論文特集 「最新の化学分離法」
(日 本 化 学 会 誌,1986,(7),P.1002∼1010) ◎1986TheChemicalSocietyofJapanク ラ ウ ンエ ー テ ル の 分 子 認 識 能 を利 用す る ア ミ ノ酸 と
ペ プ チ ドの逆 相 高 運 液 体 ク ロマ トグ ラ フィー
イ オ ン対 ク ロマ トグ ラ フィー との 比 較
(1985年11月28日 受 理)中 川 照 眞*・ 澁 川 明 正 ・ 貝 原 徳紀
・田 中
久
18-ク ラ ウ ン-6を 移 動 相 に 含 む 逆 相 系 高 速 液 体 ク ロマ トグ ラ フ ィー に お け る種 々 の ア ミノ酸,対
応 す
る ア ミン,お
よ び ペ プチ ド類 の 保 持 挙 動 と分 子 構 造 との 関 係 を 調 べ,従
来 の イ オ ン対 逆 相 ク ロマ トグ ラ
フ ィー と比 較 し た 。
18-ク ラ ウ ン-6を 移 動 相 に 添 加 す る こ とに よ り,α-位 や β-位 の 炭 素 の 級 数 が 低 い ア ミノ酸 ほ ど大 き
な 保 持 値 の 増 加 率 を 示 し,ロイ
シ ン と イ ソ ロイ シ ン な ど の よ うに,イ
オ ン対 モ ー ドで は 分 離 しに くい 疎
水 性 の 類 似 した ア ミ ノ酸 を 短 時 間 で 容 易 に 分 離 す る こ とが で きた 。 ま た,側
鎖 に ア ミノ基 を 有 す る リシ
ンで は ほ か に く らべ て キ ャパ シ テ ィー フ ァク タ ーの 増 加 率 は い ち じる し く大 きか っ た 。 ア ミ ノ酸 と そ れ
に 対 応 す る ア ミン との 問 の 保 持 値 の差 は,イ
オ ン対 法 に く らべ て 大 とな った 。 また プ ロ リンは イオ ン対
法 で は 保 持 値 の 増 加 を示 した が,本
法 で は 逆 に減 少 した 。 ペ プ チ ドの保 持 はN末 端 残 基 の ア ミノ酸 の 構
造 を 強 く反 映 した 変 化 を 示 した 。N末
端 残 基 の β-位炭 素 に 枝 分 か れ が あ る ペ プ チ ドで は,18-ク
ラ ウ ン
-6と
の 会 合 定 数 が 小 さ く,会 合 に と もな う保 持 値 の 増 加 率 も小 さ い こ とが わ か った 。 こ の よ
うに,18-ク ラ ウ ン-6は
ア ミノ基 周 辺 の 立 体 構 造 を よ り強 く認 識 す る能 力 を もつ の で,従
来 法 で は 困 難 で あ っ た
微 妙 な 分 離 が 可 能 とな り,ペ プ チ ドや タ ンパ ク質 の新 しい 分 離 分 析 へ の 応 用 が 期 待 され る 。
1緒 言 逆 相 系 高 速 液 体 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー(以 下,HPLCと 略 記 す る)に よ る イ オ ン性 試 料 物 質 の分 離 は,イ オ ン対 ク 獄マ トグ ラ フ ィー の 開 発 に と も な っ て 大 き な進 歩 を とげ,多 く の応 用 例 が 報 告 され た3)◎ こ の方 法 で は,移 動 相 に 添 加 され た 対 イ オ ン と の 間 の イ オ ン対 形 成 に と も な っ て,イ オ ン性 試 料 物 質 の 固 定 相 へ の 保 持 が 選 択 的 に増 加 す る こ とを 利 用 して い る◎ そ の増 加 の程 度 は 対 イ オ シ の 疎 水 性 の 強 さや 濃 度 お よび 移 動 相 のpHな ど に 依 存 す る。 そ の 保 持機 構 は,H◎rvathら に よっ てsolvophobictheoryに 基 づ い て 説 明 され て い るa,。京都大 学薬 学部薬 品分析 学教 室,606京
都 市 左 京区 吉田
下 阿達 町
1)
"Liquid
Chromatography
with
Crown
Ether-Containing
Mobile Phases (I
•,)"
z.
2) flif
(Alf 6
; T. Nakagawa,
A. Shibukawa,
A.
hara,
T. Itamochi,
H. Tanaka,
J. Chromatogr.,
353,
399(1986).
3)
M. T. W. Hearn,
ed., "Ion-Pair
Chromatography
;
Theory
and Biological
and Pharmaceutical
Applica.
tion",
Chromatographic
Science
Series,
Vol. 31,
Marcel
Dekker,
Inc., (1985).
4)
C. Horvath,
W. Melander,
I. Molnar,
P. Molnar,
al. Chem., 49, 2295(1977).
一 方 ,ク ラウ ンエ ーテル は,Pedersenに よ る発 見5》以 来,多 数 の類 縁 化 合 物 が 合 成 さ れ,興 味 あ る 性 質 が 明 らか に され て い る 。 と くに,ア ル カ リ金 属 イ オ ンや ア ル カ リ土 類 金 属 イオ ン,お よ び ア ンモ ニ ウ ム な ど のハ ー ドな陽 で オ ンを そ の 空 孔 内 に 取 り込 み, ヨ ,い わ ゆ る ホ ス ト=ゲ ス ト包 接 化 合 物 を 生 成 す る 性 質 は,溶 媒 抽 出, 膜 輸 送,イ オ ン選 択 電 極 ク ロマ トグ ラ フ ィー な ど多 くの 分 析 化 学 の分 野 で利 用 さ れ て い る6》。 液 体 ク ロ マ トグ ラ フ ィーへ の 応 用 に お い て は,ク ラ ウ ンエ ー テ ル を 固 定 相 と して 用 い る方 法 と移 動 相 の添 加 物 と して利 用 す る方 法 が 行 な わ れ て い る 。Cramら は,キ ラ ル な 場 を もつ ク ラ ウ ンエ ー テ ル を 液 体 ク ロ マ トグ ラ フ ィー の 固 定 相 や 移 動 相 と して 用 い る こ と に よ っ て,第 一 級 ア ミン,ア ミ ノ酸 お よび そ の エ ス テ ル 類 の 光 学 分 割 に成 功 した7》◎Blasiusら は,種 々 の ク ラ ウ ンエ ー テ ル ボ リ マ ー を 固 定 相 と して,共 通 の 対 イ オ ン を もつ 一 連 の ア ル カ リ金 属 や ア ル カ リ土 類 金 属 の 陽 イ オ ン の分 離 を 行 な う と と も に,陰 イオ5) C. J. Pedersen, J. Am. Chem. Soc., 89, 7017(1967).
