セラミック溶射皮膜構造評価法としてのキャビテーション・エロージョン試験の有効性
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(2) 高 温 学 会 誌 第 37 巻 第 6 号(2011 年 11 月). して興味深いものが出てきているが、これも大型の設備が. Table 1 Spraying parameters. 必要であり一般的ではない。噴射摩耗試験以外に溶射皮膜 の粒子間結合力を測定する方法としては、水中で振動する 超音波振動子による気泡崩壊を受けた試験材の損耗量の時 間的変化を測定し評価する方法(キャビテーション・エロー ジョン法)がある 12)。セラミック皮膜については溶射以外. 㪞㫌㫅㩷㫋㫐㫇㪼. 㪪㫌㫃㫑㪼㫉㩷㪤㪼㫋㪺㫆㩷㪝㪄㪋. 㪧㫉㫀㫄㪸㫉㫐㩷㪞㪸㫊㪃㩷㫄㪊㪆㫄㫀㫅. 㪋㪅㪌㬍㪈㪇㪄㪉 㩿㪘㫉㪀. 㪪㪼㪺㫆㫅㪻㪸㫉㫐㩷㪞㪸㫊㪃㩷㫄㪊㪆㫄㫀㫅. 㪈㪅㪉㬍㪈㪇㪄㪉 㩿㪟㪉㪀. 㪘㫉㪺㩷㪺㫌㫉㫉㪼㫅㫋㪃㩷㪘. 㪍㪇㪇㩷. 㪘㫉㪺㩷㪭㫆㫃㫋㪸㪾㪼㪃㩷㪭. の方法も多くの研究者により行われている 13) -15)。セラミッ. 㪎㪇㩷. 㪪㫋㪸㫅㪻㩷㫆㪽㪽㩷㪻㫀㫊㫋㪸㫅㪺㪼㪃㩷㫄. 㪍㪇㩷㪃 㪈㪉㪇. クス溶射皮膜では、先駆的な研究として Adamski ら 16) によ る各種溶射材料の壊食量と組織の関係を調べた研究、荻野 らによるアルミナ、ジルコニア皮膜での溶射距離と壊食量. Table 2 Details of specimen fabrication. の関係を調べた研究 17)、と溶射後の封孔処理効果(銅メッ キ 18)、Cr2O3 処理 19))を調べた研究があるのみで、溶射材 料の粒径を含めた各種溶射条件が皮膜の耐壊食特性に及ぼ. 㪪㫇㫉㪸㫐㪼㪻㩷㫄㪸㫋㪼㫉㫀㪸㫃㫊 㪪㫇㪼㪺㫀㫄㪼㫅㩷 㪥㫆㪅 㪚㪿㪼㫄㫀㫊㫋㫉㫐. す影響についての詳細な報告は著者の知るかぎりほとんど. 㪧㫉㫀㫅㪺㫀㫇㪸㫃㩷㫊㫇㫉㪸㫐㩷㪺㫆㫅㪻㫀㫋㫀㫆㫅㫊. 㪤㪼㪻㫀㪸㫅 㪻㫀㪸㫄㪼㫋㪼㫉 䋨㱘㫄䋩. 㪫㫉㪸㫍㪼㫉㫊㪼㩷 㫍㪼㫃㫆㪺㫀㫋㫐 㩿㫄㪆㫊㪀. 㪫㪼㫄㫇㪼㫉㪸㫋㫌㫉㪼㩷㫆㪽㩷 㪪㫋㪸㫅㪻㫆㪽㪽㩷 㫊㫌㪹㫊㫋㫉㪸㫋㪼㩷㪻㫌㫉㫀㫅㪾㩷 㪻㫀㫊㫋㪸㫅㪺㪼 㫊㫇㫉㪸㫐㫀㫅㪾 㩿㫄㫄㪀 㩿㪢㪆㷄㪀. 㪩㪼㫄㪸㫉㫂㫊. 㪚㪈㪄㪈. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪈㪇. 㪇㪅㪎㪌. 㪈㪉㪇. 㪊㪎㪊㪆㪈㪇㪇. 㪚㪈㪄㪉. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪉㪇. 㪇㪅㪎㪌. 㪈㪉㪇. 㪊㪎㪊㪆㪈㪇㪇. 㪚㪈㪄㪊. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪉㪇. 㪇㪅㪎㪌. 㪈㪉㪇. 㪊㪉㪊㪆㪌㪇. 㪚㪈㪄㪋. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪉㪇. 㪇㪅㪎㪌. 㪈㪉㪇. 㪋㪎㪊㪆㪉㪇㪇. 㪚㪉㪄㪈. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪉㪇. 㪇㪅㪎㪌. 㪍㪇. 㪋㪉㪊㪆㪈㪌㪇. 㪚㪉㪄㪉. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪉㪇. 㪇㪅㪎㪌. 㪍㪇. 㪋㪉㪊㪆㪈㪌㪇. 㪚㪉㪄㪊. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪉㪇. 㪇㪅㪎㪌. 㪈㪉㪇. 㪌㪎㪊㪆㪊㪇㪇. (HVOF) 皮膜では溶射条件を最適化することにより、皮膜. 㪚㪉㪄㪋. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪉㪇. 㪇㪅㪎㪌. 㪈㪉㪇. 㪊㪎㪊㪆㪈㪇㪇. 㪦㫉㪾㪸㫅㫀㪺㩷㫊㪼㪸㫃㪸㫅㫋. 中に多く存在する半月状粒子と溶融粒子界面が強化され、. 㪚㪉㪄㪌. