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商学論叢 第49巻 第1号

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海外事業投資と外資規制

タイ国「外国人事業法」に関する考察

啓 一 郎

目 次 1.はじめに 2.沿革と論点 3.旧法の意義と新法との比較 旧法の特異性 1 旧法成立の歴史的背景とその意義 2 比較のポイント 3 4.規制業種の改正点 規制業種の分類 1 ネガティブ・リスト 2 5.規制方法の改正点 許可制度の改正 1 主務大臣の権限拡大 2 「外国人事業委員会」の機能の追加 3 サービス業に対する原則禁止と条件付開放 4 投資奨励業種の枠の拡大 5 6.「外国人」の定義の改正点 タイ国における株式会社の支配基準 1 株主数基準の削除と株式数基準の導入 2 「三分の一ルール」の削除 3 7.むすび 「表−1」旧法と新法における業種群の分類表 「表−2」規制業種対比表

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1.は じ め に

外資規制とは,企業の事業活動への参入およびその経営に対し,外国資本 により設立された企業を民族(自国)資本により設立された企業と比べより 制約的に差別する投資受入れ国政府の政策である。外資規制は発展途上国に 多く見られるが,その形態と方法,そして目的はそれぞれの国の事情により 異なり一様ではない。世界貿易機構(World Trade Organization; WTO)への 加盟国は「貿易に関連する投資措置」(Trade Related Investment Measures; TRIM)協定において,ローカル・コンテント要求,輸出入均衡要求,為替 規制,輸出制限が明示的に禁止されている 。しかし,外国企業の事業投資1) そのものに対する出資割合あるいは株主割合などの出資制限および参入業種 制限に関しては今のところルール化されたものがない。 これらの事業投資自体に関わる制限措置は発展途上国の場合,自国産業の 保護・育成並びに先端産業の外資による支配あるいは乗っ取りの防止を目的 とすることが多い。このような外資規制は当然の帰結として外国からの資本 の流入を堰き止め,産業の近代化と高度化の妨げになることはいうまでもな い。本論は外資規制の産業政策としての効果あるいはその逆効果についてタ イ国の事例を採り上げ,1999年に制定された「外国人事業法」の評価を試み るものである。この「外国人事業法」は1972年に布告された通称「外資規制 法」を引き継ぐ改正法である。以下「外資規制法」を「旧法」,「外国人事業 法」を「新法」と呼ぶこととする。 2.沿革と論点 旧法と新法はいうまでもなくタイ国での外資の事業投資を規制する法律 経済産業省通商政策局編『不公正貿易報告書2003年版』(財団法人経済産業調査 1) 会,2002年)

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である。1972年に布告された旧法はその一部に微細な改訂はあったものの, 1999年に新法に改正されるまでの27年間,ほぼ原型をとどめた形で存続した。 このような法律があったにも拘らず1996年までの間,タイ国への外資流入額 は常に貿易赤字を補填して余りあり,タイ国経済は,世界銀行が「東アジア の奇跡」と賞賛した高度経済成長を果たしたのである。産業の近代化と高度2) 化はその達成内容,速度ともに他のアセアン諸国に決してひけを取るもので はなかった。 しかし,「東アジアの奇跡」もそれを永年支え続けた外国からの多額の資 本の流入が急速な流出に転じた時,アジアの経済危機という姿に一変した。 危機が顕在化する契機となったのが1997年7月2日のタイ・バーツのフロー ト制への移行であったことは周知の事実である。このタイ国にとり外国企業 による事業投資の活性化はマイナス成長となった経済を立て直すための最重 点目標のひとつとなり,政府は外資の流れを呼び戻すべくさまざまな方策を 講じた。中でも旧法は外資の流入を阻害しているとの判断からその改正が緊 急な課題としてとり上げられた。

1972年3月30日に布告された旧法の正式名称は「Announcement of the Na-tional Executive Council No.281」(略称「NEC 281」),「革命団布告第281号」 と邦訳されている 。これはタイ国への事業進出を目論む外国企業から市場3) 開放の阻害要因であると目されていたため,タイ国が IMF 8条国入りした 1990年以降,この法律の改正が幾度か試みられている。政治的に見ると,こ れは資本の自由化を推進する国際派議員と,民族資本による工業化を主張す る民族派議員の対立として捉えることができる。国際派を標榜するチュアン

World Bank, The East Asian Miracle: Economic Growth and Public Policy, New York, 2)

Oxford University Press, 1993(白鳥正喜監修/海外経済協力基金開発問題研究会訳 『東アジアの奇跡−経済成長と政府の役割』東洋経済新報社,1994年)

盤谷日本人商工会議所編『タイ国経済投資関連法規集』,pg.81(盤谷日本人商工 3)

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・リークパイ首相が率いる第一次チュアン政権(1992年9月∼1995年5月) はこの改正に積極的に着手し,草案も作成するに至った。しかし民族派の強 硬な反対に遭ったため国会の承認を得る見通しが立たたなくなり,政権の交 代により廃案に追い込まれてしまった。 経済危機からの脱出の使命を担い1997年11月に発足した第二次チュアン政 権(1997年11月∼2001年2月)は改めて旧法の改正に取り組んだ。反対する 民族派議員の抵抗は根強く,一時は凍結かと思われた改正法案は1999年10月 20日,国会閉会の前日に急遽可決・成立するに至った。これが翌2000年3月 1日に発効した新法,すなわち「Foreign Business Act B.E. 2542」,「外国人 事業法(仏暦2542年制定)」である。タイ国政府はこれによりタイ国におけ る外資規制は緩和され海外からの積極的な事業投資が期待できる,とその成 果を喧伝したのである。 本論の論点は改正が果たして外国企業のタイ国向けの事業投資を促し,外 資の流入を活性化させるだけの規制緩和となったかどうか,というところに ある。結論は「否」。純法律的な見地からするといくつかの重要な改正点が ある。また一部の事業が条件付きで開放された。しかし新法そのものは改正 前の現状を追認する内容に止まったのみならず,一部に規制を強化するよう な規定も加わり,先進国企業からの新たな事業投資を呼び込むだけの効果が 得られるものにはなっていないというのがその理由である。さらにいえば法 の安定性が確立されたとはいい難く,不透明性も払拭しきれていない。これ らは全て先進国企業の長期的な大型事業投資の誘致にはマイナスに働く要因 ばかりである。唯一評価できる点は,投資委員会の判断で開放ができる規制 業種の範囲を拡大させたことである。本論ではこれらのことを1990年代後半 のタイ国の実状に照らし合わせながら旧法と新法の内容を具体的に比較する ことにより明らかにして行く 。4) 旧法と新法は,それぞれ32条項と46条項からなる本文と付表により構成さ

