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(1)

脳および頭蓋疾患のCT診断における

       最近の動向

東京女子医科大学

     小

      コ

脳神経センター 神経放射線科

林  直 紀

バヤシ   ナオ   トシ

(受付 昭和56年12月7日)

Recent Adva:1ce of CT Diagnos五s of Skull and the Contents

      Naotoshi KOBAYASHI, M.D.

       Department of Neuroradiology, Neurological Institute        Tokyo Women s Medical College

  Recent advance of CT diagnosis of diseases of brain and skull is mentioned, at the point of view of the

technic, such as thin slice CT, reconstruction imaging, target reconstrucdon imaging, dynamic scanning and

use ofvariable contrast material.

         はじめに

 1972年に英国のHounsaeldが頭部CTを開発 して以来,CT器機の進歩には目覚ましいものが あり,頭蓋内疾患の放射線診断にはCTは欠かせ ないものとなっている.この間,CTの器機の進 歩とともに,造影剤その他,CTの使用の面でも 工夫が見られる.著者は現在TCT−60Aを使用し て日常のCT検査を行なっているが,この経験を

もとに,最近のhigh resolution CTが,頭蓋およ び脳疾患の診断にどのようにつかわれているか,

あるいはどのように使われようとしているかにつ いて述べる,

      1.CT器機の進歩

 スキャン方法は1管球1検出器で線状スキャン を操り返す第1世代と呼ばれるものにかわって多

検出器を用いた第3世代あるいは第4世代と呼ば れるものが主流となっており,スキャン時間は現

在数秒で行なわれるのが普通になっている.

 スキャン方法の進歩とともに画像再構成方法の 改良も見られ,軟部組織に対する分解能の向上と

ともに,高吸収域での分解能も向上している.さ らにスライスの厚さも,これまで15mmから5mm であったものが2mmから1.5mmのものまで可 能となっており,耳科領域の微細な構造の描出も 可能となっている(写真1).これにはzooming

あるいはtaget reconstractionと呼ばれる手法が 用いられる,

 頭部をガントリーに対し垂直において撮られる

axlal scanningに対し,前額面をガントリーに対 し平行に置いて撮るcOr・nal scanningは以前より

(2)

(a)

      (b)

写真1 外耳道を横切る右錐体骨折(a),耳小骨が  明瞭に見られ,右乳突蜂巣の混濁が見られる (b,

 a)よりやや上のスライス) (2mm厚さのスキ  ャンのtarget reCOnstrUCtiOn像)

行なわれていたが,thin sliceのaxial scanning

で得られた像より,矢状面あるいは冠状面での像 の再合成プログラムも最近市販されているCTに

は一般に内臓されている(写真3).

 頭蓋内腫瘍のCTによる診断では,脳内腫瘍の

写真2 下垂体小腺腫のCT像(coronal view,造  影剤注入後). トルコ鞍側方は海綿静脈洞も同時  にエンハンスされている.

写真3 empty sellaのmetrizamide CT−cisterno−

 graphyトルコ鞍内の造影剤の流入がみられる.

存在診断に関しては,第1世代のCTによっても

ほぼ100%の検出率であるが,頭蓋底腫瘍の診断率

は良いとは言えなかった.我々が第1世代のCT

で行なった10,000例の検査のうち下垂体腺腫例

は,46例であったが,このうち,16例はCTで診断

(3)

(a)

急、

(b)

         (c)

写真4 トルコ鞍上部より前方に伸展した頭蓋咽頭  腫のmetrizamide CT−cisternography,(a)axial  view,(b)coronal reconstruction像(c)sagitta且  reconstruction像

されなかった.これらCT陰性の症例はすべてト

ルコ鞍内に限局するか,あるいは鞍上部に発育し ても極く軽度のものであった.最近のhigh reso−

1ution CTでは,直径10mm以下の小さな下垂体 腺腫の検出が可能となっているD.我々がこれま でに経験した9例の小下垂体腺腫9例では,5例

 上述のスキャン時間の短縮と画像再合成法の改

良により,管球を被写体のまわりを360。回転させ

る問に2〜3枚の画像を作り上げることも可能と

なり,これを連続して行なうことにより,いわゆ

るdynamic scanningと呼ばれる短時間内の経時 的観察も可能となった.経動脈的あるいは経静脈 的に造影剤を注入し,5秒から10秒の間に2から

3枚の再像を連続的に得ることができ,脳腫瘍の

1血流状態の観察による脳腫瘍の組織の推定や,脳 血流の測定に利用されている2).

