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女 性 差 別 撤 廃 委 員 会
通報番号 2 3 / 2 0 0 9
保安処分により拘禁された女性が,女性職員の欠如 を含む拘禁施設の不備,職員によるセクシュアル . ノ、ラスメント等は,性にもとづ く差別に相当し,条 約に違反すると主張 した申立が受理 され,当事国に 対 して通報者‑の補償 と一般的措置の実施が勧告さ れた事例
通 報 者 ⅠngaAbramova
当 事 国 ベ ラル ーシ
通 報 目
2 0 0 9
年4
月3日 見 解 採 択 日2 0 1
1年7
月2 5
日 条 約 発 効 日1 9 8 1
年9
月3日事案の概要
1 通 報 者 は, ジ ャ ー ナ リス トで あ り "自 由 の た め に (For Freedom)" 運 動 の活 動 家 で もあ る, ベ ラル ー シ国籍 の女性 で あ る
。2 0 0 7
年
1
0月1 0
日, 同 月1 4
日 に 予 定 さ れ て い た ヨー ロ ッパ行進" へ の関心 を集 め るた めに, 通報者 が ブ レス ト市 内で青 い リボ ンを掲示 して い た ところ, リボ ンとポ ス ターの掲示 が軽微 な 違 法 行 為 (minor hooliganism)に当 た る と し て, ブ レス ト地方執 行委 員会 内務局 の警 官 に よ り逮捕 され, ブ レス ト市 レーニ ン地 区内務 部へ 連行 された。翌 日,通報者 は レーニ ン地 区 内務 部 の一 時拘 禁施 設 ("IVS施設") に収容 され,レーニ ン地 区裁 判 所 で保 安 処 分 (administra‑ tive sanction)と して5日間 の行 政 拘 禁 (ad‑
ministrative arrest)が言い 渡 され た。通報 者 は, 同 月
1 5
日に釈放 された。2 通報 者 はⅠVS施 設 で の拘 禁 につ い て,施 設 の職 員がすべ て男性 だ った こ と,部屋 は非 常 に寒 く暖房 が切 られてい た こ と,室 内 の トイ レ
は一 方 に50cm四方 の間仕 切 りが あ るだ けで, 室 内 のみ な らず, 男性職 員が ドアの除 き穴 か ら 見 るこ とがで きるの は, 品位 を傷 つ け る取 扱い で あ る こ と,室 内 は不 潔 で換 気 が悪 く,照 明 が 暗 くて もの を読 む こ とがで きない こ と,食事 は 1日2回 だ った こ とな どを訴 えてい る。 これ ら の影響 に よ り,通報 者 は背 中の痛 み,頭痛 ,発 熱 その他 の健 康被害 を拘禁 中お よび釈放後 に被 った。施設 到着 時 の身体検 査 で 男性職 員か ら不 適切 な接触 を受 け,裸 に してや る と脅 された。
拘禁 中には,職 員か ら侮 蔑 的 な言葉 を浴 びせ ら れ,名 前 で はな く番号 で呼 ばれた り,部屋 にネ ズ ミの死体 を投 げ入 れ られ るな どの嫌 が らせ を 受 けた。
3 通 報 者 が 国 内で利 用 しよ うと した救 済 措 置 は,以下 の通 りで あ る。 関係 当局 に対 して は, 拘 禁 中の権 利侵 害 に関 して
,2 0 0 7
年1 2
月 に レーニ ン地 区内務部 長 お よび ブ レス ト地 方執 行委 員会 内務局 長 に異議 を申立 て た ほか
,2 0 0 8
年2
月に同内務局長 に再度 申立 を提 出 した が, 申立 内容 が確認 で きない とい う通知 が あ った
。2 0 0 7
年
1 2
月 に ブ レス ト市 レーニ ン地 区検 察 部 に提 出 した 申立 につい て も,確認 ・立証 で きない と 通 知 を受 けた ほ か,2 0 0 8
年2
月 の 申立 につ い て は回答 を受取 ってい ない 。民事手続 におい て は,2 0 0 8
年2
月1
