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平成 16 年度連携促進型地域振興技術協力支援調査事業

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(1)

平成 16 年度連携促進型地域振興技術協力支援調査事業

インドシナ南北コリドー形成のための調査 

 

 

調査報告書 

         

2004 2 月   

 

社団法人  海外コンサルティング企業協会 

株式会社  パシフィックコンサルタンツインターナショナル

(2)

要 旨

【背景】

インドシナ地域の重要性

インドシナ地域は急成長中の地域であり、中国に次ぐアジア地域の市場としてまた生産の場として、日本を始 め諸外国の注目を集めている。今後のインドシナ地域の均衡ある発展は、日本だけでなく世界経済にとって も望ましいことであり、積極的な支援を行っていくべきである。

経済格差の解消

現在のインドシナ地域内には、経済成長を達成し、地域の牽引役としての地位を固めつつあるタイがある一 方、ラオス・カンボジアは未だに最貧国から脱却できておらず、域内の格差は依然として大きい。さらに、ラオ ス・カンボジア国内においても都市部と農村部とでの経済格差は大きく、国内の不安定要因となっている。こう いった国内・域内の経済格差の解消は、地域の安定的成長を達成するための重要な課題である。

以上のような背景のもと、ラオス・カンボジアでは、両国の成長を牽引するような拠点都市の強化および拠点 都市間のネットワーク形成による域内格差の是正と、貧困地域の開発による国内格差の改善を、同時に進め るような方策が求められている。

【インドシナ南北コリドー形成の目的】

本報告書ではラオス・カンボジアを貫く南北コリドーを提案する。具 体的には、カンボジア側のシアヌークビル 港〜プノンペンの成長回廊、国境地域、ラオスのパクセ、サバナケットなどの拠点経済を連携するルートにな る。インドシナ南北コリドー形成の目的は以下の6点に集約される。

1. 貧困地帯の貧困削減

南北コリドー上にあるカンボジア北東部、ラオス南部は開発の遅れた地域であり、貧困率も高く、地域経済を 牽引するような核となるような産業も育っていない地域である。これらの地域の貧困削減と地域開発を促進す るためには、開発ポテンシャルが比較的高いと考えられている農業と観光に重点を置いた産業振興策および それを支援するインフラ整備、また、制度・仕組みの整備が必要とされている。

インドシナ地域においては、タイのバンコク〜東部臨海工業地帯(ESB)、バンコク〜アユタヤ〜サラブリの工 業集積コリドー等、インフラ整備に誘発される形で、すなわち都市間幹線道路沿いに発生した経済コリドーが いくつか見受けられる。本調査で提案する南北コリドーは、幹線道路整備がもたらす効果を戦略的に狙い、地 域開発を促進するものである。すなわち、カンボジア東北部およびラオス南部の国境地域とシアヌークビル、

プノンペン、パクセ、サバナケットと結 ぶインフラ整備を整備し、沿線での農業、観光振興を促すと同時に道路 を利用した国際物流の振興を目指す。

2 ラオスにおける物流安全保障

ラオスは内陸国であり、その物資輸送のほとんどをタイに依存している。特に、タイをトランジットする貨物へ の過度の依存はラオスの物流面での価格交渉力を低下させ、ETO の輸送費用に見られるように高い輸送コ ストを負担してきた。

(3)

このような 1 国、しかも1つのルートにほとんどのトランジット貨物や石油製品の輸入を依存する状態では、タ イとの関係悪化などのリスクに対して脆弱である。このような観点から、これまで 10 年以上に亘ってベトナム のダナン港の一部を租借する交渉を行ってきたものの実質的な進展は見られなかった。 

南北コリドーの形成によって、カンボジアルートという新しい物流ルートが成立する。ラオスにとっては、タイル ートに加えて新しい国際物流ルートを開発することは、競争原理の導入により輸送コストを削減できる機会を 生むと同時に、物流安全保障上のリスク分散につながる。

南北コリドーはラオスとシアヌークビル港(カンボジア)をむすぶ国際物流ルート、ラオスの対外貿易の窓口と なるばかりでなく、シアヌークビル港の拡張に伴って将来的には一部エリアの租借も視野に入れることができ る優良な国際物流ルートと位置付けることができる。

3. カンボジア、ラオスのエネルギーの安定確保

現在、ラオス、カンボジアともに石油製品をタイ、ベトナム(経由)から輸入することに依存している。このため、

石油、ガソリンの価格はタイ、ベトナムより高く、また、カンボジアでは電気料金がかなり高く、これが民間投資 の大きな阻害要因となっている。また、有事におけるエネルギー確保の面でもリスクがあると言わざるを得な い。

南北コリドーの形成によって、シアヌークビル港をゲートウェイとした物流ネットワークはカンボジア国内のみ ならず、ラオスへとも拡大する。これによりシアヌークビル港の地域における相対的位置付けが向上し、タイ・

ベトナム以外の国からの石油製品をシアヌークビル港から直接輸入できる期待がある。

4. 物流産業の育成

カンボジア、ラオスの物流機会の増加はマーケットの拡大を意味することから、カンボジア、ラオス国内の物 流産業を育成するチャンスを提供することができる。ただし、インドシナの物流は自由化の方向にあるため、こ れらのビジネスチャンスはタイやベトナムの物流産業にも等しく開かれていくと思われることから、物流産業の 育成にあたっては、業界の近代化などを積極的に進める方策が求められる。

5. コリドー形成による地域経済振興

南北コリドーのインフラの向上により、コリドーを動くヒトとモノが開発のポテンシャルとなって地域に新たなビ ジネスチャンスが生まれる。広域的な物流活動のほか、観光、地場産業、地域おこしなどのポテンシャルを活 かした地域開発を進める。今回の調査ではこういった観点からインフラ、特に道路整備の提案だけでなく、観 光開発を中心とした沿道の地域振興につながる提案も含まれる。特にラオス南部チャンパサック県を拠点とし た地域観光開発のポテンシャルは高い。

6. シアヌークビル港の物流量の確保による港湾経営の安定化

シアヌークビル港の港湾貨物は、今後のカンボジアと世界経済の伸びを背景に、将来大きく増加を見込んで いる。しかしながら、現在整備中のホーチミン〜プノンペン間の第2 インドシナ東西コリドーの完成後は、利便 性が向上するホーチミン港との間で競争が激しくなることが予想される。そのとき、南北コリドーを経由してラ

(4)

オスをシアヌークビル港の物流マーケットとしておくことは、将来的なシアヌークビル港の安定的な物流量確 保、経営の安定化につながる。

【南北コリドー開発戦略とシナリオ】

南北コリドーの形成により上述の目的を達成するためには、下図にあるように、相互に関係する5つの柱とな る開発戦略を総合的に実施することが重要である。

「1. インフラ整備」によって物流ルートを確保するともに、ルートを利用する物流産業のビジネスチャンスの拡 大、活動の活性化を支援するための「2. 物流拠点整備」、「3. 物流近代化」をおこない、さらに物流から沿線 住民が利益を得られるような「4. 物流サービス改善」、「5. 観光開発を中心とした地域開発」を総合的に実施 する。