       2.造影剤の利用

 経静脈的に血管造影を注入してスキャンを行な うcontrast enhancementは脳腫瘍や血管障害の

診断能の向上に早期より用いられて来たが,クモ 膜下腔の造影も最近は一般に行なわれている.

 CTの開発とほぼ同時期に開発された水溶性非

イオン化脊髄腔造影剤metrizamide(amipaque⑧)

はこれまでの水溶性脊髄腔造影剤に比し,神経毒 性が少なく,頚部および胸部も含めた脊髄腔造影 剤として,油性あるいは気体造影剤にとってかわ っている.このため比較的濃度の低いものを腰椎 穿刺によりクモ膜下腔より注入し,頭蓋内に導い て,脳槽の陽性CT像を得ることができる(CT

cistern・graphy).このCT cistemographyは,頭蓋

底部の腫瘍の診断に用いられる(写真3,4)と

ともに,RI・cisternographyにかわる脳脊髄液の動

態診断法としても用いられ,正常圧水頭症の手術

適応判定に一般に使用されている.CT cisteTno−

graphyは前述のthin sliceの再合成による矢状あ るいは冠状像と併用し,微小下垂体腫瘍の経鼻的 手術の際の下垂体上面の正確な位置確認のために も一般に行なわれている.

 high res・lution CTの出現により,トルコ月内

の小腫瘍に対しては,気脳撮影は不要となってい

(4)

るが,内耳道内に限局あるいは小さな聴神経鞘腫 の診断にはまだCTのみでは不充分である.通常 のcontrast enhancemen口こよるCTによって診 断できる最小の聴神経鞘腫は直径5mmといわれ

る3).metrizamideによる CT cisternographyに

よってもその大きさはほぼ同様である.これに対 し,小聴神経鞘腫のCT診断のために,最近小 量の空気が用いられて良好な結果が得られてい

る4)5).空気はmetrizamide CTと同様,腰椎穿 刺によって注入され,.小脳橋角部に導かれる.こ れには前述のzoomingあるいはtarget reconstru−

ction imagingの手法が併用される.

 局所脳血流量の測定には3),133Xeが用いられ ているが,非放射性のXenonを吸入させ, X線 CTによってこれを計測し,.同様に局所脳血流量 を測定する試みがある.さらに,Xenonが神経

組織i親和性を有することを利用し,中枢神経組織 そのものをこれによってContrast enhanceさせる 試みもある,

         おわりに

 以上,最近のhigh resolution CTが頭蓋および 頭蓋内疾患の診断にどのように使われているか,

.ある》・は使われようとしているかについて,主に

技術面より述べた.この他,頭部CT診断の進歩

には,これまでの臨床例の経験の積み重ねが大き く貢献していることは事実であり,high resolution

CTの普及とともに,変性性疾患を主とした内科 酌疾患に対するCTの利用価値も大きくなってき ており,CTは頭部疾患の放射線診断の最も重要

な検査法として定着している.

        文  献

1)Syversten, A., V。M. Haughton, A.L.

 w量且1iams訊nd J.F. c腿shick=Thc computcd  tomographic appearance of the normal pitui.

 tary gland and pituitary microadenomas.

 Radiology 133385(1980)

2)Dobben, G.D., G。E. ValvassOTi, M。F.

 Mafee and W.H. Berninger=Evaluation of

 brain circulation by rapid rotatiollal computcd

 tolnography. Radiology 133105(1979)

3)Greitz, J。= Diagnostic e田cacy and limita−

 tions of computer tomography in posterior  負)ssa正esion. The d圭agnostic limitations of  co皿puterized axial tomography(Edit B6ries)

 Springer−Verlag 17(1978)

4)Sortland,0.;Computed tomograplly com−

 bined with gas cisternography負)r the d圭agno・

 sis of expanding les圭ons in the cerebello・

 pontine angle. Neuroradiology 1819(1979)

5)Kricheff,1.1., R.S. Pinto, R.T. Bergem皿

 a血d庶Cohen 2 Air CTC in the diagnosis of  small acoustic neuromas. Amer J Neuroradio−

 logy 157(1980)

(5)

追加・討論

 織畑 秀夫(外科)司会:今この5つの演題を拝聴致 しますと非常にそれぞれ特長をもつた各方面のエコー,

及びCTの進歩のあり方がよく分ります.