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪉㪇. 㪇㪅㪎㪌. 㪈㪉㪇. 㪊㪎㪊㪆㪈㪇㪇. 㪠㫅㫆㫉㪾㪸㫅㫀㪺㩷㫊㪼㪸㫃㪸㫅㫋. プロペラ基材そのものに比べて 2 倍の耐壊食性を示す皮膜. 㪚㪉㪄㪍. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪈㪇. 㪇㪅㪎㪌. 㪍㪇. 㪋㪉㪊㪆㪈㪌㪇. の創製が可能であることを明らかにした。同時に耐熱性、. 㪚㪉㪄㪎. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪈㪇. 㪇㪅㪎㪌. 㪍㪇. 㪋㪉㪊㪆㪈㪌㪇. 耐食性など数々の優れた物性を有するセラミックス溶射皮. 㪚㪉㪄㪏. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪈㪇. 㪇㪅㪉㪇. 㪍㪇. 㪋㪉㪊㪆㪈㪌㪇. 㪦㫉㪾㪸㫅㫀㪺㩷㫊㪼㪸㫃㪸㫅㫋. 膜についても、耐壊食特性を調べたが、最適化した金属系. 㪚㪉㪄㪐. 㪘㫃㪉㪦㪊. 㪈㪇. 㪇㪅㪈㪇. 㪍㪇. 㪋㪉㪊㪆㪈㪌㪇. 㪦㫉㪾㪸㫅㫀㪺㩷㫊㪼㪸㫃㪸㫅㫋. ない。 著者ら 20) -22) は船舶用プロペラ等に生じるキャビテーショ ン・エロージョン(壊食)対策として溶射による表面処理 法を検討し、Co 基合金の減圧プラズマ溶射 (VPS) 皮膜は、 極微細な強化相が均一分散した組織となるため極めて優れ た耐壊食性を示すこと、またこの合金の高速ガス炎溶射. 溶射皮膜に比べてその機械的特性は低く、実機に用いるた めには、溶射条件、前述の気孔を含めた皮膜組織と壊食損 成温度に影響する。今回はトーチの垂直移動速度にあた. 傷特性の関係を明らかにする必要があると考えた。. る重ね量は一定とし、水平移動速度のみを変化させた。. 今回、溶射条件、出発原料が異なるプラズマ溶射皮膜の. VH=0.75 m/s を基準とし、皮膜性状の向上のため、さら. キャビテーション損傷量の測定と、壊食粉、損傷面ならび. に低速な条件でも成膜した。. に断面組織の観察から、アルミナ皮膜のキャビテーション 壊食試験法が皮膜の内部構造を的確に評価する手法として. ③ 溶射トーチと基材間の溶射距離 (Standoff distance): SD は使用材料や基材の状態により変化し、セラミック溶射. 特に有効であることを示した。. では一般に 75 ∼ 150 mm 程の値が選ばれる。今回は 120. 2.実験方法. mm を基準とし、皮膜性状の更なる向上を目指して SD を 60 mm まで近づけた条件でも行った。. 2.1 溶射成膜法と溶射条件 溶射成膜は F4 プラズマ溶射ガン(スルザー・メテコ製). ④ 使用材料 (feedstock): 溶融粉砕したアルミナ (Al2O3) 粉. を用い、直径 16 mm の SS400 試験チップ上に Table 1 に示. 末材料で、平均粒径 d50=20 m を標準として用い、これ. す条件で溶射を行った。ここでは Table 2 で示した溶射施. と d50=10 m の微細粒とを比較した。上記①∼③はいず. 工因子を変化させて皮膜の作製を行った。すなわち. れも溶射表面温度を高くすることで、積層粒子間の結合. ① 基材温度制御 (Preheat): 基材温度 TS は初層での粒子. 性の向上を、④は粒子間の気孔率低減を目指している。. 偏平能だけでなく、その後の積層の皮膜性状に影響する。. また、一部の試験片では、有機、無機封孔剤処理を施す. 100 ∼ 150 ℃を標準とし、さらに上は 300 ℃まで、下は. ことにより皮膜内の未結合部分を少なくし、それらの粒. 50 ℃まで変化させた。. 子間力向上効果についても調べた。. ② 溶射トーチの移動速度 (Gun traverse velocity): 走査速. 全ての試験片は溶射膜厚 200 m を目標に成膜し、研削. 度 (Surface velocity) ともいう水平移動速度 VH は、1 パ. により 150 ∼ 180 m に仕上げた。この時の表面あらさは. スで積層する皮膜厚さが変化し、粒子積層状態と皮膜形. Ra=0.25 ∼ 0.35 m である。. − 299 −.