6) I. M. Kolthoff, Anal. Chem., 51, 1 R(1979). ; M.
sio, H. Noguchi,
Anal. Lett., 15, 1197(1982). ; T.
Shono, Bunseki Kagaku, 33, E 449(1984).
7)
L. R. Sousa, D. H. Hoffman, L. Kaplan, D. J. Cram,
J. Am. Chem. Soc., 96, 7100(1974). ; G. Dotsevi,
Y. Sogah, D. J. Cram, ibid., 97, 1259(1975). ; G. Dot-
seiii, Y. Sogah, D. J. Cram, ibid., 98, 3038(1976).
ンの 分 離 や 有 機 化 合 物 の分 離 も行 な っ た8)。 ま た,ク ラ ウ ンエ ー テ ル ボ リマ ー を コ ー テ ィ ン グ した シ リカ ゲ ルや,ク ラ ウ ン エ ー テ ル の モ ノ マ ーや ポ リマ ーを 共 有 結 合 した シ リカ ゲ ル を 固 定 相 と し て,ア ル カ リ金 属 塩 類 の分 離 も行 なわ れ て い る9>。 木 村 らは,首 飾 り状 の ポ リーあ る い は ビス クラ ウ ン エ ー テ ル を 共 有 結 合 さ せ た シ リカ ゲル を 固 定 相 とす るHPLCに よ っ て,ア ル カ リお よ び ア ル カ リ土 類 金 属 塩 類 を 分 離 した 鋤 。 井 川 らは,ク ラ ウ ンエ ー テ ル の ポ リア ミ ド型 樹 脂,あ る い は,そ れ を コ ー テ ィ ン グ した シ リ カ ゲ ル 固 定 相 を ア ル カ リ金 属 塩 類 の分 離 に 応 用 した 掛。 ま た,木 村 ら は,疎 水 性 の 強 い直 鎖 ア ル キ ル 基 を 置 換 基 に もつ ク ラ ウ ン エ ー テ ル をODS(オ ク タ デ シル シ ラ ン化)固 定 相 に ダ イ ナ ミッ ク コ ー テ ィ ン グ し,ア ル カ リ金 属 塩 類 を 分 離 した12》。 一 方 ,DelphinとHorwitzは,ク ラ ウ ン エ ー テ ル 溶 液 を 移 動 相 とす る イ オ ン交 換 ク 霞マ トグ ラ フ ィー に お け る ア ル カ リ金 属 の保 持 機 構 を 研 究 し13),BrugmanとKraakは,移 動 相 中 に カ リウ ム イ オ ン と ク ラ ウ ン エ ー テ ル を 同 時 に添 加 し,ス ル ホ ン酸 類 の 順 相 分 離 を 行 な った14)。 ま た,Wiechmannは,ク ラ ウ ン エ ー テ ル 溶 液 を 移 動 相 とす る逆 相 系HPLCに よ る生 体 ア ミ ン類 の 分 離 に つ い て 報 告 した1%こ れ ら の 研 究 は,主 と して 無 機 陽 イ オ ン の分 離 を 目的 と して 行 なわ れ た も の で あ っ て,有 機 陽 イ オ ン(ア ンモ ニ ウ ム)に つ い て の系 統 的 な 研 究 は 行 な わ れ て い なか っ た ◎ 一 方 ,著 者 らは,プ ロ トン付 加 した ア ミノ基 が,18一 クラ ウンー
ン
比
が
相
開
ノ
8) E. Blasius, K. -P. Janzen, M. Keller, H. Lander, T.
Nguyen-Tien,
G. Scholten, Talanta,
27, 107(1980). ;
E. Blasius, K. -P. Janzen, W. Adrian,
W. Klein,
H.
Klotz,
H. Luxenburger,
E. Mernke,
V. B. Nguyen,
T. Nguyen-Tien,
R. Rausch, J. Stockemer,
A. Tous-
saint, ibid., 27, 127(1980).
9) E. Blasius, K. -P. Janzen, W. Klein, H. Klotz, V. B.
Nguyen, T. Nguyen-Tien,
R. Pfeiffer, G. Scholten,
H. Simon, H. Stockemer,
A. Toussaint,
J. Chroma-
togr., 201, 147(1980). ; E. Blasius, K. -P. Janzen, Pure
Appl. Chem., 54, 2115(1982).
10) K. Kimura, M. Nakajima, T. Shono, Anal. Lett., 13,
741(1980).; M. Nakajima, K. Kimura, T. Shono, Anal.
Chem., 55, 463(1983). ; M. Nakajima,
K. Kimura, T.
Shono,
Bull.
Chem. Soc. Jpn., 56, 3052(1983). ;
M. Nakajima,
K. Kimura,
T. Shono, J. Liq.
matogr., 7, 2115(1984).
11) 4/11
' t'Ekft,
3-*10--.4, 29, 580(1980);
M. Igawa,
K. Saito, J. Tsukamoto,
M. Tanaka,
Anal. Chem., 53, 1942(1981) ; M. Igawa, K. Saito, M.
Tanaka,
T. Yamabe,
Bunseki Kagaku,
32, E 137
(1983).
12) K. Kimura,
E. Hayata,
T. Shono, J.
Chem.
Soc.,
Chem. Commun., 1984, 271.
13) W. H. Delphin, E. P. Horwitz, Anal. Chem., 50, 843
(1978).
14) W. J. T. Brugman, J. C. Kraak, J. Chromatogr ., 205,
170(1981).
15) M. Wiechmann, ibid., 235, 129(1982).
