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琉球語二段系動詞「起きる」の活用

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(1)

琉球語二段系動詞「起きる」の活用

著者 中本 正智

出版者 法政大学沖縄文化研究所

雑誌名 琉球の方言

巻 13

ページ 106‑130

発行年 1988‑11‑30

URL http://doi.org/10.15002/00012645

(2)

琉球語二段系動詞「起きる」の活用

中本正智

動詞の二段系活用の変遷

二段系活用の動詞「起きる」は、現代日本語で次のように活用している。

未然形連用形終止形連体形已然形命令形

o-kio-kio-kiruo-kiruo-kireo-kiro

第二音節のkiをみれば、イ段だけに活用しているから現代日本語において一段活用に属 するとみてよい。ところが、この活用形をさかのぼると、時代によって変化してきたことが わかる。室町時代においては、

未然形連用形終止形連体形已然形命令形 o-kio-kio-kuruokuruo-kureo-kijo

であり、第二音節をみると、kiとku、つまりイ段とウ段の二段に活用している。これは室 町時代に二段活用であったのが、kuがkiに侵されてなくなった結果である。平安時代にお いては、

未然形連用形終止形連体形已然形命令形 o-kio-kio-kuo-kuruo-kureo-kijo

であり、二段活用であった。室町時代と異なる点は、終止形のo-kuが保たれていることで ある。これは室町時代以降、連体形のo-kuruが終止形のはたらきをになうことによって消 滅した形である。

奈良時代の甲類と乙類の音韻の区別を反映している形をあげると、

未然形連用形終止形連体形已然形命令形

おき乙 おき乙 おくおくるおくれおき乙よ乙

である。-段活用の「き甲」(着)と対立する音韻であった。これについて、大野晋博士は

「万葉時代の音韻」『万葉集大成」(平凡社)において、次のように推定しておられる。

未然形連用形終止形連体形已然形命令形

OkIOkIOku Okure Okure OkI-j6 Ok6-iOk6-iOkr-uOkO-uruOkO-uraiOkI-j6

これに対し、馬淵和夫博士は、『上代のことば」(至文堂)において、批判を加えつつ、次 のように推定しておられる。

未然形連用形終止形連体形已然形命令形

6k6→OklOk6-iOkuOku-ruOku-re OkI-jO

-106-

(3)

「起きない」

否定形 分布語

e?uCirjam

ew1:raXm

⑤?uiramu

、?uiram

⑤2u:ram

①?uYran

②のuIran

③①uran

④?uxran

与路島

オキー語 皿ukinu 回ukin

回ukidja:ran

田ukid5axn 回ukiman 目のukunun 日①ukunu 目Zukunu 国ukun

国2u9unu

①u:nu

hukudjazn

合ukudjan 色ukud3an

鶴…

薇沖永良鵬

…泌聡与論局

久米崎錨

塵良間諸島

;卿'

⑤?wIzran

⑥w1xran

⑦?uiran

⑧?uirannu

⑨xezran

unnuu

系・唖、、函・血 梓川呵棚棚仙

△△△△△

32。

⑩2uijan

⑪7uCijan 31。

他聞島

雪ii堤i鑪鉾

3『

薑譲!=蟇

奄美諸島 29P28。

垣島多良間島暫軍 2726P

両表島EL4L

鑑働く垂|堂二丁i雪!i;属i将電。 与鑑山liiiw`。

24。25゜

121.122.123.124.125.126゜127.128.129.l30Pl31。l32F

-107-

(4)

「起きよう」

識攝

豆ノミR夕⑪

o::::、:

Ⅲ川如》岬緬》加川伽

②、⑤ee③①②③

、鰯計覺堯

オキー系 目ukjo:

日ukju:

目ukju mukoz 囚uko 回のukoZ 囚uku 回①uku

回2u9oZ

曲ukimX 自ukix 色uki

与路

珍徳鯛

。(識・沖永良部島 秤弧駐与論。

久米鰯織

塵良間諸島

オキラー系

△のukiraX

△2ukiraX

△2ukira

△2ukaX

△2ugiru2 e2uCYrjoX e2uIrm

④?u:ra

③2uira

⑥①uira

⑦?wIxra

⑧のuija

⑨2u9ija 32F

31. 池間島 ■千局

28F30F29P

壽署:】iii、1.,HFi琴(

垣島多良間島

与鑑山;iiiy石鐵.

272525

支照間島ごEロ新城& 121.122.123.124.125゜126゜127.128.129゜130P131゜132.24゜

-108-

(5)

●●●●●●●●●●●●●c■●●●●。●●●B●c■●。●●●●●●●●●●■●●●■●⑪●●●●●●●C●●■●●■■●●●●●●●Ce●●●●●●■●CO●●●●●●●●●●●●●CO●●●●●●DC●●●●CQ●●●●●●●Co0DD●●●●●●●00●●●●●●●●●●●■■●●●●●●●ロ●●●●■●●●G●●●●●●$●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

「起き」

連用形 分布語

⑩①uri

⑪①ui:

⑫?u9i:

オキ系

皿(2)uki

回のuki 回2u9i

▲2ucl

▲?uI A?ui

▼の、

▽①ui

vxeX vw1X

オキリ系

①?ukiri

②(2)uki:

③①ukiri

④?uIri

③?uli

⑥2M:ri

⑦2uXri

⑧2ur

⑨①ulri

与路

n円

霧…

&(ヅ沖永良部&

…沼鰹…

●。

尹是窒飢29

劇霊狩R:

脈團

久米鬮凋

里間味勘 ン宮城且

;露Uij

渡嘉敬凰

塵良間諸島

32.31.