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れている。改正法である新法は旧法と構成をほぼ同じくし,両法とも本文は 自然人および法人たる「外国人」の定義を明らかにした上でそれらのタイ国 における事業参入に関わる規制の方法をその主たる内容としている。付表は 規制の対象となる事業の種類を記載したものである。したがって比較の対象 はこれらの構成上の類似性を捉え,①本文に示されている「外国人」の定義, ②業種規制の方法,③付表で指定された規制業種の3点が妥当であると考え る。それぞれの比較のポイントを絞るには,旧法成立の背景と,その意義を 明らかにすることから始めねばならない。 3.旧法の意義と新法との比較 アセアン諸国に外資規制は千差万別の形で存在しているが,タイ国のよう に,一目瞭然にそれと分かる法律を1970年代初期の工業の近代化・高度化の 初期段階で定めた国は他に例を見ない。そして旧法は一貫して「外資規制法」 (英語では「Alien Business Law」)と呼ばれてきたことからも分かるように, 外資規制を象徴する法律であるとの印象を与え続けてきた。これらのことか ら外資の誘致においてタイ国は他のアセアン諸国より不利な競争を強いられ た筈である。しかし実態は逆で,タイ国は他のアジア諸国と互角に競合し, 外国企業の事業投資を継続して呼び込むことに成功している。それはなぜだ ろうか。この答えは旧法の特異性とその意義に求めることができる。 旧法の特異性 1 旧法による外資規制は,原則自由の原理に基づく例外規制であり,全ての 事業を規制の対象とした訳ではない(但し,後述するように,サービス業の

使用テキスト:Department of Commercial Registration, Announcement of the National 4)

Executive Council No.281(旧法),同 Foreign Business Act B.E. 2542(新法)の英訳 テキスト。

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みは原則禁止である)。旧法の一部を成す付表は,規制対象となる業種を指 定したネガティブ・リストで,外資がこれらの業種へ参入し経営することを 許可制としていた。 また旧法はそれまでの政府の外資導入による産業近代化・高度化政策を転 換させようとするものでもなかった。これはネガティブ・リストに指定され た業種が,製造業としては農林水産業,伝統的工芸産業,鉱業など,産業の 近代化と高度化とは無縁なものばかりであったということからして明らかで ある。更に,サービス業においても規制の対象が,弁護士,会計士,仲介業 ないし代理業,理髪師,クリーニング(洗濯)業など,小規模あるいは零細 な自営業が殆どであったということからもうかがい知ることができる。 更に,旧法以外にも外資規制条項を含んだ法律が幾つもあり旧法は総合性 に欠如していた。例えば「土地法」では外資による工場建設用地の取得禁止, 「運輸業法」では外資の運送・倉庫業への参入禁止が規定されているほか, 「外国人職業規制法」においては外国人の就業許可条件などが定められてい る。このように,タイ国の外資規制の全貌を見るには他の法律ひとつひとつ の中からも関連規制条項を拾って行かねばならぬのである。 以上のような特異性ゆえに旧法は「外資規制法」と呼ばれていたにも拘ら ず,民族資本による近代産業の育成を目的とした保護政策的な性格を有する ものではなかった。しかも外資規制とは別に,産業の振興を目的とした「投 資奨励法」という近代産業への投資恩典を盛り込んだ法律が存在し,外資の 事業投資を誘致する役割を果たした。特に製造業の分野において事業の種類, 内容,立地場所などの条件次第ではさまざまな規制が部分的に適用除外とな り,工場建設用地の外国企業による所有制限,業法による制限も緩和の対象 とされて来た。 現在でもそうであるが,外資規制と投資奨励の主務省庁は異なり,前者は 商務省,後者は総理大臣を委員長とする投資委員会である。投資委員会はあ

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る特定の規制業種群 に関しては独自の判断で奨励事業を指定し,外資の参5) 入を承認することができる仕組みになっている。このような規制と奨励の二 本建ての政策はいかにもブレーキとアクセルのようにも見えるが,旧法の特 異性と「産業投資奨励法」を運用する投資委員会の外資誘致に対する前向き で且つ積極的な姿勢は,外国企業によるタイ国への海外事業投資を一時たり とも滞らせることはなかったのである。 旧法成立の歴史的背景とその意義 2 それでは,そもそもなぜ旧法の如き法律が制定されたのであろうか。タイ 国政府は1960年にサリット(サリット・タナラット陸軍司令官)政権が制定 した「産業投資奨励法」のもと,一貫して外資に対する積極的な優遇策を施6) し,産業の近代化を図ってきた。サリット亡きあと(1963年没)もその遺志 は継承され工業化・近代化は進められる。そのさなかの1971年11月17日,当 時の首相であったタノン・キティカチョーン陸軍司令官は国会の機能を停止 せしめ,国の運営を自ら率いる革命団(National Executive Council)の手に 委ねた。翌1972年12月18日に新憲法が制定され,革命団が解散し,タノン陸 軍司令官が再び首相として内閣を結成するまでの1年強の間に364もの布告 が発布された。旧法はそのうちの281番目のものであり,これが「NEC 281」 と称される由縁である。

この革命団は陸軍,海軍,空軍,警察および民間から選出された委員によ

旧法,6条“In case where an alien has been granted a promotion under the law on 5)

the promotion of investment to engage in a business specified in Annex C, such person shall notify the Director-General within thirty days from the date of receiving the promotion certificate. After the Director-General has been notified and has granted a certificate as evidence, such person may then engage in that business.”Annex Cに関しては後述3 (1)「規制業種の分類」を参照。

現在施行されている「投資奨励法」は1977年に制定され,1991年,2001年の2回 6)

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り構成され,国会の混乱,不正の横行,国家予算の承認遅延,学生デモなど による反国家主義の台頭,社会不安,国連による中国承認による共産主義の 拡大懸念などを理由に掲げ,国民から強引に民主主義を一時的に剥奪した。 懸念材料のひとつに外国資本による支配の脅威がうたわれていた。旧法はこ れに対する防衛策として制定されたのである。しかし,タノン首相は産業の 近代化と高度化を推進してきたサリット元首相の陸軍における腹心の部下で あった。それが今までの方針を大逆転させてしまうとは考えられない。その 意図があったのならば先ず「産業投資奨励法」における外資に対する優遇策 の停止があって然るべきであったのに,それはなかった。なぜ改めて旧法を 制定したのか。この謎を解くカギはベトナム戦争で荒廃した当時のインドシ ナ情勢にある。 ベトナム戦争における米軍機による北ベトナム爆撃は多くのベトナム人お よびカンボジア人の難民を生み出した。そしてその殆どが安全を求めてラオ ス,カンボジアと国境を接するタイ国に流れ込んだ。旧法はこの難民が辺境 のタイ国民の生計を脅かすことを防止するのが目的であった 。すなわち,7) 難民がタイ国内で零細な自営業を始めることにより過当競争を引き起こし, タイ国民を駆逐してしまうことを懸念しての措置であったのである。従って, 旧法による外資規制は,先進国の企業を標的としたものではなく,難民とい う次元の全く異なる問題に対応することを目的としていたのである。これが 旧法の特異性の根源である。1975年のベトナム戦争終結後も5年間以上に亘 り,特に中国系難民の大量流出が続いたことを考えると,その倫理的な是非 はともかく当時のタイ国政府には先見の明があったといえよう。 それでは旧法は産業政策上の役割を何も果たさなかったのかというとそう ではない。旧法は単に小規模・零細事業を難民による侵食から守っただけで

