論 文
現金預金収支計算表による財務分析
一資金繰状況の分析一
紺 野
岡U
目 次
1 はじめに H 現金預金収支計算表への組替 皿 現金預金収支計算表による分析 1.類型化による分析 2.損益収支分析3.非損益収支分析
4.損益計算書との対応比較分析 IV 予測能力の分析 現金預金収支予定実績比較表の作成 現金預金収支予定実績比較表による分析 V 結びに代えて1 はじめに 現金預金収支計算表をより構造的に解明するために,この計算表の基本的 理解を前槻し(注1),現実の企業に適用してみることにする.現金預金収 支計算表は,支払能力の測定に焦点をあてながら,収益力との関連性をも考 慮しようとするものである。従って,かなり詳細なデータ入手と綿密な分析 が絶対必要不可欠となる。このような観点からして、現金預金収支計算表は 企業内部の人々によって作成・分析が行われるべきである。しかしながら, 現実の企業に直接かかわっていないと無理であるし,例えかかわっていても 外部に公表するには問題も生じてくる。そこで,本来の目的からすれば多少 はずれるかもしれないが,本稿ではより一般化させるための第一段階として, 外部分析の立場から現金預金収支計算表を取り上げて分析することにする。 外部分析としてアプローチする場合には,有価証券報告書が唯一の客観的 で豊富な資料である。有価証券報告書に含まれている資料から,現金預金収 支計算表を作成し,分析・評価することにする。時間的制約及び構造的制約 のために,十分な検討はできないかもしれないが,具体的な分析方法の方向 性は示めされるであろう。
H 現金預金収支計算表への組替
有価証券報告書には,経理の状況として「資金繰状況」が公表されている。 これは,昭和28年大蔵省令第74号によって,必ず潜己載しなければならなくな った故にである。 「これが取り上げられた直接の動機は,届出書及び報告書 に関する限り,当時企業における手形取引が普遍化しつつあったことに伴う 必要性と,他方においては届出制度の実効を挙げるためには,資金繰表を掲 示せしめて,財務諸表との関連を検証しようとする,いわば資金繰表に審査 資料としての意義を認めたがためと考えられる。(注2)当時,手形取引及び株式,社債の発行が増加したことに伴って,資金計画の必要性が生じてきたの で,すでに企業実務に利用されていた「資金繰表」を要約して公表すること になったのである。 資金繰状況は,資金繰実績と今後の資金計画とに区分されている。資金繰 りは,過去の実績のみならず将来の予測に関心があるから,今後の資金計画 という予測情報をも公表させている。このように貴重な情報が公表されてい るにもかかわらず,現在まであまり注目されず,具体的にはほとんど利用さ れていないように思われる。作成方法及び様式に関して明確な基準が存在し ていないという根本的な問題を有しているからであろう。 表1に参考のために,東芝の最新60/3期の資金繰状況を例示する。 資金繰状況には,多くの有用な情報が含まれているし,資金収支に直接的 に関連しているので,資金繰状況を組替えることによって,現金預金収支計 算表を作成できるのではないだろうか。外部分析者が資金分析を行う場合に は,資金繰状況が唯一の直接的に利用可能な資料であるから,これを大いに 利用することにする。 資金概念に関しては,資金繰状況における資金は明確に定義されていない ので,多少の相違はあるが,一般的には現金及び預金という広義の概念が採 用されている。直接的な支払手段とはならない預金や拘束性預金も当然含ま れているが,これらを正確に除外することができないのでそのまま用いるこ (注3)とにする。 次に期間に関してであるが,本来は月別に表示すべきであるが,資金繰状 況では一般的に四半期で表示されている故に,結局四半期別の様式にするし かない。 それでは,より具体的に組替える方法について考察してみよう。表示区分 は,資金繰状況では,前期繰越,収入,支出,次期繰越の四区分が一般的に 採用されている。この区分方法では直接的に分析・評価することは難しいの で,現金預金収支計算表の区分方法に組替えなければならない。外部分析故 に,詳細な区分表示は事実上不可能であるから,簡略様式を参考にして資金
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1.類型化による分析
