第 30 回ユニバーシアード競技大会(2019/ナポリ)
におけるサッカー日本代表チームの コーチングプロセスについて
―― ゲームモデルを中心としたゲーム構想の確立 ――
松 本 直 也
Ⅰ . はじめに
全日本大学サッカー連盟は,サッカーの競技力向上を目指すとともに,自立した人間形成,
人材の養成および豊かなスポーツ文化への振興や社会の発展への寄与を基本理念としてい る。大学に所属するサッカー選手の競技力向上を目指すうえで,学生選抜チームを編成し ユニバーシアード競技大会などの国際競技会で優秀な成績を納め,オリンピック代表選手 や将来の日本代表選手を発掘・育成・強化することを具体的な目標として定めている。国 際スポーツ連盟が主催し,世界の学生総合競技大会であるユニバーシアード競技大会にお いて,日本男子代表チームは過去 6 回の優勝を果たしている。これは,1998 年にワールド カップフランス大会に初出場して以降,着実に発展を遂げている日本サッカー全体のレベ ルアップの一端を表していると言えるが,1993 年に J リーグが発足し一時低迷期を迎えた 大学サッカー界が,各地域のリーグ戦改革や全国大会の再整備,国際大会への継続した参 加など,一体となって取り組んだ強化活動の成果の現れであるといえる。そして,2019 年 7 月にイタリアナポリ近郊で行われたユニバーシアードナポリ大会では,日本男子代表チー ムは決勝戦でブラジル代表を破り前回の台北大会に続く 2 連覇を成し遂げた。この男子サッ カー競技は,今大会が最後の開催となり次回からは大学単独チームによる世界大会が実施 される。大学サッカー選手の成長を促し,競技力を向上させるうえで重要な位置づけであっ たユニバーシアード競技大会が大学単独チームの参加に移行することは,今後の日本の大 学サッカー選手の競技力向上を目指すうえで重要な岐路となると考えられるが,同時にま た,これまで行われてきた強化活動を振り返り,省察を行うことは意義のあることだと考 えられる。
これまで,代表チームレベルのチームマネジメントに関する考察は,宮地ほか(2011)
による 2009 年ユニバーシアードベオグラード大会における日本男子テニスチームの報
キーワード:サッカー,コーチング,戦術 ,ゲームモデル
告,国際大会に臨むチームマネジメントに関して心理的サポートに焦点をあてた宮崎ほか
(2017)の報告,麻場ほか(2019)の 2016 年リオデジャネイロ五輪における陸上競技連盟 の取り組みなどが報告されている。また,曽根(2008)は,17 歳以下のサッカーシリア代 表チームの戦略・戦術的活動について,松本(2015)はサッカーの短期型のチーム作りに ついて戦術的視点から考察を行っている。スポーツコーチングに関して,スポーツの種目 特性の観点から堀野(2009)は,「特に戦術やトレーニング計画について,異なる種目のコー チングプロセスを導入することは容易ではない」と述べ,更に「トップアスリートに対す るコーチングプロセスやコーチングを構成する要因のモデル化,すなわちトップレベルの 指導者のコーチングモデルの客観化は難しく,これまで体系的な報告はなされていない」
と言及しており,より具体的なコーチングプロセスの省察に関する報告は非常に少ないと 言える。よって,優勝を果たしたユニバーシアード競技大会における日本代表チームの強 化計画について,監督として大学連盟の強化策,ゲーム構想の確立過程,そしてゲーム分 析による省察を行うことは十分意義のあることだと考えられる。本研究では,2019 年ユニ バーシアードナポリ大会に臨んだ男子サッカーチームの約 2 年間の強化活動について,ゲー ムモデルを中心とした強化計画について論じ,ゲーム分析からそのコーチングプロセスに ついて検討を行うことを目的とする。
Ⅱ . 強化活動 1. 目標の設定
ユニバーシアード競技大会で日本男子サッカーが初優勝を果たしたのは 1995 年の福岡大 会に遡る。それ以降,2000 年代に入り 2001 年の北京大会からの 3 連覇を含む合計 5 大会で 優勝を果たしている。今大会での日本代表チームの目標は前回大会に続く 2 連覇を成し遂 げることであった。また,今大会の参加選手は 23 歳以下の選手として,2000 年に開催され る予定であった東京オリンピックへの出場資格があり,長期的な目標としてオリンピック 代表チームに選出されることも合わせて個人目標として掲げていた。
2. 大会へ向けた取り組み
今大会を目指すチームの中心を担う選手は,2016 年4月に全国の大学に入学してきた選 手である。表 1 のように,全日本大学サッカー連盟としても大学サッカー出身者から東京 オリンピック出場選手を輩出すべく,彼らが大学 1 年時から国際大会への派遣を積極的に 行ってきた。これまでも,全日本大学選抜チームとして積極的に海外遠征を行い国際大会 へ参加してきたが,特にこの年代の選手たちは,2015 年に日本,韓国,台湾,中国を中心 に設立されたアジア大学サッカー連盟(AUFF)が主催するアジア大学サッカーチャンピ オンシップへ大学 1 年時から U19 全日本大学選抜チームとして参加し,それ以降も多くの 国際試合や海外遠征を行ってきた。これは,多くの国際試合の経験を積ませることで選手 の成長を促すとともに,大学 1,2 年時では,所属チームにおいても十分な試合出場が確保
されない現状が問題視されていたためである。また,海外遠征による試合環境の変化,食 事面や生活面での違いを経験することによって,対応する力や準備する大切さを感じ,大 学生としての成長を期待した面もあった。これらの活動は表 1 の第Ⅰ期に該当する。この 時期は,ナポリ大会に向けたチームとしての具体的な活動は行われていないが,筆者は全 日本大学サッカー連盟技術委員会強化部会の一員として,これらの国際大会への視察を継 続して行った。また,国内大会においても 2017 年度から全日本大学サッカー新人戦を創設し,
試合出場機会の乏しい 1,2 年生の強化を積極的に行った。これらの活動は,各地域の年間 を通したリーグ戦での厳しい戦いの場を日常としながら,海外遠征や全国大会を大学入学 年度から経験させる狙いがあった。
