造を勘定記入形式たる簿 記記帳構造に変形する規則を見出すことにあ るのである。そこで,かかることを念頭にお きながら,以下ではまず,資本等式の導出過 程から見ていくことにしよう
D1 資本等式
シェアーは,ある特定の企業に所属する す べ て の 物 的 財 お よ び 法 律 財 を 所 有 財 産 ( E i g e n t u m ) と呼び,かかる所有財産は経済 的側面と法律的側面との二面から観察される とする。経済的側面から見た所有財産は,具 体的な交換価値を有する諸経済財すなわち財 産構成部分から成り,その合計は総財産を構 成し,これは通常資産を意味する積極財産 ( A k t i v e n ) と呼ばれる。いま,各財産を α とし,その合計たる積極財産を A で表すな らば,次の式が成り立つ。
所有財産 =al + α2+α3+ …… =A しかし,所有財産を法律的側面すなわちそ の源泉から見た場合には,それは資本 ( K a p i ‑
t a l)と呼ばれる。それは財産に対する抽象 的処分力概念としてとらえられ,これを K で示すならば,次式が生じる。
所有財産=資本 =K
そして,これらのことから,次の等式が成 立する。
所有財産=積極財産=資本,
すなわち A=K
この等式は,財産構成部分の合計およびそ の具体的な積極財産とその法律的源泉として の資本とを対照表示している。すなわち,こ の等式では,ある企業の総所有財産に関して,
実体的に把握することができる経済的および 法律的有高部分の交換価値と,それから結果 した抽象概念すなわち企業の資本とが対立し ているのである ( S c h a r , 1 9 2 2 , S S . 1 3 ‑ 1 4 ; 訳書, 1 5 ‑ 1 6 頁(以下,単に頁数のみを示す) J 。
これがシェアーの出発点となる会計等式で あるが,この等式に負債概念を導入すること によって,彼は自身の基本的な会計思考を明 らかにする。その場合,問題となるのは会計 等式における負債の位置づけであり,彼はこ れを積極財産のマイナス項目として位置づけ る。その理由は次のようである。「個別経済 主体各自が信用(現在と将来の連結)によっ て相互に連結し合っている結果,すべての経 済主体においては,まったく所有財産に属し ながら A の財産部分をなし,同時に他の法 律主体に属し,将来その法律主体に対して同 額の貨幣を支払わなければならないような財 がある。それゆえに,この支払いは A より 分離して交付することによってのみなしうる のであるから,これは消極的性質を有する。
したがっていまや , A ( 積極財産)は,ただ 単に自己資本の対価ばかりでなく,将来第三 者に支払われるべきものの対価をも包含す る 。 J ( S . 1 4 ; 1 7 頁 〕
すなわち,シェアーは,負債はその返済時
において資産つまり積極財産より支払われな ければならないから,積極財産に対して消極 的な性質をもっ消極財産であるとするのであ る。この意味では,資産と負債は財産という 同じ次元に属しており,それらの積極的性質 および消極的性質においてのみ異なるのであ る。ここに,彼の負債に対する基本的な考え 方,しいては会計に対する根本的な思考が現 れているということができる。
そして,ここからさらに,負債は将来返済 されなければならないから,企業の正味の資 本つまり自己資本 ( E i g e n k a p i t a l)ではなく,
自己資本を計算するためには資産の積極財産 から負債の消極財産を控除する必要があると いう考えが生じてくる。そして,このよう にして算定されたものが純財産 ( R e i n v e r ‑ mogen) であり,自己資本と同義となる。
