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韓国における障害者差別禁止法の提案 : 保健福祉 部案を中心に

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(1)

韓国における障害者差別禁止法の提案 : 保健福祉 部案を中心に

著者 玉村 公二彦, 佐藤 和美

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 55

号 1

ページ 87‑100

発行年 2006‑10‑31

その他のタイトル A Proposal for Introducing the

Anti‑Discrimination Legislation for People with Disabilities in Korea

URL http://hdl.handle.net/10105/244

(2)

1.はじめに−障害者差別禁止法制の類型と 韓国の位置

国際的な障害者法制において,1990年代以降,障害 に基づく差別を禁止する法制の成立が特徴となってい

る.障害者法制に関する国際比較研究を精力的に行って きたテレジア・デーゲナー(Theresia Degener)は,そ れぞれの国の障害者法制を比較,検討し,障害者差別禁 止への法的アプローチの4類型を以下のように分類して いた1)

韓国における障害者差別禁止法の提案

─ 保健福祉部案を中心に ─

玉 村 公二彦・佐 藤 和 美*

奈良教育大学教育実践開発講座(特別支援教育)

(平成18年5月8日受理)

A Proposal for Introducing the Anti-Discrimination Legislation for People with Disabilities in Korea

TAMAMURA Kunihiko and SATO Kazumi

*

(Department of Special Needs Education, Nara University of Education, Nara 630-8528, Japan)

(Received May 8, 2006

Abstract

This paper aims to show and examine the Korean Disability Discrimination Bill which has been discussed both in disability groups and in Korean Government. The purpose of the bill is to prohibit discrimination against people with disabilities and to protect their Rights.

Although Korean approach for tackling the disability discrimination has been based on the Social Welfare Act for People with Disabilities, disability groups have recognized the weakness of the approach in comparison with the international trend of disability discrimination law. The Disability Discrimination Acts Solidarity in Korea(DDASK), which is pan-association of Korean PWD groups, was formed on April 2003. PWD groups in Korea have continuously acted and had a draft of disability discrimination legislation. In response to activities by DDASK, the govern- ment planed to propose the disability discrimination bill of version which has been prepared in the Ministry of Health and Welfare. The draft by the Ministry of Health and Welfare consisted of 50articles.

As the result of the government decision, the Health and Welfare vice minister announced the Korean government officially decided that Disability Discrimination legislation would be includ- ed in the processing discrimination law of the National Human Rights Commission of Korea.

Key Words: anti-discrimination legislation for peo- ple with disabilities,

disability discrimination bill, Korea

キ−ワ−ド: 障害者差別禁止法制,

障害者差別禁止法案,

韓国

*熊本県御船町立小坂小学校

(3)

q刑法による差別禁止規定2)

w憲法による差別禁止規定3)

e社会福祉法等による差別禁止規定4)

r市民的差別禁止法5)

デーゲナーとクィン(Degener and Quinn)によれ ば,刑法によるアプローチは,加害者の善意からの行為 には適用されがたく,実質執行が行われにくいこと,憲 法規定によるアプローチは,その国の最高法規であるこ とから法的規範として重要な意味をもつが,一方,憲法 による訴訟が難しく,民間の間での問題に規範以上の効 力がないこと,なによりも,障害や差別の定義なしに規 定がなされており広範囲で,曖昧であることなどの問題 点をもっていると指摘されている6).また,社会福祉法 等によるアプローチは,障害の予防やリハビリテーショ ンなどの支援サービスを規定するものであるが,従来の 医療モデルをその前提的な考え方にしており,障害に基 づく差別の禁止規定は曖昧で,分野も限られているとい う点が指摘されている.これに対して,市民的差別禁止 法は(民事法的アプローチ),適用範囲に関してより詳 細に規定し,差別や平等についての定義をそなえ,差別 禁止の実施機関を規定するものであり,市民権・人権の モデルをもとに,障害に基づく差別を実質的に禁止する 実効性をもつ積極的な法的アプローチとして評価されて いる.

以上のような類型研究は,障害者差別禁止規定がどの ような性格の法律に内包されているかを示しているが,

1990年代以降の世界的な障害者法制の動きは,単独の 市民的差別禁止法がめざされる方向が顕著であることを 示している.

こうした傾向は,本稿で取り上げる韓国においても確 認することができる.すなわち,上記の研究において韓 国は,社会福祉法などによる差別禁止規定の類型と市民 的差別禁止法の類型に入れられているが,このことは,

韓国の障害者福祉法に差別禁止規定があること,障害者 雇用促進法および特殊教育振興法に差別禁止規定がある ことを根拠としている.しかし,教育・雇用の分野での 差別禁止規定であっても,後者は単独の障害者差別禁止 法とはいえない.このような部分的な差別禁止規定では 十分でないとして,韓国においては,単独の障害者差別 禁止法が模索されてきた.すなわち,2002年の大統領 選挙において,盧武鉉が障害者差別禁止法制定を公約と してかかげ大統領に当選して以降,障害者差別禁止法制 定の動きは加速度をつけ,障害者団体の連合体から障害 者差別禁止法案が提起され,2005年には国会において 発議されている.

各国の障害者法制も形成過程的に捉えられる必要があ るが,本稿では,韓国の障害者差別禁止法案の形成過程 をトレースすることを課題とする.これまで,韓国にお

ける障害者政策や法制についての研究は多くはない.ま た,ここでとりあげる障害者差別禁止法についての紹介 はほとんどといってなされてこなかった.したがって,

本稿では,障害者差別禁止法案そのものの紹介をも重視 している.さらに,民間側の障害者差別禁止法案の提案 と韓国保健福祉部による障害者差別禁止法政府案原案の 対比をおこないながら,韓国における障害者差別禁止法 の提起しているものを明らかにしていきたい.なお,韓 国においては,「障害者」は「障碍人」と記されるが,

本稿では特別な場合以外「障害者」と翻訳・表記してい ることをあらかじめ記しておきたい.