開発の目的 1. 貧困削減

2. ラオスにおける物流安全保障の向上 3. エネルギーの安定確保

4. 物流産業の育成 

5. コリドー形成による地域経済振興  6. シアヌークビル港の物流量の確保に  よる港湾経営の安定化 

観光を中心とした   地域開発   インフラ整備 

物流近代化  

物流拠点整備 

物流サービス改善 

出典: 調査団

図  1  開発戦略と事業(インドシナ南北コリドー形成)の目的との関係 

南北コリドーの形成は以下のようなシナリオに則って進める。

インドシナ南北コリドーは、物流によるモノと観光によるヒトを流すためのコリドーである。まず、短期的には、

コリドーを構成する道路インフラ整備とラオス、カンボジア国境通過の手続きの簡略化を実施し、南北コリドー としてネットワークを開通させることが、物流・観光双方での基本となる。

中期的には、物流という視点からは、コリドーを利用した物流ビジネスの活性化を図る。ネットワーク上の物流 拠点(シアヌークビル、プノンペン、パクセ、サバナケット等)において、トラックターミナル・ICDなどの物流施設 を整備する。また、IT導入などによる効率化をすすめる等物流サービスを改善し、国際物流としての基本的な 要請事項を国際レベルで満足できる環境を整える。長期的には、コリドーのショートカットルート(カンボジア国 道12号経由)の整備や、石油など戦略物資の備蓄・輸送をカンボジア、ラオスで共同実施することなども検討 し、物流ビジネスの近代化をすすめる。

(5)

観光という視点からは、南北コリドーのネットワーク開通後に活発化するであろうヒトの流れを呼び込めるよう、

南北コリドー沿いでポテンシャルのあるチャンパサック県(パクセおよび周辺観光地)の観光開発を早期に開 始する。また、チャンパサック県の観光拠点としての開発を基盤とし、周辺県(ラオス:アタプー県、セコン県、

カンボジア:ラタナキリ県)における観光を含めた地域開発も開始する。中期的には、道の駅などの施設を中 心とした草の根の「村おこし」的な活動を実施し、物流、観光、地域おこしが融合した地域の振興を図る。中長 期的には、現時点でアクセスが困難であるものの、高い観光ポテンシャルを持つプレアビヒア寺院の観光開 発も進める。

以上のシナリオを図 2に示す。

短期 (2005-2010)

中期 (2011-2015)

長期

(2016-2020)

目標 ネットワークの強化と 国境を越えた交易の促進

コリドー沿いの 経済活動の活発化

インドシナ南北コリドーの 経済回廊としての機能強 化

インフラ整備 コリドーを形成する アジアハイウェイ沿いの 道路整備

地方道路整備による ショートカットルートの開発

物流拠点整備 トラックターミナル・ICDの

整備

石油の流通・備蓄基地の 整備

物流サービス 開発

コリドー沿いの道の駅の 整備

物流近代化 ラオス・カンボジア国境に おける通関・入国手続きの 簡略化

効率的な輸送のためのIT の導入

物流の近代化

観光を中心とし た地域開発

主要観光地(チャンパサッ ク)の受け入れキャパシテ ィ整備、農村部における 観光を含めた地域開発

プレアビヒア観光開発 出典: 調査団

図  2  南北コリドー開発シナリオ 

【南北コリドー形成のためのプロジェクト】

提案プロジェクトの一覧を以下に記す。

(6)

表  1  提案プロジェクト一覧 

短期 中期 長期

カンボジア側プロジェクト一覧

(2005-2010) (2011-2015) (2016-2020) インフラ整備プロジェクト

1 国道61号線本格改良

2 国道61号線トンレサップ架橋整備(新設橋梁)

3 国道73号線改修

4 国道64号線(コンポントム〜プレアビヒア間)改修

5 プノンペン・インダストリアル・リングロード

6 旧国道12号線(州道213号線)改修

7 鉄道南線改修(プノンペン〜シアヌークビル)

8 シャム湾海底ガスパイプライン建設

9 シアヌークビル〜カンポット〜タケオ〜プノンペン送電線 物流拠点施設整備プロジェクト

10 シアヌークビル石油備蓄基地

11 シアヌークビルインランドコンテナデポ整備計画

12 シアヌークビル工業団地

13 プノンペンインランドコンテナデポ整備計画

14 メコン河河川港整備

15 シアヌークビル発電所

16 プノンペン物流拠点整備プロジェクト

物流近代化プロジェクト

17 ICタグ導入調査

18 コンテナ機械

19 過積載(トラックスケール)対策

20 物流関連人材育成

21 物流業界近代化

物流サービスプロジェクト

22 国道4号、7号線「道の駅」整備

地域開発プロジェクト

23 ラタナキリ県でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業

24 プレアビヒア観光開発

ラオス側プロジェクト一覧 インフラ整備プロジェクト

1 国道14号線改修

2 国道16号線橋梁改良

3 国道18号線橋梁改良

4 国道13号線セドン橋架け替え

物流拠点施設整備プロジェクト

5 パクセ、サバナケットトラックターミナル整備

6 パクセンランドコンテナデポターミナル整備

物流近代化プロジェクト

7 ラオス、カンボジア国境ポイント(国道13号上)整備およびシングル

ストップサービス導入

8 ラオス、カンボジア国境ポイント(国道14号上)整備

9 過積載(トラックスケール)対策

10 物流関連人材育成

11 物流業界近代化

物流サービスプロジェクト

12 国道13号線「道の駅」整備

地域開発プロジェクト

13 セコン・アタプー県でのエコツーリズムを含む統合的農村開発事業 14 チャンパサック県パクセを中心とした観光地における持続的観光振

興のための受け入れキャパシティ整備

出典: 調査団

(7)

調査対象地域(カンボジア)

(8)

調査対象地域(ラオス)

(9)

インドシナ南北コリドー形成のための調査  最終報告書 

目  次    要旨 

 

はじめに... 1 

1.1 インドシナ地域の経済成長と格差...1

1.2 インドシナ地域の地域経済協力...2

1.3 インドシナ地域の経済開発課題...4

2 インドシナ物流の現状... 5

2.1 インドシナ地域の輸出入...5

2.2 インドシナ諸国内の物流量...8

2.3 インドシナ諸国の物流拠点およびネットワークの概観...9

2.4 インドシナの地域経済協力の枠組みの進捗状況... 16

2.5 インドシナ諸国の物流政策... 20

2.6 インドシナ地域のIT:現状と期待... 20

3 カンボジア、ラオスの物流の状況...23

3.1 カンボジアの物流状況... 23

3.2 ラオスの物流状況... 31

4 インドシナ南北コリドー開発構想...35

4.1 インドシナ南北コリドー形成の意義と目的... 35

4.2 ポテンシャルルート... 37

4.3 インドシナ南北コリドーの現状... 38

4.4 南北コリドー開発戦略とシナリオ... 50

4.5 ポテンシャルプロジェクト... 56

4.6 わが国の知見・経験の適用... 60

5 事業実施プログラム...63

5.1 事業実施スケジュール... 63

5.2 概算事業費... 63

5.3 開発資金の考察... 65

5.4 実施の体制の考察... 65

5.5 今後のアクション... 66 補論    ラオス南部・カンボジア東北部の観光開発プロジェクトの提案... A-1  添付資料  現地調査行程概要... B-1   

