グランドトゥルース取得のための
タブレット
PCを用いた高速マッピングシステムの構築
島村雄一,泉 岳樹,松山 洋
Rapid Digital Mapping System
for Getting Ground Truth Data Using Tablet PC
Yuichi SHIMAMURA, Takeki IZUMI, Hiroshi MATSUYAMA
Abstract
In this study, the effective digital mapping system was implemented by using Tablet PC. Usu- ally, digital maps are more compact and handy than paper maps. GPS receivers are convenient gadgets for real-time positioning in outdoor fields. Tablet PC provides useful interface of digital pen. GIS application (ESRI ArcGIS) can enlink these gadgets and technologies.
The distributions of snow-covered area and forested area were visually checked from a driving car and were inputted on the digital maps through tablet PC. In this system, GPS receiver displays the current location on the digital maps. The digital maps are seamless, and can be scrolled automatically incorporating the information from GPS receiver. This mapping system, therefore, can get and record ground truth data quickly as comparable speed as a driving car, even if the operator does not have any experience of computer mapping.
Keywords:グランドトゥルース (Ground Truth Data),タブレットPC (Tablet PC), GPS
1
はじめに
近年よく用いられる地理情報のひとつとして,衛 星リモートセンシング画像が挙げられる.衛星リ モートセンシングは,広域性や同時性の面で優れた 観測手法である.ただし原理的には,電磁波の特性 に基づいた地表面状態の「推定」であるため,実際 の現地調査に基づいた「検証」 (グランドトゥルー ス)が必要である.衛星リモートセンシングの広域 性や同時性を活かしてグランドトゥルースを行う には,広範囲の地表面被覆を短時間でマッピングで きる現地調査システムが求められる.
よってグランドトゥルースのためのマッピング には,広範囲を移動する機動性とともに,短時間で 島村:東京都八王子市南大沢
1-1・東京都立大 学地理学教室・
Tel 0426-77-2603・
Fax 0426-77- 2589・
[email protected]大量にマッピングする高速性が要求される.マッ ピングを高速化する手段としては,地理情報システ ム(
GIS)による作業効率の向上が挙げられる.し かし現状の野外調査用
GIS(モバイル
GIS)は,
PDA
(携帯情報端末)向けの簡易
GISという位置 づけであり,その機能を,電子地図による装備の軽 量化や通信機能によるリアルタイム性などに特化 しているため,高速・大量なマッピングには適さな い.一方で近年では,小型・軽量なモバイル
PCの 高性能化が著しく,汎用的なフルスペックの
GISを野外に持ち出すことが現実的になりつつある.
このような現状を鑑み,本研究ではグランドトゥ
ルースのために,広域を短時間でマッピングできる
現地調査システムを,一般的な市販機材を用いて構
築した.本稿ではその概要を紹介し特長について
述べる.
2
マッピング システム
2.1
システムの構成
マッピングシステムは,タブレット
PCによる ペン入力,
GPS受信機によるリアルタイム測位,
電子地図の
3要素を
GIS上で統合した.
2.1.1
タブレット
PCタブレット
PCとはペン入力式コンピュータの 一種であり,通常の液晶モニタの代わりに液晶ペン タブレットを搭載した
PCである.液晶ペンタブ レットとは,画面表示用の液晶パネルにペン入力用 の電磁誘導式デジタイザが内蔵されたハードウェ アである.一部には,電磁誘導式デジタイザでは なく,
PDAなどと同様に抵抗幕式(感圧式)タッ チパネルを搭載した機種もある.外見や基本的な ハードウェア構成はノート
PCに類似したものが 一般的である.
またオペレーティングシステム(
OS)は
Mi- crosoft社
Windows XP Tablet PC Editionを採 用している.
Windows XP Tablet PC Editionは
Windows XP Professionalに,タッチパネルや手 書き文字入力などタブレット
PC用の機能を
OSレベルで統合したものである.
使用したタブレット
PCは,
HP社
TC1100で ある(表
1) .ここでは,
GISの使用を踏まえ,グ ラフィック機能がチップセットとは別に搭載され ている機種を選定した.
