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ラオス国におけるマラリア・サーベイランスシステムの構築とマラリア対策: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

ラオス国におけるマラリア・サーベイランスシステムの

構築とマラリア対策

Author(s)

小林, 潤; 佐藤, 良也

Citation

琉球医学会誌 = Ryukyu Medical Journal, 19(3): 159-165

Issue Date

1999

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/3303

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ラオス国におけるマラリア・サーベイランスシステムの構築とマラリア対策

小林 潤,佐藤良也

琉球大学医学部寄生虫学講座

Establishment of malaria surveillance system and malaria control in Lao PDR

Jun Kobayashi and Yoshiya Sato

Department of Parasitology, Faculty of Medicine, University of the Ryukyus Nishihara, Okinawa 903-0215

AB STRACT

It is well known that Laos is one of the countries where malaria is most serious public health problem. In 1998, a total of 307,189 malaria patients including 588 fetal cases were

officially reported by IMPE, a referral center for malaria in the country. The planning and

evaluation for malaria control should be conducted under the consideration of exact informa-tion of malaria prevalence. The surveillance system to obtain the epidemiological data, how-ever, was not well functioned in Laos, although antimalaria net-work for malaria control activities has been organized in each provincial and district level.

Since 1995, activities to establish malaria surveillance system has started in Khammouane Province, as an activity of Lao/JICA/WHO PHC Project, under the supervision of IMPE staff and Japanese experts. At first, passive case detection (PCD) system was strengthened by supporting hardware and software of provincial malaria station and district malaria cen-ters. By the activities, the rate of misdiagnosis in district malaria centers has decreased significantly after the start of quality control program by mobile training and re-checking system for malaria diagnosis.

On the basis of the above improved diagnosis system, active case detection (ACD) sur-veys were conducted to obtain detail information on malaria prevalence in communities. It was found by the ACD surveys that malaria is more seriously prevalent among the

inhabi-tants through the year. The surveys on vector mosquitoes were also carned-out around the communities where malaria prevalence was relatively high among the inhabitants.

Following these activities, malaria control program including mass diagnosis, treatment, education, and prevention using impregnated bed-net were operated in two pilot villages. The prevalence rates of malaria were markedly decreased after starting the control program, in-dicating well effect of these control measures. The control program has been expanded to 3 provinces by Japanese Grant Aid since 1999 after the finish of the PHC Project. The mom-toring and evaluation of the control program are successively being supported by the Faculty of Medicine, University of the Ryukyus.鞄′ukyuMed. J. , 19(3)159-165, 2000

Key words: malaria, epidemiology, control measures, impregnated bed-net, Laos

緒  言 マラリアは世界の熱帯,亜熱帯地域で最も深刻な健康問題 であり,およそ3億人の感染者を背景として,毎年, 100-200 万人が死亡していると推測されている.ラオス人民民主共和 国(Lao PDR)はインドシナ半島に位置する内陸国で,ベト ナム,タイ,ミャンマー,カンボジア,中国と国境を接する が,それらのなかでも特にマラリアの流行が深刻な問題となっ ている国のひとつである1-5)特に子供に深刻な死亡率をもた らしているのみならず,成人層においてもマラリアによる健 康被害,社会経済的損失は計り知れないものがあると言われ る.このような状況のもとで,ラオス国政府は保健省の管櫓下 にマラリア研究所(Institute of Malariology, Parasitology and Entomology: IMPE),各県衛生局にはマラリア・ステー ション,さらにその管轄下の各郡にマラリア・センターを組 織し,このマラリア・ネットワークを通じてマラリア流行監

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160 ラオス国におけるマラリア対策

Table 1 Condition of microscopes before and after 1 year starting maintenance system

District Before (Feb 1996)       After 1 year (Sep-Dec 1997) TypeofConditionof micr。sc。pemicr。sc。pe慧peofConditionof cr。sc。pemicroscope Hinboon Mahaxay Nongbock Nhommarath Sebangphay OlympusCHD OlympusCHD Chanhai OlympusPHD Warszawa OlympusCHI) WarszawaPZO o P m o o r r a a p p e e r r Olympus CHD Olympus CHD Olympus CHD Olympus PHD Olympus CHD Olympus CHD Olympus CHD Olympus CHD < <   p q <   < ConditionofmicroscopeA:excellent;B:usable;C:unusablebutrepairable; D:unusableandunrepairable Aftercheckingtheconditionof alldistrictmalariacenter,and完croscope,newmicroscopes 。microscopesintwodistri皇Olym tsweぎiusCHD) erepaired「eresuppliedto