現金預金収支計算表の区分方法は,分析・評価が自動的に行えるように考 慮しているから,この区分方法に従って基本的な類型に分類することができ る。すなわち,損益収支と非損益収支による区分が最も重要である故に,こ の区分結果によって類型化する。 現金預金収支計算表は四半期ごとに表示されているから,四半期ごとに類 型化することもできるが,四半期ごとに大きく変動する場合も考えられるし, あまり複雑になっても分析しにくいので,ここでは実績は年間合計により, 予定は6ヶ月合計により判定することにする。 総収支差額がプラスの場合とマイナスの場合に大分類する。特に,今後の 資金計画の部においては,意識的に総収支差額をゼロにしている企業もある が,相対的にそれほど多くないので,ここでは無視する。 総収支差額がプラスになる場合の配当等控除後差額と非損益収支差額との 組合せは,図1のように三通りである。そして,総収支差額がマイナスにな る場合の組合せは,同様に図1のように三通りである。 図1 類型化による分類 総収支差額 十 一 配当等控除後差額 十 十 『 十 『 一 非損益収支差額 十 } 十 一 十 『 類 型1
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Vl 第1類型は,両差額共にプラスの場合である。この第1類型は,両者の差 額の大きさにより更に二分類することにする。第11類型は,配当等控除後差 額のプラスが非損益収支差額のプラスよりも大きい場合である。第12類型は, 逆に配当等控除後差額のプラスが非損益収支差額のプラスよりも小さい場合 である。ちょうど両差額のプラスが等しい場合も考えられるが,ここでは簡潔にするために無視する。 第11類型は,損益活動に関連する収支が好調で総収支を大きくプラスに導 いている。この類型は,好業績を背景としての好業績収支良好型と呼ぶこと にする。例えば,日本電気の49/3期(半年)実績がこれに該当する。(注6) 第12類型は,損益収支よりも非損益収支の方が総収支のプラスに貢献して いる場合である。資金調達を積極的に行ったケースで,これは増資中心型, 借入中心型,社債中心型,併用型に分類できる。この類型は,将来の事業拡 張資金を多額に留保している好調達収支良好型と呼ぶことにする。例えば, 松下電器産業の52/11期実績がこれに該当する・ 第11類型は,配当等控除後差額がプラスで,非損益収支差額がマイナスで, 両者の合計はまだプラスとなっている場合である。この類型は,好業績を背 景として損益収支のプラス資金を非損益収支に運用している好業績運用型と 呼ぶことにする。東芝の例では,表3に示めされているように,60/3期実 (注7) 績がこれに該当する。 第皿類型は,配当等控除後差額がマイナスで,非損益収支差額がプラスで, 両者の合計はプラスになる場合である。この類型は,損益収支がマイナスで あるから業績が不調の可能性がある。損益収支差額もマイナスの状態であれ ば,より問題であろう。通常は損益収支差額はプラスであるが,税金及び配 当金の支出によって,配当等控除後差額がマイナスになるケースが考えられ る。この場合には,配当等控除後差額のマイナス金額がそれほど大きくなけ れば問題はないかもしれない。損益収支のマイナス状態が数期間も続く場合 には,特に業績が悪化していると考えられる。 非損益収支がプラスであるから,資金調達が資金運用を上回っている場合 であり,不業績調達型と呼ぶことにする。例えば,日立製作所の57/3期実 績がこれに該当する。 第IV類型は,配当等控除後差額がプラスで,非損益収支差額がマイナスで, 両者を合計するとマイナスになる場合である。好業績を背景として損益収支 は好調であり,この好調分以上に資金運用を行っているケースである。この