したがって,負債が存在する限り,純財産は ある計算量であり,資産と負債の差引高であ るということになる。
これによって明らかなように,シェアーに おいては,会計の目的は企業の積極財産(資 産)から消極財産(負債)を控除した純財産 を計算することであり,ここから彼の純財産 学説の名称が生じることになる。そして,こ の純財産学説の会計構造思考を等式で表した ものが資本等式 ( K a p i t a l g l e i c h u n g ) であり,
前述したように,彼はこれを次のように示し ている c s . 1 6 ; 1 9 頁 〕 。
A‑P=K
ここで,A は積極財産ないし資産を ,Pは消 極財産ないし負債を ,K は純財産ないし自 己資本をそれぞれ表している。この資本等式 がシェアーの基本的な会計等式であり,この 等式を基礎として,彼は企業において生じる 様々な取引の純財産に及ぼす影響を説明して いくのである。
この説明に際して,シェアーは様々な取引
を 3つのカテゴリーに分類する。それは,交 換取引,損益取引および混合取引である。交 換取引とは,財産の価値の内部に影響がある のみで,資本には変化が生じない取引であり,
損益取引とは,資本の増減に関係し,企業の 利益または損失を生ぜしめる取引である。そ して,混合取引とは,交換取引と損益取引と を同時に含む取引である。彼は,これらの取 引が発生した場合に,資本等式および純財産 がどのように変化するかを以下のように詳細 に説明している C S S .1 9 ‑ 2 0 ; 2 2 ‑ 2 4 頁 〕 。
まず,交換取引であるが,これには次の 4 つの取引事例が考えられ,それぞれの取引の 場合に基本等式 A‑P=K は次のように変化 する。
( 1 ) 資産 a n を同価値の他の種類の資産 a n と交換する場合:
A+ 仇 ‑an‑P=K
( 2 ) 負債を返済する場合(負債れの返済 のために,資産から九を分離して支出 する場合)
( A ‑ P n ) ‑( P ‑ ρ n)=K
( 3 ) 信用による住入の場合(資産および負 債がともに a m だけ増加する場合)
(A+ α m ) 一 (P+am)=K
( 4 ) ある負債と他の負債が交替する場合 (ある種の負債が ρm だけ増加し,他の 種の負債が P m だけ減少する場合)
A‑(P+ ρ m‑Pm)=K
この交換取引において特徴的なことは,等 式の左辺つまり財産の構成が変化するのみ で,右辺の資本はまったく変化しないという
ことである。このことは,交換取引の場合,
純財産が変化せず,企業において損益が発生 しないことを意味している。
次に,損益取引であるが,この場合には財
産部分の構成および額に変化を引き起こすの
みならず,純財産の増減をも招くことになる。
これにも次の 4 つの取引事例が考えられ,そ れぞれの場合に基本等式および純財産は次の ように変化する。
( 1 ) 新しい資産 gが流入する場合:
A+g‑P=K+g
( 2 ) ある種の資産 U が流出する場合:
(A‑v) ‑P=K‑v
( 3 ) 新しい負債 A が発生し,資産側の代 償がない場合:
A‑(P+ ρ n)=K‑ ρ n
( 4 ) 負債れが(贈与,遺贈等によって) 消滅する場合:
A ー (P‑ ρ n)=K+ ρ n
最後に,混合取引であるが,この場合には 上の損益取引の場合と同様に財産部分の構成 および額に変化が生じるのみならず,純財産 自体も影響を受けることになる。これには次 の 2 つの取引事例が考えられ,それぞれの場 合に基本等式および純財産は次のように変化 する。
( 1 ) 仕入価格 α の商品を売上価格 α +g で 販売する場合:
