報 文
女子大学生のファストファッションに対する消費行動
Consumption Behavior Patterns of Female University Students Associated with Fast Fashion
Abstract
Consciousness and behavior of female university students when buying clothes at fast fashion and non -fast fashion shops were evaluated. Female university students in an area where there are a lot of fast fashion shops spent a great deal of money on clothes at these stores. The correlation between the preferences and frequency of use of fast fashion by female university students was observed, and their shopping experiences in the fast fashion shops and purchases were found to be different for each fast fashion brand. Female university students tried on clothes on and checked the care labels for washing more frequently at non-fast fashion shops than they did at fast fashion ones. They bought clothes at non-fast fashion shops when they wanted to be refreshed and relieve stress. Their moods, when they bought clothes at fast fashion and at non-fast fashion shops, were analyzed using factor analysis. The results showed that four factors: “fitness,” “consumption characteristics,” “trends,” and “evaluations by other people,” were dominant. The relationship between the factors and clothes-buying activities were analyzed using multiple regression analysis with path diagrams depicting the results. According to the path diagrams, they bought clothes at fast fashion shops keeping in mind trends and consumption characteristics without minding the evaluations of other people to refresh themselves. On the other hand, in the case of non-fast fashion, they had the specific aim of wearing the clothes with the evaluations of other people in mind. Thus, the consumption behavior associated with fast fashion was different from non-fast fashion-related behavior. (Received April 29, 2015) (Accepted for Publication September 21, 2015) Keywords:fast fashion, ファストファッション consumption behavior, 消費行動 factor analysis, 因子分析 multiple regression analysis, 重回帰解析 path diagram, パス図
広島大学大学院教育学研究科 村 上 かおり * イオンリテール株式会社 槇 尾 有 加 ** 元 高知県立大学 川 口 順 子 *** 三重大学教育学部 増 田 智 恵 ****
Kaori Murakami*, Yuka Makio**, Junko Kawaguchi*** and Tomoe Masuda****
*Graduate School of Education, Hiroshima University
1-1-1 Kagamiyama, Higashi-Hiroshima City 739-8524 Japan