表1 HP TC1100の主要諸元
パーツ スペック
CPU
超低電圧
Pentium-M 1GHz Chipset Intel 855PMMemory PC2700 DDR 1GB (
標準
512MB) Graphic NVIDIA GeForce4 GO 420 32MB2.1.2 GPS
受信機
GPS
受信機の条件として,使用する
GISの
GPS機能に対応していることが挙げられる.具体的に は,
GPSプロトコルは
NMEA,通信形態は
COMポート(シリアル接続)もしくはそれに準ずるもの
(例えば
Serial-USB変換ケーブルや
Bluetoothの
Serial Port Profile (SPP)
などの仮想
COMポー ト)である.
使用した
GPS受信機は,
Garmin社
eTrex Vista日本語版である.
eTrexシリーズはアウトドア用 のハンディ型
GPSであり,特徴としては単独で ルートやポイントのログを記録でき,地図表示用の 液晶画面を搭載していることが挙げられる.また,
eTrex
シリーズの上位機種(
Vista,
Legendなど)
では本体メモリ内に地図を格納できる.さらに,測 位結果を地図の道路上に補正する「マップマッチン グ機能」を使えば,調査ルートが道路上である場合 には
GPSの位置精度が向上する.その一方,一部 の機種を除き,一般的な
SiRFstarIIIチップでは なく
Garmin社独自のチップを搭載しているため,
受信感度が若干劣るとされている.
2.1.3
電子地図
電子地図データとして,日本地図センター発行の
「数値地図
25000(地図画像) 」を用いた.これは,
2
万
5千分の
1地形図の
1図幅を
1ファイルとし てスキャンし,
20万分の
1地勢図に相当する範囲 を
1枚の
CD-ROMに収めたものである.実際に は,マッピング時の利便性を考慮して,使用する図 幅の地図画像は,
GIS上で幾何補正した後に
1枚 の大きな画像として接合した.
2.1.4
地理情報システム(
GIS)
GIS
は
ESRI社
ArcGISを用いた.タブレッ ト機能や
GPS機能は,
ArcGIS 9では標準でサ ポートされている.
ArcGIS 8では各コンポーネ ント(
ArcGIS TabletPC Supportおよび
ArcMap GPS Support)を
ESRI社のウェブサイトから無 償でダウンロードできる.
2.2
システムの特徴
2.2.1メリット
■紙地図との比較 電子地図
電子地図は,広範囲をカバーする分量でも嵩張ら
ず,地図を縁辺で接合することが容易である.ま
た,図幅をまたぐ際に地図を交換する手間もない.
GPS
受信機
GPS
受信機を用いると,現在位置が電子地図上 にリアルタイムに表示される.そのため,現在位置 を継続的に同定することが非常に容易である.
タブレット
PCタブレット
PCは,表示装置(液晶画面)と入力 装置(電磁誘導式デジタイザ)が一体化しているた め,インターフェースとして紙地図にペンで書き込 むのと同様の感覚で情報を入力できる.その際に は,電子地図上に表示された現在位置の周囲に地表 面被覆を記入するだけでよい.このように現地で は,単純作業としてマッピングを効率化できる.
■
PDAとの比較 ハードウェアの性能
タブレット
PCは,画面サイズが大きく,一度 に表示できる情報量が多い.逆に画面が小さいと,
作業に適した縮尺と表示範囲を両立することが難 しくなり,頻繁に拡大・縮小を繰り返さなくてはな らなくなる.移動速度が速いほど,この繁雑さが顕 著である.
また,本システムは,計算や描画などの処理能力 が全般的に高い.現地で高速に大量のマッピング をする際に,ハードウェア性能の不足で地図のスク ロールや入力情報の処理に遅延が生じては,本末転 倒である.またマッピング中に中間状態を定期的 にバックアップする際の待ち時間なども作業効率 に大きく影響する.
その他,本システムは記憶容量が大きいため,大 量の地図データやその他の
GISデータを保存・参 照できる点も優れている.例えば,衛星画像と地図 のレイヤを重ねて表示し,その上に現在の地表面被 覆を記載する,といった作業が,本システムでは可 能である.
システムの汎用性
本システムの
OS(
Windows XP Tablet PC Edi- tion)は
Windows XP Professionalと完全に上位 互換であるため,
Windows XP用のアプリケー ションや周辺機器がそのまま使用できる.また
PDA用のモバイル
GISではなく,
Windowsマ
シン用のフルスペックの
GISを利用できるため,
マッピングだけでなく,必要に応じて各種解析がそ の場で行える.
2.2.2
デメリット
現状のタブレット
PCは,電源や重量の面でモ バイル性能が十分ではない.