池間島

3『

三擬jih二:,

29F28.

Ⅲ卯 奄美諸島

垣島多良間島 121.122P123゜124.125。126゜127.l28Pl29Pl30P131.13㎡

与綴山節電。

1.1 27.26.2524.

-109-

(6)

「起きれば」

条件形「起i 分布語 皿?ukiriba 回ukiriba 回ukirfba 囚ukilba 回ukizziba

回ukilba

m(?)ukiXba 回(?ukiba 回dDukiriba 回ukiruba

m2u9iriba 回2u9iruba m2uCIrba 回2uIrIba 回M:riba 四①ulrlba 回2urrba

回2uiriba 団xeZbba

⑩①uimba

②ZuCiXba

■?uiribox 日?ukiroX 日?ukiruwa 目2ukiriwa 国?ukiwa O2ukirax e?ukirja

④(2)ukirja:

④?uirjax

与路島

徳之島

.(S豪つ沖永良部島

坪斑坐

●。 与論島

渡名喜島

守團

久米鬮翻

座間味局‘①

:@石Ui′

渡嘉敷局

塵良間諸島

⑨ のukirja:

⑤①uirja

⑦?u9irja

①2ukireZ

△2ultIka

△2uItika

△2uXtIka A2wIxtika

▲ukidi9ara

△?ukiruka

△2ukika

32。

31.

池間島

雫i麓iii里襲

29P3『

28。

c⑮竹富島垣島多良間局 27。

旧聞局 26.

鶉ii蕊壼

121゜122P123゜124゜125.126.127.128.129Pl30fl3l.132.

學綴山lii》wd。

25.20.

-110-

(7)

、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。●●●●●●●●●●●●●●□●●●●●●●●●●0●●●●●。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●p0C●●●。●●COCO●●●●●●●●●●●●●■缶●●●●●●●●●●●CCC●●●●●●●●●。■●●●●●●●●●。●●●■■●●●●●●●●●●●●●●●●c●●●●●●●●

命令形「起きよ」

分布語

■ukiro 日ukiru

O2ukIrl e?ukiri(:)

③①ukiri

④?u9iri

⑤2ukireZ

⑥?ukiroZ

⑩?uki

①2uCIrl

②?uCiri

③?uIrl

④のuIrl

⑤①uiri

⑥2uiri

⑦(?)wM(:)

⑧wlTi

⑨2u:rl

⑩2uIre

⑪Xe:rr

▲①uimba

与路島

同録瀞滞》.

c芭蒙・沖永良部島

秤圖泌命与論。

昼蕊圏

渡名喜島。②

久米島 座間味島

Hq15Ib

渡嘉敷島

塵良間諸島

32゜

31。

種子局 他聞島

3『

;ii璽二=蔚圓

トカラ列島 29F28.

到緋

、黒

多良間島 27

垣島 鰹間島

西表島O① 26P

<菱、

<里卜那国鳥 25。

与綴山辮傘

支照間島野新嘘風 121.122.123゜124.125゜126.127.128゜129.130.131.132.24.

-111-

(8)

連体形 分布語

「起きる」

オキン系 Qb2ukin

`b2uln オキリヲン系 オキ系

⑪?uki

画?u9i

a①uku

与路島

徳之島

①2u9Irjun

④①ux ②2ulrjun

③①uIrun

④?ulrun

⑤2uxrun

貧霊夢P沖永良部島 秤秘協…

●。

オキリ系

▲ukirr

▲ukil AukiI

△ukiX AのukiX

オキ(ヲ)ル系

Ⅱ2ukijuru 回?ukizru 回2ukiru

田2u9iru

回のuiru 回①ukiru m?uijuru 回2wfxruru

回?uCi:ru

是名卿恥

餌忌錬i亘邑圖零

a粟国

久米鬮鍋。阿雲

渡名喜島

駅職:轍、

渡嘉敷島

⑥wrjun

⑦2uljun

⑧?uXjun

⑨xe:jun オキ(リヲ)ヌ系

①2ukiZnu

g邑ノー'1中緯

?;桑FlP蓬蕊

悪 徽歩扉

③?uijunu

⑨のukirunu オキリヲリ系

◆のuijui

32゜

他聞島

2ukinu

2uinu 31。

3「

fii蕊iii:

29F28.

為ど;1重二J〕i竺欝 醗島無

多良間島 垣島

27

26.

25.

