Ni-Si-B 3 元系における相平衡
徳永辰也*1 西尾一政*2 大谷博司*2 長谷部光弘*2
Phase equilibria in the Ni-Si-B system
Tatsuya Tokunaga, Kazumasa Nishio, Hiroshi Ohtani, Mitsuhiro Hasebe
Ni-Si-B 3 元系の Ni 側の組成において,示差走査熱量計(DSC)を用いた熱分析により相境界を決定した。熱分析 の結果およびこれまでに報告されている実験データをもとに Ni-Si-B 3 元系について熱力学的解析を行った。得ら れた計算結果は,熱分析による相境界の実験結果をよく再現することができた。
1 はじめに
Ni-Si-B 3 元系は,Ni 系ろう材合金のベースとなる 3 元系である。したがって,ろう材の特性として重要 な液相線温度,固相線温度および構成相に関する情報 を得ることは非常に重要である。
本研究では,熱分析により Ni 側における相境界を決 定し,その結果とこれまでに報告されている実験結果 を用いて,Ni-Si-B 3 元系の熱力学的解析を行った。
2 実験および解析方法 2-1 熱分析
Ni-Si-B 3 元系の Ni 側組成について,アーク溶解に より合金を作製した。作製した合金は,石英管に真空 封入して 850 °C で 18 日間平衡化熱処理を行い,水中 に焼入れた。このようにして作製した合金について,
示差走査熱量計(DSC)を用いて熱分析を行った。熱分析 の条件は,精製したアルゴンガスフロー中で,5 °C/min の速度で昇降温を行った。熱力学的解析には,過冷の 影響を避けるために昇温時のデータを採用した。
2-2 解析方法
熱力学的解析においては,CALPHAD(CALculation of PHAse Diagrams)法を用いた。解析には,DSCによる相 境界データおよびこれまでに報告されている実験デー タを用いた。なお,解析にはスウェーデン王立工科大 学で開発された熱力学平衡計算ソフトウェア
Thermo-Calcを用いた。
3 結果と考察
図-1 に 10mol%B における縦断面状態図の計算結果を DSC の実験結果とあわせて示す。これから,計算結果 は DSC の結果をよく再現できていることが分かる。
800 900 1000 1100 1200 1300 1400
0 5 10 15 20 25 30 35 40 Silicon Content, cSi (mol%)
Liquid
L+(Ni)
(Ni) +Ni B3
L+Ni Si( )2 δ L+Ni Si ( )5 2γ
L+Ni Si(3 β2)
L+Ni Si( )2 θ
Temperature, /°CT
DSC 87Leb 10mol%B
図-1 10mol%B における縦断面状態図の計算結果
4 まとめ
Ni-Si-B 3 元系の Ni 側において熱分析によって相境 界を決定した。この結果とこれまでの報告データを用 いて熱力学的解析を行い,実験結果をよく再現できる ことができた。これによって,Ni-Si-B 系ろう材にお けるあらゆる組成について,液相線温度,固相線温度 および構成相を精度よく計算することが可能になった。
5 掲載論文
Materials Transactions 44 (2003) 1651-1654.
*1 機械電子研究所
*2 九州工業大学