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科学技術基礎的概念の理解度からみた理科教育のあり方

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(1)科学技術基礎的概念の理解度からみた理科教育のあ り方 著者 雑誌名 号 ページ 発行年 URL. 中西 敏昭 教職教育研究 : 教職教育研究センター紀要 21 67-74 2016-03-31 http://hdl.handle.net/10236/00025368.

(2) ઇ. 【T:】Edianserver /関西学院/教職教育研究/第21号/ 中西敏昭. 校. 科学技術基礎的概念の理解度からみた理科教育のあり方 中 西 敏 はじめに. 昭. 年月、10月、2014年12月に関西学院大学理工学部の教 職(理科)を目指す・年生(115名)から表に示. 今から15年前、2002年の朝日新聞紙に「“現在の人類. した質問項目に対する回答を得た。. は恐竜と同じ時代に生きていた” などの10問を○、×で. 2003年に実施した兵庫県立高校校(K高校文系171. 回答した結果、日本は欧米諸国14カ国中12位」という報. 名、KK 高校206名、Y高校111名、H高校理系51名。学. 道がなされた。この報道は文部科学省科学技術政策研究. 年別;年生270名、 ・年生269名)は中西が行った. 所(以下. 調査結果を用いた5)。. 科学技術政策研究所と略)が、全国18歳〜69. さらに2001年・2011年に科学技術政策研究所の調査対. 歳までの男女3,000人対象に面接して得た「科学技術に 1). 対する意識調査」の報告に基づいている 。. 象になった大人(2001年2146名、2011年2218名)の科学. その報告書の中に科学技術基礎的概念(以下 科学基. 基礎知識に関する調査報告のデータを分析に用いた4)。. 礎知識と略)について、日本の正答率は51%であり、. なお、2011年月と12月に実施された調査結果の合計を. トップはデンマークの64%、イギリス63%、アメリカ. 2011年のデータとした。 また、各世代を次のつのグループに分類した。. 61%と続いている。○×の回答から考えると、51%とい. グループ(G1);2015年大学3・4年生、2014年大学4年生. う値は、ほとんど理解できていないように思えた。. グループ (G2);2015年高校 ・年生. 因みに、当時(2003年)につの高校で実施したとこ ろ、年生はおよそ65%、 、年生で75%という結果. グループ(G3);2015年高校年生. であった。高校年生や小学校年生・中学校 年生を. グループ(G4);2003年高校 ・年生. 対象に行われている PISA(生徒の学習到達度調査)や. グループ (G5);2003年高校年生. TIMMS(国際数学・理科教育動向調査)では、日本の. グループ(G6);大人(2001年/2011年). 子どもは常に上位であるにもかかわらず、この結果は “大 表ઃ. 人の理科離れ” を意味している。一方、子どもの方も学 年が進むにつれて理科離れが進み、将来、理数系の仕事. ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩. に就きたいと思う者が少なくなるという報告がある2),3)。 今回、関西学院大学理工学部の教職(理科)を目指す 学生および兵庫県内のつの県立高等学校の生徒を対象 に、この科学基礎知識に関する10問のアンケートを実施 し、回答を得た。また、2011年に科学技術政策研究所が 同じ10問の科学基礎知識に関する調査結果を報告してい る4)。これらの調査結果を踏まえながら、学生や生徒の 学習観と科学基礎知識との関連を調べ、理科離れを防ぐ. 科学基礎知識に関する質問10項目. 大陸は何万年もかけて移動している 現在の人類は原始的な動物種より進化した 地球の中心部は非常に高温である 我々が呼吸に使う酸素は植物からつくられた すべての放射能は人工的につくられたものだ ごく初期の人類は恐竜とともに生きていた 電子の大きさは原子の大きさよりも小さい レーザーは音波を集中することで得られる 男か女になるかを決めるのは父親の遺伝子だ 抗生物質はバクテリア同様ウイルスも殺す. 上記の質問項目については、次の略号を用いた。. 方法としてアクティブラーニングを授業に取り入れ、そ の後の学生の学習観の変化を分析し、高校の理科や大学. ①大陸移動. での教職(理科)のあり方などについて考察を試みた。. ⑤放射能人工 音波. ②人類進化. ③地球/高温. ⑥人類/恐竜. ⑨男女決定. ④酸素/植物. ⑦電子原子 ⑧レーザー. ⑩抗生物質. これらの項目は科学技術政策研究所では、「正しい」、. 調査方法. 「誤っている」 、 「わからない」の回 答 方 法があったが、 2003年当時の高校生には○×での回答で実施したため、. ઃ.科学基礎知識に関する調査 2015年 月〜月に兵庫県立高等学校校(調査有効. 2001年・2011年の科学技術政策研究所のデータについて. 数;K高校79名、S高校214名、A高校74名、SH 高校. は、比較するために回答「わからない」の半分は、 「正し. 77名。学年別;年生293名、 ・年生151名)と2015. い」と回答されたものとみなして換算した数値を用いた。. ― 67 ―. Page 69. 16/07/29 12:09.