**AEON RETAIL CO.LTD.
1-5-1 Nakase Mihama-ku, Chiba City 261-8515 Japan
***Formerly University of Kochi ****Faculty of Education, Mie University
1.緒言 1980 年代,これまでのファッションをリードし てきた 20 代前半のサラリーマンや OL から 10 代の 若者がファッションを牽引するようになった。この ファッションの低年齢化が,ファッションのカジュ アル化を促進させたと言われている1)。さらに,「カ ジュアルは年齢や性別に関係なくて客層が幅広く, トレンド物よりもベーシックでより大きな需要があ る」と考えた,(株)ユニクロ(当時はユニーク・ クロージングハウス)社長の柳井氏が,1985 年大 量の格安カジュアルウエアを販売するユニクロの チェーン化に乗り出した2)。 またファストファッションと言われる,シーズン の流行を取り入れて,早く,かつ手頃な値段で店頭 に並べることができるファッション商品,およびそ うしたファッションビジネスのやり方がアパレル市 場に浸透した。元々は, 2008 年に日本に出店した スウェーデンの H&M に見られるそうした方法を指 して,ファストフードから作られた造語であるとさ れている3)。 ファストファッションは,SPA(specialty store retailer of private label apparel)と称する製造小売 業,すなわち,商品企画から生産,販売まで一貫し た体制のもとで行い,直営出店する企業がほとんど である2)。そのため,高感度な商品が迅速に市場に 出せること,また素材から商品開発に関わることが できるため,ベーシックで良質の商品をリーズナブ ルな価格で提供できることが消費者に受け入れられ た要因であると考えられる。 若者のファストファッション意識に対しては,大 枝4)らにより調査が行われ,若者は安価なファス トファッションを楽しむことで,生活を楽しんでい ることが明らかとなっている。またその生活志向が ファストファッションの流行の支持に繋がっている とされている。大枝らの研究においては,多様化し たアパレル業界にあって,ファストファッションの 定義が専門家の間でも意見が分かれていることか ら,調査にあたりファストファッションのブランド 名を特定していなかった。しかし,前述したユニク ロを始め,2006 年に設立された G.U. など低価格で 大量生産されている商標名が消費者に浸透した。そ のためこれらのブランドを例示して意識を問う方 が,ファストファッションに対するイメージがわき やすく,ファストファッションに対する消費行動の 実態が把握できると考えられる。 ファストファッションの是非については,環境配 慮意識との関係性についての課題が問われてきた。 大枝らも生活環境との関係性を追究しており,環境 に配慮した生活を送っている人はファストファッ ションを使い捨てとは考えていないことを明らかに している4)。 また筆者らは女子大学生の環境配慮意識とその実 態について,生活環境におけるエコロジカルマイン ド評価尺度5),6)を用いて分析し,衣生活における環 境配慮行動について考察した。その結果,女子大学 生の環境意識は一般住民に比べて低いが,環境配慮 意識の高い人は,組み合わせやアクセサリー使いな どの工夫で,何通りにも着こなす着まわしや,着用 しなくなった衣服の再生利用などを心がけるなど, 環境に配慮した行動を行っていることが明らかと なっている7)。これより意識と行動との関係性を分 析することによって,その行動特性をとらえること ができると考えられ,近年アパレル市場に台頭した ファストファッションに焦点をあて,行動特性を検 証することは,持続可能な生活が求められる背景か らも意義があると考えられる。 そこで本研究では,ファストファッションに対す る消費行動をより明確にとらえるため,ファスト ファッションとそれ以外の服(以下,非ファスト ファッションとする)の意識と購買行動を区別して とらえ,その分析からファストファッションに対す る消費行動特性を明らかにし,多様な被服の中から 適切な被服を選択するための示唆を得ることを目的 に研究を行った。 なお,本研究ではファストファッションブラン ドの衣服ならびにそれらの衣服の着装をファスト ファッションとしてとらえ,ファストファッション と称することとする。