(3) セラミック溶射皮膜構造評価法としてのキャビテーション・エロージョン試験の有効性(植松・谷・菅澤・川並・難波・高畠・吉岡・石原). (a). (b). (c). (d). vibratory horn ampritude: 50Pm. test specimen. Fig.2 Cavitation jet cloud photos in 32 ms intervals by high speed camera.. )16mm. Ceramic Coatings. Fig.1 Vibratory cavitation test apparatus. 50ȝm p.p.. 3. 2.2 キャビテーション壊食皮膜評価法. 2.5. 溶射条件を変化させて作製したセラミック皮膜の壊食特. トし、周波数 19.5 kHz、全振幅 50 m で振動させることに. Sensor output [ V ]. 先端にねじ込んだ溶射試験片を水面下 10 mm の位置にセッ. Peak load:47.3N. 2. 性評価は、超音波振動式壊食試験法 ASTM G3212)に基づい て行った。この試験法は、超音波振動子と連結したホーン. PVDF sensor. より、試験片下面皮膜部にキャビテーションを発生させ壊. 1.5 1 0.5 0 -0.5. 食(壊食)特性を調べるオープンビーカー方式のものであ. -1. る (Fig.1)。試験液はイオン交換水とし、恒温装置によって. -1.5 0. 100. 200. 300. 500. 600. 700. 800. 900. 1000. Time [ sec]. 液温を 25 ± 1 ℃に保持した。またキャビテーション壊食特 性およびその損傷速度は通常、皮膜表面の形態変化を可視. 400. Fig.3 Cavitation strength measurement of the vibration type equipment.. 化し、損傷における材料破壊の起点、破壊の単位などを解 析することによって把握できると考えられる。そのため試 験片は所定時間毎に精密天秤(感度 0.01 mg)を用いて損 傷質量減を求め、溶射皮膜表面の損傷状態を走査電子顕微 鏡 (SEM) で観察した。さらに試験終了後の溶射皮膜の断面、 損傷した皮膜の脱落粉についても調べている。. を高速デジタルオシロスコープ上に記録したものである。 基本振動数 19.5 kHz の中に 47.3 N の衝撃力が発生している 様子が観察され溶射皮膜表面もこの値相当の崩壊圧を受け ているものと考えている。. 2.3 キャビテーション壊食試験における気泡崩壊圧 Fig.2 にキャビテーション壊食試験中に試料先端の様子を. 3.実験結果及び考察. 高速度ビデオカメラで撮影した結果を示す。(a) ∼ (d) の駒. 3.1 溶射皮膜の耐壊食性に及ぼす溶射因子の影響. は 32 sec ごとに連続しており、試験片端面からキャビティ. 3.1.1 基材温度と封孔処理の影響 Fig.4 は 20 m の材料粉末を使い、SD = 120 mm、VH = 0.75. クラウドの発生(図中○印)と消滅が短時間で生じている 様子がわかる。. m/s の標準溶射条件下で、基材温度が壊食損傷に及ぼす効. 同じく Fig.3 は超音波キャビテーション発生装置により. 果を 30 min 間の平均質量減少量から比較したものである。. 生成する衝撃力を振動子の先端にねじ込んだ試験ディスク. 基材温度が 100 ℃ (C1-2) に比べ、200 ℃ (C1-4)、 300 ℃ (C2-3). の底面から 2 mm 対向してセットした探蝕子(圧電性高分. と高温になるほど損傷割合は少くなり、逆に基材を冷却し. 子 PVDF センサーを埋め込んだもの)で捕らえ、その信号. た場合 (C1-3) では、多くの損傷を受けていた。. − 300 −.
