三陸沿岸部のサケ産業
■供給視点からみたサケ三大部門
1)アキサケ (大型定置、小型定置、磯だて網、はえ 縄)
2)養殖ギンザケ
3)輸入サケ・マス
■歴史的、地理的に特徴ある三陸サケ産業
北海道サケ産業とは成り立ちが多少違う
サケ産業復興への道
■漁業生産、養殖生産の復興とともに、放流事業、稚 魚生産、飼料供給、加工・流通など、関連分野の復興 が求められる
■養殖銀ザケ、流通・加工業に焦点をあてながら、総 合的な復興に向かう動きと、今後の課題について、考 える
■三陸沿岸にサケ産業の拠点を築き、関連産業の集
積をはかるための課題は何か?
銀ザケ養殖業の大震災からの
復興
宮城県養殖銀ザケの動向(被災前含む)
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012
経営体数・生け簀台数 図 宮城県養殖銀ざけの動向
生産数量 経営体数 生け簀台数
生産数量(t)
経営多数、生 産量とも
1990
年代初頭がピーク
1991年 335経営体 1,133基 22,299トン その後、経営体数は 大きく減少。しかし、
経営体当たりの生産 量は増加
東日本大震災 生産量は皆無
表 2013年度の養殖銀ザケ経営体数等(宮城県内漁協支所別)
漁協支所 管内
経営 体数
生簀 台数
稚魚搬入数 量(kg)
稚魚搬入尾 数(尾)
稚魚平均体 重(g)
経営体減少 数
志津川町 6 21 95,750 607,285 158 -1 志津川町
戸倉 6 24 94,710 563,750 168 -1
(北部計) 12 45 190,460 1,171,035 163 -2
雄勝湾 7 14 95,900 540,207 178 0
女川町 34 106 503,600 2,860,257 176 -20
網地島 4 16 64,000 392,638 163 0
牡鹿 3 24 142,000 860,606 165 -1
(中部計) 48 160 805,500 4,653,709 173 -21
合計 60 205 995,960 5,824,743 171 -23
(注)経営体減少数は、震災前との比較。(2013年3月時点)
(資料)宮城県漁業協同組合提供
宮城県の主産地は、北部の志津川町、中部の女川町と雄勝町。
2013
年3
時点、生け簀の復旧状況では、女川町の経営体数の減 少が特に大きい。全体では、震災前に81
経営体だったが、60
経営体まで戻った。
回復率 経営体
74%
生け簀
76%
生産量
69%
(
’13
年3
月)銀ザケ養殖の復興を考える視点
■生産量、生簀台数、稚魚放流尾数、経営体数を中心に復興 を議論するだけでよいのか?
■産業としての銀ザケ養殖は、採卵から成魚出荷までの過程 はもとより、飼料供給、流通・加工までも含む、複雑な役割分 担によって成り立つ
■復興の焦点があてられるのは、主に海面養殖業の過程
システム全体を見渡す必要がある
銀ザケ養殖の過程
内水面養殖 の過程:
“山”の養殖
海面養殖の 過程:
“海”の養殖
内水面養殖の過程を、「被災なし」とみる向きもあるが、
実際には、種苗生産には大きな影響がでていた。復興 支援はほとんどない状態である
加工過程における 影響も大きい
系列による銀ザケ生産・流通の1例
発眼卵採取場
(北海道)
淡水養魚場
海面養殖経営体
淡水養魚場
ふ化・稚魚育成 採 卵
飼養
出荷・加工
稚魚確保と供給餌供給出荷先確保 系列企業
銀ザケ養殖は、山と 海に分けられ、それ ぞれ独立した養殖 業者が営んでいる。
この一連の流れは、
「系列」と呼ばれる 比較的緩いインテグ
レーションでつな がっている。便宜的 に、系列の親企業を、
「系列企業」と呼ぶ 種苗と餌を供給し、出
荷代金により清算
大震災と銀ザケ養殖
■海面の養殖生簀は流出し、陸上の生産設備も壊滅状態。
2011
年、生産は皆無■稚魚を搬入し、次の年に収穫が始まるまでの
1
年以上にわた り、養殖銀ザケは出荷ができなかった。しかし、北海道の採卵 場、山の養魚場のほとんどが被災を免れた■「がんばる養殖業」等の補助事業を利用し、海面養殖業者は 生け簀の設置を急ぎ、作業船、その他の資材等を購入
■地域によっては経営体が減少したまま(女川町)
秋の稚魚搬入はできた。
2012
年の出荷が 可能に!山の銀ザケ養魚場
岩手県の事例
銀ザケ養魚場の概要
■岩手県内 14業者による養魚場経営
■県内の養魚場は複数魚種を飼養、宮城県の業者は専業的 に銀ザケ種苗生産
