テトラフェニルボロンナトリウム塩, 塩化テトラフ
ェニルホスホニウム電解質水溶液の沈降電圧測定
著者
平川 広満
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
28
ページ
199-202
別言語のタイトル
Measurement of sedimentation potential in
aqueous solutions of sodium tetraphenylboride
and tetraphenylphosphonium chloride
テトラフェニルボロンナトリウム塩, 塩化テトラフ
ェニルホスホニウム電解質水溶液の沈降電圧測定
著者
平川 広満
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
28
ページ
199-202
別言語のタイトル
Measurement of sedimentation potential in
aqueous solutions of sodium tetraphenylboride
and tetraphenylphosphonium chloride
テトラフェニルボロンナトリウム塩,塩化テトラフェニルホスホニウ
ム電解質水溶液の沈降電圧測定
平 川 広 満
(受理昭和61年5月31日)MEASUREMENTOFSEDIMENTATIONPOTENTIALINAQUEOUSSOLUTIONSOF
SODIUMTETRAPHENYLBORIDEANDTETRAPHENYLPHOSPHONIUMCHLORIDE HiromitsuHIRAKAWA Thesedimentationpotentialsinaqueoussolutionsofsodiumtetraphenylboride(NaPh4B)andteraphenylphoniumchloride(Ph4PC1)weremeasuredat25oCoveraconcentrationrangeof0.1∼
0.001N・Fromthepotentialsobtainedandtransferencenumbersatinfinitedilutio、,theover-allpar-tialmolalvolumeofelectrolyteatinfinitedilutionhasbeensplitintotheindividualcontributionsof thecationsandanions,andthesingleionicpartialmolalvolumesobtainedwerecomparedwiththatof Millero'svaluesanddiscussed. 1 . 緒 論 最 近 , テ ト ラ フ ェ ニ ル ボ ロ ン ナ ト リ ウ ム 塩 ( N a [Ph4B]),塩化テトラフエニルホスホニウム ([Ph4P]・Cl)はイオンーイオン間,イオンー溶媒 間の相互作用を明らかにするため,電解質の部分モル 容積を正,負イオンに分割する手段として議論されて いる'∼3)。たとえば,各イオンの部分モル容積の比が 結晶状態のそれぞれに対応するStokesの半径比ある いは差に等しくおく方法,および各イオンの部分モル 容積の比がそれぞれに対応するvanderWaalsの体積 比に等しくおく方法がそれぞれ提案されている4)。し かしこれらは電解質水溶液でのイオンの部分モル容積 を 結 晶 状 態 で の イ オ ン 半 径 か ら 求 め よ う と す る も の で,電解質が水溶液に溶けている状態から直接求める ものではない。 著者はNa[Ph4B],[Ph4P]Clを分割し,正,負イ オンの部分モル容積を求める場合,これら電解質水溶 液を沈降電圧発生装置により振動させ,溶液中に発生 する沈降電圧を±0.0恥Vの高精度で測定した。こ の測定値から各イオンの部分モル容積を求め,得られ た値を他の方法により求めた値と比較し検討を加えて いる。 2.実験と測定結果 試薬Na[Ph4B]と[Ph4P]Clは市販の半井化学薬 (株)社の一級を使用した。精製水はまず水道水を岩 城ガラス(株)社の純水装置STILL−2で沸騰させ て作った蒸留水を再びオルガノ(株)社のイオン交換 樹脂で精製し,比抵抗が500×104(Q・C、)以上の 精製水を用いた。上記で述べた精製水lOOcCに電子 天秤で計量した0.1モル量の試薬を溶かし,0.1モル の電解質水溶液を作り,この溶液を基にして0.1∼ 0.001Nまでの溶液を作った。出来上がった各電解質 水溶液を測定容器に封入して沈降電圧発生生装置5)に より100Hz,加速度振幅1.5mm(p-p)で振動させ た。このとき溶液中に発生する沈降電圧を交流電位差 計法により測定を行った。このとき測定は室温(25°C) で測定した。この結果をFig.1に示す。Fig.1に 示すように,測定値は既に報告した6)ハロゲン化アル カリ電解質水溶液の溶液の濃度に対する沈降電圧変化 はほぼ同じであるが,測定値の符号が正負逆になって いる。即ちハロゲン化アルカリ電解質溶液では陽,陰 イオンの原子量を比較し,陽イオンの原子量が陰イオ○ 200
FM1cl
