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[講演要旨]安政南海地震津波による徳島県海陽町宍喰浦での津波高さと被害分布

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Academic year: 2021

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(1)歴史地震 第31号(2016) 190頁. [講演要旨]. 安政南海地震津波による徳島県海陽町宍喰浦での津波高さと被害分布 行谷佑一*(産総研)・今井健太郎(JAMSTEC)・村上仁士(徳島大) §1. はじめに 江戸時代以前に発生した津波の高さを知るには, 歴史記録を用いるのが一般的である.津波の到達点 や浸水の高さが判明しそうな記録をもとに現地調査を 行うことで津波の高さを知ることができる場合がある. しかしながら歴史記録の中には,流失した家屋の軒 数といった津波による被害のみが記されているものが ある. この場合,津波によりそこで大きな被害を生じたこ とは把握できるが,具体的にどの程度の津波の高さ だったのかを知ることは被害記録からはよくわからな い.こういった被害記録から津波の高さを推定するに は,津波の高さと被害とを結びつける関係を構築する 必要がある.現在の家屋の強度と江戸時代の家屋の 強度とは異なる可能性があるので,江戸時代に発生 した津波についての関係を構築することが望ましい. ところで,徳島県海陽町宍喰には『震潮記』と呼ば れる史料が現存する.その中には『宍喰浦荒図面』と よばれる図面が掲載されている.同図面には,1854 年安政南海地震津波による宍喰集落内の家屋一軒 一軒の被害の状況や,場所によっては津波の高さ (浸水深)が記されている.そこで本研究では,この 『宍喰浦荒図面』から家屋の被害状況を読み取り,浸 水深との関係を検討した.. 床面からと思われる津波の高さが記されている.. §3. 被害率と浸水深との関係 まず『宍喰浦荒図面』に記された各区画内の被害 家屋数および全家屋数を読み取った.つぎに,これ らの家屋数から被害率を計算した.被害率は ([流失家屋数]+[潰・傷潰家屋数])/[全家屋数] により計算した. つぎに,『宍喰浦荒図面』に記された各区画におけ る津波の高さから浸水深を推定した.高さは尺で記さ れているので一尺を 0.303 m として計算した.「坐上」 とあるので床面と地面との高さを別途知る必要がある. 安政地震を経験したとの言い伝えが残る田井家の地 面から床面までの高さは 0.4 m であった.すなわち, 「坐上二尺」は浸水深 1.0 m であると解釈した. 各区画における浸水深と被害率との関係を構築し た.この結果,浸水深が 1.0 m 程度の区画では被害 率はゼロであった.一方, 1.3 m を越すと急激に被 害率は上昇し,浸水深が 1.6 m では被害率が 0.9 と なる区画が存在することがわかった. ところで,津波の高さが記されている区画は比較的 内陸側の 10 区画に限られている.それより海側の区 画には津波の高さは記されていない.海側の区画で はほとんどの家屋が流失あるいは潰・傷潰であったこ とが記録されており,内陸側の 10 区画に比べ大きな 被害である.津波の高さが記されていないのは,多く §2. 『宍喰浦荒図面』に記された被害および浸水深 の家屋が流失してしまったので測る根拠となるものが 『震潮記』は宍喰の元組頭庄屋であった田井久左 なかったからかもしれない. 衛門宣辰(1802~1873)が作成した資料であり,これ 最大浸水深が 1.6 m であった内陸側の 10 区画に まで宍喰を襲った四回の津波,すなわち永正九年 (1512 年),慶長九年(1605 年),宝永四年(1707 年), 比べ,大きな被害が生じた区画は海側に位置してい ることから,これらの地域では浸水深が 1.6 m 以上で および安政元年(1854 年)の津波について宍喰にお あった可能性がある. ける状況が記されている.永正,慶長,および宝永の 津波については旧寺などに残る記録の写しが基本と §4. おわりに なっているものの,安政津波については同時代史料 江戸時代以前の家屋を対象とした津波の高さと被 であることからその信憑性は高いと言えよう.近年, 害との関係はまだ構築例が少ない状況にある.まず 『震潮記』は田井晴代氏により『阿波国宍喰浦地震・ は本研究のように一つ一つの事例を積み重ねること 津波の記録 震潮記』(原田印刷出版株式会社により が必要に思われる. 印刷.113 pp.)として活字化されている. この『震潮記』内に掲載された『宍喰浦荒図面』に 【謝辞】 は宍喰の中心街における家屋が一軒一軒について 徳島県海陽町宍喰の田井晴代氏に『宍喰浦荒図 描かれている.これらの家屋は赤色(無難)や藍色 面』を閲覧させて頂きました.本研究の一部は科学研 (流失),黄色(潮入),屋根が黄色および壁が藍色 究費(基盤 C)「津波痕跡高を用いた地震規模推定 (潰・傷潰)といったように安政津波による被害状況に 法の高度化研究」(研究代表者:今井健太郎)を利用 応じて色分けされている.さらに全ての区画ではない させて頂きました. が 10 区画において「坐上二尺」といったように家屋の. ― 190 ―.

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