シアル酸の分布とその機能
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(2) 1 4. 近 畿 大 学 農 学 総 合 研 究 所 報 告 第 2号. ( 1 9 9 4 ) 晴乳類. rl~1. 節足動物{甲殻類 頭足類│ 腹足類 双経類. │妹形類. 盟問直. 斧足類}軟体動物. 直劃. 鳥類 腿虫類 両生類 魚類. l l. 環形動物. (外虹類. 前厄動物{. 1 腕足類. 種子植物 シダ類. コケ類. 地衣植物. 藻類. 図 2 シアル酸の分布(文献 4より改変). 仁コ:シアル酸の存在が確認されている J l :一部にシアル酸の存在が確認されている Eコ:新たにシアル酸の存在が確認された. 植物には検出されていなし, ( 図 2)0 一部の植物の穆. である晴乳類よりバクテリアに持ち込まれたとする. 様分泌物中にシアル酸が含まれるとする報告もあっ. 説がある九しかし,その根拠とする具体的データに. たが,現在では否定されているヘ. ついては乏しい。. バクテリアのシアル酸は E s c h e r i c h i ac o l iにおい. つぎに,動物でのシアル酸の分布についてである. N アセチルノイラミン酸のホ. が,先日動物ではほとんど見い出されていない。た. て初めて見い出され,. モポリマーのコロミン酸であることが示された 7)0. だし,扇形動物の P o l y c h o e r u s c a r m e l e n s i s, F a s c i o l o i d e s magnaにはシアル酸の存在が確認されて. E .c o l i以外では N e i s s e r i am e n i n g i t i d i s,S a l m o n e l .d j k a r t a, C i t r o b a c t e rf r e u n d i i, P a s . l ad a h l e m, S t r e p t o c o c c u s sp.で検出されてい t e u r e l l ap e s t i s, S h i z o b i u mm e l i l o t iで る4)。また,最近では根粒菌 R. いては同定が難しし現在ではむしろ後者の考えが. いるが,シアル酸がこれら扇形動物体内で合成され たものか,食餌成分として取り込まれたものかにつ. もシアル酸の存在が明らかとなった 8)。シアル酸を. 取られている。また,甲殻類,頭足類のシアル酸分. 含むバクテリアの大部分は晴乳類を宿主とする病原. 布について正反対の結果が提出されていたが, SEG.. 体であり,シアノレ酸合成に関与する遺伝子群が宿主. LERら10) は甲殻題 A s t a c u sl ゅt o d a c かl u sを詳細に調 ,.
(3) 吉田:シアル酸の分布とその機能 べ,腸以外の他臓器においてシアル酸が見い出され. 1 5. する。特に,非還元末端に位置するシアル酸が生物. ないこと,またシアノレ酸の前駆体である放射性. 活性に重要な役割を果すと考えられる。シアル酸の. ManNAcを用いて,動物体内でのシアル酸合成が. 機能を 3種に分げて記述する。. 観察されないことを報告した。したがって,甲殻類,. 1.シアル酸の物性に基づく機能. 頭足類でのシアル酸は食餌成分として,外から摂取. シアル酸は正電荷を帯びた物質の細胞内への取り. されたものである可能性が高い。また,甲殻類. 込みに重要な役割を演じている。マウスの白血病細. Limuluss t .についても,. 胞において,シアル酸は K+の細胞内への取り込み. WARREN4)が詳しく調べた. 結果,シアル酸を検出していない。ただし ,L imulus. に積極的に関与している 1九正電荷のセロトニン分. 体液中にはシアル酸認識レクチン (LPA)が存在し,. 子はラット平滑筋細胞のシアル酸によりトラップさ. レクチンの生体内での機能を考えると ,L imulusで. れる l九一方,シアリダーゼ処理はその取り込み活性. はシアル酸の存在が確認されても不思議ではない。 一方,後口動物では系統樹で糠皮動物以上の動物. を大幅に減じる 16)。