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新学習指導要領に関する調査研究 : 中学校における定着の諸条件

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(1)新学習指導要領に関する調査研究 一中学校における定着の諸条件一. 学校教育専攻 教育経営コース. M9/06/J 高 木. 晋.

(2) 〈 目. 次 〉. 第1章研究の目的. 1”“ 14. 第!節 学習指導要領の与える影響. 2. 第2節 問題の所=在. 4. 第3節 研究の目的. 10. 第2章 研究の方法. 15一 29. 第1節研究の枠組. 16. 第2節 分析の方法. 26. 第3節 調査対象及び回収結果. 27. 第3章 学校の「定着」活動. 30一 39. 第!節 選択教科開設のための研修. 31. 第2節 道徳・特別活動の既実施事項. 33. 第3節 新学習指導要領の基本理念理解のための研修. 34. 第4節 先取り実施. 36. 第5節 新教育課程試案作成. 37. 第6節 新教育課程実施のための組織作り. 38. 第4章 「定着」活動を促す要因. 40一 55. 第1節本章での分析枠組. 41. 第2節. 48. 「新学習指導要領への関心」の規定要因. 第3節 「定着」の規定要因. 51.

(3) 第5章 学習指導要領の定着を促す学校経営・教育行政のあり方. 56一 63. 第1節学校経営に求めちれる対応. 57. 第2節教育行政に求めちれる施策. 61. 注. 64. 付 録. 66−140. 付録1「学習指導要領の変遷」. 67A” 83. 付録2「学習指導要領の作成・実施過程」. 84一 93. 第1節 作成過程. 84. 第2節 実施過程. 87. 付録3「平成元年告示学習指導要領の内容と特色」. 94A”112. 第1節 新学習指導要領の特色. 94. 第2節 新学習指導要領の評価. 105. 付録4 調査依頼状. 113一・114. 付録5 調査票. 115一・126. 付録6 単純集計結果. 127−133. 付録7 分散分析表. 134一一140.

(4) 第■章 研究の目白勺. 一1一.

(5) 第1節 学習指導要領の与える影響 学習指導要領は,小学校・中学校・高等学校の教育課程の国の基準で あり,教育課程行政の中でも,重要な政策の一つである。. 昭和22年に試案という形で初めて示され,昭和33年改訂から法的拘束 力を持つに至った。その法的根拠は,以下の通りである。. 学校教育法論20条で,「小学校の教科に関する事項は一中略一監督庁 がこれを定める」(中・高準用)とされ,監督庁については同法第106 条により,文部大臣であると定められている。さらに同法施行規則第25 条(教育課程の基準)で,「教育課程については一中二一教育課程の基 準として文部大臣が別に公示する小学校学習指導要領によるものとする 」(中・高準用)に根拠をもっている。. このように法的拘束力を持つ学習指導要領は,現在の初等・中等教育 の,教育内容,各教科の指導形態等,さらには,児童・生徒が身につけ る学力といったことにまで影響を及ぼす。. まず,教育課程の国家基準として法的に拘束力を持つとされているた め,公教育である小学校・中学校・高等学校は,学習指導要領に記され ている内容に従い,教育課程を編成し,各教科,道徳・特別活動の教育 活動を展開していかなければならない。扱う教科,各教科の年間授業時 間数,教科の内容,道徳・特別活動の内容等,学習指導要領によってい る.各学校で独自の教科や,教科内容を扱うにしても,学習指導要領に 記されている方針に従っていかなければならない。. また,教育課程の基準である以上,当然,教科書の内容も学習指導要 領の改訂の度に改められ,教科書検定の基準ともなる。さらに,入学試 験の内容も学習指導要領の内容にそったものが求められる。. また,改訂が行われる度に,教科内容の加除が行われたり,扱いの重 一2一.

(6) 点事項が変わったりする。その改訂は,単に,改訂の起きた当該校種に 影響を与えるだけではなく,他の校種にも影響を与えていく。. 例えば,位相幾何が昭和44年中学校学習指導要領にあり,教科書にも 登場していた。しかし,昭和52年改訂により位相幾何は削除された。つ まり,この二つの学習指導要領に基づく教育課程で学んだ生徒間では,. 持っている知識の量なり,質といったものが異なるのである。高等学校 に進んだ時点で,中学校での位相幾何の知識を持っているか,いないか で,幾何に関しての指導の出発点が異なってくるのである。. 即ち,義務教育終了段階,中等教育終了段階での生徒の知識の内容が ,その時々の学習指導要領によって異なるということである。特に,義 務教育段階での教育内容が,国民一般に必要不可欠な知識・教養である とすれば,そうした国民の知識・教養といったものの内容を規定する力 を,学習指導要領は持っていると言える。. 以上のように,学習指導要領は,単に学校だけに留まらない影響力を 持っている。. この,学習指導要領の存在については,指導助言の文書以上の法規性 (1). は認めちれないとする見解も根強い。. しかし,学習指導要領が法的拘束力を持つが故に,全国のどこの学校 でも,一定の水準の,一定の内容の教育を行い,それを受ける権利を国 民に保証しているという意義も認められる。. (尚,学習指導要領の変遷については,巻末の付録1に詳細を記した ので,参照されたい。). 一3一.

(7) 第2節 問題の所在 (1)教育課程行政の抱える問題. 第1筋で述べたように,学習指導要領は教育課程の国家基準として, 学校の教育課程編成に影響を及ぼし,ひいては,国民共通に求めちれる 教養・知識のあり方へも影響を及ぼしている。. このような,学習指導要領という,教育課程行政の中でも重要な政策 に,まずもって求められることは,政策である以上実現されなければな らないということである。. この場合,実現されるということは,学習指導要領の内容が,その趣 旨を生かされながら,各学校の教育課程編成に生かされ,日常の教育活 動の中に,十分に取り入れられている状態,即ち,学習指導要領が定着 している状態をいう。. 学習指導要領を定着させるために,文部省,教育委員会は種々の施策 を取る。 (このことについては,「学習指導要領の作成・実施過程」と. して,付録2に詳細を記した。). これらの施策は,学習指導要領の定着のために各学校が取る活動を援 助することによって,学校の活動を促し,学習指導要領の定着を図って いくために行われている。. だが,こうした文部省や教育委員会の施策が,学習指導要領の定着に 有効であるとしても,果たしてどの程度各学校の活動に寄与しているの かについては,問われてこなかった。即ち,施策の評価が行われていな いのである。施策の評価を行うことで,効果の薄いものを見直し,効果 の高いものをより推し進めるといったことがなされ,結果的に定着のた めの活動を,より効果的に促すことにつながるのである。. 同様のことは,全面実施された後の学習指導要領自体にも言える。. 一4一.

(8) つまり,学習指導要領のどのような内容が定着しているかを問い,次 の改訂に生かしていくという作業が求めちれるのである。. 文部省初等中等教育局で行っている,「教育課程実施状況調査」「教 育課程編成状況調査」は,その意味で,定着の結果を調査するものであ る。しかし,明かになった定着の状況が,どういつだ要因に左右されて. いるのか,また,どういつだ要因があって今ある定着の状況が生じたの かまでを問うものではなかった。その点で,次の改訂に調査結果を生か すとか,定着を促す有効な施策を考えるといったことには,あまり示唆 を与えないものと見られる。. 以上,教育課程行政の問題としては,①施策の評価が行われていない ,②心ある定着の状況が,どういつだ要因によって生じているのかを明 らかにしていない,という2点を指摘することができる。. ②先行研究の吟味. 上の2つの問題点に関わる研究としては,筆者の見るかぎり,金子他 C2) による「学習指導要領の定着過程についての総合的研究」の他見あたら ない。. この研究は,従来の定着に関わる研究が「何故,そのような実態を生 みだしたかについての規定要因の分析」が「軽視」されていると位置付 けたうえで,「「定着」の実態に対して影響力を持っている諸要因を解 明するとともに,教育課程行政上の諸組織の機能的連関性を明らかにす る」ことを意図して行われたものである。多少長くなるが,以下の考察 のために,この研究の概要を記す。 〈研究の概要〉. この研究での仮説は,学習指導要領の改訂の際の,各教育委員会の活. 一5一.