驍総山勘電。

史照間島璽画新鯛醗 121。122.123。124.125。126。127。128゜129.130゜131.132.24。

-112-

(9)

終止形「起きる」(1)系省略)

ミド鍬

分布語

hn.』u・junu

unmn

①・郎伽呵町山川”、 恥町和地①の和靹

①④①②③④⑤⑥

オキム系 皿ukim 囚2ukin

回uki

田2ukun 回①ukun m2uimu 回2mn 回のuln 四のum

オキリヲム系

⑪2ukirun e①ukirun

。?u9irun

⑥ukilm

⑨ukil

oukirI eukiIm

eukiI

④2ukijun

②2ukizn

③2ukiX

]in・畠田 与路

蟇…

霞沖永良鵬

…潟鼬与論。

●。

縣匡

久米鬮鼠

里間明E駒

:鐵’

漉巫敬凰

塵良間諸島

⑦?u:rum

⑧?u:run

⑨のurun

⑩①uirun

⑪wi:run

⑫?uCirun

n.川mmn

叫珈加川川加仙・川叩蜥町加加・川 ww和如如和町随①町和如酎m

ee②、⑤e④③⑪△△△△△

池間局

…絡塁

墓看騨.

垣島多良間島 121.122.123。124.125.126.

學銭山琶v石嵐。

..L宮古島宮古諸島(

-113-

(10)

接続形 分布語

「起きて」

tie系

孫”川》》剛伽仙川棚MMM川川棚伽Ⅲ伽伽沖

韓1・1.1

オ皿図回国回田回回四回回団回回四回図画のオ

eのukiJiti

③?ukiJita

④?uke:tte

⑨?u9aJita

⑥ukitti

⑦ukidu オキ系

与路島

徳之島

聯沖…

`W鼬与論。

▲ukiZ

瀞屡

久米鰯翁

塵良間諸島

32P

①?ukiJiti 31。

池間島

3『

尹良部M亟旦

晉団i鱈L三

28。29P

、黒

罫嵌欝 ②

多良間勵 垣島

27.

噛間、b

西表島回 26F

義;二iiii:F≧I:

121゜122゜123.124.125.126.127.128.129.130゜131.1329

驫鑑山齢傘|難

25。24.

-114-

(11)

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●CCC●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●CBC●●O■●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●■●●●●●●O●●●●□●●●●●●CD■●●00●●●●●●●●●●●●■●●●●●●CO●●●●●●●●●●■●●●●●●●●□●●G●C●●●の●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●■●●●●●●

過去形「起きた」

分布語

オキアリ系

▲のukehen

A2ukjan

▲?ugjan

△2u9an

オキタリ系

①(2)ukita eukita:

④(2)ukuta

⑧ukitarI

⑨ukitaI

⑥ukidu

⑦2ukida

④ukidaX

与路島

徳 之

〔剛』Ⅷ銅w画

靜鑑

沖永良部島

ukitam

皿囚回国□回回四回回□回回囮Ⅱ画

(?)ukhtan (2)ukitan

①ukitan

?uCItan 2uCitan

?ultan のultan

①uitan

?uZtan wf:tan

2wIXtan

?uitamu

?uitam 2uitan

xe:tan

評粥鋤

与論島

囿粟鬮

渡名罫島6回

久米凰劇

座間味島

X6iROD

渡嘉敷島

塵良間諸島

①?u:ta オキシタ系 e2ukiJita eのukiJita e2ukeZtta

②2uketa 32゜

eのuitta

310

他聞島

3『

雷:鞠il;ユ

29P

門陶、肛 夛鋼。

28.

西表島蝋慾

鶉凰さi書二7〕=:;iije…

多良間島 27.

垣島 26.

25。

驍纏山選iwj。

R照間島』新城園 121.122゜123゜120.125.126゜127.128゜129.130.131.132. ̄I 24。

-115-

(12)

禁止形「起きるな」

分布語 オキンナ系

▼?uki:nna

▼(?)ukinna

v①ukinna V72u9inna

▽2uCinna

▽2uInna

▽wlmna

▼2uinna オキルナ系

Ⅱ(2)ukiruna p?ukirina 回①ukiruna

国2ugiruna

目ukilna m2u9Irna 回2uiruna 回のuIruna

四のuiruna

回?ulrIna 回?wfXrina

団ZuIjuna

⑧2u:juna 回2ukiIna 囮(?)ukima オキナ系

▲(?)ukina

▲2ukuna Aのukuna

△①uxna

与路局 鯛島

鶏徳鯛

沖永良部局

…湾為与論。

●②

紗国優

久米勵鋤

里間味蜀出■

x鞠岡

渡嘉敷島’

塵良間諸島

▽?unna w①uinna

▽xenna

32.

31。 段千局

他聞島 3D

i蕊

vZp 29F28.

多良間島 27

垣島 26.

:壽馨i:iii'箸i薯

121.122.123.124.125.126゜1270128.129.130.131.132.

尋総山勘壷。

25.24.