Charoen Kittikanya,“Oiling wheels of foreign investment,”Bangkok Post Dec.29, 1999 7)

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はなく,先進国企業による支配から産業全般を,更にいえば国の経済的主導 権を守るという役割も果した。しかも重要なことは先進国企業の事業投資と それによる産業の近代化と高度化を妨げることなくこの役割を果たした点に ある。すなわち,矛盾する産業政策上のふたつ目標を同時に達成したのであ る。ここに旧法の意義がある。 なぜ旧法は矛盾するふたつの目標を同時に達成することができたのであろ うか。要因は次に述べる三点にあり,その中には旧法と新法の比較のポイン トも見出すことができるのでそれらを明らかにしながら見て行くことにする。 比較のポイント 3 第一の要因は旧法による外資規制の適用が難民による零細自営業の範囲を 大きく超え,産業全般を覆う結果となったことにある。これはネガティブ・ リストに指定された業種の定義が多くの場合欠如していたり不明確であった りしたため,業種範囲・規模の拡大解釈がいつの間にか de facto standard と 化してしまったことによる。例えば,一匹狼のブローカーを対象とした「仲 介業ないし代理業(Brokerage or Agency)」,或いは自営のツアーガイドを対 象とした「観光業(Tourism)」の範疇に株式会社組織の商社,旅行会社まで が含まれると解釈されたことなどが挙げられる。但し,タイ国商業省は一定 の審査基準を内規として作成していた可能性もあり,全てが拡大解釈であっ たとは限らない。定義の不安性と運用の不透明性は旧法を運用する当局にと り時と場合によっては極めて好都合であったに違いない。いずれにせよ,こ のような拡大解釈が結果的に先進国企業による産業支配の抑止力として広範 に機能したのである。このことから規制業種の増減とそれぞれの業種の範囲 限定の有無ということが比較のポイントとして浮上してくる。 第二の要因は旧法が「外国人」としての規制を受けない事業投資の方法を 逆説的に明示したことにある。旧法で「外国人」(「Alien」:自然人および法

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人)の定義が明示されたことにより,外国企業とタイ国人あるいはタイ国企 業のパートナー(以下「地場企業」と呼ぶ)との共同出資によりタイ国に設 立された合弁企業が「外国人」とみなされる場合(以下「外資企業」と呼ぶ) とそのようにみなされない場合(以下「内資企業」と呼ぶ)の区別が明確に なった。それまでは単に資本金の過半数以上を外国企業が出資している場合, 企業の支配権が外国企業にあるとの考え方からこれを「外国人」扱いして来 た。旧法は,「外国人」の定義の中で企業支配の基準を明確にしたため,逆 に外国企業が支配権を有しない内資企業を媒介とした事業進出の道を開いた のである。 内資企業は地場企業と同等とみなされるため外資規制の対象とはならない。 このため先進国企業による事業投資が広く内資企業へ及び,新しい技術ある いは経営手法の導入などによる産業の近代化と高度化は妨げられることがな かった。しかも,企業の支配権はタイ国の合弁パートナー側が保持できたた めに先進国企業による産業の席捲は免れたのである。このようなことから導 かれる比較のポイントは,「外国人」の支配権を内資企業との関係でどのよ うに捉えるか,ということである。 第三の要因はなぜ外資が許可を求め「外国人」あるいは外資企業として堂 々と規制業種に参入せず,内資企業に事業投資を集中させたかという疑問に 答えるものである。旧法における許可制を確立させるにあたり,当時のタイ 国政府は国の最高権威である国王の王権布告を持ち出し,殆どの規制業種に 王権布告による許可を参入の条件としたのである。王権布告は国王の意思の 一方的な表れであり,申請により得られるものではない。要するに許可申請 の道が示されていない実質禁止である。また,先に旧法の総合性の欠如につ いて述べたが,仮に許可が得られても「外国人」あるいは外資企業と認定さ れると旧法以外にも税法,土地法,各種業法などに盛り込まれているそれぞ れに固有の外資規制条項に抵触することになり,さまざまな不都合が発生す

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ることになった。これらの理由により外資にとり内資企業は規制業種へ参入 する最も合理的な道だったのである。このことから許可権限の所在,その他 条件の変化を見ることがここでの比較のポイントとなる。 ここで,法改正は規制の緩和になったかどうかという本論のテーマに戻り, 以上の比較のポイントを軸に,規制業種,規制方法,「外国人」定義の順に それぞれの改正点につき見て行くことにする。 4.規制業種の改正点 旧法のネガティブ・リスト(以下「旧リスト」と呼ぶ)に指定されていた 業種が新法のネガティブ・リスト(以下「新リスト」と呼ぶ)から除外され れば規制が緩和されたとみなすことができる。但し,比較のポイントとして 規制業種の定義の明確化によるに拡大解釈の可否についても合わせて判断す る必要があることは前述の通りである。この点を踏まえて新旧リストの構成 を分析し,改正点を評価して見る。 規制業種の分類 1 先ず規制業種の分類の仕方がどのように変わったか,本論末尾に「表−1」 として添付した旧・新法の業種群の分類表を御覧いただきたい。 旧法においては先ず業種を①農業関連事業,②商業関連事業,③サービス 関連事業,④工業および手工芸関連事業,⑤その他の事業の五つに分類し, それぞれを A,B,C の三つの業種群に振り分けている(Annex A,Annex B,Annex C と呼ばれている)。Annex 1 に含まれるのは④を除く①か⑤まで の業種, Annex 2 に含まれるのは①から⑤の全業種,Annex 3 には①を除 いた②から⑤の4業種が含まれる。同種の業種でもそれぞれの具体的内容は 分類された三つの業種群により異なる。そうした上で,Annex A および B を王権布告で許可される業種群,Annex C を商業省・登記局長の許可を要す

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る業種群の二つに大別している。これらには経過措置の違いがある。Annex A は,旧法発効後2年間は,発効前に営業許可取得済みの「外国人」および 「外資企業」は営業を継続できるが,3年目以降は旧法に抵触することにな る業種。Annex B および Annex C は,旧法発効前に営業許可を取得済みの 「外国人」および「外資企業」であれば旧法発効後1年以内に登記局長にそ の旨を通知し許可を取得すれば営業を継続できる業種群である。

新法が業種を三つの業種群に分類(List One,List Two,List Three と呼ん でいる)している点は旧法と変わりない。しかし,旧法においてはどのよう な基準で分けたかが明示されていなかったのに対し,新法はそれを明らかに している。List One は「参入禁止業種」で,いかなる場合でも「外国人」が ここに含まれる業種に携わることはできない 。List Two は「特定業種」と8) でもいうべき業種群であり,これを三つに分類し,Group 1 を国家の安全と 保障に関わる業種,Group 2 をタイ国の文芸,伝統的な慣習,および伝統工 芸に関わる業種,Group 3 を天然資源および環境に関わる業種としている。 List Three は「幼稚産業」と特徴付けられる業種群で,「タイ国民が外資との 競争をする準備ができていない事業」と定義されている。経過措置に関して は,旧法のごとく業種群別の差別はなく,先ず旧法のもとで得た既得権は無 期限に保証される。更に旧法には抵触しなかったが新法には抵触する業種の うち,既に営業中のものに限り,一年以内にその旨を登記局長に通知するこ とにより許可申請ができるとしている。 業種群の分類を比較して総じていえることは,新法が産業政策の一環であ ることを明示している点にある。例えば,新法において「幼稚産業」群をひ と括りにすることによりタイ国政府としては先進国企業による産業支配を防 ぐ意思があることを明確にしている。もう一点,新法は文化の発展と未来に 新法,8条 (1)“Foreigners shall be prohibited from operating the business not permitted 8)