(10)

はじめに

   

1.1

インドシナ地域の経済成長と格差 

1.1.1 経済成長

インドシナ諸国1は、これまで東西冷戦の最前線として地域分断の時代を経験してきた。東西冷戦の終結後、

カンボジア、ラオス、ベトナム(CLV)は、政治体制は異なるものの市場経済への移行や民主化を果たし、

1995年にベトナム、1997年、ラオス、ミャンマー、1999年にはカンボジアがASEANに加盟し、インドシナは 分断の時代から協調・協力の時代へと移行しつつある。このインドシナ諸国は、メコン河州域を中心とした多 様な環境の中に多様な民族、宗教をもち、グレーター・メコン・サブリージョン(GMS)2全体では約 2.5 億人の 人口を抱える。農業資源、鉱物資源、観光資源など多様な資源を有していながらいまだに利用度が低く、逆 に言えば大いなる成長のポテンシャルがある地域と理解されている。

このインドシナの開発ポテンシャルは徐々に開花しつつあり、1990 年代以降、堅調な経済成長を経験してい る。先ず、タイ、ベトナムといった新興工業化国が外国直接投資を背景に経済成長を続け、ラオス、カンボジ アなどもそれに牽引される形で経済成長を続けてきた。1997年には未曾有のアジア通貨危機を経験したもの の、外国投資、順調な国内消費を背景に経済再建を果たし、近年の経済成長率は各国とも 5〜7%と高い水 準を保っている(表 1.1参照)。これら4カ国で1億6千万の人口を抱え、インドシナ諸国は、蓄積されつつあ る資本と技術、市場規模などを背景に、中国とともに 21 世紀初頭の世界経済を牽引していく地域として成長 しつつある。

表  1.1  インドシナ諸国の経済指標 

Population Urban

Population GDP GDP per

Capita GDP Growth (million in

2003) -2002 (million USD in 2003)

(USD/person

in 2003) (2002-2003)

Cambodia 13.8 16.0 4,190.5 303.7 5.1

Laos 5.7 20.0 2,132.3 374.1 5.8

Thailand 64.0 29.0 143,178.9 2,237.2 6.7

Viet Nam 80.9 25.1 39,045.9 482.6 7.3

CLV Total 100.4 61.1 45,368.7 451.9

TOTAL 164.4 90.1 188,547.6 1,146.9

出典: ADB, Key Indicators 2004, 2004

1 本報告書ではインドシナ半島に位置する国々(カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、ミャンマー、マレーシア)のうち、カンボジア、ラオス、

タイ、ベトナムをインドシナ諸国と仮称した。 

2  カンボジア、ラオス、タイ、ベトナム、ミャンマー、中国雲南省

(11)

1.1.2 地域格差

インドシナ諸国は今後とも大きな経済成長が見込まれる地域とみなされ、投資、生産、マーケットとしてその安 定的な発展は世界経済の中でますます重要性を増しているが、そのインドシナの安定的成長の阻害要因とし て近年注目されているのが、一部地域での独立運動(モスリム問題)、領有権問題、軍事政権によるミャンマ ーの孤立問題などである。それらの根本にある共通の問題は貧困問題を含めたインドシナ地域内の経済的 格差にあると考えられている。

現在、インドシナ諸国は、ほぼ中進国化したタイ、新興工業国としてテイクオフを果たしつつあるベトナム、市 場経済化の波に乗り切れないカンボジア、ラオスと3 つのグループに分かれていると言ってよい。一人当たり GDP のレベルでみると、タイはすでに中進国に分類される一方、ベトナムは貧困国、カンボジア、ラオスは、

最貧国に分類され、インドシナ諸国間の経済力格差は大きい。表 1.1 に示すようにインドシナ諸国で最も経 済成長が著しいタイ国と最も成長が遅れているカンボジアの一人当たりGDPは約7.3倍もの開きがある。

同時に、これら国々の内部でも都市部と農村部との経済格差が拡大しつつある。表 1.2 によれば、カンボジ アの都市部の貧困人口の割合は18.2%に対して農村部では 40.1%と2倍以上である。タイにおいては都市 と農村の貧困人口の割合は3倍にもなっている。

このような格差と貧困の問題は、タイ国では、周辺国からの不法労働者の流入、それに伴う治安悪化が問題 として認識されている。また、このような経済格差が国際テロリズムの根本原因とも言われており、インドシナ 諸国の全体的な経済的底上げ、貧困対策は自国の安定と成長の条件と考えられるようになってきている。

表  1.2  インドシナ諸国の貧困と格差  貧困人口の割合

−都市部(%)

貧困人口の割合

−農村部(%)

一日あたりの所得が1US

$以下の人口の割合(%)

所得順位上位者20%と

下位者20%の所得比

カンボジア 18.2 40.1 34.1 4.7 (1999)

ラオス 26.9 41.0 39.0 6.0 (1997)

タイ 4.0 12.6 1.9 8.3 (2000)

ベトナム 6.6 35.6 13.1 5.7 (2002)

出典: ADB, Key Indicators 2004, 2004

1.2

インドシナ地域の地域経済協力 

このような認識のもと、インドシナでは、域内経済協力の動きが加速している。有効な域内経済協力方策の確

立は ASEAN+3 サミットにおいても重要な議題の一つと認識されており、各国の共通の政治的課題である。

ASEAN における域内経済協力の動きには二つの側面がある。第一の側面は、インドシナ地域の貧困撲滅、

域内経済格差の是正のための市場、ビジネスチャンスを創造しようという側面であり、もう一つの側面は、グ ローバル経済化の中で生き残るための手段として、欧米日本などの大きな経済圏に対抗できる、あるいは交 渉力のある一体となった自立経済圏の形成を目指すという側面である。

(12)

前者の観点からは、インドシナ地域全体をインドシナ各国共通の市場として形成するために、各国がその共 通マーケットに自由にまたは容易くアクセスする手段を確立し、インドシナ地域内の人とモノの移動を自由に することによって活性化を図るといった方向での議論が始まっている。具体的には、AFTA によるASEAN域 内の関税の撤廃、道路、河川などの交通インフラの整備、越境時の手続き簡略化(シングルサービス)、自動 車の相互乗り入れなどである。

