新潟市の紫外線照射量とオゾン層について
呑海信雄,大代由美子,佐々木博昭
Ultraviolet radiation and ozone layer at Niigata area
Nobuo DONKAI, Yumiko DAIDAI and Hiroaki SASAKI.
1.はじめに
1970年代後半よりオゾン層破壊の問題が注 目を集めだし、1985年「オゾン層の保護に関 するウイーン条約」が制定され、オゾン層を破 壊する物質についての研究と対策を進めること が定められた。さらに時を同じくして、その年 の南極域上空でオゾンの量が極端に減少するオ ゾンホール現象が観察された。これはフロンに よるオゾン層破壊説を実証するものとして国際 世論に衝撃を与え、それ以降、本格的に取り組 みが開始されることになったn。
平成16年、環境省より発表された「オゾン 層等の監視結果に関する年次報告書」によれば、
全地球的なオゾン全量は1980年以前(1964〜
1980年の平均)に比べて少ない状態が続いて おり、日本上空でも、札幌、つくば、及び鹿児 島の観測地点において長期的な減少傾向が今も 継続しており、特に高緯度域の札幌において大
きいことが報告されている2)。このオゾン層の 減少は、オゾンを破壊するCFC(クロロフル オロカーボン)類の大気中の濃度の増加が主要 因として考えられている。現在、成層圏におけ る塩素総量はピークかそれに近い状態であるが、
臭素量は依然として増加している。しかし、成 層圏のハロゲンが今後予想どおり減少するとす れば南極域のオゾン層は2010年頃回復に向か い、2050年ごろには1980年のレベルに戻ると されている。即ちここ数年は、全地球のオゾン 全量が最も少ないピークの状態にあると思われ
る2)。
成層圏オゾン層の破壊に伴い、人体に有害な 紫外光、特にUV−Bの照射量増大により皮膚 がんや白内障の増加、さらに免疫抑制などの人 体への影響が懸念されることから、日本では気 象庁が1990年よりつくばで、また1991年より 札幌,鹿児島,那覇で紫外線日射観測を実施し ている。紫外線」は波長によりUV−A(315〜
400nm)、 UV−B (280〜315nm) . UV−
C(100〜280nm)に分けられるが、 UV−A は大気による吸収をあまり受けず地表に到達し、
人体に日焼けを引き起こす。一方、UV−Bは 成層圏オゾンにかなりの部分が吸収されるが、
残りが地表に到達し、DNAなどに損傷を与え 生物に大きな影響を及ぼす3)。このことよりU V−Bについては長期的な変動の傾向を把握す る必要があるので、特に上記観測地点でUV−
Bの日積糞値を調べている。UV−C(IOO 一一 280nm)についてはオゾン層よりもさらに上空 でほとんど吸収され、地表には到達していない。
ここでUV−B量は太陽高度、雲量及びオゾ ン全量等によって変化するので、気象庁では 290〜315nmの紫外域日射量(W/㎡)の1
日分の積算値を測定している。その結果によれ ば1991年以降のUV−B量の長期的な変化傾 向は現在のところ必ずしも明瞭には現れていな い。このことは1990年以降についての日本上 空のオゾン全量に顕著な傾向が見られないこと に対応していると思われるが、1990年代のオ ゾン全量は1970年代と比較すると明らかに減 少しており、1990年代に観測されたUV−B
生活科学専攻
猷は、1970年代と比較して最大で8%程増加 していると考えられている。またWMO/UN
EP科学パネル報告i,!}(2002)によれば、南北 両半球中高緯度の10櫛折以」二の測定点で現在 1980年前半よりUV放射量が6〜14%増加し
たとされているZ)。
このような現況にあって新潟地区の紫外線の 特にUV−Bの照射量を2000年から2004年わ たって実測し、その経年変化を調べ、オゾン層
との関係を可能な限り検討することにした。
2.実験
紫外線域のUV−Aの測定には、 UV
Radiometer(E I(OCo, Ltd) を, UV−B の測定にはUV−Radiometer UV−B(Shimadzu Co. Ltd)を用いた。測定は4月から12月まで の雨天をのぞき、10時30分、12時…(又は12 時15分)と14時30分(又は15時)の特定ll寺 問の瞬間最大照射量を2000年から2004年にわ たって継続的に測定した。
3.結果と考察
新潟地域上空のオゾン量の測定は公的には行 われていないので、気象庁が測定している地点、
つくばと札1幌の観測値を参考にすることにする。
図一1に2000年6月から2004年11月までの 各観測地点でのオゾン全量の月ごとの平均値2}
の変化をプロットした。図には比較のため南極 の昭和基地での測定値もあわせて表示してあ る。昭和基地での測定結果によると、南極上空 では8月中旬ごろから9〜10月にかけて、オ ゾン全量が急激に減少している。220(matm−
cm)を目安として、それ以下の量になった時オ ゾンホールが生じたとされている。表一1に 2000年から2⑪04年までの南極オゾンホールの 規模をオゾンホールの最大面積(万k㎡)とオ ゾン破壊量(万トン)を尺度としてまとめてあ る。表よりわかるように、 2000年のオゾンホー ルは過去最大であり2003年は第2位の規模で ある、一方2002年と2004年は過去10年で最小、
そして3番目に小さい規模である。このように 南極上空ではオゾン層の大きな変動が生じてい るが、日本の札幌、つくばの観測点上空のオゾ ン全量には大きな影響が現れている様子は見ら
