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[翻訳] クリスタ・トブラー リスボン条約と消費者 法へのその影響

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(1)

法へのその影響

その他のタイトル Christa Tobler, The Lisbon Treaty and its Influence on Consumer Law

著者 カライスコス アントニオス

雑誌名 關西大學法學論集

巻 65

号 2

ページ 482‑496

発行年 2015‑07‑10

URL http://hdl.handle.net/10112/9389

(2)

リスボン条約と消費者法へのその影響

カライスコス・アントニオス(訳)

目 次

I .  

序 説

J I  

リスボン条約による改正前の消費者法と民事法全般 1 .   消 費 者 法

2 .  

民事法全般

m .   リスボン条約のいくつかの側面と消費者法との関連性 1 .  

一連の条約による改正の最新のもの

2 .   EUとその基本法令の構造

3 .   EUの権限(消費者保護に関するものを含む)

4 .  

法 手 続

5 .  

実体法レベルでの変化

I V .   リスポン条約による改正が消費者法に与える影響: 2つのケース・スタデイ 1 .   第一のケース・スタディ:航空旅客の権利

2 .   第二のケース・スタデイ:保険法 3 .   ケース・スタデイに基づく結論

I .   序 説 *

本稿の目的は次の 2 つである。つまり, EU 法 お よ び EC 法の根本的な改正を行った リスボン条約 ( 2 0 0 7 年にリスボンで署名, 2009 年 1 2 月 1 日に発効)の内容を紹介するこ とと,同条約が消費者法に与える影響について概観することである。

そ こ で , リ ス ボ ン 条 約による改正前の EU 消費者法と EU 民 事 法 全 般 の

一般 的 な 背 景 に 関 す る 情 報 を 紹 介 す る こ と か ら 始め(後述の「

I I

」を参照),続いて,

リスボン条 約のいくつかの側面を取り上げ,この条約が消費者法や民事法に及ぼすことになる影響

*  本稿は, 2 0 1 1 年 4 月 2 3 日に,龍谷大学

京都)で行った講演に基づくものである。

筆者は

1 9 8 8

9

月から

1 9 8 9

4

月まで京都比較法センターで研究を行ったが,上記

講演のテーマは,同センターの評議員である中田邦博教授(龍谷大学)との意見交

換を通じて決定したものである

(3)

について検討する (後述の「

m

」を参照)。最後に,

2

つのケース・スタディを通じて,

リスボン条約がもたらことになった実体法レベル

( s u b s t a n t i v el e v e l )

での変化によっ てどのような影響が生じたのかを明らかにしたい。

I I .   リスボン条約による改正前の消費者法と民事法全般

1 .  

消 費 者 法

リスボン条約による改正の結果として

EU

消費者法が受けた影響を検討する際には,

この改正のかなり前から,

EU

消費者法がひとつの政策領域として十分に確立されてい たことを意識しておく必要がある。消費者保護は,ヨーロッパ経済共同体

(EEC)

条 約の対象とされていなかったが,

1 9 7 5

年 に , 消 費 者 保 護 に 関 す る 最 初 の 行 動 計 画

( a c t i o n  programme)

が策定された)。) これに続いて, 一連の指令が採択された。これ らは,いずれも,共同市場

(commonm a r k e t )

を達成するための手段

( i n s t r u m e n t s )

として考えられていた。こうした立法行為は,当時は

EEC

条約

1 0 0

条,後には同条約

1 0 0 a

条をその根拠規定としていたのである(これらの規定は,その後,それぞれ

EC

条約

9 4

条および

9 5

条に改められた)。こ うした指令の主要なものとしては,化粧品に関 する指令

( D i r e c t i v eon c o s m e t i c s ,   1 9 7 6

年)2),  食品ラベル表示に関する指令

( D i r e c t i v e on t h e   l a b e l l i n g   o f   f o o d ,   1 9 7 9

年)3)'誤 認 惹 起 広 告 に 関 す る 指 令

( D i r e c t i v e on  m i s l e a d i n g  a d v e r t i s i n g ,   1 9 8 4

年)4)'玩 具 の 安 全 性 に 関 す る 指 令

( D i r e c t i v eon t o y s ,  

1 9 8 8

年),パック旅行に関する指令

( D i r e c t i v eon package t o u r s ,   1 9 9 0

年戸等がある。

EEC

条約のレベルでは,単一ヨーロッパ議定書

( 1 9 8 6

年に調印,

1 9 8 7

年に発効)に よる改正で,

EC

の諸機関が,域内市場立法において高水準の消費者保護を目指す責務

1 )   P r e l i m i n a r y  programme o f  t h e  European Economic Community f o r  a  consumer 

p r o t e c t i o n  and i n f o r m a t i o n  p o l i c y ,   OJ 1 9 7 5 ,   C 9 2 / 2 .  

2 )   D i r e c t i v e  76/768/EEC on t h e  a p p r o x i m a t i o n  o f  t h e  l a w s  o f  t h e  Member S t a t e s   r e l a t i n g  t o   c o s m e t i c  p r o d u c t s ,  OJ 1 9 7 6  L 262/169 . 

3 )   D i r e c t i v e  79/112/EEC on t h e  a p p r o x i m a t i o n  o f  t h e  l a w s  o f  t h e  Member S t a t e s   r e l a t i n g  t o  t h e  l a b e l l i n g ,  p r e s e n t a t i o n  and a d v e r t i s i n g  o f  f o o d s t u f f s  f o r  s a l e  t o  t h e   u l t i m a t e  c o n s u m e r ,  OJ 1 9 7 9  L 3 3 / 1 .  

4 )   D i r e c t i v e   84/450/EEC r e l a t i n g   t o   t h e   a p p r o x i m a t i o n   o f   t h e   l a w s ,   r e g u l a t i o n s   and  a d m i n i s t r a t i v e   p r o v i s i o n s   o f   t h e   Member  S t a t e s   c o n c e r n i n g   m i s l e a d i n g   a d v e r t i s i n g ,   OJ L 1 9 8 4  250/17 . 