2.研究方法 調査対象者は女子大学生 200 名(平均年齢 20.78 歳,SD=2.55) で,2012 年7月から 2012 年 11 月に かけて質問紙調査を実施した。対象者の選定は,蔵 本らの研究8)からファストファッションの店の有 無により地域差が出る可能性があるため,調査時に おいてファストファッション店の店舗展開の有無に 差がみられた地域3か所(京都,広島,高知)を選 定した。京都,高知では集合調査法,広島では集合 調査法と留置調査法による調査を行った。回答者の 内訳は広島県内 98 名,高知県内 54 名,京都府内 48 名であった。 調査内容は,ファストファッションに対する消費 行動である。なお本調査では,ファストファッション のブランド名を提示することで,より具体的な消費 行動が把握できると思われたため,蔵本らの研究8) をもとにファストファッションブランド9ブランド を提示することとした。 質問はファストファッションの衣服をよく利用 するか,ファストファッションが好きであるかど うか,一年間のファストファッションの購入金額, 行ったことのあるファストファッション店,購入し たことのあるファストファッションについて,該当 するものすべてに回答を求めた。例示したブランド は,海外ブランドではアメリカの GAP(ギャップ), FOREVER21(フォーエバートゥエンティーワン , 以下 F21),Abercrombie&fitch(アバクロンビー アンドフィッチ,以下 A&F),スペインの ZARA (ザラ),スウェーデンの H&M(エイチアンドエ ム),イギリスの TOPSHOP(トップショップ,以 下 TS)を選択した。また日本の UNIQLO(ユニク ロ),しまむら,ユニクロと同じファーストリテイ リンググループで 2012 年より店舗数を拡大してい る G.U.(ジーユー)の3ブランドを加えた9ブラ ンドを取り上げることとした。 さらに衣服購入時の意識と行動について,ファス トファッションの衣服購入時と非ファストファッ ション購入時に分け,それぞれ【1:全くそうでない】 【2:あまりそうでない】【3:どちらともいえない】 【4:ややそうである】【5:非常にそうである】の 5段階で回答を求めた。購入時の意識と行動に関す る質問は,蔵本らの研究8)を参考に,ファストファッ ションの店舗で衣服の購入経験がある女子大学生2 名から情報収集して,作成した。なお衣服購入の実 態を把握するため,ファストファッション,非ファ ストファッションを問わず,全ての衣服の月間の購 入費を質問した。月間としたのは,年間総額の場合, 月によって異なることも想定されるため平均として 概算を想起し,回答してもらうためである。 分析はエクセル統計 2012 を用い,単純集計,因 子分析,重回帰分析を行った。 3.結果および考察 衣服の購入実態を検討するため,衣服購入費と ファストファッション購入費のクロス集計結果を表 1に示す。衣服購入費とファストファッション購 入費に関するスピアマンの順位相関係数は 0.133 で あった。これより衣服購入費の多寡は,ファスト ファッション購入とは相関がみられないと考えられ る。 表2にファストファッション9ブランドの出店 状況とブランドコンセプトを示す。出店状況は調 査を行った 2012 年 11 月時のデータである。コン セプトは各ブランドの公式ホームページならびに ファッション企業ブランドガイド9)より記載した。 これより日本のブランドである,ユニクロ,G.U., しまむらは,調査した3地域全てに出店している が,海外のブランドの店舗展開状況はさまざまであ る。海外ブランドのなかでも GAP は,アウトレッ ト店舗を含めると,全国に 157 店の実店舗を展開 月間衣服購入費 〜5,000円 〜10,000円 〜20,000円 〜50,000円 50,000円〜 計 0円 2 1 4 2 0 9 〜3,000円 14 12 8 2 2 38 〜5,000円 24 12 12 4 0 52 〜10,000円 13 17 10 2 0 42 〜20,000円 4 9 12 4 0 29 〜30,000円 3 7 5 0 0 15 40,000円〜 1 4 4 3 0 12 61 62 55 17 2 197 31.0% 31.5% 27.9% 8.6% 1.0% 100.0% 表1 月間衣服購入費と年間ファストファッション購入費のクロス集計結果(単位;人) 年 間 フ ァ ス ト フ ァ ッ シ ョ ン 購 入 費 計 表1 月間衣服購入費と年間ファストファッション 購入費のクロス集計結果(単位;人)
している(以下,店舗数は 2015 年4月現在)。つ いで,ZARA が 72 店舗,また 2008 年に日本出店 した H&M は 50 店舗を展開している。一方,F21 は関東7店,関西3店,他7店の計 17 店舗,A&F は,国内には東京と福岡の2店舗のみとなっており, TS のように調査時にあった実店舗がすべて閉店し たブランドもある。 表3にファストファッションに対する嗜好につい て,地域別にみた結果を示す。3地域ともに「非常 に好き」,「やや好き」を合わせた回答が 56%以上 をしめた。 表4には,ファストファッションの利用頻度を示 した。3地域ともに「非常に利用する」,「よく利用 する」を合わせた回答が 58%以上を占めた。これ よりファストファッションに対する嗜好と利用につ いては,独立性の検定の結果,嗜好と地域ならびに 利用と地域には関連が見られず,地域による差は認 められなかった。 次に,ファストファッションの嗜好とファスト ファッションの利用頻度のクロス集計結果を表5に 示す。ファストファッションの嗜好と利用頻度に 関するスピアマンの順位相関係数は 0.751 であり, ファストファッションの嗜好と利用頻度には相関が あることが認められた。また地域別にみた相関係数 は京都 0.902,広島 0.708,高知 0.671 であった。