(9) 動には,それぞれ特色があり,それを受けて,学校の活動のあり方も変 わってくる。その結果,定着の状態は,各学校によって独自性を持って くる,というものである。そこで,対応のあり方を類型化し,類型相互 の間で比較・検討を行い,定着の状態を規定する要因を探ることを目的 としている。. 研究の対象となったのは,昭和52年版学習指導要領である。この研究 では特に,「ゆとりの時論」に,どのように教育委員会,各学校が取り 組んだかに焦点を当てている。. この研究では,学校の新教育課程編成・実施の規定要因として,教育 委員会の指導行政と学校の組織特性を取り上げている。. 教育委員会の活動の指標としては,文書の発行頻度(ことに,手引き 書,地方的基準文書),各学校・研修会での指導・助言,文部省の講習. 会等への人材の派遣の3つを設定している。この3つの指標をもとに, 都道府県教育委員会,市町村教育委員会に対して質問紙調査を行い,活 動の類型化を行っている。. 結果として,都道府県教育委員会を4つの類型に分け,それぞれの市 町村教育委員会の活動の特性を,以下のように記述している。. Aグループ 都道府県∼活動性高い。管理職指向の活動。 市町村 ∼活動性平均的。都道府県への依存性高い。. Bグループ 都道府県∼活動性高い。市町村教育委員会指向の活動。 市町村 ∼教員への指導助言活動活発。 Cグル・一一一プ. 都道府県∼活動性平均的。活動の指向性ははっきりしない。. 一6一.

(10) 市町村 ∼文書の発行が他のグループに比べ活発。. Dグループ 都道府県∼活動性低い。市町村教:育委員会指向の活動。. 市町村 ∼Aグループに似た活動傾向。 学校の組織特性については,校長のリーダーシップと,教師の意思決 定への関与度が,新教育課程編成に影響を及ぼしていることを明らかに した。特に,地域性を考慮した教育課程の編成の機運,教師の研修意欲 ,学習指導要領が弾力化したという見方が強くなってきたこと,に影響 を及ぼしている。. また「ゆとりの時聞」の実施率は,学校の組織的要因が強く,先に記 したf.・教育委員会の活動の類型には係わりが薄いことを明らかにしてい る。. 以上が,研究の概要である。. この研究結果を検討してみると,各学校での活動の状況がはっきりと は表れてきていないといえる。「ゆとりの時間」に関しての情報源とそ の活用度は調査されているが,それ自体が教育課程編成の何に影響を与 えたかは,明らかになっていない。それ以外でも,どのような内容の研 修がなされ,それが教育課程編成のどこに深く関わっているのか,が, 明かになっていない。. 従って,定着の実態に対して影響力を持っている要因を明らかにする という目的を,この点では,十分に果たしているとは言いがたい。. また,規定要因として,教育委員会の指導行政と学校の組織特性をと りあげている。このうち,教育委員会について活動を類型化したものの. ,各類型の解釈に無理があるのではないか。この類型を基にして以後の ,学校の活動の分析もするため,考察の信頼性に問題がある。. 一7一.

(11) サブグループAの活動特性の分析で,市町村教育委員会が参考文書を余 り作成しない理由として,都道府県教育委員会が作成しているという理 由をあげている。それをもって,都道府県教育委員会への依存性を高い と言うことは言えても,都道府県教育委員会の指導力が強いという特性 (3) は出てこないのではないか。. 仮に,指導行政の類型を利用して分析したとしても,各類型毎に,学 校ではどのような活動がなされ,どのような要因に規定されているか, 最終的にそれらが「ゆとりの時間」にどのように結び付いていくかが, 述べちれなければならないが,その点が不十分である。. また,この研究での組織特性は,学校の組織風土である。このほかに ,ことに中学校の場合,生徒要因も,学習指導要領の定着には無視でき ないと考えられる。具体的には,生徒指導上の問題の有無とその程度, 生徒の学力傾向が上げられる。生徒指導上の問題が関わる理由としては ,昭和52年版学習指導要領の中学の選択教科の開設の時の経緯がある。. 当時は,校内暴力を始めとする学校の荒れが深刻化していた。そのた め,選択教科を生徒に選択させる方法では開設できなかったり,仮に開 設しても,問題傾向のある生徒が固まったりするために,その時間をき っかけに学校の荒れが一層深まるといった状況が生じたりしたこともあ った。(4). また,学力が関わる背景としては,中学の英語が昭和52年版では週3 時間になったため,英語の学力の低下が心配され始め,「ゆとりの時間 」が衰退していったとの指摘もあるIS). 以上の理由かち,生徒要因は,学校の定着のための対応に大きく影響 を与えると考えられ,組織特性を,単に,校長のリーダーシップと職員 の意思決定への関与度だけでは論じられないと考えられる。. 一8一.

(12) まとめると,唯一の先行研究であるこの研究は,①学校の活動・教育 委員会の活動のいずれからも定着の実態を規定する要因がはっきりとは 出てきていない,②仮定された規定要因以外にも大きな影響を与えるも のが存在すると考えられる,という問題を持っていると見られる。. これまで述べてきた,教育課程行政の問題点と,これまでの研究の問 題点を合わせて考えてみたとき,教育課程行政の中での問題点が,教育 課程行政の当事者は勿論,これまでの研究の中でも十分に解決されてい ないということが分かる。学習指導要領が政策である以上,実現されな ければなちないという原点にたちかえると,問題点が十分に解決されて いないという状況は,実現に向けては大きな障害となるのではないか。 何故なち,学習指導要領が新しく示されてから,全面実施までの限ち れた時間に,新しい学習指導要領の内容を定着させるためには,できる だけ効率的な施策が求められるからである。そうしないと,全面実施に. 入っても学習指導要領の内容が十分に生かされずに教育課程が編成され ,結局,定着が図られずに終わってしまう可能性があるかちである。. よって,学習指導要領の定着結果そのもののみを問うことよりも,定 着に至るまでの,文部省,教育委員会,学校の種々の活動や属性・特徴 がどのように絡み合って,今ある定着の状況を規定しているのかを問う ことのほうが,学習指導要領という政策を実現するに必要な条件を考察. するのに有効なのではないだろうか。これは,これからの教育課程行政 に求められると同時に,学習指導要領の定着に関する研究にも求めちれ る視点ではないだろうか。. 一q一.

(13) 第3節 研究の目的 (1)用語の定義. 以後の論を進めるにあたり,以下の2っの用語の本研究での定義を記 す。. ①「定着」. 学習指導要領の内容が,教師に理解され,日々の教育活動の中で,そ の趣旨が生かされ実施されている状態が継続すること。この状態を学習. 指導要領が「定着」している,と本研究では定義づける。また,学校が ,学習指導要領の「定着」のためにとる組織的活動を,「定着」活動と ,本研究では呼ぶ。. ②移行措置期間. 学習指導要領が告示されてから,全面実施までの期間をさす。平成元. 年版の場合,小学校は平成元年度∼3年度移行措置期間・4年度全面実 施,中学校は平成元年度∼4年度移行措置期間・5年度全面実施,高等. 学校は,平成2年度∼5年度移行措置期間・6年度から学年進行で実施 となっている。この間の各学校の対応については,移行措置期間の扱い についての通達が文部省かち出される。各教科,道徳・特別活動につい. ては,旧学習指導要領と新学習指導要領の差を埋めるため,内容の加除 ,上下学年への移行などが細かく示される。. 移行措置期間は,新しい学習指導要領に円滑に移行するための特例措 置の期間である。現実には,新しい教科書ができるまでの,繋ぎの期間 でもある。この期間に,文部省,教育委員会は「定着」を促す活動を取 る。各学校は,それちをもとにし,また,独自に「定着」活動を行うの. である。新しい学習指導要領の「定着」のためには,不可欠の期間であ り,この期間の活動如何が「定着」の状態を左右するといえる。. 一10一.