類型は,設備投資等に重点的に支出しているので,好業績運用過大型と呼ぶ ことにする。東芝の例では,58/3期実績がこれに該当する。 第V類型は,配当等控除後差額がマイナスで,非損益収支差額がプラスで, 両者を合計するとマイナスになる場合である。この類型は,第皿類型と同様 に,損益収支差額がプラスかマイナスかによってかなり評価は異なってくる。 簡単に言ってしまえば,業績があまり良くない可能性があり,損益収支が不 調なケースである。そして,このマイナス分を資金調達によってカバーしよ うとしたが,第皿類型のようにはカバーしきれなかったのである。この類型 を不業績調達過大型と呼ぶことにする。例えば,日立製作所の53/3期実績 がこれに該当する。 最後の第VI類型は,両差額共にマイナスの場合である。この類型は,第1 類型のように,両者の差額の大きさにより更に二分類することができる。第 VI1は,配当等控除後差額のマイナスが非損益収支差額のマイナスよりも大き い場合である。第U2類型は,逆に配当等控除後差額のマイナスが非損益収支 差額のマイナスよりも小さい場合である。ちようど両差額のマイナスが等し い場合も考えられるが,ここでは簡潔にするために無視する。 第VI1類型は,業績が悪化している可能性があり,その結果損益収支が不調 であり,しかも損益収支のマイナス分は,資金運用の過大分よりも大きいの で,不業績収支不良型と呼ぶことにする。例えば,ソニーの49/10期(半年) 実績がこれに該当する。 第W2類型は,業績が悪化している可能性があり,その結果損益収支が不調 であるにもかかわらず,資金運用はこの不調分以上に過大に行っている故に, 不業績運用過大型と呼ぶことにする。例えば,古河電気工業の58/3期実績 がこれに該当する。 差額の絶対額そのものの大きさが重要であることは,以上のように類型化 することとは根本的に違う問題である。特に差額が大きい場合には注意しな ければならないし,逆に差額が小さい場合にはあまり問題とはならないであ ろう。例えば,差額が損益収入計の約0.5%以内であれば,プラスとマイナ
スの判定を含めてそれほど重要ではないかもしれない。 そして,端的に言ってしまえば,損益収支差額が大きければ大きいほど損 益収支の資金状態が良いと判定できる。収益力と違い,1期間だけの判定に は問題があるが,より長期的な損益収支差額の大きさがむしろ重要である。 制約された分析結果から判断すれば,差額の大小もあり,各類型の明確な 特質が抽出されないかもしれないが,この基本的な類型化は総括的な分析の 出発点と考えるべきである。この類型化に基づいて,分析のポイントを知る ことができる。そして,より詳細な分析へと進んで行くべきであろう。
2.損益収支分析
損益収入の内訳を,営業収入と営業外収入に区分しているので,本来の営 業活動に基づく収入とそれ以外の割合を把握できる。ほとんどの企業では, 営業収入が大きな割合を占めているが,最近の財テクブームを反映して,ト ヨタ自動車や松下電器産業のように,営業外収入がある程度の割合を占める 企業数が増えつつもある。 独立表示の詳細性故に,損益支出割合の方がより具体的な分析対象となる ので,以下で検討する。 (1)原材料費(仕入)支出比率 損益収入計を基準にして,次のように原材料費支出の割合を計算する。表 3は構成割合がすでに算定されている様式になっているが,確認のために右 側に,東芝の60/3期実績の計算例を参考に示めす。数字は百万円単位で, 小数点以下第二位未満四捨五入とする。以下の計算例においても同様である。 原材料費支出 1,328,925一 ×100% ×100%一52.9%
損益収入計 , 2,511,559 この比率は,業種や規模によって大幅に異なるであろう。製造業では東芝 のように50%位,販売業では80%位を占めるかもしれない。 分析のポイントは,この比率の歴史的及び将来的傾向にある。この比率が 増加傾向である場合には,特に問題として,原因を追求しなければならない。理想的には減少傾向にあることが望ましいが,少なくとも増加しないように することを目標とすべきである。 (2)人件費支出比率 この比率は,人件費支出割合を分析する目的で次のように計算する。 人件費支出 248,098
=『翻鳶τ×100%,一葡τ百×100%一9・9%
この比率は,労働集約型企業の場合には,かなり大きな割合を占めるであ ろう。どちらかと言えば,この比率は増加傾向になりがちであるが,あまり 増加するようであれば,生産性分析等により,更に問題点を追求しなければ ならない。 (3)経費支出比率 この比率は,経費支出割合を分析する目的で次のように計算する。 経費支出 574,002=一翻賑r×100%,『葡璃す×100%一22・9%