(3) ઇ. 【T:】Edianserver /関西学院/教職教育研究/第21号/ 中西敏昭. 校. 表઄ 学習観に関する質問12項目 ( 段階評価 よくあてはまる;評価 点,まったくあてはらない;評価点) a.思ったようにいかないとき.頑張って何とかしようとする方だ b.勉強のしかたをいろいろ工夫してみるのが好きだ c.答えだけでなく,考え方が合っていたかが大切だと思う d.ただ暗記するのではなく,理解して覚えるように心がけている e.失敗を繰り返しながら,だんだん完全なものにすればいいと 思う f.成功した人の勉強のしかたに興味がある. g.ある問題が解けたあとでも,別の解き方を探してみることが ある h.習ったことどうしの関連をつかむようにしている i.図や表で整理しながら勉強する j.テストの成績が悪かった時,勉強の量よりも方法を見直して みる k.テストでできなかった問題は,あとからでも解き方を知りたい l.思ったようにいかないときは,その原因をつきとめようとする. ઄.学習観に関する調査 学習観を調べる質問項目については、市川(1995)の 24項目のうち、“学習方法を考えるのはめんどうだ” な どのリバース(逆転項目)12項目を除いたa〜lに示し た項目(表 )について分析した6)。調査対象は調査方 法の「.科学基礎知識に関する調査」と同じ兵庫県立 高校校(2015年)である。 結果と考察 ઃ.大人(18歳〜69歳)の科学基礎知識 図ઃ. 表は科学技術政策研究所による2001年の調査結果で. 2001年大人の科学基礎知識. あり、これを横棒グラフで示すと図になる。正答率の 平均は51%であり、「科学基礎知識が日本は欧米諸国14カ 国中12位」となった根拠である。しかし、図からわか. 表અ. ①大陸 移動. ②人類 進化. ③地球 /高温. ④酸素 /植物. ⑤放射 能人工. 正答率(%). 82.6. 77.5. 77.2. 66.6. 55.8. 誤答率(%). 3.8. 8.3. 5.2. 19. 25.8. 13.7. 14.1. 17.7. 14.4. 18.4. ⑦電子 ⑧レーザー ⑨男女 決定 原子 音波. ⑩抗生 物質. るように「わからない率」が半分近くになる設問もある。 半分を正答に換算すると、表のようになり2001年の 正答率は63.4%、2011年の正答率は64.6%となり、一躍 トップクラスの正答率になってしまう。国民性があって 白黒をはっきりつけようとすれば正答率が高くなる可能. 2001年大人の科学基礎知識(18歳〜69歳の大人). 質問項目. わからない率(%). ⑥人類 /恐竜. 質問項目. 性もある。もちろん、一番になることが目的ではなく、 一般国民の科学基礎知識の向上が大事であることは云う. 正答率(%). までもない。しかし、素朴な疑問として、日本人の科学 基礎知識が世界の中でそれほど低いとは思えなかった。. 40.2. 29.5. 28.1. 25.2. 22.8. 誤答率(%). 35.3. わからない率(%). 24.5. 22.3. 26. 44.2. 48.6. 48.2. 45.9. 30.6. 28.5. 2001年大人と2011年大人の間には10項目のうち、①大 陸 移 動( χ2 = 19.259、p< 0.01)、③ 地 球 / 高 温( χ2 = 、 14.710、p<0.01)、④酸素/植物(χ2=10.314、p<0.01). 