後者の観点からは自由貿易協定(FTA)の動きが重要である。物理的、制度的な地域的経済統合の流れの

中でASEAN諸国ではFTA締結が加速している。特に、中国、タイはこれに積極的で、これから訪れるであろ

うASEAN内で競争を、さらには域外経済圏との競争に勝ち抜くために自由貿易協定を踏み台に自国産業を 強化し乗り越えようとする動きと理解できる。

これを我が国の立場からみれば、インドシナの地域経済統合は、域内の人々の所得向上に伴うインドシナ市 場の拡大と各国での得意分野を活かした分散ネットワーク型の生産体制の確立といった両面からの 大きなメ リットが期待できる。同時に、生産と市場の両面で、中国とインドシナという二つの選択肢を手にいれることを 意味し、我が国の外交政策上も有効であろうと考えられる。つまり、我が国がインドシナ諸国の域内経済協力 に貢献することは、わが国産業の市場確保、生産体制の再構築といった側面の利益に加え、インドシナ諸国 の市場確保を目指す中国、韓国などとの外交交渉力を強化するといった側面もあることが指摘できる。

出典: 調査団

図  1.1  インドシナ諸国 

(13)

1.3

インドシナ地域の経済開発課題 

インドシナ地域全体の共通開発課題として、大きく「域内経済の統合」および「貧困、経済格差の是正」の二つ を掲げることができる。

域内経済の統合の基本方針は、あらゆるビジネスチャンスへのより公平なアクセスを確立すること、言わばイ ンドシナ各国にとってインドシナ全体を共通の市場とすることである。この基本方針の実現のためには、先ず、

各国の拠点都市経済の育成およびそれらの都市間のネットワーク強化が必要である。すなわち、インドシナ のいくつかの拠点都市(たとえば、ラオスのビエンチャン、サバナケット、ルアンプラバン、パクセ、カンボジア のプノンペン、シェムリアップ、シアヌークビル、バッタンバンなど)の都市インフラを整備し、さらにそれらの都 市間のネットワーク(道路、鉄道、空港、通信、輸送システム)を作り、モノとヒトの動きを活性化を支援するイ ンフラ整備が重要である。さらに、関税の撤廃、越境手続きの簡略化、自動車の乗入れ自由化、輸送行政の スタンダード化など制度的な改善がこれを支える。

カンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM)では人材、組織・制度、財政などすべての面で立ち遅れており、即効性 のある開発シナリオを立てにくい状況にある。よって、これらの国々では、農村開発、貧困対策、初等教育な どに力を入れ、すなわち、開発のスピードを求めず、安定的で持続的な開発を志向する傾向にある。この方針 は基本的には妥当なものと考えられているものの、タイやベトナムなど比較的先行している地域の中での言 わば「勝ち組」が先行的に優位な地位を確保してしまえば、CLM はタイ、ベトナムが牛耳る市場として固定化 されてしまい、各国の自律的経済、産業の自立の余地を狭めてしまうのではないかといった指摘もある。この 不安を取り除くために、また、安定的なインドシナの経済統合のためには、ある種「傾斜生産」的な方策、すな わち、カンボジア、ラオスといった比較的遅れている国々に対する重点的な援助が必要と考えられる。

重点的な援助分野としては、エネルギー開発、水資源開発、内陸部への効率的なエネルギー輸送のインフラ 整備などであり、これらを土台に観光開発、新たな産業立地、農業開発を促進すべきである。

地域経済の統合 ネットワーク化 物流の効率化 インフラ整備 制度整備 拠点都市整備 都市開発

貧困、経済格差の是正 産業の育成 エネルギー 人材育成

投資、ビジネス関連制度整備 インフラ整備

農村開発 水資源

農業開発 社会開発 教育、医療など 出典: 調査団

図  1.2  インドシナ開発の基本的な課題 

(14)

インドシナ物流の現状

   

2.1

インドシナ地域の輸出入 

2.1.1 貿易量

インドシナ諸国では、タイやベトナムの経済成長に牽引されるかたちで貿易量が急激に増加している(表 2.1)。カンボジアでは生地などの材料を輸入しこれをシャツなどに仕立てて輸出する、いわば労働集約型の 産業が貿易の大半を占めていると推察される。ある意味でタイはカンボジアと同じような経済構造を持ってお り、多くの機械、部品類を輸入すると同時に、付加価値をつけた製品を輸出している。ラオスでは、第一次産 品や軽工業品(繊維、衣料品)が輸出の主力になる一方、石油、機械、家電製品、自動車などを輸入し大幅な 輸入超過傾向にある。ベトナムは近年の工業化によって輸出品にバラエティができているものの、石油、機械、

家電製品、自動車などを輸入し、輸入超過に陥っていることに変わりはない(表 2.2)。輸出入の相手国をみ ると、西欧先進国、日本などが圧倒的に大きな割合を占めているが、カンボジア、ラオスの大口輸入先の中に タイ、ベトナムが入っているのが注目される(表 2.3)。

表  2.1  インドシナ諸国の輸出入の推移 

(単位:million USD)

1990 1995 2000 2003

カンボジア 輸  出 86 854 1,327 1,917 輸  入 164 1,187 1,600 2,469 ラオス 輸  出 79 308 330 366 輸  入 185 589 535 501 タイ 輸  出 589,813 1,406,311 2,773,826 3,333,929 輸  入 844,448 1,763,587 2,494,141 3,138,093 ベトナム 輸  出 2,402 5,449 14,483 20,176 輸  入 2,752 8,155 15,637 25,227 出典: ADB, Key Indicators 2004, 2004

注: FOB価格表示

(15)

表  2.2  インドシナ諸国の輸出入構成(2001) 

輸出 輸入

製品名 (%) 製品名 (%)

カンボジア 生地・衣類 パルプ・紙 その他

76.94  13.63  9.43 

生地・衣類 鉱産物 機械・家電 化学製品 車両 金属素地 その他

38.79  16.17  8.31  6.10  4.53  4.10  22.00 

ラオス 電気

木製品 衣類 農林産品 その他

33.4  31.3  20.3  6.6  8.4 

燃料・機械油 消費財 衣類素材 建設・電気機器 その他

42.4  22.8  14.0  4.7  16.1  タイ 機械・家電

プラスチック 生地・衣類 加工食品 動物 車両 鉱産物 その他

37.95  8.12  8.12  7.37  4.28  4.25  3.64  26.27 

機械・家電 鉱産物 金属素地 化学製品 車両 その他

39.70  12.59  9.67  8.50  5.73  23.81 

ベトナム 原油 生地・衣類 水産物 履き物

コンピュータ製品 その他

21.0  13.3  11.9  10.1  4.0  39.7 

機械・機器 生地・衣類 石油製品

スチール・インゴット コンピュータ製品 その他

16.9  12.0  11.7  5.8  4.2  49.4  出典: ESCAP, Trade and Investment Policies for the Development of The Information and Communication

Technology Sector of The Greater Mekong Sub-region, 2004

(16)

表  2.3  インドシナ諸国の輸出入相手国 (2003) 

輸出 輸入

輸出先国名 (%) 輸入元国名 (%)