この比率も傾向が問題であり,そして原材料費,人件費,経費の各支出構 成割合は,企業特質を判断するための貴重な資料である。東芝の例では,次 のように61。7%,11。6%,26.7%の割合で,原材料費支出の比重がかなり大 きいと言える。 52.9一面平孫唖r×100%=6L7%
9.952万顧算πlr×100%篇1L6%
22.9一一一 一一一×100%一26.7%
52.9十9.9十22.9 同業種の競争相手との比較は,特に参考になるであろう。 (4)支払利息支出比率 この比率は,支払利息支出割合を分析する目的で次のように計算する。支払利息支出 24,242 一 ×100% ×100%一1.0% 損益収入計 , 2,511,559 この比率は,企業の財務体質を判断するのに大変役立つであろう。無借金 企業の場合には,当然この比率はゼロである。この比率が5%を超える場合 には,借入重視型企業と呼ぶことにする。業績が好調であれば,ある程度の 比率でも問題はないが,業績が悪化しているのにもかかわらず,この比率が 大きい場合には,危険信号を発しているようなものである。この比率も,増 加傾向となっていれば,より一層注意しなければならない。 (51税金支出比率 この比率は,税金支出割合を分析する目的で次のように計算する。 税金支出 112,526
一 ×100% ×100%一4.5%
損益収入計 , 2,511,559 税金の範囲が不明確なために,法人税,住民税以外の損益計算書の費用に 計上されている固定資産税,事業税,酒税等各種の税金項目が含まれている 場合がある。従って,赤字の場合にも,税金支出が生じてくることもある。 この比率に関しては,東芝の例は5%近くもあり,相対的にかなり大きい であろうが,与件的性格であるから,税務戦略によってある程度は左右でき るが,どちらかと言えば管理不可能な比率である。この比率は業績によって 大きく影響されるのは当然である。すなわち,増益であれば増加し,逆に減 益であれば減少するという特質を一般的に有している。 (6)配当金支出比率 この比率は,配当金支出割合を分析する目的で次のように計算する・ 配当金支出 21,091一 ×100% ・×100%一〇.8%
損益収入計 , 2,511,559 配当金の支出は,配当政策によって決定されるが,東芝の例では1%以下 であり全体的にはかなり小さい比率である。配当そのものが平準化傾向にあ るので,この比率は当然大きく変動することはあまりないであろう。3.非損益収支分析 非損益収入の内訳項目は,増資,借入金,社債,その他からなっている から,その重点の置き方によって,前述したように増資中心型,借入中心型, 社債中心型,併用型に分類できる。特に増資や社債に関しては毎期調達され るとは限らないので,期によって発生すれば多額であるが,全然発生しない 期もある。資金調達のどれに重点を置いているかを分析することによって, 企業の財務戦略の特質を判断できる。 (1〉正味借入金収支 借入金に関しては,借入発生額である借入金収入と借入返済額である借入 金返済支出とは重要な関連を有している。すなわち,で般的に借入れの返済 期日に,同額位の借入れを再び行うというように,返済のための借入れ慣行 が多くの実務で実行されている。それ故に,借入金収入も借入金返済支出も 多額になり,しかも両収支が同額位になることもある。そこで,借入金収入 と借入金返済支出との差額を算定することによって,当該企業の正味借入状 況を分析することにする。従って,正味借入金収支は次のように計算する。 一借入金収入一借入金返済支出, 291,238−338,038一△46,800 この額がプラスであれば,新規借入れによって資金を調達した事実が判明 する。逆に,東芝の例のようにマイナスであれば,新規借入れよりも借入返 済の方が大きかったことがわかる。新規借入れによって調達している場合に は,何に運用されているかが重要である。損益収支のマイナス分を埋める目 的の場合には特に注意しなければならない。東芝のように,業績が好調で, 余裕資金を借入れの返済に廻している場合は,望ましい状態であろう。 借入金収入比率及び借入金返済支出比率を次のように算定することができ る。表3のように,統一的に構成割合を算定する目的で,損益収入計を基準 にしてすべての項目の比率を計算する。従って,非損益収支項目に関しても, 損益収入計との比率という関係になる。 借入金収入 一一 ×100% 損益収入計 ,