表આ. ⑤放射能人工( χ2=13.765、p<0.01)、⑩抗生物質(χ2. 2001年/2011年. 質問項目. =7.802、p<0.01)に統計学的な有意差があった。. 科学基礎知識の正答率の換算値. ①大陸 移動. ②人類 進化. ③地球 /高温. ④酸素 /植物. ⑤放射 能人工. 2011年は東日本大震災が起き、原子力発電所をはじめ. 2001年正答率(%). 89.5. 84.6. 86.1. 73.8. 65. 未曾有の災害について、多くの報道がなされた年であ. 2011年正答率(%). 93.4. 83.5. 90. 68.7. 70.7. ⑦電子 ⑧レーザー ⑨男女 原子 音波 決定. ⑩抗生 物質. り、地震のしくみや放射能についてテレビ・新聞などか. ⑥人類 /恐竜. 質問項目. ら多くの知識が得られたため、①大陸移動、③地球/高 温、⑤放射能人工に有意差があったと考えられる。ま. 2001年正答率(%). 52.5. 53.6. 51.1. 40.5. 37.1. た、⑩抗生物質についても2009年の新型インフルエンザ. 2011年正答率(%). 54.7. 51.1. 52.3. 40.7. 41.3. の流行をはじめウィルスに関する情報が増えたためと考. ※. えられる。. 2001年 2011年. 平均正答率63.4% 平均正答率64.6%. ― 68 ―. Page 70. 16/07/29 12:09.

(4) ઇ. 【T:】Edianserver /関西学院/教職教育研究/第21号/ 中西敏昭. 校. 100. ઄.生徒・学生と大人の科学基礎知識 図 は2001年と2011年の大人の正答率比較であるが、 統計処理では有意差があるが、グラフではあまり差は認. 80. められない。そこで、必要に応じて個別の値を用いるよ うにし、2001年と2011年の大人を合算してグループ G6 としてグラフの変化をみるようにした。 ・年生、G2;2015年高校 ・年生、G3;2015年. 㸣. 䥺. 高校年生、G4;2003年高校 ・年生、G5;2003年. 60. 䥹. つのグループ<グループ(G1);2014・2015大学. ṇ ⟅ ⋡. 40. 高校年生、G6;大人(2001年/2011年)>の各正答率 について、つのグループを横軸にとったものが図で. 20. ある。 図から、G1)大学生はどの質問項目でも正答率は 高い。これは、理工学部の学生であることからみると当. 0. 然とも言える。しかし、後程考察するが④酸素/植物に ついては低い。これは、専門的な知識をもっていたため. ㉁ၥ㡯┠. と考えられる。. 2001኱ே. G5)2003年高校年生が⑦電子原子において低い割 合であった。これは授業で電子や原子について、まだ学. 図઄. 2011኱ே. 2001年と2011年の大人の正答率比較. んでいないためと考えられる。. 100. 80. 䥹. ṇ 60 ⟅ ⋡ 䥺. 㸣. 40. 20. 0 G1኱Ꮫ34ᖺ. G2㧗ᰯ23ᖺ. G3㧗ᰯ1ᖺ. G4㧗ᰯ23ᖺ. G5㧗ᰯ1ᖺ. G6኱ே. ձ኱㝣⛣ື. ղே㢮㐍໬. ճᆅ⌫/㧗 . մ㓟⣲/᳜≀. յᨺᑕ⬟ேᕤ. նே㢮ᜍ❳. շ㟁ᏊཎᏊ. ո㺸㺎㺙㺼㺎/㡢Ἴ. չ⏨ዪỴᐃ. պᢠ⏕≀㉁. 図અ. グループ別正答率. ― 69 ―. Page 71. 16/07/29 12:09.