-116-

(13)

OkiOkureOklj6

では、琉球列島における二段活用の「起きる」はどのような形で用いられているだろうか。

北の奄美諸島から南下して考察することにする。

奄美諸島

1佐仁(i)否定形意志形連用形条件形命令形

?ufran2ulro 2m 2ufrIba ?uIrl Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

2m、 2m、 ?uItI ?ultan ?ultun 2uIri

(iii)禁止形 2ulnna

佐仁におけるIは、エ段に対応する音韻であるから、否定形、意志形、連用形、命令形に おける?uIの第二音節は、keに対応する形である。「起き」の「キ」は、乙類の音韻である から、乙類の「キ」がkeに対応する音韻に合流している。佐仁では甲類の「着」はk?iで あるから、キの甲類と乙類がk?iとkI(→I)で区別されている。kはh音化して脱落して いるが、広母音音節で起こっている現象である。

否定形のMranは、オケラヌに対応するから、ラ行音化した形である。それは意志形の Mroにも及んでいて、オケラムに対応する形である。?okeramu→2uxIrau→?uIrozのように 変化した。

条件形の?ulrIbaは、オケレバに対応していて、本来のオクレバにつながらない。

命令形の2uIrIは、オケレに対応する。活用語尾のヨにつながらない。

終止形は二形あって、?u1mが、連用形のオケにヲム(居ム)がついた形であり、2urriが 連用形のオケにヲリ(居り)がついた形である。ム系とり系が併用されている。二形ある時 は、終止形で併記し、過去形や継続形で現れる時には、いずれかで代表させる。

連体形の2uInは、オケヌに対応する形であり、本来のオクルにつながらない。つまり本 来の終止形オクや連体形オクルにつながる形が存在しないことになる。奄美大島の中心地の 名瀬では、次のようである。

2名瀬(i)否定形意志形連用形条件形命令形 のuIran①uIro ①uY のuIrlbaのuIrl Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

①ulrjun①ufrjunのultl のuItan ①ultun のulrjuri

(iii)禁止形

-117-

(14)

①ulruna

名瀬の①ulは、2okI-つ?oxl→①ulのように、第二音節子音の摩擦音が第一音節に及んだも のと判断される。終止形の①uIrjunは、連用形がラ行音化したオケリにヲム(居)がついた 形である。さきの佐仁の?mは、オケにヲム(居)がついた形でラ行音化が浸透していな

い。

瀬戸内の西端にある屋鈍は、

3屋鈍(i)否定形意志形連用形条件形命令形

?uxram2uxrox mr 2urIba 2uXrl Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

?uzrum2uxrun 2uxtl 2uxta ?uxtur 2uxrur

(iii)禁止形 2unna

のようである。否定形と意志形はともにラ行音化している。否定形語尾の-mは、否定の助 動詞に付属してこれを形成するヲム(居)の末尾が保持されたものと考えられる。

4伊仙(i)否定形意志形連用形条件形命令形

2uIran?uIra 2ulri?ultika2ulrI

Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

?ulrjun2uIrjun ?ulti?ultan?ultun 2uIrjuri

(iii)禁止形 2uIruna

伊仙は徳之島の南部にある集落である。徳之島は全体として奄美大島に近い言語特徴を有 する。否定形、意志形のみならず、連用形にまでラ行音化が侵透している。意志形の2uIra は奄美大島の?uIroなどと語尾を異にしているが、語尾の変化が次のように異なっているた めである。

okeramu-+2uxIraU→?ulroZ→?uIro(奄美大島)

okeramu→2uxIraU→?ulraX→Mra(伊仙)

条件形の2uftikaは、オケテカラに対応する形である。条件を表すのに、助詞(をつかう より、テカラをつかう。

5亀津(i)否定形意志形連用形条件形命令形 2ulran2uIra 2ul 2uItika ?ulrr

Oi)終止形連体形接続形過去形継続形 2uIrun2uIrun ?ulti2uIta?uItun

-118-

(15)

?uIrui 禁止形

?uIrfna

亀津は徳之島の南東部に位置する。連用形の2mはう行音化が現れていないが、終止形 2ulrunをみると、これを構成している連用形は?ulriのようにラ行音化したものと判断され る。したがって、連用形もかつてラ行音化し、後に消えたものとみてよい。終止形の2ul runは、2urrjunから変化したものである。一方の2uIruiはオケリヲリに対応する形であり、

オケリの語尾のr音は保たれているのに、ヲリの語尾のr音は脱落している。このことから、

終止形オケリヲリを構成した当時はr音脱落が起こっていなかったのに、構成されて以後に r音脱落が起こったことを示している。

条件形は連用形にテカラがついたオケテカラに対応する。テカラによって条件を表すのは 伊仙と同様であり、徳之島全域で優勢である。

6天城(i)否定形意志形連用形条件形命令形

?ulran2ulrax 2uIri2urtlka2uM Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