 それぞれ専門の先生方は普段ご存知かと思いますが,

専門外の方で色々とこういうふうにも進歩していたかと 教えられる訳です.もうdiSCUSsionのつもりの時間はほ

とんどないのですが,少し時間をいただいて今の話で皆 さん質問なり,ご意見ございますか?

 特にございませんようでしたら,シンポジストの先生 方の間で何かお話合いありますでしょうか?

 普段一緒にお話合いする機会も多いかと思いますけれ ど.何か問題がありましたら.

 中村 憲司(粗研内科):現在のどの検査をとりまし ても,大体みな組織の正常,異常はある程度分ると思う のです.ただし一番大事なことは,むしろどの先生も言 われましたけれど.組織の性状なんです.特に心臓の場 合は,本当は先天性の場合でしたら,その心房と心室の 関係とか,もっとはっきり分りまずけれど,今一番多い 虚血性心疾患,心筋梗塞の場合には,誰か専門外の人が 考えても分りますように,心筋梗塞を起した所が突然ネ

フローゼを起こして,ずっと硬くなっている.動きが悪 い.それから健康な部分は,エラスチックでソフトで,

かなり動きは良いのですが,本来超音波でしたら,そう いう組織の正常までは分るはずなんですが,まだ今のと ころは主に壁の動きから判断するだけであって,なかな か組織の正常はわかりにくいんです.私は実際に見たこ とはないのですが,メイヨークリニックのダイナミック CTスキャンというのは,かなりの威力はあるんです.

その組織の性状に関してCTスキャンがどこまで伸びそ うか,そのへんのところ.将来性を話していただきたい のですが

 織畑 秀夫:どなたかCTスキャンの方で…….

 河野  敦(放射線科)=私はそのメイヨークリニッ クのダイナミックCTスキャンという話だけ聞いている

だけで,細かいことは知らないのですが,gated CTと 称して心臓のcycleに合わせてスキャンを行なう方法を やっていますが,ただ現状のCTですと,一番短いもの を使ってでも,やはり心筋の中の構造の異常をとらえる

ことは難しいと思います.

 私たちが現在使用しているCTスキャンのスキャン時 間が4.5秒ですから,造影剤を使用すれば心室中隔があ る程度厚いとか薄いとかはわかりますが, まだ超音波 に匹敵するところまでいきませんから,まだまだCTは その方面では進歩が遅れていると思いますし,当分時間 がかかるのではないかと予想しています.

 織畑秀 夫:他セこは?ご意見がありますか?

 今お聞きしますと,CTよりもエコーの方が内部構造 については能力が高いのですか?中村先生そういうこと はいわれますか?

 申村 憲司:ただ心臓の場合は,常に動きがあります ので,一寸他の臓器の性質とはなかなか論じるのは難し いのですけれど.

 織畑 秀夫ご黒崎先生,その点どうでしょう?

 黒崎 喜久(放射線科):腹部や骨盤の領域でCTと エコーのどちらが内部構造の描出にすぐれているか決め るのは難しいと思います.液状物は一般に音響学的に均 一ですから,その中では反射エコーが全くないか,極め て乏しいためにecho−freeに見えまず したがって,液 体の生化学的な性状に関係なく,嚢胞・膿瘍・出血・嚢 胞性腫瘍などが同一の超音波像を呈します.超音波は内 容が液状か充実性かの鑑別に極めて有用ですが,液状物 の内容に関する情報は与えてくれません.液状物はCT では一般に水に近いIow densityとしてみえますが,そ の内容によっては軟部組織のCT値に近く,充実性組織 と紛らわしいこともあります.新鮮な出血例ではhigh densityとしてみえるので,液状物の内容が推定できる 場合もあります.

 このように液状物の内容を捕える場合,CTスキャン

(6)

には長所も短所もあります.それは超音波についてもい える訳ですね.かなり補い合う点が多いのではないでし ょうか.非常にclear cutなcaseならば,どちらか一つ の検査で済むということはあると思います.充実性組織 に関しては,X線吸収の差によって組織特徴がCTでわ かる場合があります.すなわち,脂肪を含むものか,筋 肉や実質臓器のようなものかの区別です.脂肪は筋肉や 実質臓器など,他の軟部組織に比べてCT値が著明に低

いので容易にわかります.

