修士論文
寄生蜂セグロカマバチの寄主摂食戦略:経験の影響
三重大学大学院
生物資源学研究科 生物圏生命科学専攻
昆虫生態学研究室
野田 詩織 2014年3月
目次
1. 諸言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2. 材料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3. 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
3.1. 反応観察日までの飼育 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
3.2. 空腹度と齢期の影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
3.3. 同一寄主への産卵と摂食類似行動のための追加実験 ・・・・・・・・7
3.4. 寄主遭遇の影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
3.5. 統計解析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
4. 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
4.1. 空腹度と齢期の影響 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
4.2. 同一寄主への産卵と摂食類似行動の適応的意義・・・・・・・・・・12
4.3. 寄主遭遇の影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
5. 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
6. 摘要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
7. 謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
8. 引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
9. 図・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
10. 表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36
1 1. 緒言
捕食寄生性膜翅目の多くの種の成虫メスは,寄主を産卵対象だけでなく摂食対象とする。
寄主摂食は,産卵数を増加させ,種によっては寿命を延ばす(Jervis and Kidd, 1986 ; Heimpel and Collier, 1996; Giron et al, 2002)。しかし,通常,寄主摂食された寄主は死ん でしまうため,産卵には利用することができない。産卵を現在の繁殖への投資とするなら ば,寄主摂食は将来の繁殖のための投資といえる(Heimpel and Rosenheim, 1995)。そのた め,寄主と出会ったとき,寄生蜂は生涯適応度を最大にするために,寄主を産卵のために
利用するか摂食するかを決定しなければならない。理論モデルは,産卵より寄主摂食が起 る要因として,成熟卵保有数の減少,空腹度(栄養欠乏)の増大,長い期待寿命,低い寄主質,
低い寄主遭遇頻度を挙げている(Heimpel and Collier, 1996)。また,寄生蜂の大きさの影響 については,これまで取り上げられたことがないが,大きい寄生蜂は小さい寄生蜂よりも
長生きしやすいので,他の条件が同じならば,寄主摂食が起こりやすいと予測される。ま
た,寄主と長い間遭遇しないと,小さい寄生蜂は,空腹度の増大が大きくなり,大きい寄
生蜂より寄主摂食を起こしやすいかもしれない。しかし,上記の要因が実際どのように影
響 を 与 え る か を 詳 し く 調 べ た 研 究 は 限 ら れ て い る(Heimpel and Rosenheim, 1995;
Heimpel and Collier, 1996)。
セグロカマバチ(以降セグロ)Echthrodelphax fairchildii Perkins(膜翅目,カマバチ科)は,
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水田で見られるウンカ3種,ヒメトビウンカ(以降ヒメトビ)Laodelphax striatellus Fallén,
セジロウンカSogatella furcifera Horváth,トビイロウンカNilaparvata lugens Stål(3種 とも半翅目,ウンカ科)に産卵し,それらを餌としても利用する準単寄生性捕食寄生蜂であ る(1 度の産卵で1卵しか産まないが,2度産卵が起った場合2頭羽化がしばしば生じる,
Yamada and Ikawa, 2003)。セグロの生態解明として,筧(1996),高山(1996)によりその寄 主選好性が調べられ,ヒメトビでは,産卵は3~5齢に行われるが,特に5齢0日齢が好ま れ,寄主摂食はどの齢期に対しても起ることが分かった。また,異なる齢期の寄主を同時 に与えたとき,相対的に若齢ウンカよりも老齢ウンカに産卵しやすい(高山, 1996; 増田, 2008)。このことは,若齢寄主は老齢寄主に比べて餌として利用されやすいことを暗示する。