ア ミ ン,ジ ア ミン,β 一ラ ク タ ム 系 抗 生 勿 霧 生 理 活 性 を 有 す る カ テ コ ラ ミ ン類,お よび,ア ミノ酸 や ペ プ チ ド類 な ど,種 々 の ア ミ ノ化 合 物 の分 子構 造 と保 持 挙 動 と の 関 係 を 系 統 的 に 調 ぺ,そ れ に 影 響 を お よぼ す 種 々 の 因 子 に つ い て 基 礎 的 な 検 討 を 加 え て き た2》16ト20》。 こ の 方 法 で は,ク ラ ウ ンエ ー テ ル との 会 合 に と も な っ て ゲ ス ト 陽 イ オ ン の 疎 水 性 が 増 大 し,固 定 相 へ の 保 持 が 増 加 す る こ と を利 用 して い る ◎ こ の増 加 の 程 度 は 移 動 相 のpHや ク ラ ウ ンエ ー テ ル の 濃 度16}あ る い は 会 合 体 の 安 定 性17}に依 存 す る ◎ こ の 点 で は 疎 水 性 陰 イ オ ン を 用 い る逆 相 系 イ オ ン対 ク ロマ トグ ラ フ ィー と似 て い る が,ク ラ ウ ン エ ー デ ル と ゲ ス ト との 相 互 作 用 は イ オ ン対 ク ロマ トグ ラ フ ィー に お け る イ オ ン間 相 互 作 用 に く ら べ て,げゲ ズ ト分 子 の ア ミ ノ基 周 辺 の 立 体 構 造 の 影 響 を よ り強 く受 け る の で,は るか に選 択 性(分 子 認 識 能)の 高 い 分 離 分 析 が 可 能 とな る 』 ま た,ク ラ ウ ン エ ー テ ル 側 の 構 造(環 孔 径 や 置 換 基 な ど)20》,あ る い は 移 動 相 中 の ほ か の 添 加 塩 の 種 類 や 濃 度 鋤 も,ゲ ス ト物 質 の 保 持 値 に 影 響 す る ◎ さ ら に,ク ラ ウ ンエ ー テ ル 自身 は 電 荷 を も た な い た め,生 成 した 錯 陽 イ オ ンは 共 存 す る対 陰 イ オ ン と イ オ ン対 を 形 成 す る 。 した が っ て,ク ラ ウ ン エ ー テ ル と通 常 の 陰 イ オ ン性 イ オ ン 対 試 薬 を 同 時 に 移 動 相 に添 加 す る こ とに よ っ て,両 者 の 相 乗 効 果 が あ らわ れ,応 用 性 が 一 層 広 が る ユ9》。 今 回 は,18一 ク ラ ウ ンー6を 移 動 相 添 加 物 とす るHPLCに お け る種 々 の ア ミ ノ酸 お よび 対 応 す る ア ミ ン の 保 持 挙 動 とそ の構 造 と の 関 係 を,通 常 の イ オ ン対 逆 相 法 の 場 合 と比 較 しつ つ,ク ラ ウ ン エ ー テ ル の もつ 分 子 認 識 能 力 の 特 徴 を 調 べ た ③ さ らに,ペ プ チ ド 類 に つ い て も,保 持 挙 動 を 両 方 法 の 間 で 比 較 し,18一 ク ラ ウ ンー6 と試 料 ペ プ チ ドと の 会 合 定 数 な どを 評 価 した ◎ 2理 論 18一ク ラ ウ ンー6は,プ ロ トン付 加 した ア ミノ 基 と の 間 に ホ ス トザ ス ト包 接 イ オ ンを 生 成 す る が,中 性 の ア ミ ノ基 との 相 互 作 用 は い ち じ る し く 弱 い ◎ した が っ て,18一 ク ラ ウ ンー6溶 液 を 移 動 相 とす る逆 相 液 体 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー に お け る ゲ ス トア ミ ノ化 合 物 の保 持(キ ャパ シ テ ィー フ ァ クタ ー,の は,図1に 示 した 平 衡 モ デ ル に よ っ て 表 わ さ れ る 。 図1のSお よ びSHは,中 性 お よ び プ ロ トン化 した ア ミ ノ化 合 物 を表 わ し,Cお よ びLは,そ れ ぞ れ18一 ク ラ ウ ン ー6お よ び 疎 水 性 固 定 相 リガ ン ド(ODS)を 表 わ す ◎ ま た,K8は 移 動 相 中 で の ゲ ス ト物 質 の ア ミ ノ基 の プ ロ ト ン解 離 定 数 で あ り,KCSHは 移 動 相 中 で のCとSHと の 会 合 定 数 で あ る 。KLS,K総H,K総SH,お よびKLCは,そ れ ぞ れ,S,SH,CSH,お よびCとLと の結 合 定 数 を 表 わ す 。K総SHは,固 定 相 に保 持 さ れ たCと 移 動 相 中 のSH と の会 合 定 数 で あ り,K総Hは,固 定 相 に保 持 され たSと プ ロ ト16) T. Nakagawa, H. Mizunuma,
A. Shibukawa , T. Uno,
J. Chromatogr., 211, 1(1981).
17) T. Nakagawa, A. Shibukawa,
T. Uno, ibid., 239, 695
(1982).
18) T. Nakagawa,
A. Shibukawa,
T. Uno, ibid ., 254, 27
(1983).
19) T. Nakagawa,
A. Shibukawa , H. Murata, ibid., 280,
31(1983).
20) T. Nakagawa, H. Murata,
A. Shibukawa , K.
mi, T. Tanaka, ibid., 330, 43(1985).