A‑a+( α +g)‑P=K+g
( 2 ) 損失 U を伴って資産 α を販売する場合 (購入価格 α の資産を販売価格 α ‑v で 販売する場合)
A‑a+( α ‑v)‑P=K‑v 2 簿記記帳規則
これまで,基本的な会計等式である資本等 式に基づいて,各取引が企業の純財産に及ぼ す影響を詳細に述べてきたが,シェアーによ れば,これらの計算方法は実際的ではなくて,
あまりに複雑であり,概観性がないので,経 済的ならびに法律的財の各カテゴリーを区別 することは困難であるし,さらにこの分類内 部で加算および減算を行うことは至難の技で ある。そこで,この困難を取り除くために,
何らかの方法を講じなければならず,そのた めに適用される最も適合的な手段が簿記にお ける勘定 ( K o n t o ) である。勘定を使用すれ ば,前項で展開した等式が,そのまま様々な 勘定の借方および貸方にも配置することがで き,そこから純財産の表示が可能になるので ある。
しかも,この勘定は複式簿記の枠内で使用 されなければならない。シェアーによれば,
「複式簿記ーすべての記帳項目を借方と貸 方の両方に記入するという外形的事実のため にこの名称があるーは,簿記係の任意に委 ねられた制度ではなくて,すべての記帳しう
る取引におけるこ重の過程を表示することの 必然的結果である。これらの取引の財産部分 ならびに資本量に対する作用を正当に表示し ようとする者は,必ずこれを複式に記帳しな ければならない。完全な記帳は,常に複式で なければならない。 J CS.23 ; 2 7 頁 〕
かかる考えに基づいて,シェアーは会計等 式たる資本等式に複式簿記を応用し,簿記に おける勘定記入規則を展開する。すなわち,
会計等式に簿記の勘定形式を適用する変形規 則を展開しようとするのである。その場合,
彼は各勘定を財産勘定系統と資本勘定系統と に分け,財産勘定系統には資産勘定および負 債勘定を包含し,資本勘定系統には開始資本 勘定,利益(収益)勘定および損失(費用) 勘定を包含し,これらの両勘定系統が対立す ることになる。そして,これらの両勘定にお いて企業の純財産を二重にしかも有機的に計 算しようとするのである。彼の勘定学説が「二 勘定学説」と呼ばれる所以である。
さらに,シェアーは各勘定系統に対してプ
ラスおよびマイナスの概念を導入し,勘定記
入規則を説明する。その場合, A‑P=K の
資本等式から出発し,これを勘定形式に変形
しようとするならば,その左辺が財産勘定で
借方を表し,右辺が資本勘定で貸方を表すの で,財産勘定においてその借方がプラスとな り,資本勘定においてその貸方がプラスとな る。したがって,財産勘定の貸方および資本 勘定の借方はマイナスとなる。これらのこと から,財産の増加はプラスで借方に記帳され,
減少はマイナスで貸方に記帳されるという記 帳規則が成立し,資本の増加はプラスで貸方 に記帳され,減少はマイナスで借方に記帳さ れるという記帳規則が生じる。したがって,
利益(収益)は資本の増加であるので貸方に 計上され,損失(費用)は資本の減少である ので借方に記帳されることになる。この意味 で,収益勘定および費用勘定は資本勘定の下 位勘定として位置づけられることに注意する 必要がある。
資本勘定の記帳規則はこれですべてである が,財産勘定に関しては,さらに説明を必要 とする。既述のように,財産勘定は資産勘定 と負債勘定から構成されているが,資産勘定
は資本等式からすると元々プラスの要素であ るので,その増加はプラスで借方に記帳され,
減少はマイナスで貸方に記帳されることにな る。また,負債勘定は資本等式からすると元 々マイナスの要素であるので,その増加は数 学的にマイナスのプラスで結局マイナスとな って貸方に記帳され,その減少はマイナスの マイナスで結局プラスとなって借方に記帳さ れることになる。