表 2に示すように,大阪では9ブランドのうち7ブラ ンドの出店があるため,京都の回答者の場合,地理 的に大阪の店舗でも購買することができる。一方, 高知では日本の3ブランドのみしか店舗展開がみら れず,購入できるブランドが限られていると考えら れる。このように多くのブランドのファストファッ ションを利用できる環境にある,京都の嗜好と利用 頻度の相関係数が高いことから,嗜好と利用頻度に は出店状況が関わっていることが考えられる。 また表2にあげたファストファッションブランド について,来訪経験があるブランドを図1に,購入 経験があるブランドを図2に示した。回答者数が地 域によって異なるため人数比の積み上げグラフで表 回答 地域 非常に好き やや好き どちらともいえない あまり好きでない 全く好きでない 計 11 16 12 6 3 48 22.9% 33.3% 25.0% 12.5% 6.3% 100.0% 14 49 24 10 1 98 14.3% 50.0% 24.5% 10.2% 1.0% 100.0% 9 22 16 6 1 54 16.7% 40.7% 29.6% 11.1% 1.9% 100.0% 表中の上段は人数,下段は割合を示す。 表3 地域別にみたファストファッションの嗜好 京都 広島 高知 嗜好 非常に好き やや好き どちらともい えない あまり好き でない 全く好きで ない 計 非常に利用する 31 5 1 1 1 39 よく利用する 3 66 14 0 0 83 どちらともいえない 0 5 19 3 0 27 あまり利用しない 0 9 17 15 0 41 全く利用しない 0 1 1 3 4 9 計 34 86 52 22 5 199 表5 ファストファッションの嗜好と利用頻度のクロス集計結果(単位;人) 利 用 頻 度 回答 地域 非常に利用する よく利用する どちらともいえない あまり利用しない 全く利用しない 計 12 16 8 7 5 48 25.0% 33.3% 16.7% 14.6% 10.4% 100.0% 17 44 13 22 2 98 17.3% 44.9% 13.3% 22.4% 2.0% 100.0% 10 24 6 12 2 54 18.5% 44.4% 11.1% 22.2% 3.7% 100.0% 表中の上段は人数,下段は割合を示す。 表4 地域別にみたファストファッションの利用 京都 広島 高知 ブランド名 出店状況 ブランドコンセプト,特徴 GAP(アメリカ) 41都道府県に出店(高知は店舗なし) クリーンかつシンプルなカジュアルスタイル FOREVER21(アメリカ) 東京のみ出店 絶え間ないトレンド発信力,楽しいファッションライフの追求 Abercrombie&fitch(アメリカ) 東京のみ出店 カジュアル&ラグジュアリーをテーマにセクシーさも追求 ZARA(スペイン) 35都道府県に出店(高知は店舗なし) トレンドを意識した豊富な商品をラインナップし,トータルコーディネートが可能 H&M(スウェーデン) 宮城,東京,神奈川,愛知,大阪,福岡の6都府県に出店 ファッションとクォリティを最良の価格で提供 TOPSHOP(イギリス) 北海道,東京,神奈川,千葉,大阪の5都道府県に出店 リーズナブルな価格でロンドン最先端のハイストリートファッションを提案 ユニクロ(日本) 全国47都道府県に出店 今までにない新しい価値をもつ服を創造し,世界中のお客様に満足を提供 G.U.(日本) 全国47都道府県に出店 ファッションを,もっと自由に,欧米とのファストファッションとの差別化を図る しまむら(日本) 全国47都道府県に出店 低価格,高品質,トレンド,多種アイテム,少量展開を提案 表2 ファストファッションブランドのブランドコンセプトと出店状況(2012年11月調査時) 表 2 ファストファッションブランドのブランドコンセプトと出店状況(2012 年 11 月調査時) 表 3 地域別にみたファストファッションの嗜好 表 4 地域別にみたファストファッションの利用 表5 ファストファッションの嗜好と利用頻度のク ロス集計結果(単位;人)
した。これよりすべての地域にあるユニクロ,G.U., しまむらの来訪経験,購入経験が多く,特にユニク ロの来訪経験者は 96%で,購入経験者は 93%(い ずれも3地域の平均)であった。分散分析の結果, 来訪経験,購入経験ともにブランド間に有意差がみ られた(1%水準)。しかしそれぞれのブランドに おける地域間の差はみられなかった。日常生活にお いて実際に店舗に行って商品を見ることができる店 舗が近くになくても,東京や大阪など店舗に行った り購入したりする機会を設けている人が多いことが 明らかとなった。この背景には,インターネットに よるネットショッピングが浸透したこと,スマート フォンなどのモバイル機器の普及による情報通信環 境が整備されたことが考えられる。 衣服購入時の行動について,ファストファッショ ンと非ファストファッション別に平均値を算出,作 成したプロフィールを図3に示した。すべての質問 において,非ファストファッションの値が高く,t 検定の結果4項目において1%水準で有意差がみら れた。