カンボジア アメリカ ドイツ イギリス シンガポール ベトナム

59.8  10.4  7.4  3.3  1.5 

タイ 香港 シンガポール 中国 ベトナム

27.0  14.7  12.1  11.6  4.8  ラオス タイ

ベトナム フランス ドイツ ベルギー

21.4  17.3  8.1  5.7  4.0 

タイ 中国 ベトナム シンガポール 日本

59.4  12.8  10.4  2.7  2.0 

タイ アメリカ

日本 シンガポール 香港 中国

17.0  14.2  7.3  5.4  7.1 

日本 アメリカ 中国 マレーシア シンガポール

24.1  9.5  8.0  6.0  4.3  ベトナム アメリカ

日本 中国

オーストラリア ドイツ

21.6  14.0  6.4  7.5  5.8 

中国 韓国 日本 シンガポール タイ

14.1  11.3  10.8  10.7  5.6  出典: ADB, Key Indicators 2004, 2004

2.1.2 域内貿易

表 2.4は1990年、2000年、2003年のASEAN内貿易の割合を示している。1990年代に比較して、各国の 経済成長とともに近隣国との貿易が増大し、結果として域内貿易の割合は増加している。

表  2.4  インドシナ諸国の ASEAN 内貿易の割合の推移  

(%)

1990 2000 2003

カンボジア 39.0 23.3 30.9

ラオス 62.8 64.6 60.8

タイ 10.8 12.9 12.4

ベトナム 4.1 8.1 8.0

出典: ADB, Key Indicators 2004, 2004

(17)

0 50,000 100,000 150,000 200,000 250,000

Value of Cross-Border Trade (million Bhat)

Thai-Cambodia 324 2,144 3,112 4,893 5,887 5,739 11,784 9,346 17,127 Thai-Laos 3,639 4,071 4,057 8,519 9,851 10,824 18,479 15,618 41,474 Thai-Myanmar 4,196 4,124 3,192 7,164 5,280 5,459 13,338 7,720 14,874 Thai-Malaysia 38,506 43,892 33,412 67,164 80,890 104,78 178,29 130,94 226,91 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999

出典: ADB GMS Unit

図  2.1  タイを中心にみた周辺国との貿易量の推移 

2.2

インドシナ諸国内の物流量 

図 2.2はインドシナ諸国内の輸出入金額を示す。タイとベトナムの間の輸出入が最も大きく、タイとカンボジア、

タイとラオス、ベトナムとカンボジアの輸出入が続いている。この図は金額ベースでの輸出入を示しているた め、実際の国際物流量の相対的なボリュームの関係を示しているとは必ずしも言えないが、タイとベトナムを 中心とするインドシナ諸国の物流パターンが存在することがわかる。なお、ラオスとカンボジアの間には現状 ではほとんど輸出入が記録されていない。これは、ラオスとカンボジアの間に正式な国境ポイントがないこと、

両国とも農業国で工業化が進んでおらず、似たような農業国家であり、貿易品がほとんどないことによるもの と考えられる。

(18)

Thailand

Cambodia Laos

Vietnam 501.8

94.4

756.5

11.3

87.6 76.6

30.3 135.5

* : Year 1997

Unit : million USD (Y2003) Source : Key I ndicators 2004, ADB

M inis try of Commerc e

333.3 0.04*

0.01*

847.8

出典: 図中に記入

図  2.2  インドシナ諸国の輸出入 

2.3

インドシナ諸国の物流拠点およびネットワークの概観 

インドシナの物流体制について、地域外とのインターフェースを果たす物流拠点、消費地や経済活動の集積、

それらを結ぶリンクとしての交通インフラについて概観する。

2.3.1 国際物流拠点

外国とのインターフェースを果たす物流施設としては、国際空港と国際港湾が主要な役割を果たす。インドシ ナ諸国には、外国との航路をもつ7つの深水港湾がある。タイのバンコク港(クロントーイ港)、レムチャバン港、

マプタプット港、ソンクラ港、カンボジアのシアヌークビル港、ベトナムのハイフォン港、ダナン港、ホーチミン港 である。インドシナ諸国の対外貿易品のほとんどはこれらの港を通過するといっても過言ではない。

(19)

出典: 調査団

図  2.3  インドシナの物流施設構成:概観 

一方、インドシナ地域には10ヶ所の国際空港がある。タイのドンムアン空港、チェンマイ空港、ウドンタニ空港、

ウボンラチャタニ空港、ハジャイ空港、プーケット空港、カンボジアのプノンペン空港、シェムリアップ空港、ベト ナムのハノイ空港、ホーチミン空港である。空港貨物の割合は、全体の輸送量の 1%に満たず、航空貨物は インドシナ地域においては重要な役割を果たすには至っていない。

2.3.2 インドシナ諸国の国境ポイント

インドシナ諸国は陸続きであり、いくつかの国際物流可能な国境ポイントがある。ADB が主導しインドシナ諸 国の通関の簡易化のためのシングルストップ/シングルカスタムのプロジェクトが予定されている地点を表 2.5

(20)

表  2.5  インドシナ諸国の物流国境ポイント 

ADB合意に盛り込まれた国境ポイント その他の国境ポイント タイ〜ラオス タナレン、チェンコン、サバナケット、チョン

メック

カムワン

タイ〜カンボジア ポイペト、ハラック ケプチャーン、プラビハン カンボジア〜ラオス ベウンカム

カンボジア〜ベトナム モクバイ ハティエン、チャウドック、タンビエン

ラオス〜ベトナム ラオバオ、バンネプ ムアンマイ、ムアンホン、バンナマン、ノンヘッ ト

ラオス〜中国 ボーテン 出典: 調査団

2.3.3 都市・経済活動の集積

インドシナ諸国は都市のプライマシーが極めて高い地域である。例えば、タイにおいてはバンコクに全人口の

10%、経済活動の約 50%が集中している。このように、非農業経済活動、つまり、工業、サービス業などが、

限られた都市、地域に集中しており、インドシナ物流は、それらの限られた都市、地域間物流が中心となる。

インドシナ物流のパターンに大きな影響を与える都市・経済活動拠点として以下のような都市・地域があげら れる。

タイ: バンコク、ESB、チェンマイ、ソンクラ/ハジャイ、コーラート、ウボンラチャシマ カンボジア: プノンペン、シェムリアップ、バッタンバン

ラオス: ビエンチャン、サバナケット、パクセ、ルアンプラバン、ウドンサイ、ルアンナムタ ベトナム: ハノイ、ダナン、ホーチミン

2.3.4 ネットワーク(主要道路および河川)

インドシナ地域の物流を支える交通運輸ネットワークは、ADBや我が国の二国間援助によって主要幹線が整 備されつつある状況である。インドシナ地域内の主要運輸ネットワークを以下に示す。

アジアハイウェイ

インドシナ地域内では、各国の主要幹線道路について8 つの路線がアジアハイウェイとして指定されている。

この中で、インドシナの東西方向の幹線になっているのはAH-1とAH-16、南北方向の幹線になっているのは AH-1、A H-11およびAH-12である。このうちAH-1とA H-16はそれぞれインドシナ第2東西コリドー及びイン ドシナ東西コリドーとして整備が進められており、また、AH-13はインドシナ南北コリドーと位置づけられる。