5 )   D i r e c t i v e  90/314/EEC on package t r a v e l ,  package h o l i d a y s  and package t o u r s ,   OJ 1 9 9 0  L 1 5 8 / 5 9 . 

‑ 1 5 1   ‑ (483) 

(4)

を負うことが定められた

(EEC

条約

1 0 0 a

3

項。この規定は後に,

EC

条約

9 5

3

項 に改められ,リスボン条約による改正で

TFEU1 1 4

3

項となった)。

1 9 7 9

年には,

ヨーロッパ連合司法裁判所

(CJEU)

は,著名なカシス・ド・デイジョン

( C a s s i sde  D i j o n )

判決において,

TFEU3 4

条によって禁止されている物品の輸入に対する数量制 限を設けるためには,消費者の保護が不可欠の条件となることを認めたのである6)。そ して,マーストリヒト条約

( 1 9 9 2

年に調印,

1 9 9 3

年に発効)は,消費者法がヨーロッパ 共同体法の政策領域

( p o l i c ya r e a )

のひとつであることを明示的に規定した

(EC

条約 第

XI

1 2 9 a

条)。もっとも,新たに条約に追加されたこの編には,消費者保護につい て 直 接 的 な 効 果 を 有 す る 実 体 規 定 が お か れ て お ら ず , む し ろ , プ ロ グ ラ ム 規 定

(programme  p r o v i s i o n )

と基本枠組規定

( l e g a lb a s i s  p r o v i s i o n )

の組合せであった。別 の言い方をすれば,消費者法は,第二次法を通じて確立されるものとなったのである。

こうした状況は, リスボン条約による改正後においても同じである

(TFEU1 6 9

条)。

2 .  

民事法全般

民事法全般をみると,移動および競争の自由に関する規定が,実体法としての性格を もつ諸条約の規定の中で最も重要なものであるが,それは,公法と私法の双方において 適用されている。もともとこのような分類は

EEC

法に根拠を有しておらず,実際に,

むしろ加盟国の国内法に由来するものである。今日では,「民事の

( c i v i l )

」という概念 は,条約レベルでは非常に限られた文脈でしか使われておらず,その文脈のすべてが民 事法に関連するわけでもない(そのような文脈の例としては,

TFEU8 1

条以下に規定 されている民事事件における司法協力や,

TFEU1 9 6

条に基づく民事保護等がある)7)。 第二次法をみると,その大部分は伝統的に私人

( p r i v a t ei n d i v i d u a l s )

間の法律関係

( l e g a l  r e l a t i o n s h i p )

に 関 す るものである(たとえば,電子商取引指令

(e‑commerce D i r e c t i v e )  

S)や消費者権利指令

( D i r e c t i v e on consumer r i g h t s )

がそうである)9)。さら

6 )   Case  120/78  Rewe‑Z e n t r a l  A G   v  Bundesmonopolverwaltung f i i r   Branntw e i n   [ 1 9 7 9 ]   ECR. 

7 )  

もっとも,たとえばドイツの用語法では,「民事の

( c i v i l )

」という言葉は使われ ておらず,

K a t a s t r o p h e n s c h u t z

(災害保護)となっている。

8 )   D i r e c t i v e  2000/31/EC on c e r t a i n  l e g a l  a s p e c t s  o f  i n f o r m a t i o n  s o c i e t y  s e r v i c e s ,  i n   p a r t i c u l a r  e l e c t r o n i c   commerce, i n   t h e  I n t e r n a l   M a r k e t ,  OJ 2000 L 1 7 8 / 1 .   9 )   D i r e c t i v e   2011/83/EC  on  consumer  r i g h t s ,   amending  C o u n c i l   D i r e c t i v e  

93/13/EEC and D i r e c t i v e   1 9 9 9 /  44/EC o f  t h e  European P a r l i a m e n t  and o f  t h e  / '  

(5)

に,民事法の領域における興味深いプロジェクトも存在する。たとえば,ヨーロッパ契

約 法 全 体 の 統一性

( c o h e r e n c e )

を強化することを目的とする共通参照枠

(Common Frame o f  R e f e r e n c e )

の起草などがそうである10)。ヨーロッパ委員会は,

2 0 1 0

年に,消 費者と事業者のための契約法に関する緑書

(GreenPaper on c o n t r a c t  law f o r  consumers  and b u s i n e s s e s )  

I I)を公表した。これには種々の選択肢が挙げられており,そのひとつ

に, ヨーロッパ民法典がある。もっとも,ヨーロッパ委員会は,この緑書の中で,「域 内市場の円滑な機能に対する障壁は契約法以外の領域にも存在するが,ヨーロッパ民法 典のような広範囲にわたる手段が補完性を根拠としてどこまで正当化できるかは,まだ はっきりしていない。」と述べている。確かに,現行の基本条約の下では,

EU

が,本 質的に全般にわたるヨーロッパ民法典を採用する権限を有していると理解することは難

しい。

要するに,民事法は常に

EU

法(従来はヨーロッパ共同体法)の影響の下におかれ てきたにもかかわらず,それ自体としてヨーロッパ共同体やヨーロッパ連合の一般的な 政策領域とされたことはないのである

I l l .   リスボン条約のいくつかの側面と消費者法との関連性

上述した背景の下でリスボン条約が消費者法の領域に与える影響は,はたして,いか なるものだろうか。以下では, リスボン条約による改正に関するいくつかの重要な側面 を紹介する12)。

¥ . .  C o u n c i l  and r e p e a l i n g  C o u n c i l  D i r e c t i v e  85/577  /EEC  and D i r e c t i v e  97  /7  /EC o f   t h e  European P a r l i a m e n t  and o f   t h e  C o u n c i l ,  OJ 2 0 1 1  L 3 0 4 / 6 4 . 