Fig.l Institute of Malariology, Parasitology and Entomol-ogy (IMPE), a referal center for control of malaria, parasitic disease and vector borne disease, in Vientiane, Lao PDR. 視(サーベイランス),予防対策の推進を図ってきた.しかし ながら,そのサーベイランス機能は脆弱なため信頼性のある 流行状況は把握されておらず,有効な予防対策も組めないで いるのが現状である.このようなラオス国がかかえるマラリ ア問題はまた, WHO等の国際機閑や国境を接する周辺諸国に とっても看過できない問題となっている. 本公衆衛生プロジェクトにおける寄生虫病分野の活動とし て,我々はラオス国で公衆衛生的に優先度の高い健康問題と してマラリア問題を取り上げ,そのサーベイランス機能の強 化とそれに基づく予防対策を進めた.本編では,その概要を 報告する. 対策活動の概要 1)マラリア・サーベイランスシステムの確立 マラリア予防対策を進めるにあたって,最も基本となるの が対策の評価の基本となる流行状況の正確な把握であり,本 プロジュクトでは,そのサーベイランスシステムの構築をま ず優先的に行った. マラリアのサーベイランスシステムに関しては,隣国のタ イがWHOの指導のもとに成功をおさめている国のひとつであ り,本プロジェクトでもそれを参考にシステムの確立を試み た.その基本要素は1 ) Passive case detection: PCD, 2 ) Active case detection: ACD, 3 ) Mosquito surveyの3

点であるが,ラオス国の社会基盤の立ち遅れ等を考慮した独 自のシステムづくりを模索した.以下それらについて紹介す る. a)マラリア・ネットワークの整備 ラオス国では,従来マラリアに関する情報のほとんどが県 病院,郡病院,一部のヘルスポスト等の医療機関におけるマ ラリア患者の情報(PCD を基にしている.そのサーベイラ ンスシステムを再構築するについて,まずPCM (Project Cycle Management)による問題点の洗い出しを行なった結 莱,ラオス国ではソフト,ハード両面からの機能強化の必要 性を碓認した.すなわち,ハード面ではIMPEを含む検査機 関の施設整備やデータ伝達システムの構築が不可欠であり, これはラオスにおける社会基盤の著じるしい脆弱さによるも のである.ソフト画は,いうまでもなく診断技術の向上,徹 底した精度管理(クオリティーコントロール),適切な機材管 理能力などが上げられ,これらは多分にローカルスタッフの 意識改革によるところが大きい. これらの問題を解決するために,中央,県,郡のレベルで以 下のようなネットワーク機能強化の活動を行った. i) IMPE,県マラリア・センターのレファレンス・センター としての機能強化 1992年よりIMPEへのマラリア診断機材の設置を行い, 加えて日本から派遣された専門家による適切なマラリア診断 技術の移転が適宜行われた. IMPEは当時,ラオス国でも比 較的研究能力の高い施設であり,研究所の建物の老朽化が著 じるしく手狭であったことを除けば,その機能強化は比較的 順調に進んだ.研究所の建物は,その後ラオス側の自助努力 によって増築,新嘗され,研究所としての機能は格段に向上 した(Fig. 1).

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Nhommarath Nongbock Sebangphay Mahaxay 川nboon 20      40      60      80     100 Rate of false diagnosis [%】 Fig.2 Frequencies of missdiagnosis in 5 district malaria

centers before operation of quality control program for malaria diagnosis.

