生活周りのバイオ:洗剤
化粧品と健康食品
伊 藤 進
琉 球 大 学 農 学 部 亜 熱 帯 生 物 資 源 科 学 科
衣食住に係わる商品がニューバイオ技術の成果の塊のものが多いことは意外と消費者に
は知られていない.
演者は,企業,国研,大学での研究生活の中で,新しい生物資源(遺伝資源)を求めて
世界中を駆けずり回った.幸運にも幾つかの商品,例えば,産業用酵素,化粧品原料,健
康食品などの開発に成功している.材料とした生物資源は,細菌,酵母,植物などであり,
極めて素人的な思いつきと発想、から出発している.
入社した会社がトイレタリー商品と化学品を主たる生業にしていたので,バイオとはあ
まり馴染みが無かったのが逆に幸いしたのかもしれない.その化学品の多くが界面活性剤
であったため,最初に始めた研究はパラフィンを資化する酵母の糖脂質系界面活性剤(バ
イオサーファクタント)の大量生産だった.私の興味は,この微生物界面活性剤がパラフ
インを乳化(というより分子化)して酵母の生育を促進するメカニズムで、あった.しかし,
幸いなことに保湿性があったので基礎化粧品に配合された(バイオ化粧品の先駆け).一方,
糖脂質の脂質部分がω ヒドロキシパルミチン酸であり,これを分子内閉環できればラクト
ンムスク(人工じゃ香)になる.そこで,パルミチン酸のアルコールエステルのω位に水
酸基を酵素的に導入できれば,この高価な香料が合成できると考えたが,酵素は末端メチ
ルと ω 1のメチレンを認識できない.ところが ,Rhodococcus細菌がこの脂肪酸エステル
をシスヘキサデセン酸に変換することを偶然見出した.この不飽和脂肪酸はヒト皮脂の主
要成分であり,バリア機能,特にアトピー性皮膚炎の患者が感染するブドウ状球菌の殺菌
作用があった.
その間,アルカリセルラーゼ,アルカリセルラーゼ,アルカリアミラーゼを工業生産さ
せ,当時初めての超小型化洗剤に配合した.
国研では,深海微生物研究のメッカであったので,深海微生物の探索と応用研究を開始
した.寒天やマンナンなどの分解酵素を使って健康食品素材を製造するためであった.思
惑とは異なり,前者の酵素は遺伝子工学試薬キットとして発売された.
国研を兼務した北の大学では,一次産業の振興と原料の高付加価値化を目論み,牛乳,
テンサイトウ,ジャガイモ,海藻類などを素材として健康食品の研究に着手した.牛のル
ーメンから分離した菌が,乳糖をエピラクトースに変換することに注目した.その生理活
性を調べたところ,プレバイオティクスとして極めて強力な性能を有していることが判明
したので開発研究へと移行しているところである.
本講演では,これらの開発とその背景にあるニューバイオについて話題提供する.
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