1 0 )   C h r i s t i a n  von B a r / E r i c  Clive/Hans Schulte‑Nolke ( e d s ) ,  P r i n c i p l e s ,  D e f i n i t i o n s   and Model R u l e s  o f  European P r i v a t e  Law: D r a f t  Common Frame o f  R e f e r e n c e   (DCFR). O u t l i n e  E d i t i o n .  Munich: S e l l i e r  2009

を参照。〔訳者注:

DCFR

の和訳と

しては,クリスティアン・フォン・バールほか編(窪田充見ほか監訳)「ヨーロッ パ 私 法 の 原 則 ・ 定 義 ・ モ デ ル 準 則 共 通 参 照 枠 草 案

(DCFR)

』(法律文化社,

2 0 1 3 )

がある。〕

1 1 )   Green Paper on p o l i c y  o p t i o n s  f o r  p r o g r e s s  towards a  European C o n t r a c t  Law  f o r   consumers and b u s i n e s s e s ,   COM  ( 2 0 1 0 )  3 4 8 .  

1 2 )  

リスボン条約による改正については,

MichaelDougan, The Treaty o f   Lisbon  2 0 0 7 :  Winning  Minds,  Not H e a r t s ,   Common Market  Law Review  4 5   ( 2 0 0 8 ) ,   6 1 7 ‑ 7 0 3 ,  

お よ び ラ イ デ ン 大 学 ヨ ー ロ ッ パ 研 究 所

(Europa I n s t i t u t e   o f   Leiden  U n i v e r s i t y )

によって作成された概要

( h t t p : / / m e d i a . l e i d e n u n i v . n l / l e g a c y / l i s b o n ‑ / 

‑ 1 5 3   ‑ (485) 

(6)

1.  一連の条約による包括的な改正の最新のもの

リスボン条約による改正は, 一連の条約による大規模な改正の最新のものである

そ のような大規模な改正は,

1950

年代に

3

つの経済共同体が設立されて以来,次々と行わ れた

。特 に 重 要 な も の と し て は , ① 1 9 8 6

年に調印され,

1 9 8 7

年 に 発 効 し た 単

ヨー ロッパ議定書(域内市場を再び取り上げた),②

1 9 9 2

年に調印され,

1 9 9 3

年に発効した マーストリヒト条約による改正(ヨーロッパ連合の設立),③

1 9 9 7

年に調印され,

1 9 9 9

年に発効したアムステルダム条約による改正

(EUの構造の変更),そして④ 2 0 0 1

年 に調印され,

2003

年に発効したニース条約による改正(間近に迫っていた拡大に向けた 準備)がある

これらの改正に続き,

2007

年に調印され,

2009

年に発効したリスボン条 約による改正は,特に構造や機関に根本的な変化をもたらすものであり,最新の包括的 な改正となった(厳密にいえば,

2 0 1 1

3

月にも小規模の改正が決定され,ユーロ危機 に対応すべく,簡易な手続により,

TFEU1 3 6

条に

3

項が追加された)

リスボン条約は,改正手続において合意された変更点を含むものであり,

2 0 0 1

1 2

1 5

日の, ヨーロッパ連合の将来に関するラーケン宣言を背景として理解されなければな らない。ラーケン宣言は,

2 0 0 1

1 2

月にラーケン(ベルギー)で行われたヨーロッパ理 事会の会合の結果であり13), 以後の改正が「一層民主的で, 一層透明性があり,かつ,

一層効率的になること

(mo r edemo c r a c y ,  t r a n s p a r e n c y  and  e f f i c i e n c y )

」を目的とすべ きであると述べている。

これらの目的に従い憲法条約14)を実現させる試みは失敗に終わったが,リスボン条 約 に よ る 改 正 は 現 実 の も の と な っ た

こ の 改 正 の 結 果 と し て 変 更 さ れ た 点 は , 同 条 約15)に含まれている

。具体的には,特に EU

の構造,機関(機関については,本稿で は扱っていない),

EUの権限そして意思決定に変更が加えられている 。

これに対し,

リスボン条約が実体的なレベルにもたらした本質的な変化は,数少ないものである。

2 .   EU

とその基本法令の構造

リスボン条約による改正がもたらした構造的な変化は,改正前の

EUの特徴となっ ' , .  t r e a t y ‑ s u m m a r i e s . p d fにてオンラインで閲覧可能)を参照。

1 3 )   h t t p : / / e u r o p e a n ‑ c o n v e n t i o n . e u . i n t /  p d f / l k n e n .  p d fを参照 。

1 4 )   Treaty E s t a b l i s h i n g  a  C o n s t i t u t i o n  f o r  E u r o p e ,  OJ 2004 C 319 

(効力を生じてい ない。「憲法条約」とも呼ばれている)

1 5 )   Treaty  o f   Lisbon  amending t h e   Treaty on European Union and t h e   Treaty 

e s t a b l i s h i n g   t h e  European Community, OJ 2007 C 306 

(「リスボン条約」)。

(7)

ていた独特の構造を背景として理解されなければならない。当時の

EU

は,その屋根 が3つの柱によって支えられている神殿と比較されることがしばしばあった。第一の柱 は,ヨーロッパ共同体に関する法であり,第の柱は,共通外交• 安 全 保 障 政 策

(Common F o r e i g n  and S e c u r i t y  P o l i c y ,  CFSP)

であり,第三の柱は,警察・刑事司法 協力であった。そして,

EU

が,互いに異なる

2

つの基本的な形で機能していたこと も , こ の 構 造 と 関 連 し て い た。つ ま り , 第一の 柱 ( 共 同 体 法 ) が 国 家 を 超 え た

( s u p r a n a t i o n a l )

性質のもの(効力が比較的強い国際法)であったのに対し,第二と第 三の柱は政府間の

( i n t e r g o v e r n m e n t a l )

もの(伝統的な国際法に属するものであって,

その効力が比較的弱いもの)であったのである。その結果,それぞれ異なる法的措置や 法的効果によって特徴づけられることになり,こうした体系は非常に複雑で理解が困難 なものであった。また,そのことが,