291238
’ ・×100%一11.6% 2,511,559借入金返済支出 338,038
一 ・×100% 一 ・×100%一13.5%
損益収入計 , 2,511,559 どちらの比率も30%を超えているような企業は,借入重視型と呼べよう。 支払利息支出比率の分析結果とは,当然重要な関連を有している。 正味借入金収支比率を次のように算定し,分析することもできる。 正味借入金収支 △46,800一 ×100% 一 ×100%一△1.9%
損益収入計 , 2,511,559 又は,一借入金収入比率一借入金返済支出比率, 11.6−13.5一△1.9% (2)設備費支出比率 この比率は,設備費支出割合を分析する目的で次のように計算する。 設備費支出 137,756一 .一×100% ×100%一5.5%
損益収入計 , 2,511,559 この比率によって設備投資状況が判定できる。この比率が増加傾向であれ ば,積極的に設備投資を行っていると評価でき,逆に減少傾向であれば,設 備投資に消極的になっていると判断できる。支払いを長期分割払いとして平 均化することによって,設備購入時期と支払時期とを大幅に相違させること も十分考えられるので注意しなければならない。 4.損益計算書との対応比較分析 現金預金収支計算表の損益収支は,損益計算書と重要な関連を有している ことは言うまでもない。そこで,両者の関連性を明確にするために,表4の ような損益計算書対収支計算書対比書を作成する。損益計算書の区分と現金 預金収支計算表の区分を対応比較させるものである。 この対比書を作成する場合の最大の課題は,非資金項目の認識と測定にあ る。非資金項目とは,損益計算書には計上されるが,実際には資金の収支が 生じないものである。外部分析においては,損益計算書に表示されている勘 定科目から推測する方法しか利用できないので,当然正確性においては問題 が生じてくることはやもえない。具体的な勘定科目としては,減価償却費, 各種引当金繰入額等が考えられる。しかしながら,製造原価のより詳細な内表4 社名 損益計算書対収支計算書対比書(標準様式) 損益計算書対収支計算書対比書 (有価証券報告書分析用) 第 期 自昭和 至昭和 日日円 万 月月百 位 年年単 損益計算書項目 金額 収支計算書項目 金額 差異金額 営業収益 営業収人 材料費 仕入高
計
原材料費支出 労務費 給料等計
人件費支出 製造経費 その他計
経費支出 営業利益 営業収支差額 営業外収益 営業外収入 営業外費用 支払利息支出 経常利益 経常収支差額 特別利益 その他損益収入 特別損失 その他損益支出 税引前当期純利益 損益収支差額 法人税等 税金支出 税引後純利益 税引後差額 配当金 中間配当金計
配当金支出 役員賞与金 控除後利益 配当等控除後差額 償却費等 合計 配当等控除後差額訳科目が表示されていないから,損益計算書から推測するよりもむしろ,附 属明細表の減価償却費明細表及び引当金明細表等を総合的に利用した方がよ り容易になるかもしれない。この非資金項目は,損益計算書の最後に「償却 費等」として加算して表示する様式によって比較される。従って,最終項目 の金額はかなり近似するであろう。 次に,人件費支出と対応する損益計算書科目の範囲が問題となる。役員報 酬や給料手当は当然含まれるであろうし,福利厚生費は含まれないかもしれ ない。製造原価明細書の労務費には,福利費的な科目も含まれている可能性 があり,多少問題は残るかもしれないが,重要性で判断することにする。 営業費用は,棚卸資産の増減額の影響を考慮して決定されるが,対比書に おいてはこの影響額を原材料費支出,人件費支出,経費支出に対応させて明 確には区分できない。そこで,材料費,仕入高,労務費,製造経費は損益計 算書及び製造原価明細書に記載されている発生額を使用し,前述したように 給料等は損益計算書の個別科目から推定する。そして合計額が営業費用と一 致するように,逆算して「その他」の金額を計算する。 営業外費用と支払利息支出との対応にも,範囲的な問題はあるが,ここで は両者を対応比較する。 