また,シアリダーゼ処理は顎下腺 糖タンパク質の大幅な粘性の低下 3) や糖タンパク質. においてシアル酸が観察されている。したがって,. 性ホルモンである紙毛上皮性腺刺激ホルモン (hCG). 進化的視点から椋皮動物が初めてシアル酸合成系を. の活性低下 17) を導いた。 TGFβ の場合は逆にシア. 獲得したものと考えられている。しかし,ここにお. リダーゼ処理により不活性型が活性型に変換す る18)。これらのことはシアル酸の存在がその含有糖. いても例外があり,系統樹で練皮動物より上位に位 置する尾索類にはシアル酸は検出されていない 4)。. タンパク質の粘'性や立体構造に大きな影響を与えて. 進化の過程で尾索類のみがシアル酸合成系の遺伝子. いることを示す。シアル酸の負電荷はその含有物質. 群を喪失したとする考えもあるが,実証は不可能で. の物性に影響を及ぽすと同時にプロテアーゼに対す. ある。以上の記述がこれまでのシアル酸分布に対す る 見 方 で あ っ た が , 最 近 GEHRINGら11) は 昆 虫 類. ゲナーゼ川を含む 2~3 の酵素の例が知られてい. D r o s o p h i l am e l a n o g a s t e rでシアル酸を見い出した。 l a v u sレクチン それは,シアル酸特異的な Limaxf. 構は病原体の宿主細胞への侵入阻止とも関連する。. 金コロイド法による免疫電顕,ウエスタンプロット. つまり,病原体であるバクテリアはシアリダーゼに. る防御にも役立っている。ドーパミン β モノオキシ る。また,プロテアーゼに対するシアル酸の防御機. 法,ガスマス分析から,発生開始後 14~18 時間に発. より宿主細胞表面からシアル酸を遊離させたのち,. 現される α2,8結合したポリシアル酸であって,分. プロテアーゼを放出し,宿主に侵入するのである。. 1 0kDaノfンドに含まれている。この分子量 2 1 0 子量 2. 2 . シアル酸のクリアランス系における機能. kDaバンドの実体は明らかにされていないが, G E HRING らは細胞接着分子 N-CAMと考えているよ i c t y o s t e l i u m うである。また,最近我々 12) は粘菌 D. 機構を初めて明らかにした肌2九 血 祭 糖 タ ン パ ク 質. ASHWELLらは晴乳類の肝細胞でのクリアランス. で非還元末端のシアル酸が除去され,ガラクトース. d i s c o i d e u mの細胞接着分子 csAがシアル酸を含む. が剥き出しになると,肝実質細胞のアシアロ糖タン. 3 -シアル酸特異 主要糖タンパク質であることを α2,. パク質受容体 (RHL)にトラップされ,細胞内に取. a a c k i aa m u r e n s i sレクチン, α2,6 シアル酸 的な M ηb u c u sn i g r aによるウエスタンプロッ 特異的な Sm. り込まれ,分解される。低密度リポタンパク質 (LDL)は低シアル酸含量が刺激情報となり,マクロ. ト法及びガスマス分析により,明らかにした。さら. ブアージ,平滑筋細胞,血管内皮細胞に取り込まれ,. sAのムチン型糖鎖に主として含ま に,シアル酸は c れていることも明らかとなった 13)。. 結果として細胞内脂質量の増加をもたらす問。クリ. これらの結果は,シアル酸に対する検出感度を上. 球をシアリダーゼ処理すると,数時間で血流からク 23, 24)。ヒトではシアリダーゼ処理 リアランスされる 9,. げることにより,その分布領域がさらに広がる可能. アランス機構は細胞レベルでも作用している。赤血. 性を示唆しており,これまでの実験結果についても. 2 0日から約 2時間へと激減 により赤血球の生存が 1. 検出感度の向上した機器,手法により再検討するこ. する 2九非還元末端シアル酸を消失した赤血球は肝. とが必要であろう。. 臓のクッパー細胞や牌臓,腹腔マクロファージ上の ガラクトース/ガラクトサミン認識レクチンにより. I I I シアル酸の機能. トラップされ,マクロファージ,クッパー細胞内に. COOH基による負電荷 (pK主 2 )を持. 取り込まれる。赤血球との結合反応はガラクトース,. ち,糖タンパク質,糖質の非還元末端,側鎖に結合. ガラクトサミンにより阻害される。抗氷結糖タンパ. シアル酸は.