EU

機関の間で争いをもたらすこともあった(た

とえば,

EC

刑事法事件

(ECC r i m i n a l  Law c a s e )

等)16)。

リスボン条約による改正は,このような

EU

の構造を根本的に変えた。従来の伝統 的な柱構造

( p i l l a rs t r u c t u r e )  , 

特に

EC

は廃止され,

EU

に統合された。ヨーロッパ原 子力共同体

( E u r a t o m )

は存在し続けている。その結果,リスボン条約による改正後の

EU

は,ヨーロ ッパ原子力共同体が衛星となってその周りを公転する惑星にたとえるこ

とができるであろう (このたとえは,

T o b l e r / B e r l i n g e r

によるものである)17)。

これらの変化は,

EU

の碁本法令にも影響を及ぼした。第一に,旧

EC

条約は,ヨー ロッパ連合運営条約

( TFEU)

という新たな名の下で,改正された内容で存在し続けて いる。同時に,ヨーロッパ連合条約

(TEU)i s )

とヨーロッパ連合基本権憲章19)も,同 じく改正された内容で存続している。加盟国を拘束しない手段として

2 0 0 0

年に宣言され たヨーロッパ基本権憲章は, リスボン条約による改正を通じて,上記

2

つの条約と同じ

1 6 )   Case C ‑ 1 7 6 / 0 3  Commission v  C o u n c i l ,  ECLI:EU:C:2005 : 5 4 2  (EC C

minalLaw); 

C h r i s t a   T o b l e r

による評釈については,

Common Market Law R e v i e w ,   2 0 0 6 ,   8 3 5 ‑ 8 5 4

を参照。

1 7 )   C h r i s t a   T o b l e r / J a c q u e s   B e g l i n g e r ,   E s s e n t i a l   EU Law i n   C h a r t s ,   3 r d   e d i t i o n ,   Budapest :  HVG‑Orac 2 0 1 4 ,  Chart 2 / 2 1  e t   s e q .  

1 8 ) 

リスボン条約による改正後の諸条約のバージョン(最新版)は,

EU

O f f i c i a l J o u r n a l ,   OJ 2 0 1 2  C 3 2 6 / 3 9 1

でみることができる。

1 9 )   C h a r t e r  o f  Fundamental R i g h t s  o f  t h e  European Union 

(ヨーロッパ基本権憲章 の解釈に関する解説を含む),

OJ2 0 0 7  C 3 0 3 / 1 ,  OJ 2 0 1 2  C 3 2 6 / 3 9 1  

(再制定前の

ものについては,

OJ2000 C 3 6 4 / 1

を参照)。

‑ 1 5 5   ‑ (487) 

(8)

法的価値を有する

EU

の基本文書となった

(TEU6

1

項)。実務的なレベルでは, リ スボン条約は,

TEU

TFEU

のいずれについても,条文番号の変更をもたらした

これに伴い,条約番号は,

EU

に関する実務においては, リスボン条約成立前と成立後 とで区別されなければならない。

EU

の従来の柱構造

( p i l l a rs t r u c t u r e )

について特に注目すべきは,リスボン条約に よる改正の結果,消費者法を含む従来の第

一の柱がもはや「共同体法」ではなく,「 EU

法」と呼ばれていることである20)。従来の第三の柱(刑事法)は,

TFEU

の「自由・

安全・司法領域

( A r e a o f  f r e e d o m ,   s e c u r i t y  and j u s t i c e )

」の編

(TFEU6 7

条以下)に統 合された。このいわゆる「共同体化

( C o m m u n i t a r i s a t i o n )

」を通じて,この領域は,従 来の第一の柱と同じ性質をもつようになった。従来の第二の柱

(CFSP)

は,リスボン 条約による改正の後は,

TFEU

ではなく

TEU

によって規律される唯一の政策領域と なっている

。諸条約の構造において特別の地位を有し,本質的には,依然として政府間

( i n t e r g o v e r n m e n t a l )

ものである

3 .   EU

の権限(消費者保護に関するものを含む)

EU

の権限体系は, リスボン条約による改正を通じてより透明性のあるものとなった。

改正前の

EC

条約は,「

EU

の非排他的権限」に言及していたが,これを定義せず,ま た,これに含まれる権限を列挙することもなかった

これは,

CJEU

の判例によって,

ある程度明確になった

たとえば,司法裁判は,共通通商政策

(CommonCommercial  P o l i c y ,  CCP 。第三国

との通商に関するものである)が

EU

の排他的権限であることを 明らかにした21)。他の領域では,専占の法律構成

( d o c t r i n eo f  p r e ‑ e m p t i o n )

が適用さ れ,加盟国は,

EC

がその権限を行使した場合には,その限りにおいて権限を行使する ことができなくなる

リスボン条約による改正後の

TFEU

は,種々の権限に明示的に言及し,その内容を 定め,列挙している

(TFEU 2

条以下)

まず,

EU

の排他的権限があり,これらは限

2 0 )  

リスボン条約前に

EC

の枠組みにおいて採択された規則や指令は,現在は,

ヨーロッパ連合の立法措置であり,厳密には

EU

法であるものの,たとえば,

, , D i r e c t i v e   2004/113/EC" 

(下記の,ケース・スタデイに関する章を参照)等とし て,当初のその公式番号と名称を維持している

2 1 )  

たとえば,

Case41/76 Suzanne C r i e l ,   n e e  Donckerwolcke and  Henri Schou  v 

P r o c u r e u r  de l a   Republique  au  t r i b u n a l  de grande i n s t a n c e  de L i l l e  and D i r e c t o r  

General of C u s t o m s ,  ECLI:EU:C:1976:182

を参照。

(9)

定列挙されている。次に,

EUと加盟国との間で共有される権限があり,これらは条約

に例示列挙されている。最後に,支援・調整・補充的な

( s u p p o r t i v e ,c o o r d i n a t i n g  and  s u p p l e m e n t i n g )   EUの権限があり,これらも限定列挙されている