(4) 高 温 学 会 誌 第 37 巻 第 6 号(2011 年 11 月). (a). Fig.4 Influence of substrate temperature on average mass loss rate after 30 min cavitation erosion (CE) test.. (b). 10Pm. 20Pm. Fig.5 Influence of sealing effect on average mass loss rate after 30 min CE test.. Fig.5 の C1-2、C2-4、C2-5 は Fig.4 と 同 じ SD、VH の 条. Fig.6 Influence of standoff distance and gun traverse velocity on average mass loss rate after 30 min CE test using (a) 20 μm , (b)10 μm powder. 3.1.3 溶射材料粒子径の影響 前述の通り 20 m の粉末材料を用いた場合、SD を短縮. 件で封孔処理の効果を平均質量減率で示したものである。 20 m の標準材料では、溶射後皮膜に存在する気孔をエポ. 化しても耐壊食性への影響は少ないが、10 m の微細材料. キシ封孔材により塞ぐと、耐壊食特性は 2 倍に向上するこ. では、Fig.6(b) に示す通り、短縮化することにより耐壊食. とを確認した。エポキシ系封孔剤が貫通気孔を塞ぎ、同時. 特性は 4 倍以上に向上し、標準粒径のものと比べても半分. に偏平粒子の隙間にも入って、結合力を上げる相乗効果に. の損傷率であった。VH を比較した結果では標準の 1/4 ∼. よるものと思われる。他方、無機封孔剤でも同様な効果が. 1/8 の速度で溶射トーチ走査することにより、損傷は少な. 期待されたが、キャビテーション衝撃に対しては、封孔処. くなり、良好な耐壊食特性が得られていた。微細材料の封. 理によって生成されるガラス相が破壊の経路となるためか. 孔効果については、細粒化により溶射したままでも貫通気. 15 % 程の耐壊食性の向上であった。. 孔量が少いためか、Fig.5 の C2-7 と C2-8 の比較からもその. 3.1.2 溶射トーチ移動速度、溶射距離の影響. 効果が認められない。このことから、微細粒子では VH の. VH の低速化は、溶射の皮膜形成温度を高温にキープす る効果が得られるため、偏平粒子間の結合性(粒子間結合. 低速化による緻密化効果の方が大きいと考えられる。 3.1.4 溶射トーチ移動速度 (VH) の低速化に伴う損傷率の時. 力)の向上が期待される。Fig.6(a) は、VH を 0.75 m/s (C2-1). 間変動. から 0.2 m/s (C2-2) に変化させると溶射皮膜の損傷量割合は. これまでの結果から溶射距離や基材温度が耐壊食性に及. 25 % 少なくなった。同時に SD も 120 mm から 60 mm とし. ぼす効果は、セラミック皮膜の場合、初期の損傷を除いて、. ているが、VH を標準の 0.75 m/s のままで SD だけ 60 mm と. ある程度時間が経過すると各暴露時間でほぼ一定の壊食量. した C2-1 では、120 mm (C1-2) とほとんど同じ結果であっ. になるため累積損傷量の傾きだけで壊食特性の評価ができ. たことから、この向上効果は VH の低速化によるものであ. ていた。しかしながら、低速化した試験体では累積損傷量. ると考えられる。低速化すると、基材上のある 1 点に注目. の傾きは確かに小さくなる (Fig.7(a)) が、その値を各測定. すれば、単位時間当たりの飛来粒子数は増えることになり、. 時間毎の損傷量(質量損傷率あるいは密度で除した体積損. 偏平粒子相互での熱交換量は増え、両者の粒子間結合が増. 傷率)で整理してみると、Fig.7(b) で示すように VH を低速. 大したものと推察される。. 化した時だけ損傷率(体積損傷率)が周期的に変動するケー. − 301 −.
