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簡易緑化基礎工のための浸透性土壌硬化剤の斜面安定効果

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簡易緑化基礎工 のための浸透性土壌硬化剤 の斜面安定効果

憲*・ 堀

夫**

1.は じめ に 崩 壊 斜 面 や 人 工 法 面 の安 定 化 の た め の究 極 の 目的 は, 植 生 に よ り地 面 を 被 覆 保護 す る こ とで あ ろ う。 そ の理 由 と して は,第1に 植 生 に よ る被 覆 が侵 食 防止 法 と して 最 良 の効 果 を発 揮 す る こ と,第2に 風 致 上 な い し環 境 保 全 上 他 の工 法 よ り優 れ て い る こ と,第3に わ が国 の気 候 風 土 が植 被 成 立 に極 めて 適 して い る こ と,第4に 工 費 の面 で他 の工 法 に比 べ て 一 般 に安 価 で あ る こ と,な ど が考 え られ る。 しか しな が ら,こ の よ う に優 れ た 緑 化 工(植 生 工)を 斜 面 安 定 工 法 と して 採 用 す る場 合,そ の 成 績 向上 の た め の重 要 な ポ イ ン トと して,施 工 直 後 か ら植 被 の 完全 成 立 ま で の数 箇 月 間 の侵 食 防 止 対 策 が あ げ られ る。 この よ う な 目的 の た め,従 来,緑 化 基 盤 の安 定 化 法 の 開 発 が 進 め られ て きた が,そ の一 環 と して,現 在 液 状 硬 化 性 侵 食 防 止 剤 と して,ア ク リル重 合 体 の エ マ ル ジ ョ ンの 適 用 が 考 え られ て い る。 合 成 樹 脂 エ マ ル ジ ョ ンに よ る被 覆 工 は, 緑 化 工 の い わ ゆ る養 生 剤 と して既 に実 用 化 が 進 め られ て い るが,不 安 定 斜 面 を 固定 す る緑 化 基 礎 工 と して の 実 用 化 試 験 は,ま だ ほ とん ど実 施 さ れ て い な い。 筆 者 ら は,合 成化 学 の分 野 で近 年 開 発 さ れ た ア ク リル ポ リマ ーを 有効 に 利 用 して,簡 易 な緑 化 基 礎 工 を開 発 す る た め の 基 礎 試 験 を 実 施 し,(1)簡 易 緑 化 基 礎 工 と して の侵 食 防 止 及 び 斜 面 安 定 効 果 の検 討,(2)播 種 緑 化 工 に お け る侵 食 防 止 及 び養 生 効 果 の比 較 検 討,な ど を行 った ので,そ の一 部 を 報 告 す る。 本 試 験 の実 施 に あた り多 大 な る ご協 力 を得 た(社)農 林 水 産 航 空 協 会,(財)林 業 科 学 技 術 振 興 所,(株)東 亜 合 成 化 学 工 業,な らび に前 橋 営 林 局 大 間 々 営林 署,同 足 尾 治 山事 業 所 の関 係 各 位 に対 し,深 厚 な る謝 意 を 表 した い。 2.試 験 地 の概 要 本 試 験 地(北 緯36°41',東 経139°26')は,栃 木 県上 都賀 郡 足 尾 町 に位 置 し,前 橋 営 林 局 大 間 々営 林 署 足 尾 治 山事 業所 管 内 の松 木 沢 と久 蔵 沢 の山 腹 斜 面 で あ る。 図-1 に示 す 当該 事 業 所 管 内 は,冷 涼 な 内陸 性 気 候 を示 し,昭 和36∼45年 の年 平均 気温 は10.0℃,最 高 気 温 は37.4℃, 最 低 気 温 は-18.6℃ で あ り,年 較 差,日 較 差 と もに大 き く,年 平 均降 雨量 は1700mmで あ る。 積 雪 は少 な く, 冬季 には強風 が頻 発 し,植 生 に悪 影 響 を お よ ぼ して い る。 荒 廃 山 地 の 自然 植 生 は,主 と して リョウ ブの2次 林,ス ズ タ ケ,ス ス キ等 の 草 原,稜 線 に密 生 す る ミヤ コザ サ と 沢 筋 に ヤ シ ャ ブ シが み られ る。 松 木 沢 の試 験 地 は花 崗 岩 の 風 化 地帯 に 属 し,湖 南 国有