I False-negative; SS False-positive) 1995年からは,県マラリア・ステーションの整備に着手し, 同時にIMPEスタッフによりマラリアの診断,治療,疫学, プロジェクト管理,予防対策等の多方面にわたる技術移転が 県スタッフを対象に実施された.また,ハード画では顕微鏡 を中心とする機材供与に加えて,施設の改修,整備が行われ, 適切な職場環境を整えることでスタッフの職務に対する意識, 意欲の向上をもうながした. ii)郡マラリア・センターの整備 郡レベルのマラリア・センターは,その劣悪な設備状況が 当初より問題であり,ハード面の整備が最優先課題であった. 例えば, Table lには比較的アクセスの良かった5郡のマラリ ア・センターで調査した顕微鏡の状態を示した. 1996年2月 時点でかろうじて使用可能なものを含めて使える顕微鏡は7 台中2台のみであった. 2郡の2台の顕微鏡は修理し,その 他は使用可能なもの1台を除いてすべて新品と入れ替えるこ とになった.その後,残りの3郡のマラリア・センターの顕 微鏡も同様に修理もしくは更新し,他の染色機材の供与を含 めて全郡のマラリア・センターに基本的な検査機材の配置を 終えた.また,これらの機材整備を進めるなかで,ラオスで は雨期にはカビが,乾期には土壌が顕微鏡に大きなダメージ を与える原因となっていることから,その対策として木箱の なかに電球を設置した収納ケースで防カビ対策を講じるとと もに,顕微鏡の適切な保守管理の技術移転も行った.同時に, 草の根無償援助等による施設の改修も行い,各郡のマラリア・ センターの診断機能は当初に比べて格段に改善された.また, カムワン県では3郡(Nakai, Bourapha, Saibatong Dis-tricts)のマラリア・センターが,雨期の間,県都タケクとの アクセスが困難となるため,これらのマラリア・センターに は無線による連絡システムも導入した.これによって,県マ ラリア・ステーションでは年間を通じて全ての郡での流行状 況が把撞できるようになった. 以上のハード面の整備を進めつつ,トレーニングコースによ るソフト面の技術移転が郡マラリアスタッフ,郡病院医師,香 護婦などを対象に進められた.トレーニングコースはレファレ ンスセンターが管櫓下のローカルスタッフを指導するというシ ステムを確立するために, TOT (Training of trainer)によっ

Nhommarath Nongbock Sebangphay Mahaxay H nboon 20     40     60     80    100 Rate of false diagnosis [% Fig. 3 Effect of quality control program on malaria

diag-nosis in 5 district malaria centers. The frequencies of missdiagnosis were improved significantly from those in Fig.l after the operation of quality control pr0-gram for a year.

False-negative; S False-positive) て養成されたIMPEや県のマラリアスタッフが中心となって診 断,治嵐予防についてトータルな技術移転が行なわれた.当 初,これらのローカルスタッフのマラリアに関する基礎知識そ のものが著じるしく不足しており,トレーニング開始時に実施 したマラリアに関するペーパーテストでも正答率は平均でわず か51%程度であったが,コース終了後には正答率は89%に向上 した.また,実際のマラリア診断技術もトレーニングコースに 続く精度管理(クオリティーコントロール)プログラムによっ て著じるしく改善された. Fig.2には,トレーニングコース開 始直後の5郡マラリア・センターの検査結果を再チェックした 時の誤診断率を示した.マラリア陽性と判定された検査検体の うちで実際には陰性の結果を陽性と誤ったケース(false-positive)が10-44% (平均28%)も見られ,また,逆に陽性 結果を見逃すケース(false-negative)も0-18% (平均9.2%) あった.特にfalse-positiveが多かったことが意外であったが, これはトレーニングコースで習得された知識や技術が実際の場 で生かされていなかったり,トレーニングコースに参加しなかっ た他のスタッフへのTOTが十分でなかったことなどが理由とし て上げられる.さらに,ラオスでは従来,マラリアの検査はマ ラリア様の症状を呈して検査機関を訪れる者を対象に行われて きたため,その先入観が高いfalse-positiveを生んだ原因とも 考えられる. いずれにせよ,検査設備の整備やトレーニングコースのみ では十分な検査精度の向上を達成することが困難であったた め,検査精度の向上と維持のための精度管理プログラム(ク オリティーコントロール)を以下のように進めた.すなわち, 各部のマラリア・センターにおいて3カ月ごとに巡回技術指 導を行うとともに,各郡のマラリア・センターで診断された 陽性検体の全てと約10%に相当する陰性検体を県マラリア・ ステーションで再チェックするシステムを導入した.再チェッ クの結果は各郡マラリア・センターにフィードバックし,検 査スタッフの意識改革を図った.その結果, 1年後の各郡マ ラリア・センターでの誤診断率はFig.3に示すように,全体 で8 %以下に減少した. 上記のようなマラリア・ネットワークの整備,および検査 精度の向上を踏まえ,マラリアの正確な浸淫状況を得るため