(4) 1 6. 近 畿 大 学 農 学 総 合 研 究 所 報 告 第 2号(19 9 4 ). 咽. シアリダーゼ. F終 ・. 警 会. 血清成分. ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー -. ー ー ー 『 ー ー ー 一 一 一 一 一 一 → ・ ,. a. b. C. 図 3 マクロフアージによる赤血球の取り込み過程(文献 9より改変) a シアリダーゼ処理赤血球, b マクロファージによる赤血球の捕足 る赤血球の取り込み。 ①,シアル酸;・,ガラクトース:凹,ガラクトース認識レクチン. c マクロファージによ. ク質が最も効果的な阻害物質である 2九 図 3に記述. オシドの成分として,この結合反応に関わる九コレ. したように,赤血球がマクロファージ内に取り込ま. ラトキシンの場合, Bサプユニットが細胞側のシア. れるにはある種の血清成分の刺激が必要である。ま. ロ糖タンパク質受容体である G M1 と結合すると,. た,細胞表面に存在しているシアル酸は免疫監視機. Bサブユニットから Aサブユニットが解離し , Aサ. 構からの回避にも関与している 2九 胎 児 の 周 辺 に 存. ブユニットが細胞内に侵入することによりサイクリ. 在する栄養芽層の表面はシアル酸に富み,免疫バリ. ック AMPの合成が誘発される 36)。また,バクテリア. アーを形成し,母体内での抗胎児抗体の産生を抑制 している。したがって,栄養芽層のシアリ夕、ーゼ処. は細胞付着因子であるアドへシンにより宿主細胞の. .c o l i S型および 特異糖鎖を認識し,結合する。 E. 理は母体内での抗胎児抗体の産生を促すことにな. K99型は α2,3 ーシアル酸を認識する机3ヘ マ ク ロ フ. る。このことは流産の原因とも関連する。癌細胞表. アージのガラクトース/ガラクトサミン認識レクチ. 面ではシアル酸含有複合糖質が増加し,癌抗原を遮. ンについては前述したが,ストロママクロファージ. 蔽する 28)。寄生体 T r y 少a nosomac r u z iも宿主に侵入. にはシアル酸複合糖質を認識するシアロアドへシン. する際,自身のトランスーシアリダーゼを使い,宿主. も存在する 3九 シ ア ロ ア ド へ シ ン は 分 子 量 1 8 5kDa. 側のシアル酸を自身の糖タンパク質に転移し,自身 の抗原を遮蔽する 29.30)。転移完了後は同じトランスー. で NeuAcα2→ 3Galβl→ 3GalNAcを認識する。. シアリダーゼで宿主の表面シアル酸を除去し,侵入. ママクロファージに捕促される。. する。. 3. シアル酸の受容体系での機能 インフルエンザウイルスはへムアグルチニンによ り,ニワトリ赤血球表面のシアル酸に結合し,凝集 反応を引き起こす 3円九赤血球凝集反応はミクソウ. したがって,この糖鎖を発現している血球はストロ 最近,免疫系においてシアル酸の関与する認識機 構がいくつか見い出された。 B リンパ球接着分子. CD22β はT細胞上の CD45ROと反応し,また活性 化 B細胞の CD75とも反応する 40)0 CD22β と CD75 との結合反応は CD22β の α2,6 シアル酸を認識す. イルス以外のウイノレスでも観察されている。赤血球. るレクチン活性によって起る。接着分子セレクチン. 凝集反応はウイルスへムアク寺ルチニンが赤血球表面. ファミリーはカルシウム依存性の C タイプレクチ. のシアロ糖タンパク質と結合した結果として起る。. ンドメインを有する P~ , E~ , L~ セレクチンの 3 種類. すべてのウイルスは同じ結合型のシアル酸に結合す. からなる 41)0. るわけでなく,例えばポリオーマウイルスは α2, 3. イトカイニンの刺激などによって,血小板,内皮細. シアル酸に結合し, α2, 6 シアル酸とは反応しな. 胞に誘発される。 L セレクチンは白血球に恒常的に. い3九インフルエンザウイルスの場合,そのへムアグ. 発現しており,リンパ球の末梢リンパ節へのホーミ. P~ ,. E セレクチンは炎症時および,サ. eu226と Tyr98が 赤 血 球 表 面 の シ ア ルチニンの L. ングにも関与する。炎症時における白血球の浸潤過. ル酸結合に関与する 3九破傷風菌,ボツリヌス菌,ジ. 程を例にセレクチンを含む各接着分子の関わりを示. フテリア菌,コレラ菌の産生する外毒素は感染細胞. す(図 4 )。各セレクチンの対応するリガンドの同定. のガングリオシドに結合する。シアル酸はガングリ. は最大の関心事であるが, E セレクチンはシアリル.