図-1松

木沢試験地 および久蔵沢試験地 の位置

図-2試 験 区 の プ ロ ッ ト配 置 図(単 位m) *森 林総合研究所関西支所育林部 **森 林総合研究所森林環境部治山研究室 ―10―

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林263林 班 ロ-1小 班 の松 木 沢 右 岸 の 北 北 東 向 斜 面(標 高900m)に,久 蔵 沢 の 試 験 地 は 古 生 層 地 帯 に属 し, 湖 南 国 有 林265林 班 ロー4小班 の久 蔵 沢 左 岸 の 南 西 向 斜 面(標 高850m)に そ れ ぞ れ 位 置 して い る 。 これ ら両 試 験 地 は いず れ も3つ の 試 験 区 か らな り,そ れ ら は一連 続 斜 面 の上 ・中 ・下 部 に それ ぞ れ 位 置 して い る。 斜 面 傾 斜 は い ず れ も急 峻 で,6試 験 区 の 平 均 傾 斜 角 を 示 す と松 木 沢 上 部 で35°,同 中 部 で34°,同 下 部 で31°,久 蔵 沢 上 部 で41°,同 中 部 で35°,同 下 部 で35° で あ った 。 こ れ らの試 験 区 に は,そ れ ぞ れ12の 試 験 プ ロ ッ ト(1m× 2m)が 図-2の よ う に配 置 され て い る。 3.試 験 及 び 実 験 の 方 法 (1)供 試 薬 剤 及 び供 試 土 砂 供 試 薬 剤 は,ア ク リル酸 エ ス テ ル樹 脂 の エマ ル ジ ョン で,現 地 試 験 用 薬 剤 は表-1に 示 す ア ロ ンNSK-100,同 NSK-100改,同NSK-101改 の3種 で あ る。 この うち NSK-100改 は,主 と して 緑 化 基 礎 工 用 の 土 壌 固 結 剤 に, NSK-101改 は,主 と して 播 種 工 用 の 養 生 剤 に,そ れ ぞ れ 開 発 され た もので あ る。 これ ら3種 の 薬 剤 を,そ れ ぞ れ 濃 度50%(薬 液 と 水 の 容 積 比1:1)と25%(同 比 1:3)に 水 で 希 釈 して 使 用 した。 次 に 薬 剤 の散 布 方 法 は,各 試 験 プ ロ ッ ト(2m2)に 対 し,全 面 一様 散 布 型 と図-3に 示 す 筋 状 散 布 型 を 採 用 し,そ れ ぞ れ 所 定 の 散 布 域 に如 露(容 量5l)で 一 様 に 散 布 した。 散 布 量 は両 散 布 型 と も1プ ロ ッ ト当 た り10l 表-1供 試 薬 剤 分 析 表 に 統 一 した 。 した が って,濃 度50%の 希 釈 液 は1プ ロ ッ ト当 た り薬 液5lと 水5l,濃 度25%の 希 釈 液 は1プ ロ ッ ト当 た り薬 液2 .5lと 水7.5lを それ ぞ れ 混 合 して 使 用 した。 一 方,室 内 実 験 用 供 試 薬 剤 は,表-1に 示 した ア ク リ ル ポ リマ ー の うち,NSK-100,100改 の2種 を 使 用 し, 濃度 は50%と25%に 水 で 希 釈 して 使 用 した。 これ と は 別 に,真 水(無 薬 剤)も 使 用 し,以 下 の 比 較 に便 な ら し め た。 供 試 土 砂 は4種 で, A:粒 径(d)が0.6mm以 下, B:0.6mm≦d≦1.2mm, AB:A/B=1の 混 合 砂, 0:足 尾 産 花 崗岩 質 マ サ土(未 篩 砂) で あ る。 これ らの土 砂 は,全 て足 尾 治 山 事 業 所 管 内 の松 木 沢産 の"微 利"を 節 分 け た もので あ る。 (2)現 地 試 験 の方 法 図-1に 示 した 足 尾 治 山 事 業 所 管 内 の,松 木 沢 及 び久 蔵 沢 の 両 試 験 斜 面 の 上 ・中 ・下 部 に,図-2に 示 した配 列 の処 理 プ ロ ッ ト12個 と,無 処 理 プ ロ ッ ト(対 象 区) を 設 置 した 。 こ れ ら の プ ロ ッ トに は,表-2の よ う な薬 剤3種,希 釈 濃 度2種,散 布 型2種 の組 み合 わせ に よ る 12種 の 処理 プ ロ ッ トと無 処 理 プ ロ ッ トを作 成 した。 土 壌 侵 食 量 の 測 定 の た め,直 径8mm,長 さ20cm の 鉄 ピ ンを 土 中 に深 さ10cm打 ち 込 ん だ。1プ ロ ッ ト 中 の鉄 ピ ン の配 列 は,全 面 ・筋 状 両 散 布 型 と も図-3の 表-2現 地 試 験 の 要 因 組 合 せ