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向けた産業政策とでもいうべきひとつの全体的な構想を明らかにしている。 これは「特定業種」において伝統的手工芸事業の保護,未来を保障するため の国家の安全および環境保全の三点を挙げ,ひとつのコンセプトの形成を試 みている点に表れている。更に,この業種群への外資の参入には出資と取締 役に対する制限が加えられ,本文においてタイ国の自然人ないし法人が資本 金の少なくとも40%を保有し,全取締役員数の五分の二以上をタイ国人とし なければならないとしている 。これによりタイ国人の意向を反映させるこ9) とを義務付けている点も大きな特徴である。 以上のように,新法は明らかに旧法と一線を画することを意図して策定さ れた事がわかる。しかし,規制の緩和という点ではどうであろうか。この実 態を明らかにするためには新旧リストで指定されている業種の詳細と本文に おいて規制方法がどのように改正されたかを詳細に見て行く必要がある。 ネガティブ・リスト 2 本論末尾に添付した「表−2」の規制業種対比表では,先ず新リストで特 定された個々の業種をその分類順に従い表の左半分に列挙した。表の右半分 には旧リストから新リストの業種と同類と思われるものを拾い出し,新リス トの業種に並列して列挙することにより新旧リストの業種を相互に関連付け ている。「分類番号」は新旧リストそれぞれに示されている各業種のもので ある。左表と右表それぞれの左端と右端の各1列に示された番号は著者が便 宜上施したものである。但し,旧リストの業種が新リスト上の複数の業種へ の振り分けが妥当と考えられる場合は重複して記載し,重複した業種には番 号欄に一回目と同じ数字が記されている。こうすることによりどの業種が 新法,15条“The foreigners may operate the business under List Two only if Thai 9)

nationals or juristic persons that are not foreigners under this Act hold the shares of not less than 40% of the capital of that foreign juristic persons. 中略 and that number of Thai directors shall not be less than two-fifth of the total number of directors.”

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「外国人」および外資企業に開放されたか,そしてどの業種の定義がより明 確になったのかが分かる。この表に新法が業種規制を強化したのか,緩和し たのかを評価する手がかりを求めることができる。 結論から先にいうと,新リストは旧リストで指定された業種を再分類した に過ぎず,規制を緩和したとはいえない。条件付きとはいえ開放した業種も あるという意味で評価できる部分も確かにあるが,本質的な内容の多くは変 わっていないのである。 「表−2」を見ての通り,新法で指定された業種と旧リストで指定された 業種とが分類上合致する部分が多いことに驚かされる。しかも,新リストの 殆どの業種について旧リストで不明確だった業種範囲の限定がなされておら ず,相変わらず拡大解釈の余地を残したままの状態となっている。 規制業種の数を項目数で見ると旧リストの63項目は新リストで43項目と, 大幅に削減されたかの印象を受ける。「表−2」の旧法欄,No.48から63の 業種は旧リストから削除された業種(重複分を除くネット)である。削除さ れた項目には,内容的見ていかにも難民対策と思われるものが多く含まれて いて,規制緩和という観点からは無意味である。しかも,削除されたからと いって完全に開放された訳ではない。なぜなら,旧法欄,No.60から63の4 業種はサービス業に分類されるものであり,新法欄,No.43 で,省令によ10) り許可されなければ営業できない「その他のサービス業」に一括されてしま うからである。それと同様に扱われる可能性を残しているのが旧法欄,No. 58と No.59の2業種である。このように消去して行くと,実際に開放された と判断できる業種は旧法欄,No.48から No.57の10業種にしか過ぎない。し かもこれらはマッチの製造,動物飼料の製造,製氷など規制緩和による投資 促進は期待困難な業種ばかりである。

業種としては新法,List Three (21)“Other categories of service business except that 10)

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規制範囲の限定・縮小により規制が緩和された業種として特記すべきもの が三つある。「建設業」 ,「仲介業ないし代理業」 ,「小売業」 である。こ11) 12) 13) れら三業種は「幼稚産業」に分類されているが,業務内容と資本金額に関す る特別規定が設けられたことにより規制対象が限定され,旧リストでの拡大 解釈の許容範囲が狭められた。この資本金額に関する特別規定は,新たに導 入された最低資本金の規定 を活用したもので,外資に高額な出資金の義務14) を課すことにより国際的な大企業には参入を許容する一方で,過当競争の原 因となる可能性のある個人を含む小規模な外資の参入は制限することを狙い としている。 旧リストの「薬物の製造」も拡大解釈が排除されたと解釈できよう。旧リ ストの拡大解釈では外資企業による医薬の製造までもが規制されたことにな るが,新リストにおいて「タイ薬草の抽出」と改められたため医薬産業が外 資にも開放されたと解釈できる。 しかし,後から述べるように上記四業種には既に永年「内資企業」として タイ国内で活動してきた実績のある外国企業も多く,ネガティブ・リストの 新法,List Three (10)“Construction, except for:(a) Construction rendering basic services 11)

to the public in public utilities or transport requiring special tools, machinery, technology or construction expertise having the foreigner’s minimum capital of 500 million Baht or more. (b) Other categories of construction as prescribed by the ministerial regulations.” 新法,List Three (11)“Broker or agent business, except: (a) Being broker or agent 12)

for underwriting securities or services connected with futures trading of commodities or financing instruments or securities. (b) Being broker or agent for trading or procuring goods or services necessary for production or rendering services necessary for production or rendering services amongst affiliated enterprises. (c) Being broker or agent for trading, purchasing or distributing or seeking both domestic and foreign markets for selling dome-stically manufactured or imported goods in the manner of international business operations having the foreigner’s minimum capital of 100 million Baht or more. (d) Being broker or agent of other category as prescribed by the ministerial regulations.”

新法, List Three (14)“Retailing all categories of goods having the total minimum 13)

capital less than 100 million Baht or having the minimum capital of each shop less than 20 million Baht.”

