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* 三井 -MAN B&W ディーゼル機関における多種燃料噴射技術 三井 -MAN B&W ディーゼル機関における多種燃料噴射技術 * Multi-Fuel Injection Technologies on Mitsui-MAN B&W Diesel Engine ** 志岐純平 ** 志岐純平

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Academic year: 2021

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1. はじめに

当社三井造船は, 1928 年に B&W ディーゼル機関の 製造を開始して以来, 一貫してMAN B&W ディーゼ ルブランド機関の製造を行ってきた. その歴史の中で, ほぼ全ての機関で近年に至るまでMarine Diesel Oil (MDO)や Heavy Fuel Oil(HFO)など石油系燃料のみ が使用されてきた. これは石油系燃料が安価で, 取扱 いが容易であり, 且ついつでもどこでも調達できる舶 用燃料としての必要条件を満たしていたからと言える. し か し, 1997 年 の 船 舶 か ら の 排 ガ ス 規 制 (MARPOL73/78 条約附属書 VI)採択を機に始まった 環境規制強化の流れと, リーマンショックに代表され る経済状況の影響により, 地球環境保全のための環境 負荷低減と, 高効率・経済性追求という舶用機関への 要求は日々高まっている. この要求に応えるべく, 三 井-MAN B&W ディーゼル機関は, 効率向上や環境規 制対応, 多種燃料対応など様々な進化を遂げてきた. 中でも燃料噴射技術は舶用主機関として基本的な役 割である出力発生はもとより, 燃費率・NOx 排出率と いった重要な機関性能を直接左右するコア技術であり, 燃焼室の熱負荷ひいては機関の信頼性にも影響を与え

るため, ライセンサの MAN Diesel & Turbo 社(MDT) との協力の下で注意深く, 課題をクリアしながら開発 が進められてきた. 図1 国内初商用天然ガス焚低速 2 サイクルディーゼル機関 (8S70ME-C8.2-GI, 2015 年製造) ここでは, 燃料弁など燃料噴射系主要部品に着目し, 重油対応の機械式機関に始まり, 電子制御機関へ移行 しながら, 天然ガス(LNG), エタン, メタノール, 液化 石油ガス(LPG)といったCO2等の温室効果ガス(GHG) を低減する代替燃料への対応に至る, 三井-MAN B&W 機関の開発の歴史を振り返り, その主な内容を 紹介すると共に, 将来の燃料噴射技術の展望について 述べる.

三井-MAN B&W ディーゼル機関における多種燃料噴射技術

* 志岐 純平**

Multi-Fuel Injection Technologies on Mitsui-MAN B&W Diesel Engine By Junpei Shiki

This technical paper introduces fuel injection technologies for Mitsui-MAN B&W diesel engines and looks back on the history of their development.

In order to meet tougher environmental and economic requirements on a global scale, efforts are continuing to develop electrically controlled hydraulic multi-fuel injection systems for current low speed 2-st marine diesel engines. We consider that the completion of these systems is essential for development of new engines in the future to optimize emission control and the maintenance of thermal efficiency.

*原稿受付 平成29年 10月 3日.