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緑 化 工 技 術 第14巻 第1号(1989) よ う に6本 配 置 し,無 処 理 プ ロ ッ トに も3∼6本 配 置 し た。 侵 食 量 の経 時変 化 は,プ ロ ッ ト設 定 後,各 鉄 ピ ンの 地 上 高 を経 時 的 に測 定 して侵 食 深 を表 示 す る と と も に, 侵 食 土 砂 量 も算 出 した。 各 プ ロ ッ トの土 壌 固 結 硬 度 は,山 中式 土 壌 硬 度 計 を 使 用 して,プ ロ ッ ト下 部 の3箇 所 以 上 で測 定 し,そ の 平 均 値 で表 示 した。 試 験 地 の設 定 と施 工 は,予 備 調 査 の あ と,昭 和58年 7月19日 ∼21日 と8月3日 ∼5日 に 行 わ れ たが,そ の 後 の観 測 は, 第1回:58年8月4日(施 工 後1日 目) 第2回:58年9月1日(29日 目) 第3回:58年9月30日(58日 目) 第4回:58年12月20日(139日 目) 第5回:59年4月26日(266日 目) 第6回:59年7月2日(334日 目) 第7回:59年8月2日(365日 目) 第8回:59年10月1日(425日 目) 図-3筋 状散 布 プ ロ ッ ト(単 位cm) 第9回:59年11月29日(484日 目) 第10回:60年4月17日(625日 目) 第11回:62年11月16日(1535日 目) に 実施 さ れ た。 な お,足 尾 治 山事 業 所 久 蔵 沢 気 象 観 測 露 場 に お け る昭 和58年8月 ∼59年11月 ま で の 日雨 量(10mm以 上) の 分布 を参 考 ま で に 図-4に 示 した。 (3)室 内実 験 の方 法 薬剤 処 理 に よ る土 砂 の耐 侵 食 性 と固 結 性,及 び土 層 中 へ の薬 剤 の浸 透 性 を 明 らか に す る た め,試 験 の 目的 ご と に 表-3の よ うな供 試 薬 剤 を使 用 した。 ま ず,耐 侵 食 性 実 験 は,侵 食 実 験 箱(斜 面 長50cm, 幅25cm,深 さ5cm)を 製 作 し,こ れ に前 記 の供 試 土 砂0(足 尾 産 の 花 崗 岩 質 マ サ 土 の 末 篩 砂)を 一 様 に敷 き詰 め,雨 滴 発 生 装 置(DIK-6000型,有 効 降 雨 面 積 2m2,降 雨 強 度50∼200mm/時)で 人 工 降 雨 を発 生 さ せ た。 実 験 条 件 と して は斜 面 勾 配30度(一 定)に 保 ち, 降 水 量 は そ の つ ど 実 測 し た 。 侵 食 実 験 に 先 だ ち草 本 (K.31.F)を 播 種 し,草 丈5∼7cm,被 覆 率20∼25% (播種15日 目)の 供 試 実 験 箱 を あ らか じめ準 備 した。 次 に,土 層 内 の浸 透 性 実 験 は,供 試 薬 剤 と供 試 土 砂 の 組 み 合 わ せ に よ り20種 につ いて 行 っ た。 その 方 法 は, まず ア ク リル製 の透 明 円筒(内 径9.5cm,高 さ30cm) に,高 さ7cmま で 透 水 性 の 良 好 な砂(平 均 粒 径 約3 mm)を 入 れ,そ の上 に風 乾 状 態 の供 試 土 砂 を 入 れ 土 層 深(土 柱 高)が7cmに な る ま で 突 き棒(重 量2kg, 転 圧 面65cm2)で 一 様 に2回 ず つ 突 き固 め た 。 なお, 円筒 底 に は吸 水 性 の ろ紙 と金 網 を 敷 き,土 層 表 面 に は侵 食 防止 用 緩 衝 材 を載 せ た。 供 試 土 砂 の 使 用 量 はそ の 種 類 に よ って 異 な り870∼950gで あ っ たが,供 試 薬 剤 量 は 図-4観 測 期 間 前 期 の 降 雨 分布 ―12―