2017 年 8 月に前回大会である台北ユニバーシアード大会が終了し,2018 年 1 月から本格 的にナポリ大会に向けたチームとしての活動が開始された。表 1 の第Ⅱ期にあたるこの時 期は,実力的に勝るチームとの対戦から,技術的,身体的,そして心理的な面での課題が 浮かび上がった時期であった。特にセルビア遠征や日韓戦では,フィジカル面の弱さを感 じた選手も多かったようである。各招集時に行われた選手面談においても,「インテンシ ティーの高い中で,連続した動き」(MF)「得点力が求められているので今年は二桁得点を 目指したい」(FW),「ビルドアップ時のポジショニングや対人プレーの強化」(DF)といっ た個々のフィジカル的な能力や結果に関しての考えが多かった。第Ⅰ期では,アジアで開 催された同年代の国際大会では各個人の能力が通用したと感じた選手が多かったと推察さ れるが,第Ⅱ期では,ヨーロッパのプロ選手や日本のアンダーカテゴリーの代表選手との 試合の中で通用しない部分も多く感じられ,自分自身の能力に目を向けた発言が多かった と推察される。また,チームをどのように成長させていくかという部分に言及した選手は ほとんどなく,チームの一員であるという考えは芽生えていなかったようである。所属チー ムにおいても,まだチームをまとめる立場になく,個人としての考えが中心にあったこと が伺える。第Ⅲ期に入り,1 年後の本大会を見据えたチーム作りに着手した。これは,後述 する過去の大会の傾向とも結びつくが,ボールを保持し攻撃を仕掛けるチームコンセプト の理解と実践をミーティングやトレーニング,そしてイタリアセリエ B,C に所属するプロ チームと対戦し強化を図った。また,選手の意見として「コミュニケーションを取る必要 を感じている」(MF),「自分の意見を言えるようになってきた」(GK),「最上級生として 盛り上げて引っ張っていこうと思っている」(DF)など,個人の目標だけでなく,チーム 内でのコミュニケーションやリーダーシップに関する発言も目立つようになってきた。限 られた時間の中で戦術的共通理解の構築が求められる選抜チームにおいて,チーム内での コミュニケーションや選手のリーダーシップは重要な要素となる。学年的にも 3 年生となり,
自チームでの役割も徐々に変化していることが推察される。また,第Ⅲ期のスイス遠征には,
U20 日本代表コーチが帯同し大会優勝に貢献した。このような日本サッカー協会との連携 は継続的に行われ,大学連盟所属スタッフの U22 日本代表チームへのコーチとしての帯同
(2019 年フランス)やオリンピック代表チームスタッフの大学リーグの視察も日常的に行わ れていた。このような視察が選手のモチベーションを高める一因となったことも十分推察 される。
表 1 ユニバーシアードサッカー日本代表チーム活動記録および課題の変遷
表 2 にあるように,本大会まで残り半年となった第Ⅳ期に入り,2019 年 3 月に行われた デンソーチャレンジカップ堺大会に参加した 14 名が本大会にも選出されており,チーム作 りが本格的に進んだことが伺える。堺大会に向けては,攻撃面では相手守備ブロックを崩 しシュートチャンスを数多く作る。攻撃と守備の切り替えの早さなどを主なトレーニング 内容として戦術的共通理解の浸透を図った。また,アメリカ遠征においては,同年代の大 学生選手に対して日本では感じることのできないフィジカル的な強さやスピードを経験す ることができた。続く日韓戦では,ハイプレッシャーの中での技術の発揮,国際試合での
期日 試合成績および特記事項 トレーニング課題及び留意点
第Ⅰ期
2016年9月 第 3 回アジア大学サッカーチャンピオンシップ大会(韓国) U19 全日本大学選抜での参加 ・入学年度から国際大会の経験を目的とした 活動
・大学1,2 年時は公式戦への試合出場が限ら れる
・より多くの選手の発掘 2017年6月 KBZ Bank Cup(ミャンマー)U20 全日本大学選抜での参加(優勝)
2017年9月 アジア大学サッカートーナメント(韓国)U19 全日本大学選抜 2 チームでの参加(EAST チーム優勝)
第Ⅱ期
2018年1月 TRM × U21 日本代表
・チーム強化活動開始,スタッフの決定
・戦術的共通理解の構築
・フィジカル的に勝る相手との戦い方 -1vs1 の強化,コンタクトプレー
・国際試合から個々の課題を見つめ直す 2018年2月 第 32 回デンソーカップチャレンジサッカー熊本大会U20 全日本大学選抜での参加(第 5 位)
2018年3月 全日本大学選抜チームセルビア遠征(1 部リーグ所属FK ラドを含む 2 チームとの TRM)
第15回デンソーカップサッカー大学日韓定期戦(優勝)
第Ⅲ期
2018年7月 FC Aesch Int. U19 Tournament(スイス)U19 全日本大学選抜チームの参加(優勝) ・2018 年度入学選手の発掘
・戦術的共通理解の構築 -AT の攻略 / ビルドアップ 2018年8月 全日本大学選抜チームイタリア遠征(セリエ B 所属クレモネーゼを含む 4 チームと TRM)
第Ⅳ期
2019年3月 第33回デンソーカップチャレンジサッカー堺大会(優勝) ・ハイプレッシャーの中でのプレーの発揮
・プレー強度の発揮
・国際試合でのレフリングの違い,無駄な ファールを減らす
・代表チームとしての誇りとチームへの責任 感
2019年3月 全日本大学選抜チームアメリカ遠征(UCLA を含む大学 4 チームと TRM)
第 16 回デンソーカップ大学日韓定期戦(準優勝)
2019年4月 TRM × U20 日本代表
第Ⅴ期
2019年5月 ユニバーシアード競技大会参加メンバー決定
・選手のストロングポイントとユーティリ ティー選手
・ハイレベルな国際試合の経験
・戦術的共通理解の浸透,セットプレー
・チームビルディング活動
・ベストパフォーマンスの発揮,コンディ ショニング
2019年6月 トゥーロン国際大会(フランス)に U22 日本代表チームとして大学連盟所属 4 選手が参加 コパアメリカ(ブラジル)に日本代表チームとして大 学連盟所属 1 選手が参加
国内最終合宿(柏レイソルとの TRM)
2019年7月 ナポリユニバーシアード競技大会(優勝)
ファールの基準,レフリングの違いを経験することができた。選手の意見では,「チームと してのまとまりを大切にしたい」(FW),「攻撃面での関わりを増やしたい」(MF)などの,
技術面や戦術面について言及する選手や,「オリンピックチームでも走る,戦うというとこ ろを求められている」(MF)など,オリンピックチームを意識した発言も生まれた。また,
既に卒業後に J リーグチームと契約を結んだ選手も数名いて,プロサッカー選手として通 用すると感じたプレーや克服したい課題点を挙げる選手もいた。他にも,「就職活動と練習 を並行してやっている」(DF),「就職に向けて自己分析する中で,自分にとってのサッカー やチームでの役割が整理された」(MF)など,少数意見ではあるが就職活動とサッカーを 両立している選手も存在した。大学サッカーには様々な背景を持つ選手がいることを改め て感じると同時に,それぞれの選手が様々な経験を経て人間的にも成長している印象を強 く持つことができた。