 超音波でも,脂肪を多く含む腫瘤は先程示した皮様嚢 腫の症例のように,他の充実性の腫瘤とは違った極めて 特異的な像を呈する訳です.その点ではCTも超音波も かなり似たような情報を提供してくれます.ただし,CT の場合は造影剤増強によって組織のvascularityがかな

りわかります.これは超音波では得られない情報です.

こういった点はCTの長所です.

 織畑 秀夫:どうもありがとうございます  他にご意見,ご質問ありますか?

 一般の方で何かご質問がありましたら,どうぞ.

 先程私,一寸司会の初めの時申し上げたのですが,今 までと違った断面が見えるようになってきて,それの解 剖学という点が教育的な面でも従来なかったですし,臨 床実際の中でもあまり無い訳ですが,その点について皆

さんに一寸ご意見をうかがいたい思うのですが?

 前田先生からどうぞ.新しい解剖学的な,よく新しい 断面の解剖学というのは病院ではあまり無いものですか

ら,そういう点でやはり大いに必要とされますか? ど うでしょうか?

 前田 節夫(腎外科);病理ですか?

 織畑 秀夫:ええ,そうですね.先生の領域では今ま での中では,それほど必要はありませんでしたか?

 前田 節夫:今のところは,そんなに必要は感じない のが現状だと思うのですけれど.

 織畑 秀夫=中村先生はいかがでしようか?

 中村 憲司=やはり私ども初め断層に取りつく時は,

解剖に一番苦労します.いわゆる学生時代に習った解剖 と違いますし,幸いにも心研には標本室がありますもの で,印そういう心臓の解剖に強い人も沢山おられますの で,たえず疑問に思うときは,すく標本室に行って心臓 を見ますし,あるいは協力していくつも断面を設けて,

先程お見せしましたように,ああいうイヌの標本の任意 の断面を切って色々作っておりますから,まあ差し詰め 臨床解剖学としては,頭を切り更えて勉強する必要はあ

ると思います.

 織畑 秀夫=黒崎先生はいかがですか?

 黒崎 喜久:CTスキャンでは一般に体の横断面をみ ていることになります.私たちはこれまで人体をこのよ

うに横断面としてみることに慣れていません。外科医が 手術中にいろいろな臓器をみますが,CTスキャンの横 断面のような視野ではないと思います.

 私たち検査に携わる者は,数枚の1Cln前後の厚さの 横断像から,病変の部位や伸展範囲を頭の中に組み立て て行きます.

 いくつかの横断面を組み合わせていって得られた情報 をその各科の先生に伝える時に,各科の先生にそれを十 分に理解してもらえるかという不安があります.そうい う意味では,人体のcross sectionの解剖アトラスが,検 査をする側の医師と検査の結果を利用する側の医師の間 のスムースな情報交換に役立つのではないでしょうか.

 織畑 秀夫:河野先生いかがですか.

 河野  敦:今,黒崎先生が言われたこととあまり変 りありませんが,CTの場合は特に腹部,骨盤に関して は横断像しか得られないことはマイナス面であると先に 言いましたが,逆に横断面しか切れないということで,

割に普遍的な訳です.誰が見ても同じにしか見えない,

技術依存性も無い訳ですから,ある程度横断面の解剖を 理解してしまえぽ,臓器間の関係,腫瘍と臓器間の関係 などを容易に把握出来る訳です,したがって正常な横断 面の解剖の教育が行なわれるならば,それは我々にも,

臨床の先生方にも,非常に役立つことと思います。

 織畑 秀央:最後に小林先生ですけれど,先生セこはこ こ6年間のCTの進み具合と将来性について一緒にお話 願えませんか?

 小林 直紀(神経放射線科)=頭は一般に超音波が使 えませんが,特殊な場合,特に赤ちゃんなどの場合,超 音波を使っています.我々の所では今使っていません.

しかし,被爆がないという点で,新生児にまずCTをや って異常があった場合に,出血であるとか,そういった ものをまず超音波で追っかけるという方法は非常に良い のではないでしょうか.あるいは奇形があった場合に,

手術の効果,脳室の大ぎさ,水頭症の程度は超音波であ る程度分ります.そういう使い方をしているのではない かと思います.CTに関しましては,だいたい進歩する

ところまできたような気がします,これから色々ダイナ ミックスキャンをもう少し細かくやるとか,頭に関して そういったダイナミックCTあるいは先程話に出ました

一481一

(7)

ということです.それから,その他の頭のCTに対して は今お話しましたように,これ以上進歩はないと思いま す.目立つた進歩ですね.大きな進歩というのはだいた い,ここでスキャン方法,リコソストラクション方法と いったのが変ってこないで,あとは使い方になるかもし

れない.