?uIjunMjun ?ulti2ultangultun

?uIjui

(iii)禁止形 2uljuna

天城は徳之島の西海岸に面した集落である。終止形語尾をみると、2uIjunのようにr音が なく、junになっている点に特色がある。r音脱落が進んでいるためである。リ系の終止形 も2uljuiであり、奄美大島の-rjuriと比較するとr音脱落が顕しい。

7辺土野(i)否定形意志形連用形条件形命令形

?uxran?uxra 2uxriZuxtIka?uxrI Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

2uxjun?uxjun ?uxti2uxtan?uxtun

?uxjui

(iii)禁止形 2uxjuna

辺土野は徳之島の西海岸に面した天城町の集落である。オケ(起)に対応する?mにおい て、中舌母音が前の音節に吸収されて、?u:のように長音要素に変化している。終止形が

?uzjunのように、r音を脱落している。

8志戸桶(i)否定形意志形連用形条件形命令形

wlxranwlxroxwlxwlXribawlxri

-119-

(16)

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形 wlxjunMxjunwlxtiwlXtanwIxtun wlXjui

(iii)禁止形

w1znna

志戸桶は喜界島の北部にある集落である。オケ(起)に対応するwlXは、oke→wukl-+

wuxf-+wuI→wI:のように変化した形である。意志形wIxro:の語尾は奄美大島と同じすがた である。終止形はwIxjunとwfXjuiの両形があり、いずれもr音脱落がみられる。

9田皆(i)否定形意志形連用形条件形命令形 2uiramu?uira 2ui?uirjaX2uiri

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形 2uimu?uinu ?uiti2uitamu?uitun

(iii)禁止形 2uinna

田皆は沖永良部島の西北端に位置する集落である。奄美地域のうち、沖縄の影響が強く及 ぶ島である。終止形の二形のうち、ム系が優勢となって、リ系は用いられなくなっている。

中舌母音は東部の国頭や畦布などにわずかに残っているだけであり、多くの集落ですでにこ れを消失している。したがって活用形の中にも中舌母音は現れない。

否定形と意志形はう行音化している。オケ(起)に対応する形は2uiであり、oke→2uxl

→?u1-つ2uiの変化を経ている。語中におけるk音脱落など、奄美地域の特徴をになった形で ある。否定形の語尾muは、否定の助動詞「ぬ」の連用形「に」にム系の「ヲム」がつい た形から、語尾muだけが残ったものである。これは与那国方言の否定の助動詞nunをみ てもいえることである。意志形は?uiraであり、徳之島と同様にmuが脱落している。条件 形は、?uirjaxであり、助詞(に対応するjaが活用形と融合している。終止形の2uimuは、

オケヲムに対応し、ラ行音化していない連用形によって構成されている。連体形は2uinuで あり、語尾、uが沖永良部島でさかんに用いられる。

10上城(i)否定形意志形連用形条件形命令形

?uiram?uira ?ui?uirjaX?uiri Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

2uijum?uijunu 2uiti2uitan?uitun

(iii)禁止形

?uinna

かみじろ上城は沖永良部島の北海岸に面するところにある。否定形の語尾-mと、終止形の語尾-m とは、いずれもヲム(居)の融合形語尾であるが、田皆の、uより新しい形である。終止

-120-

(17)

形の2uijumは、オケリヲムに対応し、ラ行音化した連用形で構成されている。ただし、r 音を脱落させている。

11王城(i)否定形意志形連用形条件形命令形

?uiran2uira 2ui2uirjax2uiri Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

?uijun2uijunu 2uiti?uitan2uitun

(iii)禁止形

?uinna

たまじる玉城は>中永良部島の東部の町である和泊町の集落である。否定形の語尾と終止形の語尾が ともに-,となっている。これは-,nu→、→、のように変化したとみてよい。

12立長(i)否定形意志形連用形条件形命令形 2uirannu2uiran ?ui?uiribox?uiri

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形

?uijun?uijuru ?uiti?uitan?uitun 2uijui

(iii)禁止形 2uinna

立長は与論島の集落である。オケ(起)に対応するところが2mとなっているのは沖永良 部島と同じである。与論島でも、oke→2uxI→2uI→2uiの変化を経たのである。中舌母音は まったくみられない。意志形の?uiranは、語尾に助動詞のmu→、→、の変化を経ながらも、

かろうじて残している点に特色がある。終止形は、リ系とム系を併用している。与論島は両 系併用の南限である。連体形語尾は.ruである。与論島の茶花や麦屋においても、ほぼ同じ 形である。

沖縄諸島

13首里(i)否定形意志形連用形条件形命令形 2ukiran?ukira ?ukix 2ukirex 2ukiri Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

2ukijun?ukijunu2ukiti2ukitan 2ukitoxn

(iii)禁止形

?ukiruna

沖縄中南部の代表的な方言である首里をみることにしよう。2uki(起き)は、

している。「着る」がtJijunであるから、上代語の甲類と乙類に対応する区別が、

保たれている。第二音節のk音が脱落しないのが特徴である。終止形の2ukijun

オケに対応 tJiとkiで は、オケリ

-121-

(18)