第Ⅴ期は,最終登録メンバー 20 名の決定が行われた。本大会に臨むにあたり,ここまで 120 名以上の選手の視察を行ってきたが,過去 3 大会のメンバーと比較しても,選手層の厚 さが感じられた。技術的,身体的な特徴は,それぞれの選手が高いレベルにあったが,最 終的に選手選考の決め手となったのは,本大会での 5 試合をどう戦い抜くか,海外での集 団生活も含め常にベストパフォーマンスの発揮が臨めること。そして,チームのために行 動できる選手であった。この第Ⅴ期に入ると参加国およびグループリーグの組み合わせも 決定しており,それぞれの選手の持つ特徴をどう組み合わせるのか,その組み合わせにつ いて,どれだけ幅を持って準備できるか重要な点であった。20 名に限定された選手の特徴 を最大限に発揮させ大会を戦い抜くためには,複数のシステムやポジションに対応できる 能力も重要な要素である。具体的には,サイドバックとセンターバック,ボランチとセン ターバック,サイドハーフとフォワードなど複数のポジションに対応できる選手の選出は 重要なポイントであった。また,この第Ⅴ期は,本大会に向けた最終調整の場であり,戦 術的,コンディション的,そして心理的にも重要な時期であったが,大会 1 ヶ月前の最終 合宿においても,他の国際大会に参加している選手も数名おり,20 名の選手全員が参加で きず,コンディションとしては大きな差があった。それぞれのコンディション状態は様々 であったが,本大会に向けた最終合宿ではこれまで行われた戦術的な部分を浸透させる目 的だけでなく,最終登録メンバーの結束を高める目的で ASE 活動を体験した。ASE(Action Socialization Experience:社会性を育成するための活動体験)は,野外活動を通して選手た ちが協力しあい,コミュニケーションを取りながら,様々なプログラムを実践し課題を克 服していくものである。(福富ほか,2014)6 名程度のグループに分かれ,約 2 時間でそれ ぞれ複数のプログラムに取り組んだ。サッカーのトレーニングや試合で見せる表情とは違っ た雰囲気で,様々な課題に対して意見を出し合いながら各選手が積極的に取り組む姿が印 象的であった。
表 2 本大会参加選手の招集状況
3. ゲーム構想の確立
代表チームを編成し国際大会に臨む場合,チーム戦術の決定などピッチ内の戦術行動を 計画する前提として,チームのメンバー,スタッフを編成しどのように大会に臨み勝利を 目指すのか,戦略的に計画しなければならない。このようなゲームの戦い方に関する事前 計画はゲーム構想と呼ばれ,一般的(長期的)構想と特殊的(短期的)構想に分けられる。(シュ ティーラー ,1993)長期的ゲーム構想は,目標設定から始まり,これまで述べてきたような 多年にわたる遠征や練習,試合を経て形作られるチームの基本戦術構想である。これに対し,
特殊的ゲーム構想は,チームの競技力をベースとした戦術的試合計画となる。今回の代表 チームにおいては,2017 年に監督就任が決定して以降,約 2 年にわたる強化計画として長 期的ゲーム構想を立て,ユニバーシアード大会のレギュレーションや試合環境,過去の大 会傾向から,日本チームの短所をカバーし,長所を効果的に発揮するように特殊的ゲーム 構想が計画された。これは,単なる強化計画ではなく,チームとしてどのようにプレーし 勝利を目指すのか,選手に明示されなければならない。各大陸間予選が行われないユニバー シアード競技大会において,ゲーム構想を確立するためには,過去の大会の記録や大会の レギュレーションを検証することが必要となる。よって,今回の代表チームでは,過去の 大会記録,過去の試合日程から過密日程でのパフォーマンスの発揮,そして日本人選手の 身体的特徴を活かすプレーを考慮し,どのように戦い勝利を目指すべきか,ゲーム構想を
第Ⅰ期 第Ⅱ期 第Ⅲ期 第Ⅳ期 第Ⅴ期
日程/大会遠征 2016年9月 2017年6月 2017年9月 2018年1月 2018年2月 2018年3月 2018年7月 2018年8月 2019年2月 2019年3月 2019年4月 2019年4月 2019年6月 No. Position U19韓国遠征 U20ミャン
マー遠征 U19韓国
遠征 U21TRMDenso熊本 大会 セルビア遠征
/日韓戦 U19スイス 遠征 イタリア
遠征 Denso堺 大会 アメリカ遠征
/日韓戦 U20TRM 強化合宿トゥーロン 国際/A代表
1 GK 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇
2 GK 〇 〇 〇 〇 〇
3 DF 〇 〇 〇 〇
4 DF 〇 〇 〇 〇
5 DF 〇 〇 〇 〇 〇
6 DF 〇 〇 〇 〇 〇 〇
7 DF 〇 〇 〇 〇
8 DF 〇 〇 〇 〇
9 MF 〇 〇 〇
10 MF 〇 〇 〇 〇 〇
11 MF 〇 〇 〇
12 MF 〇 〇
13 MF 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇
14 MF 〇 〇 〇
15 MF 〇
16 MF 〇 〇 〇 〇 〇
17 FW 〇 〇 〇 〇 〇 〇 ○
18 FW 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇
19 FW 〇 〇 〇 〇 〇
20 FW 〇 〇
計画した。この過去の大会については,筆者は 2005 年のイズミル大会でコーチとして参加 し優勝を経験している。近年では 2013 年カザン大会(第 3 位),2015 年ガンジュ大会(第 3 位)
にコーチとして帯同している。この 2019 年ユニバーシアード大会は監督として初めての参 加となるが,通算 4 回目の大会参加となり,その経験がプレー構想の確立において大きな アドバンテージになったといえる。
3.1 過去の大会の傾向
表 3 は 2013 年から 2017 年までの 3 大会におけるボール保持率,シュート数,枠内シュー ト数の平均について,グループステージ(GL)と決勝トーナメント(FT)別に日本代表チー ムと対戦相手を比較したものである。ボール保持率については,3 大会ともに日本が 50%
を上回り,相手チームよりもボールを保持する割合が高くなっている。シュート数におい ては,3 大会ともに相手チームより上回る傾向が伺えるが,決勝トーナメントに入るとシュー ト数が減少する傾向がある。枠内シュートについては,3 大会ともに相手チームより上回る 傾向がある。また,上位に進出したチームの傾向として,失点の少ないチームがあげられ る。(JOC, 2013, 2015)この失点が少ないチームが上位を占める傾向は,トーナメント戦を 含めた国際大会では,顕著な特徴である。過去に参加した多くのチームが守備に重点を置 き失点を減らし,少ないチャンスから得点を重ね勝利を目指すゲーム構想を持っていたと 考えられる。よって,攻撃面においては,ボールを保持する戦いをベースとしつつも,相 手守備ブロックを意図的に突破しシュートチャンスを作り出すことが重要だといえる。ま た,守備面においては,ボールを失った瞬間の守備への切り替えの意識と,相手カウンター に対する準備が必要だといえる。
表 3 過去 3 大会のボール保持率,シュート数,枠内シュート数の比較
3.2 過密日程におけるコンディショニング
ユニバーシアード競技大会は大学生の夏季休暇に相当する 7 月から 8 月に開催され,サッ カー競技は 12 チームから 16 チームが参加して 1 日おきの試合間隔で 5 試合から 6 試合行
ball posession(%) shots Shots on goal JPN(Ave.) opponent(Ave.) JPN(Ave.) opponent(Ave.) JPN(Ave.) opponent(Ave.)