(5) セラミック溶射皮膜構造評価法としてのキャビテーション・エロージョン試験の有効性(植松・谷・菅澤・川並・難波・高畠・吉岡・石原). (a). Surface. ĸ20Pm, 0.75m/s, 120mm. ĸ20Pm, 0.2m/s, 60mm. Cross section. Al2O3 50͠. ĸ䋱0Pm, 0.75m/s, 60mm. 20Pm. 20Pm. 20Pm. 20Pm. ĸ䋱0Pm, 0.2m/s, 60mm ĸ䋱0Pm, 0.1m/s, 60mm. (d50,. (b) (b). VH,. SD). Al2O3 100͠. ĸC1-2 (20Pm, 0.75m/s,120mm). Al2O3 200͠. ĸC2-2 (20Pm, 0.2m/s, 60mm). 20Pm. 20Pm. C2-6 (䋱0Pm, 0.75m/s, 60mm). Fig.8 SEM micrographs of surface and cross section polished image.. ĸC2-7 (䋱0Pm, 0.2m/s, 60mm) C2-9 (䋱0Pm, 0.1m/s, 60mm). (b). (a). (d50, VH, SD). A. C. B. Fig.7 Influence of cavitation erosion time on (a) cumulative volume loss, (b) volume loss rate. (c). (d). スが見られた。特に長時間のデータが採取できた C2-7 では 10-30 min と 75-90 min の時間では 0.08 mm3/min と焼結アル ミナ (0.05 mm3/min) の損傷率に近い値を示すのに対し、3075 min の範囲ではその値が上昇していき最大で 0.15 mm3/ min まで達していた。材料粒径が異なるものでも標準 VH で. 20Pm. 20Pm. はこのような傾向は生じていない。そのため VH の低速化 では、溶射トーチが基材上の同一点を複数回往復するとき、 前パスの溶射積層表面上では、次パスで積層が開始される. Fig.9 Surface morphologies of (a) C2-3 for 60 min CE as sprayed specimen, (b) sintered Alumina specimen for 60 min CE. and (c) , (d) are of each cross-sections, respectively.. まで、速度差の 2 倍、すなわち約 8 倍の冷却時間を有する ことになる。高い皮膜温度で連続して積層しているパス内 の皮膜と、その上に重ね溶射される部分に構造の差が生じ た可能性もあることから、後節で損傷面の組織観察を行い、 考察する。. 3.2.2 壊食試験による損傷面の観察 皮膜表面を形成する溶融粒子は、溶射の最後の積層状態 を現しているのにすぎず、その内部の様子は上から少しず. 3.2 溶射皮膜の耐壊食性と皮膜組織. つ剥がしていかなければわからない。今回取り上げたキャ. 3.2.1 溶射皮膜の断面組織. ビテーション壊食法は水中で生じた多くのマイクロジェッ. 壊食試験前に各試験片の SEM により組織写真を撮り、. ト集団を皮膜に作用させることにより壊していく手法であ. 個々の溶射条件間の比較を試みた。その一例とし基材温度. る。皮膜の脆弱部分から損傷していく過程が、SEM 等で容. を変えたときの各試験片 (C1-2、C1-3、C1-4) の表面と断面. 易に観察でき、その内部構造とともに粒子相互の接合の具. の写真を Fig.8 に示す。いずれの表面、断面の組織写真も、. 合が、損傷状態の違いとして現すことができる。Fig.9 にキャ. 試験片相互の組織上の違いはごく僅かであり、これらの写. ビテーション壊食を受けた試片の表面と断面の損傷状態の. 真から皮膜の優劣を判定するのは難しかったが、Fig.4 の. 一例を示す。 Fig.9(a) は 60 min 暴露した C2-3 溶射材であ. 壊食試験ではその僅かな違いを現出していた。. るが、図中矢印 A のように偏平粒子の中に存在する縦割れ. − 302 −.