ヲムに対応する形であるから、ラ行音化した連用形から構成されている。連用形の2ukixは ラ行音化したオケリの語尾音節のr音が脱落したと考えられる。ラ行音化は他の活用形にも 侵透している。

玉城村奥武をはじめ、多くの中南部の方言がほぼ首里と同じである。

14石川(i)否定形意志形連用形条件形命令形 2ukiran?ukira ?ukix 2ukiraz ?ukiri Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

2ukiZn2ukiXnu ?ukiti2ukitan ?ukinna

(iii)禁止形 2ukinna

石川は中南部に属し、北部と接しているところである。条件形の2ukira:は、未然形に(

がついた形が現れている

15津堅島(i)否定形意志形連用形条件形命令形

2ukiran?ukira ?ukix ?ukiriba2ukiri

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形 2ukixn2ukixru ?ukiti2ukitan 2ukitun

(iii)禁止形 2ukinna

沖縄本島の東海岸側に浮かぶ津堅島では、条件形が2ukiribaであり、助詞baが保たれて いる点、首里より古い。継続形が2ukitunであり、首里の2ukitoxnと異なる。

16渡名喜(i)否定形意志形連用形条件形命令形

2ukiran2ukira 2uki和kirez 2ukiri

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形

?ukix、?ukiXru mkiti2ukitan 2ukitun

(iii)禁止形

?ukinna

渡名喜島は西海岸に浮かぶ島であり、基本的には首里と同じである。継続形が2ukitunで あり、首里の?ukitomと異なる。

17真喜屋(i)否定形意志形連用形条件形命令形

?ukiran?ukira ?ukiri ?ukiriba2ukirex

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形 2ukirun2ukirunu?ukiti?ukitan 2ukitun

(iii)禁止形 2ukinna

-122-

(19)

真喜屋は屋我地湾に面し、奥武島への入口のところにある。終止形は?ukirunであり、ラ 行音化した連用形のオケリに、ヲム(居)がついて構成されている。ラ行音化は他の活用形

にも侵透している。条件形に助詞baをとどめている。

18与那嶺(i)否定形意志形連用形条件形命令形

①ukiranuのukirax①ukiri ①ukiribaのukiri

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形

①ukirun①ukirunuのukiti ①ukitanのukitun

(iii)禁止形 のukiruna

与那嶺は本部半島の今帰仁村にある。第一音節が①uであるところに特徴がある。語頭の 母音音節の前に、喉頭や両唇の摩擦音が現れるのがこの方言の特徴である。他の形はほぼ真 喜屋と同じである。

19名護(i)否定形意志形連用形条件形命令形 2ukiran2ukira 2uki 2ukirez 2ukiri Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

2ukin 2ukinu Zukiti?ukitan 2ukitun

(iii)禁止形 2ukinna

名護は沖縄北部の中心都市である。終止形は?ukinであり、オケヲムに対応している。連 用形にはう行音の影響が現れていない。真喜屋の2ukirunなどと異なるところである。

2O恩納(i)否定形意志形連用形条件形命令形 2ukiran2ukira 2uki2ukiruwa2ukiri

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形

?ukin2ukinu 2ukiti?ukitan 2ukitun

(iii)禁止形 2ukinna

恩納は北部の南端、中南部に接する位置にある。終止形が?ukinであり、ラ行音化の形が 現れていない。

沖縄全域でみられるように、否定形の2ukiranまたはPukiranuにおける‐ra、意志形 2ukiraにおける-ra、命令形?ukiriにおける‐riは、いずれもう行音化による音節である。

奄美と沖縄にラ行音化が侵透しているといってよい。

宮古諸島

21平良(i)否定形意志形連用形条件形命令形

-123-

(20)

ukinukiukiukirjaukiru ukid5amukidiukiruba

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形

ukiIukiIukittiukittalukiduul ukiIm

(iii)禁止形

ukilna

平良は宮古島の中`し、都市である。宮古平良では「着物」はkslnであり、甲類のキはkslで 現れる。「起き」はukiであり、乙類のキはkiで現れる。つまり、甲類と乙類の音節がksY とkiで区別されている。「煙」をkivsfといっているから、乙類のキはケと合流しているこ とになる。否定形のukinはオケヌに対応し、?ukid3aXnは、意志形の?ukidiに否定を表すア ラヌがついた形である。

命令形のukiruは、オケロに対応している。語尾のロが現れるのは宮古諸島に限られてい る。この語尾は奈良時代の東国語に現れているから、相当に古い形とみてよい。

終止形は、?ukilと?ukilmの両形がある。2ukiImは、オケヲムに対応し、語尾mが脱落 して?ukirができた。

従来、宮古方言の終止形についていろいろ説かれてきた。「書く」の連用形がkaklであり、

終止形がkakIとkakimで現れるところから、連用形kakIと終止形kakIが同形と説かれて きた。ところが「起きる」をみると、連用形がukiであり、終止形がukiIとukiImであり、