2013年/GL 54.3 45.7 17.3 11.7 6.7 3.3 2013年/FT 57.3 42.7 16.0 5.3 6.7 2.3 2015年/GL 55.0 45.0 15.3 5.0 7.0 1.7
2015年/FT 52.3 47.7 8.7 7.0 4.3 3.7
2017年/GL 63.7 36.3 14.3 4.3 8.7 2.3
2017年/FT 55.0 45.0 11.7 5.0 9.3 2.7
われる。このような過密日程で,20 名の登録選手で全ての試合で高いパフォーマンスを発 揮するためには,選手のコンディショニングが重要な要素となる。過去の大会においても 日本代表チームは,選手の疲労度を考慮したターンオーバー制による選手起用を採用した チームが多く,選手の疲労回復を考慮したコンディショニング管理が行われてきた。(JOC,
2013, 2015)コンディショニングは生理学的指標,練習時および試合時のパフォーマンスか ら評価される。生理学的指標としては,起床時の心拍数や体重,そして血液成分があげられ,
これらが大きく変動したときはコンディショニングへの影響を考慮すべきだとされている。
(JFA,2011)今回のチームでは,デンソーチャレンジカップ堺大会から選手の携帯端末を 用い主観的コンディショニング評価および客観的コンディショニングの評価を行った。主 観的コンディショニング評価では,ユーフォリア社の「One tap sports」アプリを使用し毎朝,
体重,コンディション,疲労度,睡眠時間,個人が感じるトレーニング強度,睡眠の質(夜 中に起きた回数),時差ボケ,テーピングの必要有無等の入力を携帯端末から選手自身が行っ た。各選手の入力項目がグラフ化され,数値での評価が可能になり,より具体的,可視的 にコンディション把握が可能となった。また,クラウドサービスによって,スタッフ全体 での情報共有を可能とした。客観的コンディショニング評価については,唾液アミラーゼ 値を指標とした。この唾液アミラーゼ値については,自律神経活性を反映し,且つストレ ス評価に有効であるという報告がなされている。(KOIBUCHI and SUZUKI,2014)(中野 ほか,2009)また,採血と比較し唾液採取は測定における時間や場所の制約が少なく,選 手への負担も限られるため,デンソーカップ堺大会から唾液アミラーゼ値を客観的コンディ ショニング評価の指標とし,本大会中は朝起床時に測定を行った。海外遠征では,現地に 到着翌日と,負荷の高いトレーニングの翌日に選手が心理的,身体的ストレスを感じてい る可能性が示唆されたが,本大会でもその傾向を踏まえた上で,主観的指標などと複合的 に照らし合わせ,各選手の状態把握を行いトレーニングおよび試合に臨んだ。
トレーニング時および試合時のパフォーマンス評価については,3 日間で 3 試合行う 2018 年および 2019 年のデンソーチャレンジカップ大会および本大会において試合及びト レーニング中の移動距離,走行速度,加速減速回数,運動負荷等のデータを選手が装着し た小型 GNSS デバイス(衛星を用いた位置情報測定機器)で採取,分析しパフォーマンス 評価及び体調管理の指標とした。
このように複合的にコンディショニング評価を行うことで,選手の障害予防に役立てる とともに,テクニカルスタッフのパフォーマンス評価の一役を担った。本大会では,試合 日の間隔は中 1 日のみで,7 月 5 日から 13 日の間に 5 試合を実施した。21 時試合開始が 4 試合,18 時開始が 1 試合であったため,試合時の暑さはそれほど感じられなかった。今大 会の報告書(松本,2019)にもあるように,総走行距離の前後半比較において 3 試合で後 半に運動量が増加している。特に,15km/h 以上の高強度走はより顕著に後半が上回ってお り,試合終盤でもインテンシティの高いプレーが可能であったといえる。
この一連のコンディショニング管理については,ドクターを含むメディカルスタッフと テクニカルスタッフおよび総務との連携が重要である。過去の大会においても,過密日程 での試合スケジュールに対する準備はピッチ内,ピッチ外を問わず入念に準備されてきた。
特にテクニカルスタッフの試合分析,個々の選手に対するゲームパフォーマンス評価,メ ディカルスタッフによるコンディショニング評価は非常に重要になってくる。この点につ いては,優勝した前回大会においても,身体的な疲労の蓄積を迅速,詳細かつ正確に把握 し対応するコンディション管理の重要性が述べられている。(宮崎ほか,2017)これらのコ ンディション管理については,ユニバーシアード競技大会の場合,メディカルスタッフは,
ドクター 1 名,アスレチックトレーナー(以下 AT)1 名体制のみであり,ドクター 1 名と 2 名から 3 名の AT が帯同するオリンピックチームやフル代表と比較すると非常に少ない人 数で対応しなければならない。(JFA,2005)よって,メディカルスタッフは単なる怪我の 対応や疲労回復を促す処置だけでなく,選手自身によるセルフコンディショニングの実践 を促す指導が求められる。所属大学チームのメディカルスタッフの整備の差は大きく,選 手によっては,基本的なストレッチ方法やセルフコンディショニングに対する知識が不足 している場合もあり,トレーニングの前後や宿舎において,個別に対応し選手自身で実践 できるようサポートを行った。選手自身にコンディション調整の重要性の理解と実践を促 し,あくまでも 2 次的なコンディショニングとしてメディカルスタッフのケアやサポート を受けるような体制を取った。本大会に入り,栄養補給や睡眠の確保といった基本的な部 分も含めて,自主的なコンディションの維持と回復に努める姿も見られ,過密日程にも関 わらず,怪我や体調不良で離脱する選手がほとんどなく,比較的良好なコンディションで 試合を行えたといえる。
3.3 身体的特徴を活かした戦い
日本サッカー協会は,選手のフィジカルフィットネスについて,持久的パフォーマンス,
高強度運動パフォーマンス,スプリントパフォーマンス,筋発揮パフォーマンスに関する フィジカルテストを日本代表チームだけでなく,育成年代の各代表や女子代表についても 行っている。(JFA,2006)2013 年ユニバーシアードカザン大会日本代表チームから,全日 本大学選抜も継続的にフィジカルフィットネス測定を行い,各代表チームとの比較等,選 手個人に対してフィードバックを行ってきた。(加藤ほか,2013)安松ほか(2010)は,日 本代表チームのフィジカル面でのストロングポイントとして持久的パフォーマンスと高強 度運動パフォーマンスをあげる一方で,スプリントパフォーマンスについては,日本人選 手のウィークポイントとして指摘している。このような持久的パフォーマンスおよび高強 度運動パフォーマンスは,過密日程で行われるユニバーシアード競技大会においても,日 本代表チームのストロングポイントとして十分に発揮すべきフィジカルフィットネスであ るといえ,試合後半のラスト 15 分において,また疲労が蓄積する大会後半のトーナメント 戦でもスプリントを繰り返し行う高強度運動パフォーマンスの発揮,スピードとクイック