これより,ファストファッション購入時より も,非ファストファッション購入時の方が,試着を してサイズを確認し,品質表示や手入れの方法も確 認していた。またストレス解消や気分転換のために 衣服を購入するのも,非ファストファッション購入 時の方が高く,旅行や会のために衣服を購入すると いった目的を持った意図的な購買行動も,非ファス トファッション購入時の方が高かった。 次に,衣服購入時の意識についてのプロフィール を図4に示す。ファストファッションと比較して非 ファストファッションの値の方が高かったのは,「価 格が低い」「ベーシックである」以外の 15 項目であっ た。また 17 項目のうち,8項目で1%水準,2項 目で5%水準で有意差がみられた。 それぞれの衣服購入時の意識の因子構造をとらえ 図1 来訪経験があるファストファッションブランド(地域別,人数比) 高知 広島 京都 各 地 域 人 数 比( %) ブランド名 図1 来訪経験があるファストファッションブラン ド(地域別,人数比) 図2 購入経験があるファストファッションブラン ド(地域別,人数比) 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 試着をしてサイズが合 うかどうか確かめる** バーゲンセール等で気 に入った衣服がある と,あまり必要でなくて も購入する 品質表示を見たり,手 入れや取扱いのしや すさを確かめる** ストレス解消や気分転 換のために衣服を購 入する** 旅行や会(イベントや パーティ)のために衣 服を購入する** ファストファッション 非ファストファッション 1 2 3 4 5 ファストファッション 非ファストファッション 1 3 5 試着をしてサイズ… ファストファッション 非ファストファッション **p<0.01 5 段階評価値 図3 ファストファッションと非ファストファッ ションの衣服購入時の行動 購入時の行動に関する質問項目 図2 購入経験があるファストファッションブランド(地域別,人数比) 高知 広島 京都 ブランド名 各 地 域 人 数 比( %)
るため,ファストファッション,非ファストファッ ション別に因子分析を行い,基本因子を抽出した。 因子の抽出法は主因子法,バリマックス回転を行 い,スクリー法による固有値の減衰状態から固有値 1.0 以上で4因子を抽出した。表6にファストファッ ション購入時,表7に非ファストファッション購入 時の因子分析結果を示す。各因子の意味については, 因子負荷量をもとに行った。 ファストファッション購入時の結果,累積寄与率 は 42.694%であったが,クロンバックのα係数はい ずれの因子も 0.7 以上であり,内的整合性が高いと 判断できた10)。第1因子は,「形・デザインが気に 入る」「サイズが合う」「自分に似合う」「他の衣服 とコーディネートしやすい」などから,「適合性」 と解釈した。第2因子は,「機能的である」「手入 れの取扱いのしやすさ」「長く着用できそうである」 などから,「消費性能」の因子と解釈した。第3因 子は,「ブランドものである」「個性的である」など から「流行性」の因子と解釈した。第4因子は,「店 員の意見」「家族や友人の意見」などから「他者評価」 の因子と解釈した。 非ファストファッション購入時については,累積 寄与率は 37.945%とファストファッション購入時よ り低く,第4因子のα係数も 0.624 とファストファッ ション購入時と比べて低かった。第1因子は,ファ ストファッション購入時と同じ,「形・デザインが 気に入る」「サイズが合う」「自分に似合う」「他の 衣服とコーディネートしやすい」の項目が含まれ, 「適合性」と解釈できる。しかしファストファッ ション購入時とは異なる「長く着用できそうであ る」という項目が含まれていた。この項目はファス トファッション購入時の分析では,「消費性能」の 因子に含まれていることから,ファストファッショ ン購入時においては耐久性を意味すると考えられ る。しかし,非ファストファッション購入時の因子 としては,「長く着用できる」という意味が,「適合 性」をさらに高める項目の一つとして解釈できると とらえられる。第2因子も,「手入れの取扱いのし やすさ」「機能的である」「着なくなった後の廃棄の こと」などから,ファストファッションと同じく「消 !" %" &" '" $" !" %" &" '" $" **p<0.01,*p<0.05 7cm 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 図4 ファストファッションと非ファストファッ ションの衣服購入時の意識 質問項目 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 形・デザインが気に入る 0.770 0.041 0.227 0.092 サイズが合う 0.673 0.190 0.022 0.020 自分に似合う 0.665 0.122 0.178 0.188 他の衣服とコーディネートしやすい 0.630 0.165 0.232 0.130 機能的(保温性など)である 0.171 0.703 -0.200 0.048 手入れの取扱いのしやすさ 0.146 0.609 