ン と の会 合 定 数 で あ る 。 ま た,KL36SHは 固 定 相 に 保 持 され たSH と移 動 相 中 のCと の 会 合 定 数 で あ る◎ 包 接 イ オ ン は,共 存 す る 陰 イ オ ン とイ オ ン対 を 生 成 し 得 る が,今 回 の 実 験 で,移 動 相 の pHを 調 節 す る た め に用 い た塩 酸 に 由 来 す るCl一 はハ ー ドな 陰 イ オ ン で あ るか ら,イ オ ン対 生 成 に と も な う 々 の 変 化 は 見 られ な い19)。 した が っ て こ の モ デ ル で は,イ オ ン対 生 成 に 関 す る平 衡 は 考 慮 して い な い ◎ 図1の モ デ ル に お い て,試 料 ア ミノ化 合 物 の 々 は次 式 に よ っ て 定 義 さ れ る が, た だ し,φ は 相 比(固 定 相/移 動 相),添 字 獅 お よ びsは 移 動 相 中 お よ び 固 定 相 上 で の 濃 度 で あ る こ とを 示 す ◎A,Bは,そ れ ぞ れ 包 接 化 合 物 の生 成 や 固 定 相 との結 合 過 程 に対 応 す る混 成 定 数 で あ り,Aは 、K£§Hあ る い はK鍵H・K&・KLS・BはKeeSrtKCsH・ K認SH・KrLCあ る い はK認SH・ ム で あ る。 一 方 ,S,SHお よ びCSHと 結 合 し た 固 定 相 量([LSコ+ [LSH]+[LCSH])は,全 固 定 相 量[Ldに く らべ て 無 視 で き る ほ ど小 さ い と考 え られ る の で,つ ぎ の よ うに 近 似 され る◎ こ こ で[L]sは 遊 離 の 固 定 栢 リガ ン ド量 で あ る 。(3)式 を(2)式 に 代 入 す る と,次 式 が 得 られ る◎ この 式 は,移 動 相 中 の18一 ク ラ ウ ンー6の 濃 度 お よび プPtト ン濃 度 とk'の 関 係 を 与 え る式 であ るが,18一 ク ラ ウ ンー6の み な らず, 一 般 に ,移 動相 中 に加 え られ た添 加物 と溶 質 との相互作 用 に よっ て 々 が 変 化 す る場 合(た とえ ば イ オ ン対 剤 や シ ク βデ キ ス ト リ ンの 添 加)た 共 通 して 適 用 で き る。 こ こ で,添 加 物 の存 在 に よ る キ ャパ シ テ ィ ー フ ァ クタ ー の 変 化 率(μ ¢)を 次 式 で 定 義 す る 。 μz=k't!k'6(iは 添 加 物 の 濃 度(mm◎1・dm"3)) た だ し,k'oは 添 加 物 を 加 え な い と き([C]=0)の キ ャパ シ テ ィー フ ァ ク タ ー であ る。 通 常 の 逆 相 系 溶 離 条 件 で分 離 さ れ 難 い(k'o が 類 似 した)物 質 相 互 間 で,μ の差 が 大 き い とき,添 加 物 を 用 い る こ と に よ り,両 者 の分 離 が よ くな る こ と を示 す 。 移 動 相 中 の ク ラ ウ ン エ ー テ ル 濃 度 が 一一定 の と き,(4)式 は とな る 。 こ こ で,E=1十KLC[Cコm,F=A十B[C]m,G=1十 Kcs}i⊂Cコmで あ る。(5)式 か ら,k'と プ ロ トン 濃 度 との 関 係 は 直 角 双 曲線 で与 え られ る こ とが わ か る。 ま た,移 動 相 のpHが 十 分 に 低 く,ア ミ ノ基 が ほ ぼ 完 全 に プ ロ トン化 さ れ て い る と考 え られ る場 合 に は,(4)式 は, と な る。 『た1だし1)=K総SH・KCSH,K総SH・KLCあ る い は KL3dSH,KLkuで あ る◎ こ こ で ク ラ ウ ンエ ー テ ル と会 合 した ゲ ス トア ミノ化 合 物 の キ ャパ シ テ ィー フ ァ クタ ー一をk'CSHと す れ ば k'CSH=φ[Lr]D/KCSH(7) と な る 。(6)式 は,一 鍛 に,ゼ が[C]の 増 加 に とも な っ て増 大 し,極 大 に 達 した の ち 減 少 す る曲 線 を 与 え るが,そ の極 大 点 の 位 置 はKLCお よびKCSHの 大 き さ に 依 存 す る こ とを 示 して い る◎ す な わ ち,疎 水 性 が 強 く,ゲ ス ト と安 定 な会 合 体 を 生 成 す る ク ラ ウ ン エ ー テ ル で は,低 濃 度 の添 加 に よ っ て ゼ は 大 き く増 加 した の ち 減 少 す る◎ ま た,18一 ク ラ ウ ンー6の よ うに 親 水 性 で 安 定 な 会 合体 を 生 成 す る ク ラ ウ ンエ ー テ ル で は,比 較 的 高 濃 度 の添 加 に よ っ て 大 き な ゐ'の増 加 を与 え る 。 ま た,疎 水 性 は強 い が 安 定 な会 合体 を 形 成 しな い ク ラ ウ ンエ ー テ ル で は,万 の 増 加 は ほ とん ど 見 られ ず,高 濃 度 の添 加 に よ っ て保 持 は逆 に 減 少す る び 親 水 性 が 高 く,安 定 な会 合 体 を 生 成 しな い ク ラ ウ ンエ ー テ ル を 添 加 し た 場 合,々'は ほ とん ど変 化 しな い ◎ こ の よ うな 変 化 は,ク ラ ウ ン エ ー テル との 会 合 体 生 成 に と もな う親 水 性 の 減 少 に よ っ て,ゲ ス ト物 貫 の た'が 増 加 す る効 果 と,ク ラ ウ ン エ ー テ ル と ゲ ス ト物 質 とが 萸水 性 固 定 相 へ の結 合 を競 合 す る こ とに よ っ て た'が 減 少 す る効 果 と い う相 反 す る二 つ の効 果 のバ ラ ン ス に 依 存 す る も の と理 解 さ 瓦 る◎ した が って,極 大 点 で は両 効 果 が 釣 り合 った 状 態 に あ る も 7)と 考 え られ る。 一 方 ,試 料物 質 が クラウ ンエ ーテル と会合体 を生成 しない場合 こは,(6)式 にKCSH・O(す な わ ちD=0)を 代 入 して 得 られ る に よ っ て,々'が 表 わ さ れ る 。 3実 験 3・1試 薬 18一ク ラ ウ ンー6はMerck社 製 試 薬 を そ の ま ま使 用 した 。 ア ミ ノ酸 お よ び ペ プ チ ドは,半 井 化 学,Merck社 お よび ペ プ チ ド研3il