ル容積,p:密度(0.9970であり,1と考える)。 Fig.1からNa[Ph4B],[Ph4P]Clの沈降電圧Vは それぞれ,0.54ノuV,-0.61ノuVに収束することが解る。 まずNa[Ph4B]の陽,陰イオンの輸率t+,t−を求 める。 Na[Ph4B]の当量導電率AC=69.948)であり,陽イ オンNa+の入十=50.19)だから,吟=山+ル器寺川6
入十 = …・・・(2) 入一‘-=山+ルー器琴0284
= (1)式に沈降電圧V=0.54浬V,xo=0.075cm, m+=22.999,m一=321.32gおよび(2)式のt+,t−を代入してNa[Ph4B]の部分モル容積両=
276.41'0)(cm3.mol ')を陽,陰イオンの部分モル 容積V+,V−にそれぞれ分割すると V←−3.41(cm3.mol'),V_=279.82(cm3.mol') が得られる。 同様に,[Ph4P]Clの部分モル容積を分割する。[Ph4P] Clの当量導電率AC=96.3''),Cl−イオンの入一= 76.359)だから,[Ph4P]+イオンのルー19.95であ る。故に, t + − 0 . 2 0 7 , t 一 一 0 . 7 9 3 … … ( 3 ) (1)式にV=-0.61ノuV,m+=341.499,m−= 35.459,xo=0.075cmおよび(3)式を代入して,[Ph4P]Clの部分モル容積両=310.9'2)(cm3・mol-l)
を陽,陰イオンに分割するとVF297.15(cm3.mol'),▽三=13.75(cm3・mol-l)
が得られる。加叩叩0叩伽
︵二3−。一一仁の↑︵己仁○一↑且仁のE一石①の -1.0 Ncl[Ph4B] ンのそれに較べ大きいと正,逆であれば負の電圧をそ れぞれ発生した。しかし,Na+の原子量が[Ph4B]− のそれよりはるかに小さいのに正の電圧,[Ph4P]+ の 原 子 量 が C l − の そ れ よ り 大 き い の に 負 の 電 圧 を そ れぞれ発生している。このように有機化合物ではハロ ゲン化アルカリ電解質の法則が摘要出来ないようであ る。このことはNa[Ph4B]の場合,陰イオン[Ph4B]− の原子量が陽イオンNa のそれの約14倍,[Ph4P] Clの場合,陽イオン[Ph4P]+の原子量が陰イオン Cl のそれの約10倍と途方もなく大きいことも原因の 一 つ と 考 え ら れ る 。 さ ら に 後 で 述 べ る よ う に , [Ph4B]‐イオン,[Ph4P]+イオンの部分モル容積 がそれぞれNa+,Cl一イオンの部分モル容積の何倍 もの大きさになっていることと,ハロケン化アルカリ 電解質にない有機化合物のhydrohobicな水和域をも つことが正,負電圧の逆転につながっていると考えら れる。 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 8 号 ( 1 9 8 6 ) 0 0 0 1 0 . 0 1 0 . 1 ConcentrOtion(N) Fig.1SedimentationpotentialforNa[Ph4B]and [Ph4P]Clasafunctionofconcentration. 4 . 考 察 3節で得られた[Ph4B]一イオン,[Ph4P]+イオン,Na+およびCl一イオンの部分モル容積をそれぞれ,
Millero13)の値と比較したものをTablelに示す。
Tablelで著者の水素イオンH+の部分モル容積は既に報告'4)したハロゲン化アルカリ電解質の沈降電圧
から求めた水素イオンの部分モル容積の平均値であ る。 Milleroの値はH+=0を基準とした各イオンの部分モル容積である。Na[Ph4B]の部分モル容積可を正,
負イオンに分割したときNa+イオンの部分モル容積両が[Ph4B]イオンの部分モル容積に大きく関係し
てくる。著者はNa+イオンの部分モル容積V侭オは
V侭オー-3.41(cm3.mol ')としたが,Milleroのそ れはVドオ=-1.21(cm3.mol ')である。その他多 3.無限希釈溶液でのイオンの部分モル容積 前節で測定したNa[Ph4B],[Ph4P]Clの沈降電圧 と,イオンの輸率から,これら電解質の部分モル容積 V3を正,負イオンV+,V−に分割した場合,V七 V _ の 値 を 次 に 求 め る 。 電 解 質 水 溶 液 を 振 動 周 波 数 100Hzで振動させたとき,溶液中に発生する沈降電 圧Vは次式で表される5 7)。V=1.015×106[上主(m+−P両−−L二(m−−
z + ー Z − loV_)]x。…・・・(1) ただし,xO:加速度振幅t士:輸率,z士:イオン の価数,m+:イオンの原子量,V士:イオンの部分モNa士 [Ph4B]一 [Ph4P]+ Cl− 平川:テトラフエニルポロンナトリウム塩,塩化テトラフエニルホスホニウム電解質水溶液の沈降電圧測定201 3 2 1 ︵T−OEかEu︶①E三○ン一己一○E一ロモOQU−に○﹄ −1.21 277.62 287.4(2) 17.83 00
F
h