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162 ラオス国におけるマラ1)ア対策

Table 2 Results of active case detection surveys for malaria ialection in Khammouane Province, Lao P.D.R.(Dec.'95-Mar.'99

Malaria species detected*

Village Date General Population* No.exam. No.posit.(%)

surveyed geography (F) (V) (M) (0) (F,V)(F,M)

Nakham Dec.'95 Shallow valley Aug. '96

Namdik Dec. 95 Forest Aug. 96

Hinboon neua Dec.'95 Plain Aug. '96

Sisomsouen Jul.'97 Plain & forest Phavang Jul.'97 Forest

Nongceng Feb. '98 Basimrice field) Sep. '98

Keovilay Feb. '98 Basin(rice field) Napong Mar. 99 Shallow valley Senphang Mar. '99 Shallow valley Dongrnakba Mar. 99 Forest

400 449 aョ 220 Oil 266 520 248 229 212 244 223 180 193 日EK 126 ICサ IK川 270 245 351 15( 6.0) 14 17( 7.4) 16 16 7.5) 16 15 6.1) 15 0  0) 4( 2.2) 10( 5.0) 49(34. 3)  44 36(28. 6   34 24(16.3)  21 34(25. 5)  30 2 2     1   2 46(17. 0)  40 32(13. 1) 19 13 0( 0 Population estimated

F: Plasmodium falciparum; V:P. vivaェ; M.:P. maiariae; 0:P. ovale

Fig. 4 Active case detection (ACD) survey on malaria among the villagers.

の住民検査を行った.その結果を以下に述べる.

b)住民の感染率調査

住民の間のマラリア流行状況を直接的に把追できるactive case detection (ACD)は,マラリア対策における基本的な サーベイランスシステムであると同時に,早期治療を行うこ とが可能な重要な要素でもある.隣国のタイでは,マラリア 流行地域の全ての村落において週1回ないしは月1回(流行 の程度によって異なる)のACD調査が実施されている.村落 ごとに養成されたマラリア・ボランティアによって採取され た血液塗抹検体は,マラリア・ネットワークの末端機関であ るマラリア・ユニットにおいて検査,診断され,治療が行わ れる.また,検査結果はさらに上部機関で再チェックされ, データの解析.精度管理が行われる.タイ国では,このよう なマラリア監視と早期対策によって,突発的大流行(out-を未然に防ぐ措置が続けられている. 他方,ラオス国ではoutbreakが起きた地域や政治的に重要 な地域で必要に応じてACD調査が実施されていたのみであっ た.その主要な原因は予算的裏付けの不足と考えられてきた が,県レベルではそれ以前にこのような調査の方法とその意 義がローカルスタッフに十分に理解されていなのが現状であっ た.そのため,最初に比較的アクセスの良い3村落を選んで 住民への情宣活動,検査検体の収集法,データ解析などを指 導し,これを順次その他の村落にも拡大,同時に年4回の調 査を行う方法として確立した(Fig.4).これまでの調査で得 られた住民のマラリア感染状況の結果をTable 2にまとめて 示す3,4)マラリア感染は検査した10村落中9村落で確認され, その陽性率は2.2-34.3% (平均10.1%)であった.一般にメ コン川から内陸に入った森林地域,渓谷小川に接する地域, 盆地に形成された田園地域での陽性率が高い傾向が見られた. またラオスではマラリア患者の発生は雨期の初めと終わりに 多い傾向が指摘されていた.しかし,これまでのPCD調査の結 果をみるかぎり,カムワン県では雨期の終わりに患者数が若

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Table 3 Comparison of results by Giemsa staining and PCR assay for detection of malaria parasites among the inhabitants in two villages, Khammouane Prov-ince, Lao PDR