 それから解剖ということで一言いわせていただいてよ ろしいですか?

 よく我々の所に脳外科の先生,神経内科の先生がロー テーションで来られるのですが,CTの像を理解するた めに,脳の横断面のアトラスが数多く出ています.それ を見て勉強されておるのですが,むしろそれはaxialの 絵を理解するためセこはsagittalであるとか,あるいは coronalであるとか,あるいは全体の像,いわゆる普通 の解剖,そういったものを理解しておかないと,axial の本を見て覚えるというのは,その本をただその像を覚 えるだけとなってしまいます.立体的に理解するには生 体解剖の立体像を把握しておくということが一番重要な

ことだと思います.

 織畑 秀夫:どうもありがとうございました.

 まだまだ色々お話を伺いたいことが沢山ございます が,時間の関係でこの辺で終了させていただきたいと思

います.

 今日色々お話を伺いますと,今までまだ知らないよう なことが,はっきりと分つたような気が致しますし,そ の専門の中で知っていたこと以外に,他の専門の分野で はこのように分っている,あるいは今後そういった点で お願いしてみょうがなあ?という.C持を私自身持ちまし

乏いうのは,メスを持って中を手術する立場から見ます と,これ以上の良い方法は無いということを痛感致しま

す.

 それから,又つい手術して,ああしなくてもよかっ た,というような例もだんだん減ります.安心して経過 を見℃行くことも出来るというふうなことで,治療の面 でも非常に大きな進歩がもたらされたと思いますし,そ ういうことから今後又5〜6年経つ内には,思いもかけ ない進歩が起こるのかもしれないという期待と,現実に 色々欠点もあるかもしれませんが,そういうものが直さ れつつ,すでに成果が上っているものを,さらに広く,

大学だけでなく,もっと広い範囲に及ぶということを非 常に期待する訳です.

 日本では,例えばイギリスよりもCTの数が多いと か,いろんな良い点がある訳です.社会的な,経済的な 良い条件の中でそれは育っていて,その背景は健康保険 制度がずいぶん役立っているようですが,点数によって 色々動かされる点がやや不安もあるし,困った点も考え られますが,とにかく日本の医療の現状が非常に恵まれ ていて,良い装置がどんどん一般にも使われつつある,

そういう意味でありがたいと思っております.

 今日は幸いにして,そういう実態の一部をお見せいた だけて,本当に感謝致しております.

 シソポジストの先生方,色々お話をいただけてありが とうございます。

 また,聴衆の皆様にも御清聴感謝致します.

 ではこれでシンポジウムを終らせていただきます.

 どうもありがとうございました.

一482一

(8)

東京女子医科大学学会 第47回総会 一般演説の追加・質問・応答要旨

(総会演説の抄録は本誌51巻7号に掲載した)

 4番.イソアワモチ柄眼のレンズの微細構造,特にそ の層状構造について     (第二解剖)片桐 展子  質問  (第二生理)菊地 鐙二

 報告されたレンズの且ne structureは他の腹足類には 見られないとのことですが,それではイソアワモチの眼 の機能に特別な点があるのですか?

 応答  (第二解剖)片桐 展子

 イソァワモチの柄眼の網膜などの微細構造は他の腹足 類と同様の構造を示すので,イソアワモチのレンズだけ が特別の機能をもつとは考えられません.他の腹足類の 眼のレンズは視細胞に接する部分が報告されているだけ で内部は観察されていないと思われます。

 質問  (第二生理)菊地 錬二

 では他の腹足類の眼にも同様の微細構造が見られると 予想されますか?

 応答  (第二解剖)片桐 展子

 他の腹足類のレンズにもイソアワモチ柄眼と同様の層 状構造が存在する可能性が充分に考えられます.

 質問  (第二生理)菊地 鐘ニ

 カメラ眼のレンズにも類似(つまり周辺と中心部で異 る微細構造)がみられますか?例えば人間やイカの目の

レンズです.