所 製 試 薬 を そ の ま ま使 用 した ◎ ペ ニ シ ラ ミ ンお よ び ペ ニ シ ラ ミン ジ ス ル フ ィ ドはD一 体 を 使 用 し,そ れ 以 外 の ア ミ ノ酸 お よ び ペ プ チ ドはL-・体 を使 用 した 。1一ペ ン タ ン ス ル ホ ン酸 ナ ト リウ ム,1一 ヘ プ タ ン ス ル ホ ン酸 ナ ト リウ ム,ト リ プ タ ミン塩 酸 塩 フ ェ ネ チ ル ア ミン塩 酸 塩,チ ラ ミンお よび 硫 酸 リチ ウ ム は 半 井 化 学 製 特 級 試 薬 を そ の ま ま使 用 した ◎ 3.2HPLC 装 置 は 島 津 製 作 所 製LC-3Aシ ス テ ム を 使 用 した ◎ 固 定 相 と し て,ケ ム コ社 製ODS化 学 結 合 型 シ リ カ ゲル 充 填 剤Chemco$orb 5-ODS-H(長 さ15cm,内 径4.6mm)を 使 用 した 。移 動 相 条 件 は,表1に 示 した とお りで あ る ◎ 水 お よび メ タ ノ ー ル は い ず れ も 蒸 留 後 使 用 した σ 移 動 相 のpHは 特 級 塩 酸 で 調 整 した 。 検 出 は UV200ま た は210nmで 行 な い,カ ラ ム温 度 は40℃ と した ◎ 3・3キ ャ パ シテ ィー7ア ク タ ー の測 定 試 料 物 質 を 移 動 相 と 同一 組 成 の 溶 液 に 溶 解 し,検 出 に 必 要 な 最 少 量 をHPLCに 注 入 した ◎ キ ャ パ シテ ィご フ ァ ク タ ー(le')の 値 は,fet=(tR-to)!tcに よ り 算 出 した ◎ こ こ でtR,teは,そ れ ぞ れ 試 料 物 質 お よび 非 吸 着 性 物 質(NaNO2)の 保 持 時 間 で あ る 。 3.4デ ー タ 解 析 非 線 型 最 小 二 乗 法 に よ るcurvefittingは,Basic言 語 に よ る プ ロ グ ラ ム21>e:よ り,NECPC-9801F2を 用 い て 行 な った 。 4結 果 と 考 察 4.iア ミノ 酸 の 保 持 挙 動 移 動 相(水100%,pH2.5お よび4.0)中 の18一 ク ラ ウ ンー6 濃 度 と い くつ か の ア ミ ノ酸 の 々 と の 関 係 を 図2に 示 し た 。Pre
21) K. Yamaoka, Y. Tanigawara,
T. Nakagawa,
T. Uno,
J. Pharm. Dyn., 4, 87(1981),
を 除 くす べ て の α一ア ミ ノ 酸 に お い て,18一 ク ラ ウ ン ー6の 濃 度 の 増 加 に と も な っ てfe'は 増 大 し,pH4.0で は3∼5mmol・dm-3 で,ま た 、pH2.5でち は 約10mmol・dmne3でぴ 最 大 値 に 達 し た ◎ し かヌ し,ガ の 値 お よび そ の増 加 率(μ)ば ア ミノ酸 め 種 類 た 依 存 し ま て 変 化 した ◎す な わ ち,ノ ルバ リン(以 下norValと 略 記 す る) ヨ く ま やLeuは,Va1やIleに く ら べ て 大 きfsk'お よ び4の 値 を 与 え たoま た,同 じ ア ミ ノ 酸 で は,pH2・5で のk' 、の 値 は,pH4・0 で の 値 よ り大 と な っ た が,こをな れ はpH2.5で は カ ル ボ キ シ ル 基 の 解 離 が 搾 制 さ れ た た め で あ る と考 え られ る 。一 方,?roで は,18一 ク ラ ウ ンー6の 添 加 に よ.って,pH4;Oお よ びpH2.5で,と も に k'は 減 少 した 。 こ れ は,前 に述 べ た よ うに,48一 ク ラ ウ ンー6と 第 二 級 ア ミン で あ るProと は 会 合 体 を 形 成 せ ず,む しろODS固 定 相 との 結 合 を 競 合 す るた め で あ る と理 解 され る◎ そ こ で こ の よ うな 々4)変 化 と ア3ノ 酸 侮 分 子講 造 との 関 係 を 調 べ る た め に,pH4.oに お け る μ5(=k'5/1e'o,5mmol・dm"-3 18一 ク ラ ウ ンー6を 添 加 した とき のk'の 増 加 率)とpH2。5に お け る μ三〇(=た'1。/k'o)を求 め,各 ア ミ ノ酸 側 鎖 のRekkeガ 定 数(Xf) に 対 して プ ロ ッ ト し,図3(b)お よ び(a)に 示 した 。Rekker 定 数 は,水/1一 オ ク タ ノー ル 系 に お け る分 配 定 数 か ら算 出 さ れ る 疎 水 牲 の 指 標 で あ るが22>,・こ こ で は,Glyの 値 を 基 準(Xf=O) と し て表 わ した 。 また,18一 ク ラ ウ ンー6の 添 加 効 果 と,イ オ ン 対 効 果 と を 比 較 す る た め に,pH2.5の 移 動 相(水/メ タ ノ ー ル =9/1)にo.2mmol・dm-3の1一 ヘ プ タ ン 冬 ル ホ ン 酸 ナ ト リ ウ ム (以 下C7と 略 記 す る)を 加 え た と き の 各 ア ミ ノ酸 のle'増 加 率 μe,2(=k'o.2/1e'o)を測 定 しs、そ れ を 、Rekker定 数 に 対 して プPtッ ま ト して 図3(c)に 示 した ◎ こ こ で,C7は18一 ク ラ ウ ンー6に く ら ぺ て 疎 水 性 が 強 い の で,両 効 果 を比 較 す る の に適 した 々 を 与 え る よ うに 考 慮 して 移 動 相 溶 媒 の 組 成 お よび 添 加 濃 度 を 設 定 し た 凸
22) R. P. Rekker,
"The Hydrophobic Fragmental Cons.