税金支出と対応するものとしては,前期の法人税等の計上額がより近いであろう。 前述したように,税金支出の範囲には法人税等以外の税金項目が含まれてい ることには十分留意しなければならない。 配当金支出と対応するものは,前期の株主総会で決議された配当金と当期 の中間配当金との合計額であろう。 差異金額は,損益計算書項目の金額から収支計算書項目の金額を控除して 算定する。 東芝の60/3期実績の実例を表5に参考のために示めす。各項目共かなり 大きな差異があるのには驚きである。しかも,償却費等の金額の重要性が非 常に大きく影響している。このような対比書を数年間分析することによって, 評価はより容易に行えるかもしれない。
表5 損益計算書対収支計算書対比書(東芝の実例) 損益計算書対収支計算書対比書
社名㈱ 東 芝
(有価証券報告書分析用)第146期 自昭和59年4月1日
(%) 至昭和60年3月31日 (単位:百万円) 損益計算書項目 金額 収支計算書項目 金額 差異金額 営業収益 2,525,953 営業収入 2,393,780 132,173 材料費 仕入高計
919,884458490
, 原材料費支出 1,328,925 49,449 1,378,374 労務費 給料等計
275,812 74,264 人件費支出 248,098 101,978 350,076 製造経費 その他計
196,591 431,574 経費支出 574,002 54,163 628,165 営業利益 169,338 営業収支差額 242,755 △ 73,417 営業外収益 49,360 営業外収入117779
, △ 68,419 営業外費用 74,664 支払利息支出24242
, 50,422 経常利益144034
, 経常収支差額 336,292 △192,258 特別利益 一 その他損益収入 一 〒 特別損失 一 その他損益支出 一 一 税引前当期純利益 144,034 損益収支差額 336,292 △192,258 法人税等 48,800 税金支出 112,526 △ 63,726 税引後純利益 95,234 税引後差額 223,766 △128,532 配当金 中間配当金計
10.525 10,629 配当金支出 21,091 63 21,154 役員賞与金 170 170 控除後利益73910
, 配当等控除後差額 202,675 △128,765 償却費等 131,127 131,127 合計 205,037 配当等控除後差額 202,675 2,362IV 予測能力の分析
一現金預金収支予定実績比較表一一
1、現金預金収支予定実績比較表の作成 資金繰状況には今後の資金計画が開示されているので,翌年度の実績と比 較することができる。事後印に差額を算出しても,外部分析では,残念なが ら原因追求はできないが,企業の予測能力を分析・評価することはできると いう長所がある。予定額をいかに正確に予測できるかどうかは,企業の経営 体質に依存するところがかなりあると考えられる。内訳項目の差額状況から も,企業特質をある程度は推測することもできよう。 現行の資金繰状況の今後の資金計画は,半期分の予定額だけしか公表され ていない。これは,資金繰状況が開示された当時は,ほとんどの企業が半年 決算であったからである。それ故に,今後の資金計画は半期分で十分であっ たわけである。しかし,昭和49年の商法改正によりほとんどの企業は1年決 算に移行することになった。1年決算の企業であれば,当然に今後の資金計 画も1年分開示すべきではなかったろうか。半期分の予測は容易であるが, 1年分の予測は無理であるという論理も働らこうが,現実の多くの企業は問 違いなく1年分の計画を設定しているのである。この欠陥のために,予定額 は半期分しか開示されず,従って半期分しか実績と比較することができない。 この問題点は,外部分析にとっては大変重要であるから,すみやかに改善さ れなければならない。 以上の結果,比較表においては第1四半期と第2、四半期だけの予定額と実 績額の比較しかできない。比較表を作成するには,前年度で公表された予定 額をそのまま移して,当年度の実績を記入し,両者の差額を算出する。現金 預金収支予定実績比較表の標準様式を表6に例示する。 東芝の59/3期に公表された予定額と60/3期の実績額との実際の比較表 を表7に例示する,差額を算出するには,様式の順序からすれば反対である臣陰畑 頃僅裡令回融㊥騨細ロ域 麗州窯 秘柵枢姿綾 緊細枢姿細懸謙 在紹枢粗駆撫 昭 枢 粕 曝 撫 革e即 座製令K聖 叡選謎 電K緊絹懸撫
