Kyushu University Institutional Repository
[060]Bulletin of Research Institute for Applied Mechanics
http://hdl.handle.net/2324/4791830
出版情報:九州大学応用力学研究所所報. 60, 1984-09. Research Institute for Applied Mechanics, Kyushu University
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公 開 研 究 発 表 会 概 要
昭和59年1月20日(金), 九州大学筑紫キャンパス共通管理棟大会議室において,上記発表会を行 った.
大型海洋構造物の係留ラインの運動について
耐波浪構造学部門 小 寺 山 亘 石油掘削リグとして従来から大きく分けて固定式と浮遊式の2種類の構造物が用いられてきた.固定 式とは構造物が直接海底に接地して作業を行うものであり,浮遊式とは構造物本体はその浮力で海而に 浮かび,係留ライン又はその他の位置保持装置でその位置を保つものである.固定式リグは浮遊式リグ に比較して波浪による動揺が極めて少ないという特長を有する反面,設置工事に時間がかかるという欠 点を持っている.最近この欠点を解消する新しい方式として,ガイドタワ一方式が開発された.ガイド タワー方式とはトラス構造のタワーの底部を海底に接地し,多数本の係留ラインで水平方向に引張るこ とにより,直立させるものである.この方式によれば,石油掘削の作業に最も支障のある上下揺がなく なり, しかも従来の固定式に比べて,設置工事も簡単であると言われている. しかし係留ラインには鎖 に比べて軽量のワイヤーを用い, しかも初期張力が大きいので,構造物の左右揺又は前後揺によってラ ィンが共振する可能性があるので十分な検討が必要である.
粘性抗力をも考慮して係留ラインの運動を厳密に求めるには現在でも数値計算によらざるを得ないが 初期設計の段階では解析する対象が極めて多く膨大な計算時間を要する.
本報告では, 0係留ラインの運動は静的な景に比べて小さい. 0運動方程式の解はラインの長さ方向 に変化の緩やかな slowsolution と変化の激しい fast solutionの和で表わされる. 0粘性抗力は ラインの水中重贔に比べて小さい等の仮定を置いて係留ラインの運動,変動張力を理輪的に求める方法 について述べる.
熱 帯 域 の 大 規 模 な 大 気 ー 海 洋 相 互 作 用 (ENSO)とその中緯度への影響一
海洋環境部 山 形 俊 男
気候の経年変動に現われる最も著しい現象は熱帯域の海洋のエル・ニーニョ (El•Nifio
…
The child・・・)と対応する大気側の南方振動(SouthernOscillation)である. この変勁が人類の活動に及 ぼす影響は計り知れないものがある(たとえばインド洋沿岸諸国やアフリカの旱魃と付随する飢饉,南 米の漁業やグアノ生産の壊滅,北米大陸の異常気象に伴う不作等々).わが国への影響も東北,北海道 の異常冷夏,合風発生数の檄減,黒潮の変動等,甚大であることが認識されつつある.このような状況を踏まえて,既に米国では,一昨年米 ENSO現象の解明と予報をめざしてナショナル・プロジェクト が胎動している.さらに WCRP(世界気候研究計画)の一現として世界的規模で TOGA(熱帯海洋 と全球大気の研究)が計画され実行に移されようとしている.
本講演では,極めて重要な大気ー海洋相互作用としての ENSOを広く理解していただくために, レ ヴューを含めて,最近の講演者らの仕事を報告する.
複 合 材 料 の 強 度 と 破 壊
材 料 研 究 部 高 雄 薯 裕 複合材料とは通常, 母相を剛性あるいは破壊応力の大きい繊維・粒子により強化した構造材料であ る.
母相:樹脂(エボキシ,ポリエステル等),金属(主に Al),カーボン 繊維:ガラス,カーポン*,Kevlar*ポロン,セラミック
(*強い異方性を示す:ボロン (=100μ¢)以外は 10μ¢ 程度で通常5003000本程を束ねて使用)
繊維形態:長繊維・織物・短繊維
以上を組み合せて作成された. 各種 FRP(Fiber Reinforced Plastic)や FRM(Fiber Rein‑
forced Metal)の構造材としての剛性・強度・破壊等が各種負荷・環境条件下で検討されている.