2.韓国における障害者施策と障害者の人権

2 1 韓国の民主化と障害者施策

第二次世界大戦後,韓国は,日本の植民地支配から解 放された後,南北の分断統治,朝鮮戦争を経て,貧困,

独裁政治,クーデター,軍事政権,民主化運動,経済破 綻と再生といった波乱に満ちた歴史をたどってきた7)

朝鮮戦争後,1960年代はじめ軍事クーデターによっ て政権をとり,大統領となった朴正煕による長きにわた る軍事政権が成立する.経済的には,1960年代後半か ら,工業と輸出に力点をおいた経済成長路線による経済 の復興をはかるが,同時に,人権と民主主義を求める市 民運動・社会運動を弾圧・排除し,政治的にも独裁体制 も強化した.197910月,朴正煕は射殺されたが,非 常戒厳令とその拡大という形でクーデターをおこした新 軍部が政権を掌握し,1980年,全斗煥が大統領となり 圧政を継続させた.国際障害者年に対応して,「心身障 害者福祉法」が1981年に制定されたが,それまで皆無 の状態であった障害者施策がようやく開始される状況で あった.新軍部政権は,人権と民主主義を敵視し,学生 運動,市民運動,労働運動などの社会運動は弾圧されて いった.しかし,1980年代後半,大統領直接選挙制度 を求め,全国的な社会運動が本格的に展開されることに なる.1986年6月,韓国現代史上,最大の反独裁民主化 運動と評される「6月抗争」によって,制度的な民主主 義の実現にむけた新憲法の採択が結実する.

1987年の大統領選挙によって選出された盧泰愚は,

新軍部を引き継いだが,しかし,民主化に流れに合った 政治をとらざるを得なくなっていた.障害者施策の分野 では,1989年,「心身障害者福祉法」を全面的に改定し て「障碍人福祉法」が制定された.また,これと関連し て,1990年には「障碍人雇傭促進法」も制定された8) 特に,「障碍人福祉法」は,福祉法という形で,非差別 規定をともなって障害者の人権の保障へアプローチし,

障害者に対する総合的な施策の基礎となるものであっ た.障害者法制の整備は,1992年におこなわれた大統

(4)

領選挙によって,金泳三が大統領となり,文民政権が誕 生しても継続する.金泳三政権は,軍部の政治的影響力 の払拭をおこないつつ,民主化政策を実行していく.障 害者分野では,1994年,「特殊教育振興法」が全面的に 改定され,差別の禁止も含めて韓国障害者教育の基礎を 築くものとなった.さらに,1996年,障害者福祉に関 する特別の委員会を立ち上げ,1998年から2002年まで の「障碍人福祉発展5カ年計画」を策定した.この計画 は,障害者の完全な社会参加と平等をめざしたものであ った.

1997年,金大中の大統領選出によって成立した国民 政権は,金融危機の克服を行いつつ,国民生活における 民主主義と人権の保障を強調した.金大中政権は国家人 権委員会を設置し,貧困層へのセーフティネット,男女 差別禁止法の制定,女性部の発足など女性の地位改善な どの施策を展開していく.障害者分野でも,金泳三政権 下で作成された「障碍人福祉発展5カ年計画」を実施し つつ,1997年には,「障碍人・老人・妊産婦等の便宜増 進保障に関する法律」が制定されるとともに,1999年 には「障碍人福祉法」「障碍人雇傭促進法」の改正を国 会に上程し,2000年には新たな「障碍人福祉法」「障碍 人雇傭促進及び職業再活法」が公布されている.

2002年選挙によって盧武鉉が大統領に選出された.

人権派弁護士として活動してきた盧武鉉は,人権をより 一層明確に掲げ,障害者分野では差別禁止法の制定を公 約に掲げていた.盧武鉉政権においては,障害者の権利 を基盤とする障壁のない統合的社会の実現を目標とする

「第2次障碍人福祉発展5カ年計画」(2003−2007年)

が実施されるとともに,障害者の人権へのアプローチと して障害者差別禁止法が広範に議論されていくこととな 9)

2.2.「障碍人福祉法」と障害者の実態

韓国における政権の変遷が,軍事政権から,文民政権,

国民政権へと発展する中で,韓国における障害者施策も 発展してきており,障害者施策は政治的な民主主義と人 権の保障の流れと相補して進展してきたことがみてとれ た.とりわけ,1989年の「障碍人福祉法」の成立以後,

「障碍人福祉法」が,総合的な障害者施策の基礎におか れている点で注目される.さらに,差別禁止規定も含ま れており,障害者差別禁止法の議論をする前提として,

「障碍人福祉法」の内容をみておくこととしたい.

1989年に成立した「障碍人福祉法」は,狭義の福祉 のみならず障害者施策全体にかかわる総合的な法律であ 10)

「障碍人福祉法」第1条は,「障碍人対策に関する国 家,地方自治団体等の責務を明確にして,障碍発生の予 防と障碍人の医療,訓練,保護,教育,雇用の増進,手

当の支給等,障碍人福祉対策の基本になる事業を定める ことによって,障碍人福祉対策の総合的推進を図り,障 碍人の自立あるいは保護に関して必要な事項を定めるこ とによって,障碍人の生活安定に寄与する等,障碍人福 祉に寄与することを目的とする」と規定している.すな わち,障害の発生予防,医療・保護,教育,職業指導,

住宅,文化環境の整備,経済的負担の軽減,自立訓練,

雇用の促進,リハビリテーション(再活),便宜施設,

手当,福祉施設などを条項として規定しており,法のカ バーする領域は障害者の生活と関わる広範囲にわたるも のとなっている.