佐原(2010)は,寄生蜂としてセグロを,寄主としてヒメトビを使って,空腹度によって,
3,4,5齢の寄主に対して産卵するのか寄主摂食するのか無視するのかの決定がどのように 変化するのか調べた。また,異なる密度の異なる齢期の寄主との遭遇経験によって,3齢寄 主に対する反応がどう変化するのかも調べた。佐原は,これらの実験によって,セグロが
将来産卵できないリスクを考慮した摂食戦略,そして現在いる生息地の寄主の質と量を考
慮した摂食戦略を採っていると推論した。これらのどちらの戦略にも,これまで考えられ
てきた寄生蜂の摂食戦略ではほとんど考慮されなかった要因,つまり,将来のリスクヘッ
ジと周囲の寄主の齢と密度を組み込むことによって,導き出されたものである。しかし,
佐原が行った実験のサンプル数は,まだ不十分であり,はっきりと結論を出すところまで
3 は至っていない。
本研究では,まず,佐原が行った空腹度と寄主遭遇経験が寄主摂食戦略に及ぼす影響を
調べる実験を継承して,サンプル数を増やした。さらに,寄主遭遇経験の影響を調べる実
験については,遭遇経験後の経過時間が異なる場合の影響についても調べた。つまり,経 験後の時間が経過するにつれてその影響が薄れると予測されるが,その実態を調べた。
また,空腹度の影響を調べる実験において,同じウンカが産卵後に摂食類似行動を受け
ることがあった。この摂食類似行動は,口器をウンカの表皮に当てるが,多くの場合ウン
カを傷つけることはなく,その場所も普通の摂食のみが起こる場合と違っていた。そこで,
この摂食類似行動の詳しい観察を行うとともに,その適応的意義を調べる一歩として,こ れらのウンカを飼育して,産み付けられたセグロの生存率と羽化時の大きさを調べた。
2. 材料
実験に使用したセグロとヒメトビは,1992年に三重県津市三重大学構内及び三重大学生 物資源学研究科紀伊黒潮生命地域フィールドサイエンスセンター附帯施設農場で採集し,
飼育した。さらに,三重大学構内にて採集した5個体(2011年9月)と紀伊黒潮生命地域フ ィールドサイエンスセンター附帯施設農場にて採集した2個体(2012年9月と2013年8月
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に各1個体)を加えた。飼育は,恒温室(25±1℃,16時間明期:8時間暗期)内で行った。ま た,実験は,それと同じ温度,日長条件下で行った。
3. 方法
3.1. 反応観察日までの飼育
実験には,3日齢のセグロを用いた。羽化から3日齢まで以下の要領にて飼育した。繭の 段階で 1 頭ずつ蓋に小さな穴を開けたプラスティックチューブ(10ml;内径 12mm,高さ
40mm)に移し,羽化するまで25℃で放置した。羽化したセグロは円筒形のプラスティック
ケージ(360ml;内径90mm,高さ50mm)に蜂蜜水溶液(50%)を染み込ませた脱脂綿,水(キ ュベット(45ml;10×10×45mm)に入れ脱脂綿で蓋をした),根をハイポネックス水溶液で 湿らせた脱脂綿でくるんだ30本の芽出し(イネを発芽させ,第1葉か第2葉が出たもの) (15 本を2セット)と共に入れ個別飼育した。蓋には換気用の穴(直径20~50mm)を開け,そこ に目の細かいテトロンゴース(東レ ♯C-119 スカイラーク)を貼り付けた。上記の個別飼育 ケージには1,2齢の混合20頭と3,4,5齢をそれぞれ20頭ずつ計80頭の寄主及び交尾 用のオスを2頭入れた。実験日まで毎日,上記の齢期の寄主80頭,オス2頭,芽出し,水,
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蜂蜜水溶液(それぞれ新たに準備)が入った別の個別飼育ケージにセグロを移し替えた。
3.2. 空腹度と齢期の影響
暗期から明期に替わる直前に3日齢のセグロを飼育ケージから取り出し,水(キュベット
(45ml;10×10×45mm)に入れ脱脂綿で蓋をした) だけが入った円筒形のプラスティックケ
ージ(360ml:内径95mm×高さ55mm)に移し,異なる時間放置することで空腹度に差をつ けた。その後,異なる齢期の寄主を与えることによって,空腹度と寄主齢期が寄主に対す る反応(摂食か産卵か受入拒否か)へ及ぼす影響を調べた。明期後寄主を与えるまでの時間と して0,1,2,4,8,12,16時間を設定した。与える寄主として3齢0日齢,4齢0日齢,
5齢0日齢を用いた。
寄主への反応は,以下のように調べた。キュベット(45ml;10×10×45mm)の中にセグ ロ1頭と寄主 1頭を入れて脱脂綿で栓をし,セグロが摂食するかあるいは産卵するかどう かを10分間観察した。その際,摂食した場合は,摂食時間(口を付けて実際摂食を行った時 間)も記録し,産卵の場合は,外部生殖器,特に毒針の動きから卵の性を推定した(Yamada &
Imai, 2000)。キュベットとの隙間をなくすのと脱脂綿にキュベット内の匂いが移るのを防 ぎ脱脂綿の複数回の使用を可能にするために,栓をするとき脱脂綿をパラフィン紙で覆っ た。10 分経っても摂食も産卵もしなかった場合を受入拒否とした。産卵以外が起こった場