(5) ઇ. 【T:】Edianserver /関西学院/教職教育研究/第21号/ 中西敏昭. 校. さらに、図からわかることは、⑨男女決定や⑩抗生. かり学んだ旧課程の生徒の方が性決定についての正答率. 物質が、どのグループにおいても正答率が50%以下であ. が高くなっている。また、マスコミやクチコミなどから. り、間違った知識を有していることである。なお、各グ. 情報が得られるため、年齢が高くなるにつれて、正答率. ループではなく、各学校の学年別にみたときには、G2). が高くなる傾向が認められる。. グループのA高校年生のみが項目⑨が61%で、正答が 誤答を上まわった。A高校の年生は自然との関わりを. (આ)質問⑩抗生物質について. 中心に学習する集団であるため、その影響かもしれな い。. G6)大人の正答率39%との統計的に有意な差があっ たのは、G1)大学生49%、G3)2015年高校年生46%、 G4)2003年高校 ・年生、85%であった。G3) 、G4) は理系が含まれているためと考えられるが、G3)は. (ઃ)質問④酸素/植物について 項目④に関して正答率は比較的高いが、高校グループ. 年生であるが、現行課程では年生で免疫を履修するこ. のうち G2)2015年高校 ・年生、G4)2003年高校 ・. と、前述したように新型インフルエンザなどでウイルス. 年生、G5)2003年高校年生で約88%の正答率があ. について身近な知識が得られたことによると思われる。. るが、G3)2015年高校年生では低い。. しかし、 「抗生物質がバクテリア同様ウィルスも殺す」. これは、新課程になって、「酸素はシアノバクテリア. という間違った考えが、すべてのグループで半分以上を. の光合成によって少しずつ増加した」と授業で習うた. 占めているのは、日常生活において悪影響を及ぼすと考. め、 「植物から酸素がつくられた」は間違っていると判. えられ、授業をはじめ何らかの改善が必要である。. 断したためである。 とくに G3)の高校の中で、この内容についての授業. અ.科学基礎知識理解度 主成分分析 各グループの正答率を変数として SPSS による主成分. 直後にこの質問項目に回答し55%の正答率になった学校 も含まれているためと考えられる。G1)大学生も74%. 分析を行った。 図は前述の「調査方法」に記したつのグループの. とかなり低くなるのは、同じように専門的な知識があっ. すべての小集団の正答率を変数として処理したもので、. たからと考えられる。. 学校教育における科学基礎知識の状況である。 第主成分はほとんどの質問項目が正の値であるの. (઄)質問⑤放射能人工について 項目⑤に関して、G5)2003年高校年生の正答率が 71%であった。G3)2015年高校年生の87%との間に. で、科学基礎知識の理解度の成分と考えられる。負の値 の「④酸素植物」は「 ()質問④酸素/植物について」. 2. で説明したように、高等学校の新課程による植物の定義. 。 統計的な有意差があった( χ =22.840、p<0.01) また、G2)2015年高校 ・年生85%と G4)2003年. が変更になったことに基づく外れ値であると考えられ. 高校 ・年生79%との有意差は認められなかった。し. る。実際、2003年の高校生の方が2015年の高校生よりも. かし、G3)2015年高校年生の87%と G4)2003年高校. 高く、大学や高校でも理系の専門的知識がある学生の方. 2. ・年生79%との有意差は認められた(χ =6.292、p. が正答率の低い結果になっている。. =0.012) 。さらに、正答率が一番高かった G1)大学生. 「⑥人類恐竜」な 第 主成分の上位に「②人類進化」. 96%と G4)2003年高校 ・年生79%、G5)2003年高. どの人との関連する項目がある。また、 「④酸素植物」. 校年生には有意差が認められた(χ2 =16.354、p<. では酸素が人の呼吸に不可欠な物質であること、「男女. 0.01) 。. 