0.173 0.230 長く着用できそうである 0.278 0.520 0.173 0.126 質の良さ 0.152 0.457 0.267 0.304 着なくなった後の廃棄のこと -0.096 0.420 0.281 0.345 ブランドものである -0.050 0.189 0.699 0.052 個性的である 0.216 0.101 0.535 0.136 流行のものである 0.207 0.022 0.506 0.186 店員の意見 0.118 0.180 0.131 0.717 家族や友人の意見 0.324 0.126 0.070 0.529 寄与率(%) 14.666 11.201 9.187 7.640 累積寄与率(%) 14.666 25.867 35.054 42.694 因子名 適合性 消費性能 流行性 他者評価 α 係数 0.950 0.818 0.704 0.744 表6 ファストファッション購入時の意識の因子分析結果 質問項目 第1因子 第2因子 第3因子 第4因子 サイズが合う 0.759 -0.012 0.206 -0.094 他の衣服とコーディネートしやすい 0.618 0.015 0.330 -0.027 形・デザインが気に入る 0.596 -0.062 -0.025 0.101 長く着用できそうである 0.593 0.163 0.278 -0.029 自分に似合う 0.529 0.049 -0.108 0.012 手入れの取扱いのしやすさ 0.100 0.723 0.101 0.039 機能的(保温性など)である 0.211 0.618 -0.007 -0.234 着なくなった後の廃棄のこと -0.183 0.525 0.031 0.138 天然繊維である -0.055 0.504 0.126 0.178 家族や友人の意見 0.162 -0.033 0.662 -0.025 店員の意見 0.011 0.293 0.625 0.147 ブランドものである -0.049 0.141 -0.062 0.648 個性的である 0.073 0.109 0.032 0.461 流行のものである -0.045 -0.103 0.195 0.458 寄与率(%) 13.690 9.990 7.440 6.825 累積寄与率(%) 13.690 23.680 31.120 37.945 因子名 適合性(経済性) 消費性能 他者評価 流行性 α 係数 0.986 0.753 0.770 0.624 表7 非ファストファッション購入時の意識の因子分析結果 表 6 ファストファッション購入時の意識の因子分 析結果 表 7 非ファストファッション購入時の意識の因子 分析結果
費性能」の因子と解釈できる。しかし「天然繊維で ある」といった素材への意識を示す項目も含まれて いた。第3因子と第4因子は,ファストファッショ ンと同様の内容の項目から同じ「他者評価」と,「流 行性」の因子と解釈された。しかし非ファストファッ ション購入時では,「他者評価」の寄与率の方が高く, 因子の順序が異なっていた。 これらの4因子とファストファッションならびに 非ファストファッション購入時の行動の関係をとら えるため,重回帰分析を行った。なお図3に示した 5つの行動については,以後次に示す語句で示す。 「試着してサイズが合うかどうか確かめる」を「試 着確認」,「バーゲンセール等で気に入った衣服があ ると,あまり必要でなくても購入する」を「衝動買 い」,「品質表示を見たり,手入れや取扱いのしやす さを確かめる」を「品質確認」,「ストレス解消や気 分転換のために衣服を購入する」を「気分転換」, 「旅行や会(イベントやパーティ)のために衣服を 購入する」を「意図的」とした。これらの5行動, 意識の因子を,従属変数,説明変数として,重回帰 分析を繰り返した結果,偏回帰係数に有意性が認め られた項目間のパスを図に示した。図5はファスト ファッション購入時の意識と行動のパス図,図6は 非ファストファッション購入時の意識と行動のパス 図である。 図5に示したようにファストファッション購入時 では,「他者評価」からのパスは認められず,「気分 転換」へのパスが4本認められた。これよりファス トファッションの場合,他者の評価を意識せず,自 己の気分転換を目的に,流行や消費性能を意識して, 衣服を購入していることが読み取れる。 図6の非ファストファッション購入時のパス図を みると,「意図的」への5本のパスが認められた。 他者評価からのパスも認められた。これより非ファ ストファッション購入時は,旅行や会に参加すると いった着用意図が明確な場合で,流行性や消費性能 や他者評価など,ファストファッション購入時より も多くのことを意識して購入していることが読み取 れた。 これより,ファストファッションと非ファスト ファッションでは,購入時の目的が異なっているだ けでなく,その行動を促す意識にも違いがあること が明らかとなった。 以上のことから,女子大学生の場合,購入する被 服がファストファッションブランドの場合とそうで ない場合によって,被服の適合性,消費性能,流行 性などから商品価値を評価し,選択的に衣服を使い 分けていたと考えられる。