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表-3室 内 実 験 の 種 類 と供 試 薬 剤 全 て200ccに 統 一 した。 4.試 験 及 び実 験 の 結 果 に対 す る 検 討 (1)供 試 薬 剤 の土 層 内 浸 透 性 に関 す る検 討 供 試 薬 剤 の実 用 化 を はか る場 合,ま ず そ の土 層 中 に お け る浸 透 性 を明 らか に して お く必 要 が あ るの で,供 試 薬 剤 と供 試 土 砂 の 組 み 合 わ せ に よ り20種 の 浸透 性 実 験 を 行 い,そ の 結 果 を 表-4に 示 し た。 す な わ ち,供 試 薬 剤 4種 と真 水 につ いて 浸 透 速 度 と土 層流 下 速 度 を比 較 す る と,い ず れ も 土 砂B(0.6≦d≦1.2)が 速 く,特 に NSK-100改 の 濃 度25%液 が 最 も速 い。 ま た,土 砂B で 真 水 の 浸 透 性 と 同等 以 上 な の はNSK-100,100改 と も濃 度25%液 で あ り,こ の点 で も薬 剤 の 浸 透 性 はそ の 希 釈 濃度 の影 響 を 強 く受 け る こ とが わか る。 な お,1例 と して,薬 剤NSK-100改50%液 の 土 砂 種別 の浸透 速 度 を比 較 す る と,土 砂Bが121(mm/分) で 最 も早 く,土 砂0が そ の20%,土 砂ABが そ の16 %,土 砂Aが そ の12%の よ う に,い ず れ も速度 が 激 減 す る傾 向 が認 め られ る。 (2)薬 剤 処 理 に よ る土 壌 固 結 性 に関 す る検 討 1)薬 剤 処 理 直 後 の 表 土 硬 化 現 象 表 土 硬 化 の初 期 過 程 を 明 らか にす るた め,前 記 の浸 透 性 試 験 の試 料 を そ の ま ま放 置 して,薬 剤 処 理 直後 の表 層 土 壌 の硬 度 を測 定 し,そ の 結 果 を 未処 理 土 壌 に対 す る硬 度 比(%)で 表 わ し,そ れ を表-4に 示 した。 結 果 と し て,供 試 薬 剤 の 初 期 硬 化 現 象 は,供 試 薬 剤,薬 剤 濃 度, 対 象 土 砂 に よ って 大 き く異 な る こ とが わ か った。 す な わ ち,ま ず いず れ の 薬 剤 種 ・濃度 に つ い て も,土 壌 の初 期 硬 化 は対 象 とな る 土 砂 の 種類 で異 な り,土 砂Bで は処 理 直 後 の2日 目 に は硬化 作 用 が 開始 さ れ,4日 目 に は既 に 未 処 理 土 壌 の 硬 度 の2.3∼4.3倍 程 度 に十 分 固 結 され る の に対 し,そ の他 の供 試 土 砂 で は,処 理 後4日 目 まで 顕 著 な硬 化 現 象 は認 め られ ず,特 に土 砂Aで は7日 目