また,第2条では,障害者を定義して, 「この法で いう『障碍人』とは肢体障碍,視覚障碍,聴覚障碍,言 語障碍又は精神遅滞等精神的欠陥(以下「障碍」という)

により長期間にわたり日常生活又は社会生活に相当な制 約を受ける者とし,大統領令で定める基準に該当する者 を言う」としている.1999年の改正による2000年施行の

「障碍人福祉法」では,この条を分割し,第2項におい て,身体的障害と精神的障害の定義を付け加えた.具体 的には,身体的障害は,a身体機能の障害として,肢 体障害,脳病変,視覚障害,聴覚障害,言語障害,s 内部機関の障害として,腎臓障害,心臓障害があげられ ており,精神的障害として,a精神遅滞,s精神障害,

d発達障害(自閉)の10種類があげられてきた.さら に,2003年から,肝機能障害,呼吸機能障害,癇疾障 害,顔面醜形障害,直腸・膀胱機能障害の5つが加えら れ,障害の範囲が拡大された.障害の概念は,医療的に 細分化されて具体化されていることが特徴である.

1989年の「障碍人福祉法」第3条は,「個人の尊厳等」

を規定していた.すなわち,差別の禁止を含む次の3点 を示していた.

a障害者は個人としての尊厳と価値を尊重され,こ れに相応する処遇を受ける.

s誰でも障害を理由に政治的・経済的・社会的・文 化的生活の全ての領域において差別を受けない.

d全ての障害者には国家・社会を構成する一員とし て政治・経済・社会・文化その他全ての分野の活動に参 与する機会が保障される.

同法は,障害者の人間としての尊厳の実現と完全な社 会参加のために,障害者の新たな福祉ニーズに対応した 障害者福祉政策の効率的な遂行を図るとして,1999 に改正された.障害者福祉調整委員会,情報へのアクセ ス,障害者補助犬など新しい条項を新設した「障碍人福 祉法」(2000年施行)では,差別の禁止などを定めた内 容は第8条に移動して規定されている.また,先に述べ たが,この改正にともなって障害の範囲も拡大された.

韓国では,「障碍人福祉法」に基づいて,障害者は登 録制となっており,それに基づく手帳の制度が機能して

(5)

いる.2003年度で登録障害者は,145万人強となってい 11).この人数は,推定障害者数の80%弱であり,ま た障害者の出現率は3%程度という低い水準となってい る.韓国における法律は制度の具体を示すというより努 力目標を示す傾向があり,「障碍人福祉法」においては,

総合的に障害者施策が規定されているが,その実際は必 ずしも十分に実施されているわけではない.障害者のた めの地域生活のためのサービスや所得保障制度は確立さ れていない.雇用の分野では,法定雇用率が2%となっ ているが達成されておらず,障害者の平均賃金は全体就 業者の半分にも満たないと指摘されている.

このような障害者のおかれた実態を克服し,「障碍人 福祉発展5カ年計画」の目的ともされた障害者の権利を 基盤とする障壁のない統合的社会の実現のためにも,障 害者と関係者のより強力な運動とそれに応える障害者政 策が求められる.その一つが障害者差別禁止法の実現と いう目標だったのではないだろうか.

3.韓国における障害者差別禁止法案の提起−

保健福祉部案を中心に

3.1.経過

2003年,慮武絃大統領のもとで,差別禁止法制定の 動きは一挙に具体化する12).金大中大統領の下で設置 された国家人権委員会が,20031月から,差別禁止法 制定推進委員会を構成して,差別禁止法試案作業を進行 させたこと,また,大統領諮問委員会の一つとして「貧 富格差・差別是正委員会」が設置されたこと,民間の障 害者団体側では,20034月,障害者差別禁止法制定推 進連帯を正式に発足させ,障害者差別禁止法を模索して いったことである.

とりわけ,障害者差別禁止法制定推進連帯(以下,障 推連)は,韓国の主要障害者団体・市民団体が立場の違 いを超えて組織されたもので,当初参加団体は57団体 だったが,2005年現在では63に増えている.障推連の 正式発足に先立ち,同年3月には「障推連法制定委員会 組織委員会」が設立され,具体的な法案作成作業に入っ た.障推連は正式発足以来,精力的に活動を行った.発 足年の6月から10月までの4か月で公聴会1回,連続公開 シンポジウム9回を開いていた.これは,障推連自身の 法案作成のための意見集約と差別禁止法に対する社会的 関心を喚起させる目的があった.

2004年3月には障推連法制定委員会から「障碍人差別 禁止及び権利救済等に関する法律」案が公開され,その 後,障推連の正式案の土台となった.障推連の動きに対 応して,20046月には保健福祉部から「障碍人差別禁 止法」政府案の原案(保健福祉部案)が公開され,政府 案として発議するよう準備がなされた13)

3.2.保健福祉部の障害者差別禁止法案

保健福祉部「障碍人差別禁止法案」(以下,障害者差 別禁止法案ないし保健福祉部案)を,資料1に示した.

障害者差別禁止法案は,以下の7章50条によって構成 されている.