後述 (3) a.「許可制度の改正」を参照。 14)

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改正そのものが新たな事業投資を呼び込めるとは考え難い。これら以外にも 規制の範囲が限定された業種はいくつかあるが,それらは米作,タイ国海域 内での漁業などであり,規制緩和の意味合いが希薄である。また,新たに軍 需産業,エンジニアリング・サービス,タイ国伝統楽器の製造が規制業種と して加えられていることもあり,このような観点からしても新リストは実質 的な規制緩和とは程遠い内容となっている。 また「新リスト」はなお多くの規制業種の具体的な範囲に関して曖昧さを 残しており,規制当局による恣意的な拡大解釈と運用を可能にしている点に 法的な不安定性を感じざるを得ない。 5.規制方法の改正点 規制の方法は,緻密になればなるほど制約される範囲がより限定されるた め規制を緩和する効果を持つ。また,それにつれ透明性が高くなり,法的な 安定性が高まる。逆の場合,すなわち曖昧になればなるほど拡大解釈の余地 と制約される範囲が広がり外資誘致の妨げとなる原因となる。 ここでは主要な改正点である許可制度の改正,主務大臣の権限規定と省令, 「外国人事業委員会」の機能の追加,サービス業に対する原則禁止と条件付 開放,そして投資省令業種の枠の拡大という五点に焦点を当てて旧法と新法 を比較してみる。これらのうち,最初の四点は表面的には規制緩和の方向を 示してはいるが,実質的には疑問であり,運用面での弾力性が法的な不安定 性をもたらしているという点で共通している。 許可制度の改正 1 重要な許可制度の改正点が二つある。ひとつは比較のポイントとして指摘 した国王(王権布告)の権限が,主務大臣(主務省庁は商業省ゆえ,以下 「商業大臣」とする)に降ろされたこと。もうひとつは,許可条件として

(17)

「最低資本金」の規定が設けられたことである。 規制業種に対する許認可権限の所在は業種群により異なり,「表−1」に あるように旧法においては国王の場合と商業省・登記局長の場合との二通り に分かれていた。これが,新法においては,商業大臣と登記局長の二本立て に改正されている。 新法において三つに分類された業種群のうち,List One は許可制の例外 であり,「外国人」の参入は許されない「参入禁止業種」であることは前 述した通りであるが,List Two は「内閣の承認と大臣の許可を必要とする業 種」 ,List Three は「外国人事業委員会 の承認と登記局長の許可を必要と15) 16) する業種」 とされている。旧法では,参入禁止業種は指定されていなかっ17) たものの,三つ業種群(Annex 1,Annex 2,Annex 3)のうちの二つに「外 国人」が参入するためには,王権布告が必要であった 。これは前述した通18) り実質禁止に等しい措置であったため,新法は許可制度を実践的なものに改 めたと言える。しかし,許可申請の手順は省令により定められているものの, これは政治な政策判断を求めるプロセスでもあり実行性が疑わしい。鉄道, 空港の建設などの大型国家プロジェクトはこの対象に相応しいが経済性を追 求する通常規模の事業には無縁としか考えられない。この意味で旧法も新法 も原則自由ではあるものの開放の度合いが実質的にどれだけ改善されたかは

新法,8条 (2)“Foreigners shall be prohibited from operating any business concerning 15)

national safety and security, business affecting art and culture, tradition and folk handicraft or the business affecting natural resources or environment as prescribed in List Two unless permitted by the Minister with the approval of the Cabinet.”

後述 c. 『「外国人事業委員会」の機能の追加』参照。 16)

新法,8条 (3)“Foreigners shall be prohibited from operating the businesses prescribed 17)

in List Three in which Thai nationals are not ready to compete unless permitted by the Director-General with the approval of the Committee.”

旧法,4条“An alien shall not engage in any business specified in Annex A and 18)

Annex B attached to this Announcement of the National Executive Council, unless otherwise permitted by a Royal Decree. 以下省略”

(18)

疑問である。 「最低資本金」は会社設立時に外資が出資せねばならぬ資本金の最低額で ある。これは,省令で定められ,いかなる場合でも2百万バーツ(約7百万 円)を下回らない額とされている 。旧法にはこのような規定は設けられて19) いなかった。その理由は実質禁止となる業種の範囲が広く全般的な禁止的条 件を施す必要がなかったためであると考えられる。 通常このような規定の背景には投資受入国の外貨の確保という政府の財政 的な意図がうかがえるものであるが,タイ国の場合には該当しない。ここで は最低資本金額が現地通貨で示されていて,外貨の被仕向送金が義務付けら れている訳ではないからである。政府としては,過当競争防止策としてこの 規定を設けたものと理解できる。また,ベトナム難民問題は遠い過去のもの となってはいるが,零細自営業の「外国人」からの保護,という旧法の考え 方は未だに活きている。タイ国は軍事政権が支配するラオス,カンボジア, ミャンマーの三国と国境を接し,更にその一歩先には軍事大国の中国が控え ている。安全保障を常に意識せざるを得ぬこのような地勢上の問題を抱えた タイ国にとっては,一旦ことが起った場合の難民対策は不可欠なのである。 政府は省令により業種ごとの最低資本金額を適宜設定することにより単に 零細自営業の保護に止まらず,大型事業についても産業政策上好ましくない 外資による支配を排除することができる。政府は必要に応じこの規定を発動 し,禁止的な「最低資本金」を課すことによりこの効果を得ることができる のである。このように最低資本金規定は運用次第で規制を強化も緩和もでき る仕組みにもなっているが,その分,法の安定性が損なわれている点を看過 する事はできない。

新法,14条“The minimum capital used at the commencement of the business opera-19)

tion shall not be less than that prescribed by ministerial regulations and shall in no case be less than two million Baht. 以下省略”

(19)

主務大臣の権限拡大 2 許可制度の改正に伴い,新法において商業大臣には適宜省令を発し,許可 に際しての新たな条件を加える権限が付与された 。本文には許可条件の具20) 体例が4つ示されている(外資割合,タイ国内在住の外国人取締役の数,最 低資本金額とその維持期間,技術・資産に関するもの)。しかし,最後に 「その他必要と判断されるもの」が加えられているため商業大臣に付与され た許可条件発令の権限は無制限であると解釈できる。要するに,政府は商業 大臣が発する省令を道具に外資規制を緩急自在に操ることができるのである。 唯一の制約は,次に述べる「外国人事業委員会」の承認も必要とされる点で あるが,この委員会がどこまで抑止力になり得るのか不明である。 「外国人事業委員会」の機能の追加 3 「外国人事業委員会」(以下「委員会」と呼ぶ)は,既に旧法においてそ の設置が定められている。しかし,委員会そのものの運営は不透明で,全く 形骸化していたとも言われていた。新法ではその運用に関わる積極的な役割 を与えている。 旧法における委員会は,商業省政務次官を議長とし,投資委員会を含む産 業と経済に関連する各省の政務次官により構成されていた。新法ではその枠 を警察,教育省などにまで広げると同時に,産業界の代表および商業大臣が 指名する一般の有識者を加え政治的な色彩を薄めている 。21) 旧法における委員会の機能は,許可申請却下に対する不服申し立てがあっ 新法,18条“The Minister with the advice of the Committee is empowered to issue 20)

the ministerial regulations prescribing any of the following conditions for the foreign licensees to comply with; (1) The ratio of the capital and loans to be used in the permitted business. (2) Number of foreign directors who must have domicile in the Kingdom. (3) Number and period for keeping the minimum capital in the country. (4) Technology or assets. (5) Other necessary conditions.