(21)

出典: ESCAP, 2004 図  2.4  アジアハイウェイ 

インドシナ東西コリドー

アジアハイウェイ A H-16 のうち、ベトナムのダナン〜ラオバオ、ラオスのラオバオ国境〜サバナケット、タイの ムクダハン〜コンケン〜ピサヌローク〜メーソット、ミャンマーのメソット国境からモールミャインまでの区間をイ ンドシナ東西コリドーと位置づけ、整備が進められている。現在、ムクダハン〜サバナケット間の第 2 メコン国 際橋の建設がJBICの資金で進んでいる。タイ・ミャンマー国境からモールミャインまでの道路の修復はタイ政 府の援助で実施される予定であり、これらが完了すればインドシナ東西コリドーのインフラは完成する。

インドシナ第2東西コリドー

アジアハイウェイA H-1のうち、ベトナムのホーチミン〜モクバイ、カンボジアのモクバイ国境〜プノン ペン〜バ ッタンバン〜ポイペト、タイのポイペト国境〜ナコンナヨック〜アユタヤまでの区間をインドシナ第 2 東西コリド ーと位置づけ、整備が進められている。現在、カンボジアの第2メコン橋のFSが実施されている。

インドシナ南北コリドー

アジアハイウェイA H-13のうち、タイのチェンライ〜チェンコン、ラオスのチェンコン国境〜ルアンナムタ〜ボー テン、中国のボーテン国境〜クンミンを結ぶ区間をインドシナ南北コリドーと位置づけ、整備が進められている。

現在、ラオス国内の道路補修がADB、タイ政府、中国政府の協調融資によって進められている。

(22)

出典: 調査団

図  2.5  インドシナのコリドー開発コンセプト 

(23)

表  2.6  インドシナ地域のアジアハイウェイ 

アジアハイウェイ番号 通過国 各国の道路番号

AH-1 ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー (ベトナム)1A,22

(カンボジア)1,5 (タイ)33,1,32,1,105

(ミャンマー)85

AH-2 タイ (タイ)4,41,4,1,32,1,110

AH-11 カンボジア、ラオス (カンボジア)4,6,7

(ラオス)13

AH-12 タイ、ラオス (タイ)1,2

(ラオス)13

AH-13 タイ、ラオス (タイ)117,11,101,100,1148,1021

(ラオス)1

AH-15 タイ、ラオス、ベトナム (タイ)22

(ラオス)13,8

(ベトナム)8

AH-16 ベトナム、ラオス、タイ、ミャンマー (ベトナム)9

(ラオス)9

(タイ)2042,213,209,12

AH-19 タイ (タイ)314,315,304,226

出典: 調査団

出典: 調査団

図  2.6  インドシナのアジアハイウェイ 

(24)

メコン河

インドシナ地域のほぼ中央を流れるように、中国、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナムの6カ国を経 由してメコン河が流れている。言うまでもなくインドシナ半島の開発はメコン河の水系に大きく影響を受けてお り、モータリゼーション以前の主要交通手段はこの水系を利用した水運であった。特に東西コリドー開発のコ ンセプトが ADB 等により示されてからは主要な国際機関や二カ国間援助による交通インフラ整備は道路イン フラに集中しているが、水系を利用した南北輸送のメリットの見直しも行われている。実際、メコン委員会の調 査報告では、現在の条件で、ホーチミン港とメコン水運を利用したシンガポールと香港からプノンペンまでの 物流と、シアヌークビル港+国道を利用した同区間の物流の比較をした結果、前者の方が低コストであるとの 結論を出している。

鉄道

インドシナ地域のタイ、カンボジア、ベトナムでは鉄道が利用可能であるがラオスには整備されていない。しか し、タイ〜カンボジア間ではアランヤプラテート〜シソフォン間、カンボジア〜ベトナム間ではプノンペン〜ホー チミン間にそれぞれ軌道が整備されていないため、インドシナ地域全体をつなぐネットワークとはなっていない

(なお、タイ〜カンボジア間はカンボジア内戦以前には軌道で繋がり、バンコク〜プノンペン間の国際列車が 運行されていたがポルポト政権時代に破壊された)。

出典: ESCAP, 2003

図  2.7  トランスアジアレイルウェイ 

(25)

現在、ASEAN 諸国ではシンガポール〜クンミン鉄道(SKR)を検討しつつあるが、いまだに机上の空論の域 はでていない。一方、SKR整備に中心的な役割を果たしているマレーシアが、タイのアランヤプラテートとカン ボジアのシソフォン間約48Km の軌道の敷設を支援する動きがあり、これが完成すれば、タイとカンボジアが 再び鉄道で結ばれることになる。

2.4

インドシナの地域経済協力の枠組みの進捗状況 

2.4.1 経済協力枠組み

(1) Greater Mekong Sub-region(GMS)

GMSは1992年ADB の主導のもと結 成されたメコン河流域6カ国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ、ベ トナム、中国雲南省)を対象とした総合的な地域協力スキームである。GMSは関係国の話合いで多国間にま たがるプロジェクト・プログラムを実施していく非公式でフレキシブルな枠組みとして創設された。2001年11月 には、第 10回GMS閣僚会議で今後10ヵ年戦略が採択され、以下の11のフラッグシッププログラムが採択 された。

- North-South Economic Corridor - East-West Economic Corridor - Southern Economic Corridor

- Telecommunications Backbone and Information and Communications Technology - Regional Power Interconnection and Trading Arrangements

- Facilitating Cross-Border Trade and Investment

- Enhancing Private Sector Participation and Competitiveness - Developing Human Resources and Skills Competencies - Strategic Environmental Framework

- Flood Control and Water Resource Management - GMS Tourism Development

(2) AFTA (ASEAN Free Trade Agreement)

1992年の第4回ASEAN首脳会議において、ASEAN内の貿易を促進する措置として設立することが合意さ

れた。当初は2008年を目処としていたが、その後ASEAN先進6 カ国は2002年1月、一部の例外品を除 いて原則全ての ASEAN産品に対する域内関税を0〜5%としたAFTA が実現した。新規加盟のベトナムは 2003年、ラオス、ミャンマーは2005年、カンボジアは2007年に実施することになっている(図 2. 8参照)。

(3) AIA (ASEAN Investment Agreement)

ASEAN域内の投資の自由化を促進する枠組みで、内国民待遇を2003年までに他の加盟国の投資家に適

用したのに続き、2020年までにすべての国に最恵国待遇を適用することになっている。また、AIAでは、すべ ての産業への投資を2003年までに他の加盟国の投資家に解放したのに続き、2020年までにすべての国の 投資家に解放することも合意に至っている。

(26)

出典: 調査団

図  2.8  AFTA による貿易自由化のタイムフレーム  

(4) ACEMECS (Ayeyawaddy-Chao Phraya-Mekong Economic Cooperation Strategy)