第1章 総則(第1条から第6条)

第2章 障害者差別禁止と合理的配慮(第7条から第 15条)

第3章 障害者差別禁止委員会(第19条から第38条)

第4章 履行強制金等,履行確保手段(第39条から 第40条)

第5章 訴訟による権利救済(第41条から第43条)

第6章 補則(第44条から第45条)

第7章 罰則(第46条から第50条)

付則

総則では,目的,定義,差別の禁止などが規定されて いる.総則では,「全ての生活領域で障害を理由とする 差別を禁止し,障害者を積極的に保護する措置をとって,

障害者が自己決定権に基づいて平等に社会に参加し,障 害者の社会統合を実現することを目的とする」としてお り(第1条),障害者の差別禁止,積極的保護の措置,

社会参加と社会統合を規定している.さらに,障害者の 定義では,通常の障害者とともに障害のおそれもあるも のも含めている(第2条).障害者の差別を受けない権 利では,国と地方自治体の障害を理由とした差別の禁止 と合理的配慮義務を規定するとともに,女性障害者に対 して特段の留意を促している(第3条).差別行為とし ては,「直接的・間接的に障害を理由に分離・区別措置 もしくは不利益(が加えられること)」と規定されてい る.ただし,積極的な措置としての合理的配慮を障害者 に対して提供することは差別とはみなされない.先に述 べたように,積極的な措置は,この法律の目的ともなっ ており,合理的配慮の義務が規定されているのである.

したがって,国は,事業主,学校,施設などに合理的配 慮のために技術的財政的支援をしなければならないこと が規定されている(第5条)

総則での,差別の禁止と積極的な措置,とりわけ合理 的配慮の規定を踏まえ,第2章で障害者差別の禁止と合 理的配慮を分野ごとで規定している.すなわち,雇用,

教育,公共施設及び交通手段利用,情報通信,行政及び 司法手続き,選挙の各分野での差別の禁止と合理的配慮 が規定されているのである.これらの各分野の条項それ ぞれは,たとえば,雇用の分野は2条で構成されるな ど,他の国の障害者差別禁止法と比して詳細な規定とは いえず,簡明な規定にとどまっている.

第3章は,障害者差別禁止委員会が規定されており,

この法律に関する勧告,調査と救済などを規定するもの となっている.続いて,第4章では,履行強制金等 履行

(6)

確保手段を規定し,第5章は,訴訟による権利救済な ど,障害者への差別を禁止するメカニズムを規定したも のである.第6章は,補則であり,第7章は罰則を示し たものである.

以上,保健福祉部案の障害者差別禁止法案の概要を示 したが,この保健福祉部案の特徴について検討しておき たい.

まず,第一に,保健福祉部案が下敷きとなって障害者 差別禁止法の政府案が作成されるという点で,国として 障害者差別禁止の方向を具体的に提示する基礎となった ことの重要性である.東アジアにおいて単独の障害者差 別禁止法をもつ国は未だないのであり,韓国政府として 案としてであっても障害者差別禁止法の具体を持ってい ることに意義があることを指摘しておきたい.

第二に,保健福祉部案全体についてであるが,これま での障害者福祉を中心とした現行制度をもとに考えられ ていることである.先に示したように,「障碍人福祉法」

において,すでに包括的な形で差別禁止規定が挿入され ており,福祉のみならず他の生活分野における障害者施 策が組み込まれていた.また,特殊教育振興法において も,教育上における差別禁止の規定がおかれていた.障 推連からは,保健福祉部案の障害者差別禁止法は,従来 の「障碍人福祉法」とあまりかわらず,独自性がないと いう批判がなされている.

第三に,障害に基づく差別の禁止と積極的な措置とし て重要視されるのが,各分野での「積極的な措置」とし ている「合理的配慮」の概念である.この差別禁止法案 は,「合理的配慮」を全面に出している点は,他の国の 障害者差別禁止法と比して特徴となっている.しかし,

この「合理的配慮」の概念は,総則等において定義はな く,この第2章の各分野での具体化の条項を見る限り,

障害者を保護し,社会参加を支えるような「特別な措置」

も含まれているように思われる.たとえば,教育でいえ ば「統合教育」のみならず「特別教育」も含まれている

(第2章第2節).障害者に対する積極的な措置の重要性 は否定しないが,積極的な措置のすべてが「合理的配慮」

ではない.「合理的配慮」の概念は,通常の環境での障 害のある人の参加と活動という特定の状況における支援 を想定しているということである.この点で,概念上の 混乱が見られるともいえる.

しかし,いずれにしても保健福祉部の立場は,先に大 まかな内容の法案をつくっておいて,修正を加え得てい くということであり,保健福祉部案の障害者差別禁止法 案はそのたたき台としての役割を果たすものであった.

3.3.障害者団体側からの批判と対案の提起

障推連は,保健福祉部の障害者差別禁止法案に対して,

障害者団体が求めている差別の類型のカタログ化には程

遠いこと,懲罰的賠償制度が盛り込まれていないこと,

内容・構成が福祉法に手を加えただけであるという批判 を展開した14).すでに,障推連法制定委員会によって,

民間側の法案の一定の内容は作成されていた.障推連は,

民主労働党と調整をはかりつつ,20058月に最後の立 法公聴会を開催し,200510月,障推連全体の正式な 案として「障碍人差別禁止及び権利救済等に関する法律」

案を公開した15).この法案は,第1章から6章までの104 条と補則3条からなり,教育,雇用,情報アクセスなど 分野ごとに章が構成され,「差別禁止」「正当な便宜提供 義務(合理的配慮)「差別みなし行為」等の項目から構 成されているといわれている.

障推連の法案は,保健福祉部案に規定されていない部 分を持ち,その意味で保健福祉部案への批判ともなって いる.障推連と保健福祉部案の比較を表1に示した.具 体的には,保健福祉部案では,具体的な条項を欠き,法 律として不十分性を残していると指摘されている16)

第一に,総則部分では,定義として「障害」「障害者 関連者」「正当な便宜供与(合理的配慮)「積極的措置」

を規定していないこと,差別や自己決定及び選択の保障 の条項を欠いていることである.

第二は,差別禁止の各分野に関する以下のような詳細 があげられている.

・雇用では,積極的措置の義務については具体的言及 がないこと,医学的検査の禁止,差別とみなす行為,

例外についての条項がないこと.

・教育では,積極的措置の義務,差別とみなす行為,

例外についての条項がないことこと.