複合材料の特徴は
1. 巨視的にも異方性である事
2. 材料力学的アプローチのレベルでも均質として扱えない場合が特に破壊の場合に多い事 があげ られる.現在以下のテーマについて解析を試みている.
1. 繊維端に発生する応力構造 2. 短繊維強化複合材の
0繊維端に発生するき裂による剛性低下
0繊維方向分散の剛性・熱膨張係数への効果 3. 長繊維強化複合材の
0き裂の伝播形態
0破壊力学の適用
マイクロ波による大口径磁化ブラズマの発生
高エネルギーカ学部 河 合 良 信 , 末 次 祐 介 中 島 寿 年
プラズマの基礎的実験研究に於て,プラズマの生成はいつも重要な課題である.新しいプラズマ源の
開発は,新しい波動現象の発見,あるいは,検証をもたらしてきた.例えば,
Qー装置:イオン音波の励起と受信,ランダウ減衰の検証,イオン波エコーの観測 D P一装置:イオン波ソリトンの観測
の如くである.しかし現在, D Pー装置でもそろそろ種切れになってきたように思われる.今後は,高 温・高密度プラズマ中の非線形波動現象,非一様プラズマ中の波動現象等に関する研究が行なわれると
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図予想される.
一方, トカマクプラズマの波動加熱の研究は増々盛んになるものと考えられる.従って,同時に波動 加熱の物理を明らかにするための基礎的研究が必要となる.このためには,直径の大きい高温・高密度
プラズマの生成が不可欠である.
我々は, 高温・高密度プラズマの基礎的研究を行なうために, 第1図に示すような, マイクロ波 (2. 45 GHz, 1. 2 kW)による大口径磁化プラズマの発生を試みている. 第2図は, プラズマの密度 (nふ お よ び 電 子 温 度 (Te)の管径方向分布を示すもので,一様なプラズマが生放されていることを 示している.
最後に,日頃から指導して頂いている矢嶋信男教授と伊藤智之教授に感謝致します.
ソ リ ト ン の 相 互 作 用
流 体 部 及 川 正 行 非線形分散系においては, しばしば非線形効果と分散効果の釣り合いによって一定波形, 一定速度 の孤立波解が存在する. 一般に,弱分散媒質中の有限小振幅波の一方向伝播は Korteweg‑de Vries (KdV)方程式によって記述される.KdV方程式の孤立波解はそれらどうしの相互作用によって個性
(速度,波形)を保存し,位相のずれのみが相互作用の結果として残る.また,有限な広がりを持つ初 期値はいくつかの孤立波に分解し,通常,エネルギーの大部分がこれら孤立波に集中している.このよ うな理由のため,この孤立波は (KdV)ソリトンと呼ばれる.現在では同様の性質を持つ種々のソリト ンが多数見出されている.
この講演では,浅水波と深い内部重力波を例として,ソリトンの弱い相互作用について摂動論的定式 化を与える.漸近的には位相のずれのみが重要であることがわかる.その位相のずれは浅水波について は相手ソリトンの振幅の平方根に比例し,深い内部重力波については相手ソリトンの振幅によらず一定 である.
浅水波について,高次の摂動計算を進めると位相のずれに,吸収しきれない永年項が現われることが わかる.これについて調べるため,オイラ一方程式を modifiedMAC法で数値的に解いた結果につい ても述べる.
「総合プイシステムによる海洋計測法の開発研究」の成果 一直接測流結果から見た黒潮の構造と変動一
海 洋 研 究 グ ル ー ブ ( 光 易 恒 , 外17名) 概要: 1978年にスクートした標記の共同研究は当初の計画通り進行し多くの成果を得て1983年3月 に終了した.その期間中,計画の主要な一環として種子島南方黒潮域に合計11本の係留線("海中プイ
システム")が設置され,うち10本が回収された.本講演ではそれ等の係留線で得られた流速及び水温 データの一部(特に最終年度に得られた4ヶ月のデーク)を紹介し,データから示唆される観測海域黒 潮の構造とその変動特性について述べる.