ネスを伴った仕掛けや後方からの飛び出しなどを攻撃の狙いとした。ウィークポイントで あるスプリントパフォーマンスについては,国際試合において,特にサイドでスピードに 乗った選手に対応できず突破される場面は何度も経験しており,単なるスピードの比較で はなく,試合状況の把握とポジショニング,プレーの予測,そしてプレーの決定スピード を早め対応することが求められる。これは,国内の大学生の大会ではほとんど経験するこ とができない部分であり,2018 年のセルビア遠征から海外遠征の度に,ミーティングで指 摘し意識的にトレーニングを行ってきた。
また,日本人選手の形態,体格については,サッカーの国際大会において,日本代表チー ムは平均身長で下回る傾向があるが,2018 年に行われたワールドカップロシア大会におい ても同様であった。(JFA,2018)ユニバーシアード競技大会においても,その傾向は強く,
例えば 2013 年大会では対戦相手の多くが平均身長 180cm を越えているが,日本代表チーム は平均 177cm であった。この身長差が影響を及ぼすプレーについては,クロス対応やヘディ ングの競り合い,セカンドボールの支配など,いわゆる空中戦と呼ばれる競り合いがあげ られる。日本人選手のネガティブな特徴として,爆発的な筋発揮パフォーマンスの低さも あげられており(安松ほか,2010),身長の低さに加えてジャンプの高さで差があるのならば,
空中戦で勝つ確率は低くなると考えられる。FIFA ワールドカップロシア大会でも,GK を 含めた空中戦での日本代表チームの課題を指摘されている。(JFA,2018)この空中戦が含 まれる特徴的なプレーにセットプレーがあげられる。CK や FK などのセットプレーは,国 際大会でノックアウト方式のトーナメント戦となった場合,試合の勝敗を左右する重要な プレーであるといえる。2013 年大会の準決勝でフランス代表に敗れた試合でも CK からの 失点が原因であった。今大会に臨むチームでも 2019 年 3 月に行われた韓国戦において,セッ トプレーから失点し韓国チームに敗れている。このようにセットプレーやロングボールに 対して,特に守備局面での重要性についてもミーティングで指摘しトレーニングを行って きた。また,普段のトレーニングからデュエルと呼ばれる 1vs1 の攻防,推進力のある選手 への対応力,ボール際の強さを求め不用意なファールを少なくし,ボールを奪う技術の習 得を求めた。
Ⅲ . ゲームモデルの構築
本大会に向けては,これまで検証した過去の大会記録,過密日程でのパフォーマンスの 発揮,日本人選手の身体的特徴を活かすプレーから,どのように戦い勝利を目指すべきか,
ゲーム構想を明確にし,攻撃,守備,攻撃から守備への切り替え,守備から攻撃への切り 替えの 4 つの局面に分けて戦術的共通理解の構築を図り,予想される試合状況に応じて細 分化し,構造化を行った。この構造化されたモデルを図 1 のゲームモデルとして,4 つの局 面でのプレー原則を明確にし,選手のプレー判断のベースとした。このゲームモデルおよ
びプレー原則は,選手の創造的なプレーを制限するものではなく,プレーを方向付け,プレー の判断基準となるものであり,むしろ創造的なプレーを生み出すフレームワークとなり得 るものである。
1. 攻撃局面および守備から攻撃の切り替え局面
攻撃局面においては,過去の試合記録にもあったように,日本チームのボール保持率 が高くなる傾向が伺える。このボール保持率について,ヒューズ(1996)は「ボールを支 配しているチームはただボールを持っているだけとなり,効果的な攻撃の機会を失ってし まう」と述べ,ボール保持率の高さが試合結果に結びつく要因でないことを示唆している。
攻撃局面では,ボールを保持した局面およびゴールキック時など後方からビルドアップを 行う局面を第 1 フェーズとした。相手が守備組織を構築する前であれば,相手 DF ライン の背後のスペースを狙うことが重要であり(第 1 フェーズ),最前線で深さを取る FW のオ フ・ザ・ボールの動きや,狙うべき有効なスペースを共有した(第 2 フェーズ)。第 3 フェー ズはアタッキングサード(以下 AT)での仕掛けの局面とし,ボール保持者の積極的な仕掛 けやスピードに乗った後方からの飛び出しによって,シュートチャンスを作ることをプレー 原則としトレーニングを行った。相手が組織的に守備態勢を整えている場合は,攻撃の幅 と深さを意識したビルドアップが求められる。(第 1 フェーズ)この際,例えばサイドバッ クが幅を取り,サイドハーフが中央(ペナルティエリアの幅)のスペースにポジションを 取り中央のスペースで数的優位な状況を作り出すことをプレー原則とした。ボールを前進 させ,第 2 フェーズに入ると,特に相手 DF と MF の間のスペースに攻撃の起点を作るこ とをチームで共有した。この時,中央のスペースが固められていれば,サイドへ展開しサ イドからの突破を狙うこともプレー原則としトレーニングを行った。2018 年のイタリア遠 征から,攻撃局面では相手が形成した守備ブロックに対するボールの前進(第 2 フェーズ)
および AT での相手ディフェンスラインの崩しからフィニッシュに関する第 3 フェーズに ついて,トレーニングを重点的に行った。得点のチャンスを多く作るには,ペナルティエ リア(PA)内への侵入が求められるが,第 3 フェーズにおいても,相手 DF と MF 間で起 点を作り,PA 内への侵入をプレー原則とした。特に,PA 内のサイドのスペースをニアゾー ン(NZ)とし,このスペースへのダイアゴナルランでの抜け出しや 2 列目からの飛び出し から狙うべきスペースとして共有した。また,同じく第 3 フェーズでは,サイドの仕掛け からクロス攻撃を主な狙いとした。
守備から攻撃の切り替え局面においては,ハーフラインを境に相手陣での切り替えフェー ズと自陣での切り替えフェーズの 2 つに分類した。相手陣でボールを奪った状況の第 1 フェーズでは,意図的な連動したプレッシングを FW から行い,MF と DF も連動したボー ル奪取をプレー原則とした。ボール奪取した場合,非ボール保持者も積極的に前方へ動き 出し,少ないパス本数,短い時間でショートカウンターから得点を狙った。また,自陣でボー
ルを奪った状況を第 2 フェーズとし,ボール奪取時に相手ゴールに向かった前向きの状態 であれば,前方へのパスを選択しロングカウンターをプレー原則とし,ボール奪取時に相 手に囲まれて状況が悪ければ,後方のサポートした選手を使い相手のプレスを回避した。
2. 守備局面および攻撃から守備の切り替え局面
守備については,攻撃時のボール保持から守備への切り替え局面でのボール奪取,前線 からのプレッシングおよび意図的なプレッシングからのボール奪取についてプレー原則を 明確にした。攻撃から守備への切り替え局面でのフェーズはスペースを意識させ,ボール ロスト位置と各選手の位置でフェーズを分類した。ボールに近い選手を第 1 フェーズ,ボー ルから離れた選手を第 2 フェーズとし,ボールを失った瞬間に素早くボール奪取行動に移 行することをチーム全体に求めた。第 1 フェーズでは,ボールに近い選手に連続したボー ル奪取行動(ボール保持者に対してプレッシャーを掛けるがボールを奪えなくても 2 人目 までボールを追うことを求めた:切り替え 6 秒でボール奪取)を求めたため,献身性と高 いレベルでのフィジカルフィットネスが要求された。第 2 フェーズでは,ボールから遠い 選手に対して守備のバランスを重視させ,MF にはバイタルエリアを優位に支配できるポ ジションを取ること,そして,DF には,深さを取る相手 FW のマークと DF ラインの背後 のスペースを支配できるポジション取りをプレー原則とした。