表-4供

試薬剤の土壌浸透性 と薬剤処理 直後 の土壌硬度 の経 時変化

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緑 化 工 技 術 第14巻 第1号(1989) ま で ほ とん ど未 固 結 状 態 の ま まで あ る。 この 事 実 は,供 試 土砂 の粒 径 組 成(均 一 性)の 影 響 を強 く受 けて い る こ とを意 味 して い る。 次 に,土 壌 の初 期 硬 化 は,供 試 薬 剤 の種 類 ・濃 度 の 影 響 を 受 け,NSK-100改 の 濃 度50%液 の方 が 初 期 硬 化 の 開 始 が 早 く,し か も固結 度 が高 くな る傾 向 が うか が わ れ る。 2)薬 剤 処 理 に よ る土壌 固結 度 の経 時 変 化 図-2に 示 した 足 尾 治 山事 業 所 管 内 の試 験 地 に お いて, 処 理 面(全 面 散 布 プ ロ ッ トの全 部 と図-3の 筋 状 散 布 プ ロ ッ トの 散 布 部 分),及 び無 処 理 面(筋 状 散 布 プ ロ ッ ト の無 散 布 部 分 と無 処 理 プ ロ ッ トの全 部)に お け る土 壌 硬 度 を測 定 した。 それ らの 結 果 の うち,松 木 沢 の斜 面 上 部 試 験 区(625日 間)と 久 蔵 沢 の 斜 面下 部 試 験 区(484日 間)に お け る土 壌 硬 度 の 経 時 変 化 を,そ れ ぞ れ 図-5,6 に示 した。 結 果 と して,ま ず 花 崗 岩 風 化 地 帯 の 松木 沢 の 山腹 斜 面 に お け る土 壌 固 結 硬 度 は,全 面 散 布,筋 状 散布 の両 者 と も,図-5の よ う に,NSK-100改50%処 理 区 が最 も大 き く,処 理後2箇 月 目 に は既 に十 分 な 固 結(土 壌 硬 度34 mm)状 態 を呈 し,施 工 後1年 以上(第2冬 季 直 前 まで), ほ ぼ こ の状 態 が 持 続 さ れ て い る。 一 方,そ の 他 の50% 処 理 区 に つ い て は,処 理 後2箇 月 目 に は十 分 な堅 さ(す こぶ る堅)に 達 す る が,そ の後 土 壌 硬 度 は低 下 し,特 に NSK-100の 処 理 区 で は,第1越 冬 後 に は既 に未 処 理 区 の 土 壌 硬 度 ま で 激 減 して い る。 ま た,全 薬 剤 の25%処 理 区 につ い て は,約5箇 月 目(施 工 当 年 末)に は,土 壌

図-5花

崗岩風化地帯 における土壌硬度の経時変化

(施工後2冬 季経過時 まで)