(5) 1 7. 吉田:シアル酸の分布とその機能. r. 一一一一 一一二〈之主コ〉 ご一一一一一一一ー 〈こ二主二フ ー ー一一一_..L:..乙五二F. - P, Eーセ レ ク チ ン. C二三二二丈 二三二コ二 二E二二工二二E コ 二二ご三二二丈ニコニコ. 。 ーI CAMl , 2 ,VCAMI. ローリ ング. 〉ー. S LeへLe・. 接着. 遊出. L F Al ,M a cl ,VL A4. £ ー 亀 一 一 二 段 … 二三二三与三三三 ( ヤ: : = : : : 浸潤. . 炎症局所. 図 4.白血球の浸潤過程(文献4 1より改変). Le",Pセレクチンはシアリ JレーLe ",Le ヘ ス Jレ フ x ァチド, Lセレクチンはシアリ JレーLe ,スJレファチ. 細胞期で発生が止まった。一方, フェニールメタノ. ド, ホスホマンナンメチノレエステルを認識する。た. メチルトランスフエラーゼプロモー ー JレアミンーN-. だし, スルファチドの関係する反応にはカルシウム. ターを用いた場合, トランス ジェニックマウスは得. 選択的に破壊した。その結果,受精卵はほとんど 2. は必要でない。 Lセレクチンの認識リガンドについ. られたが,網膜と副腎でエステラーゼが選択的に発. ては,不明な点が残されているが,P,Lセレクチ. 現し, それらの組織では形態異常が観察された。も. ンについては, その生体内でのリガンド分子がそれ. うひとつは,PAULSONら川のシアリルトランスフエ. ぞれ同定された。 Pセレクチンは gp1 2 0で,Lセレ gp5 0である叫・ 43)。生体内リガンドの共通 クチンは S. ラーゼ遺伝子についてである。彼らはこれまでに単 離した 3種のシアリ Jレトランスフエラーゼ遺伝子聞. 項はシア/レ酸を含むムチン型糖鎖を含有することで. には動物種聞を越えて,ホモロジーのあること(シ アリルモチーフ)を見い出し, シアリルモチーフの. ある。 前述したように,我々の扱っている細胞性粘菌の. PCRプライマーをもとに,新しいシアリルトラ ンス. 細胞集合過程に関与する接着分子 c sA はシアル酸. フエラーゼ遺伝子をクローニ ング した。今後は検出. を含む主要糖タンパク質であるが, シアル酸が接着. 感度の向上にともなって , シア ル酸の分布領域も広. 反応でのリガンドとして機能しているかどうかにつ. がり ,糖鎖工学的アプロ ーチによって,新たな シア. いては現在検討中である。ただし, シアル酸は主と. ル酸の機能が見い出せるものと期待する。. してムチン型糠鎖に含まれ, この糖鎖を欠損した糖 鎖欠損突然変異株においては接着活性の大幅な低下 が見られること 44),Nアセチ Jレグルコサミンと同じ くシアル酸を認識する小麦座芽レクチンは csAの 関与する細胞接着を特異的に阻害すること州など から , シアル駿が接着反応、に直接関与することは十 分考えられるところである。. I V お わ りに 最近,報告されたシア jレ酸に関する 2つの糖鎖工 学的アプローチについて記述する。ひとつは,VARKl ら叫によるトランスジェニックマウスの作成であ る。メタロチオネインプロモーターにインフルエン ザ C型ウイルスの 9 0アシルーシア Jレ酸特異的エス テラーゼ遺伝子を継ぎ,シアル酸の 9 0 アシル基を. 引用文 献 1 ) G. BLlX, A .GOTTSCHALK and E .LKL ENI く:. Natu re,175,340~34 1 ( 1 9 5 7 ) 2 ) A .VARKI:Gl y c ob iol ogy,2,25~40 ( 1 9 9 2 ) 3 ) A .GOTTSCHALKandM. A .W.THOMAS: B io. c hi m.B iophy s.Act a,46,9 1 ~98 ( 1 9 6 1 ) 4 ) L .WARREN: Co mp.B io che m.Phy si o. l,10, 1 53~ 1 7 1 ( 1 9 6 3 ) 5 ) S .・S .NGand]. A .DAI N: i n“B iol ogi c alr ol e s o fs ia l ic aci d" ( A .ROSENBERG and C .. L. SCHENGRUND,e ds . ),59~ 1 0 2,Pl e num,New 19 7 6 ) Yor k( .SCHAUER: Adv . Car bohyd r.Che m.B io . 6 ) R 1 9 8 2 ) c he m .,40,1 31~234 (.
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