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合は,5齢0日齢を与えて産卵能力の有無を調べた。この供与で産卵以外が起こった場合は さらに別の5齢0 日齢を与えた。この供与でも産卵しなかった場合は,解析には使わなか
った(表1-1,1-2)。また,10分の間に摂食(摂食類似行動を含む)と産卵の両方が起こった場
合は,それらが起こった順も記録し,解析を行う際は,最初に起こった反応を基に,寄主 摂食か産卵に分類した(例;産卵後に寄主を摂食したものは「産卵」とした。摂食類似行動 が最初に起こることはなかった)。産卵後,実体顕微鏡下(×90)でセグロの大きさ(頭幅)を測 定した。
産卵と摂食(類似行動を含む)の両方が起こった場合のセグロの発育への影響,および摂食 のみが起こったとき寄主が必ず殺されるか確認するため,産卵と摂食(類似行動を含む)の両 方を受けた寄主,または摂食のみを受けた寄主は,サンプル管(30ml;内径 26mm×高さ 55mm)で個別に継続飼育し,寄主の生存率,セグロの生存率,羽化したセグロの性比と頭 幅を記録した。サンプル管には,目の細かいテトロンゴース(東レ ♯C-119 スカイラーク) で蓋をし,根をハイポネックス水溶液で湿らせた脱脂綿でくるんだ5~10本の芽出し(イネ を発芽させ,第1葉か第2葉が出たもの)を入れ,脱脂綿が乾燥しない程度に,適宜ハイポ ネックス水溶液を補充した。比較のため,産卵のみが起こった場合も同様に飼育した。た
だし,これらの飼育は実験途中から開始したためサンプル数は限られた。そのため,次の 寄主遭遇の影響の実験から得た該当寄主も用いた。
明期後1~16時間の処理区各齢で,佐原(2010)と合わせて,20~22回の繰り返しを行っ
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た。明期後0時間処理区については,齢期ごとに12~13回の繰り返しを行った。
3.3. 同一寄主への産卵と摂食類似行動のための追加実験
同一寄主への産卵と摂食類似行動が起こったときの,摂食類似行動の詳しい観察を行う
ため,以下の追加実験を行った。摂食類似行動は,寄主が5齢0日齢のとき,また,セグ ロが空腹時に起こりやすかったので,明期後8時間に5齢0日齢の寄主を1頭与え,反応 を観察した。さらに,観察数を増やすため,観察後のセグロを飼育ケージに戻し,その 4 時間後(明期後12時間)にも,新たな5齢0日齢寄主を1頭与え,反応を観察した。また,
実験後の寄主は,上記の要領で飼育し,セグロの生存率,羽化成虫の性と大きさを調べた。
15頭のセグロで実験を行い,30のサンプルを得た。
3.4. 寄主遭遇の影響
暗期から明期に替わる直前に 3 日齢のセグロを飼育ケージから取り出し,空腹度と齢期 の影響を調べた実験と同じ要領で水のみを与えて飼育した。明期後3時間に,以下の 4つ のうち一つの遭遇経験をさせた。①3齢0日齢寄主1頭,②3齢0日齢寄主8頭,③5齢0 日齢寄主1頭,④5齢0日齢寄主8頭。キュベット内で反応を観察し,1頭の寄主に摂食し
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たか産卵した時点で寄主は全てキュベットから取り除いた。摂食も産卵もすることなく10 分経過した場合も受入拒否として,寄主をすべてキュベットから取り除いた。セグロはそ
のままキュベットに残し,1時間後,3齢0日齢の寄主を与えてセグロが示す反応を調べた。
反応は,空腹度に対する反応と同じ要領で調べた。
さらに,遭遇して産卵か摂食かあるいは受入拒否の直後(遭遇直後と以降記載)に,3齢0 日齢を与え,セグロの反応を同様に調べた。遭遇直後に3齢 0日齢を供与する明期からの 経過時間と,遭遇1時間後に3齢0日齢を供与する明期からの経過時間を4時間にそろえ るため,遭遇直後の処理においては,明期になってから3時間50分後に①~④のうち1つ の遭遇経験をさせた。遭遇1時間後の処理区各経験で30回の繰り返しを行い,遭遇直後の 処理区各経験で30~31回の繰り返しを行った。
3.5. 統計解析
空腹度と齢期の影響の実験において,産卵,寄主摂食,受入拒否それぞれが起こった率
への齢期と明期後経過時間の影響を,ロジスチック回帰分析を用いて調べた。セグロの大
きさも要因として入れた。摂食は,明期後 4 時間までは,ほとんど起こらなかったので,
明期後0~2時間を除き,明期後4~16時間のみ解析を行った。産卵率は,各齢期で明期後 4時間までは増加,その後減少する傾向が見られたので,明期後0~4時間,8~16時間に
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分けて解析を行った。寄主遭遇の影響の実験においても,産卵,寄主摂食,受入拒否それ
ぞれが起こった率への齢期,密度,セグロの大きさの影響を,ロジスチック回帰分析を用
いて調べた。また,遭遇経験時の影響も調べたが,5齢寄主遭遇時はほとんどの反応が産卵 であったため,3齢寄主に遭遇したときのみを対象とした。ただし,3齢に産卵した場合と 5 齢に産卵した場合の後の反応の比較は行った。解析は,統計ソフト LogXact®(Cytel Software, Cambridge, MA, USA)を用いて行った。有意性は,正確確率法(確率化検定)を用 いて判定した(Cytel Inc., 2012)。一部,正確確率法が使用できないときは,Wald検定を用 いた。
4. 結果
4.1. 空腹度と齢期の影響