(14) (2)研究の目的. 学習指導要領は,教育課程行政の重要な政策である以上,「定着」と いう形で実現されなくてはならないことは前に述べたとおりである。. しかし,「定着」されなければならないものであるにも関わらず,こ れまで「定着」に関しては,研究者の関心が向かなかった。. だが,「定着」に注目するということは,前節で述べたように,教育 課程行政の中での問題点である,施策の評価を行っていないことを克服 することにつながる。さらに,単に「定着」結果だけに注目するのでは なく,いかなる要因によって,今の「定着」があるのかを考えることで ,先に指摘したように,学習指導要領の「定着」を図る際の,施策のあ り方について,有効な指針を与えるのである。「定着」を考える意義は ここにあるのではないだろうか。. さて,学習指導要領が示されて,学校なり教育委員会,文部省なりが 何も対策を講じることなく,「定着」は実現しない。改訂され,新しい 内容が多かれ少なかれ盛り込まれている以上,学校側は改訂前の学習指 導要領の通りの教育活動では,新しい学習指導要領の趣旨・内容を生か していくことはできない。そのため,新しい学習指導要領の内容を理解 したり,新たな授業方法のための準備,教員組織の見直しなどといった. ,学習指導要領全面実施に向けての準備を,学校は行っていかなければ ならないのである。こうした,学校の活動があって,初めて「定着」が 可能となるのである。「定着」を考えるには,まず,学校の準備活動と. してはどのようなものがあり,それらが,どの程度行われているかを考 えなければなちない。. 次に考えなければならないのは,そういった学校の活動のあり方を規 定してくる要因にはどのようなものがあるか,ということである。. 一11一.

(15) 学校内の要因,学校外の要因とに分けて考えてみると,前者としては ,組織風土,地域,生徒といったものが考えられ,後者としては,教育 委員会の活動といったものが考えられよう。教育委員会や文部省の学習 指導要領に関する施策は,その殆どが,学校の「定着」活動を援助する ことを意図して行われている学校外の要因である。. こうした要因が,どの程度学校の活動を規定してくるのかが,次に考 えられなければならないのである。. 以上の,学校の「定着」活動と,「定着」活動に関わってくる要因の うち,教育委員会や文部省の活動は,移行措置期間に集中的に行われる のである。. 従って,「定着」を考えるとき,移行措置旧聞は無視することができ ない期間であると言える。. この,移行措置期間を経て「定着」に至る過程,即ち「定着」過程に 本研究は注目をする。. 本研究は,平成元年告示された中学校学習指導要領(以下,新学習指 導要領と記す)をその研究対象とする。これは,新学習指導要領の内容 が,前回の学習指導要領の内容:を引き継ぎ,発展させたものとなってい. るため,前回の学習指導要領の「定着」の状態が,新学習指導要領の内 容の「定着」にかなり関わってくるのではないか,という考えを検討す るのには,非常に好都合であるという理由が一つにはある。また,必修 教科の時間数が弾力的に示されたこと,それと表裏の関係で,選択教科 を拡大し,学校裁量で,各教科の時間数を設定しなければなちなくなっ たこと,個に応じた指導の推進等,前回の学習指導要領の内容を発展さ せているとはいえ,かなりの部分で,これまでにない学校側の対応を必 要とする内容が盛り込まれている。そのため,その趣旨を生かすには,. 一12一.

(16) 教育委員会の指導・助言を受けながらの学校の対策が十分になされなけ ちばならない。よって,学校によっての活動の程度にはかなりの差が生 じると考えたかちである。. 本研究は「定着」過程に注目すると先に述べた。「定着」過程の研究 は,本来,学習指導要領が告示され,移行措置期間に入り,その期間に なされる活動を研究し,全面実施後,それらが最終的にはどういつだ内 容の「定着」に結び付いたかを,追跡する形で見ていくものであると,. 筆者は考える。しかし,本研究が行われた時期は,新学習指導要領の移 行措置期間に当っているため,最終的にどういつだ内容が「定着」した かを検証することは不可能であった。. しかし,先に述べたように,移行措置期間は「定着」を図るには不可 欠な期間である。その不可欠な期間に,各学校がとる様々な「定着」活 動に注目し,それちがいかなる要因によって規定されているかを実証す ることは,教育課程行政,学校経営両面にわたって,「定着」を促す条 件を検討するために,有効な情報を提供すると考えちれる。. 従って,本研究は「定着」過程の一部分を扱う研究であると位置付け られる。. 以上かち,本研究目的は以下のようになる。. i①移行措置期間中の各学校の「定着」活動の実態を把握する。. i. i②その実態は,いかなる要因によって規定されているのかを,統計i i 的手法を用いながら,実証的に明らかにする。. i. i③その結果を踏まえて,教育行政に求められる施策,学校経営に求i. i められる対応を考察する。. −13一. i.

(17) 一/4一.

(18) 第2章. 研究の方法. 一15一.

(19) 第1節 研究の枠組 研究を進めるにあたり,研究の枠組を設定しなければならない。. 先の,3っの研究目的は,相互に並列的な関係ではない。まず,研究 目的①「移行措置期間中の各学校の「定着」活動の実態を把握する」を 行い,具体的な資料を得る。次に,把握した学校の「定着」活動を従属 変数とし,学校の「定着」活動に関わると考えられる要因(例えば教育 委員会の活動といったもの〉を独立変数とし,統計的手法を施して,両 変数の関係を明らかにする。これが研究目的②にあたる。研究目的③は ,ここで出てきた結果をもとにしての考察である。. つまり,本研究では,学校の「定着」活動を従属変数とし,「定着」 活動を規定する要因を独立変数として,研究の枠組を設定することにな る。. 次に従属変数の指標,独立変数の指標を設定する。これらの設定にあ たっては,新学習指導要領の内容,及びそれに対しての評価,移行措置 期間の活動についての提言・実例等を参考にした。 (詳細は巻末の付録 3に「平成元年告示中学校学習指導要領の内容と特色」として記した。). (1)「定着」活動の指標. 移行措置期間中の学校の活動は,大きく二つに分けられる。一つは, 新学習指導要領の全面実施に向けての準備にあたる活動である。これに は,職員の学習指導要領に関しての共通理解を図るための研修活動,各 教科毎の指導計画等の見直し,新教育課程編成に向けての組織作りとい った活動が含まれる。もう一つは,新学習指導要領の内容の実施である 。新学習指導要領の場合,道徳と特別活動は平成二年度から全面実施と なっている。また,先取り実施という形で,移行措置期間中に新学習指. 一16一.

(20) 導要領の内容を全面実施に先だって行ってもよいことが,移行措置通達 で示されている。この2つの内容が,新学習指導要領の実施として考え られる。. 以上,二つに大きく分けられる移行措置期間中の学校の活動が,具体 的な「定着」活動ということになる。本研究では「定着」活動の指標と して以下の内容のものを設定した。. ①選択教科開設のための研修. 選択教科の拡大は,新学習指導要領の改訂の中心的事項である。これ は,個性を生かす教育の一層の充実を図ることを意図しての改訂内容で. ある。昭和52年忌学習指導要領で3学年に,外国語を除く実質週1時間 に,実技4教科とその他必要な教科を選択する時間として登場した。今. 回は,2学年,3学年に対象学年を拡大し,対象教科も拡大された。こ れは,これまでは,義務教育の完結段階と見てきた中学校のあり方を,. 前期中等教育と見直し,特に高等学校に接続するということを重視しな がちの改訂方針を表しているものと見ることができる。このことは,高 等学校学習指導要領解説総則編のなかで,中学校での選択履修の拡大に より,生徒の選択能力が向上することを前提にして高等学校での多様な to 教科内容からの選択が可能になったと,文部省が述べていることからも. 裏付けちれる。つまり,選択教科の拡大は,中学校教育課程に留まちず ,高等学校の教育課程にも係わりを持つものと位置付けられる。中学校 での選択教科の経験を前提にして高等学校の選択教科があると考えると ,高等学校での選択教科の定着は中学校の教育課程のあり方に,かかっ. ていると見ることができる位,今回の中学校の選択教科の拡大は大きな 意味を持つものと位置付けちれる。. また,必修教科の時間数とのかね合いから,選択教科の時間数,教科. 一17一.