(6) 高 温 学 会 誌 第 37 巻 第 6 号(2011 年 11 月) Original surface. (a). Eroded surface. C2-9. A Coating. 10Pm. 10Pm. 200Pm. Substrate. (b). Incomplete filling. A. Complete filling Incomplete filling. 100Pm. Al2O3 coating. Complete filling. 50Pm. Fig.9(b) Sintered Alumina specimen. Al2O3 coating. 50Pm. Fig.10 SEM micrographs of eroded surface image, (a)C1-2, (b)C2-7.. Fig.11 SEM micrographs of surface and cross section polished image of C2-9.. を起点として壊食が拡大進行している様子が伺える。それ. が、それ以外は滑らかな凹凸少ない組織になっていた。溶. はキャビテーション気泡崩壊時に発生したマイクロジェッ. 射中のパス間温度の低下はそのまま密着力の低下に繋が. トが狭い範囲に次々と衝突することにより、数 m 単位と. る。従って皮膜剥離を防ぐために基材の温度上昇を溶射中. いう、偏平粒子径よりもかなり小さい単位で、皮膜を表面. の大幅な冷却で抑えたり、基材温度調整のためパス間(重. から少しずつ破壊していき、壊食された部分は細かい凹凸. ね溶射部分)で休止してから再び溶射する施工法は、偏平. がある状態(矢印 B)に変化している。さらに偏平粒子内. 粒子間のぬれ性を低下させるため、耐壊食性を劣化させる. に存在する縦割れも損傷の進展に影響するが、これが壊食. ことを示している。すなわち材料の細粒化と VH の低速化. 面直下の粒子間クラックに到達すると、より大きな壊食粉. により偏平粒子間の密着性が向上すると、それまでそれ程. となって脱落していくものと考えられる。この様子は別途. 目立たなかったパス間とパス内の粒子密着強度の差が顕著. 試験した Fig.9(d) の焼結セラミックスが、表面の微小気孔. になり、Fig.7(b) の損傷率の時間変動となって現れたこと. (矢印 C)を起点とし、ほぼ粒界に沿って損傷が進行するの. がわかる。それ以後の損傷率は再び下がっていることから、. とは大きな違いであると考えられる。それぞれの試験片の. そのパス間境界より下層の粒子間結合力は高いものと推察. 断面写真を Fig.9 の (c)、(d) に示すが、両者の壊食面粗さ. される。Fig.11 は Fig.7(b) の C2-9 で体積損傷率が最も低. はそれ程違わないことがわかる。. い状態から再び上昇してきた 60 min 暴露後に試験片を切断. Fig.10(a)、(b) はそれぞれ 90 min、60 min 壊食が進行した. し、その断面を観察したものである。皮膜内にはボイド状. 後の標準 C1-2 と微細材料 C2-7 の壊食表面の SEM 写真で. の不連続領域が皮膜の厚さ方向に平行に並んで領域が存在. ある。それぞれの損傷部分の丸印を比較すると (a) が 5 m. する。その上下では気孔が少ない 2 層組織になっているこ. 程度の 単位で損傷が進み、その周辺で 10 ∼ 15 の塊状の. とから、壊食損傷面がこの組織に接近した部分で壊食速度. 脱落が見られるのに対し、(b) の C2―7 試片では、偏平粒. が変化したことが伺われる。C2-9 試験片は封孔処理をして. 子内の縦割れが少ないためか、気泡崩壊による衝撃圧を皮. いるため、本来ならばこうした欠陥に封孔剤が浸透してい. 膜が受けたとき損傷破壊単位が 2 m 程度に細かくなって. たはずである。しかしその上層の組織が気孔が少ない組織. いた。. であったことから、封孔剤が浸透しにくかったものと考え. 3.3 溶射トーチ移動速度 (VH) の低速化に伴う損傷率の時間 変動に関する考察 前述の Fig.10(b) では細かい凹凸がある状態(矢印 B) の下層に矢印 A で示したような新たな表面層とも思える. られ、Fig.5 で C2-8 の封孔処理した試験片の損傷率の結果 が溶射のままの C2-7 と余り変わらなかったこともこの断面 図から伺い知ることができる。 3.4 セラミック溶射皮膜の損傷機構. 偏平粒子形状の組織が出現していた。この状態は Fig.7(b). 溶射条件を変化させた実験から、セラミック溶射皮膜で. において C2-7 の体積損傷率が最も増加した時に相当し、. は溶射中の皮膜温度が最も皮膜の性状に重要であることが. Fig.10(b) の低倍率写真で損傷面全体を観察すると、僅か. キャビテーション壊食試験及びその皮膜の組織観察から明. に島状に残っている部分は細かい凹凸がある状態であった. らかとなった。Fig.12 は溶射皮膜の壊食の全体的な流れ図. − 303 −.