使用した
TC1100を例にすると,内蔵バッテリー での駆動時間はカタログ値で約
4.5時間,実際の 使用では
2時間程度であった.よって,長時間の 利用には,予備バッテリーが必要である.また,重 量は約
1.4 kg,
A4サイズで厚さ
2 cmという形状 のため,片手で持って記入するには扱いにくく,長 時間の使用には画板のようなものが必要になる.
ただし,後述するグランドトゥルースの事例で は,自動車内からマッピングを行ったため,電源や 重量に関しては全く問題にならなかった(
3節) .
2.2.3
コスト
このシステムは,市販の機材を用いて,比較的安 価に構築できる(表
2) .
表2 各機材の価格
製品例 参考価格
Tablet PC HP TC1100 238,000
円
GPS eTrex Legend AP 29,400円 電子地図 数値地図
25000 7,500円
GIS ArcView 9 63,000
円
■タブレット
PCタブレット
PCは,ハードウェア的にはモニタ 部分が液晶タブレットになったノート
PCと同等 であるため,通常のノート
PCより割高である.
しかしながら,これはマッピング専用の機材ではな いため,平常時はノート
PCとして使用できる.
この他,
Microsoft社の
Origami規格に準拠し た,低機能だが安価なタブレット
PCも存在する
(例えば
PBJ社
SmartCaddie 99,800円) .また,
非タブレット
PCに液晶ペンタブレットを接続し て,タブレット機能を実現するのでもよい.
■
GPS受信機
本研究では,実際には,
Vista日本語モデル(参
考価格
59,400円)を使用したが,マッピング用
途に限れば性能過剰である.各モデルの違いとし て,
Legendには電子コンパスや気圧高度計の機能 がないこと,
AP(アジア パシフィック)モデル には専用の
2万
5千分の
1日本全国道路地図(別 売
19,950円)が格納できないこと,および地図格 納用のメモリ容量が異なること(
Vista J 16MB, 同
AP 24MB,
Legend J 16MB,同
AP 8MB)が 挙げられる.ただし
APモデルであっても,国土 地理院の数値地図
25000(空間データ基盤)等であ ればインストールすることができる.
■電子地図
表
2には,入手が容易な数値地図
25000(地図画 像)
CD-ROMの
1巻分の価格を示した.調査範 囲が収録範囲(
20万分の
1地勢図相当)を超える 場合は,複数枚の
CD-ROMが必要である.これ については,データの入手や
GISでの読み込みが 可能ならば,フリーの地図データでも代用できる.
■
GIS主に使用する
ArcGISの機能は
ArcMapである ため,ライセンスは
ArcViewで十分である.ただ し屋外で使用するためには,ライセンスをサーバー ではなく個々の
PCで管理する必要がある.この ため,ライセンスの管理方式は「シングルユース」
を選択する必要がある.表
2には教育機関用のシ ングルユースの価格を示した.
3
グランド トゥルース
本研究で構築したマッピングシステムが,広域 を短時間に調査する目的に適していることを評価 するために,実際にグランドトゥルースの取得を 行った.
3.1
移動手段
広域を短時間でマッピングするためには,機動性 が求められる.そこで本研究では,自動車で高速道 路や幹線道路を走行しながら,助手席の記録者が車 外の地表面被覆を目視し,手元の地図上に常時記録 する方法を採った.よって, 「マッピングシステム に求められる高速性」とは,ここでは,自動車の走 行スピードに遅れずに周囲の地表面被覆を記録で きる程度の速度を指す.
3.2
調査概要
グランドトゥルースとして,新潟県中越地方にお いて,衛星飛来時刻の「積雪域の分布」および「積 雪と植生の混在状態」をマッピングした.具体的 には,積雪の被覆状態を目視し,均一とみなした区 画を地図上で囲み,
10 %単位で被覆割合を記入し た.また林地では,林床および林冠の積雪の有無を 併記した.その他のメタ情報も地図上に併記した.
この成果は既に,衛星リモートセンシングによる 積雪域の抽出精度と植生密度の関係に関する研究
(
Shimamura・
Izumi・
Matsuyama, 2006)で使用 されている.