PCR assay

Giemsa staining

Positive Negative Total

Phavang Village Positive Negative Total Sisomsouen Village Positive Negative Total 49(34. 3)  0  0  49(34. 3 38(26. 6)  56(39. 4  94(65. 7) 87(60.8   56(39.4) 143 100 9( 4.7)  0  0)  9 4.7) 21(10.9  163(84. 5 184(95.3) 30(15.5) 163(84.5) 193 100)

Fig, 5 PCR patterns showing the presence ofP. ovaleinfec-tion in fivevillagers (#219, 235, 346, 360 and 365)". Each band represents positive PCR response to P. falciparum (F), P. uiuax(V), P. malariae(M), and P. ouale(O),

respectively. 干増加する傾向があるだけであり,今回の調査でも年間を通じ て感染率に大きな変化は見られなかった.これらのことから, この地域でのマラリアは年間を通じて変化が少ないタイプの 流行であることが分かる.検出されたマラリア原虫は,その 87%が悪性の熱帯熱マラリア(P. falciparum)で.三日熱 マラリア(P.viuax)の感染は11%に過ぎなかった.また東 南アジア地域では稀な四日熱マラリア {P.malariae)と卵形 マラT)ア(P.ouale)の感染も少数ながら認められ(Fig. 5 )9),ラオスでは人体寄生性マラリア原虫4種全ての流行が見 られことが明らかになった(Table 2).また,調査した10 村のうち2村では,最新の検査法であるPCR法によるDNA診 断も平行して行い,結果を比較した. Table 3に示したように, ギムザ染色による検査のマラリア陽性率はこれらの村で34.3 %と4.7%であったが, PCR法では60.8%, 15.5%に達する陽 性率が得られ,住民の間の感染率は上記の結果よりも実際に はかなり高いことも示唆された PCR法によるマラリア診 断は.従来のギムザ染色法による鏡検よりも検出感度が100倍 も高いといわれており,住民の間には従来のギムザ染色法で は検出困難な不顕性感染者が多数いることも明らかになった. Table 4にはその結果を年齢別,性別に比較した結果を示し た.ギムザ染色法による陽性者は20歳以下の若年者の間で多 く見られたが, PCR法による陽性者は壮年層においても多数 認められた.このことは,若年層で原虫血症(parasitemia) の高い急性感染が多く,年齢とともにギムザ染色による検査

Table 4 The positive rate of malaria parasite among the inhabitants in Phavang Village, (by age group and sex)

No.posit. (%) Age group Sex No.exam.

Giemsa PCR assay Male -10      Female∋ Total Male -20     - -Female Total Male -30      Female Total Male -40      Female Total Male -50      Female Total Male 51-      Female Total 32  15(46. 9)  20(62. 5) 27   9(33. 3) 12(44. 4) 59   24(40. 7)  32(54. 2) 16   8(50. 0) 15(93. 8) 3(60.0)  3(60.0) 21 11(52. 4) 18(85. 7) 2(28.6   6(85.7) 2(28.6)  3(42.9) 14   4(28.6   9(64. 3 1(ll.1)  5(55.6) 3 42.9    5(71.4) 16   4(25.0  10(62. 5) 0( 0)  2(33.3 1(12. 5)  4(50.0) 14   K 7.1)  6(42.9) 12   3(25.0)  7(58.3 2(28.6)  5(71. 4 19   5(26.3) 12(63.2) Male    82   29 35.4   55(67.0) Total Female  61   20 32.8  32 52.5) Total  143   49(34. 3   87(60. 8

The results showed a similar tendency to the above in an-other village, Sisomsouen Village.

では検出することが困難な慢性感染に移行することが推測さ Iaa 以上の調査はラオス国では初めて実施された広範なACD調 査であり,得られた結果は従来考えられてきたよりもはるか に深刻なマラリア流行状況にあることを示している.また, その疫学的特徴からマラリア予防対策では急性感染による子 供の死亡率を低下させるために,当面,若年齢層をターゲッ トとした予防対策を進めるとともに,長期的な撲滅に向けて は壮年層の不顕性感染者を含めた集団検査と集団治療を行う ことの重要性が指摘される.さらに,メコン沿い以外の地域, 特に盆地に形成された田園地域やベトナム国境に近い渓谷に 形成された村落で深刻なマラリアの流行がみられることから, それらの地域での対策を優先することの重要性も認識された. サーベイランスシステムを基盤としたかかる流行状況調査は, 本プロジェクト終了後も新しいDip Stick法(免疫マラリア簡 易珍断法)なども導入しつつ,引き続き20村以上に拡大,継 続されている. Dip Stick法は,その場で直ちに結果を得るこ とができる簡便な方法であり,陽性者にはその場で投薬が行 えるため,より高い集団対策の効果が期待できる. C)媒介蚊調査 マラリア対策を実施するうえで,ベクターであるハマダラ

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ラオス国におけるマラリア対策

Fig. 6 Training of villagers for treatment (dipping) of mosquito bed nets with deltamethrin.