(7) セラミック溶射皮膜構造評価法としてのキャビテーション・エロージョン試験の有効性(植松・谷・菅澤・川並・難波・高畠・吉岡・石原). (b). (a). Cavitation jet. Cavitation jet A. (c). Continuous contact. A. 10Pm. B. Discontinuous contact (Interlamelar crack). (d). A. B. A B B 10Pm Fig.12 (a) (b) Schematic diagrams of erosion mechanism for Alumina coatings, (c) Cross section Ar polished micrograph, arrows indicated interlamelar cracks and (d) eroded particles.. と損傷部近傍の詳細断面及び、壊食粉の写真である。皮膜. 皮膜の損傷単位を小さくする効果による。衝撃圧は m. 表面の損傷は微細な表面欠陥を起点として小壊食粉が次々. 単位の狭い部分に繰り返しかかるため、細かい損傷が表. と脱落することで進行するが、偏平粒子相互の粒子間結合. 面亀裂近傍から生じ、一部を除いてほぼ一様な損傷面と. を有している部分が少ない Fig.12(a) のケースでは、キャビ. なる。さらに残った部分と粒子間未結合部が繋がったと. テーション崩壊圧が加わった部分で縦き裂の進展が容易に 進み、粒子間未結合部と繋がって大きな脱落が生じやすい。. きに大きく崩壊する。 2. 材料粒径の違いによらず、皮膜形成時の基材温度を高め. Fig.12(b) のように良好な粒子間結合を有している皮膜では. ることにより、耐壊食性は向上する。これは粒子間未結. 縦き裂の進展がそれ程進まず、破壊単位も小さくなってい. 合部が減り、粒子間結合力強化されたためである。. る。Fig.12(c) は研磨粉による埋まりと研磨中の粒子脱落を. 3. 微細溶射材料において、溶射距離の短縮化は、特に有効. 防ぐため Ar イオンビームを用いた Cross section polishing 法. であるが、これは溶融粒子の熱容量が小さいため飛翔中. で研磨した壊食断面の一例である。壊食部近傍では粒子間. に粒子の温度が大きく低下するためであり、逆に標準溶. 結合が良好なため粒子間亀裂は少なく、壊食面近傍にも縦. 射材料では粒子の熱容量が大きいため短縮化の効果は少. き裂は存在するが大きく進展しているものは見られない。. ない。. そのためまさに脱落しようとしている図中□で囲んだ壊食. 4. エポキシ系封孔処理は標準溶射条件において、基材温度. 部分は非常に小さい単位となっている。Fig.12(d) は壊食粉. を高めたものと同様な効果が得られた。これは封孔剤が. の一例であるが、Fig.12(a)、(b) の概略図の A, B に相当す. 割れや粒子間の隙間に入り、破壊亀裂の進展を遅らせる. る粒子で、B は比較的表面が滑らかであり、粒子間未結合 部表面を含むものであると考えられる。. 効果によるものと考えられる。 5. 溶射トーチ移動速度を低速化することにより前の偏平粒 子がまだ冷却が進まないうちに次の粒子が飛来し、両者. 4.結 言. の粒子間結合が増大した緻密な組織となる。しかし、偏. 超音波キャビテーション・エロージョン試験による壊食. 平粒子の緻密化に進むにつれて、皮膜形成におけるパス. 量と皮膜組織の関係を調査し、本試験法が皮膜の機械的強. 間とパスの内部の皮膜密着強度差が顕著になるため、損. 度を評価する上で有効であることを明らかにした。得られ. 傷率曲線は周期的に変化するものとなることが明らかに. た主な結果を以下に示す。. なった。. 1. 溶射材料の微細化は、皮膜の耐壊食特性を大幅に向上さ せる。これは気泡崩壊による衝撃圧を皮膜が受けたとき. − 304 −.