。ここで特に注目を 要するのは,リスボン条約が新たに導入した権限が非常に少ないということである(た とえば,観光に関する

TFEU1 9 5

条,民事保護に関する

TFEU1 9 6

条等がある)。民事 法は,総合的なカテゴリーとしてはこれらに含まれていない。

消費者保護は,

TFEU4

3

( f )に,共有される権限の例として明示的に挙げられ

ている。リスボン条約は,

EUの権限の範囲にも,それについて適用される法的手続に

も何ら変化をもたらさなかった。

TFEU1 6 9

条は,次のように定める。

1. ヨーロッパ連合は,消費者の利益を促進し,高水準の消費者保護を確保する ため,消費者の健康,安全及び経済的利益の保護並びに消費者の情報に関する権 利,教育に関する権利及び自己の利益を守るために組織する権利の促進に貢献す

る。

2 .  

ヨーロッパ連合は,次の各号に定める措置を通して,第

1

項に定める目的の 達成に貢献する。

(

a

) 第

1 1 4

条に基づき,域内市場の完成に関連して採択される措置 (

b

加盟国が実施する政策を支持,補完及び監視する措置

3 .  

ヨーロッパ議会及び理事会は,通常立法手続に従い,経済社会評議会の意見 を徴した上で,第

2

(

b )

に定める措置を採択する。

4 .  

3

項に基づいて採択された措置は,加盟国が,より厳格な保護措置を維持 又は導入することを妨げない。そのような措置は,諸条約と両立するものでなけ ればならない。ヨーロッパ委員会は,そのような措置について通知を受けなけれ ばならない。」

この規定から明らかなように,

TFEU

は,第二次法としての

EU

消費者法が,いく つかの異なる法的根拠に基づいて採択されることを想定している。まず,消費者法は,

TFEU 1 1 4

条に基づいて採択される域内市場法となることができる。同条の下では,

ヨーロッパ議会と理事会は,域内市場の確立と機能化を目的とする加盟国の法令または 行政措置

( l a w ,r e g u l a t i o n  o r  a d m i n i s t r a t i v e  a c t i o n )

によ って設けられた規定を平準化

( a p p r o x i m a t i o n )

するための手段を採らなければならない。

次に,消費者保護法令は,

TFEU1 6 9

3

項に基づくことができる。さらに,より広

‑ 1 5 7   ‑ ( 4 8 9 )  

(10)

義 の 消 費 者 保 護 規 定 は , た と え ば , 運 送 法

( t r a n s p o r tl a w )

や 社 会 的 差 別 禁 止 法

( s o c i a l  n o n ‑ d i s c r i m i n a t i o n  l a w )

等の,他の立法にもみることができる。このことにつ いては,

2

つのケース・スタディに関する章において後述する。

リスボン条約による改正の結果として変更されたのは,第二次法上の手段の法的根拠 である。たとえば,消費者権利指令提案は,

EC

条約9

5

条に基づくものであったが,リ ス ボ ン 条 約 に よ る 改 正 の 後 に 実 際 に 採 択 さ れ た 指 令 ( つ ま り , 指 令

2 0 1 1 / 8 3 )

は,

TFEU 1 1 4

条に基づいている。

4 .  

立 法 手 続

TFEU 1 1 4

条と

TFEU 1 6 9

条の場合において適用される手続は, リスボン条約前は通 常立法手続と呼ばれていた,共同決定手続

( c o ‑ d e c i s i o n p r o c e d u r e )

である。この手続 では,ヨーロッパ議会と理事会は,共同立法者として行為する。理事会による採択には,

特定多数決

( q u a l i f i e dm a j o r i t y )

が必要となる。リスボン条約前は,加盟国の過半数,

および加盟国の加重票のうちの2

5 5

票以上という条件を満たす特定多数決が求められて おり,加盟国による請求があったときは,

EU

全人口の

62%

以上という基準もクリアし なければならなかった。

リスボン条約は,

2 0 1 4

年1

1

1

日から原則的なものとして適用されている新たな方式 を導入した。この新たな方式の下では,加重票は廃止されている。特定多数決の内容は,

① 

加盟国数の

55%

以上,②

1 5

か国以上の加盟国,および③

EU

全人口の

65%

以上,

とされている。さらに,可決阻止少数

( b l o c k i n gm i n o r i t y )

の基準についても新たに規 定され,

4

か国以上の加盟国となっている。

5 .  

実体法レベルでの変化

リスボン条約による改正は,条約の実体規定 (特に

4

つの自由,競争法,

EU

市民の 移動と居住)には一切変更をもたらしていない。改正前と同じく,消費者保護は

EU

法のすべての領域において考慮されなければならず,高水準の保護が目的とされている。

改正前は,この義務は,

EC

条約

9 5

3

項に基づくものであった。この規定は,これに 基づいて採択される域内市場法が,高水準の保護を確保するものであることを要請して

いた。

EC条約 1 5 3

2

項の下では,消費者保護は,最も重要な課題とされていた。改 正後の

TFEU 1 1 4

3

項は,この規定に基づいて採択される域内市場法が,高水準の消 費者保護を確保するものであることを求めている。そして,このことは,全体として,

(11)

ヨーロッパ基本権憲章

3 8

条にそのまま繰り返されている。

当初

( 2 0 0 0

年)は,ヨーロッパ基本権憲章は拘束力を有しない手段であり,加盟国が これに拘束されないことが宣言されていた。しかし, ヨーロッパ基本権憲章は,第二次 法,たとえば指令

2 0 0 4 / 3 8 2 2 ) (EU

市民の移動および居住)で引用されている。また,

司法裁判所も,主な要素としてではないものの,これを引用し始めている(たとえば,

Mannesmann

判 決

2 3 )