2003年4 月カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイの4 カ国の首脳がマンダレーに集まり、インドシナの経済格 差の是正に向けた経済協力の実施に合意した。重要施策分野として以下の6点を取上げた。

- 4カ国の経済競争力の強化 - 国境地域での経済成長の実現

- より高い競争力が発揮しうる地域への農業・工業施設の再配置 - 雇用機会の創出

- 所得格差の是正

- 平和と安定および共有資源の持続可能な方法での積極的な活用

これらの重要施策に則り、以下のような具体的なプロジェクトの準備が進められているが、インドシナ南北回 廊を除いて、いまだ実現には至っていない。

- 国境地域での拠点開発(タイ〜カンボジア国境地域:コッコン、ポイペト、タイ〜ラオス国境地域:サバナケ ット、タイ〜ミャンマー国境地域:メソット)

- インドシナ東西回廊整備のミャンマー区間(メソット〜モーラミャイン間)

- インドシナ南北回廊のラオス区間(チェンコン〜ルアンナムタ〜ボーテン)

(5) CLV Development Triangle (Green Triangle Development)

ラオス南部のアタプ、セコン、カンボジア北東部のラタナキリ、ストゥントレン、モンドルキリ、ベトナム中部のコ ントゥンをむすぶ三角地帯を3 カ国共同で開発を進めるアイデア。物流の自由化、観光開発、インフラ整備な

(27)

ど多岐の分野を3 カ国共同で実施するものである。具体的なプロジェクトの提案には至っていないが、2004

年のASEAN+3会議のCLVと日本の外相会議において、CLV三カ国は我が国に対して、本枠組みへの支援

を要請した。

2.4.2 交通・運輸セクターの協力枠組み

(6) GMS Cross Border Agreement on Movement of Goods and Peoples

GMS(タイ、カンボジア、ラオス、ベトナム、中国(雲南省)、ミャンマー)の運輸セクターの統合に向け、1999 年

に基本合意がなされた。”Facilitating Cross-Border Trade and Investment”はGMSの11のフラッグシップ プログラムの内の一つで、以下の10のキーコンポーネントを持つ。

- Development and maintenance of a cross-border trade and investment information system;

- Development of products and services to support SMEs;

- Trade and customs facilitation, initially focusing on single-stop and single-window inspection and expanding to modern border management systems;

- Standards framework upgrading;

- Facilitation of cross-border movement of goods and peoples in the GMS - Development and integration of freight forwarding;

- Industrial development;

- Coordination of policies and regulation on trade-related financial and insurance services;

- Development of market information networks to facilitate trade linkages (including market access mechanisms, export promotion programs, access to international trading companies);

- Development of e-commerce systems to improve the integration of the trade transaction process (between sellers, shippers, bankers and purchasers).

この中でインドシナ諸国のモノとヒトの移動を自由化するための合意が、Facilitation of cross-border movement of goods and peoples in the GMS である。この合意を受けて、ADBが主導し、原則と手続き及 び具体的な20の付属書、プロトコルが作成された。2004年4月には第1ステージとして、トラックの域内自 由走行、ライセンスの相互認証、税関、入国審査といった必要書類の統一化など7つの付属書と1つのプロト コルが調印にいたっている。今後は運転手への共通の保険制度、共通ビザの発給、共通輸送料金体系、生 鮮品の輸送など残りすべてのプロトコルについては、2005年中の調印をめざし、2006年また2007年の完全 実施を目標としている。

(7) Single Stop/Single Window Inspection

ADBが主導する国境通過の利便性向上プロジェクトで、前述の Facilitation of cross-border movement of

goods and peoples in the GMS の中の一プロジェクト。国境での通関、入国などの手続きを国境の1箇所

にまとめ、それをどちらからの政府が代表して実施することによって、国境通過の手間を低減させる制度で、

2005年中に、トライアルとしてベトナムとラオス国境間で実施することになっている。

(28)

(8) 道路輸送に関するタイ、ラオス協定

タイとラオスでは、1999年3月に”Agreement between The Government of The Lao People’s Democratic Republic and The Kingdom of Thailand on Road Transport”を締結した。また、その合意に基づき補足合意 として2001年に“Subsidiary Agreement Specifying Road Transport Agreements”を締結した。まず、1999 年のいわば基本合意では、タイとラオスの国際輸送の活性化を目的として以下の5項目について合意した。

- 両国政府が両国間の国際輸送業者を認定することができる - 不必要な検査、護送の廃止

- 相手国では相手国の法律に従う

- トランジット貨物への便宜と輸送の自由化 - 税金、料金の廃止

さらに、2001年8月の追加合意では、

- タイ、ラオスの国境ポイント(10箇所)

- 車両検査の相互認証

- 相手国を走行する際に必要な書類 - 物流のための国際ルートの指定

などが合意された。

(9) タイ、ラオス、ベトナム協定

タイ、ラオスおよびベトナムは3カ国は、1999年11月に”Agreement between and Among the Government of The Lao People’s Democratic Republic and The Kingdom of Thailand, and the Socialist Republic of Viet Nam for Facilitation of Cross-Border Transport of Goods and People”を締結した。このいわば基本合 意は、モノとヒトの国境通過をスムースにし、運輸に関する法規制、手続きを簡便にかつ協調したものとし、多 機関の物流の促進を目的として、以下の7項目について合意している。

- 国境通過の手続き(ワンストップサービス化)

- ヒトの移動(ビザの発給の保証)

- モノの移動(相手国での現物検査の省略、トランジット貨物の無税化など)

- 車両の入国許可 - 関税(関税の引き下げ)

- インフラ整備の責任

- 組織制度(国家交通ファシリテーション委員会、合同委員会の設置)

(29)

2.5

インドシナ諸国の物流政策 

タイを除くインドシナ諸国の明確な物流政策については未だ明確な政策が確立されてはいないことが今回調 査で明らかになったが、以下にタイの物流政策について述べる。

タイ国では、近年のエネルギー価格の高騰を踏まえ、エネルギー消費がタイ経済の今後の大きな阻害要因と なるものと認識し、エネルギー効率の高い技術の採用、インフラストラクチャーの再編、さらにエネルギー効率 の高い経済、産業構造への転換(知的産業へ)が重要な施策と認 識されている。

運輸セクターにおいては、エネルギー効率の向上の観点から、都市部の公共交通の導入と並んで物流効率 の向上が重要である。物流効率の向上は、エネルギー効率の観点に加えて、物流コストの低減によるタイ企 業の国際競争力の向上、タイを中心としたインドシナの物流体系の再構築による新たなビジネスチャンスの 拡大などの観点からも重要と考えられている。2004 年末に閣議で示された物流改善の基本的な方方向性は 以下の4点に集約できる。

- 物流関連インフラの整備 - 物流関連法規制の改善

- ITの導入

- 物流関連の人材育成

この4つの方針を踏まえ、近々に運輸省交通政策局(Office of Transport and Traffic Policy and Planning)