れない。ここで、凝潟(〜 N38°)は緯度で見 れば札幌( v N36e)とつくば(一一 N43°)の 問に位椴するので、オゾン量としては図1の札 幌とつくばの曲線の闘にあると想定される。即 ち、新潟上空では7〜9月にかけてオゾン全量 が最小値となり2〜3月に最大値となる周期で 変動しているものと考えられる。さらにその変 動幅はこの5年間ではそれほど大きくはないと 想定できる。
次に図一2A)からE)に各々2000年から 2004年の10時30分、12時(又は12時15分)
と14時30分(又は15時)に測定したUV−A とUV−Bの照射量(W/㎡)をプロットしてあ る。これら紫外線の照射量は、太陽の活動、天 候(雲量)、オゾン層の全量(厚さ)、大気混濁 度により変化する。もし、全く晴天でその他の 要因に変化がなければ、太陽高度の季節変動に 伴い、各図の測定値分庫の上側にほぼ沿った(実 線で引かれている)季節変動をするものと考え られる。実際には測定点は大きくばらついてい るが、これらは主には雲の影響である。UV−
Aはオゾンに吸収されないのでその照射量はオ ゾン層の影響を受けないがUV−Bは30Gnm 以下の範囲はオゾン層での吸収が大きく敏感で ある。しかし300〜315nmの長波長側のUV
−Bは吸収効:果があまり強くないため、280〜
315nmの範囲を含む全体としてのUV−Bの 照射量はオゾン層の変動を明瞭には表現してい ないようである。事実、UV−AとUV−Bの 照射量を比較した時、雲の影響の少ない晴天の 測定値と思われる値を結んだ図中のUV−Aと
UV−Bの曲線はその形が非常に類似している。
また、UV−Bの測定値を比較してみると・
過去最大のオゾンホールの規模を示した2000 年は7月初旬ごろ最大値を示しておりその値は 20xIO−2(W/面)を超え測定した5年間で 最も照射強度が大きい。新潟上空でもオゾン全 量が少なかったことを示していると考えられる。
一方過去二番目に大きなオゾンホールが観察さ れた2003年では、新潟でのUV−Bの最大値 は15×10−2(W/㎡)程度であり、その強 度は過去10年で最小のオゾンホールを示した 2002年の値(17×10−2W/㎡)よりも小 さいようである。このように南極でUV−Bの
新潟市の紫外線照射量とオゾン層について
照射量に影響を与える要因と新潟上空での要因 には相関はなく、さらに、つくばや札幌上空の オゾン全量の変化ともよく一致していないよう である。
次にオゾン層の影響を受けないUV−Aの強 度と、一部オゾン層で吸収されることによって 地上への照射量が減少するUV−Bの強度比を
とって、その経陣変動を調べてみたeこの比は オゾン層の量に相関した情報を示すものと期待 されるので、その計算結果を図一3に示して ある。しかしながら、2000年の結果を除けば、
ほぼ同じような数値を示しており、この比を利 用して瓢潟上空のオゾン全量の変動を推測する
ことも困難のようである。以上これまでの結果 を総合的に判断すれば、新潟上空のオゾン層の 変動によるUV−B照射量の変動を、つくばと 札幌のオゾン全量の測定値を利用して解釈する には情報は不十分であり、むしろ新潟地域での オゾン全量の直接測定が必要であることを示し ていると結論できる。
4.まとめ
人間の生活活動から排出されたクロロフロル カーボン(CFC)類が地球表面を覆うオゾン 層を破壊したことにより、生物に重大な影響を
与えるUV−Bの照射量が増加している。新潟 地域のUV−Bの照射量測定値をつくばと札幌 上空で気象庁が測定しているオゾン全量の値を 使って理解することを試みたが、良い相関を得 ることができなかった。このことより、人体へ の影響を調べ検討していくためには、薪潟地域 で継続的にUV−Bの照射量を実測することが 必要であり、その測定結果に基づいて議論しな ければならないことが重要であると結論した。
5.文献
1) 地球環境キーワード事典 、環境庁地球環 境部編集、中央法規出版、1997
2) オゾシ層観測速i報 、気象庁オゾン層情i報
センタ■一一一
3) オゾン層破壊 環境庁地球環境部監修、中 央法規出用更、 1995
付記 紫外線照射量の測定は、2000年は西田綾 香、長谷川香、2θ01年は白根加央里、藤田里菜、
2002年は平木智美の各氏が生添科学研究の一 部として行ったものである。
表一1 南極上空でのオゾンホールの規模2)
年度
2000 2001 2002 2003 2004 オゾンホールの最大面積
@ (万km2) 2,918 a678 2,054 2,917 2,423 オゾン破壊量
@(万トン) 9,622 8β41 6,080 91960 7β38
備考 過去1番
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過去10年で
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図一一 1 札幌,つくば、昭和基地で測定されたオゾン全量の変化
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図一2 新潟県周辺で測定されたUV照射強度
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図一・ 3 紫外線照射強度比(UV−B)/(UV−A)の変化