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TablelComparisonofvaluesforionicpartial molalvolumes(cm3.mol−1)atinfinite dilutionat25oC. 00 5 . ま と め Na[Ph4B],[Ph4P]Clの各電解質水溶液を沈降電 圧発生装置により振動させ,溶液中に発生する沈降電 圧を測定し,それぞれ0.54ノαV,−0.6MVを得た。 この測定値を各イオンの輸率から電解質の部分モル容 積を分割し,正,負イオンの部分モル容積を求めた。 この結果[PH4B]−,[Ph4P]+各イオンの部分モル容積はそれぞれ,279.82(cm3・mol−l),297.15(cm3・
mol-l)が得られた。また各イオンの結晶半径とイオ ンの部分モル容積の間に比例関係が成立つことを明ら かにした。 Millero (H+=0) Presentvalue (H+=-3.08) lon 00 <の研究者により報告7)されたNa+イオンの部分モル 容積は測定方法により,VN‘す=-1.7∼−8.7(cm3. mol ')と様々に異なる。このため,[Ph4B]−イオン の部分モル容積も様々な値が予想されるが,Millero の値以外[Ph4B]一イオンの部分モル容積の報告は あまり見当らない。このため[Ph4B]−イオンの部 分モル容積の評価は避けたい。次に[Ph4P]−イオ ンの部分モル容積は297.15(cm3.mol ')である。 またCl−イオンの部分モル容積VcrはVcr=17.41 (cm3・mol-l)となり,Milleroの値にほぼ等しくなる。 さらにNa+,[Ph4B]−,[Ph4P]‐,およびCl一各 イオンの部分モル容積と各イオンの結晶半径4.'5)の関 係を調べた。この関係をFig.2に示す。Fig.2に 示すように,各イオンの結晶半径の三乗に対するイオ ンの部分モル容積は直線上を変化することが明らかに なった。なおFig.2に示す各イオンの部分モル容積 が左右端に偏っているためすでに測定したもののうち直線の中間にくるかなり大きなイオン[C・(NH3)6]3+
を選んで図に書き入れた。 3+0
(
20 Cl 0 5 0 1 0 0I
o
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)
Fig.2Dependenceofionicpartialmolalvolumeon thecrystallographicradiiforcationsand anions. −3.41 279.82 297.15 13.75 謝 辞 本研究を進めるに当たり,有益な助言や御指導及び 関 連 論 文 の 提 供 を 載 い た 名 古 屋 大 学 工 学 部 教 授 野 村 浩康博士,同大助教授川泉文男博士に深謝の意を表 します。また本論文は第8回溶液化学シンポジウム講 演予稿集,中尾・香田他(名大・工):4El4(p、86) の一部を参考にした。ここに記して両氏に感謝の意を 表します。 文 献 1)F、J、Millero,Chem・Rev.,inpress、 2)F、J・Milleroin、‘ATreatiseonSkin",Vol.l,H R・Elden,ed.,Interscience,NewYork,N、Y・’ 1971,Chapterl1. 3)F、J、Milleroin‘‘StructureandTransportProces‐ sesinWaterandAqueousSolutions,,,R、A・ Hourne,ed.,Interscience,NewYork,N、Y・’1971, Chapter15. 4)F、J,Millero,J・Phys・Che、.,75,280(1971). 5)平川,応用物理,54,1095(1985).に
o
(
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J
3+に
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yCI Ncl+202 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 8 号 ( 1 9 8 6 ) 6)平川,武石,応用物理,52,619(1983). 7)R,ZanaandEYeager,J・Phys,Che、.,71,521 (1967). 8)J,F・SkinnerandRMFuoss,J・Phys・Che、., 68,1882(1964). 9)日本化学会編,化学便覧Ⅱ,新版(丸善,1958) p、460. 10)F、J・Millero,J、ChemEng.Date,15,562(1970). 11)G,KalfoglowandLH、Bowen,J,Phys・Che、., 73,2728(1969). 12)K・TakaizumiandLT、Wakabayashi,J・Solution Chem.,9,(1980). 13)F、J、Millero,inWaterandAqueoussolutions,R AHorne,ed.(Wiley-Interscfence,NewYork, 1972),Chapter13. 14)平川,電気化学および工業物理化学,52,331( (1984). 15)LPauling,.‘TheNatureoftheChemicalBond, ”3rded.,CornellUniversityPress,Ithaca,NY. (1960).