松木沢上部試験地〕

硬 度 が そ れ ぞ れ ピ ー ク に 達 し,特 にNSK-100改 で は ほ ぼ 固 結(29mm)状 態 に 達 す るが,そ の後 硬 度 は急 速 に低 下 し,施 工 後1年 以 上 経 過 す る と,す べ て の25 %処 理 区 で土 壌 硬 度 は軟 の状 態 に ま で変 化 して い る。 次 に,古 生 層地 帯 の久 蔵 沢 の 山腹 斜 面 に お け る固 結 硬 度 は,全 面 散 布,筋 状 散 布 の 両 者 と も,図-6の よ うに 処 理 後1∼2箇 月 間 に 限 り,NSK-100,100改 と もに50 %処 理 区 は十 分固 結 した状 態 を示 す.そ の後 はNSK-100 改 区 で そ の 状 態 を ほぼ1年 間 持 続 す るの に対 し,NSK-100区 で は急 速 に土 壌 硬 度 が 低下 し,施 工 当年 末 に は他 図-6古 生 層地 帯 に お け る土 壌 硬 度 の経 時 変 化 (施工 後2年 目 の晩 秋 ま で) 〔久 蔵 沢 下 部 試 験 地 〕 図-7硬 化 土 壌 の 耐 久 性(風 化 花 崗岩 斜 面) ―14―

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写 真-1松 木 沢 試 験 地 全 景(第4越 冬 後,昭 和62 年11月16日 撮 影) 写 真-2松 木 沢 試 験 地NSK-100改50%処 理(全 面 散 布)区 跡(第4越 冬 後,昭 和62年11 月16日 撮 影) 写 真-3松 木 沢 試 験 地 の 写 真-2以 外 の 処 理 区 跡 (第4越 冬 後,昭 和62年11月26日 撮 影) 写 真-4松 木 沢 試 験 地 の無 処 理 区 跡(第4越 冬 後, 昭和62年11月26日 撮 影) 写 真-5久 蔵 沢 試 験 地 全 景(第4越 冬 後,昭 和62年11月16日 撮 影) 写 真-6久 蔵 沢試 験 地 処 理 区 跡:い ず れ の 処 理 区 も 硬 化 土壌 の痕 跡 す ら認 め られ な い(第4越 冬 後,昭 和62年11月16日 撮 影)

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緑 化 工 技 術 第14巻 第1号(1989) 表-5施 工 初 期 に お け る処 理 別 期 間 侵 食 ・堆 積 土 砂 量 表-6供 試 薬 剤,植 被 別 侵 食 土 砂 量 の 比 較 の処 理 区 と同様 に,既 にや や 軟 の 状 態 に まで 低下 して い る。 以 上 の 結 果 を総 括 す る と,供 試 薬 剤,特 にNSK-100 改50%液 は,風 化 花 崗 岩 地 帯 の 土 壌硬 化 に有 効 で あ り, そ の 固結 状 態 は施 工 後 第2越 冬 時 頃 ま で持 続 す る可 能 性 が うか が わ れ る。 