(21) を,各学校の裁量で決めることが求められていることかち,中学校とし ては,選択教科についての対策は避けて通れないものと考えちれる。. そこで,選択教科を新たに開設したり,拡大したりするための移行期 間中の「定着」活動として,選択教科開設のための研修を指標として設 定した。. ②道徳・特別活動の既実施事項. 移行措置期間の通達によれば,道徳,特別活動については,平成2年 度から全面実施となっている。道徳については,「道徳教育の全体計画 と道徳の時間の年間指導計画を作成するものとする」とされている。ま. た,特別活動については,「学校や生徒の実態に応じて弾力的に指導が できるようにする観点から,学級会活動と学級指導を統合して新たに設 けられた」学級活動が登場した。これにより,特別活動の指導計画の作 成も求められている。. 個々の内容を問うことにより,「定着」活動をはかることは,各学校 の実態が異なるため不可能であると判断した。そこで,道徳・特別活動 の指導計画作成状況,学級活動の趣旨の徹底が図られているかをもって ,道徳・特別活動の実施状況を見ることにした。. ③新学習指導要領の基本理念理解のための研修. 学習指導要領が改訂されれば,当然,新たな方針なり理念なりが示さ れる。それらは,少なくとも向こう10年余は,学校の教育活動に深い係 わりを持ってくる。よって,何が変わり,どういう方針をもって新しい 学習指導要領が作成されたのかを,教師は,知っていることが必要であ る。文部省刊行の指導書,教育関係雑誌の多くの提言もそのことを求め ている。. 特に今回の改訂は,幼稚園,小学校,中学校,高等学校全体を通じて. 一18一.

(22) の始めての改訂であり,相互の関連性をこれまで以上に重視しての改訂 である。内容も,生徒一人一人に応じた,あるいは,個性を伸長する教 育活動をおこなうことを目標とするといった,これまでにない新たな事 柄を含んでいる。その新たな方針に沿って,教科の内容が改訂されたり ,授業時間の扱いが変わったりしている。. 具体的な教育課程の編成や各教科の指導計画・授業方法等の基本とな っている,学習指導要領の基本理念を理解する機会をもつことは,新学. 習指導要領の改訂の大きさから考えて,必要であろう。そうした理解が あって,「定着」の定義でも述べたような,学習指導要領の趣旨を生か した教育活動が可能なのではないかと考え,この指標を設定した。 ④先取り実施. 移行措置期間の扱いに関する通達では,全面実施前であっても,実施 できる内容は,各学校の裁量で先取りして実施することができるとされ ている。先取り実施をすることで,新たな取り組みに関しての改善立面 が見えてくる。そのため,全面実施に円滑に入っていけるという意義が 認められる。同時に,実施にあたっては,移行措置期間であるがゆえに ,全学年が同じ学習指導要領ではないため困難な点も多い。逆に言えば ,困難があっても行うところがら,その学校の活性度の高さを知ること ができると考え,この指標を設定した。. 各教科の個別的内容は把握が難しいため,本研究では,1単位時間の 柔軟な扱い,習熟度別学習,選択教科の開設について注目することにし た。ただし,選択教科は平成5年度から正式には開設されるのだが,地. 域によっては,実験的に2学年,3学年での選択教科を広く実施してい るところもあるので,あえて,指標として加えた。. ⑤新教育課程の試案作成. 一19一.

(23) これは,全面実施を前に,新教育課程の試案いくつかを作成し,問題 点を考察する取り組みである。全日本中学校長会の平成3年度の協議会 (2). で,この取り組みが報告されている。総時間数が決まっている中で,必 修教科のうち,時間が弾力化されたものと選択教科との釣り合いを考え. ながら,各学校で教育課程を編成していくという,これまでにはない取 り組みが学校に求めちれている。また,授業時間数は各教科の指導内容 をどのようにするかにまで関わってくる問題である。円滑に全面実施に 入っていくには必要であり,その学校の「定着」活動の活性度を見るこ とができると考え,指標として設定した。. ⑥新教育課程実施のための組織作り. 授業時間数が弾力的に示されたこと,また,選択教科の拡大に伴って ,教科間・学年間での時間数,教育内容,開設形態についての連絡調整 の場がどうしても求められる。また,実際に教育活動を展開するにして も,選択教科,習熟度別学習をはじめとした多様な教育方法のためには ,教師の組織だった活動が必要になってくる。そのため,移行措置銅鐸 中の組織作りが,「定着」には必要であると考え,指標とした。. 以上6っを「定着」活動の指標とした。これらが,本研究の従属変数 となる。. ②「定着」活動の規定要因の指標 「定着」活動を規定する要因として,本研究では以下の指標を設定し た。. ①職員の組織風土. 先に紹介した,金子他による先行研究でも明らかなように,組織風土 が「定着」に果たす役割には大きなものがある。ことに,「ゆとりの時. 一20一.

(24) 間」の取り組みでは,組織的な要因の大きさを指摘していた。新学習指 導要領の場合,学校裁量の範囲が広まったことから,学校組織の要因が 大きく関わると考えちれる。そこで,本研究でも,組織風土を独立変数 として設定した。尚,具体的な項目設定にあたっては,牧民による「学 校経営診断カード」の項目を参考にしたC32 ②生徒要因. 昭和52年版の中学校選択教科の導入,高等学校の選択枠の拡大の際,. 生徒指導上の問題が大きく関わっていたことが指摘されている。(詳細 は付録3を参照のこと。)先に述べた,金子他による先行研究では,生 徒の要因を想定していなかった。しかし,荒れている学校では正常の教 育活動を行うこと自体が困難であることは明らかであり,「定着」を考 える時,生徒の状態,ことに,生徒の生活習慣は欠くことのできない要. 因であると考え,指標とした。尚,本研究での生徒要因は,生徒指導上 の問題を中心に設定している。これは,正常な授業が成立したり,授業 以外の問題に教師が煩わされない状態をはかる一つの目安として設定し たものである。. ③新学習指導要領への関心. 昭和52年の学習指導要領の総則についての教師の情報受容を扱った調 (4). 査研究で, 教師の年齢によっては学習指導要領の改訂に消極的な姿勢で. あり,新たな方針に関しての情報をあまり受けていないことが指摘され ている。また,全体としても,改訂の特徴的な事項全てにわたって,「 知ちない」とする層のあることが,結果かち読み取ることができる。. しかし,学習指導要領への関心が高いほうが,低い場合よりも「定着 」活動が盛んになること,また,個々の改訂事項についても,関心を集 める事項については,「定着」活動が,より活発になるのではないかと. 一21一.

(25) 考えられる。それは,個々の教員の関心の程度は勿論,学校経営の中心 である校長の場合は特に,学校の「定着」活動の方向性に影響を与える のではないかと考えられる。. 具体的には,新学習指導要領の改訂方針,編成の基本理念への関心の 程度をはかることにする。. ④選択教科の意義・批判の認識. 選択教科の拡大は,今回の改訂の中心であることは先にも述べた。従 属変数「選択教科の開設に関わる研修」を規定する要因の一つとして, さまざに論じられている選択教科の意義・批判についての認識の様子を. 想定した。選択教科を可能にするには,担当する教員をどうするか,ど のような形態で,何の教科を開設するかを教員が共通理解すること等,. 様々な条件整備が必要である。そうした条件整備以前の問題として,選 択教科による学習を,教師個々が,また,校長がどのように認識してい るかが,あるのではないか。そこで意義を認め,次の条件整備へと進む ことができると=考えた。つまり,選択教科の開設にあっては,基本とな. るのが,選択教科についての考え方であると考え,指標としたのである. ⑤教育委員会要因. 金子他による先行研究でも,教育委員会の活動の重要性が指摘されて いた。本研究でも教育委員会要因を指標として設定する。. 教育委員会は,学習指導要嶺が改訂されると,教育課程講習会を開催 したり,研修会を開催したり,手引き書等を発行したりといった活動を 行う。これらの活動は,全て,学校の「定着」活動を促し,ひいては,. 学習指導要領の「定着」を意図して行っているものである。それらの活 動から,学校は情報を得,指導助言を受けることによって,「定着」活. 一22一.