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逆符合であれば小さくなるわけであるから,同符合のケースがより多いと 言うことである。差額項目を算出する場合には,逆符合であれば差額金額 は大きくなり,同符合であれば小さくなるわけであるから,逆符合のケー スがより多いと言うことである。 (3)その他の項目は,どうしても寄せ集めの性格を有しているから,差額は 大きくなりがちである。 (4)各四半期の差額は,どちらかと言えば,四半期合計の差額よりも小さい。 これは(2)と同様に合計する場合には同符合のケースがより多いと言うこと である。 将来検証しなければならないが,優良企業と呼ばれている企業ほど,予測 能力も優れているのではないだろうか。業績と予測能力の間には何らかの相 関関係があるかもしれないと想像される。東芝の例では,実績額は予定額に かなり近い結果となっている。従って,東芝の予測能力は優れていると考え られる。そこで,予定額はかなり信頼性が高いので,積極的に利用できるこ とになる。当然,1期間だけの比較では,容易に判定できないであろうから, 数期間にわたってこのような分析を繰り返して,より総合的な評価をすべき ことは言うまでもない。 V 結びに代えて 有価証券報告書の資金繰状況を組替えて,現金預金収支計算表を作成し, 分析・評価する方法を具体的に検討してきた。現金預金収支計算表の必要性 及び利用可能性をある程度は指摘できたのではないかと思われる。しかしな がら,現金預金収支計算表を一般化させるたゆには,まだ多くの重要な課題 を残していることも事実である。 例えば,次のような課題を今後考察することがぜひ必要かもしれない。 (1)個別企業のケースとして取り上げて,より詳細な分析・評価を積み重ね
るQ
(2〉倒産企業の予測に役立たないかを検討する。 (3)個別企業の適用を通じて,改良,改善を図り,より一般化した段階で, 統計的手法を採用してより実証的に検討する。 (4)内部分析として,企業自身が積極的に利用,検討する。 企業活動の主要な動きを把握するためには,資金の流れを分析することが 極めて重要であり,この流れを無視しては,将来の方向を正しく決定するこ とはできない。資金はダイナミックに変動しており,時々異常な動きをする こともあるが決して止まることは許されない。我々の歩みも同様に止まるこ とはできないのであろうか。 (注1) 拙稿「現金預金収支計算表の提唱」『白鴎女子短大論集』昭和59年11月,70−89 頁参照。 (注2) 大友信之稿「資金繰をめぐる諸問題」『企業会計』1954年11月号,164頁。 (注3) 実際に分析してみると,圧倒的に定期,通知預金の割合が大きいことに気付く であろう。表1の東芝の昭和60年3月31日現在の現金預金の内訳は次の通りであ るQ
現金
255百万円 その他の預金 28176百万円 (現金及び支払性預金計) 28431百万円 定期預、金 92,075百万円 通知預金 34016百万円 (非支払性預金計) 126,091百万円 現金預金合計 154,522百万円 (注4) 損益収支に「その他」の内訳項目を設けたが,損益収支に明確に関連するもの がないために,その他の項目は非損益収支として取扱うので,結果的には損益収 支の区分の「その他」に該当するものはほとんどないことになった。それ故に, 簡略化のためには損益収支の「その他」の独立科目表示は,一般的に必要ないか もしれない。 (注5) 表1より,東芝の「その他」は注に表示されているように収支尻で計上されて いる。従って,今後の資金計画の第1四半期では支出の部にマイナス表示となっ ている。(注6) 電機業界を中心にして限定した10数社,10数年間を実際に分析した結果からの 単なる例示に過ぎない。以下の該当企業例も同様である。 (注7) 東芝の過去10年間について,現金預金収支計算表を作成し,分析した結果,各 期間は次のような類型となった。 % 麗 % % 麗 % 驚 % % 男 実績