■銀ザケの種苗生産は、既存の零細な養魚場で始まったことも あって、系列企業による発眼卵供給、餌供給が必要
■ニジマス、イワナなど既存の養殖種と離して養殖する
早くから系列関係が成立
事例 岩手県内のある養魚場
■会社形態で運営する養魚場では銀ザケの種苗生産のみ
■系列に入って、発眼卵と飼料の供給をうける 銀ザケの出荷代金で精算
図 銀ザケ種苗生産のスケジュール
12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 発眼卵の搬入
10日頃搬入
14日で孵化
3か所の池に移動 別の池に移動
40-50gまで成長 10gまで成長
40日餌付け
海面養殖 に搬入
平均種苗 体重 160-200g
東日本大震災で受けた影響(1)
■山の養魚場には支援策がほとんどないのが実状
■養魚場の出荷状況
H22 H23 H24 H25
出荷量
100% 大きく減少 かなり回復
(ほぼ回復か)経営体数
100%
復帰した生け簀台数よる 復帰経営体は60
(出荷先)
出荷価格
740-790 750-800 700-750
円/kg
(
ある養魚場)(
下がる傾向にあった)サイズ
140-170g 160-200g
出荷量
8
割弱に落ちる。海の経営体数(生け簀台 数)が元に戻らないと、出荷数量も増えない東日本大震災で受けた影響(2)
■系列企業が受けた被害
飼料工場が全壊、水産加工場が流出など、系列によって事情 が異なる
■飼料工場が全壊した系列
別の系列の飼料会社から購入。飼料価格が高くなったが、養 魚場が負担
■養魚場が受けた復興支援としては、金融機関に対する返
済猶予が主
■銀ザケの市場価格の低迷により、中間魚の価格も低下
表 系列別にみた生け簀台数と銀ザケ稚魚搬入数量(2013年度)
単位:台、キロ、グラム
系 列 生け簀台数 稚魚搬入数量
(2013年)
稚魚搬入数量
(2012年)
稚魚1尾当たり体重
(2013年)
稚魚1尾当たり体重
(2012年)
1 (漁協) 57 249,910 196,950 168 156
2 36 197,500 163,000 175 155
3 19 84,700 78,000 166 155
4 21 113,850 97,280 194 172
5 12 53,000 45,000 188 168
その他 60 297,000 247,300
合計 205 995,960 827,530 171 156
(注)2013年度、2012年度の搬入数量は前年度の搬入数量
(資料)宮城県漁業協同組合提供資料
系列にもとづく復興
■系列企業(親企業)のほとんどが大きな被害を受けた。銀ザ ケ養殖から撤退した企業が1社、他は復興を目指した
■系列企業の性格は異なる。企業によって復旧状況は違う
系列にもとづく復興
■系列企業:震災前には、大きな系列は8つ、その他に小さい 規模の系列があった
■商社系、餌料メーカー系、加工業系、漁具メーカー系など、系 列企業にはそれぞれ特徴がある。漁協の系列がもっとも規模 が大きい
■採卵から集荷・加工・販売までの一連の過程が統合化される 始まりは発眼卵を調達するところから
‘96~97
年にかけて、銀ザケ市場価格が大暴落。系列化が進む
ある系列の養殖サイクル (“山”から“海”、市場へ)
■親企業A社、銀ザケ養殖だけを担当し、出荷・販売はグルー プの別会社が担当
■系列を構成する淡水養魚場、海面養殖経営体、出荷相手先 企業(水産加工場等)と第
1
年度の8月頃に生産・販売を打ち合 わせし、生産数量等を決めるサケ加工企業の復興への道
銀ザケ、アキサケ、輸入サケ・マス
19
三陸のサケ加工業のパターン
■地域の水揚げ状況に応じた様々なパターン
1)生鮮出荷を中心にした加工(仲卸・鮮魚出荷タイプ)
シロザケと他の魚種との組合せ
2)イクラ、スジコなどの高付加価値製品の加工
3)シロザケの生鮮・冷凍フィーレの加工・出荷
サンマ、サバ、イカなどとの組合せ
4)銀ザケの生鮮・冷凍フィーレの出荷
5)サケに専門化した加工
銀ザケ、シロザケ、輸入サケ・マス
20
シロザケの漁獲の不安定性:震災後も続く
21 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
サンマ 20日間、初旬
サケ 寒風干し(切り身) 12/15
イサダ 3-4月
サバ 7-11月 波はある
ワラサ 5-6月
この時期はイクラによい
(I) 岩手県のある水産加工企業のパターン
サケの扱い(シロザケ中心)
鮭児、生フィーレ、冷凍フィーレ 塩イクラ、しょうゆイクラ