新法,23条 詳細略 21)

(20)

た場合の再審査に限定されていた。新法で与えられた役割で重要なものは二 つある。第一は登記局長が下す List Three の業種に対する許可申請の審査と 承諾であり ,第二は規制業種の最低毎年一回の見直しと外資規制に関わる22) 委員会見解の内閣への進言である 。23) 新しい委員会にこのような積極的な機能を与えることにより,民主的な許 認可プロセスの導入を図ろうとする政府の動機は評価に値する。しかし,こ れはより開放的な政策の推進を保証するものではない。委員会の運営のされ 方によっては規制強化につながる見解が商業大臣に具申される可能性もある と考えられ,ここにおいても法の不安定性が問題となる。また,新法が発効 して以来,何が協議され,どのような具申がなされたのか一般には未公開で 依然透明性に欠けているのが実情である。 サービス業に対する原則禁止と条件付開放 4 新法は旧法同様サービス業を原則禁止としている。これは本文ではなく付 表の中に加えられた但し書きで明らかにされている。旧リストでは「サービ ス関連事業:付表AおよびBで既に規定されたもの以外すべて」 とされて24) いる。これと比較し新リストでは「その他の分野に属するサービスに関わる 事業で,省令で定められたもの以外」 とされている点,旧法が法そのもの25) が改正あるいは改訂されない限り例外は認められない厳しいものであるのに

新法,8条 (3)“Foreigners shall be prohibited from operating the businesses prescribed 22)

in List Three which Thai nationals are not ready to compete unless permitted by the Director-General with the approval of the Committee.”

新法,9条“The Committee shall review the business categories under the Lists attached 23)

hereto at least once every one-year period from the date of this Act comes into force and shall submit its opinion to the Cabinet.”

旧法,Annex C Chapter 3“Business in Services: Except for those specified in Annex 24)

A and Annex B.”

新法,List Three (21)“Other categories of service business except that prescribed in 25)

(21)

対し,新法は別途省令による段階的な規制緩和措置がある得ることを示して いる。これは政府のより開放的な姿勢を示すものとして評価できる。問題は 実際にそのように運用されているかどうかにあるが,新法が発効して以来, 今日までこの条項を運用して新たに開放されたサービス業はない。 一方,先に述べた「建設業」,「仲介業ないし代理業」,「小売業」の条件付 開放の規制緩和効果はどうであろうか。この措置によるタイ国政府の狙いは 第一に大型建設プロジェクトの誘致による雇用の促進;第二は商社(特にわ が国の総合商社)の世界的なネットワークを利用した幅広い取引のマッチン グの促進によるタイ国からの輸出とタイ国向け事業投資の活発化;第三は, 外国の大手スーパーマーケットの誘致による国内消費の刺激であった。今ま で内資企業としてしか活動できなかった外国の建設会社,商社,スーパーマ ーケットをタイ国パートナーへの利益の分配から解放し,利益の極大化の機 会を与えることによる取引規模の拡大を期待したのであった。しかし,実態 としては,最初の二業種に属する多くの大手企業は,内資企業として既にそ れなりの実績を挙げており,ここで条件付開放がなされたからといって新た な事業投資による飛躍的な経済的効果は期待できない。また,条件付開放と いっても外資企業として扱われることには変わりはなく,他の法律の抵触を 免れ得ず,土地法,業界法などにも含まれた外資規制が総合的に緩和されな い限り,規制緩和の効果は限定的なものにならざるを得ないのである。例え ば,外資による土地所有を含めた事業投資は,土地法の規制により禁止され ている現状,新規参入を促すような新たなインセンティブは見出せない。唯 一外国の大手スーパーマーケットに関しては首都バンコックに続々と大規模 店舗の出店があり多くの買い物客を集めている。しかし,これは一方では既 存の零細自営業を圧迫することになり,摩擦の原因となっている。

(22)

投資奨励業種の枠の拡大 5 旧法において,投資委員会が「投資奨励法」のもとで特別許可を発行でき る規制業種は,Annex 3(登記局長許可条件の業種)の一業種群に限られて いたが,これが新法においては,List Two(商業大臣の許可条件の業種)及 び List Three(登記局長の許可を必要とする業種)の二業種群に拡大され た 。そのため「外国人」による投資奨励の対象に出来ない業種は,List One26) の禁止業種群の9業種に大幅に削減されたと解釈できる。この意味で新法は 開放の範囲の可能性を大幅に拡大させたといえる。事実,2001年に改訂され た「投資奨励法」 の下で投資委員会はこの規定を実際に運用可能とさせる27) よう,例えばサービスおよび公共事業の分野に多くの奨励指定業種を付け加 えてきている 。28) この点は極めて重要である。本論の冒頭で既に新法は外資規制を緩和する に至っていないことを結論として申し述べたが,これは飽くまでも新法その ものに限定してのことであり,必ずしも政府の全般的な方針を表したもので はない。タクシン政権となった現在,奨励指定業種の追加が一部の大型輸送 事業,人工衛星通信事業などのサービス業にも及んでいることは,タイ国政 府が投資委員会の機能を活用して規制の緩和に前向きに取り組んでいる事実 の証といえる。このように,投資奨励業種の枠の拡大は規制緩和の条件を整 えたという意味で高く評価できる。

新法,12条“In the case where the business of a foreigner that is promoted under 26)

the investment promotion law or permitted in writing to operate the industry or trade for export under the law governing the Industrial Estate Authority of Thailand or other laws and business that are classified in List Two or List Three attached thereto, the foreigner shall notify the Director-General in order to obtain a Certificate. 以下省略”

“Investment Promotion Act B.E. 2520” 27)

詳しくは,タイ王国政府投資委員会事務局『タイ国投資委員会ガイド』(2003年9 28)

(23)

6.「外国人」の定義の改正点 タイ国で設立された企業が「外国人」あるいは外資企業とみなされる根拠 は外資がその企業を支配しているかどうかという点に凝縮される。すなわち 「外国人」が支配しているとみなされるのが外資企業であり,地場企業が支 配しているとみなされるのが内資企業であると言い換えることができる。こ こでは何をもって支配の有無を判断するのかということを,わが国の商法 (以下「商法」と呼ぶ)とタイ国「Civil and Commercial Law」(以下「民商 法典」と呼ぶ)がそれぞれに定める株式会社に関する規定を比較しながら明 らかにし,この支配基準の改正が外資規制を緩和する効果をもたらしたかど うかを評価する。支配基準は,それが緩やかであればあるほど「外国人」あ るいは外資企業と認定される範囲が広くなり,内資企業の設立が難しくなる。 逆の場合は適用範囲が狭くなるため,規制緩和の効果が得られ,外資の内資 企業への事業投資を誘致する役割を果たす。すなわち外資にとり内資企業へ の投資がより開放的になったかどうかという点が評価のポイントとなる。 タイ国における株式会社の支配基準 1 通常,企業の支配とは取締役を選任・解任することができる力の保持を意 味する 。なぜなら選任された取締役は主要な運営方針,事業戦略,主要人29) 事などその企業の存続に関わる業務執行の意思決定をする取締役会の構成員 となるからである。 株式会社において取締役を選任・解任するのは株主総会である。この意味 で株式会社における支配とは株主総会の議決を左右する力を保持しているこ とであるといえる。わが国の株主総会における普通決議は,発行済株式総数 金子宏,他共著『法律学小辞典』492頁(有斐閣,2002年) 29)