・建築物,施設の利用とアクセスについては,定義,

差別とみなす行為の条項がない.

・移動及び交通手段の利用も定義,差別とみなす行為 の条項がないこと.

・意志疎通及び情報アクセスも定義,差別とみなす行 為の条項がないこと.

・サービスの提供,文化,体育の節・条項がないこと.

・司法行政に関しては,定義を欠き,手話通訳士への 言及など具体的でないこと.

・性,家庭・家族・施設,暴力に関する節・条項がないこと.

第三は,実施メカニズム,訴訟などに関することであ る.障害者差別禁止委員会については,小委員会などの 細かな規定を欠くこと,調査と救済に関しては,政策,

改善・是正勧告などの条項を欠き,訴訟の提起や告発な どの条項がないことである.また,最大の問題は,損害 賠償の条項が欠如していることである.

障推連の障害者差別禁止法案は,野党民主労働党議 員によっては20059月の定期国会で発議されることと され,保健福祉部案を土台にする政府案との間で論戦 が期待された17)

(7)

処理結果の公開  ○  × 

資格詐称の禁止  ○  × 

補則  秘密漏洩の禁止  ○  ○ 

類似名称使用の禁止  ○  × 

公務員等の派遣  ○  ○  委員会協議事項はない 

損害賠償と  損害賠償  ○  ×  一番必要な部分がない 

立証責任  立証責任  ○  ○  総則で簡単に言及 

差別行為  ○  ○ 

業務妨害  ○  ○ 

罰則  資格詐称  ○  ○ 

秘密漏洩  ○  ○ 

緊急救済措置妨害  ○  ×  罰則適用においての公務員  ○  

表1 障害者差別禁止法案の比較(障推連案と保健福祉部案) 

章  節  項  障推連  保健福祉部  保健福祉部へのコメント 

目的  目的  ○  ○ 

障害  ○  × 

障害者  ○  ○ 

定義  障害者関連者  ○  × 

総則  正当な便宜の提供  ○  × 

積極的措置  ○  × 

差別規定  ○  × 

差別禁止  ○  ○ 

自己決定権及び選択の保障  ○  × 

国家及び自治体の義務  ○  ○  宣言的規定・障害者権連方途の対外がない.積極的措置なし 

差別禁止  ○  ○ 

積極的措置の義務  ○  ×  具体的な言及なし 

雇用  障害のある勤労者の参加権  ×  ○  労者間の協議づくりの強制力に乏しい  医学的検査の禁止  ○  × 

差別と見なす行為  ○  × 

差別禁止の例外  ○  × 

差別禁止  ○  ○ 

教育  積極的措置の義務  ○  × 

差別と見なす行為  ○  × 

差別禁止の例外  ○  × 

建築物・施設  定義  ○  × 

差別禁止  利用とアクセス  差別禁止  ○  ○ 

差別と見なす行為  ○  × 

サービスの提供  ○  × 

文化  ○  × 

体育  ○  × 

司法行政権  定義  ○  × 

差別禁止  ○  ○  手話通訳士の言及具体性なし 

参政権  ○  ○ 

母父性権  ○ 

○ 

× 

  ×  

家族・家庭・施設  ○  × 

健康権  ○  × 

暴力  ○  × 

女性障害者  差別禁止  ○  × 

国家及び自治体の義務  ○  ○  宣言的規定言及 

設立と独立性  ○  ○  共に大統領令傘下規定言及 

業務  ○  ○ 

委員会構成  ○  ○ 

委員長の責務  ○  ○ 

委員長及び委員任期  ○  ○ 

障害者差別  委員の身分情報  ○  ○ 

禁止委員会  委員欠格理由  ○  ○ 

兼職禁止  ○  ○ 

小委員会  ○  × 

会議議事及び議決の定足数  ○ ×  

諮問機関  ○  × 

事務所  ○  ○ 

委員会組織と運営  ○  ○  政策及び慣行改善、是正勧  ○ ×   障害者人権資料室  ○  ×  裁判所及び憲政に対する意  ○ ×  

報告書作成等  ○  ○ 

国家機関との協議  ○  ×  材料提出及び事実調査  ○  × 

公聴会  ○  × 

陳情  ○  ○ 

他の具体的手続と移送  ○  ×  捜査機関と委員会の協調  ○  × 

調査と救済  調査方法  ○  ○  似ている 

委員の除籍  ○  × 

陳情の棄却  ○  ×  陳情の却下言及 

調整委員会設置と構成  ○  ○  両方とも似ている 

調整  ○  ○ 

緊急救済措置要求  ○  ○  措置勧告水準に止まる 

是正勧告  ○  ○  具体的施行勧告の内容はない 

是正命令  ○  ○ 

意義申請  ○  ○ 

訴議提起  ○  × 

告発及び懲戒勧告  ○  ×  強制的事項  被害者のための法律構造  ○  × 

調査と調整の非公開  ○  × 

(8)

4.おわりにかえて−韓国障害者差別禁止法案の その後

2005年9月以降,定期国会において,障害者差別禁止 法案の上程と審議は結果としては行われなかった.

保健福祉部案と障推連案が出された段階で,法律問題 は法務部(法務省に相当)で扱うべきとする根強い主張 が政府内部から出されてくる.その底流としてあったの は,国家人権委員会による,包括的な差別禁止法案の作 成の進展である.すでに,国家人権委員会は,20031 月から差別禁止法制定推進委員会を構成して,差別禁止 法試案作業を進行させてきた.条文作成チームの,条文 化作業,外部専門家懇談会や人権委員会による各個別意 見聴取などを通じて200410月差別禁止法試案を用意 していたのである.通常国会において,この国家人権委 員会は,すべての領域での包括的差別禁止法の立法を 200512月以降から本格的に推進する計画を明らかに した.そして,政府は,この国家人権委員会の提起する 包括的差別禁止法の中に,障害者の差別禁止規定を入れ 込むことを決定した.国会の保健福祉委員会において,

保健福祉部の担当大臣も政府の決定をアナウンスし,単 独の障害者差別禁止法案の提出と審議は停止されること となった18).単独障害者差別禁止法案の上程の停止と 各分野の共通公約数的な差別禁止法の制定の方向をとる 国家人権委員会の動きに対応して,法務部は,2005 末 , 人 権 保 障 を 大 幅 に 強 化 す る こ と を 目 的 と し て

「2006年人権ビジョン」を発表し,2006年度計画を明ら かにしている.