tant",
Elsevier, Amsterdam (1977) p. 301,
図3(a),(b)に 示 した μ一Σア の プ ロ ッ トか ら,ど ち ら の 移 動 相 で も,18一 ク ラ ウ ンー6の 添 加 に と も な うk'の 増 加 率 は側 鎖 の疎 水 性 に 依 存 す る の で は な く,む しろ 飴 位 お よび β一位 炭 素 の 級 数 に 依 存 す る こ とが わ か る。 す なわ ち,α 一位 の炭 素 が 第 二 級 で あ るGlyは,第 三 級 で あ る ほか の ア ミノ酸 よ り μ が 大 き く,ま た,β 一位 の炭 素 が 第 一 級 あ るい は 第 二 級 で あ るSer,Ala,Cys, Met,norVal,Leuは 第 三 級 で あ るThr,Val,Ileよ り大 き な μ を 示 した ◎ こ れ は,α 一位 炭 素 や β一位 炭 素 の 級 数 が 低 い ほ ど,ア ミノ 基 と18一 ク ラ ウ ンー6と の相 互 作 用 に お よ ぼ す 側 鎖 の 立 体 障 害 が 小 さ くな る た め だ と 考 え ら れ る 。 ま たValの β一位 炭 素 に 一SH基 が 置 換 した ペ ニ シ ラ ミンや ペ ニ シ ラ ミン ジ ス ル フ ィ ドで は,18一 ク ラ ウ ンー6に よ る 々 の増 加 効 果 がValよ りさ ら に 小 さ くな り,さ き に 述 べ た 競 合 に よ る ん'の減 少 効 果 と釣 り合 っ て,々 は 見 か け 上,ほ と ん ど変 化 しな か っ た も の と考 え られ る。 一 方,移 動 相 にC7を 添 加 した 場 合(図3(c))に は,Cys, Pro,ペ ニ シ ラ ミン以 外 の ア ミノ酸 の μo.2値は,a一 位 の 炭 素 や β一 位 の炭 素 の級 数 に 関 係 な く,側 鎖 の 疎 水 性(冴)が 強 く な る と と も に,単 調 に 増 加 す る傾 向 を 示 し 疎 水 性 の類 似 し たValと
norVal,LeuとIleは 同 程 度 の た'増 加 率 を示 した 。 ま た ,Pro の 々 は,18一 ク ラ ウ ン6を 添 加 した場 合 に は 減 少 した の に 対 し て,C7を 添 加 した 場 合 に はCysと 同 程 度 の増 加 率 を 示 した 。 こ の よ うに,通 常 の イ オ ン対 ク ロマ ト グ ラ フ ィー で は,試 料 物 質 の 分 子 構 造 に 対 す る認 識 性 が 低 く,試 料 物 質 の 疎 水 性 を 一 様 に増 強 す る傾 向 が あ る の で,18一 ク ラ ウ ン・-6を用 い た 場 合 に く らべ て ア ミ ノ化 合 物 相 互 間 の選 択 的 分 離 が 困 難 で あ る。 一 衷2に 各 移 動 相 条 件 に お け る疎 水 性 の 類 似 した3組 の ア ミ ノ酸 (LeuとIle,norValとVal,CysとPre)の 分 離 係 数(α)を 示 した 。 さ き に 述 べ た(図3(c)〉 タ うに,C7添 加 時 に は 疎 水 性 の類 似 した ア ミノ酸 は 同 程 度 の 々 増 加 を 示 す た め,.そ の α値 は 添 加 前 とほ とん ど変 わ ら なか っ た 。 そ れ に 対 し て,18一 ク ラ ウ ン喝 を 添 加 した 場 合 は,そ の ア ミ ノ基 周 辺 の 分 子 構 造 の 相 違 を 反 映 して,移 動 相 のpH(2.5,4.0)に よ らずa値 が 大 き くな っ た ◎ 讐 ・ 、 図4に これ ら6種 類 の ア ミノ酸 の ク ロ マ トグ ラ ム を 示 し た 。 18一ク ラ ウ ンー6添 加 前(a)は,Leuと1 ,le,Valと 導orVa1, ProとCysめ 分 離 が不 十 分 で あ っ た が,10mm◎1・dm-318一 ク ラ ウ ンー6添 加(b)に よ り,こ れ ら6種 の ア ミノ酸 を 完 全 に分 離 す る こ とが で き た 。 な お,こ の と き の 移 動 相 に は,テ ー リ ジ グ 防 止 の た め20 mmo1・dm-3の 硫 酸 リチ ウ ム を 添 加 した が,リ チ ウ ム イ オ ン は18一 ク ラ ウ ンー6と の 相 互 作 用 が 弱 い の で,18一 ク ラ ウ ンー6に よ る保 持 増 強 効 果 に は 影 響 を与 え な い19》◎ 表3に ・ 各 移 動 相 条 件 に お け る3種 類 の塩 基 性 ア ミ ノ酸 の キ ャ パ シテ ィー フ ァ ク タ ー を 示 した 。Lys ,Arg,Hi$は,α7ア ミ ノ基 以 外 に,側 鎖 に そ れ ぞ れ ア ミ.ン基,グ ア ニ ジ ノ基 イ ミダ ゾ リンレ基 を 有 す るが,C7添 加 時 の キ ャパ シ テ ィー フ ァ ク タ ー は い ず れ も 同 程 度 の値 で あ る こ とか ら,C7陰 イ オ ン と これ ら の 置 換 基 との 相 互 作 用 に 大 き な差 は な い と考 え ら れ る 。 これ に 対 して,18一 ク ラ ウ ンー6を 移 動 相 に添 加 した 場 合 に は,Lysのkiが ほ か の ア ミ ノ酸 よ り顕 著 に 大 き くな っ た 。 これ は ,Lysの2個 の ア ミ ノ基 が と も に18一 ク ラ ウ ンー6と の 結 合 に 関 与 し得 る の に 対 し て,グ ア ニ ジ ノ蒸 や イ ミダ ゾ リル 基 と18一 ク ラ ウ ンー6と の 相 互 作 用 が 弱 い た め で あ る と説 明 され るb こ の よ うに,18一 ク ラ ウ ンー6を 逆 相 系HPLCの 移 動 相 に 添 加 す る こ とに よ っ て,ア ミ ノ酸 の 保 持 は,そ の カ ル ボ キ シル 基 の 解 離 状 態 に か か わ らず,通 常 の イ オ ン対 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー に く ら べ て,ア ミ ノ基 周 辺 の 分 子 構 造 を よ り強 く反 映 し た 変 化 を 示 し た 。