は,これを適用しなかったものの,引用した)。ヨーロッパ基本 権憲章は,リスボン条約による改正を通じて,拘束力を有する手段となった。ヨーロッ パ基本権憲章

5 2

条によると,

EU

機関と加盟国は,共にこれに拘束される。ただし,加 盟国がこれに拘束されるのは,「

EU

法を適用する場合」のみである。もっとも,司法 裁判所は,

AkerbergFransson 事件2 4 )

において,これが意味するのは,「連合法の範囲 内において行為する場合」であると判示した。

ヨーロッパ基本権憲章の役割は,消費者法との関連においても,軽視されてはならな い。ここで忘れてはならないのは,第二次法はすべて第一次法に基づいており,これに 由来するということである。そのため,あらゆる第二次法は,権限,手続そして実体の レベルのいずれにおいても,第一次法に合致するものでなければならない。上位の実体 法としての第一次法に含まれるのは,基本条約

(TEU, TFEU)

とこれに添付された 議定書

( P r o t o c o l s ), 

ヨーロッパ基本権憲章,そして

EU

の一般原則である。

I V .   リスボン条約による改正が消費者法に与える影響:

2 つのケース・スタディ

下記の

2

つのケース・スタディを通じて, ヨーロッパ基本権憲章に定められている平 等取扱の権利を含む

EU

法の一般原則が,消費者保護の領域において有する意義につ いて述べることとしたい。

2 2 )   D i r e c t i v e  2004/38/EC on t h e  r i g h t  o f  c i t i z e n s   o f  t h e  Union and t h e i r  f a m i l i e s   members t o   move and r e s i d e   f r e e l y   w i t h i n  t h e  t e r r i t o r y   o f   t h e  Member S t a t e s ,   amending R e g u l a t i o n  (EEC) No 1 6 1 2 / 6 8  and r e p e a l i n g   D i r e c t i v e s   64/221/EEC,  68/360/EEC, 7 2 / 194/EEC, 73 / 1 4 8 / EEC, 7 5 / 3 4 / EEC, 75/35/EEC, 90/364/EEC,  90/365/EEC and 93/96/EEC, OJ  2 0 0 4  L 1 5 8 / 7 7 . 

2 3 )   Case T‑112/98 Mannesmannrohren‑Werke AG  v  C o m m i s s i o n ,  ECLI:EU:T : 2 0 0 1 : 6 1 .   2 4 )   Case C‑617  /10 Aklagaren v  Hans Akerberg F r a n s s o n ,  E C L I : E U : C : 2 0 1 3 : 1 0 5 .  

‑ 1 5 9   ‑ (491) 

(12)

1 .  

第一のケース・スタディ:航空旅客の権利

第一のケース・スタディは,フライトの大幅な遅延やキャンセルの場合における航空 旅客の権利に関するものである。航空旅客の権利は,規則

2 6 1 / 2 0 0 4

に規定されている。 同規則は,搭乗拒否の場合とフライトの大幅な遅延やキャンセルの場合における,航空 旅客に対する損害賠償と援助について共通の準則を定めている25)。この規則は,厳密 には運送法に属するものであるが,上記はいずれも,消費者保護法の問題である。

この規則が基礎としている消費者保護の基本原則は,① フライトのキャンセルの場 合における,航空旅客に対する援助と特定の状況の下での損害賠償

(5

条),そして,

② 

遅延の場合における航空旅客に対する援助

(6

条)というものである。ここで注目 すべきは,これら

2

つの場合の取扱いが,意図的に異なっているということである。

ヨーロッパ委員会は,この規則の提案26)では,航空会社の観点からは,これらの

2

つ の場合は同様のものではないと考えたのである。

この異なる取扱いは,

2 0 0 9 年 1 1 月1 9

日(つまり,リスボン条約による改正前)の

Sturgeon

事件先決裁定27)のきっかけとなった。この事件は,数名の航空旅客が大幅な 遅延に遭い,航空会社

(Condor F l u g d i e n s t  GmbH

A i rFrance SA

。これらは,共に 私企業である)に対して訴えを提起したものである。本件の法的問題は,第一に,航空 旅客が損害賠償請求権を有するのか,つまり,本件のような長さの遅延は,法的にみて 単なる遅延に過ぎないのか,それとも,フライトのキャンセルであるといえるのか,そ

して第二に,航空会社が免責されるような特段の事情がないか,であった。

司法裁判所は,

EU法(当時は共同体法)の,広く知られている次の 2

つの要素を確 認することから検討を始めている。これら

2

つの要素とは,「解釈の一般原則によると,

2 5 )   R e g u l a t i o n   261/2004/EEC  e s t a b l i s h i n g   common r u l e s   on  compensation  and  a s s i s t a n c e  t o   p a s s e n g e r s  i n   t h e   e v e n t  o f   d e n i e d  b o a r d i n g  and o f  c a n c e l l a t i o n   o r   l o n g  d e l a y  o f   f l i g h t s ,   OJ L 2004 4 6 / 1 .  

2 6 )   P r o p o s a l  f o r  a  R e g u l a t i o n  o f  t h e  European P a r l i a m e n t  and C o u n c i l  e s t a b l i s h i n g   common r u l e s   on compensation and a s s i s t a n c e  t o   a i r   p a s s e n g e r s  i n   t h e  e v e n t  o f   d e n i e d  b o a r d i n g  and o f   c a n c e l l a t i o n   o r  l o n g  d e l a y  o f   f l i g h t s ,   COM  ( 2 0 0 1 )  7 8 4 ;   P r o p o s a l   f o r   a C o u n c i l   R e g u l a t i o n   amending  R e g u l a t i o n   (EEC)  n r   295/91  e s t a b l i s h i n g   common  r u l e s   f o r   a d e n i e d ‑ b o a r d i n g   compensation  system  i n   s c h e d u l e d  a i r   t r a n s p o r t ,   COM ( 1 9 9 8 )  4 1 .  