以上が資本等式に複式簿記の勘定形式を適 用した場合の勘定記入規則であるが,シェ アーはさらにこれらの簿記記帳規則を各取引 に適用し,各々の場合の勘定記入形式を示し ている。その場合,既述のように,取引は交 換取引,損益取引および混合取引に分類され るので,彼はそれらのカテゴリー毎に示して おり,さらに,等式による表示とそれを勘定 形式に変形した表示とを対比する形で示して いる。それらは次のようである ( S S . 3 0 ‑ 3 1;
3 6 ‑ 3 7 頁 〕 。 表 1 交換取引の表示
b)勘定形式による表示 a) 等式による表示
a) 資産の交換:
A+ α n‑an‑P=K 例:商品現金仕入
(借方商品/貸方現金) b)負債の返済:
(A 一九)‑ ( P 一九 )=K 例:債権者への現金支払
(借方債権者/貸方現金) c) 信用による仕入:
(A+a m) ー (P+ α m)=K 例:佐入先から商品の掛買
(借方商品/貸方債権者) d) 負債の転換:
A‑(P+ ρmρm)=K
例:支払手形の振出による買掛金の返済 (借方債権者/貸方支払手形)
a)
財 産 勘 定 借 方 + 貸方一
A P a n a n
A P P n ρ n
A P
。
ma m
A P P m │ 九
︑ ︑ ︐ ︐ ︐
・ 0
c)
d)
資 本 勘 定 借方一 貸 方 +
K
K
K
K
表 2 損益取引の表示
b) 勘定形式による表示 a) 等式による表示
a)新資産 g(利益)の流入:
A+g‑P=K+g
例:用役提供による貨幣収入 (借方現金/貸方利益・資本増加) b) 資産 v(損失)の流出:
A‑v‑P=K‑v
例:税金の支払 c)
(借方損失・資本減少/貸方現金) c) 資産を伴わない新負債九の発生:
A ー ( P + ρ n)=K‑ ρ n
例:支払不能の債務者に対する 保証債務の引受
(借方損失・資本減少/貸方債務者)
a)
財 産 勘 定 借 方 + 貸方一
A P
g
A P
U
A P ρ n
資 本 勘 定 借方一 貸 方 +
K g K
U
K ρ n
a) 等式による表示
表 3 混合取引の表示
b)勘定形式による表示 a) 利益付加 gでの販売による資産 α
の価値増加:
( 出 = α,入= α + g )
例:原価 αの商品が利益付加 gで
掛売される。 b)
[借方債務者/貸方商品 α /貸方利益 z
b)原価 α の商品が損失 U を伴って 流出の結果生じる価値減少:
( 出 =a , 入 = α ‑v)
例:額面金額 α の手形が割引料 U
を差ヲ│いて銀行で割ヲ│かれる。
[借方銀行 α ‑v 貸 方 手 形 勘 定 。 借方損失 v /
︑ ︑ ︐ ノ
LU
財 産 勘 定 借 方 + 貸方一
A P α+g α A P α‑v G
る C S S . 4 4 ‑ 4 5; 5 4 頁 J , 1 2 ) 0
以上によって,シェアーの展開する簿記記 帳規則およびその具体的な適用が明らかにな ったことと思われるが,さらに理解を完全に するために,彼の示した具体的な数値例を見 ておくことにしよう。それは表 4 のようであ
資 本 勘 定 借方一 貸 方 +
K g K
U
1 )原文では,財産計算が右側で表示され,資本計算
が左側で表示されているが,複式簿記の通常の理解
と一致させるために,ここでは財産計算を左側で示
し,資本計算を右側で示すことにした。
A 財 産 計 算
貨 幣 商 品 債 権
現金勘定 商品勘定 得意先勘定 借方+ 貸方一 借方十 貸方一 借方+ 貸方一
7 , 5 0 0
3 7 , 5 0 0
1 5 , 0 0 0