決定」は人の性に関する質問項目であるので、人との関. 新旧の教育課程の違いよりも東日本大震災の原発事故. 連の有無の成分と考えられる。. の影響が大きいと思われる。前述したように震災による 影響は2003年と2011年の大人の間にも見られた。. あるいは、別の考え方として、第象限の「⑧レー ザー音波」 、 「⑩抗生物質」は授業ではあまり取り上げら れず、学校外で広くマスコミや書籍などから学ぶ成分と. (અ)質問⑨男女決定について. 考えられ、第象限、第 象限は理科の授業で扱われる. G1)大学生、G4)2003年高校 ・年生、G6)大人. 内容なので、授業との関連も考えられる。. の正答率は40%代であり、その間には統計的な有意差は. また、第 成分の正の値は生物・地学分野、下方は物. なかった。しかし、それ以外には有意差があった。最も. 理・化学分野とも考えられる。教育課程の変更や理科の. 正答率が低かったのは、G3)2015年高校年生で18%. 科目選択による影響もあるので、今後より詳細な分析が. だった。新教育課程では、かつてのように性決定に関す. 必要である。. る染色体に関する記述は少なくなり、遺伝子を中心に扱 うようになっている。そのため、生殖や性染色体をしっ. ― 70 ―. Page 72. 16/07/29 12:09.

(6) ઇ. 【T:】Edianserver /関西学院/教職教育研究/第21号/ 中西敏昭. 校. 図આ 科学基礎知識理解度(Gઃ〜Gઇ)主成分分析. 授業の前後で差が大きかったのは、b勉強工夫、c考. આ.科学基礎知識と学習観. え方、h関連把握、i図表整理、j方法見直であり、と. (ઃ)大学生の学習観 本学の理工学部年生クラス(理科教育法受講者34. くにj方法見直で授業前より0.65点の増加がみられる。. 名)に授業が始まった月と授業終了間近の月に学習. これらの項目は工夫しながら勉強しようとする項目で. 観のアンケート(表 )を実施した。また、データとし. あり、グローバル化の時代に活躍できる人材に必要な、. ては月と月のアンケートに共に回答したサンプルの. 「課題発見力」 「問題解決力」 「成果発信力」の向上につ. みを用いた。なお、理科教育法の授業ではアクティブ. ながる。これらの力は、従来の知識伝授型の授業では対. ラーニング(以下 AL と略)をできるだけ積極的に取. 応できず、これらの力がとくに必要とされる理科などの. り入れることを試みた。その結果は表 のとおりであ. 授業において、AL を活用した授業を展開することによ. る。項目a〜lは表 の12項目であり、以下について. り、学生が主体的に深く学ぶ力を身につけていくのに効. は、a頑張る、b勉強工夫、c考え方、d理解、e失敗 完全、f成功人、g別解探索、h関連把握、i図表整理、. 表ઇ. j方法見直、k復習、l原因探索の略称をそれぞれ用い 項目. a. 数値は 段階評価で、「よくあてはまる」場合は評価. 月. 点、 「まったくあてはらない」場合は評価点である。 評価点以上の項目は、c考え方、d理解、e失敗完. た。. る AL の力を有していると思われる。また、これらの項 目は授業前より授業後の方がさらに評価が高くなってい る。. e. f. 4.21. 4.21. 4.32. 3.94. 3.53. 4.50. 4.35. 4.41. 3.79. 0.35. 0.29. 0.14. 0.09. −0.15. h. i. j. k. l. c. 3.68. 3.18. 月. 3.88. 差. 0.20 g. 学習観の変化 d. b. 全の各項目であり、学生が知識習得するだけの受動的な 学習ではなく、失敗をしながらでも次第に課題を解決す. 大学અ年生. 月. 2.53. 3.32. 3.82. 2.79. 3.76. 3.68. 月. 2.71. 3.71. 4.09. 3.44. 3.97. 3.85. 差. 0.18. 0.39. 0.27. 0.65. 0.21. 0.17. ― 71 ―. Page 73. 16/07/29 12:09.