このグランドトゥルースは,
2002年以降,降 雪末期〜融雪期(特に
3月下旬)に毎シーズン複 数回の現地調査として継続中である.これまでに 対象とした衛星
/センサは,
Landsat-5/TM,同
- 7/ETM+,
Terra/ASTERである.ただしこれま でに述べてきたマッピングシステムを導入したの は
2005年からであり,
2002年〜
2004年は紙地図 で実施した.紙地図を使用した場合の相違点は,
マッピングの筆記用具が,タブレット
PC上の電 子地図と電子ペンではなく,紙の
2万
5千分の
1地形図とサインペンである点だけである.なお,現 在位置を同定するために,別途ノート
PCと
GPSを用いて
Kashimir 3D(地図ビューワ)で電子地 図上に現在位置を表示させた.
同時に,マッピングを補助する目的で,車の後部 座席から周囲の積雪状況をデジタルカメラで適宜 撮影した.このデジタルカメラの時計を
GPSの時 刻と同期させておけば,
GPSのログから撮影地点 を同定でき,撮影された写真に基づく情報をマッピ ング成果に追加することができる.
3.3
マッピングの手順
実際にマッピングする際には,
ArcMapを起動 し,予め電子地図を読み込んでおく.そして,
GPS機能により,
GPS受信機からの位置情報に応じて,
電子地図上に現在位置を表示し,移動(位置情報の
変化)に追従して自動的に電子地図をスクロールさ
せる.またタブレット機能により,電子ペンで電
子地図上に図形や文字を書き込むと, 「デジタルイ ンク」として記録される.デジタルインクは,特定 のレイヤではなくマップ・ドキュメント(
*.mxd) とともに保存されているので,マッピング完了後 にポリゴンなどに変換しベクタレイヤとして保存 する.
4
作業効率の比較
マッピングシステムを実際のグランドトゥルー スで使用したところ,広範囲を高速にマッピングす ることができた.その結果,紙地図を用いていた場 合に比べて,作業時間が短縮された(表
3) .
ここではグランドトゥルースに関する作業とし て,現地で地表面被覆をマッピングする「入力」作 業に加え,グランドトゥルース用のデジタルデータ として清書する「編集」作業に関しても言及する.
表3 作業時間の概算
紙地図 電子地図 短縮率 入力
2.5時間
1.0時間
60 %編集
5.5時間
4.5時間
18 %計)
8.0時間
5.5時間
31 %入力作業においては紙地図に比べ電子地図の作 業効率が高いが,実際には短時間で作業を終了する のではなく,紙地図を用いる場合と同等な時間を 使って,より広範囲もしくは詳細なマッピングをし ている.表
3では定量的に比較するために,同等 範囲(
2万
5千分の
1地形図
4図幅相当)をマッ ピングした場合の作業時間を概算した.
4.1
入力作業
ここでいう入力作業とは,衛星飛来時刻の地表面 被覆(今回は積雪域分布および積雪と植生の混在状 態)の区画および説明を,現地で地図上に記入する 作業過程のことである.
マッピングシステムによって入力作業が効率化 されたのは,電子地図によって大量の図幅にまたが るベースマップの扱いが容易になったためである.
また,タブレット
PCによって従来の紙地図ベー スと同等の記録スタイルが保たれたことも,入力作 業が効率化された要因として挙げられる.
■電子地図
電子地図は紙地図と異なり,大量の
2万
5千分 の
1地形図を使用しても,図幅の境界を意識せず シームレスに,
1枚の広大なベースマップとして扱 うことができる.また,
GPS受信機に基づいて現 在位置が表示され,高速に移動しても自動的に地 図がスクロールされる.そのため,地図を切り替 えたり現在位置を同定したりする手間が全く無い.
結果として,広範囲のデータを高速に継続して記録 することができた.
■タブレット
PCタブレット
PCでは,表示画面(液晶)と入力装 置(タッチパネル)が一体化しているため,電子地 図上に直接電子ペンで画像や文字としてデータを 書き込むことができる.そのため,紙地図にサイン ペン等で記入する従来のスタイルとほとんど変わ らない感覚で地表面被覆を記録できた.
特にタッチパネルが電磁誘導式デジタイザの場 合,従来の抵抗膜式(感圧式)のものとは異なり,
指や掌には反応しない.この場合,専用の電子ペン でのみ入力できるため,画面上に手を置いた自然な 体勢で,必要な情報を記入できる.
このため,
PCの操作に不慣れな者が記録を担当 した場合でも,紙地図を使ったマッピングの経験さ えあれば,記録速度が落ちることは全くなかった.
4.2
編集作業
ここでいう編集作業とは,グランドトゥルースと して用いるために,マッピングにより作成したデー タを,衛星画像と
1対
1で対比できる状態のデジ タルデータに修正する作業過程のことである.