明期になってからの時間が 4 時間までは,寄主齢に拘わらず寄主摂食はほとんど起らな かった(図1-1)。摂食率は8時間以降,まず,3齢寄主において高くなり明期後経過時間と ともに増えた。4,5齢では,12時間以降高くなった。各明期後経過時間で齢期が若いほど,
高い頻度で摂食された。統計解析の結果,摂食率への明期後経過時間,齢期,セグロの大
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きさの影響に,有意な交互作用はなかった(表2)。そこで,交互作用を除いたモデルを当て はめると,明期後経過時間と齢期の影響はそれぞれ,有意であった(明期後経過時間,P <
0.001;齢期,P < 0.001)。3齢と4齢のみを取り出した解析では,齢期間に差があったが,
4齢と5齢のみを取り出した場合は,齢期間に差はなかった(表4)。明期後8時間以降にお いては,一部の 4,5齢寄主が摂食後に産卵を受けた。特に,12,16 時間で,その頻度は 高かった。一部(n=2)飼育した結果,寄主は2日以内に死亡し,産み付けられた卵が発育す ることはなかった。
産卵については,5 齢寄主に対して,明期後8時間目までは,0時間で若干低いものの,
高い確率で産卵された(図1-2)が,12時間以降産卵率は下がり,既に述べたように摂食率が 上がった。4齢寄主において,これと同じ傾向を示したが,0,4時間以上では5齢寄主よ り低くなる傾向が見られた。4,5齢寄主とは異なり,3齢寄主は,明期後4時間まで上昇 し,65%以上に達したが,その後明期経過時間の増加とともに減少した。統計解析では,
明期後 4 時間までは,明期後経過時間と齢期の間の交互作用と,齢期とセグロの大きさの 間の交互作用が有意であった(表2)。そのため,齢期ごとに産卵率の解析を行ったところ,
経過時間とセグロの大きさに有意な交互作用はなく,どの齢期においても,明期後経過時 間の影響が有意であった(表3)。3齢と4齢のみを取り出した解析では齢期間に差があった (表4)。4齢と5齢のみを取り出した解析では,齢期とセグロの大きさに有意な交互作用が あった(表4)。セグロの大きさは,5齢でのみ有意で,小さい個体ほど産卵をひかえた(表3,
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図2-3)。その交互作用を入れても4齢と5齢の差が見られた。
明期後 8 時間以降は,産卵率への明期後経過時間,齢期,セグロの大きさの影響に,有 意な交互作用はなかった(表2)。そこで,交互作用を除いたモデルをあてはめると,明期後 経過時間と齢期の影響はそれぞれ,有意であった(明期後経過時間,P < 0.001;齢期, P <
0.001)。3齢と4齢のみを取り出した解析では齢期間に差があったが,4齢と5齢のみを取
り出した解析では齢期間に差はなかった(表4)。
産卵後に摂食を受けた場合が,1 時間以上の経過時間で見られた(図 1-2)。産卵を受けた 寄主中,産卵後に摂食を受けた寄主の割合は,12時間以降で高まり,特に,16時間の5齢 においては 80%以上となった。また,産卵後に摂食を受けた寄主の大部分(93%)は,通常 の摂食部位(腹部の胸部に近い側)を破壊的に摂食されるのではなく,異なる部位(前側板も しくは中側板)に非破壊的な摂食類似行動を受けた。摂食類似行動を受けた寄主の一部(3齢
n=6,4齢n=1,5齢n=3)を継続飼育したところ,セグロの羽化率は60%(羽化した個体,
3齢n=4,5齢n=2)であった。
受入拒否は,明期後間もない時,特に,齢期が若いほど高かった。その割合は,どの齢
期でも明期後の経過時間が長くなるにつれて低くなり,8時間以上ではどの齢期でもほとん ど見られなかった(図 1-3)。そのため統計解析は,4 時間以内を対象に行った。その結果,
経過時間と齢期の間に有意に近い交互作用があった(表2)。そのため,齢期ごとに受入拒否 率の統計解析を行った。各齢で,明期後経過時間の影響が有意であった(表3)。3齢と4齢
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のみを取り出した解析では,齢期間に差があったが,4齢と5齢のみを取り出した解析では,
齢期とセグロの大きさの間に有意な交互作用はあったが,齢期間に差はなかった(表4)。こ の交互作用は,5齢では小さいセグロは拒否をしやすかったためであった(表3,図2-2,-3)。
4.2. 同一寄主への産卵と摂食類似行動の適応的意義
実験に使用したセグロ15頭中,10頭は明期後8時間もしくは12時間に産卵後摂食類似 行動を行った(内1頭は両経過時間で行った)。この産卵後摂食類似行動では,口器を寄主の 前側板もしくは中側板に当て,表皮を撫ぜるように動かした。その間,大顎は閉じたり開 いたりした。したがって,寄主に傷痕は見られなかった。ただし,1例のみ前胸の縁を噛む 行動が観察され,この場合は,寄主に傷痕が残った。産み付けられたセグロの羽化率は,
経過観察した5齢寄主(n=20:サンプルが少ないため,他の実験において5齢寄主への産卵 後摂食類似行動が観察された場合もサンプルに含めた,表 5)において,90%だった。これ は,産卵のみが行われたとき(71.15%, n=104)と比べて,有意な差はなかった。メスの羽化 成虫の大きさについては,産卵のみが行われたときの値と差はなかったが,オスの羽化成 虫については,産卵のみが行われたときの方が,有意に大きかった(表6)。しかし,産卵の みを受けた寄主から羽化したオスの中には,15頭中4頭も頭幅が0.55mmより大きかった。