(7) ઇ. 【T:】Edianserver /関西学院/教職教育研究/第21号/ 中西敏昭. 校. 果的であると考えられる。 (઄)科学基礎知識の正答数に関する重回帰分析 調査に協力してもらった多くの学校では正答数(得 点)が10問中の約〜点と高得点であったので、科学 基礎知識の分析のために差が見られず有効でないことも 考えられた。そのため、各学校の度数分布を調べてみた ところ、ほぼ正規分布をしていることがわかった。図 、はその一部であり、図の実線は正規分布の曲線を 示している。 科学基礎知識の理解度と学習観との関連を調べるため に、科学知識10問の正答数(得点)を目的変数とし、学 習観の12項目を説明変数として重回帰分析(ステップワ イズ法)を用いて行った。その結果を表-〜に示 す。 つの調査協力校は大学校、高校校である。大学. 図ઈ. は、年生の合計数、K校〜K校は県内の県立高. 大学生の科学知識10問の得点分布. 等学校で、K校は年生、K 校とK校は 、年 表ઈ−ઃ. 生、K校は年生である。表−より、Rがに近. 各学校のモデル集計結果. 2. い値であり、調整済み R 乗より説明変数を使ってモデ. 調整済み R2乗. 推定値の 標準誤差. 0.967. 0.965. 1.405. 0.976. 0.952. 0.950. 1.692. 0.973. 0.947. 0.945. 1.705. K. 0.973. 0.947. 0.945. 1.695. K. 0.970. 0.941. 0.939. 1.713. 学校. R. また、表− の有意確率より、モデルが有意水準. 大学. 0.983. %以下で科学基礎知識の得点に有意な影響を与えている. K. ことを示している。. K. 表−の標準化係数(ベータ)より、例えば、大学 ではe失敗完全の影響が一番強く、次にl原因探索、h. ルを95%程度説明できる。. ઃ. R2乗. 関連把握と続くことが分かる。 表ઈ−઄ 学 校 大 学. K . K . K . K . 各学校のモデル集計結果. 平方和. 自由度. 平均平方. 回帰. 4072.865. 3. 1357.622. 残差. 140.135. 71. 1.974. 合計. 4213.000. 74. 回帰. 4284.316. 3. 1428.105. 残差. 217.684. 76. 2.864. 合計. 4502.000. 79. 回帰. 3670.572. 3. 1223.524. 残差. 206.428. 71. 2.907. 合計. 3877.000. 74. 回帰. 3829.437. 3. 1276.479. 残差. 212.563. 74. 2.872. 合計. 4042.000. 77. 回帰. 9788.142. 4. 2447.036. 残差. 618.858. 211. 2.933. 合計. 10407.000. 215. ઄. F値. 有意 確率. 687.845 .000. 498.595 .000. 420.825 .000. 444.383 .000. 834.318 .000. 図ઇ ある高校の科学知識10問の得点分布. ― 72 ―. Page 74. 16/07/29 12:09.