, 4.2ア ミ ノ酸 と対 応 す る ア ミ ン の 保 持 挙 動 の 比 較 3種 の 芳 香 族 ア ミ ノ酸(Tyr,Trp,Phe)お よ び そ れ ら に 対 応 す る ア ミン に つ い て,移 動 相 にC7を 添 加 した と き のkt変 化 を 調 べ,既 報21で 報 告 した18一 ク ラ ウ ンー6添 加 時 の だ 変 化 と比 較 した ◎ 表4に,10mmol・dm』318一 ク ラ ウ ンー6お よび0.2mmol・dm舳3 C7を 移 動 相 に 添 加 した とき の キ ャパ シ テ ィー フ ァ ク タ ー(結o, た'。の と未 添 加 時 の キ ャパ シテ ィ ー フ ナ ク タ ー(ゐ ㌔),お よび, キ ャ パ シ テ ィー フ ァ ク タ ー の 増 加 率(μ10,Pte.2)を 示 した ◎C7ま た は18一 ク ラ ウ ンー6の どち らを 添 加 した と き に も,ア ミノ酸 よ り 対 応 す る ア ミン の方 が 大 き い μ を 示 し,そ の 結 果,両 者 の溶 出 順 序 の 逆 転 が み ら れ た 。 しか し,ア ミ ノ酸 の μ菰。は そ の μ聰 とほ ぼ 同程 度 で あ る の に 対 し,ア ミン類 で は μユ。がPte.2よ り顕 著 に 大 き く,こ の こ とは,通 常 の イ オ ン対 試 薬 に く らべ て18一 ク ラ ウ ンー6 を 添 加 した 方 が ア ミノ酸 とア ミ ン との 分 離 が 一 層 効 果 的 に 行 な わ れ る こ とを 示 し て い る ◎ 4.3ペ プ チ ド類 の 保 持 挙 動 Pro・Gly・Ala,Val,Ile,お よびLeu残 基 か らな る11種 の ジペ プチ ド,お よ び2種 の ト リペ プ チ ドにつ い て,移 動 相 の18_ ク ラ ウ ンー6濃 度 とk'と の 関 係 を 調 べ た 。 図5に 結 果 の 一 部 を 示 した 。Leu-Gly-・GlyやIle--Gly-Glyの よ
うにN末 端 残 基 に ア ミノ 基 を も つ ペ プ チ ドは,18一 ク ラ ウ ンー6と の会 合 体 生 成 に とも な い,そ のk'は 増 加 した が,Pro-Valお よび Pro-Leuで は,18一 ク ラ ウ ンー6と 会 合 し うるN末 端 ア ミ ノ基 を も た な い た め,さ き に述 べ たPro単 独 の場 合 と同 様 に,ゼ の 減 少 が み られ た 。 っ ぎ に,18一 ク ラ ウ ンー6添 加 に よ る 各 ペ プ チ ドのk'変 化 率 と そ の ア ミノ酸 残 基 の 種 類 と の関 係 を検 討 した ◎図6(a)に,9種 の ジペ プ ヂ ドに つ い て,10mmol・dm"318一 ク ラ ウ ンー6添 加 時 の kt変 化 率(μ 三◎)をC末 端 ア ミ ノ酸 残 基 のRekker定 数(Xf)の 順 に プ ロ ッ トし,同 一 のN末 端 残 基 を もつ 一 連 の ジペ プ チ ドの 値 を 実 線 で結 ん で 示 した 。 ま た,図6(b)に は・ こ の μIo値 をN 末 端 ア ミノ酸 残 基 のXfの 順 に プ ロ ッ ト し 同 一 のC末 端 残 基 を もつ 一 連 の ジ ペ プ チ ドの値 を 実 線 で結 ん で 示 した 。 ま た,比 較 の た め,O.2mmol・dm-3のC7を 添 加 した と き の各 ペ プ チ ドの キ ャ パ シテ ィー フ ァ クタ ー を 測 定 し,そ の 変 化 率(μo、2)を 求 め たQ図 7(a)お よ び(b)に,Pto.2をC末 端 残 基 あ る い はN末 端 残 基 の Σア に対 して プ ロ ッ トし,同 一N末 端 残 基(a),お よ び 同 一C末 端 残 基(b)を もつ 一 連 の ジ ペ プ チ ドの値 を 実 線 で 結 ん で 示 し た ◎ っ ぎ に,C末 端 カ ル ボ キ シ ル 基 の解 離 状 態 はN末 端 ア ミ ノ基 と ヂ 18一 ク ラ ウ ンー6と の会 合 体 形 成 に 影 響 を 与 え ず,か つ,移 動 相 の pHが 一 定 な ら18一 ク ラ ウ ンー6を 添 加 して もそ の 解 離 状 態 は 変 化 しな い と考 え て,11種 類 の ペ プ チ ドのk'vs・18一 ク ラ ウ ンー6濃 度 の デ ー一タ に 非 線 型 最 小 二 乗 法 を 用 い て(6)式 を あ て は め,各 パ ラ メ ー タ ー の最 適 値 を 評 価 し た 。 ま た(7)式 か らk'CSHを 計 算 し た 。 こ の 操 作 を 行 な うに あ た っ て,ま ず,図5に 示 したPro-VaI とPro-・Leuの デ ー タ に,非 線 型 最 小 二 乗 法 に よ る同 時curve fitting法 を 用 い て(8)式 を あ て は め,KLcの 値(20.9mol-1・dm3) を あ らか じ め 求 め た 。 図5の 曲 線 は こ の よ う に し て 得 ら れ た 最 適 曲 線 で あ る 。 表5にk'◎,k'CSH,お よ びK◎SMの 値 を 示 し た ◎ k'eSHlk'oは,18一 ク ラ ウ ン ー6と の 競 合 に と も な うk'の 減 少 効 果 を 無 視 し た と き の 々 最 大 増 加 率 で あ り,イ オ ン 対 ク 冒 マ ト グ ラ フ
イー の 理 論 的 取 り扱 い の さ い に 定 義 され た 保 持 増 強 因 子(enhan-cementfactorS))に 相 当す る値 で あ る◎ C7添 加 時 に は,N末 端 残 基 が 共 通 した 一 連 の ジ ペ プ チ ド(図 7(a))に?い て も またC末 端 残 基 が 共 通,した 一 連 の ジペ プ チ ド (図7(b))に つ い て も,C末 端 残 基 あ る い はN末 端 残 基 側 鎖 の 疎 水 性 が増 す に つ れ,ざ き の ア ミ ノ 酸 の 結 果(図3(c))と 同 様 に,μo.2の 値 は 単 調 に 増 加 した ◎ 一 方 ,18一 クラウ ンー6を 添 加 した場合 に は,N末 端 残 基 が 共 通 した 一 連 の ジ ペ プ チ ドで は(図6(a)),C末 端 残 基 の Σf値 が 増 す に つ れ μ1G値 が 増 加 した ◎ しか し,図7(a)(b)の6本 の実 線 の傾 き は 同 程 度 で あ る の に対 し,図6(a)で は,N末 端 残 基 が Ala一の 場 合,Val一 やLeu一 に く らべ,そ の 実 線 の 傾 き が 大 き く, C末 端 残 基 の ア ミノ酸 の 構 造 の違 い を よ り強 く反 映 して い る 。 さ ら に,C末 端 残 基 が 共 通 した一 連 の ジ ペ プ チ ドの μ10と Σfと の 関 係(図6(b))は,図7(b)の よ うな 単 調 な 増 加 関 係 を 示 さ ず,さ き に 述 べ た ア ミノ酸 単 独 の 場 合 と 同様 に,N末 端 がAla一 や Leu一 で あ る ジペ プ チ ドは,Val一 やIle一 で あ る ジ ペ プ チ ドに く ら