(8) 高 温 学 会 誌 第 37 巻 第 6 号(2011 年 11 月). 謝辞. Steinbrech, Acta Materialia 51 (2003) 2457-2475. 10) J. Ilavsky, A.J. Allen, J. Ilavsky, G.G. Long, and P.R. Jemian, Rev.. 本研究の一部は独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支 援機構の平成 18 年度運輸分野における基礎的研究推進制度. of Scie. Instru., 73, 3, (2002) 1660-1662. 11) T.Nakamura, G.Qian and C.C.Berndt, J. Am. Ceram. Soc., 83 [2]. に基づく研究費を用いて実施した。また実験には海上技術 安全研究所、藤沢純一氏、当時芝浦工業大学生、小川幸彦. (2000) 578-584. 12) ASTM Designation G32-3, Annual book of ASTM Standards 03-02. 氏の協力を得た。併せてここに記して謝意を表します。. (2006) 98-111. 13) 岡田庸敬、服部修司、“キャビテーション壊食 (14)”機械の研. 引用文献. 究、50, 10(1998) 1078-1084.. 1) R.McPherson, Thin Solid Films, 83, 3, (1981) 297-310.. 14) 深井利嗣、松本桂一、Zairyo-to-Kankyo, 44, (1995) 17-13.. 2) S. Costil, C. Verdy, R. Bolot, and C. Coddet, Proc. of ITSC 2007,. 15) 野 一 色 公 二、 矢 吹 彰 広、 松 村 昌 信、 長 坂 浩 志、 宮 坂 松 甫、 Zairyo-to-Kankyo, 46, (1997) 637-642.. (2007) 533-537. 3) S. Kuroda, T. Dendo, and S.Kitahara, J. of therm. Spray Technol., 4,. 16) A. Adamski and R. McPherson, Inst. Phys. Conf. Ser., 75 Science of Hard Materials, Chap.8 Coatings, (1986) 813-824.. 1, (1995) 75-84. 4). Z. Wang, A. Kulkarni, S. Deshpande, T. Nakamura, and H. Herman,. 17) 荻野邦彦、大森明、沖幸男、森本純司、高温学会誌、30, 5 (2004) 270-278.. Acta Materialia 51, (2003) 5319-5334. 5) H. Du, J.H. Shin, and S.W. Lee, J. of Therm. Spray Technol., 14, 4,. 18) 大森明、荻野邦彦、高温学会誌、24 (1998) 222-226. 19) 大森明、荻野邦彦、森本純司、高温学会誌、25 (1999) 260-. (2006) 453-461.. 267.. 6) A. Kulkarni, A. Goland, H. Herman, A.J. Allen, J. Ilavsky, G.G. Long, and F.D. Carto, J. of Therm. Spray Technol., 14, 2, (2005). 20) 植松進、菅澤忍、川並康剛、藤沢純一、佐々木紀幸、谷和美、 難波吉雄、高畠剛、吉岡勝、石原泰明、三嶋孝洋、第 14 回キャ. 239-250.. ビテーションに関するシンポジウム講演予行集 (CD-ROM),. 7) C. J. Li and A. Ohmori, J. of Therm. Spray Technol., 11, 3, (2002). A1-4 (2009) 1-4.. 365-374. 8) Y.Arata, A. Ohmori, and C. J. Li, Trans. of JWRI, 15, 2, (1986) 168-. 21) 谷和美、植松進、吉岡勝、高畠剛、難波吉雄、石原泰明、三 嶋孝洋、川並康剛、高温学会誌、35, 6, (2009) 301-307.. 176. 9) A. Kulkarni, Z. Wang, T. Nakamura, S. Sampath, A. Goland,. 22) A. kanno, T.Takabatake, Y.Namba, K.Tani, S.Uematsu, S.Sugasawa,. H. Herman, J. Allen, J. Ilavsky, G. Long, J. Frahm, and R. W.. − 305 −. M.Yoshioka and Y. Ishihara, Proc. of ITSC2010, (2010) 183-188..
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図
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