**正会員 三井造船株式会社 (岡山県玉野市玉3-1-1)

三井-MAN B&W ディーゼル機関における多種燃料噴射技術

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2. 重油焚機関 2.1 スライド型燃料弁 1980 年代まで機械式機関においては, カム軸駆動の 燃料噴射系は, 逆転機構の変更や摺動部品の固着対策 などでの設計変更が重ねられてきたものの, 特筆すべ き変更は成されなかった. しかし 1990 年代始めにコ ンテナ船向け大型機関のスモーク対策として登場した スライド型燃料弁は, 1997 年の IMO NOx 規制 (MARPOL73/78 条約附属書 VI 第 13 規則)採択から 2000 年以降実質適用が開始された NOx 1 次規制を契 機に, 従来の燃料弁に比べNOx排出低減と燃費低減を 両立する切り札として開発・適用された. 図2 燃料弁構造比較(従来型・スライド型) このスライド型燃料弁は, 燃料噴射をコントロール するスピンドルと呼ばれる部品のDesign を変更した ものである. スライド型燃料弁のスピンドルは従来位 置と同じシート部の他に, 併せ持つアトマイザ内を摺 動する筒状の部分によって, アトマイザの噴孔も同時 に開閉することが出来る構造となっている. これによ って燃料噴射期間の燃料噴射圧が一定に近くなり, 噴 射初期の急激な上昇を抑えてNOx 排出率を低減する と共に, 従来型燃料弁のアトマイザ内に存在した Sac volume のために, 燃料噴射後この空間にある燃料が 圧力を持たず燃焼室内にドリップすることで起こる燃 費悪化を抑えることに成功した. このスライド型のDesignは, 現在の重油焚き電子制 御機関はもとより, 各種燃料焚きに対応した最新機関 のPilot 燃料弁としても, 継続して適用されている. 2.2 燃料ブースターポンプ 2000 年代に入り, 燃料噴射と排気弁開閉を電子制御 で行うME 機関が登場し, 燃料ポンプは従来のカム駆 動のボッシュ式から, 二段ピストンを用いたブースタ ー方式のDesign に変更された. (図 3 参照) この燃料ブースターポンプと油圧制御により油圧ピス トン・プランジャの動作速度及びタイミングを任意に 変えることが出来るようになり, 燃料噴射プロファイ ルを自在に変更することで, トレードオフの関係にあ るNOx 排出率と燃費率を高いレベルで最適化するこ とに成功した. 図3 燃料ポンプ構造比較 (従来ボッシュ式(左)・ブースター方式(右)) 尚, この二段ピストンDesignは, より大きな駆動力が 必要なサイクル初期と, それ以外の後期を, なるべく エネルギーロス無く運転するために採用されている. 3. 二元燃料機関 3.1 ガス焚機関 当社では旧来から重油に代わる代替燃料対応技術を 積極的に開発・適用してきた. 1990年代に入りLNG焚 機関GIDE(Gas Injection Diesel Engine)の開発に成 功し, 1994 年に弊社千葉事業所内に建設したGIDE 発 電所(図4参照)では, 機械式12K80MC-GI-S機関(最高 出力40MW)を用いた発電運転を行い, 年間約1600 時 間, 2003年までに約20,000時間の運転を実施し, LNG 船主機として搭載するための数多くの知見を得た. 図4 GIDE 発電所 12K80MC-GI-S 機関 この二元燃料(Dual Fuel)機関は, 前述の重油焚機関 の基本Design をベースとし, その拡散燃焼方式(ディ Sac volume 従来型 燃料弁 スライド型 燃料弁 スピンドル (シート部) アトマイザ

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ーゼルサイクル)を変えることなく, Pilot 燃料弁と二 次燃料(Secondary Fuel)用燃料弁を各シリンダに備え, 重油の Pilot 噴射を着火源とし, コモンレール方式で 昇圧・供給した二次燃料を燃焼させることで(図5参照), 重油燃焼時と遜色無い(同発熱量換算)燃費を実現して いる. (図 6 参照) 図5 二元燃料機関の燃焼室構造 図6 8S70ME-C8.2-GI 機関の燃費率及び NOx 排出率計測結果 また同時に, 二次燃料供給・噴射系統やその燃焼に不 具合が生じた場合には 瞬時に重油燃焼に切替わるこ とで機関負荷・回転速度を維持することが出来, 運航 時の冗長性を確保している. 更に, このディーゼルサイクルを用い, 電子制御機 関と組合わせた ME-GI 機関は, ガスの高圧供給シス テムが必要となるものの, ノッキングの心配が無く, 任意の燃料割合でも安定した運転が出来るため, 燃料 供給状態や運航パターンに応じた柔軟な運転が可能で あり, 且つ温室効果の影響が非常に大きい未燃メタン の排出(メタンスリップ)が殆ど無い点で, 環境負荷低 減の面でも非常に優れている. 当社では, 商用の舶用低速 2 サイクルディーゼル機 関として国内初となった8S70ME-C8.2-GI 機関(図 1 参照)を 2015 年に製造・出荷したのを皮切りに, 2016 年 に 製 造 し た 世 界 初 の エ タ ン 焚 機 関 7G50ME-C9.5-GIE(図 7 参照)を含めて, 表 1 のよう なME-GI 機関の実績を有している. 図7 世界初商用エタン焚ディーゼル機関 (7G50ME-C9.5-GIE, 2016 年製造) 表1 三井造船の商用 ME-GI 機関の製造実績 機関形式 (燃料種) 台数 用途 (製造年) 8S70ME-C8.2-GI (LNG 焚) 2 台 コンテナ船 (2015) 7G70ME-C9.2-GI (LNG 焚) 4 台 LNG 運搬船 (2015-16) 7G50ME-C9.5-GIE (エタン焚) 3 台 エチレン運搬船 (2015-16) 3.2 ガス噴射弁 ガス噴射 シリンダカバ- ガスコントロールブロック ガス入 アトマイザ シールリング O リング スプリングスピンドル ホルダ スピンドルガイド シールオイル入口 コントロールオイル入口 ガス入口 パイロット燃料噴射弁 二次燃料噴射弁 図8 ガス噴射弁の構造(上)とシリンダにおける配置(下)