また,守備局面では 1-4-4-2 システムでお互いの距離間を意識させたコンパクトディフェ ンスをベースとしたが,相手チームの攻撃形態の違い(ダイレクトプレー中心のチームと ポゼッションスタイルのチーム)に対するプレッシング方法についてプレー原則を明確に した。相手チームがポゼッションスタイルの場合,第 2 フェーズでコンパクトな守備ブロッ クを形成し,連動したプレッシングからサイドのスペースに追い込み,ボール奪取を狙った。
第 3 フェーズは自陣ゴール前の守備となるが,このフェーズでは失点しないことを優先し,
PA 前に守備ブロックを形成し,スペースを与えないようプレーした。サイドでのデュエル や 1vs1 の対応,ロングボールに対するチャレンジ&カバーの徹底,2nd ボールの保持など セットプレーも含めた身体的特徴を補完するプレーについて共通理解を構築しトレーニン グおよび試合に臨んだ。特に,ダイレクトプレー中心のチームは,スピードや高さなどの 身体的特徴を活かした攻撃を展開して来ることが予想されるため,個人としては広いスペー スでの 1vs1 の対応やヘディングでの対応をトレーニングし,チームとしては選手間の距離 感を保ったコンパクトディフェンス,DF ラインのコントロール,GK との連携によるスペー スの支配を重点的に行った。また,セットプレーは攻守ともに第 4 フェーズとし,特に守 備局面におけるセットプレー対応は,重点的に行った。CK,FK でのマンツーマンディフェ ンス,ゾーンディフェンス,マンツーマンとゾーンをミックスしたディフェンスなど,所 属チームによって対応に違いがある。GK を中心としたミーティングを重ね,基本的な守備 の対応をチームで統一するとともに,テクニカルスタッフによる相手チームのスカウティ ングから試合毎に修正を加えた。
図 1 ゲームモデルとプレー原則
攻撃局面 プレー原則
Phase 相手が守備組織を構築する前 相手が組織的な場合(1-4-4-2と想定)
相手DF背後のスペースを狙う 前方へのパスの選択
GKからのビルドアップ 幅と深さ/中央で数的優位のポジション
取り
第1 Phase
FWの動き出しと前方へのパス 最前線の選手(深さを取る選手)を使う 前進するために有利なスペースを使う
幅と深さ/中央で数的優位のポジション 取り
DF-MF間に起点を作る/方向の変化(サ イドチェンジ)
相手DF背後を狙う
第2 Phase
積極的な仕掛け solo/コンビネーション
後方からの飛び出し
DF-MF間に起点を作る/PAへの侵入 サイド/ニアゾーンのスペースを狙う ダイアゴナルラン/2列目からの飛び出し
/クロス
第3 Phase
セットプレー/左右のキッカーを準備,ショートコーナー,クイックリスタート 第4 Phase 守備局面
プレー原則
ダイレクトプレー中心の攻撃 ポゼッションスタイル 1stDFの決定とコンパクトディフェンス
ボール保持者に対するプレッシャーと 後方の準備
統制の取れた守備組織の構築 1-4-4-2システムで3ラインをコンパクト
に形成
第1 Phase
DFラインコントロール(牽制と厚みの 形成)
最終ラインのチャレンジ&カバー 中盤の選手が2ndボールの保持
前線からのプレス/MTで守備ブロック の形成
サイドでボール奪取(MT)
プレスバック/ロングボール対応
第2 Phase
DF背後のスペースの支配 /GKスペース
カバー DTで守備ブロックの形成(PAに進入さ せない) 第3 Phase デュエル・ドリブル対応/中央のスペースを与えない/MFのDFラインカバー
GKとの連携/クロス対応/失点しない守備
セットプレー/CK,FK共にゾーンとマンツーマンを使い分ける 第4 Phase 守備から攻撃への切り替え局面 プレー原則/ボール奪取から攻撃を仕掛ける
相手陣でボール奪取(ハーフラインより前方)
第1 Phase サイドでボールを奪う意図的なプレッシング/FWの1stプレス
ボール奪取後はショートカウンターを狙う 前方への動き出し/後方からの飛び出し 自陣でボール奪取(ハーフラインより後方)
第2 Phase ボール奪取時の状況
良い(前向きでボール奪取)
前方へのパスの選択/最前線の選手を 使う
ロングカウンター/スペースへの飛び 出し
悪い(囲まれている/前向きではない)
サポートプレー 確実にパスをつなぎ,相手のプレスを
回避
攻撃から守備への切り替え局面 プレー原則/切り替え6秒
ボールに近い選手
第1 Phase ボールを失っても直ちにボール保持者に対してプレッシャーを掛ける
2度追いの意識 ボールから遠い選手
第2 Phase ポジションの修正/バイタルエリアを埋める
守備のバランスを重視/リスクマネジメント GKとの連携によりDF背後のスペースを支配する
ディレイの判断
中央ス ペース
サイド サイド
NZ NZ
サイド サイド
このようなゲームモデルについては,選手への提示は図や映像を使ったシンプルな表現 を用い,図 2 にあるように試合→ゲーム分析→ミーティング(映像を使用した観察トレー ニングおよび選手へのフィードバック)→トレーニング→戦術のプランニング→試合とい う一連のルーチンの中で徐々に浸透させ構築していった。代表チームの場合,多くのチー ムから選手が選抜されるため戦術的な言葉を統一し理解を促すことが重要である。共有の ピクチャーを具体的に描くことが,選手間のコミュニケーションを活発化させ,トレーニ ング中のプレーに活かされてくる。(松本,2015)よって,ミーティングではシュート回数 やボール奪取位置,スプリント回数等の客観的データの提示を行い選手の理解を促すとと もに,選手間でのミーティングを重視した。また,トレーニングや試合前後には実際の試 合映像から抽出したゲームモデルに則した映像および日本代表や海外サッカーの映像によ る観察トレーニングを行い,チーム全体でゲームモデルの理解を深め戦術的共通理解の構 築を図った。
このようなゲームモデルについて Xavier Tamarit(2013)は,「コーチの考えや選手の個 性だけでなく,クラブチームやその国のサッカーに対する哲学や文化から導き出されるも のである」と述べている。ゲームモデルを形成する上で,今回の代表チームは,大学サッカー 全体の強化方針や,日本サッカーにおける大学サッカーの位置づけ,そして,教育機関で ある大学の持つ教育的側面もゲームモデルの形成に必要不可欠な要素となる。よって,ゲー ムモデルは大学サッカーの理念や目標,選手の特徴やコーチの考えなどが相互に作用し合 い形成されたものであり,初めから完成されたモデルとして確立されたものではない。今 回の代表チームでは,合宿や遠征を積み重ねることで変化(進化)していくことは無論で あるが,各所属チームでの活動や大学生活も含めた選手自身の人間的成長により,変化(進 化)していくものであると言える。現場の最高責任者である監督は,競技力の向上を追求 しメダル獲得を目指すとともに,大学サッカー選手に対して自立した人間形成の補助とな るべき活動や指導が求められ,選手の成長とともにゲームモデルが確立されていくといえる。
図 2 ゲームモデルに影響を与える要因とコーチングプロセス ゲーム分析
自チーム/相手チーム 戦術のプランニング