主要な結果は,①この海域における東向黒潮強流の厚さは 600m程度(この数値は「流量」算定に 関連して重要);Rその下層は海底地形に強く拘束された 5 10cm/s程度の南西流(逆流);③表層黒 潮部の最も活発な変動は30日程度の時間スケールを持ち,それは流軸の南北変位と解釈するのが自然 のようである.なお,この種の変動は(東向)運動量及び熱を値の大きい方から小さい方に向って輪送 しているようである(即ち平均場に対して散逸的).黒潮続流域におけるアメリカグループの観測結果 との差異に注目;等々.
TRIAM‑lM超電導トロイダル磁場コイルの実証試験
高エネルギーカ学研究部 伊 藤 智 之 , 中 村 幸 男 平 城 直 治 , 中 村 男 田 中 雅 慶 , 永 尾 明 博 川 崎 昌 ―
核融合に必要とされる高温・高密度プラズマの生成と閉じ込めに関する研究を推進するために現在建 設中の強トロイダル磁場実験装置 (TRIAM‑lM)に使用する超電導トロイダル磁場コイルの問題点と その対策及び実証試験について報告する.
1 .
超電導トロイダル磁場コイル製作上の問題点と対策 (1) 外部変動磁場による交流損失超電導コイルが変動磁場にさらされると渦電流等による発熱(交流損失)が生じ,常電導転移する恐 れがあるため交流損失評価法の確立と磁場のシールドを考察した.
(2) 超電導コイルの完全安定化
コイル内部の発熱によって一部が常電導転移を起こしたとしてもコイル全体に伝播(クウェンチ)す ることなくすぐに超電導状態に復帰させるため,冷却効率の向上(サーモエクセルC加工)と安定化材 として抵抗の小さい純アルミニウムの採用を行なった.
(3) 電磁力
超電導コイルのフープ電磁力,他のコイルとの相互作用による転倒力, トーラス状配置による求心力 などの電磁力に耐える構造とするため,支持構造材料としては SUS304 LNを用い, シャーパネル等 により支持構造を強化した.
2 .
超電導トロイダル磁場コイルの実証試験概要 (1) 超電導コイル導体のショートサンプ)レ試験実機トロイダル磁場コイル用の巻線導体ショートサンプルを用いて導体から液体ヘリウムヘの熱流束 を測定し,完全安定化条件を満たし得る値であることを確認した.又,変動磁場を外部から印加するこ
とによって交流損失を測定し,計算値と良く一致することを確認した.
(2) ヘリウム容器の磁場シールド効果モデル実験
超電導コイルは液体ヘリウムで冷却するためコイル全体がステンレス容器(ヘリウム容器)で包まれ ているが,このヘリウム容器による磁場のシールド効果は交流損失を評価する上で重要な要素である.
実機ヘリウム容器の1/3のモデル容器によって実験を行なったところ,我々の装置で発生する外部磁場 に対しては薄肉シエル近似で評価できることが分かった.
(3) 実機トロイダル磁場コイルの性能試験
実機トロイダル磁場コイル1個を製作し,各種性能試験を行なったまず,液体ヘリウムによりコイ ルを冷却し,目標通電電流 6202A(プラズマ中心磁場で8Tに相当する)までの励磁に成功した.次 に超電導コイルの完全安定化条件を実験的に調べるためにコイル巻線の一部をヒークーで強制的に常電 導転移させ,常電導部の伝播を観察したところ,常電導転移開始から2 3秒で超電導状態に復帰する ことが確認され,完全安定化条件が満たされていることが明らかとなった.さらに,外部パルスコイル による変動磁場印加試験を行ない,ヘリウム容器の渦電流損失及び交流損失を測定したところ,我々の ところで初めて適用された磁場拡散方程式の解法による計算値と良く一致することが確認された.又,
内部変動磁場による交流損失測定(高速励磁試験)により,計算法の正当性が確認された.以上のこと から交流損失の評価法がほぼ確立されたといえる.
3 .
トカマク装置運転時の超電導コイルの安定性各種実証試験の結果を踏まえてトカマク装置運転時の超電導トロイダル磁場コイルの安定性について 総合的に評価したところ,プラズマが正常に生成される場合には常電導転移することなく.プラズマが 途中で突然消滅する(プラズマディスラプション)場合にはコイルの一部で常電導転移を起こすが,
0.3秒程度で超電導状態に復帰することが確認された.以上のようにトカマク装置運転時の超電導コイ ルの安定性を確認することができた.