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LNG やエタン焚き機関で使用されるガス噴射弁の 構造とシリンダにおけるその配置を図8 に示す. 昇圧されてガスコントロールブロックに供給された ガスはシリンダカバー内部を通り, ガス噴射弁まで導 かれる. ガスの噴射は, コントロール油圧力が, スピ ンドルを押付けているスプリングのバネ力に打勝ち, スピンドルがリフトした際に, アトマイザ内を通って ガスが燃焼室内に噴射される仕組みとなっている. ま, ガスがコントロール油側に流入しないよう, スピ ンドルにシールオイル(主潤滑油 MLO より)を供給し, シールしている. 尚, この基本Designはエタン焚機関 でも同様である. 3.3 メタノール焚機関 メタノールは硫黄分を含まないことから SOx を発 生せず, 単位発熱量あたりのCO2排出も重油に比べて 少ないため, 低環境負荷燃料として以前から注目され てきたが, 近年米国に端を発するシェールガス革命に より安価な天然ガスが供給され始め, この天然ガスか ら製造されるメタノールも登場し, 従来の石油や石炭 から製造されるメタノールと合わせて, 供給体制の整 備が進みつつある. このような状況下で当社はライセ ンサMDT 社と協力し, メタノールを含む低引火点燃 料を使用するME-LGI機関を, 両社が各々所有するテ スト機関4S50ME-T9 を用いて開発し, 2015 年には世 界初の商用メタノール焚機関7S50ME-B9.3-LGI機関 (3 台)を, 国内造船所のメタノール運搬船向けに製造・ 出荷した. (下図 9 参照) 図9 世界初商用メタノール焚ディーゼル機関 (7S50ME-B9.3-LGI, 2015 年製造) 3.4 Fuel Booster Injection Valve(FBIV)

ME-LGI 機関で使用可能な燃料には, 前述のメタノ ールの他, エタノール, LPG, ジメチルエーテル (DME)があるが, そのいずれもが重油よりも粘度が低 く潤滑性が劣るため(表 2 参照), 燃料噴射系部品には, 摺動部分におけるシール性と潤滑性を両立させる高度 なDesign が求められた. そのため, 上述の 7S50ME-B9.3-LGI では, MAN B&W ME機関の最新Designで, 燃料噴射弁と燃料ポ ンプの機能を一体化したFBIV (図10参照)を適用して, 最適Design の追求が成された. 表2 低引火点燃料の主な性状 (参考) 燃料種類 メタノール エタノール LPG* DME A 重油 粘度[Pa・s] ** 0.59 1.20 0.29 0.25 2.5-3.0 比重(気体時) 1.1 1.6 1.5 1.6 -- 比重(液体時)** 0.79 0.79 0.50 0.67 0.86 低発熱量[MJ/kg] 19.9 27.0 46.3 28.9 42.7 沸点[℃] 65 78 -42 -25 300~ 引火点[℃] 11-12 13 -104 -41 60~ 供給圧力[bar] 8 8 50 30 7 噴射圧力[bar] 550 600 600 600 800 昇圧方式 FBIV ブースター *: 純プロパンベース, **: @20℃ 図10 FBIV の構造 FBIV では, 燃料は側面から内部の吸入弁を通して プランジャ下部の空間へ導かれ, コントロールオイル で押されたプランジャによって昇圧されて, アトマイ ザから燃焼室へ噴射される仕組みとなっている. 従っ て, 摺動し昇圧を行うプランジャ部分の間隙や表面の コーティングに工夫が凝らされている他, 低沸点によ る沸騰を防ぐためクーリングオイルをFBIV 内部に供 給している. 加えてメタノールは劇物であるため, 摺 動部からの漏れを微量でも確実に検知する機構を備え ている. (実際のシリンダにおける配置は図 11 参照) また, 7S50ME-B9.3-LGI 機関における燃費率及び NOx 排出率は図 12 に示すように, いずれも重油より 良好な結果を示しており, 特に NOx 排出率は対重油 比で約30%低減されていた. これは図 13 の熱発生か ら燃焼初期の勾配が殆ど変わらず, 燃え切りが早いこ とで, 良好な燃焼状態でも NOx 生成時間が抑制され たためと考えられる. シール油 クーリング油 プランジャ コントロールオイル 吸入弁 燃料 シールオイル クーリングオイル (燃料弁部) (燃料ブースタ部)