単独障害者差別禁止法を志向した韓国の経験は,現在 の所成功していない.障害者の差別禁止条項が,より包 括的な差別禁止法に挿入されることによって,女性など 他の人権分野との共通項にくくられてしまうという点で は,障害者問題の固有性への配慮が十分でなくなること は明白である.しかし,障害者団体が差別禁止法案を作 成し,また,政府の保健福祉部もまた差別禁止法案を作 成するという歴史的な事業があったこと,そして国会へ 上程される段階までいたったことは重要である.

国際的に見ても,障害に基づく差別の禁止条項を挿入 した憲法や人権法をもつ国の類型は存在している.そし て,そのような国においても,憲法や人権法のみの差別 禁止規定では十分でないことから,単独の障害者差別禁 止法を模索する動きが存在している.また,単独の障害 者差別禁止法をもつ国においても,憲法や人権法におい て障害に基づく差別の禁止が規定されている国も多い.

このように,一般的な差別禁止法や憲法・人権法と単独 の障害者差別禁止法は両立しないものではない.

国連において障害者権利条約の審議が続くなかで,障 害者の権利の保障や差別の禁止へ向けた国際的な動きは

大きくなっている19).このような障害者の権利と差別 の禁止に関する国際的な動きに呼応しながら,これまで の障害者差別禁止法の議論の到達点に立って,韓国にお いても新たな模索が試みられると思われる.そのような 新たな模索に今後も注目していきたい.

附記

本論文は,差別禁止法案を中心とした韓国の資料の収集 と翻訳を佐藤和美が担当し,その翻訳をもとに,全体の 整理・分析を玉村公二彦が行った.なお,本論文は,科 学研究費補助金基盤研究(C)「障害者差別禁止法におけ る『合理的配慮』規定の実効性に関する比較社会学的研 究」(研究代表者玉村公二彦)の成果の一部である.

資料1 韓国保健福祉部「障害者差別禁止法案」

1章 総則

第1条(目的)

この法は全ての生活領域で障害を理由とする差別を禁止し,

障害者を積極的に保護する措置をとって,障害者が自己決定権 に基づいて平等に社会に参加し,障害者の社会統合を実現する ことを目的とする.

2条(障害者の定義)

障害者は身体的・精神的および心理的要因に因って長期間正 常な日常生活・職業生活および社会生活ができず,社会参加の 機会が阻害されているものを言う.障害のおそれがある者も障 害者とする.

第3条(障害者の差別を受けない権利,女性障害者に対する特 別な配慮)

1)国家と地方自治体は障害を理由に障害者を差別してはな らず,障害者が正常な生活をできるように合理的な配慮をし なければならない.国家は障害者が司法関係で障害を理由に 差別を受けず,合理的な配慮を受けられるように措置をしな ければならない.

2)国家と地方自治体は女性障害者が差別を受けないように 特別に配慮しなければならない.

4条(差別行為と合理的な配慮義務)

1)障害者は全ての生活領域で直接的・間接的に障害を理由 に分離・区分措置もしくは不利益を受けない.障害を理由に した間接的な不利益とは障害を明示的な理由とする不利益で はないが,事実上障害者が満たすことにできない基準によっ て不利益が加えられることを言う.

(2)障害者を差別したと認定された者は該当の差別が障害を 理由とするものではないという事実,もしくは障害を理由と

(9)

する差別が避けられない事実を立証しなければならない.

3)障害者の特殊な状況を合理的に配慮する積極的な措置が とられなければならない.障害者に対する合理的な配慮はこ の法での差別行為ではない.障害者の状況を合理的に配慮し ない者はこれを正当化できる次のような事実を立証する義務 がある.

1)合理的な配慮をすることが極めて難しかったり,過多の 費用を支出しなければならないという事実

2)該当生活領域の特性上,もしくは状況の特性上合理的な 配慮ができないという事実

第5条(国家の技術的・財政的支援)

国家は第7条 第3項及び第11条,第13条 第3項,第14条 第3 項,第15条に依って障害者の平等の為に合理的な配慮をする事 業主・学校・施設主及び事業者に必要な技術的及び財政的支援 をしなければならない.これに対し,詳細は大統領令で定め る.

第6条(他の法律との関係)

他の法律に依る障害者差別禁止及び合理的配慮義務に関する 規定等は継続して適応する.

第2章 障害者差別禁止及び合理的配慮

1節 雇用差別禁止

7条(国家及び事業主の差別禁止義務)

(1)国家・公共機関及び事業主は募集や採用・昇進・配置,

解雇,退職及び教育訓練等において障害を理由に差別をして はならない.

2)事業主は障害者勤労者が不便なく労働を遂行できるよう に勤労条件において特別な配慮をしなければならない.事業 主は障害者勤労者が望む場合には通常の休暇以外に追加して 1週間の範囲内で特別休暇を付与しなければならない.

3)国家,公共機関及び事業主は障害者が障害の種類及び程 度に適当な労働を遂行するように,必要な施設及び設備を設 置・運営しなければならない.このような義務が適用される 事業所の範囲,施設及び設備の具体的な内容については大統 領令で定める.