連用形ukiと終止形ukiiは別語形であることがわかる。終止形のukirは、オケヲムの語尾 ムを脱落させた形と判断される。したがって、「書く」の終止形kakIも同様にカキヲムの語 尾ムを脱落させた形に相当するとみなければならない。この観点から、宮古と八重山の動詞 終止形の成立を見直す必要がある。

22大浦(i)否定形意志形連用形条件形命令形 ukinukjoxukiukilbaukiru Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

ukirukirukittiukitaukiM

(iii)禁止形 ukiYna

大浦は宮古島北部の集落である。意志形はukjoxであり、オケヨウにズオ応する。平良の ukiと異なる形である。

23友利(i)否定形意志形連用形条件形命令形 ukud5anukoXukiukirubaukiru Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

-124-

(21)

ukita

uki uki ukitti ukixuf

ukim

(iii)禁止形 ukina

友利は宮古島南部の集落である。否定形がukud5anであり、第二音節の母音は第一音節 の母音に類推されたとみられる。意志形がukoXであり、その第二音節が後母音音節である のも、この類推に有利にはたらいているであろう。終止形はukiとukimであり、ukiIや ukimの中舌母音音節が脱落している。

24来間島(i)否定形意志形連用形条件形命令形 ukudjaxnukudiukuukirubaukiru Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

ukilukiIukittiukitamukidm ukilm

(iii)禁止形

ukinna

来間島は宮古島の南端につらなっている島である。否定形と意志形がuku-となっている。

25池間島(i)否定形意志形連用形条件形命令形

ukinukidiukiukiribaukiru ukid5axn

Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

ukizukixukixukitaiukiui

(iii)禁止形

ukixna

宮古島の北端に浮かぶ池間島は中舌母音が弱化している方言が話されている。終止形の ukixは、ukiIが変化したものである。

26大神島(i)否定形意志形連用形条件形命令形

ukiukiukiukirIbaukiru ukitexnukiti

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形

ukiIukiIukituukituuki:ul

(iii)禁止形

ukiIna

大神島は宮古島の東北端に位置する。、島である。語中子音の無声化現象がはげしい。否定 形のukitemはukidemにおける。音の無声化によるものである。同様に意志形のukitiは、

ukidiに対応する形である。

-125-

(22)

27伊良部(i)否定形意志形連用形条件形命令形

ukinukuukiukiribaukiru

Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

ukilukifukixukitamukixuI

(iiO禁止形

ukilna

伊良部は伊良部島の東端に位置する集落である。否定形がukinで、意志形がukuのよう に、第二音節がイ段とウ段に分化している。

28長浜(i)否定形意志形連用形条件形命令形

ukinukidiukiukibaukiru ukjuxukiriba

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形

ukilukilukixukitamukixuI ukilm

(iii)禁止形

ukilna

長浜は伊良部島の北部の集落である。この方言では「リ」に対応する音節がl音で現れる。

29多良間島(i)否定形意志形連用形条件形命令形

ukimanukinxukiukilbaukiru ukin

Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

ukilukilukixukitalukixul

(iii)禁止形

ukilna

多良間島は宮古島と石垣島の中間に位置するが、言語の基盤は宮古と共通する。否定形の ukimanは敬語であり、ukinは普通の表現である。意志形のukinxは、オケムの助動詞の部 分を残した形である。

30水納島(i)否定形意志形連用形条件形命令形

ukimanukinxukiukixbaukiru ukin

Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

ukirunukizukittiukitanukixui

(iiO禁止形

ukixna

-126-

(23)

水納島は多良間島に近いところにあり、方言も類似している。ただ、中舌母音が弱化して いるのがめだつ。終止形のukirunは、中舌母音の弱化によって、ukirmから変化したもの である。

宮古諸島の方言をみていえることは、ラ行音化が及んでいないということである。これは 奄美や沖縄に比べ大きな特徴である。宮古諸島の方言は奄美や沖縄より古い。

否定形について、uki-が宮古本島北部と周辺の島々に分布しているに対し、uku-は、宮 古本島の南東部に多い。uki-が本来の形に近く、uku-が新しい発生であることはいうまで

もない。

命令形のukiruは宮古全域に分布している。他の琉球列島ではこのような形がなく、すべ て2ukiriのような形である。

八重山諸島

31石垣 (i)否定形意志形連用形条件形命令形 2ukunu?uku mki ?ukirjax 2ukiri

(ii)終止形連体形 接続形過去形継続形

?ukin 2uki 2ukeztte mkextta ?ukin 2ukirun

(iii)禁止形

?ukina

石垣は八重山地域の主島である石垣島の中心都市である。終止形は、?ukinと2ukirunの 両形をもつ。前者はオケヲムに対応し、後者はオケリヲムに対応する。ラ行音化が侵透しつ つあることを示している。ただし、否定形と意志形にはう行音化がまだ及んでいない。

32川平 (i)否定形意志形連用形条件形命令形

①ukunu①ukox のuki ①ukirjazのukiri

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形

①ukirunのukix のukiJiti①ukiJitaのukiun

(iii)禁止形

①ukinna

川平は石垣島の北海岸に面した集落である。語頭の母音音節には両唇ないし喉頭摩擦音を ともなう現象がある。

33竹富島(i)否定形意志形連用形条件形命令形

①uxnu①uira のui ①uirja のuiri

(ii)終止形連体形 接続形過去形継続形

のuzn ①ux のuiti ①uitta ①uidura

-127-

(24)