(24)

の過半数を持つ株主を定足数とし,出席株主の議決権の過半数で決せられ る 。すなわち発行済株式総数の過半数の保有により支配権が確立されるの30) である。 タイ国においては事情が異なる。タイ国における株式会社の支配権は単に 発行株式とその保有割合だけではなく,株主と資本金との関係にも焦点を当 てて考えて見る必要がある。先ず株主総会の定足数の考え方が異なる。民商 法典における規定では資本金総額の四分の一以上を保有する株主の出席とさ れている 。これに続きより重要なのは,決議方法と特有な議決権の割り当31) て方である。 民商法典に定められた株主総会決議は「挙手」による賛成多数と「投票」 による賛成多数の2方法があるが,「挙手」の場合と投票の場合とでは議決 権の割り当て方が異なる。「投票」が行われる場合の議決権は一株に一票が 付されている が,株主総会においてはそこに出席している株主(代理人も32) 含める)一人に一票が割り当てられ ,決議は2名以上の株主から「投票」33) の要求がない限り通常出席しているか株主の過半数の「挙手」によってなさ れる仕組みとなっている 。すると資本金の過半数を有するタイ国人の大株34) 主でも株主総会においては一票の議決権しか行使できないため,理論上多数 の「外国人」の一株株主に数の上で対抗できなくなってしまうことも有り得 るのである。 このようにタイ国の株主総会における支配権の所在は,①株主の数,②発 行済み株式に対する株式の保有割合,③払込資本金に対する出資割合の3点 から多面的に捉えなければならないのである(以下,順にそれぞれを「株主 商法,239条 詳細略 30) 民商法典,1178条 詳細略 31) 民商法典,1182条 詳細略 32) 民商法典,1182条 詳細略 33) 民商法典,1190条,1191条 詳細略 34)

(25)

数基準」,「株式数基準」,「出資基準」とする)。 株主数基準の削除と株式数基準の導入 2 新法も旧法も「外国人」とは,タイ国籍を有しない自然人ないしタイ国で 登録されていない法人であると定義している 。更に,外資企業についても35) 共通の出資基準を設定している。すなわち,タイ国で設立された法人の資本 金の半分あるいはそれ以上がタイ国籍を有さない自然人ないしタイ国以外の 国で設立された法人の出資で構成されている場合,この法人は「外国人」あ るいは外資企業とみなされる。旧法にはこの出資基準に加え株主数基準が適 用された。重要な改正点は,新法ではこの株主数基準が削除され,株式数基 準が新たに導入されたことにある。これを具体的に見ると次のことがいえる。 旧法では仮に出資基準で内資企業とみなされてもタイ国籍を有さない自然 人ないしタイ国以外の国で設立された法人株主の数が,全株主の半分あるい はそれ以上を占めている場合,この企業は「外国人」あるいは外資企業とみ なされていた 。旧法はこのような株主数基準を適用することにより多数の36) 「外国人」の小額株主が,数により支配権を牛耳る可能性をも封殺し難民に よる企業支配の防止に万全を期したのである。 新法に導入された株式数基準とは,タイ国で設立された法人の発行済み株 式の半分あるいはそれ以上がタイ国籍を有さない自然人ないしタイ国以外の 国で設立された法人が所有している場合,その企業は「外国人」あるいは外 資企業とみなすというものである。これがどのような意味を有するかは「優

新法,4条“Foreigner”“means (1) Natural person not of Thai nationality. (2) Juristic 35)

person not registered in Thailand. 以下省略.”旧法,3条“Alien”“means natural or juristic person who is not of Thai nationality∼以下省略.”

旧法,3条“Alien”“(1) A juristic person with at least one-half of its capital owned 36)

by aliens. (2) A juristic person, at least one-half of the number of shareholders, partners or members of which are aliens, notwithstanding the amount of capital invested by aliens.”

(26)

先株」に対するわが国とタイ国の違いについて比較するとわかり易い。 わが国の商法では「数種の株式」の規定 により配当受領権の内容に応じ37) た数種類の株式を発行することが可能で,さらに「議決権なき株式」の規 定 により優先配当権を得る代わりに議決権を有しない株式の発行が認めら38) れている。 タイ国の民商法典においては「普通株」と「優先株」の発行が認められて いるが,ここでいう「優先株」の優先権は必ずしも優先配当を意味しておら ず,その具体的内容は株式会社設立総会で別個に定めることになっている 。39) しかも「普通株」であれ,この「優先株」であれ,民商法典に基づく投票が 行われる場合,全ての株式に議決権が生じる仕組みになっている 。このよ40) うにタイ国においては無議決権株式の発行は認められていないのである。 ここで仮にタイ国人株主2人が「普通株」の3倍の価値を持つ「優先株」 をそれぞれ1株ずつと,「外国人」株主1人が「普通株」1株を保有する企 業が存在していたとしよう。この企業の株主構成はタイ国人2人,「外国人」 1人;株式構成はタイ国人が2株,「外国人」が1株;資本構成はタイ国人 6単位,「外国人」1単位であり,あらゆる面から見て支配権がタイ国人に ある内資企業である。この企業が財務体質強化のため「優先株」1株と「普 通株」1株を発行し,これを既存の「外国人」株主1人が引き受け,単独増 資に応じたとする。株主構成は不変。資本金合計額は11単位になるが,「外 国人」株主の出資額は5単位で半数を超えない。しかし「外国人」の保有株 数は3株に増加し,タイ国人株主が保有する2株を上回る結果となるため, この企業は支配権を一転して「外国人」に譲らざるを得なくなる。なぜなら タイ国においては無議決権株式の発行は認められておらず,株式一株には必 商法,222条 詳細略 37) 商法,242条 詳細略 38) 民商法典,1108条 (4) 項 詳細略 39) 民商法典,1182条 詳細略 40)

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ず議決権一票が付随しているからである。 旧法においては仮にこのような増資が実行されたとしてもこの企業は引き 続き内資企業とみなされ外資規制の対象外とされていた。新法ではこれを 「外国人」あるいは外資企業とみなし規制の対象とすることにしたのである。 これはタイ国人株主の資金難に乗じて「外国人」が支配権をもぎ取ってしま うような事態を防止するための措置であると理解できる。 さて,株主数基準を株式数基準で置き換えた新法は果たして外資規制にど のような効果をもたらしたのであろうか。 株主数基準についていえば,これは27年の間にいつの間にか有名無実化し ていた。この規定には細則が欠如していたため,例えば企業内で一株株主の タイ国人従業員を募り株主構成を調整することが不可能ではなく,事実この ような方法により内資企業を設立することは極めて普通に行われていた。難 民対策の緊急度が低下するに従い,この基準による「外国人」株主の制限は あまり意味のないものになってしまったのである。従ってこの基準が削除さ れたことによる外資の事業投資を誘致する効果は皆無であると考えて良いだ ろう。 一方,株式数基準が新法に導入されたことにより「外国人」による単独増 資の道が閉ざされてしまったことは前述の例で示した通りである。アジア通 貨危機発生後の銀行の貸し渋りは単に地場企業のみならず多くの内資企業を 運転資金不足に追い込んだ。その上,外貨建て借り入れをしていた企業の多 くは現地通貨建ての返済金額が膨張したことと,1997年の省令による為替差 損の特別会計処理の結果債務超過となり,一層深刻な状況に陥っていた。こ のように増資による財務体質改善が不可欠の状況の中で資金不足のタイ国人 株主に対等増資を求めることは不可能であり,「外国人」パートナーによる 単独増資は唯一の残された道であった。仮に株式数基準がなかったとしても, 出資基準の縛りがある中での「優先株」による外資の単独増資には金額的な