3)硬 化 土 壌 の耐 久 性 供 試薬 剤で 処理 され た硬 化 土 壌 の耐 久 性 を調 べ る た あ, 前 記 の試 験 で土 壌 の固 結 効 果 が 十 分 発揮 され た風 化 花 南 岩 地 帯(松 木 沢 上 部 試 験 地)の 薬 剤 全面 散 布 区(す べ て の50%処 理 区 とNSK-100改25%処 理 区)に つ い て, そ の 後 の 追 跡 調 査 を 行 い,得 られ た結 果 を 図一7の よ う に半 対 数 目盛 で 表 示 した 。 その結 果,ま ずNSK-100改50%処 理 区(全 面 散 布) につ いて は.第4越 冬 後(施 工後5年 目)ま で,土 壌 の 固結(土 壌 硬 度26mm以 上)状 態 が ほ ぼ維 持 さ れ,実 用 上 十 分 な耐 久 性 が示 さ れ た。 次 に,NSK-101改50%処 理 区(全 面 散 布)に つ い て は,第2越 冬 直 前(施 工 翌 年 末)ま で,土 壌 状 態 は堅 ∼ す こぶ る堅 の状 態 が 保 持 され るが ,そ の 後 の 耐 久 性 は ほ とん ど保 証 さ れ な い。 ま た,NSK-100・50%処 理 区 とNSK-100改25% 処 理 区 につ いて は,い ず れ も第1越 冬 後 に は既 に未 処 理 土 壌 の堅 さ程 度 まで 低 下 す るの で,耐 久 性 の 限 界 はせ い ぜ い施 工 当年 末 まで と考 え られ る。 (3)薬 剤 処 理 に よ る土 砂 流 失 抑 止 能 に関 す る検 討 1)試 験 施 工 初 期 の 処 理 土 壌 の 耐 侵 食 性 松 木 沢 と久 蔵 沢 の 山 腹 斜 面 の 上 ・中 ・下 部 の 各試 験 区 に は,図-2の よ うな 試 験 プ ロ ッ トを設 置 した が,各 プ ロ ッ トに 配 置 した6本 の 鉄 ピ ン(上 段3本,下 段3本) の地 上 高 を測 定 し,上 ・下 段 ご とに平 均 値 を算 出 し,ま ず 試 験 施 工 初 期(処 理 後 約2箇 月 間)の 侵食 現 象 に注 目 した。 結 果 と して,各 プ ロ ッ トの 侵 食 深 と堆 積 高 か ら,単 位 面 積 当 た りの 侵 食 ・堆 積 土 砂 量 を 計算 し,試 験 地 別,薬 剤 の 種 類 ・濃 度 別,散 布 方 式 別 に要 約 す る と表-5の よ うに な る。 す な わ ち,第1観 測 期 間 中 の土 砂 収 支 を み る と,全 面 散 布 区 に つ い て は松 木 沢 で は,プ ロ ッ トWC1 (NSK-101改50%処 理 区)の み侵 食 現 象 で,そ の量 は 770(cm3/m2)で あ る の に対 し,久 蔵 沢 で は プ ロ ッ ト ―16―