一倍体オスでは,0.55mmより大きい割合は5%程度である(今井,2003)。そのため,これ
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らは二倍体オスである可能性が高い。そのため,それらの大きい個体を除いて比較すると 有意な差はなかった(P =0.174)。
また,摂食のみが行われた場合の寄主の生存率(成虫まで発育した割合)は,5%(n=20)だ
った(表6)。さらに,5齢寄主に対して産卵後摂食類似行動を行ったときの摂食時間は,多
くの明期後経過時間で,摂食のみのときよりも短い傾向があったが有意ではなかった(表7)。
4.3. 寄主遭遇の影響
寄主に遭遇してから 1 時間後の反応を見ると,産卵率,受入拒否率への遭遇寄主齢期,
遭遇寄主密度の影響に有意な交互作用はなかったが、摂食率への影響については、有意に 近い交互作用があった(表 8-1)。そのため,摂食率については,齢期別に密度の差,同じ密 度での齢期の差を調べた(表8-1)。その結果,密度の影響は,5齢遭遇でのみ有意であり,8 頭遭遇のほうが,1頭遭遇より高かった(図3-1)。また,8頭遭遇においては 5齢に遭遇し た方が3 齢に遭遇したより有意に高かった(図3-1)。産卵においては,1頭,8頭遭遇に拘 らず,5齢遭遇時には3齢遭遇時より有意に産卵を控えた(表8-1)。受入拒否においては,
遭遇齢期と密度の差は有意な影響を与えなかった(表 8-1)。一方,寄主遭遇直後の反応にお いては,摂食,産卵,受入拒否のそれぞれにおいて,遭遇した齢も寄主密度も有意な影響 を与えなかった(表8-2)。
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遭遇経験なしとの比較では,5齢8頭遭遇の1時間後に摂食率が有意に近い増加を示した
(表 9-1)。一方,遭遇直後においては,どれも遭遇経験なしとの有意な差を見出すことがで
きなかった(図3-2,表9-2)。
また,遭遇経験をしたとき,遭遇したセグロの大きさがその後の 3 齢寄主に対する反応 に影響することがあった。遭遇経験後は,遭遇寄主とその密度に拘わらず,セグロの大き
さが大きいほど,3齢寄主に対する産卵を控え,受入を拒否するあるいは摂食する傾向があ った(図4-1,-2,表8-1,-2,9-1,-2)。
寄主遭遇時に3齢または5齢に示した反応は,1時間後の反応実験と直後の反応実験では,
明期からの時間が少し異なるが,ほとんど変わらなかったため,合わせて示した(図5)。 1 頭のときと8頭のときの間に差はなく,先の実験での明期2~4時間経過の反応から予測さ れるものとほとんど変わらなかった。ただ,3齢において産卵率が少し減り,摂食率と拒否 率が少し増えた。
遭遇経験時に示した反応が,その1 時間後の3齢寄主に対する反応に与える影響につい ては (図6-1),3齢8頭区の受入拒否率においてのみ遭遇経験時の反応が有意な影響を与え
た(表10-1;注意,5齢寄主遭遇については,遭遇時の反応がほとんど産卵であったため,
解析しなかった)。ただし,3齢 8頭遭遇の産卵率も有意に近かった。これは,受入拒否率 の有意性を反映したものと考えられる。つまり,産卵または受入拒否した個体は,その 1 時間後の3齢との遭遇で産卵しやすく,摂食した個体は受入拒否しやすかった(図6-1)。一
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方,遭遇経験時に示した反応が,その直後の 3 齢寄主に対する反応に与える影響について は,有意な影響はなかった(表10-2,図6-2)。
次に,遭遇経験時に産卵を行った場合について,遭遇時の寄主齢期と密度の影響を調べ
た。遭遇経験 1 時間後の摂食率への影響では,寄主齢期と寄主密度に有意な交互作用があ ったので(表11-1),齢期ごと,密度ごとに解析した結果,5齢寄主との遭遇において,寄主 密度が高くなると摂食が増えた(表11-1,図6-1)。また,8頭遭遇においては,5齢に遭遇 したほうが3齢に遭遇したより摂食が増えた。産卵率については,密度に拘わらず,3齢遭 遇の方が 5 齢遭遇より高かった。受入拒否率については,遭遇経験時の齢期も密度も有意 な影響を与えなかった(表11-1,図6-1)。
遭遇直後の 3 齢寄主に対する反応への,経験時の寄主齢期と寄主密度の影響については
(図 6-2),摂食率,受入拒否率に対する有意な差はなかったが,産卵率に対しては意に近い
差があった(表11-2)。つまり,3齢遭遇の方が5齢遭遇より産卵されやすかった。
5. 考察
4,5 齢に関しては,明期直後の反応を除いて,明期後時間が経つにつれ,つまり空腹が 増すにつれ,産卵をせず寄主摂食しやすくなったことは,予想通りであった。明期直後は
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受入拒否率が高く,産卵率が低かったのは,寄主選考の度合いがきつく,4,5 齢でも大き さなど,特に何らかの点で気に入らなかった寄主を無視するのかもしれない。あるいは,
実験室内では,明期になると急に明るくなるため,セグロは生理的に混乱していて,寄主 に対する本来の反応ができないのかも知れない。