マッピングシステムで作成したデータは既にポ リゴンデータであるため,紙地図のように改めてデ ジタル化する必要が無い.しかし実際には,フリー ハンドで入力したポリゴンを,実際の地図上の区画 線と一致させるために,大幅な修正が必要である.
この点は,タブレット
PCによる入力作業のしや
すさとトレードオフである.結果として,編集作業
については,紙地図と比べて大幅な作業効率の向上
は得られなかった.
具体的には,現状の
GISのタブレット機能では,
フリーハンド入力に起因する問題点が2つある.
まず,地表面被覆は,地図上の区画線(道路,河川,
農耕地,林地など)を参照して,小区画ごとに記入 している.しかし実際には,高速で移動している自 動車内で地表面被覆を記録しているために,記入 した線が区画の縁辺と一致していない部分がある.
また,機械のように厳密な直線を引かない限り,電 子ペンで入力した線は微細な短曲線の連続として 認識される.結果的に1つのポリゴンのノード数 が不必要に増大する.
これらは,ポリゴンレイヤに変換した後に,一つ 一つ手作業で修正することが可能であるが,作業効 率が悪い.そのため今回は, 「デジタルインク」を ポリゴンレイヤに直接変換するのではなく,新規に レイヤを追加して,その新規レイヤに清書する方法 を採った.結果として,ポリゴンを「清書」したレ イヤを作成する際に,画面上のレイヤを参照する か,手元の紙地図を参照するかの違いだけで,両者 の作業効率に大きな差は生じなかった(表
3) .
5
今後の課題
本研究では,衛星リモートセンシングのグランド トゥルースに適した効率的なマッピングシステム を構築した.一方で,更なる作業性の向上のため に,いくつかの改善すべき点が示唆された.
■画面表示能力
PDA
との比較から明らかなように,画面サイズ が大きく総画素数が多い( 「画面解像度/表示解像 度」が高い)ほど,大量・高速なマッピングの作業 効率が向上する.使用した
TC1100の液晶画面は,
サイズが
10.4インチである.しかし,現在市販さ れている最大のタブレット
PCでも画面サイズは
12.1インチであるため,これ以上の画面表示能力 の向上を求めることは難しい.またソフトウェア 的な面では,
Kashimir 3Dのような専用ビューワ に比べて,
ArcMapは,地図画像を小縮尺で表示 した場合など,縮小して補間されたラスタ画像の視 認性が悪い.
この点を現時点で改善するならば,別途,大型の
液晶ペンタブレット(
2.1.1項)を使用する以外に 方法は無い.
2006年現在,
15〜
21インチの液晶ペ ンタブレットが市販されている.
■処理能力
現状のタブレット
PCの処理能力は,
GISの動 作に余裕があるとは言い難い.しかし,タブレッ ト
PCの市場は小さく,機種の更新による処理能 力の向上を期待することは難しい.
そのため,処理能力を向上させるためには,高 性能な非タブレット
PCに,液晶ペンタブレット を接続して使用するのが現実的である.その場合
OSは
Windows XP Tablet PC Editionの
DSP版(
OEM版)を別途購入する必要がある(参考価 格
20,000円).また,自動車内での使用に限定す れば,自動車側のバッテリー容量が許す範囲で
PC側にデスクトップ
PCやワークステーションを用 いることもできる.
■編集作業の改善
現地では,地表面被覆の境界をフリーハンドで記 入しているため,参照しているラスタ型の地図画像 の区画線と現地で取得したデータは厳密には一致 しない.すなわち,このデータはそのままではグラ ンドトゥルースとして使用できないため,現状では 新規にレイヤを作成して清書し直すという大幅な 編集作業が必要である.
今後タブレット機能の向上(ベクタ地図を用いて 区画線に自動スナップさせる機能など)により,フ リーハンドで描いたデジタルインク図形がそのま ま最終的なポリゴンレイヤとして使えるほど十分 な品質の向上が図られれば,編集作業の時間が限り なく削減されるものと期待される.
謝辞
本研究の内容に関連して,財団法人日本科学協会 より平成
17年度 笹川科学研究助成を受けました.
文献
,Shimamura, Y., Izumi, T., Matsuyama, H., (2006) Evaluation of a useful method to identify snow-covered areas under vegeta- tion, International Journal of Remote Sens- ing (printing).