1日, ベ ラル ー シ民 事 手 続 法 353条 に基 づ き, レーニ ン地 区裁 判 所 に,非人 道 的 な処 遇 を禁 じた 自由権 規約7条 お よび性 に 基づ く差別 を禁 じた本条約 にお け る権利 の侵 害 につい て提 訴 したが, 同裁判所 は通報者 の訴 え に関す る管轄権 を持 た ない とい う理 由で却下 さ れ た。通報者 は, これ につい て3月7日に ブ レ ス ト地 方裁 判所 民事 司法委 員会 に苦情 を申 し立 てたが却下 された。行政手続 におい て も,2 0 0 8
年3月1
1日,収 容 施 設 職 員 に よる権 利 侵 害 に つい て, レーニ ン地 区裁判所 に行政上 の違法 行 為 (administrativeoffence)に関す る手続執 行108 女性差別撤廃委員会
法7条1項 に基づ く不服 申立 を提 出 したが,氏 事手 続 の開始 を拒 否 され た。4月28日, この 決定 について ブ レス ト地方裁判所 に上訴 した と ころ,同事案 は レーニ ン地 区裁判所 に差戻 され たが,地 区裁判所 は手続的不備 を理 由に これ を 却下 した。通報者 は, 同決定 に反論 してい る。
4 通報者 は,当事 国 に よ り,条約 1条 とと もに解 釈 した2条 (a),(b),(d), (e)
,( f )
お よび3条,5条 (a)の権利 が侵 害 され た と 主張 してい る。拘禁 中に非人道的で品位 を傷 つ ける取扱い を受 け,寒い部屋 に拘禁 された こ と は拷問に相当す る。 こ うした状況下での拘禁 は, 通報者 の リプロダクテ ィブ ・‑ル スを害す る。
内務 省 の
Ⅰ VS
施 設 は女性 の拘禁 に通 して お ら ず,1施設 を除 き男性職 員 しか配置 されてい な い こ とは,雇用 における女性差別 の結果 である。また,通報者が セ クシュアル ・ノ、ラスメ ン トや 男性職 員か ら品位 を傷つ ける取扱い を受 け,男 性収容者 よりも劣悪 な状況 に置かれた こ とは, 国連 の 「被拘禁者処遇最低基準規則 (最低基準 規 則)」 (経 済 社 会 理 事 会 決 議
6 6 3 C( ⅩⅩⅠ Ⅴ)
お よび
2 0 7 6( LXI I ) )
の 規 則5 3( 3 )
「女 性 被 拘禁者 は,女性職 員のみに よって対応 ・監督 さ れ るこ と」 に反 し, よって本条約 が定 め る性 による差別 を受 けない権利 を侵害す る。
5 これ に対 し,当事 国 は,以下 の よ うに反 論 した。通報者 が申立 を提 出 した こ とは事実だ が, それ らを扱 う手続 を定 めた法律 がないため 却 下 され た。 こ うした 申立 は
Ⅰ VS
施 設 長 らに よって対応 され るべ きであるが,通報者 はⅠ VS
施設管理者や内務省 に申立 を提 出 してい ないた め,国内手続 が尽 くされた とは言 えない。 また, 通報者 の主張 は確認す るこ とがで きず,根拠不 十分で ある。通報者 の申立 の形式 と内容 は,条 約規定 に沿 ってお らず,当申立 は不受理 とすべ
きである。
6 これ に対 し,通報者 は,複 数 の 申立 を内 務関係機 関に提 出 してお り, また,通報者 が収 容 されていた施設 に
2 0 0 2
年か ら2 0 0 9
年 まで女 性職 員がい なか った こ とは, レーニ ン地 区内務部長か らの書面2通 に よ り確認 されてい る と反 論 した。 さ らに, 自由権規約7条 お よび10条 1項 に関す る権利 が侵害 された具体 的 な事実 を 列挙 したほか,通報者 の申立が登録 された後, レーニ ン地 区
Ⅰ VS
施 設 に女 性警 察 官 が勤務 す るようにな った と述べた。受理可能性に関する検討
委 員会 は,通報者 は国内手続 を尽 くした と考 え られ るこ と,本通報 は他 の国際的手続 に よ り 検討 されてい ない こ と,通報者 の主張 は十分 に 立証 されてい る と考 えられ るこ とか ら,選択議 定 書2条,3条,4条 の要件 を満 た して お り, 受理可能 であ る と結論 した。
委員会の見解
1 当事 国 は,通報者 の主張 に対 して実質 的 な反論 を提供 してい ない。 同国の女性活動家 に 対す る拘禁 中の処遇 が,非人道的かつ品位 を傷 つ けるものであ るこ とは,委 員会 における報告 書審査 の総括所見 で も指摘 されていた。