トレーニン
トレーニン トレーニン
グ 試合・練習試合
観察 グ/
ミーティング 観察 グ/
ミーティング
ModelGame 理念と哲学
選手の特徴 コーチの考え
教育的側面
チームの目標
試合の局面と プレー原則
目指す大会の レギュレーション 環境
Ⅳ . ゲーム分析 1. ゲームモデルを基にした戦術的分析
ユニバーシアードナポリ大会で行われた日本代表チームの全 5 試合を対象に,攻撃局面,
守備局面,守備から攻撃への切り替え局面,攻撃から守備への切り替え局面の 4 つの局面 についてゲームモデルを基にしたゲーム分析を行い,省察を行った。このゲームモデルに 基づいた戦術的分析は,図 2 にあるようにチームとしての活動の中心的役割を果たしており,
一連のコーチングプロセスの検証を可能にすると考えられる。
1.1 分析方法
チームスタッフ内のテクニカルスタッフが撮影した映像を対象とし,ゲーム分析ソフト として広く用いられている Hudl 社の Sports Code V12 を使用し,分析を行った。エリアの 区分け,DF-MF 間,測定項目については以下に説明する。
1.2 エリアの区分け
プレモーモデルに則した分析を行うためには,ミーティングで使用したサッカーコート を3分割(ディフェンディングサード,ミドルサード,アタッキングサード)したエリアに 分けて分析を行うべきであるが,本研究では,鈴木ほか(2018)を参考に,実際のピッチ上 に描かれているラインを基準に,図 3 のように,15 エリアに区分けした。なお,分析エリ アについては,C0,C1,R1,L2 を守備エリア,C2,R2,L2 を中盤エリアとし,中盤エリ アより前方のエリアを攻撃エリアとした。本大会で行われた試合は国際基準となる 68m × 105m と規定されており,対象とした試合も全てこの基準に従ったピッチサイズで行われた。
1.3 DF-MF 間の設定
DF-MF 間については,鈴木ほか(2018)に準拠し,最後方の守備者からゴールラインに 平行に引かれた線を DF 最終ラインとし,そこから 6 m以内にいる選手を DF とした。6m 以内にいない守備者の中で DF 最終ラインと最も距離が近い選手を MF 最終ラインの基準と した。DF 最終ラインと MF 最終ラインに囲まれたスペースを DF-MF 間とした。
6m
図 3 エリアの区分け
図 4 DF-MF 間の設定
2. 攻撃局面および守備から攻撃への切り替え局面に関する分析
ゲームモデルに基づいた攻撃の概略を測るために,攻撃回数・得点・シュート率・シュー ト成功率・DF-MF 間侵入率・PA 侵入率を測定した。
2.1 攻撃回数
攻撃開始から攻撃終了までのボール保持を攻撃とし,その回数を測定した。Nakayama et al. (2015)および鈴木ほか(2018)に倣い,攻撃開始はセットプレーによってアウトオ ブプレーがインプレーになった瞬間及び,インプレー中にボール保持側が切り替わった際 1 人目の選手が 2 タッチ以上した瞬間もしくは 1 人目の選手と 2 人目の選手の総タッチ数が 2 タッチ以上となった瞬間とし,攻撃終了はインプレーがアウトオブプレー(得点を含む)
になった瞬間および,守備側の 1 人目の選手の総タッチ数もしくは,1 人目と 2 人目の選手 の総タッチ数が 2 タッチ以上となった瞬間とした。
2.2 シュート過程
シュートまでの過程について,シュートを打ったエリア,シュートに至ったラストパス およびドリブルが行われたエリアを分析した。また,DF-MF 間でのプレーを分析するため,
DF-MF 間に侵入した際のエリアおよびシュートに結びついたプレーについて分析を行った。
2.3 シュートとボール奪取との関係性
守備から攻撃への切り替え局面を分析するために,ボール奪取エリアおよびボール奪取 からシュートに結びついたプレーについて,その経過時間を測定した。
3. 守備局面および攻撃から守備への切り替え局面に関する分析
ゲームモデルに基づいた守備局面および攻撃から守備への切り替え局面について分析を 行うために,ボール奪取エリアおよび攻撃エリアから中盤エリアにおいてボールを失った 瞬間から 6 秒以内に再びボールを奪い返した回数を測定した。
3.1 セットプレーおよびファール数について
ゲームモデルにおいて,第 4 フェーズとしたセットプレーについて,CK および FK 数,
また,ファールについても相手陣と自陣に分けて測定を行った。
Ⅴ . 結果および考察 1. 攻撃について
本大会において,全ての試合でポゼッション率では対戦相手を上回ったが(松本,2019),
表 4 のように,攻撃回数は,ブラジル戦を除き日本の方が少なかった。それぞれの項目を 攻撃回数で除して 100 を掛けそれぞれの成功率から,イタリア戦でのシュート成功率が日 本の 16.7% に対しイタリアは 25.0% となり,この項目以外は全て日本が対戦相手を上回った。
攻撃局面においては,相手の守備組織を崩しシュートチャンスを作るために相手の DF-MF
間でボールを受け起点にすることを第 3 フェーズの主なプレー原則としたが,ロシア戦で はその侵入率が 29.4% で最も高く,韓国戦が 18.9% で最も低かった。また,同じく第 3 フェー ズでは,サイド(R および L エリア)からの仕掛けをプレー原則としたが,ブラジル戦で はサイド侵入率が 24.6% で最も高かった。ブラジルは 5 バックでリトリートした守備が特 徴であったが,サイドを起点とし効果的に攻撃を仕掛けていたことが伺える。これに対し てイタリア戦では 9.9% と最も低く,サイドの突破からシュートチャンスを作る回数が少な かったといえる。
表 4 攻撃プレーについて
また,攻撃時のシュートに至る過程について,シュートエリア,シュートに至るプレー エリア,DF-MF 間でボールを受けシュートに結びついた回数に関しては表 5 となった。
シュートエリアに関しては,PA 中央(CPA)が最も多く 36 回で全体の 42% であった。次 に PA 手前の中央スペース(C3)が 23 回(27%),PA 内サイドのエリアが右(RNZ)17 回(20%),左(LNZ)8 回(9%)であった。PA 内のサイドのスペースを特に二アゾーン(NZ)
とし,シュートチャンスを作るためにチームとして侵入する狙いを持ったスペースであっ たが,特に右サイドからの侵入が多かった。これは,左サイドでは,SH のドリブルからの 侵入が特徴的であったが,右サイドでは,SH だけでなく SB の攻撃参加による侵入が多かっ たことが原因であると考えられる。第 3 フェーズにおいて,シュートに直結するパスおよ びドリブルからのシュートの起点となったエリアは PA 手前の中央スペース(C3)が 32 回
試合
結果 チーム 攻撃回数 得点数 シュート 数
シュート率
(%)
DF-MF 間侵入回数
DF-MF 間侵入率(%)
PA 侵入回数
侵入率PA
(%)
サイド 侵入回数
サイド侵入率
(%)
シュート成功率
(%)
JPNvs ARG 3-0
JPN 141 3 16 11.3 33 23.4 0 0.0 23 16.3 18.8
ARG 146 0 6 4.1 15 10.3 0 0.0 4 2.7 0.0
JPN RUSvs 4-1
JPN 109 4 17 15.6 32 29.4 0 0.0 23 21.1 23.5