第8条(障害者勤労者の参与権)

1)法第6条 第2項の施設及び設備を設置・運営することに おいて事業主は障害者勤労者の意見を取り入れなければなら ず,これを反映するように努力しなければならない.

(2)常時300人以上の勤労者を雇用する事業所には障害者の 雇用保護の為に障害者代表機構を設置する.障害者代表機構 は障害者差別及び合理的配慮と関連して障害者勤労者の建議 や異議提起等がある時,障害者勤労者と相談して事業主と協 議しなければならない.障害者代表機構の構成・組織等に対

しては大統領令で定める.

3)事業所に労社協議会が構成されている場合は障害者代表 機構の代表は労社協議会に参与して障害者差別禁止及び合理 的配慮の要請を労社協議の対象にしなければならない.

4)障害者は労働組合活動において差別を受けない.

第2節 教育での差別禁止 第9条(障害者の教育機会均等)

1)障害者は障害を理由に教育において差別を受けない.

2)国家は障害者が障害の種類や程度によって適当な教育を 受けられるようにしなければならない.

10条(学校での差別禁止)

1)各級学校の長は障害者の支援・入学及び教育課程で障害 を理由に差別をしてはならない.各級学校の長は障害者教育 に必要な便宜施設がないという理由で障害者の支援及び入学 を拒否してはならない.

2)各級学校の長は障害者が障害の種類や程度によって適当 な教育を受けられるようにしなければならない.

(3)第1項及び第2項の目的の為に各級学校は障害の種類や程 度によって適当な教育及び評価方法を適用しなければならな い.

第11条(統合教育を受ける権利)

障害者は一般学校で統合教育を受ける権利を持つ.各級学校 は障害者の統合教育の為に必要な教師を配置し,障害者が一般 学生と同じ就学をできるように施設及び設備を設置・運用しな ければならない.

12条(障害者に対する特別教育)

(1)障害学生に対する特別教育が必要な場合,学校長と教 師,そして保護者は一般学級に編入した障害学生に対する特 別教育,障害児童の為の特別学級の設置及び運営に関して協 議する.

(2)障害者に対する統合教育が該当一般学校の施設・設備に 照らし合わせて不可能な場合,障害児童は特殊学校で教育を 受ける権利がある.

第3節 公共施設及び交通手段利用においての差別禁止 第13条(障害者の公共施設及び交通手段利用に関する権利)

1)障害者は多衆が利用する公共の建物及び施設や交通手段 の接近・利用において障害を理由にした差別を受けない.

(2)障害者は公共の建物及び施設や交通手段を自由にアクセ ス・利用する権利を持つ.障害者のアクセス及び利用権を保 障する為に必要な便宜施設の種類や便宜施設の構造等に対す る細部基準は大統領令で定める.

(3)施設主は建物を新築・改築する時,第2項の細部基準に 準じなければならない.

(10)

4節 情報通信においての差別禁止 第14条(障害者の情報接近及び利用権)

(1)国家や公共機関は視覚及び聴覚障害者が音声及び文字メ ッセージを通して制限なく公共情報に接近して利用できるよ うに情報技術を利用して提供するインターネットコンテンツ を構成しなければならない.これに関する具体的な技術基準 及びこのような技術基準が適用される情報の内容及び種類に 関しては大統領制で定める.

2)国家や公共機関は視覚及び聴覚障害者がTV放送を手話 通訳及び文字メッセージを通して制限なく利用できるように しなければならない.これに関する具体的な技術基準及びこ のような技術基準が適用される情報の内容及び種類に関して は大統領制で定める.

(3)国家は営利を目的にインターネットコンテンツを開発・

提供する者,民間放送に上の第1項や第2項の技術基準による 音声及び文字メッセージ,そして手話通訳等,障害者の接 近・利用の為に必要な措置をとるようにしなければならな い.

15条(電話を利用する権利)

国家は聴覚障害者及び言語障害者が電話を利用し,不便なく 意思疎通をできるようにしなければならない.電話において提 供された文字メッセージの細部基準に関する指針は大統領令で 定める.

第5節 行政及び司法手続きにおいての差別禁止及び合理的配

16(手話通訳等の提供を受ける権利)

1)国家及び公共機関は聴覚障害者及び言語障害者の権利を 実現する為に必要な場合には手話通訳を提供しなければなら ない.

2)その他障害を理由に自身の権利を実現する為に必要な意 思疎通ができない障害者に国家及び公共機関は意思疎通に必 要な補助機構を提供するか補助人力を提供しなければならな い.

3)第1項及び第2項の措置の為に必要な費用は国家及び公共 機関が負担する.

第17条(行政及び司法手続きで障害者配慮)

国家や地方自治体及び公共機関は行政手続き及び司法手続き で使用される各種書式を障害者が認識して作成できるように製 作して提供しなければならない.これに対する費用は国家や地 方自治体及び公共機関が負担する.障害者に提供される書式の 種類と内容に関しては大統領令で定める.

第6節 選挙権行事における障害者に対する配慮

第18条(障害者の投票権及び選挙情報に接近できる権利)

1)国家は障害者が候補者の身の上・選挙手続き・記票場所 及び記票方法等選挙に関する重要な情報に接近・利用できる ようにしなければならない.

(2)国家は障害者の投票を保障する為に必要な施設及び設備 を設置しなければならず,障害の種類や内容に適当な記票方 法を運営しなければならない.これに関しては公職選挙及び 選挙不正防止法に定める.

3章 障害者差別禁止委員会

第1節 委員会の設置・構成・運営 第19条(委員会の設置)

障害者差別事項に対する調査・是正勧告及び調整,そして障 害者差別禁止及び合理的な配慮業務を遂行する為に大統領所属 下に障害者差別禁止委員会を置く.

20条(委員会の構成)

1)委員会は委員長1人と11人の委員で構成する.