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WA1,WC1以 外 は 侵 食 現 象 が 見 られ,最 大 侵 食 プ ロ ッ トはWB1(NSK-100改50%処 理 区)の830(cm3/ m2)で あ っ た 。 ま た,筋 状 散 布 区 につ いて は,松 木 沢 で は プ ロ ッ トSA3以 外 はす べ て侵 食 現 象 で,最 大 侵 食 プ ロ ッ トはSC1(NSK-101改50%処 理 区)の3400 (cm3/m2)で あ る の に対 し,久 蔵 沢 で はす べ て 侵 食 プ ロ ッ トで,最 大 侵 食 プ ロ ッ トはSB3(NSK-100改25 %処 理 区)の6800(cm3/m2)で あ っ た 。 な お,無 処 理 プ ロ ッ トの侵 食 量 は松 木 沢 で9900(cm3/m2),久 蔵 沢 で4800(cm3/m2)で あ った 。 一 方 ,第2観 測 期 間 中 の土 砂 収 支 を み る と,全 面 散 布 区 に つ い て は松 木 沢,久 蔵 沢 と もにす べ て 堆 積 現 象 で, 侵食 プ ロ ッ トは皆 無 で あ った。 ま た,筋 状 散 布 区 につ い て は,松 木 沢 で は3プ ロ ッ トが侵 食 現 象 で,最 大 侵 食 プ ロ ッ トはSC3(NSK-101改25%)の5900(cm3/m2) で あ るの に 対 し,久 蔵 沢 で は全 部 侵 食 プ ロ ッ トで,そ の 最 大 プ ロ ッ ト はSB1(NSK-100改50%)の7100 (cm3/m2)で あ っ た 。 な お,無 処 理 プ ロ ッ トの侵 食 量 は,松 木 沢 で6200(cm3/m2),久 蔵 沢 で2200(cm3/ m2)で あ った。 2)供 試 薬 剤 ・植被 別 土 壌 の耐 侵 食 性 供 試 薬 剤3種 と植生 の 有無 に よ る表 面 侵 食 室 内実 験 の 結 果 を 示 す と 表 一6の よ うで あ る。 す な わ ち,薬 剤 処 理 した 植 生 斜 面 で は,無 処 理 の裸 地 に比 べ て侵 食 土 砂 量 が 圧 倒 的 に 少 な く,特 にNSK-101改50%処 理 の植 生 斜 面 で は そ の0.3%(耐 侵 食 性329倍),NSK-100改50 %処 理 の 植 生 斜 面 で はそ の0.7%(同145倍)と な り, その 効 果 は抜 群 で あ る。 これ らの事 実 は,供 試 薬 剤 の う ちNSK-100改 と101改 の 耐 侵 食 性 が 顕 著 で あ る こと を裏 付 けて い る。 5.摘 要 1)供 試 薬 剤 の 土 層 内 浸 透 性 は,そ の希 釈 濃度 と土 層 を構 成 す る土 砂 の 粒 径 の 影 響 を 強 く受 け る。 2)供 試 薬 剤 の初 期 硬 化 現 象 は,薬 剤 の 種 類 ・濃度 と 対 象 土 砂 の種 類 に よ っ て大 き く異 な り,NSK-100改 の 濃 度50%液 を土 砂B(0.6≦d≦1.2)に 使 用 す る場 合 が,最 も早 く初 期 硬 化 現 象 が 認 め られ る。 3)薬 剤 処 理 に よ る土 壌 固 結 度 の 経 時 変 化 を み る と, NSK-100改 濃 度50%液 の 効 果 が 顕 著 で,特 に 風化 花 崗岩地 帯 の土壌 硬化 に は極 めて 有 効 で あ る こ とが わ か る。 4)薬 剤 で処理 された硬 化 土 壌 の耐 久 性 を 比 較 す る と, NSK-100改 濃 度50%液 処 理 土 壌 は,第4越 冬 後(施 工 後5年 目)ま で 固 結 状 態 が 維 持 され るが,NSK-101 改 濃 度50%液 処 理 土 壌 は施 工 翌 年 末 まで,そ の 他 の 薬 剤 処 理土 壌 は施 工 当年 末 まで しか 固 結 状 態 は維 持 され な い 。 5)薬 剤処 理 土 壌 の耐 侵 食 性 に関 す る現 地 試 験 結 果 に よ る と,全 面 散 布 方 式 で は,古 生 層 風 化 地 帯 にお け る処 理 後 約1か 月 間 に若 干 の侵 食 現 象 が 認 め られ るが,花 崗 岩 風 化 地 帯 で は 処 理 後 約1,2か 月 目 と も,ほ とん ど侵 食 現 象 は認 め られ な い。 な お,筋 状 散 布 方 式 の 古 生 層 風 化 地 帯 へ の適 用 に つ い て は,実 用 上 若 干 の問 題 点 が 残 さ れ る。 6)表 面侵 食 室 内実 験 の結 果 に よ る と,供 試 薬 剤 の う ち,NSK-100改 と101改 の耐 侵 食 性 は(無 処 理 の裸 地 に比 べ て)極 め て顕 著 で あ る こ とが わ か っ た。 参 考 文 献 1) 真下 育久: 硬度 計 に よる森林土壌 の堅密度 の区分お よび 粗孔隙量 の予知, 森林立地, 15 (1), 22-24, 1973 2) 小橋 澄治 ら: 化 学薬 剤 を中心 と したノ リ面 の侵食防止工 法について, 土 と基礎, 22-7 (197), 53-58, 1974 3) 陶 山正憲 ・堀 江保夫: 簡易緑化基礎工 の開発基礎試験, 昭和58年 度農林水産航空技術合理化試験成績書 (農林水 産航空協会), 38-55, 1984 4) 堀 江保夫 ・陶 山正憲: 航空緑化工 における簡易緑化基礎 工 と しての土 壌固結剤 の効果 について, 緑化工技術, 12 (3), 22-26, 1987

参照

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