3齢寄主は4,5齢寄主と比べると摂食されやすかったことは,予想通りであるが(Kidd &
Jervis, 1991; Murdoch et al., 1992),3齢において,明期後経過時間が短いときは受入拒否 が起こりやすく,時間が経つにつれ,まず産卵が起りやすくなり,その後に寄主摂食が起
こりやすくなったことは,予想外である。この変化は,これまでに出されていた捕食寄生 者の栄養蓄積が減ると寄主摂食率が高まることを予測するモデル(Houston et al., 1992;
Chan & Godfray, 1993)を基にしては説明できない。しかし,多くのモデル(Weis et al. 1983;
Parker & Courtney 1984; Begon & Parker 1986; Mangel 1987a,b, 1989a,b; Houston et al., 1992; Roitberg et al., 1992, 1993; Chan & Godfray, 1993)は,寿命が短くなると寄主摂 食より産卵が起きやすいことを予測する。今回の現象は,これに近いものであるが,捕食
寄生者において,日齢によって寄主摂食の受入率が変化することが示されたことはない (Heimpel & Rosenheim, 1995)。絶食期間が長くなると死亡の恐れがあることが予測される が,3齢に対する反応を見ると,まず,死亡の恐れがまだ少ない段階の空腹度までは産卵し やすくなり,さらに空腹度が高まり死亡の恐れがでてくると寄主摂食が多くなることがわ
かる。空腹度が低い段階では,まだ,将来死亡する確率は予想できにくく,短い寿命が摂
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食を高めるという考えを直接は当てはめることはできない。セグロの採っている戦略は,
二股戦略の一種であると考えるのが妥当のように思われる(Hopper, 1999)。つまり,不確実 な未来に対する保険のようなものである。寄主摂食して寿命を長くした方がいい可能性も
あるが,寄主と遭遇しない可能性もあるため,とりあえずは産卵して,少なくとも自分の 子を残す機会を確保し,もしものときに備えているように思われる。
3 齢寄主は,4,5 齢に比べて産卵に適していない(高山,1996)。質の良い寄主が高密度 でいる環境下では,質の悪い寄主に対する摂食率が高まると考えられる。質の悪い寄主に
あえて産卵しなくても,少し探せば質の良い寄主に遭遇できる確率が高いからである。こ
の予想通り,5齢寄主8頭と遭遇した1時間後の3齢寄主に対する反応では,3齢8頭遭遇 に比べて,摂食率が有意に高まり,産卵率が減った。また,5齢寄主遭遇でも多くの寄主と 遭遇した方が,摂食率が有意に高くなった。一方,3齢寄主と遭遇した1時間後は,1頭遭 遇でも8頭遭遇でも未遭遇時より高くなる傾向はなかった。8頭遭遇では,産卵が増え,摂 食がむしろ減る傾向があった。これは,質の悪い寄主が高密度で存在しても,質の良い寄
主が存在する手がかりにはならず,むしろ質の良い寄主が存在しないとあきらめて産卵が 増えたのではないかと推測される。
遭遇直後においては,3齢,5齢遭遇経験とも遭遇1時間後に見られた上記の傾向は明瞭 でなかった。遭遇直後の反応がより明瞭であるという予測とは全く異なった。ただ,1時間 後には予想通りの反応を示したのであるから,これは,遭遇経験からの経過時間が短く,
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生息地の寄主の質と量の判断を保留しているため,未遭遇の反応とほとんど変わらなかっ
たと考えられる。それを確かめるため,遭遇経験の直後と 1 時間後だけでなく,さらに細 かい時間間隔と,長い時間経過してからの 3 齢寄主に対する反応を調べることが将来必要 である。
今回,小さいセグロは,5齢に対して産卵を控える傾向があった。これは,産卵時寄主を 持ち上げる必要があり,その行為自身が生理的コスト(将来の寿命と産卵の減少)となってい ることを暗示する。つまり,小さい個体にとって,大きな寄主を持ち上げることは,疲労
度が大きいのである。また,寄主遭遇経験の実験においても,セグロが大きいほど,寄主 遭遇経験のあと,3 齢寄主に対する産卵をひかえ,受入を拒否する傾向があった。これは,
大きいセグロほど寿命が長く,その結果将来 5 齢遭遇する機会がある可能性が高いため,
寄主質が低い 3 齢への産卵を控えて将来の産卵に備えているためだと考えられる。これま で,寄主摂食戦略に対する寄生蜂の大きさを取り上げた研究はないが,一つの重要な要因 であることがこの研究で明らかにされた。
寿命に影響を与えない程度の寄主との遭遇頻度あるいは寄主密度の低下は,寄主摂食を しやすくすることが理論的に予測される(Jervis & Kidd, 1986; Chan, 1991; Collier et al., 1994)。しかし,寄主密度と齢期の影響を同時に組み入れたモデルは私が知る限りない。た だし,Yang et al. (2012)は,この問題に挑み,実験をおこなった。彼らの実験では,2種 (Eretmocerus hayatiとEncarsia sophia)の寄生蜂に対して,異なる齢期の寄主を同時に,