1 8 , 0 0 0 6 , 0 0 0 6 , 0 0 0
2 8 , 0 0 0 2 8 , 0 0 0 3 , 0 0 0
9 , 8 0 0 1 0 , 0 0 0
4 , 9 0 0
3 5 0
1
, 7 0 0
1 7 , 3 0 0 1 2 , 6 0 0 6 4 , 5 0 0 2 8 , 0 0 0 4 3 , 3 5 0 1 0 , 0 0 0
4 , 7 0 0
3 6 , 5 0 0
3 3 , 5 0 0
1 7 , 3 0 0 1 7 , 3 0 0 6 4 , 5 0 0 6 4 , 5 0 0 4 3 , 3 5 0 4 3 , 3 5 0
表 4 具 体 的 数 値 例
債 務 仕入先勘定 借方+ 貸方一
1 8 , 0 0 0
1 8 , 0 0 0
5 , 0 0 0
2 8 0
5 , 0 0 0 3 6 , 2 8 0
3 , 1 2 8 0
3 6 , 2 8 0 3 6 , 2 8 0
1.企業設立 1 . 現 金 2 . 商 品 3 . 債 権 4 . 債 務 5 . 純財産残高
1 取引過程 1.商品の仕入
a ) 信用買 b ) 現金買 2 . 商品の信用売
亙)売上商品の原価 ( 2 5 , OOO~
b ) 売上利益 ~ 3 , 0 0 0 ) 3
. 債務返済を受ける 1 0 , 0 0 0 現金を受取る ( 9 , 800~
現金割引 ~ 2 0 0 ) 4
. 債務返済を行う 5 , 0 0 0 現金を支払う ( 4 , 900~
現金割引 ~ 1 0 0 ) 5
. 債権に利子発生を書入れる 6
. 債務に利子発生を書入れる 7
. 現金で経営費用を支払う i l l .決 算 1.統制: 試算表:
借方合計=貸方合計 = 1 3 2 , 3 3 0 2
. 決算貸借対照表
a ) 現 金 1 決算残高勘定ヘ振替 b ) 商品有高
c ) 債 権 d ) 債 務
e ) 純利益 1 資本勘定へ振替 f f ) 新 資 本
3
. 総勘定の形式上の決算
B 資 本 計 算 C 補助計算 純財産有高: 純財産増減:
資本勘定 損益勘定 残高勘定
借方一 貸方+ 借方一 貸方+ a ) 開始残高勘定 7 , 5 0 0 3 7 , 5 0 0 1 5 , 0 0 0 1 8 , 0 0 0 4 2 , 0 0 0 4 2 , 0 0 0
6 0 , 0 0 0 6 0 , 0 0 0
3 , 0 0 0
2 0 0
1 0 0 3 5 0 2 8 0 1
, 7 0 0
b ) 決算残高勘定 4 2 , 0 0 C 2 , 1 8 0 3 , 4 5 0
4 , 7 0 0 3 6 , 5 0 0 3 3 , 5 0 0
3 , 1 2 8 0 1 . 2 7 0 1 , 2 7 0
4 3 , 2 7 0
4 3 , 2 7 0 4 3 , 2 7 0 3 , 4 5 0 3 , 4 5 0 7 4 , 5 5 0 7 4 , 5 5 0
2 )この具体的数値例において注意すべきところは最 後の箇所であり,純利益と新資本が資本勘定へ振替 えられているところである。すなわち,ここでは資 本勘定が財産勘定よりも重視される形式になってい るのである。シェアーはこれを次のように述べてい る。「特別な説明がなお資本勘定の締切りに必要で ある。貸方には,開始資本と損益勘定より転記され た純利益が現れて,貸方合計は計算された純財産を 表す。借方は,終結貸借対照表より転記された積極 財産と消極財産との差額であり,これまた表示され た純財産であり,貸方合計と一致すべきものである。
ゆえに,簿記全体の結果と同時に,その正確性の検
証は資本勘定にかかっている。 J( S c h a r , 1 9 2 2 , S .