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11 FBIV のシリンダにおける配置 12 7S50ME-B9.3-LGI 機関の燃費率(上) 及びNOx 排出率計測結果(下) 3.5 LPG 焚機関 プロパン, ブタン等を主成分とする LPG(Liquid Petroleum Gas)については, LNG, エタン, メタノー ルといった燃料よりも既存インフラがはるかに充実し ており, 常温での圧縮でも容易に液化し, 毒性も無い ため, ハンドリングがしやすいことから, 現在注目を 集めている燃料である. そのため, MDT にて現在, LGI 機関の Design を踏 襲して, 新たに LGIP 機関として開発を進めている. 図14 LGIP 機関のシリンダ周辺の配置 この LGIP 機関は, シリンダカバー周辺部品配置の 最適化(図 14 参照)のため, LPG 燃料供給管については シリンダカバー内を貫通する形で配置している. 更に, FBIV については, 吸入弁を本体と一体化する などの工夫で小型化する Design を採用し, 上述の最 適化を進めている. (図 15 参照) 図15 FBIV 構造比較(メタノール用/ LPG 用) 4. 最後に これまでの三井-MAN B&W 機関の燃料噴射技術開 発においては, スライド型燃料弁及び燃料ブースタを 経て, これらを統合したFBIVのDesignを確立し, 今 後の新機種に随時採用していく予定としている. これ メタノール供給管 FBIV 図13 メタノールとMDO の熱発生比較(@LGI) LPG 噴射弁 (FBIV) LPG 供給管 バルブコントロール ブロック LPG 入口 LPG 出口 吸入弁

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によって, 燃料噴射の応答性向上とメカロス低減の効 果が期待出来, 同時にメンテナンス性の向上も実現出 来る. 一方で, 特に低粘度燃料に対する潤滑性とシール製 の両立という難しい課題を克服して得てきた知見によ り, 新たな燃料への対応の技術的素地は整ってきたも のと考えているが, 今後は IMO NOx 3 次規制対象機 関も増加してくる状況下となり, EGR や SCR 等の技 術が組合わされた中で複雑な課題の克服が求められる と予想され, それに向けた開発についても継続して進 めている. また, 当社では, 幅広い環境負荷低減要求に応える ため, いち早く多種の代替燃料対応機関の開発を進め, 天然ガス, エタン, メタノール焚機関を世に送り出し てきた. 今後は, これらの就航船の実績をフィードバ ックして更に信頼性を高めていくと共に, その知見を 今後の開発に生かし, 新たな LPG や DME といった 代替燃料対応機関のラインナップを充実させていく. これによって, EGR や SCR の NOx 3 次規制対応技術 も加えた幅広く充実した環境対応技術を供えた機関を 提供出来る体制が整う. 当社はこれらの取組みを継続・深化させていくこと により, 今後も環境負荷低減と地球環境保全に貢献し ていく所存である. 参考文献 1) 村上高弘”世界初のメタノール焚き ME-LGI 機関の完成 “,三井造船技報, No.218 (2017-1),p.1~5 2) 薦田哲男他”舶用ディーゼル機関へのクリーン燃料適用性 調査試験,三井造船技報, No.181 (2014-2),p.29~ 36 著者紹介 姓 名 志岐 純平  日本マリンエンジニアリング学 会 正会員  1973 年生  三井造船株式会社 機械システ ム事業本部 機械工場 ディーゼ ル設計部 基本設計グループ所属  九州工業大学 機械工学専攻修士課程 修了 写真 (30×25)

図 11  FBIV のシリンダにおける配置  図 12  7S50ME-B9.3-LGI 機関の燃費率(上)  及び NOx 排出率計測結果(下)  3.5  LPG 焚機関 プロパン ,  ブタン等を主成分とする LPG(Liquid Petroleum Gas)については,  LNG,  エタン,  メタノールといった燃料よりも既存インフラがはるかに充実しており,  常温での圧縮でも容易に液化し,  毒性も無いため,  ハンドリングがしやすいことから,  現在注目を集めている燃料である

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