• 検索結果がありません。

(シンポジウム記録 クロマグロ養殖業--技術開発と事業展開・展望) 養殖クロマグロの水銀--食材としての安全性

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "(シンポジウム記録 クロマグロ養殖業--技術開発と事業展開・展望) 養殖クロマグロの水銀--食材としての安全性"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Nippon Suisan Gakkaishi. シンポジウム記録. 76(5), 976 (2010). クロマグロ養殖業―技術開発と事業展開展望―. 8. 養殖クロマグロの水銀 ―食材としての安全性― 安藤正史 近畿大学農学部水産学科. III8.. Mercury in farmed blueˆn tuna. ―Safety as a food material―. MASASHI ANDO. Department of Fisheries, Faculty of Agriculture, Kinki University, Nakamachi, Nara 6318505, Japan 水銀は有害重金属であり,多数の被害者を出した水俣 病の原因物質である。日本で発生した水俣病は世界的な 大事件であっが,その関心は日本ではすでに薄らいでい る。しかし,水銀汚染は今も世界中で生じており,環境 分野における調査報告はなお増え続けている。 海洋水には微量ながら水銀が存在しているため,魚介類 の中には食物連鎖を通じて海水のそれよりもはるかに高 濃度の水銀が濃縮される。よって,食物連鎖の頂点近く に位置する大型魚のクロマグロは,小型魚類に比べて水 銀濃度が高い。 産業活動の活発化にともない,石炭石油などの化石 燃料の消費量は大幅に増え続けている。化石燃料の中に は水銀が含まれているため,それらを燃焼させることで 大量の水銀が大気中へ放出されており,その結果,環境 の水銀汚染は徐々に進行しつつある。よって,広大な海 洋を回遊する大型魚の場合,生物濃縮の影響はやむを得 ないとしても,それに加えて汚染の進んだ海域の影響を 受けないとは言い切れないのが実情である。 一方,近年生産量が増大し続けている養殖クロマグロ の場合,海水環境および餌料成分を生産者が完全に把握 できるため,危険な成分があればそれを取り除くことも 場合によっては可能である。 そこで今回は,養殖クロマグロの食材としての安全性を 水銀の側面から天然クロマグロと比較し,近年消費者の 関心が高まっている「食の安全」について考察した。 1. 水銀含有量天然クロマグロとの比較 天然クロマグロの水銀濃度に関する報告は多く,市場 に出回る 100 kg 以上の個体の水銀濃度は低いもので 0.5 ppm,高いもので 4 ppm を超える個体が存在する。 また地中海産天然クロマグロでは,5 kg から 100 kg ま でのクロマグロで 0.12 ppm から 2.32 ppm であった。 そこで,近畿大学水産研究所大島実験場において飼育 さ れ た 完 全 養 殖 個 体 ( 98 個 体 , 最 小 22.3 kg , 最 大 61.6 kg )の水銀濃度を 1 年間に渡り測定したところ, 0.6 ppm 前後で大きなばらつきがなかったことととも に,天然魚において一般的に認められる「魚体重の増加 にともない水銀濃度上昇する」現象は認められなかっ た。これは,天然クロマグロはカツオのような中型魚さ え食べることがあるとされる一方,養殖環境ではどれだ け魚体が大きくなろうとも常に水銀濃度の低い小型魚を. 食べ続けるため,水銀の蓄積が天然クロマグロよりも遅 いためと考えられる。よって,養殖クロマグロでは水銀 の蓄積速度が低い水銀レベルにおいて体の増重速度と釣 り合うと思われ,これが上記の現象が認められた原因で あることが推察された。 2. 餌の選択による低水銀クロマグロの生産 餌の水銀濃度を下げることにより,より低いレベルで クロマグロの水銀濃度が頭打ちになることが上記の結果 より予想された。そこで,通常の餌よりも水銀濃度が低 い餌によるクロマグロの飼育を試みた。 対照区にはゴマサバ(平均水銀濃度 0.052 ppm ),試 験 区には マア ジ イカ ナゴ (試 験区 ,平 均水 銀濃 度 0.019 ppm )をそれぞれ与え, 18 19 カ月間飼育した。 その結果,対照区では飼育開始後 6 カ月頃から水銀濃 度の上昇が始まり,最終的に上記で述べたように 0.6 ppm へ到達した。一方,試験区では開始時の 0.25 ppm 前後から飼育期間中は全く上昇せず,厚生労働省の暫定 基準値である 0.4 ppm を下回る 20 kg 以上のクロマグ ロの生産に成功した。 この結果から水銀濃度の低い餌を用いることで,養殖 クロマグロの水銀濃度を下げられることが明らかになっ た。また,餌とクロマグロの水銀濃度から考えられる濃 縮率( 10 倍強)を利用すると,餌の水銀濃度によりク ロマグロの最終的な水銀濃度が予測可能であることが示 された。 3. 低水銀濃度の餌料魚の選択基準 マアジを給餌することで低水銀濃度のクロマグロを生 産できることはわかったが,重量あたりのコストから見 るとマアジはサバ類よりも高価であり,実用化にあたっ ては問題が残る。また,クロマグロは大変“わがままな” 魚であり,マアジをあまり好んで食べてはくれない。よ って,水銀濃度が高い点を除けばサバ類はマグロ養殖業 にとってすぐれた餌であり,これを使って低い水銀濃度 のクロマグロを生産できるようにすることもまた産業上 の重要な課題である。 そこで,水銀濃度のより低い餌料魚の分布を明らかに するため,日本各地より小型魚を購入し,水銀濃度に影 響の大きい要因を探索した。 その結果,体重がほぼ同じ個体であっても,日本海で 漁獲された個体の水銀濃度は太平洋側の個体の 1 / 2 か ら 1 / 4 であり,小型魚の水銀濃度に漁獲海域の影響が 存在することが明らかとなった。この要因のひとつとし て,海水の水銀濃度の影響が考えられる。気象庁のデー タによれば,海水の水銀濃度は日本海で約 2.2 2.3 ppt であるのに対し,太平洋では約 2.7 3.9 ppt であり,数 値そのものは非常に低いものではあるが,明らかに太平 洋において高い。よって,この濃度の違いが生物濃縮を 通じて小型魚の水銀濃度の違いとなって現れたと考えら れた。 4. ま と め 以上の結果より,水銀濃度の低い餌を選択しながら給 餌することにより,水銀濃度が比較的低く安定した養殖 クロマグロの生産が可能であることが明らかとなった。.

(2)

参照

関連したドキュメント

測定結果より、凝縮器の冷却水に低温のブライン −5℃ を使用し、さらに凝縮温度 を下げて、圧縮比を小さくしていくことで、測定値ハ(凝縮温度 10.6℃ 、圧縮比

北とぴあは「産業の発展および区民の文化水準の高揚のシンボル」を基本理念 に置き、 「産業振興」、

ニホンイサザアミ 汽水域に生息するアミの仲間(エビの仲間

・高濃度 PCB 廃棄物を処理する上記の JESCO (中間貯蔵・環境安全事業㈱)の事業所は、保管場所の所在

現時点の航続距離は、EVと比べると格段に 長く、今後も水素タンクの高圧化等の技術開

である水産動植物の種類の特定によってなされる︒但し︑第五種共同漁業を内容とする共同漁業権については水産動

当面の施策としては、最新のICT技術の導入による設備保全の高度化、生産性倍増に向けたカイゼン活動の全

④資産により生ずる所⑮と⑤勤労より生ずる所得と⑮資産勤労の共働より