長崎大学学芸学部自然科学研究報告第15号1‑4 (1962)
核をもつ準群の単純両側イデャル
江口俊男
Simple two‑sided Ideals of a Semigroup having a Kernel By Tosio EGUCHI
前回に,単純右イヂヤルの存在とidempotentの関係を明らかにしたが,その証明の途中, イヂヤルを両側イヂヤルとすると,全く別の結果が生じることが判明した。即ち, Sが核をも つとき, Sの両側イヂヤルMもまた核をもち,それがSの核と一致するのである。之に反して,
Sの部分準群は必ずしも核をもたない。所で両側イヂヤルMが核をもつと, Mの単純イヂヤル がまたSの核をもつという, Sの構造上重要なる結果が得られた。そこで次に, Mに, M2≠
Nの条件をつけてみた。するとこの条件の下ではMは再び単純準群なることが確かめられ,且, Mの単純左イヂヤルはSの単純左イヂヤルとなるし,その道も成立することがわかった。
以下証明する。
定理l
Sを核Nをもつ準(辛)群とする。 Sの任意の両側イヂヤルMは,一つの核をもち,之はNと 一致する。
訂三明
MN=ゴN,且, NM‑Nだから,集合Nは明らかに両側イヂヤルMである。 NはMの最小両側 イヂヤルと同等だから, N′⊆NをMの一つの両側イヂヤルとすると, MN′⊆N′, N′M⊆N′, i, e, MN′M⊆N′でなければならない。然し, MN′MはSの両側イヂヤルである。従って, MN'M⊃N,となる。 N⊂MN′M⊆N′,と, N′⊆NよりN′‑N証明終り。
注意1
着LSが核をもつならば, Sの部分準群S′⊂S (Sの両側イヂヤルではない)は核をもっと は限らない。例えばS‑tO, 1, 2, ‑・つとすると,核N‑{0>である。然し,部分準 群il, 2, 3, ‑‑1は核をもたない。
注意2
本定理は,準群の構造をしら下るのに重要な手械りを与えた。というのは, Sの単純(左,右, 両側)'ィヂヤルは,定義からすべて集合Nを含む。 MをSの両側イヂヤルとすると,既に証明 したように, Mは,その核としてNを含む。従って, Mのあらゆる単純(左,右,両側)イヂ
*長崎大学学芸学部数学教室
2 江 口 俊 男 ヤルは,また,Nのすべての元を含むことになる。
所で,上記のMに,M2≠Nの条件を与えてみると,Mは単純準群となる。これは興味深い事 実だが,之に触れる前に,二,三の注意をのべたい。
注意1
M2−Nの場合は,上記はあてはまらない。何故ならば,Mのようなすべての部分集合は明ら かにMの両側イデヤルであるから。然し単純Nベキ準群は,Nと唯一つの元(Nベキ)よりな る。従って,M2=Nならばあてはまらない。
注意2
準群が,Nベキであって,同時に,Nベキでない単純両側イデヤルを含むことが出来る例を示
す。
可換準群S寓{0,の,碗,α3}を考える。核N一{0}で,群表は次の様にきめる。
0
召!
召2
α3
0
召1 α2 召30 0
0
00 0 0 0
0 0
α2
α2
0 0
α2
α2
このとき,M2={0,碗},M1={0,の}は単純イデヤルで,Ml−M2,然し,Ml呂N
注意3
M2≠Nの仮定の下では,Mは左イデヤルL,(L2⊂N)を持ち得ないことに注意せねばなら ない。若し,か玉る左イデヤルが存在すると,両側イデヤルM=(L,LS)⊃N,M2旨N,
があることになる。
然し,N⊂M一(L,LS)⊆(L,MS)⊆M。故に,M=M,M2=:Nで仮定に反する。
以上の注意に基いて説明に移る。
定理2
Sは核Nをもつとす。Sの両側イデヤルをMとし,M2≠Nとする。 このときMは単純準群で
ある。
証 明
Mが1つの両側イデヤルB,N⊂B⊂M,をもっと仮定する。集合MBM⊆B⊂M。然し,M BMは,MBMニNより,Sの両側イデヤルで・ある。
先づ第一に,MB⊆N,BM⊆Nである。集合MBは,Mに含まれるSの左イデヤルである。
(MB)2昌MBMB昌,(MBM)B冨NB⊆N l故に(注意3から)MB⊆N,同様に,B
核をもつ準群の単純両側イデヤル 5 M⊆N。
第二に,S B⊆:N⊆B,B S⊆N⊆:N⊆Bである。これが本定理を証明する。というのは,こ れらの関係は,MがSの単純イデヤルであるという仮定に反する。
S B S⊆S MS⊆MはSの両側イデヤルであるから,σ),S B S=N,または,6),S B S
=M,である。
α),SBS=Nのとき, (SB)2=SBSB=NB⊆N, (BS)2=BSBS=BN⊆N。
注意3から,S B⊆:N,B S⊆N。δ),S B S昌Mのとき,(S2B)2=S B S B=MB⊆
N,(BS)=BSBS講BM⊆N,従って,注意3から,SB⊆N,BS⊆N。これで定理
が証明された。
次に,M2≠Nの条件をつけたとき,Mの単純イデヤルは次の性質をもつ。
定理3
Sを核Nをもつ準群,MをSの両側イデヤルで,M2≠N,とする。このとき,
σ)
すべてのMの単純左イデヤルL(κ)は,Sの単純左イデヤルである。
δ)
逆に,Sのすべての単純左イデヤルL(8),(L(8)UM⊃Nを満足する)は,Mの単純左イデヤ ルである。
証 明
α)
L(だ)がSの左イデヤルなることを示せば十分である。何故なら,Mの単純左イデヤルである L(π)は,Sに於では更に単純であるから,集合Mレ(だ)は,L(忽)に含まれるMの左イデヤルであ る。故に,ML(班)一N,か,またはML(辺)=L(互)である。前者だとすると,L(κ)2=L(κ)。L(掘)
⊆ML(迎)∈N。これは前述の注意3により不可である。故に,ML(刀』L(忽)である。然し,S L(互)=SML(π)⊆ML(ど)=L(ヱ),i,e,SL(κ)⊆L(盟)これはL(盟)がSの左イデヤルであるこ とを示す。
δ)
:L(s)をSの左単純イデヤルとする。集合:L(8)∩MはSの左イデヤルで,且⊃Nである。故にL
(ε)∩M寓L(8)。Sの左イデヤルである集合L(8)は,明らかに,Mの左イデヤルである。故にL
(8)がMの単純左イデヤルであることを示せば十分である。定理2と同じ論法で証明する。
今
:N⊂B(忽)⊂L(皿)なるMの左イデヤルB(だ)が存在すると仮定する。集合MB(π)はSの左イデヤル で・次式を満足する。MB(忽)⊆B(π)⊂L。
故に,MB(財)=N。集合S B(辺)はSの左イデヤルで,S B(遅)⊆S L(8)⊆L(ε)。
L(8)の単純性を考えると,SB(κ)=N,かSB(κ」L(s)。
4 江 口 俊、 男
α)若し,SB(κ)一Nならば,N=SB(翌)⊂B(M),i,e,B(覆)はSの左イデヤルで,これはL
(s)の単純性に反する。