(26) 動を行っていくのである。こうした点から,教育委員会の移行措置期間 の活動という要因は,「定着」活動に深く関わるものである. また,先行研究では,移行措置期問の活動のみに注目し,活動の類型 を作っていた。しかし,本研究では,普段の教育委員会の活動も「定着 」活動を規定する要因として設定する。これは,普段から活発な活動を. している教育委員会と学校との問では,意思疎通がそうでない場合に比 べ,比較的円滑に行われると考えちれる。それが,移行措置期間になっ ても生かされ,教育委員会の指導助言が,学校に入りやすくなり,「定 着」活動を促すのではないかと考えられるからである。. 以上のように,本研究での教育委員会要因の指標は,移行措置期問の 学校への指導の:活性度,普段の活性度の二つで構成される。都道府県教. 育委員会,市町村教育委員会とも同じ指標ではかるように設定した。 ⑦学校属性. 学校属性としては,学校規模,教材・教具の整備状況,空き教室の有. 無,現3年生の選択教科が生徒選択で開設されているか,学校選択で開 設されているか,を指標として設定した。. 教材・教具の整備状況,空き教室の有無は,多様な教育活動を保障す る要因として考えちれるため,指標とした。現3年生の選択教科の開設 状況は,前回の学習指導要領の定着を見る一つの視点として重要である 一) 。つまり,前回の学習指導要領の趣旨をどの程度生かしているかが,「 定着」活動に係わりを持つと考えられるのである。ことに,新学習指導 要領が,昭和52年版を発展させたものと位置付けられるため,前回の学 習指導要領の時の経験が,新学習指導要領の「定着」関わると考えられ るのである。その意味からも,指標としては重要なものである。. 学校属性とは直接には言えないが,保護者の学校教育への関心度,生. 一23一.

(27) 徒の全体的な学力傾向も,「定着」活動を規定してくるものと考えられ るので,指標として設定した。. 以上が本研究の独立変数である。. 本節で述べた,研究の枠組を図1に示す。. 一24一.

(28) 〈従属変数〉. <独立変数>. ①選択教科開設のための研修. 0職員の組織風土. ②道徳・特別活動の既実施事項. ②生徒要因. ③新学習指導要領の基本理念理解のための研修. ③新学習指導要領への関心. ④先取り実施. ⑤新教育課程試案作成. e. ④選択教科の意義・批判の認識. ⑤教育委員会要因. 。輔ll繋 ⑤一2普段縦度 ム総縫会 ⑤一!移行欄囎. ⑥新教育課程実施のための組織作り. ⑥学校属性∼学校規模,教材・教具の整備状況,空き教室の有無 その他∼父母の学校教育への関心度,生徒の学力傾向,. 現3年の選択教科の開設形態(生徒選択,学校選択). 図!’研究の枠組図. 一25一.

(29) 第2節 分析の方法 第1節で設定した指標をもとに,質問紙(付録5)を作成した。(調 査対象他は後述。). 分析の方法は以下の手順で行う。. 1)4件法で質問している各項目について,平均点を算出する。ただし,. 独立変数「学校属性」の一部は,質的データなので,平均点は算出せ ず,度数分布のみを算出する。 2)従属変数については各項目について,合成変数を作成する。学校の「. 定着」活動傾向は,以後,この合成変数をもとに解釈していく。合成 変数を作成する理由は,各指標に盛り込まれている質問項目が多岐に. わたっている場合,結果の解釈が複雑になることによる。また,一部 の指標では因子分析を行い合成変数を作成しているが,これは,回答 者の回答をもとにして,再度,質問項目を整理するために行うもので ある。. 3)独立変数についても,従属変数と同様に必要に応じて,合成変数を作 成する。. 4)従属変数,独立変数どうしで,相関をとり,関連の深い項目を絞り込 む。. 5)独立変数と従属変数との関連の様相を明らかにする。. 回帰分析・重回帰分析を用いる。. 一26一.

(30) 第3節 調査対象及び回収結果 (1)調査対象. 調査対象は,公立中学校とし,回答者は各学校の校長とした。校長に 絞った理由は,①学校経営の中心であり,学校全体の動きを把握してい る,②教員の中では,教育委員会の活動状況を一番知りやすい立場にあ る,である。. (6) 対象校は,以下の基準・手順により選んだ。. 1.全国を6ブロックに分ける(北海道・東北/関東/中部/近畿/中国 ・四国/九州). 2.3年生の選択教科の開設が複数教科である学校の多い都道府県,1教 科である学校の多い都道府県に分ける。各ブロックごとに,そうした. 都道府県を1つずつ選ぶ。ただし,1都道府県かち50校選び,1市町 村につき1校選ぶため,最低50市町村ある都道府県を選ぶ。 3.選定された都道府県ごとに,中学校の大規模,中規模,小規模の学校. の数を調べる。その際,100人以下の生徒数の学校しかない市町村は 除く。. 4.以上の条件を満たし,50校選べる都道府県を,=複数教科開設率の高い. 都道府県く以下上位県と呼ぶ),1教科のみの率の高い都道府県(以 下下位県とよぷ)それぞれ1つづつ選ぶ。 5.上位県のグループ,下位県グループの2つのグループができる。全国. の公立中学校の大規模,中規模,小規模の構成比率に近いように,規 模別の抽出学校数を決める。それをグループに振り分け,さらに,各 都道府県ごとの抽出学校数を決め,抽出を行う。. 6.抽出後,文部省の研究協力校,平成元年以降新設の学校が含まれてい る場合は,その学校を除き,かわりの学校を抽出する。. 一27一.

(31) 学校規模は,11学級以下を小規模,12∼18学級を中規模,19学級以上 を大規模とした。 表1=全国の規模別公立中学校数:(休校中を除く). 規. 左表の比率を600校にあては 学校数(校) 比率α). 模. めると, 4353. 小規模校. 41.5. 小規模校 249. 2964. 中規模校. 28.3. 中規模校 169.8 大規模校. 3166. 全中学校. 10483. 30.2. 大規模校 181.2 となる。下位県と上位県が均 一. (注:平成3年度学校基本調査による〉 等になるように,抽出する。 表2:選択1教科開設率の高い県の規模別抽出学校数(単位校) 2グループの規模. A. B. F C 別抽出数の合計は D E. 小規模校 24. 11. 32. 中規模校. 16. 23. 12. 大規模校. 10. 16. 6. 50. 50. 50. 県. 計. 小規模校255 7. 21. 中規模校179 14. 14. 計. 34. 129. 10. 89. 6. 82. 大規模校166 29. 15. となった。. 50 50 これは,学校規 50. 300. 模別には,なかな 表3;選択複数教科開設率の高い県の規模別抽出学校数(皐位校). かそろわなかった. G. H. 1. 小規模校 21. 19. 中規模校. 14. 大規模校. 県. 計. J. K. L. 計. 20. 21. 26. 19. 126. 17. 14. 15. 12. 18. 90. 15. 14. 16. 14. 12. 13. 84. 50. 50. 50. 50. 50. 50. 300. ためである。. 一28一.

(32) ②回収結果. 本調査の方法は,郵送質問紙調査法によった.調査時期は,平成4年 5月上旬から6月下旬までである。 回収結果は以下の通りである。尚,回収された全てが有効回答であっ た。. 表4:学校規模別回収数,回収率 規模. 発送数. 回収数. 小規模校. 255. 175. 中規模校. 179. 大規模校 全. 体. 回収率. 表5:ブロック別回収数 ブロック. 発送数. 回収数. 68.6%. 北海道・東北. 100. 77. 114. 63.7. 関東. 100. 57. 166. 95. 57.2. 中部. 100. 71. 600. 384. 64.0. 近畿. 100. 57. 中国・四国. 100. 55. 九州. 100. 67. 表6:現3年選択教科開設形態 別回収学校数 形態. 学校数(校). 比率 %. 学校選択. 229. 59.6. 生徒選択. 155. 40.4. 一29一.