カ類の発生状況を調べることは重要な要素である.このため には,その地域における主要なマラリア媒介種を特定するこ と,それらの生息環境,特に幼虫の発生源を明らかにするこ とが大切である.隣国タイでは Anopheles minimus, An. maculatus, An. dirusといった種類が主要なマラリア・ベク

ターであることが明らかになっており,それら幼虫の発生源 の調査も進んでいる. しかし,本プロジェクト開始当初,ラオスではマラリア・ ベクタ」に関する情熱ま皆無に等しく,蚊の採集法,同走法, 原虫検出法,データ解析法などの基本的な調査方法すら理解 されていなかった. この領域の支援は,本プロジェクト終了間際から本学保健 学科環境保健学教室(宮城一郎教授)の協力を得て開始され, その後,文部省科学研究費国際学術研究などとも連動しなが ら続けられている.これまでの予備的調査から,カムワン県 のマラリア流行地では,周辺国でマラリア媒介蚊として知ら れている種類のほかにAn. nivipesもEE]園性マラリアの重要な 媒介種である可能性を示唆する興味ある成績を得ている2. 3) この領域の調査,研究は,その後,わが国の草の根無償援助 などの支援を受けつつ現在も進められており,また,日本の 研究者の協力を得て分子遺伝学的手法による媒介蚊特定の研 究へと発展している. d)マラリア予防対策プログラムの試行 かって世界の対マラリア戦略は,有効なクロロキンによる 集団治療と殺虫剤の残留噴昇によるベクターコントロールを 主柱として進められたきた.しかしその後,急速なクロロキ ン耐性原虫の出現と環境汚染の問題から,これらのマラリア 戦略は今日完全に手詰まりの状態に陥っている.近年, WHO を中心とする世界機関は,過去のマラリア対策の経験からプ ライマリーヘルスケアと連動した総合的マラリア対策を苦肉 の策として推進しているが,そのなかで殺虫剤を没み込ませ た蚊帳(IBN: impregnatel led-net)による予防対策が比軟 的有効な方法として推奨されている.対策にあたって,住民 教育を兼ねた住民の蚊帳の保有状況,使用状況をPHCプロジェ クト対象地区74カ所で聞き取り調査した.その結果,マラリア が蚊の刺暁によって感染することを知っている住民の割合は 約76%,蚊帳の保有率は90%,それらの使用率は平均80%で あった.そこで,本プロジェクトでは森林部に位置する2村を 対象にIBNの配布による予防プログラムを試行してみた. IBNプログラムによって,これら村落のほぼ全世帯にIBNを 配布し,さらにこれを維持させるための資金回収システムを 導入した.すなわち, IBNは6-12カ月ごとに殺虫剤に浸潰し なければその効果が低下するため, IBN配布の際にそのコス トを住民が負担し,その資金を次回の殺虫剤再浸清のための 資金とした.蚊帳の殺虫剤へ浸潰は住民自身の手で行うよう, その方法を指導し(Fig. 6),回転資金の回収も住民参加型 の対策を意図してローカルスタッフが中心となって住民主体 で行うようにした.その結果,回転資金はほm0%回収され, 対策1年後でIBNの普及率は依然として100%,住民のマラリ ア感染率は当初の8%から2%にまで減少した. 考察とプロジェクト終了後の展望 ラオス国のマラリア流行状況について, IMPEによる公式 の発表では1998年の患者数が307,189人.うち死亡者数は588 人となっている.しかし,この公式発表は,基本的にマラリ アの疑いで医療施設を受診した住民を対象としたものであり. 臨床症状を伴わない慢性感染を含む一般住民の感染状況を必 ずしも示すものではない.しかも,マラリア・サーベイラン スの主体をなすはずの郡レベルのマラリア・センターにおけ る診断は,劣悪な検査環境と低い検査技術のため,きわめて 精度の低いものであることがプロジェクト開始当初の調査で 明らかになった.マラリア予防対策を進めるうえで,最も基 本的な問題はその効果を評価するためのサーベイランス・シ ステムを確立することであり,このような観点からまずモデ ル県のマラリア・ネットワークの機能強化とマラリア診断の 質的向上を図る活動を行った.具体的には,レファレンス・ センター(IMPE,県マラT)ア.ステーション)の機能強化, 各郡のマラリア・センターの設備.機材の整備,トレーニン グコースによる検査技術の向上と,その後の再チェックシス テムによる検査精度の維持を図った.その結果.当初平均20 %以上もあった誤診率が1年後には平均8%以下にまで減少 した.その結果を受けて, ACD調査による住民の感染状況の 調査を行ったところ,ほとんどの村で高いマラリア陽性率が 得られた.特にPCR法やDip stick法を導入した初めての調査 では,従来のギムザ染色法による検査で得られる陽性率を2 倍以上上回る陽性者を検出し,成人層を中心に多くの不顕性 感染者の存在を明らかにすることができた.また,検出され たマラリア原虫の9割近くが悪性の熱帯熱マラリア原虫であ ること,なかには東南アジア地域では稀な卵形マラリアも含 まれることなどの貴重な学術的成果も得ることができた.ま た,平行して進められた媒介蚊調査では,生息するハマダラ カ類の種類が明らかになりつつあり,なかでも周辺諸国では 主要なベクターとは考えられていないAn. nivipesがラオスで は田園性のマラリアの重要な媒介種のひとつである可能性な どが示唆された.これらの疫学的調査結果をふまえIBNに よる住民参加型のマラリア予防プログラムを2村で試行し, その有効性を確認した.このIBNプログラムは,現在,ラオ ス政府ナショナルプランとして策定され,ヨーロッパ共同体, 世界銀行,アジア開発銀行などが援助して全国規模で実施さ れつつある.本プロジェクト終了後,わが国もラオスへの新 たな保健医療援助のひとつとして,カムワン県を含む3県を