多種多様な被服の中から TPO や自分の価値観に適した被服を選択する力は, この評価力とも関係があると考えられる。そのため には,被服の素材,副資材,縫製などから,購入時 にその商品価値を評価できるよう被服材料,被服構 成など被服に関する知識を習得しておく必要性があ ると考えられる。またそれらの知識を定着させ,実 図 5 ファストファッション購入時の意識と行動のパス図 試着確認 **p<0.01,*p<0.05 .42** R2=.33 R2=.23 R2=.16 R2=.15 .33** .16 * .15* .21** .29** 気分転換 衝動買い 品質確認 意図的 R2=.20 .30** .28** .14* .32** 適合性因子 他者評価因子 流行性因子 消費性能因子 図 6 非ファストファッション購入時の意識と行動のパス図 試着確認 **p<0.01,*p<0.05 .28** R2=.16 R2=.28 R2=.12 R2=.24 .27** .23** -.19* .24** .16* 気分転換 衝動買い 品質確認 意図的 R2=.13 .20** .24** .49** .20** .19* 他者評価因子 流行性因子 消費性能因子 適合性因子 図5 ファストファッション購入時の意識と行動の パス図 図6 非ファストファッション購入時の意識と行動 のパス図
践することも重要であることが示唆された。 4.結論 本研究では,ファストファッションに対する消費 行動をより明確にとらえるため,ファストファッ ションと非ファストファッション購入時の意識と行 動を調査した。その分析からファストファッション に対する消費行動特性を明らかにし,多様な被服の 中から適切な被服を選択するための示唆を得ること を目的に研究を行った。以下に得られた知見を示す。 1 ) 衣服購入費の多寡は,ファストファッション購 入とは相関がみられなかった。 2 ) ファストファッションについて,好き,利用す るという回答がいずれも半数以上を占め,その 傾向に地域差はみられなかった。またファスト ファッションの嗜好と利用頻度には相関関係が みられた。 3 ) ファストファッション店舗への来訪経験,購入 経験については,ともにブランド間に差はみら れたが,それぞれのブランドにおける地域間の 差は,みられなかった。 4 ) ファストファッションよりも,非ファスト ファッション購入時の方が,試着とサイズを確 認し,品質表示や手入れの方法も確認していた。 また気分転換のために衣服を購入するのも,非 ファストファッション購入時であり,目的を 持った購買行動も,非ファストファッション購 入時にみられた。 5 ) ファストファッション購入時,非ファスト ファッション購入時の意識について,因子分析 した結果,「適合性」「消費性能」「流行性」「他 者評価」の4因子が抽出された。しかし因子に 含まれる項目はファストファッションと非ファ ストファッションで違いがみられ,因子の順位 も異なっていた。 6 ) 4因子とファストファッションならびに非ファ ストファッション購入時の行動の関係を示すパ ス図を描いた。パス図からファストファッショ ンの場合,他者評価を意識せず気分転換を目的 に,流行や消費性能を意識して,購入していた。 非ファストファッションでは,着用意図が明確 で,流行や消費性能,また他者評価を意識して 購入していた。 本研究の一部は,平成 22〜24,25〜27年度科学 研究費補助金(基盤 A22240075,基盤 B25282013) により行った。ここに付記して謝意を表す。 文献 1 ) 渡辺明日香;ストリートファッション論−日本 のファッションの可能性を考える−産業能率大 学出版部, 東京, 107(2011) 2 ) 繊研新聞社編;繊維・ファッションビジネスの 60 年, 繊研新聞社, 東京, 210(2009) 3 ) 吉村誠一;増補最新版ファッション新語辞典, 繊研新聞社, 東京, 101(2007) 4 ) 大枝近子, 佐藤悦子, 高岡朋子;若者のファス トファッション意識に関する調査, 日本家政学 会誌, 64, 645-653(2013) 5 ) 田中幹也, 城仁士;生活環境におけるエコロジ カルマインド評価尺度の開発;神戸大学大学 院人間発達環境学研究科研究紀要, 4, 187-191 (2010) 6 ) 田中幹也, 城仁士;生活環境におけるエコロジ カルマインド評価尺度による意識変容過程と構 造分析, 神戸大学大学院人間発達環境学研究科 研究紀要, 5, 85-89(2011) 7 ) 村上かおり, 槇尾有加, 増田智恵, 川口順子; 女子大学生の環境配慮意識と衣生活における環 境配慮行動の関係−環境配慮行動の要因連関 モデルの検討による分析−, 日本衣服学会誌, 59, 21-32(2015) 8 ) 蔵本暢浩, 久保田綾;徳島県在住大学生のファ ストファッションに関する意識調査−ブランド イメージと被服購買行動との相関−, 四国大学 紀要自然科学編, 31, 15-22(2010) 9 ) 繊研新聞社編;ファッション企業・ブランドガ イド(2011/12 年版), 東京, 536(2011) 10) 小塩真司, SPSS と Amos による心理・調査デー タ解析, 東京図書, 東京, 143(2004)