①uirunのuiru

(iiO禁止形 のuxna

①uiruna

竹富島は石垣島に近い位置にあるが、言語は多くの特徴をもっている。語中のk音がh音 化して脱落する現象があるが、「起きる」の活用形にもこれが反映している。これは、奄美 諸島に起こったk音脱落と同類のものである。

34黒島(i)否定形意志形連用形条件形命令形

①ukunun①uku のuki のukiribaのukiri のukiri

Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

①ukun①uku のukiti のukehenのukibe:ru のukirunのukiru

(iii)禁止形

①ukuna

黒島でも川平と同じく、語頭の母音音節に摩擦音をともなっている。終止形は、オケヲム 系とオケリヲム系が併用されている。連体形もこれと平行している。

35小浜島(i)否定形意志形連用形条件形命令形

?ukunu2ukira ?uki 2ukiwa 2ukiri

?ukiranu ?ukiriwa

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形

2ukun2ukiru 2ukiJiti?ukiJita?ukin mkirun

(iii)禁止形 2ukuna 2ukiruna

小浜島の終止形は、オケヲム系の?ukunとオケリヲム系の2ukirunが併存している。ラ行 音化が終止形のみならず、否定形にも意志形にも侵透している。さらに条件形や禁止形の併 用形はう行音化の結果である。

36租納(i)否定形意志形連用形条件形命令形

2ukun2ukox ?uki2ukiba 2ukiri 2ukira ?ukiriba

mkirjax

Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

-128-

(25)

?ukin 2ukiru ?ukiJitamkjan mkibuz

?ukirun

(iii)禁止形

?ukina 2ukirina

西表島の西海岸に面したところに租納の集落がある。終止形は、オケヲム系の?ukinとオ ケリヲム系の2ukirunが併存している。他の活用形においてもう行音化の浸透によって複数 の語形を併用している。

37鳩間島(i)否定形意志形連用形条件形命令形 2ukin ?ukax 2uki ?ukiba mki 2ukiran?ukira ?ukiriba2ukiri Oi)終止形連体形接続形過去形継続形

2ukiru2ukiru 2ukiti?ukita mkibexn

?ukirun mkuta

(iii)禁止形 2ukina 2ukiruna

鳩間島ではう行音化が侵透している。否定形は、オケヌに当たる?ukinとオケラヌに当た る2ukiranを併用している。他の活用形においてもう行音化による併用形をもっている。

38波照間島(i)否定形意志形連用形条件形命令形 2ugunu2u9ox ?u9i?u9iriba2u9iri

(ii)終止形連体形接続形過去形継続形 2u9irun2u9i ?u9aJita?u9an 2u9ibun

?u9iru

(iii)禁止形 2u9iruna

波照間島は琉球列島の最南端の島である。終止形の?u9irunにはう行音化の影響がみられ

るが、否定形と意志形にはそれが現れていない。語中のk音が有声化する現象がある。

39与那国島(i)否定形意志形連用形条件形命令形 2ugiranun2u9irux ?u9i2u9irja 2u9iri

m9iruba

Oi)終止形連体形接続形過去形継続形 2u9irun?u9iru 2u9iti2u9jan 2u9ibun

(iiO禁止形

-129-

(26)

?u9inna

与那国島は、琉球列島の最西南端の位置にある。語中のk音が有声化する。否定形の

2u9iranunや意志形の?u9iruxは、いずれもう行音化した形である。

以上から、次のことが明確となった。

(1)「起き」の第二音節は奈良時代において乙類の「キ」であるが、これが琉球列島全域で、

「ケ」に相当する音節となっていて、甲類の「キ」と区別が保たれている。したがって部分 的ではあるが、琉球列島全域において、奈良時代の甲類と乙類の区別に相当する区別が今な お保たれているのである。

(2)ラ行音化が奄美諸島と沖縄諸島を中心に浸透し、さらに八重山諸島へ浸透しつつあり、

宮古諸島には浸透していないことが明確になった。

(3)宮古諸島の命令形語尾はオケロのように「ロ」であり、奄美、沖縄、八重山ではオケレ のように「し」である。中央語の文語におけるオキヨのような「ヨ」は琉球列島全域でみら れない。これらの琉球列島の分布から推定すると、中央語の「ロ」と「ヨ」の関係は「ロ」

が古層であり、「ヨ」が新しい層であると考えられる。

参考文献

平山輝男、大島一郎、中本正智「琉球方言の総合的研究』明治書院、1966年 仲宗根政善「沖縄今帰仁方言辞典』角川書店、1983年

中本正智『琉球方言音韻の研究』法政大学出版局、1976年

中本正智「琉球語の力変動詞ご来るこの活用」『人文学報』194号、1987年

(東京都立大学人文学部)

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