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対象とし,合計40,000張の蚊帳を無償援助として供与してこ のナショナルプランに協力している.また,いくつかの草の 根無償援助により,マラリア対策の基盤整備をさらに進めつ つある.なかでも,わが国としてIBNプログラムをカバーす る3県に対しては,草の根無償援助によるマラリア訓練セン ターの建設が認められ,宿泊施設を含むセンター棟の建設が 進行中である. これらプロジェクト以後のマラリア対策に対して, JICAは 引き続き本学医学部の支援を期待しており, 1999年以降,長 期,短期の個別専門家,青年海外協力隊貝が本学から派遣さ れ, IBNプログラムのモニタリング評価に協力しつつある. 折しも,文部省に申請したラオスでのマラリア調査(海外学 術研究:代表 宮城一郎教授)も採択になり,これと連動し たマラリア対策が引き続き展開される見通しである. 謝辞:本プロジェクト活動を行うにあたり,ラオス保健省, IMPE,カムワン県保健局の絶大な協力を得た.また,わが 国外務省,在ラオス日本大使館, JICA,同ラオス事務所の多 大な助言と支援を頂いたことも合わせ,深謝申し上げる. 参考文献

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8 ) Toma H., Kobayashi J., Vannachone B., Arakawa T., Sato Y., Nambanya S., Manivong K. and Inthakone

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chain reaction assay in southeastern Laos. Am. J. Trop. Med. Hyg. (in press).

9 ) Toma H., KobayashiJ., Vannachone B., Arakawa T., Sato Y., Nambanya S., Manivong K. and Inthakone S.: Plasmodium ovale infections detected by PCR assay in Lao PDR. Southeast Asian J. Trop. Med. Public Health (in press).

Table 3 Comparison of results by Giemsa staining and PCR assay for detection of malaria parasites among the inhabitants in two villages, Khammouane Prov‑ ince, Lao PDR PCR assay Giemsa staining Positive Negative Total Phavang Village Positive Negative Tota

参照

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