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密度を変えて与えた(同時に与えるときの各齢の密度は同じ)。2種とも産卵に好ましい齢期 はどの密度でも優先的に産卵に利用されたが,寄主摂食としての利用は,密度が高くなる
につれてより選ばれやすかった。一方,産卵に不適な齢は,Er. hayatidでは,密度の違い
に拘わらず,産卵にも寄主摂食にも利用されにくかった。En. sophia では,産卵に不適な
齢は,産卵に利用されることはどの密度でも低かったが,密度が低くなるほどその率が益々
低くなった。寄主摂食については,密度が低いとき優先的に選ばれたが,密度が高くなる
につれて低くなった。産卵に適さない寄主に対するこの差の理由について,著者は触れて
ないが,1寄主の寄主摂食から得る利益と寄主摂食にかかるコストが影響を与えているのか も知れない。En. sophia の低密度時の反応は,セグロの反応に似ている。低密度と言って も,Yang et al. (2012)の実験では,1~4齢(3,4齢が産卵に適する)各5頭を寄生蜂2頭に 1日間与えているのでセグロでの5齢8頭との遭遇に似た条件と思われる。セグロにおいて も,5齢との1回ではなく複数回の遭遇後では,セグロはまわりに多数の5齢がいると推定
して,En. sophiaの高密度寄主供与の場合と同じように,3齢は産卵にも寄生にも利用され
ない可能性が高いと思われる。というのは,寄主摂食にとっても 5 齢は大きくて得られる 利益が多いと考えられるからである。
5齢寄主に対する産卵後摂食類似行動は,明期になってからの経過時間が長い時に観察さ れ,寄主を殺傷する通常の破壊的な摂食行動とは異なる行動であった。また,産卵後摂食
類似行動は,産み付けられたセグロの生存率と羽化成虫の大きさに対しても負の影響を及
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ぼさなかった。これは,産卵後摂食類似行動の適応的意義として2つの可能性を示唆する。
一つは,寄主の体表からの物質摂取。もう一つは,寄主の体表への物質塗布である。何ら
かを摂取している場合,それは,寄主の体表に付着した水分,ミネラル,糖が考えられる。
これにより,寿命が延びるかもしれない。何らかを塗布している場合,それは産卵個体か
産卵したことを示すマークかもしれない。摂食類似行動が行われる前側板もしくは中側板 は,セグロの産卵場所(前側板と翅芽の付け根の間)のすぐそばであり,将来,寄主が過寄生 (同種の個体が既に寄生されている寄主に産卵)を受けるとき,その部分はセグロの頭部ある いは産卵管に接する場所である。過寄生は,第1回目の産卵メスと第 2回目の産卵メスが 同じ場合(同母過寄生)と異なる場合(異母過寄生)に区別され,両者の適応的利益は大きく異 なる(van Alphen and Visser, 1990; Godfray, 1994)。同母過寄生では,同じメスの子が寄生 するため,利益はその両者によって決まるが,異母過寄生では,過寄生が産んだ子の利益
によってのみ決まる。そのため,同母異母を区別することは適応度を高める上で重要であ る。セグロでは,既寄生と未寄生の区別は,産卵間隔に拘わらずできるが(Yamada and Ikawa, 2005),同母と異母との区別は,第 1 回産卵から 45 分以内でしかできない(Ito &
Yamada, 2014)。そこで長い期間区別できるようにマークを念入りにしているのかも知れな い。そのため,食類似行動の適応的意義を調べるためには,その行動を起こした個体と,
その行動が始まった時点でそれを止めさせた個体を,その後,水のみを与えて飼育したと
きの寿命を比較すること,そして,そういった行動を受けた寄主に対して同母異母識別が
21
第1回産卵後いつまで有効であるかを明らかにするが必要である。
6. 摘要
1) 3 日齢のセグロカマバチを暗期から明期に変わった直後から水のみを与えて飼育し,
明期後経過時間にともなうヒメトビウンカの 3,4,5齢(老齢ほど質がよい)に対して,
摂食するか産卵するか,無視するかの決定がどのように推移するかを調べた。また,
以下の4種の寄主との遭遇経験があった1時間後と直後に3齢寄主に対する反応がど のように変化するかを調べた。①3齢寄主1頭,②3齢寄主8頭,③5齢寄主1頭,④ 5齢寄主8頭。
2) 水のみを供与した場合,全ての寄主齢において,摂食は明期後の 4 時間までは寄主 齢に拘わらずほとんど起らなかったが,その後経過時間にともなって増加し,若齢寄
主ほど短い経過時間で摂食され始めた。産卵率は 4,5 齢寄主については明期後 1~8 時間で,それぞれ 90%以上で起り,それ以降減少した。3 齢寄主については明期後の 経過時間にともない増加し,4 時間では 65%に達したが,それ以降減少した。寄主を 摂食も産卵もしない割合は明期後経過時間が短いほど高く,若齢寄主ほど高かった。
これらの結果は,明期後経過時間にともなって,捕食寄生者の栄養蓄積が減ると寄主
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摂食率が高まり,そして,質が低い寄主齢ほど摂食が摂食されやすいという理論的予
測と概ね一致したが,3齢寄主について明期後4時間まで産卵率が増加したことは,説 明できない。これは,カマバチが死亡の恐れが少ない段階の空腹度では,寄主と遭遇