寒風干し
冷凍セミドレス
(
主に輸出用)前浜魚種との組合せ サンマ、サケ、サバ イサダ、ワラサ、
イカ、など
シロザケと銀ザケの加工の違い
アキサケを扱う加工企業は、生フィーレ出荷もあるが、加工の割合が増 える。加工用に回す場合は量を重視する。北海道から原料を調達して規
模の経済、中国を始めとする海外の加工基地への輸出も広くみられる
(冷凍ドレスが中心)
サンマは輸 出できない状
態が続いた
シロザケは 輸出しにくい
環境が続い た
22
23
図 ある企業のサケ加工の年間スケジュール
養殖銀ザケ
生出荷 生出荷・ドレス加工(2か月)
シロザケ
(アキサケ) 生出荷・冷凍加工の併用
チリ・トラウト
(輸入冷凍)
*1 系列企業A社からの聞き取り。
(資料)2013年3月の聞き取りにより作成。
1月 2月 3 月 4 月 5 月 6 月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月
(II)宮城県のある水産加工企業の パターン
加工企業によっては、工場稼働 率、市場ニーズに対処するため に、原料を、北海道のアキサケ、海
外産にも求める動きが以前から あった
三陸サケ産業の発展形態として 比較的規模の大きな加工企業
が取り組むケース
三陸サケは養殖銀ザ ケとアキサケ
三陸はサケ加工業の拠点基地
■シロザケ、銀ザケを中心にサケ加工業が成り立ってきた
■イクラ、筋子のほかに、生鮮・冷凍フィーレの出荷が盛ん
(中央・地方卸売市場に向けて出荷、量販店、業務筋への 直接販売もある)
■サケ加工品の種類は豊富
■シロザケの漁獲量、養殖銀サケの生産量が減少するにつれ て、加工企業の中には、シロザケ、銀ザケに加えて、輸入サケ・
マスによる周年供給の体制を作る
■サケの加工に特化したビジネス・モデルが、
1990
年代初頭か ら発展24
図 三陸シロザケのルート
輸出 シロザケ(原料)
大型定置等 による漁獲
図 三陸銀ザケのルート
稚魚
採卵・発眼卵
フィーレ等 フィーレ等
海面養 殖
図 三陸輸入サケ・マス加工ルート
海外
フィーレ サケ製品
復興への課題
28
銀ザケ市場の崩壊( 2012 年)
■2011年大震災は、出荷開始直前に発生。その年の出荷は 皆無となって海外からサケ・マスが大量に輸入
■
2012
年には出荷が再開され たが、価格は大暴落■チリ産の輸入増大、成長不良、
風評被害など、複合的に作用
■震災復興の支援策のなかで維 持されている
H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 単
価
372 374 446 420 457 425 425 - 240
宮城県産銀ザケ年度別単価の推移
(資料)水産経済新聞
2012.8.17
29
銀ザケのブランド化の限界
■系列企業は、生産過程から餌等を工夫して独自ブランド化
銀のすけ、伊達銀、・・・・・
■震災復興の過程で、養殖銀ザケに対する需要が減退するな かで、小規模ブランドの弊害を取り除く必要性がます
■製品の多様化
切り身主体から、刺身主体へ(
1
割から5割への引き上げを目標)。海外産サケとの差別化
みやぎ銀ざけ振興協議会の立ち上げ(ブラ ンドの垣根を取り払った市場対応を求める)
スライスを取り入れら れる施設・従業員の
確保が課題 30
サケ加工業が直面する課題
■シロザケの漁獲量が不安定、原料確保が難しくなっている
代替魚種を見つける動き
( 2011
年に稚魚放流ができなかった地域では将来懸念)■震災後、シロザケの冷凍セミドレス輸出が減少
■再建された加工場、生産設備が生産性の高い省力化機械が 導入された。過剰投資気味、企業間の競争が激化
■国内他産地による代替、輸入サケ・マスが急増し、市場シェ アが低下
■三陸水産加工業のサケ依存度が低くなっている
31
三陸サケ産業の基盤が弱くなる
三陸サケ産業のクラスター的復興とは?
■生産レベルでは、1)養殖銀ザケ、2)アキサケ
加工・出荷まで視野にいれると、3)輸入サーモン・トラウト、が 加わる
■市場では、生鮮フィーレを中心に独自のポジションをもってい たが、それも輸入サーモン・トラウトに奪われつつある
■イクラ・スジコ製品を中心とした国内産利用体系は維持され るが、安価な海外産の輸入が増える
■サーモン需要の多様化に応えられる製品供給体制を確立で きるか?
■サケ産業を狭くとらえず、関連産業の集積を含めて、発展の 方向を考える
高付加価値化を追求する動き、それには限界もある 32