2
条 約3
条,最 低 基 準 規 則 の規 則5 3
お よ び委 員会 の一般 的勧 告19に よ り,条約 1条 が 定義す る女性差別 には ジェンダーに基づ く暴力 が含 まれ る。拘禁施設 が女性特有 のニ ーズに対 応 してい ない こ とは,条約1条 に よる差別 を構 成 す る。条 約4条 と と も に,国 連 総 会 決 議 43/173「あ らゆ る形態 の拘禁 ・収監下 にあるす べ て の人 の保 護 のた めの原 則」 の原 則5 (2) において,女性受刑者 のニ ーズに対応す るこ と は差別 に当た らない とされてお り, ジェンダー に 配 慮 した ア プ ロ ー チ は,国 連 総 会 決 議 65/299「女性被拘禁者 の処遇 お よび女性犯罪者 の非拘 禁措 置 に関す る国連 規則 (バ ンコ ク規 則)」で も支持 されてい る。本事案 におい て拘 禁施設職 員がすべ て男性 だ った こ とは,最低基 準規則違反で ある。 この点 は,男女 の平等 な権 利 に関す る自由権規約委 員会一般 的意見28の パ ラグ ラフ15,女 性 に対 す る暴 力特別 報告者 に よる報告 (E/CN.4/2000/68/Add.3,para,神奈川 ロージャーナル 第5号
44)において も確認 されてい る。
3 女性被 拘禁者 の プ ライバ シー と尊厳 の尊 重 は,拘禁施設 におけ る優先事項 で あ り,通報 者 に対す る施設職 員の行動 はセ クシュアル ・‑
ラスメ ン トお よび条約 1条,5条 (a),一般 的 勧 告 19にお け る差別 を構成 す る。 よ って,香 員会 は,締 約 国 が条 約2条 お よび5条 (a)に
よる義務 を満 た してい ない と結論 す る。
4 以 上 に よ り,委 員会 は,当事 国 が条 約1 条 と ともに解 釈 す る2条 (a), (b), (d), (e),
(f),3条
,5
条 (a) お よび委 員会一般 的勧 告 19にお け る義 務 に反 してい る とい う見 解 を有 す る もので あ り,当事 国に対 して以下 を勧告する。
Ⅰ.通報者 につい て
通報者 の権利 の侵害 の重大 さに見 あ う適 切 な 賠 償 (compensation)を含 む 適 切 な補償 (reparation)を提供 す るこ と。
Ⅱ.一般
(a)すべ て の拘禁施設 において,女性被拘禁 者 の尊厳 とプライバ シー,身体 的 お よび 精神 的安全 の保護 を確保す るための措置
を とるこ と。
(b)女性被拘禁者 に対 して, ジ ェ ンダーに配 慮 した保健 ケア‑ の アクセスを確保 す る
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こ と。
(C)差別 的,残虐 的,非人道 的 また は品位 を 傷 つ け る処遇 につい て調査 し,加害者 を 訴追 し,適切 に処罰 す るこ と。
(d)女性被拘禁者 をジ ェ ンダ ーに基づ く虐待 を含 む あ らゆ る形 態 の虐待 か ら保護 す る た めの防止策 を講 じ,女性被拘禁者 の身 体検査 お よび監督 は,適切 な訓練 を受 け た女性職 員が行 うこ と。
(e)女性被拘禁者 に関す る職務 に就 く職 員が, 女性被拘禁者特有 のニ ーズお よび人権 に ついて,条約 お よびバ ンコク規則 に則 っ た研修 を受 け る よ う確保 す るこ と。
(f) 女性被拘禁者 の尊厳 と基本 的人権 に関す るニ ーズ を確保 す るた めの政策 お よび包 括 的 プ ログ ラムを策定 す るこ と。
当事 国 は,本見解 お よび勧告 に適正 な注意 を払 い,6ヶ月以 内に本 見解 お よび勧告 に関 して と
られた措 置 に関す る情報 を含 む回答 を書面 で提 出す るこ と。 また,本見解 お よび勧告 を公表 , 翻訳 し,広 く配布 す るこ と。
(担 当 :近江美保) (本学非常勤講 師)