2 7 )   J o i n e d  c a s e s  C‑402/07 and C‑432/07 C h r i s t o p h e r  S t u r g e o n ,   G a b r i e l  S t u r g e o n ,  

Alana S t u r g e o n  v  Condor  F l u g d i e n s t  GmbH  (C ‑ 402 / 0 7 ) ,  and S t e f a n  B o c k ,  C o r n e l i a  

L e p u s c h i t z   v  Air F r a n c e  SA ( C ‑ 4 3 2 / 0 7 ) ,  ECLI:EC:C:2009 : 7 1 6 . 

(13)

共同体の法行為は,可能な限り,その有効性に影響を及ぽさない形で解釈されなければ ならない」ということと

2 s i ,

「共同体のあらゆる法行為は,第一次法全般と合致する形 で解釈されなければならない。この第一次法には,平等取扱の原則も含まれ,この原則 は,同様の状況が異なる取扱いを受け,異なる状況が同様の取扱いを受けることは,そ のような取扱いが客観的に正当化される場合を除き,許されないとするものである」と いうことである29)。

司法裁判所は,これらの原則を適用して,消費者の視点からみると,大幅な遅延は キャンセルと同様の効果を生じさせる場合があること,つまり,これらの

2

つのケース が同様のものとして取り扱われる場合があることを認めたのである。そうすると,異な る取扱いをすることは,差別に等しくなる。そのような場合には,フライトがキャンセ ルされたときの航空旅客の権利を定めるこの規則の規定は,その文言にかかわらず,損 害賠償の権利を含むものとして解釈されなければならない。

裁判所のこの判断が航空業界の激しい異議にさらされたのは,意外なことではない。

そのような異議の論拠としては,司法裁判所の判例が

EU

立法者の判断を遵守してい ないとするものもあった

3 0 ¥

2 .  

第二のケース・スタディ:保険法

第二のケース・スタディは,保険契約における,被保険者である男性と女性の取扱い に関するものである。

EU

法の下では,保険の提供は役務である。指令

2 0 0 4 / 1 1 3

出)は, 物品および役務の提供へのアクセスに関して,男女の平等取扱の原則を実行することを

2 8 )   S t u r g e o n

判決,判決文の

4 7

段落目。

2 9 )   S t u r g e o n

判決,判決文の

48

段落目。

3 0 )   Sturgeon

事 件 に つ い て の 文 献 と し て は , た と え ば ,

John B a l f o u r ,   A i r l i n e   L i a b i l i t y   f o r   D e l a y s :  The Court o f   J u s t i c e   o f   t h e  EU R e w r i t e s  EC R e g u l a t i o n   2 6 1 / 2 0 0 4 ,  A i r  and Space Law 2010 V o l .  3 5  I s s u e  1 ,   7 1 ‑ 7 5 ;  Kare L i l l e h o l t ,  Case: 

CJEU ‑Sturgeon and o t h e r s ,  European Review o f  C o n t r a c t  Law 2010 V o l .  6  No. 

2 ,   1 8 4 ‑ 1 9 1  ;  Ludger G i e s b e r t s / G u i d o  L e v e ,  Compensation f o r   P a s s e n g e r s  i n   t h e   Event o f   F l i g h t  Delays ‑I n t e r p r e t a t i o n   o f  t h e  A i r  P a s s e n g e r  R i g h t s  R e g u l a t i o n   a f t e r   t h e   European Court o f   J u s t i c e   Judgment o f   1 9   November 2 0 0 9 ,   A i r  and  Space Law 2 0 1 0 ,   293‑304

を参照。

3 1 )   D i r e c t i v e  2004/113/EC implementing t h e  p r i n c i p l e  o f  e q u a l  t r e a t m e n t  between  men and women i n   t h e  a c c e s s  t o   and s u p p l y  o f   goods and s e r v i c e s ,   OJ 2 0 0 4  L  3 7 3 / 3 7 .  

‑ 1 6 1   ‑ (493) 

(14)

その目的としている。形式的には差別禁止法の領域に属するものであるが, 第一のケー ス・スタディの場合と同様,消費者保護法の一種とみることができる。

この指令は,男女は,

2 0 0 7 年1 2 月 2 1

日現在,平等に取り扱われなければならない (同 指令

5

1

項)とする消費者保護の基本原則をその基礎としている。ただし,平等取扱 についていまだ定めていない加盟国は,母性に関する場合を除き(同指令

5

3

項), 保険統計上の要因

( a c t u a r i a lf a c t o r s )

に基づいて,異なる定めをその国内法におくこ

とができる(同指令

5

2

項)。ここでもやはり,意図的に異なる取扱いがされている のである。しかし,この異なる取扱いの可能性は,ヨーロッパ委員会が提案したもので はなく,立法過程における私保険業界によるロビー活動の結果として追加されたもので ある(ヨーロッパ委員会による指令提案には,このような異なる定めをの可能性につい て定められていなかった)32)。

ベルギーは,どたん場で動きを起こし,異なる取扱いを定める手段を利用した。そし て,このことは,

T e s t ‑ Achats

事件に関するペルギーでの訴訟手続,そして司法裁判所 での先決裁定のき っかけとなった33)。同裁判所の大法廷

( GrandChamber )

の先決裁 定は,

2 0 1 1 年 3 月 1

日に言い渡されたものである (つまり,事件自体はリスボン条約前 のものであるが,先決裁定は同条約後のものである)。この事件の原告は,ベルギーの 消費者団体と

2

名の個人であり,保険と保険統計上の要因に関する異なる定めについて 異議を申し立てた。

EU

法の下で生じた法的問題は,そのような異なる定めが,

EU

(旧

EC)

の第一次法に合致するのか,つまり,男女の平等取扱の原則に照らして有効 なものなのかどうかであった。そのため,司法裁判所での先決裁定手続では,この事件 は,

Sturgeon

事件のように解釈が問題となるものではなく,効力が問題となるもので あった。より具体的には,この事件は,指令 5条 2項が男女の平等取扱の原則に合致し ているのか (つまり,

EU

第一次法に照らした

EU

第二次法の効力)を問題とするもの であった。

司 法 裁 判 所 は , こ れ は 合 致 す る も の で は な い と 裁 定 し た。司 法 裁 判 所 は , 指 令

2 0 0 4 / 1 1 3

の立法理由

4

がヨーロ ッパ基本権憲章

2 1

条および

2 3

条に明示的に言及してい

3 2 )   P r o p o s a l  f o r  a  C o u n c i l  D i r e c t i v e  implementing t h e  p r i n c i p l e  o f  e q u a l  t r e a t m e n t   between women and men i n  t h e  a c c e s s  t o  and s u p p l y  o f  goods and s e r v i c e s ,  COM  ( 2 0 0 3 )  657 . 