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限度はあったであろう。しかし単独増資そのものの機会を封じてしまったと いう意味でこの基準の導入は旧法以上に規制を強化する結果となってしまっ たのである。 「三分の一ルール」の削除 3 新法では更に親会社が外資企業である場合の子会社,孫会社,曾孫会社な どの関係会社について規定している。これによると,タイ国内で設立された 法人の資本金の過半数が外資企業の出資で構成されている場合,その法人は 「外国人」あるいは外資企業とみなされる。そして親会社が「外国人」で, 子会社の資本金の過半数が親会社の出資で構成されていれば,この子会社は 外資企業;この子会社が,更に別の事業に投資し,その会社の資本金の過半 数がこの子会社の出資で構成されていれば,この孫会社も外資企業とみなさ れる,という具合に外資企業の規定は,過半数の原則を適用しながら企業の 血筋を延々と遡って行くことにより,当該企業が外資企業か内資企業かの判 定がなされる仕組みとなっている。逆にいうと,親会社が「外国人」であっ ても子会社への出資割合が資本金の半分未満であればこの子会社は外資企業 ではなく内資企業とみなされるとの解釈が可能となる。するとこの子会社は 外資規制の対象から外れるため自由に規制業種への参入が可能になる。更に, この子会社への「外国人」の親会社の出資割合が49%未満であれば,「土地 法」に抵触することなく土地を所有が可能となる。そしてこの子会社が資本 金全額を出資して孫会社を設立してもその孫会社は内資企業とみなされ,あ らゆる外資規制の束縛から免れることができるとの解釈が可能となるのであ る。 旧法においては,通称「三分の一ルール」という原則が定められていて, 外資のタイ国内での再投資には出資限度枠が設定されていた。三分の一ルー ルとは,事業許可証を取得した「外国人」,外資企業,および外資企業の株

(29)

主で事業許可証を持たない「外国人」は,タイ国における他の投資先の三分 の一以上の資本金ないし株式を保有してはならない;これを越えて保有する 場合は登記局長の許可を必要とするとした規定である 。41)

「三分の一ルール」は実質的にどのような意味合いを持っていたのであろ うか。タイ国の「公開株式会社法(Public Companies Act B.E. 2535)」にそ の意義を見出すことができる。ここで公開株式会社の株主は三分の一以上の 議決権を有することにより取締役の報酬に関わる総会決議,三分の一以上の 出席株主を以って総会議事次第の順序変更を拒否できるほか,三分の一以上 の株を保有することにより追加議案の提案ができると定められている 。す42) なわち,「三分の一ルール」は「外国人」の介入を封じ,タイ国人による支 配を磐石にするために導入されたものなのである。 このルールがあったため,初めて外資企業に事業投資をした「外国人」 (事業許可証を持たない「外国人」に該当)の二回目以降の別の投資先への 資本金の三分の一以上の出資は,登記局長の許可無くしてはできない仕組み となっていた。外資企業である子会社から孫会社への投資も孫会社の資本金 の三分の一を上回る場合は登記局長の許可が必要であった。このルールの削 除はネットワーク化するグローバル企業の多角的・複合的な事業投資活動に 対する制限を緩めるものであると同時に,公開株式会社においては株主総会 における一部の重要決議事項に対する拒否権等を「外国人」が持つことを可 能ならしめるものであるといえる。しかし,その削除が実際にどれほどの規 制緩和効果をもたらすかとなると甚だ疑問である。企業活動がグローバル化 旧法,9条“An alien, being a permit holder or shareholder or partner of a juristic 41)

person under Clause 3, shall not become a partner or shareholder in any other partnership or company with more than one-third of the total shares of the company or with more than one-third of the total capital of the partnership, or buy out such business, unless a permission has been granted by the Director-General who may prescribe any condition whatsoever.”

公開株式会社法(Public Companies Act B.E.2535),90条,105条 詳細略 42)

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する中にあってタイ国政府はマレーシア,インドネシアなど他のアセアン諸 国と競って先進国企業による事業投資の誘致に走り,新法成立以前の状態に おいて三分の一を越える多角的な投資は登記局に申請すれば余程の問題がな い限り,いわば自動認可が得られる状況となっていた。したがって,「三分 の一ルール」は新法が成立した時点においては株主数基準同様形骸化してい たというのが実情で,その削除は単に現状追認の効果しかなく,新たな外資 の導入を促進する要因にはなり得ないのである。 7.む 新法は外資規制の緩和,という点では全く期待はずれのものであった。 「外国人」パートナーの単独増資の道を閉ざされてしまったため,内資企業 の資金調達の選択肢のひとつが失われてしまった。新法に不透明な部分もあ り,特に外国人事業委員会における動きは全く報道されておらず今後どのよ うな方向に向かって外資規制が考えられているのかを知ることは困難である。 随所に見られる法的安定性の欠如はタイ国を世界の流れに逆行させる危険性 すら秘めている。このように考えると,結局のところ新法は外資による支配 あるいは乗っ取り防止の機能を更新したに過ぎないのである。 しかしながら投資奨励業種の枠を拡大させた点は高く評価せねばなるまい。 タイ国政府が投資委員会を通じて規制緩和に向けた具体策を実行し続ける限 りこの規定は活きる。しかしそれを止めた時,これは形骸化してしまうこと を忘れてはならない。 タイ国は日本人およびわが国企業にとり他国にない親しみを感じさせる国 である。1970年代に日本製品の不買運動が起こったこともあったが,理屈抜 きの親近感が日系企業の進出を促し,これがタイ国産業の近代化と高度化の 一翼を担って来たといっても過言ではないだろう。タイ国経済は2002年には 経済危機の状態から脱し,経済活況の兆しが著しい。これからもわが国のみ

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ならず多くの先進国企業の海外事業投資先として注目され続けよう。しかし, 新法の法的不安定性は外資規制上のリスクとなる可能性があることを充分認 識した上での意思決定が必要であることを付言しておきたい。

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経済産業省通商政策局編『不公正貿易報告書2003年版』(財団法人経済産業調査会, 2003年)

盤谷日本人商工会議所編『タイ国経済投資関連法規集』(盤谷日本人商工会議所, 1983年)

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表−1

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参照

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