(33) 第3章. 学校の「定着」活動. 一30一.

(34) 第1節 選択教科開設のための研修 選択教科を開設するための研修をどの程度まで行っているかを尋ねた. 。以後の分析の必要上,以下に記すように,研修1∼3までの合成変数 を作成し,傾向を見ていくことにした。. …一一一. o1灘:=::業. 考える研修. 一一一. ロ∴∴∴二lll. 向を検討する研修. 合成変数ごとの,単純集計は表7の通りである。. 選択教科の必要性といった,基本理念に係わること,具体的な運営に 関すること,教科内容に関すること,いずれも結果を見るかぎり,差が みられないようである。. 平成元年版の選択教科は,今回改訂の中心とも言えることである。こ. 一31一.

(35) 表7二「選択教科に係わる研修」の活動度 平均. SD N. 研修1∼選択教科の必要性. 2.55. 0.68. 379. 研修2∼教員の組織運営. 2.68. 0.70. 378. 研修3∼選択教科の内容. 2.62. 0.63. 380. 変数. れまで選択教科を,生徒選択で開設していてもいなくても,必修教科の 時間数とのかね合いかち,これまでにない対応が,学校には,必要なは ずである。また,文部省も指導書等で,識者も論説等で,選択教科に関 する準備・研修活動の重要性を述べていた。以上のように考えれば,選 択教科の開設に関する研修は,期待されるほどの活発さを,全体として は見せていない,といえよう。. 一32一.

(36) 第2節 道徳・特別活動の既実施事項 道徳と特別活動の内容は,平成2年度より全面実施とすることは,移 行措置期間の扱いについての通達に示されているとおりである。 表8:道徳・特別活動の既実施事項の実施度 変数. 平均. SD. N. 道徳の全体・年間指導計画の作成. 3.40. 0.59. 381. 特別活動の指導計画の作成. 3.27. 0.60. 381. 学級活動の実施. 3.10. 0.64. 381. 道徳t特別活動の既実施事項の実施度は表8の通りである。 道徳・特別活動の指導計画,学級活動の実施については,良く行われ ていると言えよう。全面実施にはいって時聞を経過していることも影響 しているためか,この点に関しての通達の内容は浸透しているといえよ う。. 一33一.

(37) 第3節 新学習指導要領の基本理念理解のための研修 本節の集計にあたっては,項目数の関係から,因子分析を施し,いく つかの因子抽出をし,合成変数を作成し,傾向を見ていくことにした。. 因子分析は,主因二二を求めた後,バリマックス回転を施した。因子 抽出にあたっては,固有値が1前後になることを目安に行い,バリマッ クス回転後の因子負荷量によって因子の性質を考え,命名をした。. その結果,3因子を抽出した。(表9参照). 表9:新学習指導要領基本理念の理解の研修∼因子分析 (バリマックス回転後の負荷量). 因子1. 変数. 因子2. 因子3. 社会変化に主体的に対応できる能力の育成. 532鵜. .397. .239. 創造性の基礎を培う指導. 500蹴. .468. .189. 個性を生かし伸ばす教育. 735脇. .318. .130. 基礎的・基本的内容を重視した指導. 807聯. .133. .139. 自ち学ぶ意欲を高める指導. 812蹴. .111. .139. 我が国の伝統と文化を尊重する態度の育成. .206. .809∼. .096. 国際理解を深める指導. .182. 765脳. .092. 1単位時間の弾力的運用. .108. .190. 792脇. 必修教科の時間数の弾力的運用. .193. .036. .812一. 小中高のつながりを重視した改訂. .179. .435. 603脳. 一34一.

(38) 各因子に含まれる項目の関係から,因子1は「自己教育力を養う指導. 」,因子2は「国際理解を深める指導」,因子3は「授業の弾力的運用 」と命名した。これによる,それぞれの合成変数による「新学習指導要 領基本理念理解のための研修」集計結果は表10の通りである。 表10:新学習指導要領基本理念理解のための研修の実施度 変数. 平均. SD N. 自己教育力を養う指導. 3.11. 0.47. 372. 国際理解を深める指導. 2.79. 0.58. 375. 授業の弾力的運用. 2.66. 0.54. 375. 「自己教育力を養う指導」は,生涯学習との関連から,また,個に応 じた教育,主体的な学習との関連から,新学習指導要領で強調されてい ることである。改訂の基本でもあり,これに係わる話し合いはかなりの. 程度で持たれていると言えよう。「国際理解を深める指導」についての 話し合いも,かなりの程度で持たれている。「授業の弾力的運用」につ いては,先の2つに比べれば平均的取り組みといえる。これは,実際に は教育課程への位置付けが難しく,弾力的に運用するにしても,臨機応 変に行うほうが実態にかなっているためではないかと,予想される。. 一35一.

(39) 第4節 先取り実施 「先取り実施」として設定した,「1単位時間の柔軟な扱い」,「2 年生徒選択の開設」,「習熟度別学習」の3つで,合成変数を作った。 結果は,表11の通りである。 表11=「先取り実施」の度合い 変数. 平均. SD N. 先取り実施. 2.00. 0.66. 376. 「先取り実施」の程度は低い。項目別にみると,「単位時間の柔軟な. 扱い」は,3項目の中では相対的に高い(平均2.31SDO.92N377)。 いずれにしても,ここにあげた「先取り実施」は,内容的にも事前の準 備を必要とするものが多く,取り粗みにはまだ時間を要するものと考え ちれる。ただし,このことは「先取り実施」のすべてが同じ状態である ということを言うものではない。通達の求めているものは,他にも,教 科の内容など多岐にわたっているが,調査の限界から以上の項目に限っ たものである。. 一36一.

(40) 第5節 新教育課程試案作成 新教育課程の試案作成の程度は,表12の通りである。 表12:「新教育課程試案作成」の程度 変数. 平均. SD. N. 新教育課程の試案作成. 2.86. 0.66. 377. 試案作成を行うと,具体的にどういう教育課程を来年度編成するかが ,かなり見えてくると考えられる。教員の持ち時間数,教室等の確保と. いった点での問題点も浮かび上がらせることができる。しかし,その実 施は,かなりの労力を伴うことが予想されること,また,学校の主体的 活動であるだけに,行っている学校は限られているのではないか,と予 想していた。しかし,結果を見るかぎり,予想よりは高い取り組みの様 子がうかがえる。新教育課程の全面実施が次年度に控えていることも, この活動の促進要因になっているのではないか。. 一37一.

(41) 第6節 新教育課程実施のための組織作り 「新教育課程実施のための組織作り」の程度は,表13の通りである。. 表13:「新教育課程実施のための組織作り」の程度 変数. 新教育課程実施のための組織作り. 平均. SD. N. 2.79. 0.68. 377. 新教育課程編成には,組織だった取り組みが必要であると考え,この 項目を設定した。必修教科の時間設定など,教科間等での話し合いが,. これまでは必要なくても,新学習指導要領の場合不可欠であると考えら れるかちである。その点かち結果を見ると,平均的な取り組みの程度と 言えよう。少なくとも,取り組みが不十分であるという状態ではないよ うである。. 一38一.

(42) 一39一.

(43) 第4章 「定着」活動を促す要因. 一40一.