3 3 )   Case C‑236 / 0 9  A s s o c i a t i o n   b e l g e  d e s   Consommateurs T e s t ‑ A c h a t s ,  ECLI : EU:C : 

2 0 1 1 : 1 0 0 .  

(15)

るため,同指令 5条 2項の効力はこれらの

一次法の関連規定に照らして判断されなけれ

ばならないと判示した。ヨーロッパ基本権憲章

2 1

条および

2 3

条は,それぞれ,性別に基 づく差別を禁止し,男女の平等がすべての領域において保障されなければならない旨を 定めるものである(司法裁判所がヨーロッパ基本権憲章

5 2

条を引用しなかったのは,こ の訴えが

2 0 0 9

年1

2

1

日より前に提起されたからであると思われる)。さらに,司法裁 判所は,

EU

法における法の下の平等

( l e g a le q u a l i t y )

の意義について,「平等取扱の 原則は,同様の状況が異なる取扱いを受け,異なる状況が同様の取扱いを受けることは,

そのような取扱いが客観的に正当化される場合を除き,許されないとする」ものである ことを確認した34)。司法裁判所によると,この指令は,保険に関する限りでは,男女 は同様の状況にあるとみなすものである。もっとも,全体的な法的・事実的文脈次第で,

法の下の平等を段階的に導入することも認められ,この指令では,無期限のものとして ではないが,異なる定めをおくことが許されている。このような考えの下で,司法裁判 所は,指令

2 0 0 4 / 1 1 3

5

2

項は

2 0 1 2

年1

2

月2

1

日をもってその効力を失うとの最終的 判断を示した。

航空運送業界において

Sturgeon

判決がそうであったように,

T e s tAchats

判決も,

保険業界において激しい異議をもたらした。ここでも,司法裁判所が

EU

立法者の判 断を重視していないとの批判が加えられた。また,司法裁判所が,両性間の明らかな相 違を軽視しているのではないのかについても争いがある35)。

3 .  

ケース・スタディに基づく結論

司法裁判所は,

S t u r g e o n

事件と

Test‑Achats

事件のいずれにおいても,憲法裁判所 であるかのような役割をはたし,注目すべき判決を言い渡した。これら

2

つの判決は,

消費者保護との関連では,第一次法の与える影響が,第二次法の意義だけでなく,内容 にさえも強く及ぶ場合があることを明らかにした。より具体的には,

Test‑Achats

事件 は , こ の 文 脈 に お け る ヨ ー ロ ッ パ 基 本 権 憲 章 の 重 要 性 を 明 確 に 示 し て い る。

Test‑Achats

事件は,

EU

機関(指令

2 0 0 4 / 1 1 3

を採択した立法者としての理事会)の

3 4 )   T e s t ‑ A c h a t s

判決,判決文の

2 8

段落目。

3 5 )   T e s t ‑ A c h a t s

事件に関する文献としては,たとえば,

C h r i s t aTobler

による評釈

Common Market Law R e v i e w ,  2 0 1 1 ,  2 0 4 1 ‑ 2 0 6 1

を参照。また,

E u g e n i aC a r a c c i o l o   de T o r e l l a ,  No Sex P l e a s e :  We ' r e  l n s u r e r s ,  European Law Review 2 0 1 3 ,  6 3 8 ‑ 6 5 4  

も参照。

‑ 1 6 3   ‑ (495) 

(16)

立法行為に関するものであったが,リスボン条約により,ヨーロッパ基本権憲章も

EU

加盟国を拘束する手段となった。こうして, リスボン条約による改正は,消費者法(そ して民事法全般)における第一次法の重要性を増したのである。これに伴い,消費者法 を含む

EU

第二次法の特定の領域をその専門とする弁護士は,

EU

第一次法の知識と,

これら

2

つのレベルの法の関係に関する知識をもつことを一層強く求められているので ある。

〔訳者付記〕

本稿の著者であるクリスタ・トプラー教授(ライデン大学,バーゼル大学)は,

2 0 ] ]

年4月に来日され,本稿に関する講演会が, 4月23日に龍谷大学(司会:中田邦博教

授)で開催された。本稿は,同講演の基礎になった原稿に,後に,同教授自ら手を加え ァップデートされたもの

( 2 0 1 5 年 4

1 1

日脱稿)を訳出したものである。本掲載にあ たっては,拙訳につき,中田邦博教授およびヨーロッパ消費者法研究会の先生方から貴 重なご意見を賜わった。ここに記して感謝の意を表したい。なお,クリスタ・トブラー 教 授 の 略 歴 や 業 績 の 詳 細 に つ い て は , ラ イ デ ン 大 学

( h t t p : / / l a w .   l e i d e n u n i v .  n l /   org/ pu  b l i e k r e c h  t i   europa i n s t i t u u t /  medewerkers/ p r o f ‑ d r   ‑ r e ‑t o b l e r . h t m l )

とバーゼル大学

( h   t t p s : /   / i u s .   u n i b a s . c h / l e h r e /  d o z i e r e n d e /  o e f  f  e n t l i c h e s ‑ r e c h t /  p r o f i l /  p e r s o n /  t o b l e r ‑ c h r i s t a / )  

のホームページを参照されたい。

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