4 8 ;訳書, 5 7 頁〕これは,シェアーが古くからもっ
ている考えであり,すでに『簿記の科学的取扱いの
試案』において現れている ( S c h a r , 1 8 9 0 , S . 3 0 ;訳
書,下巻, 2 2 8 頁〕。しかし,この考えは,財産勘定
と資本勘定において企業の純財産を二重に計算する
という彼の根本思想に反するものであり,矛盾して
くることになる。さらに,これはもう 1 つの問題を
含んでいるのであるが,これに関しては,後で述べ
ることにする。
3 複式簿記の本質
これまで,複式簿記の形式的側面について 主として述べてきたので,次に,かかる簿記 記帳規則を前提とした実質的側面について考 察してみよう。ここでは,かかる簿記記帳規 則によって作成される財産勘定および資本勘 定はどのような意味を有し,それらを統括す る複式簿記はどのような目的を有しているか ということが問題となる。これに関して,こ れまで断片的に述べてきたが,ここで改めて 体系的に確認しておくことにしよう。
既述のように,財産勘定は資産勘定と負債 勘定から構成される。資産勘定は経済的財お よび法律的財を計算対象とし,負債勘定は法 律的債務を計算対象とする。つまり,両者は 具体的な財および債務を対象としているので ある。したがって,前者から後者を控除する ことによって算定される純財産は,具体的・
実際的な純財産であるということができる。
これに対して,資本勘定は開始資本勘定と資 本増減に関する勘定たる収益勘定および費用 勘定から構成されるが,これらの勘定はそれ 自体独立した勘定ではなく,複式記入を成立 させるために,財産勘定を再度記入した抽象 的な勘定にほかならない。したがって,開始 資本勘定に収益・費用勘定を加減して算定さ れた純財産は,抽象的・計算的な純財産であ るということができる。
そして,これらの財産勘定および資本勘定 は,複式簿記における貸借複記の原則によっ て有機的に結合し,同じ純財産を一方では具 体的に,他方では抽象的に計算するのである。
換言すれば,純財産学説における複式簿記は,
企業の純財産を財産勘定と資本勘定において 二面的・同時的に計算するのであり,これが 複式簿記の目的となるのである。
この事情を,シェアーは次のように述べて
いる。「財産勘定の借方残高は積極・消極の 財産部分間の差額であり,したがってそれは,
その現実的な価値形態で表示された純財産を 示す。資本勘定の貸方残高は,計算的に確定 された開始財産とその増加(利益)を加えた ものとその減少(損失)との差額とを示し,
したがって計算された純財産あるいは自己資 本を示す。かくして,組織的簿記の究極的目 的は,純財産の複式表示にある。財産勘定の 借方残高=表示された純財産=資本勘定の貸 方残高=計算された純財産である。 J C S . 3 3 ; 3 9 頁 〕
ここで,表示された純財産とは,上述した 具体的・実際的な純財産を意味しており,計 算された純財産とは,抽象的・計算的な純財 産のことである。そして,これがシェアーの いう複式簿記の本質であり,さらに,この関 係を彼は具体的な取引事例を交えて表 5 のよ うにまとめている C S . 4 3; 5 3 頁〕九
表 5 によって明らかなように,純財産学説 における複式簿記の本質は,一方では,財産 勘定において資産勘定から負債勘定を控除す ることによって具体的・実際的な純財産を計 算し,他方では,資本勘定において開始資本 勘定に収益勘定および費用勘定を加算・減算 することによって抽象的・計算的な純財産を 計算し,これらの両計算によって企業の純財 産を二面的かつ有機的に算定することであ る。そして,前述したように,これがシェアー の純財産学説における複式簿記の究極的目的 になるのである。
3 )原文では,財産勘定が右側で表示され,資本勘定
が左側で表示されているが,注 1とまったく同じ理
由により,ここでは財産勘定を左側で示し,資本勘
定を右側で示すことにする。
表 5 複 式 簿 記 の 本 質 財 産 勘 定
経済的および法律的形態の財 産構成部分の経済的経営作用 のための増減の統制
増加│減少
+ I 一
借方│貸方
資 本 勘 定
計算量として算定された純財 産(資本)の経済的経営によ
る作用のための増減の統制 減少│増加
ー I +
借方│貸方 1.開始資本:種々の財産部分が総合されて,資本計算における
+α│ 計算量として算定されたもの 1+α
2 . 交換取引:債権の獲得,負債返済,為替手形の振出,振替転 記,商品仕入,および製品生産費用(製造価値)
+c 3 . 利益取引:例えば有価証券利子受取 1 +c
‑d 4 . 損失取引:営業費,支払利子,租税,家計費,貸倒損失等 ‑d 5 . 混合取引:利益付加による商品,製品,財の販売と換金
I+g I ‑1 I +g
b) 自己労働に対する増価,利益 g
‑v 6 . 財産構成部分価値の定期的修正 ‑v (減価償却,減価,価格下落)
引Uヤ宮包
山 町 肪
‑ 令 官 川 町
) た
庁
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