 応答  (第二解剖)片桐 展子

 脊椎動物やイカのンンズは,細胞性レンズであり,イ ソアワモチとは全く構造が異なります.しかし,六角柱 状の構造を示し,平面像では層状構造を呈します,

 6番.比較的高濃度の2,4一トリレンジイソシアネー トによる赤血球形態変化についての一考察

      (生化学)菊池 栄子  質問 (第二生理)菊地 鐙二

 赤血球のサイズは? 別に大きくなっていないので しょうか,形の変形だけおこるのですか? 赤血球は Coin状を呈していると記憶していますが,本来の形は

あまり変らないのですか,つまりmembraneは一様に 変化をうけないのですか?

 応答  (生化学)菊池 栄子

 TDI処理により赤血球の大きさには変化を与えない ように走査電顕縁から考えております.TDI処理は赤 血球のsizeに変化を与えずに内方陥没に移行し,変形 能を失なって行くと思われます.

 質問  (第二生理)菊地 錬二

 もしpermeabilityの変化がTDIで変わるとすると,

mediumと赤血球の内部との間にpassiveのtransport,

例えば水の移動がおこると考えられないでしようか?

 庵答  (生化学)菊池 栄子

 いろいろなもののpermeabilityの変化により影響を うけているとは思いますが,今回は膜のタン白と脂質に ついて検索したものです.

 10番.本学救急医療センター受診患者の年令構造 一特に18才以下について一 (第一衛生)木村 一彦  質問  (第二生理)菊地 鐘二

 土曜,休日は高年齢についてtransportされるpatient の数が多いのですが,各年齢とも入院する数が少ないと いう報告は,土曜,休日は成人のpatientが少ないと理 解してよろしいのでしょうか?

 応答  (第一衛生)木村 一彦

 一日平均入院患者数は平日深夜1.9,準夜4.3.土曜深 夜2。9,日中3.5,準夜4.0.休日深夜2.0,日中6.7,準 夜3.4であり,土曜,休日の重症患者の実数は少なくあ

りません.しかし,対受診患者でみる入院率は平日深夜 15.4%(1日平均患者数7.8),準;夜19.8%(20.4)。土 曜深夜17.3%(12.6),日中19.8%(17.7),準夜18.3%

(21.9).休日深夜23.8%(8.4),日中13.8%(48.5),

準夜17.3%(19.6)となり,休日日中は受診患老が多い ため,入院率としては低率となっています.この休日日 中の軽症患者の利用の多いことが,三次救急医療センタ ーと地域センターと地域一次救急医療との関係で問題が

あります.

 13番.全身麻酔による血清酵素の変動,とくにCK・

GOT・GPT, LDHについて (麻酔科)佐藤 啓子  質問  (腎センター・外科)阿岸 鉄三

 今後も同様の麻酔薬剤を使用してもかまわないという

(9)

      (小児科)浦本 恭子  質問 (成人医学センター)渋谷  実  心不全死亡患者は心奇形はありますか?

 応答  (小児科)浦本 恭子

 心不全で死亡した例は大動脈縮窄複合,完全大血管 転位:,総動脈幹の他,極小未熟児のIRDSに合併した PDAの症例がありますが,いずれもDICを合併したり

2例は18トリソミー症候群の例で極度に状態が悪いため 手術でぎなかった症例です.

 23番.レーザーによる「あざ」の治療        (形成外科)若松 信吾  質問  (皮膚科)肥田野 信

 吸収曲線に用いられた機器は?

 応答  (形成外科)若松 信吾  JAsco ss−25です.

 26番.網膜剥離に関する統計的観察        (眼科)牧野 玲子  質問 (消化器・内科)黒川きみえ

 復位をしなかった例の遠隔期症状はどうなりますか?

 応答  (眼科)牧野 玲子

 非復位眼は最終的には視力はnullとなり,眼球萎縮

となります.

 28番.人工膵臓による血糖管理       (糖尿病センター)新城孝道  質問 (消化器・内科)黒川きみえ

 人工膵臓の将来の方向はどのようになるのでしょう

か?

 応答  (糖尿病センター)新城 孝道

 人工膵臓は現在大型で血糖測定にあたっては患老がベ ッドに固定される欠点があり,1日中連続で使用するこ とは身体的,肉体的につらいため,糖尿病患者全例には 適当ではありません,現在治験的に行なっていますが,

従来のインスリン療法に対し,血糖コントぼ一ル困難な 症例や術中その他代謝動態の変わりやすい例には最適と 思われます.将来小型携帯化の方向にすすむと思われま

す.

散発性肝炎の罹患率に比して高率です。

 31番.乳癌患者における細胞性免疫能の検討       (第二病院・外科)芳賀 陽子  質問 (第二病院眼科)宮永 嘉隆  ツベルクリン反応との相関はどうですか?