では、2005年1月より全国物流マスタープラン調査を実施し、物流改善の具体策を検討することとしている。

2.6

インドシナ地域の IT:現状と期待 

アジア地域における固定電話、携帯電話、インターネットの各普及率、ホストコンピュータの台数等を表 2.7 に示す。同表は、各国の固定電話と携帯電話の合計普及率の低い順序で並べているが、全体の電話普及率 が低い国は、通信基盤が十分に整備されていないことを示しており、インターネットの普及率も低い状況にあ る。

本調査の対象国であるカンボジア及びラオスはアジア全 45 カ国のなかでも4,5番目に電話が普及していな い国であり、100 人当りの普及率は2人程度に留まっている。一方、台湾、香港、シンガポール、日本などの 国々での普及率は100人当り100を超える。カンボジア、ラオスの周辺国であるタイ、ベトナムの普及率はそ

れぞれ35.9、9.2であり、インドシナ地域のなかでは圧倒的にタイでの普及率が高いことが分かる。

このように、現状としてのアジア地域は、通信インフラ(ブロードバンドを可能とするような)において世界をリー ドする日本や台湾などの国や地域が存在する一方、本調査対象国のように電話回線自体が不十分な国も存 在している。また、同一国内においても都市部と地方部では通信インフラの普及に大きな格差があるのが現 状である。

(30)

表  2.7  アジア地域の電話普及率 

ホスト数 パソコン

加入者数 普及率 加入者数 普及率 加入者数 普及率 利用者数 普及状況 台数 推定台数

1000 100人当り 1000 100人当り 1000 100人当り 1000 100人当り 1000

Myanmar 1 295 0.61 14 0.03 14 0.64 10 2.07 2 55

Bangladesh 2 682 0.51 1,075 0.81 1,076 1.32 204 15.32 2 450

Nepal 3 328 1.41 22 0.09 23 1.50 60 26.39 1,513 80

Cambodia 4 34 0.25 224 1.66 224 1.91 30 21.76 623 20

Lao PDR 5 62 1.12 55 1.00 56 2.12 15 27.11 165 18

Bhutan 6 20 2.84 - - 3 2.84 10 144.75 1,242 10

Indonesia 14 76,326 3.60 11,700 5.52 11,704 9.12 4,000 191.23 45,660 2,300

Viet Nam 15 5,567 6.85 1,902 2.34 1,909 9.19 1,500 184.62 478 800

Philippines 23 3,339 4.17 14,216 17.77 14,220 21.94 2,000 255.69 30,851 1,700

China 30 214,420 16.69 206,620 16.09 206,637 32.78 59,100 460.09 89,357 25,000

Thailand 31 6,043 9.87 16,117 26.04 16,127 35.91 4,800 775.61 71,995 1,700

Malaysia 33 4,710 19.79 8,500 34.48 8,520 54.27 6,500 2,731.09 74,007 3,000

Korea 40 23,257 48.86 32,342 67.95 32,391 116.81 26,270 5,518.91 694,206 26,458

Japan 41 74,567 58.58 79,083 62.11 79,142 120.69 57,200 4,492.62 7,118,333 48,700

Singapore 42 1,930 46.34 3,295 79.41 3,341 125.75 2,247 5,396.64 197,959 2,100

Hongkong China 44 3,843 56.74 6,298 92.98 6,354 149.72 2,919 4,309.46 387,672 2,600

Taipei 45 13,099 58.33 23,905 106.45 23,964 164.78 8,590 3,825.09 1,712,539 8,887 Asia Region 438,377 12.13 440,260 12.19 440,272 24.32 201,079 557.56 10,803,137 140,392 Source: ITU statistics 2003.4

インターネット

アジア地域

非普及順 アジア地域

固定電話 携帯電話 固定電話+携帯電話

出典: ITU, ITU statistics, 2003

通信事情の格差は国家間をまたがる物流効率改善あるいは国内物流にとっても大きな障害となる可能性が あり、重大な関心事項である。国情に応じた多種多様な情報流通を可能とする国内、国際のブロードバンドイ ンフラ整備と、セキュリティ等の新技術の導入・利用の促進が重要となる。

より具体的には、これらの国々におけるバックボーン・ネットワークやアクセス回線、国際バックボーン等の整 備を国情に応じ計画的に実施していく必要があると考えられる。これは本調査で提案するような道路インフラ、

鉄道インフラ整備と連携して行うことにより効率的に進めることができると考えられる。

基幹系ネットワーク

基幹系はその国の主要な拠点(都市)を接続するインフラを指しており、ブロードバンド化するアクセス回線を 収容するために高速大容量の回線を構築する必要がある。このようなネットワークは現在、各ドナー国により 建設、リハビリが進められている1桁および 2 桁国道を利用したネットワーク構築を図るべきであろうと考えら れる。

アクセス系

アクセス系とは、基幹網と加入者を結ぶインフラであり、光ファイバー、メタル回線を使ったxDSL FWA (Fixed

Wireless Access) によりブロードバンド環境を提供することができる。加入者への引き込みのための設備負

担が大きいいため、利用者を増大するにあたってこの部分が問題となる場合が多い。アクセス系を備えたオ フィスビル、商業ビル、集合住宅などを都市部に積極的に建設促進することにより普及を図るべきではないか と考えられる。

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ルーラル開発関連

ルーラル地域においては、収益性がほとんど確保できないために基幹系もアクセス系も整備される可能性が 非常に低い。したがって、これらの地域においてデジタル・デバイドを解消し、ルーラル地域の経済活性化に 資するためにはコストの安い無線技術の活用を含めたアクセス回線の整備、IP ネットワークの構築、郵便局 等の各種公共施設を利用した共同利用型を追及したMultipurpose Community Telecenter (MCL)の設置を 含めたネットワークインフラ整備が重要になる。例えば、「道の駅」を中心としたコミュニティーIPネットワークの 構築などが考えられる。

 

表  2.3  インドシナ諸国の輸出入相手国 (2003)  輸出  輸入  輸出先国名  (%)  輸入元国名  (%)  カンボジア  アメリカ ドイツ イギリス  シンガポール  ベトナム  59.8 10.4 7.4 3.3  1.5  タイ  香港  シンガポール 中国 ベトナム  27.0 14.7 12.1 11.6  4.8  ラオス タイ  ベトナム  フランス  ドイツ ベルギー  21.4 17.3 8.1 5.7 4.0  タイ  中国  ベトナム  シンガポール 日本  59.4 
図  2.5  インドシナのコリドー開発コンセプト 
表  2.6  インドシナ地域のアジアハイウェイ  アジアハイウェイ番号  通過国  各国の道路番号  AH-1  ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマー  ( ベトナム) 1A,22  (カンボジア) 1,5  (タイ )33,1,32,1,105  (ミャンマー) 85  AH-2  タイ (タイ )4,41,4,1,32,1,110  AH-11  カンボジア、ラオス (カンボジア) 4,6,7  (ラオス )13  AH-12  タイ、ラオス (タイ )1,2  (ラオス )13  AH-13  タ
図  2.8  AFTA による貿易自由化のタイムフレーム  
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参照

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