べ て大 き い μ憩 値 を 示 した ◎ ま た,表5か らわ か る よ うに,N末 端 がAla一 やLeu一 で あ る ペ プ チ ドのk'CSH/k。1やKCSHは,Val一 やIle一 の場 合 に く ら べ て 大 き く,ア ミノ基 近 傍 の β一位 炭 素 に 枝 分 か れ が あ る と,包 接 陽 イ オ ンが 不 安 定 と な り,さ らに,包 接 に と も な う疎 水 性 の 増 加 の程 度 も小 さ く な る こ とが わ か っ た 。β一位 炭 素 が 第 一 級 や 第 二 級 で あ る 場 合 に く ら べ て,β 一位 炭 素 が 第 三 級 で あ る ア ミ ノ酸 や,そ の ア ミノ酸 をN末 端 に有 す る ペ プ チ ド類 の μ が 小 さ い(図3(a) (b),図6(b))の は,こ の 二 つ の効 果 が 重 な り合 っ た た め で あ る と説 明 で き る◎ つ ぎ に 同 じア ミ ノ酸 残 基 か ら な るAla-Va1とVa1-Alaお よび Ala-LeuとLeu-Alaに つ い て,各 移 動 相 条 件 で の 分 離 係 数 を 求 め て 表6に 示 した 。 一 般 に,ア ミ ノ酸 組 成 が 同 じで も そ の 配 列 が 異 な るペ プ チ ドは 異 な っ た 保 持 値 を 示 す こ とが 知 られ て お り,表6で,2組 の ジ ペ プ チ ド間 の分 離 係 数 は,18一 ク ラ ウ ンー6やC7無 添 加 の と き,す で に 十 分 大 き な 値 を 示 し て い る ◎ こ の 移 動 相 にO.2mmol・dm鳳3 のC7を 添 加 した と き,そ れ ぞ れ 同 程 度 の 々 増 加 を 示 し,そ の 結 果,分 離 係 数 は添 加 前 とほ ぼ 同 じ値 を 示 したQ--fi,18一 ク ラ ウ ンー6添 加 に よ るkt増 加 率 はC末 残 基 の 疎 水 性 の 強 さ に 依 存 す る た め,Ala-LeuとLeu-Alaの 分 離 係 数 は,18一 ク ラ ウ ンー6添 加 に よ り1。94倍 増 加 した ◎ ま た,Ala-ValとVal-Alaの 分 離 係 数 は,N末 端 残 基 に 対 す る構 造 認 識 の寄 与 も加 わ り,2.4倍 増 茄 し た 。 図8に4種 の ペ プ チ ドの ク ロ マ ト グ ラ ム を 示 した 。 移 動 相 に 添 加 物 を 加 え な い 場 合(図8(a)),Lys-AlaとHis-Ala,お よ び, Ile-Gly-GlyとLeu-Gly-Glyは そ れ ぞ れ 相 互 に 分 離 さ れ な か っ た 。 ま た,こ の 移 動 相 にO.75mmol・d市3の1一 ペ ン タ ン ス ル ホ ン酸 ナ トリ ウ ム を 添 加 した 場 合(図8(b))に も,同 程 度 にktが 増 加 し,こ れ ら4種 の ペ プ チ ドの 完 全 分 離 は で き な か っ た 。 そ れ に対 し,5mmol・dm-3の18一 ク ラ ウ ンー6を 添 加 した 場 合 (図8(c))に は,N末 端 残 基 の β一位 炭 素 の 級 数 の 違 い や,Lys 側 鎖 の ア ミ ノ基 の 存 在 に よ り,4種 の ペ プ チ ドを 図8(b)と 同 程 度 の 時 間 で 完 全 に分 離 す る こ とが で き た 。 な お,Lysを 含 む ペ プ チ ドは,Lys残 基 の結 合 位 置 に か か わ ら ず 側 鎖 の ア ミ ノ基 の た め,18一 ク ラ ウ ンー6添 加 に よ り,大 き な 々 増 加 を 示 す2)。 こ の こ と 鳳Lys残 基 に 着 目 した ペ プ チ ド類 の 選 択 的 分 離 分 析 法 の 可 能 性 を 示 唆 して い る。 5結 論 18一ク ラ ウ ンー6を 移 動 相 に 含 む 逆 相 系HPLCに お け る ア ミノ
酸 の保 持 は,通 常 の イ オ ン対 法 に く らべ て,よ り強 く分 子 構 造 を 反 映 した 変 化 を 示 す ◎ す な わ ち,距 位 や β一位 炭 素 の 級 数 が 低 い α一ア ミノ酸 ほ ど18一 ク ラ ウ ンー6添 加 に よ る 々 の増 加 率 は 大 き マ ご く,ま た,対 応 す る ブ ミン の 々 は,よ り大 き な 増 加 率 を示 した 。 側 鎖 に ア ミノ基 を もつLysは,ほ か の 塩 基 性 ア ミノ酸 よ り 々 の 増 加 率 は大 き 竪 が,環 状 ア ミ ノ酸 で あ るProは ・、逆ezk'の 減 少 を 示 した 。 ま た,ペ プ チ ド類 の保 持 値 はN末 端 残 基 の ア ミ ノ酸 自 身 の 性 質 を 反 膜 じた 変 化 を 示 し た 。N末 端 残 基 の β一位 炭 素 に 枝 分 か れ が あ る ペ プチ ドで は,非 分 枝 型 の も の に く ら べ て,KCSH やk'OSHlk'oが 小 さ く な り,そ の結 果,k'の 増 加 率 が 低 くな る こ とが わ か っ たQ18一 ク ラ ウ ンー6の こ の よ うな分 子 構 造 認 識 能 力 を 利 用 す る こ とに よ っ て,疎 水 性 が 類 似 した 試 料 物 質 問 の分 離 を, 通 常 あ イ オ ン対 法 よ り短 時 間 で効 果 的 に 行 な うこ とが で き た 。