しない可能性を考慮して,先に産卵して自分の子を残す機会を確保する二股戦略の一 種を採用していることを示唆する。
3) 明期からの経過時間が長いとき,同じ寄主に寄主摂食と産卵をしばしば行った。た だし,産卵後に摂食を行う際の寄主摂食は,通常の寄主を殺傷するような腹部への破
壊的な摂食ではなく,前側板または中側板への非破壊的な摂食類似行動であった。こ
の行動は,産み付けられたセグロの生存率と羽化成虫の大きさに対して負の影響を及
ぼさなかった。産卵後摂食類似行動の適応的意義としては,寄主の体表面に付着した
水などの摂取,もしくは,過寄生戦略に関するマーキングの 2 つの可能性が考えられ る。
4) 5齢寄主8頭と遭遇した1時間後の3齢寄主に対する反応では,3齢8頭遭遇に比べ て,摂食率が有意に高まり,産卵率が減った。また,5齢寄主遭遇でも多くの寄主と遭 遇した方が,摂食率が高くなった。これは,質の良い寄主が高密度でいる環境下では,
質の悪い寄主にあえて産卵しなくても,少し探せば質の良い寄主に遭遇できる確率が 高いため,質の悪い寄主に対する捕食率が高まるという予想と一致する。一方,3齢寄 主と遭遇した1時間後は,摂食率が未遭遇時より増える傾向はなかった。むしろ,8頭
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遭遇では,産卵が増え,摂食が減る傾向があり,これは,質の悪い寄主が高密度でい
ても,質の良い寄主が存在する手がかりにはならず,質の良い寄主との遭遇をあきら めて産卵が増えたのではないかと推測される。
5) 遭遇直後においては,遭遇 1 時間後に見られた傾向は明瞭ではなかった。これは,
遭遇経験からの時間が短く,生息地の寄主の質と量の判断を保留しているため,未遭 遇の反応とほとんど変わらなかったのかもしれない。
6) 小さいセグロは,5齢に対して産卵を控える傾向があった。また,寄主遭遇経験の反 応において,セグロが大きいほど,寄主遭遇経験の後,3 齢寄主に対する産卵を控え,
受入を拒否する傾向があった。この反応も,生涯適応度を高めるための反応と考えら れた。
7. 謝辞
本研究を進めるにあたり,三重大学大学院生物資源学研究科昆虫生態学研究室の山田 佳 廣教授ならびに塚田 森生准教授には多大なご指導,ご助言を頂きました。
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そしてカマバチの生態についてともに研究した,同研究室卒業生の佐原 寛美氏,勝山
瞳氏,大仲 桂太氏,同研究室の黒田 貴仁氏,藪内 美奈実氏とは,実験やカマバチの 飼育に関する情報交換を行い協力し合うことで,身心ともに大変助けられました。
また,同研究室の諸先輩方をはじめとする皆様にも,日ごろ研究を進めるにあたり,温 かいご助言,協力をいただきました。
これらの皆様に厚く感謝,御礼申し上げます。
8. 引用文献
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図1-1 水のみを与えた場合の明期後経過時間に伴う摂食率の推移
図1-2 水のみを与えた場合の明期後経過時間に伴う産卵率の推移 29
9. 図
図1-3 水のみを与えた場合の明期後経過時間に伴う受入拒否率の推移
図2-1 水のみを与えた場合の3齢寄主に摂食,産卵,受入拒否したセグロの大きさ(頭幅)±SE
30
図2-3 水のみを与えた場合の5齢寄主に摂食,産卵,受入拒否したセグロの大きさ(頭幅)±SE 図2-2 水のみを与えた場合の4齢寄主に摂食,産卵,受入拒否したセグロの大きさ(頭幅)±SE
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図3-1 寄主遭遇経験の有無が1時間後の3齢寄主に対する反応に与える影響
3-1:3齢寄主1頭との遭遇経験 3-8:3齢寄主8頭との遭遇経験 5-1:5齢寄主1頭との遭遇経験 5-8:5齢寄主8頭との遭遇経験 図3-2 寄主遭遇経験の有無が直後の3齢寄主に対する反応に与える影響
3-1:3齢寄主1頭との遭遇経験 3-8:3齢寄主8頭との遭遇経験 5-1:5齢寄主1頭との遭遇経験 5-8:5齢寄主8頭との遭遇経験
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図4-1 寄主遭遇経験1時間後に3齢寄主を与えた場合に,摂食,産卵,受入拒否した セグロの大きさ(頭幅)±SE
3-1:3齢寄主1頭との遭遇経験 3-8:3齢寄主8頭との遭遇経験 5-1:5齢寄主1頭との遭遇経験 5-8:5齢寄主8頭との遭遇経験
図4-2 寄主遭遇経験直後に3齢寄主に与えた場合に,摂食,産卵,受入拒否した セグロの大きさ(頭幅)±SE
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3-1:3齢寄主1頭との遭遇経験 3-8:3齢寄主8頭との遭遇経験 5-1:5齢寄主1頭との遭遇経験 5-8:5齢寄主8頭との遭遇経験
図5 寄主遭遇経験時の反応
3-1:3齢寄主1頭との遭遇経験 3-8:3齢寄主8頭との遭遇経験 5-1:5齢寄主1頭との遭遇経験 5-8:5齢寄主8頭との遭遇経験
1時間後に遭遇経験の影響を観察した実験と,直後に遭遇経験の影響を観察した実験の両方を含む
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