(44) 第1節 本章での分析枠組 (1)独立変数の合成変数作成. 従属変数と独立変数との関係を見るために,重回帰分析を行う。その ため,独立変数を整理する意味から,合成変数を作成する。 ①職員の組織風土要因. 因子分析を施し,因子を抽出し,合成変数を作成する。方法は,第3 章第3節と同様の方法で行った。(表14参照) 表14=「職員の組織風土」の因子分析(因子負荷量) 変数. 因子1. 因子2. 因子3. この学校では仕事の能率がよい. .626一. .376. .159. 仕事の流れのルートがはっきりしている. .618. .318. .202. 各分掌には相応の人員が適正に配置されている. .730. .005. .150. 仕事の担当と責任範囲がいつも明らかになっている. .769. .213. .113. 全校の目標や計画の達成に対する職員の関心は高い. .012. .717一. .297. この学校では目標や計画がうまく達成されている. .363. .560一. .247. 職員は仕事にやりがいを感じている. .283. .688一. .213. 職員は自分の役割を自覚して仕事に取り組んでいる. .476. .557一. .252. 知識・技能を積極的に伸ばそうとする雰囲気がある. .181. .742一. .005. 決定事項に不満を漏らす雰囲気はない。. .041. .142. 796撚. 学校の意思決定の方法に職員は理解を示している. .394. .345. 598蹴. 分掌,学年,組合等による対立がない. .195. .114. 782撒. 会議等で自由に発言できる雰囲気がある. .370. .271. .494一. 一4 1一.

(45) 因子分析の結果3因子を抽出した。因子1「職務遂行」,因子2「モ ラール」,因子3「意思決定」と命名した。 ②生徒要因. 因子分析を施し,1因子を抽出した。因子は「基本的生活習慣」と命 名した、 (表15参照). 表15:「生徒要因」の因子分析(因子負荷量) 変数. 因子1. 授業中の生徒の抜け出し,妨害がある. .732. 授業中教師の指示に従った行動が取れる. .603. 服装・みだしなみの心得が良く守られている. .703. 菓子・遊具等禁止されている物の持ち込みは少ない. .671. 教師の忠告を素直に受け入れられる. .733. 校外での非行問題は少ない. .729. ③新学習指導要領への関心 因子分析を,これまでと同様の方法で施し,因子の抽出,命名を行っ. た。因子分析の結果は,表16の通り。因子1「基本理念への関心」,因 子2「具体的改訂内容への関心」と命名した。. 一42一.

(46) 表16=「新学習指導要領への関心」の因子分析(因子負荷量). 因子1. 因子2. 個性を生かす教育. 。719. .279. 基礎・i基本を重視する教育. .717. .151. 社会変化に主体的に対応する力を付ける教育. .742. .299. 自己教育力を高める教育. .830. .079. 学校教育と生涯教育との関連を重視したこと. .589一. .463. 中学校を前期中等教育として捉え直すこと. .394. .616一. 教授組織・形態の柔軟化を求めたこと. .327. 670貼. 選択履修の幅の拡大. .157. .729∼. 必修教科の時間数の弾力化. .075. .792一. 変数. ④選択教科の意義・批判の認識. 「選択教科の意義」は,項目数が少ないので,単純加算により合成変 数を作成した。「選択教科への批判」については,因子分析を施し,合 成変数を作成した。結果は表17の通りである。. 因子1「教師・学校側の問題点」,因子2「生徒の側の問題点」と命 名した。. ⑤教育委員会要因. 移行措置期間の活動と,普段の活動について,それぞれ都道府県教育 委員会,市町村教育委員会ごとに計4つの合成変数を作成した。項目数 が少ないので,単純加算:により合成変数を作成した。. 一43一.

(47) 表17:「選択教科への批判」の因子分析(因子負荷量) 変数. 因子1. 因子2. 教員の負担を増加させる. 575脇. .299. 学校現場の実情にそぐわない. 642繍. 。195. 指導内容の設定が困難. 732駄. .031. 生徒の選択能力が育っていない. 675脇. .087. 教員の免許外担当が出やすい. 664撒. .155. 受験のための指導に結び付きやすい. .101. 726脳. 全ての生徒に基礎基本を身につけさせちれない. .177. 668篇. 生徒の選別につながる. .052. 780晶. 選択学習をきっかけに生徒指導上の問題が起きる. .266. 562脳. ②従属変数の合成変数作成. 第3章で作成したものの他に,第3章第2節であげた3変数を「道徳 特認全体の実施度」と,第3章第5,6節,の2変数を「準備活動」 とそれぞれ一括することにした。. ③変数相互の関連 量的変数である独立変数の従属変数との関連を重回帰分析するにあた って,あらかじめ,各変数間の関連の強さを測る。それにより,関連が みらるれると判断した変数に絞って,詳しい分析を行う。 関連の判断は,相関係数を用いる。. その結果,量的な変数どうしの相関係数から,表18に示した独立変数 が,従属変数に係わりを持っていることが予想される。. 一44一.

(48) 表18:従属変数と独立変数の相関係数(0.300以上のもののみ) 従属変数. 独立変数. 相関係数. 研修1∼選択教科の必要性. 具体的改訂内容への関心. 研修2∼教員の組織運営. 基本理念への関心 .326 ?フ的改訂内容への関心 .313 ァ教育委員会移行措置期間の活動 ,328. 研修3∼選択教科の内容. i基本理念への関心 ?フ的改訂内容への関心. 道徳・特活全体の実施度. 基本理念への関心 .413 ?フ的改訂内容への関心 .339 c堰[ル ,364 モ思決定 .335 ァ教育委員会移行措置期間の活動 .323 ァ教育委員会普段の活動 .314. 自己教育力を養う指導. 基本理念への関心 .481 ?フ的改訂内容への関心 .360 E務遂行 .305 c堰[ル .436. モ思決定. .304. .317 .334. .379. ァ教育委員会移行措置期間の活動 .414 ァ教育委員会普段の活動 .384 国際理解を深める指導. 基本理念への関心 .379 ?フ的改訂内容への関心 .354 c堰`ル .405. 授業の弾力的運用. 具体的改訂内容への関心. 先取り実施. なし. 準備活動. 基本理念への関心 .346 ?フ的改訂内容への関心 .378 E務遂行 .301 c堰[ル .312 ァ教育委員会移行措置期間の活動 .388 ァ教育委員会普段の活性度 .319 一一・. ^S一一. .340.

(49) 表18かち,学習指導要領「基本理念への関心」 「具体的改訂内容への. 関心」が,他の独立変数に比べ従属変数に係わりの度合いが強いとみら れる。. 重回帰分析を行うにあたり,共線性を避けるため,独立変数相互の相 関を取ってみた。結果は,表19の通りである。尚,0.300以上の相関係 数を持つもののみを表示した。また,同じ指標に属する複数の独立変数 は相関が高くなるのは当然なので表には表示していない。 表19:独立変数間の相関係数(0・300以上のもののみ) 変数. 基本理念への関心. 変数 職務遂行 c堰[ル モ思決定. 軏{的生活習慣. 相関係数 .390 .420 .423. .342. ァ教育委員会移行措置期間の活動 .363 ァ教育委員会普段の活動 .376 具体的改訂内容への関心. 職務遂行 .354 c堰[ル .381 モ思決定 .332 ァ教育委員会移行措置期問の活動 .300. ・醸暑蓼辮鯛活動 :§18. 結果として,「基本理念への関心」「具体的改訂内容への関心」の二 つに比較的高い相関を示す独立変数が,複数存在することが分かった。 このことかち,この二つの変数を,媒介変数として,以下のように仮 説をたてた。即ち「職員の組織風土(「職務遂行」「モラール」「意思 決定」),生徒要因が良い状態ほど,また,教育委員会の活性度が高い ほど,「基本理念への関心」「具体的改訂内容」といった学習指導要領 への関心が高まってくる。そして,こうした関心が高まれば,学校も「 定着」活動に積極的に取り組むことができる。」という仮説である。. 以上のことを図式化したものが図2である。また,上の仮説を検証す るために,回帰・重回帰分析を行った。. 一46一.