(2)委員長と3人の委員は常任委員とする.委員長と常任委 員は政務職公務員とする.

3)常任委員中1人以上は障害者でなければならず,1人以 上は弁護士の資格がなければならない.

(4)委員は障害者人権問題に関して専門的な知識と経験が有 り,障害者人権の保障と向上のための業務を公正で独立的に 遂行できると認定されるものの中で大統領が任命する.委員 中4人以上は障害者でなければならず,2人以上は弁護士の 資格がなければならない.

21条(委員長)

1)委員長は委員の中で大統領が任命する.

(2)委員長は委員会を代表して委員会の業務を統括する.

(3)委員長がやむを得ない理由で職務を遂行できない時は委 員長があらかじめ指名した常任委員がその職務を代行する.

4)委員長は国会に出席して委員会の所管事務所に関して意 見を陳述でき,国会の要求がある時には出席して報告したり,

返答しなければならない.

5)委員長は国務会議に出席して発言でき,その所管事務に 関して国務会議に議案を建議できる.

第22条(任期及び政治的中立・身分保障)

1)委員長及び委員の任期は3年とし,連任は1次に限る.

2)委員の任期が満了したり,任期中委員が欠員した時には 大統領は任期満了又は欠員した日から30日以内に後任者を 任命しなければならない.欠員となった委員の公認として任 命された委員の任期は新しく開始する.

3)委員の政治的中立性は保障される.委員は禁固以上の刑 義宣告によらなければその意志に反して免職されない.

(11)

23条(委員の欠格事由)

次の各項の1つに該当する人は委員になることができない.

委員が次の各項の1つに該当するようになった時には当然退職 する.

1.大韓民国国民でない者

2.国家公務員法第33条各校の1つに該当する者

3.公職選挙法及び選挙不正防止法によって実施する選挙に 候補者として登録した者

24条(委員の兼職禁止)

委員は在職中次の各項の職を兼ねたり業務をしてはならな い.

1.国会又は地方議会の委員

2.違う国家機関又は地方自治体の公務員(教育公務員を除 外する)

3.その他に委員会規則で定める職又は業務

25条(事務所)

(1)委員会の事務を処理する為に委員会に事務所を置く.

(2)事務所に事務総長1人と必要な職員を置く.事務総長は 委員会の審議を経て委員長の提案で大統領が任命する.

3)事務総長は委員長の指揮を受けて事務所の事務を管掌 し,所属職員を指揮・監督する.

26条(委員会の組織と運営)

この法に規定される事項外に委員会の組織に関して必要な事 項は大統領令で定め,委員会の運営に関して必要な事項は委員 会の規則で定める.

2節 委員会の業務 第27条(委員会の業務)

委員会は次の各項の業務を遂行する.

1.障害者差別禁止に関する法律(立法過程にある法令案を 含む)・制度・政策・慣行の調査や研究及びその改善が必要 な事項に関する勧告又は意見の表明

2.障害者差別行為に対する調査と救済 3.障害者差別状況に対する実態調査 4.障害者差別に関する教育及び広報

5.障害者差別の類型・判断基準及びその予防措置等に関す る指針の提示及び勧告

6.障害者差別禁止の為に活動する団体及び個人との協力 7.国際障害者条約への加入及びその条約の移行に関する要 求と勧告又は意見の表明

8.障害者差別禁止と関連した国際機構及び外国の人権機構 との交流・協力

9.その他に障害者差別禁止の為に必要だと認定された事項

第28条(報告書作成及び報告義務)

1)委員会は毎年前年度の活動内容と障害者差別状況及び改 善対策に関する報告書を作成して大統領に報告しなければな らない.

(2)委員会は関係機関等に第1項の規定による報告に関する 意見,調査結果又は措置計画を提出するように要請でき,関 係機関等は委員会に第1項の規定による報告に関する意見,

措置結果又は措置計画を提出できる.

(3)委員会は報告書を公開しなければならない.ただし,個 人の名誉又は私生活の保護の為に必要であったり,他の法律 によって公開が制限されている事項は公開しなくてもよい.

第3節 陳情と調査

29条(陳情と調査権発動申請)

1)委員会はこの法第2章で規定する障害者差別行為で被害 を被った障害者,障害者の法定代理人または保護者,登録さ れた障害者団体の陳情によって,あるいは職権で障害者差別 行為を調査できる.

2)陳情資格がある障害者団体,法第14条によって委任によ る訴訟を遂行する資格がある障害者団体,法第42条による団 体訴訟を提起できる障害者団体の範囲及び登録手続きに対し ては保健福祉部令で定める.

第30条(陳情の却下)

委員会は受付した陳情が次の各項の一つに該当する場合には その陳情を却下する.

1. 被害者でない者がした陳情において,被害者が調査を望 んでいないことが明白である場合.

2. 陳情原因となった事実が発生した日から1年以上経過し て陳情した場合.ただし,委員会が調査しようと決定した場 合にはその通りではない.

3. 陳情が提起された当時,陳情の原因となった事実に関し て裁判所または憲法裁判所の裁判,またはその他の法律によ る権利救済手続きが終結している場合.

4. その他,陳情が委員会が調査することが適切ではないと 認定される場合.

31条(調査の方法)

委員会は次の各項に定める方法で申請に関して調査すること ができる.

1. 陳情人・被害者・被申請人(以下 当事者 とする)ま

たは関係者に対する出席要求及び陳述聴取または陳述書の提 出要求

2. 当事者,関係者または関係機関等に対して調査事項と関 連があると認定される材料等の提出要求

3. 調査事項と関連があると認定される場所,施設,材料等 に対する実地調査または鑑定

4. 当事者,関係者,関係機関等に対する調査事項と関連が あると認定される事実または情報に対する照会

参照

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