 応答  (第二病院外科)芳賀 陽子

 Stageの進行した症例では陰性例が多くなると考えら

れます.

 質問  (第二病院眼科)宮永 嘉隆  補体価については変化がありますか?

 応答  (第二病院外科)芳賀 陽子  特に計っておりません.

 34番.当科における小児頚椎損傷の検討          (第二病院整形外科)大野 博子  質問 (内分泌外科)藤本 吉秀

 最近になって小児の頚椎損傷は増えているのでしょう

か?

 応答  (第二病院整形外科)大野 博子

 最近交通外傷による受傷が増えているとの文献上の報 告があります.

 35番.新生児早期の深部体温に関する研究       (第二病院小児科)益田  豊  質問  (内分泌外科)藤本 吉秀

 このような深部体温を計る機械は新しい特別な機械な のでしょうか?

 応答  (第二病院小児科)益田  豊

 深部体温計は最:近では小児科,特に新生児科の領域で はモニターとして使用されています.なお,深部体温計 は安価なME機器で,使用方法は簡単です.

 36番.小児虫垂炎症例の検討

       (第二病院外科)熊沢 健一  質問  (内分泌外科)藤本 吉秀

 成人と小児の発病までの時間が同一ですが,穿孔は小 児の方が多いのは,解剖学的・生理学的ちがいによるも のでしょうか?

 応答  (第二病院外科)熊沢 健一

(10)

 小児は,虫垂内腔が狭く閉塞しやすく,そのため血流 うっ滞を起こし炎症の進行が速くなります.又,壁が薄 いこと,大綱が未発達なことは小児の穿孔を多くしてい る原因だと思います.

 質問 (内分泌外科)藤本 吉秀  小児の麻酔はどのようにするのですか?

 応答  (第二病院外科)熊沢 健一

 10歳前後を目度にし,あとは患者の我慢強さと病態の 程度を判断して全麻か腰麻かを決めます.

 質問  (第二病院放射線科)石原 純一

 盲腸の位置,虫垂の位置などの関係で診断しにくいこ とはありますか? X線上このような可能性を感ずる例 が時々認められますが。

 応答  (第二病院外科)熊沢 健一

 実際Caecumに隠れているため, Defens, Blumbergが なくともPerforationを起こしている場合があり,その 他WBC, BT x線を総合的にして判断するよう努力し

ております.

 質問 (第ご病院整形外科)菅原 幸子

 小児虫垂炎に穿孔型が多い理由として,診断がおくれ たということ以外に考えられることをお教え下さい.

 応答  (第二病院外科)熊沢 健一

 小児に穿孔が多い理由の第一は,解剖学的に内腔の狭 小化のため閉塞しやすく,細菌の繁殖が速く,血流のう

っ滞も伴って,炎症の進行は速くなります.又,壁が薄 いためとりソバ炉胸の発達が悪く穿孔しやすく,大網の 発達も悪いため,汎発性腹膜炎に進行しやすいとされて

います.

 38番.塗抹標本による脳腫瘍の診断       (脳神経外科)久保 長生  質問  (第二病院産婦人科)高橋 文子

 塗抹標本と今までの組織像の関係についてはいかがで

しようか.

 応答「(脳神経外科)久保 長生

 従来の凍結切片による迅速診断とこの塗抹標本(Sm−

ear)による差は根本的にはありません。慣れてくれば 凍結切片による迅速診断と同じ確率で診断を下すことが できます.現在当センターでは塗抹標本でまず診断し,

凍結切片とで確認を行なっています.今回の発表はHE 染色の他たPTAH染色を加えたことに意義があると考

えています.

 39番.経口的大腸造影法一日常診療における基本的問 題の検討一     (第二病院放射線科)石原 純一  質問 (第二病院整形外科)菅原 幸子

 直腸造影後に腰椎などの単純撮影のよい像を得るため にはどのくらい時間が経過してからが好ましいかをお教

え下さい.

 応答  (第二病院放射線科)石原 純一     .一

 我々は消化管検査終了聖なるべく早期にBa排出をは かるよう指導していますので,それ程長い時間残留する とは思いませんが,個人差はあるので適確な時期は定め かねます.もし可能性のある場合は,予め透視などでチ

ェックすることも必要かもしれません.又,できれば造 影検査前に単純撮影関係の処置ができていればよいと思

います.

参照

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