RUS 113 1 5 4.4 17 15.0 0 0.0 0 0.0 20.0
JPNvs KOR 2-0
JPN 132 2 17 12.9 25 18.9 0 0.0 20 15.2 11.8
KOR 143 0 4 2.8 17 11.9 0 0.0 6 4.2 0.0
JPNvs ITA 3-3
JPN 131 3 18 13.7 29 22.1 0 0.0 13 9.9 16.7
ITA 156 3 12 7.7 18 11.5 0 0.0 8 5.1 25.0
JPN BRAvs 4-1
JPN 114 4 18 15.8 27 23.7 0 0.0 28 24.6 22.2
BRA 112 1 8 7.1 11 9.8 0 0.0 5 4.5 12.5
(39%)で最も多かった。次いで右(RNZ)10 回(12%)左(LNZ)が 9 回(11%),サイド からのクロスボールが右(R4)6 回(7%),左(L4)8 回(10%)であった。また,シュー トに結びついたプレーの内,DF-MF 間のスペースに起因するものは合計 27 回で全シュー ト数の 31%であり,PA 手前の中央スペース(C3)が 20 回(74%)で最も多かった。第 3 フェー ズにおいて,リトリートした守備組織を崩し攻撃を仕掛けるために DF-MF 間で起点を作り,
PA 内の特にニアゾーンへの侵入をプレー原則とし狙いを持って仕掛けたが,それが現れた 結果となった。
表 5 エリア別シュート数とシュート過程について
表 6 は,ボール奪取とシュートの関係について表したものだが,ボール奪取からシュー トに結びつけたのは,53 回で全シュート数の 62% であり,その中で得点に繋がったのは 10 回で全体の 63% であった。特にイタリア戦では 15 回(83%)のボール奪取がシュートに 結びつき,その内 8 回(53%)が守備エリアでのボール奪取であった。また,9 回(60%)が ボール奪取から 10 秒以内にシュートを打っており,イタリア戦では,守備から攻撃への切 り替え局面での早さが伺え,相手が守備組織を構築する前に攻撃を仕掛け,シュートに結 びつけていたといえる。得点については,オープンプレーからの得点は,16 点中 13 得点で あったが(松本,2019),3 人目の選手が後方から飛び出しニアゾーンに侵入しアシストし た得点や DF-MF 間でパスを受け,そのままシュートし得点するなど DF-MF 間を起点とし,
シュートチャンスを多く作っていた。また,大会を通して対戦相手の CB は身長の高い選手 が多く,ロングボールやクロスを中央に入れるだけでは得点のチャンスは少なかった。ゲー ムモデルとして追求した攻撃の幅と深さを意識したビルドアップや DF−MF 間を起点とし た崩しのイメージの共有,DF ラインの背後を取る動きなどチーム全員が常にプレー原則を 共有し,ボールを動かしながら積極的に攻撃を仕掛けたことが得点を重ねた大きな要因だ と考えられる。
中央エリア 右サイド 左サイド
C1 C3 CPA RNZ LNZ R2 R3 R4 L2 L3 L4 TOTAL
シュート回数
0 23 36 17 8 0 0 1 0 0 1 86
(0%)(27%)(42%)(20%)(9%) (0%) (0%) (1%) (0%) (0%) (1%)(100%)
シュートに至った プレーエリア
2 32 4 10 9 0 5 6 4 3 8 83
(2%)(39%)(5%)(12%)(11%)(0%) (6%) (7%) (5%) (4%)(10%)(97%)
DF-MF間でボールを受け シュートに至った回数
0 20 2 1 3 1 0 0 0 0 0 27
(0%)(74%)(7%) (4%)(11%)(4%) (0%) (0%) (0%) (0%) (0%) (31%)
表 6 ボール奪取エリアと守備から攻撃への切り替え局面でのシュートまでの経過時間
2. 守備について
大会を通して被シュートについては全 5 試合で 34 本となり,そのうちゴール枠内は 13 本であった。(松本,2019)1 試合平均の被シュートは 6.8 本(ゴール枠内が 2.6 本)であった。
全 5 失点の内,全てがセットプレー(CK1 失点,PK1 失点)もしくはセットプレーからの 2 次攻撃(スローインの流れから 1 失点,FK の流れから 2 失点)からの失点であった。表 7 は,今大会でのエリア別のボール奪取回数と,中盤から相手陣において攻撃から守備への 切り替え局面(ボールを失って 6 秒以内)でボール奪取した回数を示している。試合別に みると,アルゼンチン戦では総ボール奪取回数が 88 回で,攻撃エリアで 18 回(20%),中 盤エリアで 30 回(34%)であった。攻撃から守備への切り替え局面では,攻撃エリアと中 盤エリアで,ボールを失ってから 6 秒以内にボールを奪い返した回数は 12 回(25%)であっ た。ロシア戦では,攻撃エリアと中盤エリアで奪っている割合が最も多く,合わせて 39 回
(59%)であった。また,その内ボールを失ってから 6 秒以内にボールを奪い返したのは 16 回(41%)と非常に高かった。韓国戦では,76 回のボール奪取回数の内,攻撃エリアでボー ルを奪った回数は 13 回(20%)であり,攻撃から守備への切り替え局面においても,8 回
(22%)であった。韓国戦では,韓国が比較的縦に早いダイレクトプレーを多用したことも あり,守備エリアでのボール奪取が 40 回(53%)と多くなったと考えられる。イタリア戦 でも 83 回の内,守備エリアでのボール奪取回数が 57 回(69%)と最も高くなっていた。守 備面においても,イタリア戦ではボール奪取位置が自陣ゴールに近くなり,苦しい展開で あったことが伺える。ブラジル戦では,攻撃エリアと中盤エリアで奪っている割合が最も 多く,全 65 回の内合わせて 36 回(55%)であった。また,その内ボールを失ってから 6 秒 以内にボールを奪い返したのは 15 回(42%)と非常に高かった。ロシア戦とブラジル戦で 攻撃から守備への切り替え局面で奪い返している割合は非常に高く,攻撃を行いながらも
全体 ボール奪取が起因と
なったシュートおよび得点 シュートに結びついたボール奪取
エリア別回数 ボール奪取からシュート
までの時間別回数 シュート数 得点 シュート数 得点 攻撃エリア 中盤エリア 守備エリア 10秒以内 10〜20秒以内
JPN×ARG 16 3 8
(50%) 1
(33%) 2
(25%) 4
(50%) 2
(25%) 3
(38%) 3
(38%)
JPN×RUS 17 4 9
(53%) 2
(50%) 3
(33%) 2
(22%) 4
(44%) 5
(56%) 2
(22%)
JPN×KOR 17 2 10
(59%) 2
(100%) 6
(60%) 1
(10%) 3
(30%) 6
(60%) 3
(30%)
JPN×ITA 18 3 15
(83%) 2
(67%) 5
(33%) 2
(13%) 8
(53%) 9
(60%) 3
(20%)
JPN×BRA 18 4 11
(61%) 3
(75%) 2
(18%) 3
(27%) 6
(55%) 2
(18%) 4
(36%)
TOTAL 86 16 53
(62%) 10
(63%) 18
(34%) 12
(23%) 23
(43%) 25
(47%) 15
(28%)