(50) 媒介変数. ’属変数. 独立変数. ①選択教科開設のための研修. ⊥難灘. 新学習指導要領への関心. 「研修1∼選択教科の必要性」 「研修2∼教員の粗織運営」. 「基本理念への関心」. 「研修3∼選択教科の内容」. ’ 一,“一m. 生徒要因一基本的生活習慣. ②道徳・特別活動の既実施事項 「道徳・特活全体の実施度」. 「具体的改訂内容への関心」. 教育委員会要因. ③新学習指導要領の基本理念理解のための研修. 多鷹期間の活動. 「自己教育力を養う指導」. 道府県教育委員会移行措置期間の活動. 市町村教育委員会移行措置期間の活動. 「国際理解を深める指導」 日段の活動一. 「授業の弾力的運用」. ④「先取り実施」. ⑤新教育課程試案作成/新教育課程実施のため. ム董. ”一’””. 「現3年生の選択教科開設形態」. の組織作り 「準イ篇≒∼舌動」. 図2’研究枠組図(修正). 一47一. 道府県教育委員会普段の活動 uIll.市町村教育委員会普段の活動.

(51) 第2節. 「新学習指導要領への関心」の規定要因. 「新学習指導要領への関心」は,2つの合成変数から構成されている 。その二つをそれぞれ被説明変数として,以下の組み合わせで,重回帰 分析を行う。分析の対象になる変数は,相関係数の比較的高いものとし た。但し,同じ指標に属する複数の変数は一つの指標に再編成する。具 体的には,「職務遂行」「モラール」「意思決定」は,「職員の組織風 土」に,「県教育委員会移行措置期間の活動」「県教育委員会普段の活 動」は, 「都道府県教育委員会の活性度」とする。「都道府県教育委員. 会の活性度」に「市町村教育委員会普段の活動」が加わったものは,「 教育委員会の活性度」とした。. 組み合わせの一つは,「基本理念への関心」を被説明変数として,「 職員の組織風土」「都道府県教育委員会の活性度」「基本的生活習慣」 を説明変数とする。もう一つは「具体的改訂内容への関心」を被説明変 数として,「職員の組織風土」「教育委員会の活性度」を説明変数とし た。. 重回帰分析をとった理由は,説明変数への関連の度合いを相対的に比 較できるからである。そのため,標準回帰係数を算出するため,対象と なるデータを標準化(平均==0,標準偏差=1)してから,分析を行っ た。分析の結果は表20,21に記した。. 「基本理念への関心」へは,「職員の組織風土」「都道府県教育委員 会の活性度」「基本的生活習慣」の順に,強い影響を及ぼしている。こ の分析では,「職員の組織風土」は,「職務遂行」の円滑さ,職員の「 モラール」の高さ,学校の「意思決定」への職員の理解,といった内容 で構成されている。「都道府県教育委員会の活性度」は,移行措置期間 を含め,普段の活性度で構成されている。. 一48一.

(52) 「基本理念への関心」を説明変数とした重回帰分析の結果は以下の通り。 表20−1重回帰分析の結果. 重回帰係数 決定係数 自由度調整済決定係数. O.553 0. 306 0. 300. 表20−2重回帰分析分散分析表 変動 自由度 二乗和 3 361. 回帰 残差. F値. 平均平方. 110.913 251.537. 確率. 53.060. 36.971 0.697. o.ooel. 表20−3各係数の値. 独立変数. 回帰係数 回帰係数の 標準回帰 標準誤差 係数. t値. 組織風土. 0.368. 5.789 2.207 5.984 6.075. 生徒∼基本的生活習慢 県教委の活三度. O.064 0.050 0.042 0.192. 0.109 0.254. (定数). 1.164. O.317 0.115 0.277. 確率 O.OOOI O.0279 O.OOOI O.OOOI. 新学習指導要領への関心「具体的改訂内容への関心」を被説明変数:としての 重回帰分析の結果は以下の通り。 表21−1重回帰分析の結果. 重相関係数 決定係数 自由度調整二二二二数. O.487 0.238 0.233. 表21−2分散分析表. 変動. 自由度 2 363. 回帰 残差. 二乗和 平均平方. F値. 確率. 85.899 42.949 275. 838 O.760. 56.521 O.OOOI. 表21−3各係数の値. 独立変数 組織風土. 0.420. 教育委員会の活性度. 定数. t値. 回帰係数 回帰係数 標準 標準誤差 回帰係数 0.278. 0.862. O.062 0.051 0.209. 一49一. O.326 e. 266. 確率. 6.730 O.OOOI 5.494 O.OOOI 4.118 O.OeOl.

(53) 影響力としては,上の2つの要因に比べれば弱いものの,生徒要因の 「基本的生活習慣」も無視できない影響力を持っていることが明かにな った。質問項目の内容から,特に生徒指導上の問題点の程度が係わって いると言える。これまで,生徒指導上の問題の有無が,多様化の定着の 鍵になるといった見方を,裏付,けたことになる。. 「具体的改訂内容への関心」には,「職員の組織風土」「教育委員会 の活性度」が影響を及ぼしている。職員の組織風土は,「基本理念への 関心」と同様であるが,「教育委員会の活性度」には,都道府県教育委 員会のほかに市町村教育委員会の影響力もはいってくる。これは,市町 村教育委員会の普段の活性度が,学校の学習指導要領への関心を高める ことに係わっていることを示している。ともすれば軽視されがちである が,市町村教育委員会の果たしている役割は無視することができないこ とを明ちかにしている。. 一50一.

(54) 第3節 「定着」の規定要因 (1)「新学習指導要領への関心」の従属変数への影響度. 分析の枠組に示したように,新学習指導要領への関心の「基本理念へ の関心」「具体的改訂内容への関心」が,従属変数にどの程度影響力を 持っているかを分析する。分析は回帰分析を用いた。結果は,表22,23 の通りである。. 回帰係数相互の比較は,説明変数である従属変数が異なるため,でき. ない。しかし,回帰係数を見るかぎり,「基本理念への関心」「具体的 改訂内容への関心」のいずれも,従属変数に,無視できない影響を与え ていると見られる。. 即ち,「基本理念への関心」は,「研修2∼教員の組織運営」「研修 3∼選択教科の内容」「道徳・特活全体の実施度」「自己教育力を養う 指導」「国際理解を深める指導」「準備活動」へ影響を与えていると見 ることができる。つまり,「基本理念への関心」が高い学校ほど,これ らの従属変数である「定着」活動が活発になる傾向がある。. 同じように,「具体的改訂内容への関心」が高い学校ほど,「研修1. ∼選択教科の必要性」「研修2∼教員の組織運営」「研修3∼選択教科 の内容」「道徳・特活全体の実施度」「自己教育力を養う指導」「国際. 理解を深める指導」「授業の弾力的運用」「準備活動」といった,「定 着」活動が活発になる傾向がある。. 一51一.

(55) 表22;「基本理念への関心」を説明変数としての回帰分析 回帰係数. 被説明変数. t値. 確率. 「研修2∼教員の組織運営」. 0,508. 2,793. 0,005. 「研修3∼選択教科の内容」. 0,454. 6,463. 0.0001. 「道徳・特活全体の実施度」. 0,505. 9,243. 0.0001. 「自己教育力を養う指導」. 0,527. 10,485. 0.0001. 「国際理解を深める指導」. 0,511. 7,873. 0.0001. 「準備活動(囎課蟹案,白白)」. 0,485. 7,100. 0.0001. 表23;「具体的改訂内容への関心」を説明変数としての回帰分析 回帰係数. t値. 確率. 「研修1∼選択教科の必要性」. 0,436. 6,363. 0.0001. 「研修2∼教員の組織・運営」. 0,430. 6,153. 0.0001. 「研修3∼選択教科の内容」. 0,432. 6,867. 0,001. 「道徳・白岡全体の実施度」. 0,356. 6,968. 0.0001. 「自己教育力を養う指導」. 0,343. 7,393. 0.0001. 「国際理解を深める指導」. 0,419. 7,278. 0.0001. 「授業の弾力的運用」. 0,464. 7,876. 0.0001. 「準備活動」(教白白案,白白). 0,508. 6,669. 0.0001. 被説明変数. 注;表22,23に関しての回帰分析分散分析表は,付録7に一括して記した。. 一5 2一.

参照

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