(8) ઇ. 【T:】Edianserver /関西学院/教職教育研究/第21号/ 中西敏昭. 表ઈ−અ 各学校のモデル集計結果 学 校. 大 学 K  K  K . アンケート 項目. 非標準化 係数 B. 標準 誤差. 標準化 係数. 表ઉ. અ. 各学校における説明変数の影響 K. t値. ベータ. 有意 確率. a頑張る. 校. K. K. K. 1. 3. 1. 3. 2. 2. 2. 2. 大学. b勉強工夫. e失敗完全. .756. .162. .454. 4.654. .000. c考え方. l原因探索. .604. .215. .322. 2.815. .006. d理解. h関連把握. .417. .176. .217. 2.374. .020. e失敗完全. a頑張る. .964. .193. .518. 4.985. .000. f成功人. c考え方. .532. .164. .298. 3.241. .002. g別解探索. h関連把握. .400. .185. .174. 2.157. .034. h関連把握. e失敗完全. .673. .199. .371. 3.385. .001. i図表整理. c考え方. .596. .175. .319. 3.405. .001. j方法見直. a頑張る. .612. .221. .299. 2.764. .007. k復習. a頑張る. .939. .192. .507. 4.901. .000. l原因探索. h関連把握. .495. .182. .241. 2.724. .008. ※. 成功人. .433. .169. .242. 2.562. .012. e失敗完全. .533. .117. .321. 4.571. .000. K. l原因探索. .303. .135. .152. 2.245. .026. . c考え方. .483. .122. .284. 3.964. .000. a頑張る. .442. .140. .230. 3.161. .002. 1. 1. 1. 3 3. 3. 4. 2. 数値〜は影響力の順位を示している。. おわりに 2002年から2003年に学習指導要領が改定され、学習内 容や授業時間が削減された。また、 「総合的な学習の時 間」の 新 設 や 学 校 週 日 制 が 実 施 さ れ た。そ の 頃、. (અ)各学校における学習観の科学基礎知識への寄与. OECD(経済協力開発機構)による国際的な学力調査の. 表の結果をまとめてみると、各学校の科学基礎知識. PISA(高校年生対象)が実施され、その後年ごと. の得点は学習観に関する変数a〜lのうち、〜の変. に行われている。また、同じ2003年には IEA(国際教. 数によって説明できる(表) 。表の数値は一番影. 育到達度評価学会)による TIMSS(小学校年生・中. 響が大きかったもの、数値 は二番目、数値は三番目. 学校 年生対象)が行われ、年ごと2007年、2011年に. と順に影響が少なくなる。. 実施された。. e失敗完全(失敗を繰り返しながら、だんだん完全な. PISA は学校で学んだ内容を実生活の中で、どれだけ. ものにすればいいと思う)は、大学とK 、Kの つ. 活用しているかを評価する「読解力リテラシー」 「数学. の高校で寄与が高い。これらの高校は他の説明変数の寄. 的リテラシー」 「科学的リテラシー」を測るものであり、. 与の割合もよく似ている。この理由は、この つの高校. TIMSS は学校で学んだ算数・数学、理科の知識や技能. が総合学科や単位制の学校であり、大学の学習スタイル. などが、どの程度身についているかを測るものである。 PISA2006の結果から、日本の点数低下が問題になり、. に近いところがあるためである。 a頑張る(思ったようにいかないとき、頑張って何と. 2007年に「脱ゆとり教育」へと舵をきることになった。. かしようとする方だ)やc考え方(答えだけでなく、考. その後の PISA や TIMSS の結果を見ると学力低下の下. え方が合っていたかが大切だと思う)は、すべての高校. げは止まったようにみえる。しかし、勉強時間を増やせ. で三番目までに入っている。また、K、Kの高校は. ば、科学知識や技能の向上がみられるという単純なこと. 普通科がある学校であり、a頑張るとc考え方が一番目. ではない。それらの知識や技能が活用され、それらが生. と二番目になり、よく似ている。. 涯にわたって継続されることが重要である。. 科学基礎知識の得点が高い高校生は、単に知識を暗記. TIMSS2011の結果(表)から、日本の子どもは学. するのではなく、日頃から筋道を立てて考える科学的な. 力は極めて高いが、理科への興味・関心の度合いが国際. 思考力を有していると考えられる。これらの生徒や学生. 平均から極めて低いことも指摘されている3)。これは日. 達に将来、科学に何らかの貢献を期待するためには小学. 本の理科教育の大きな課題である。. 校から大学までの学校間接続を計画的に具現化していく ことが望まれる。. ― 73 ―. Page 75. 16/07/29 12:09.

(9) ઇ. 【T:】Edianserver /関西学院/教職教育研究/第21号/ 中西敏昭. 表ઊ. TIMSS2011 中学生への質問(数値は%を示す). 中学校年. TIMSS (2011年). 日本. 国際平均. 理科が好き. 52.5. 75.5. 理科の勉強が楽しい. 62.7. 80.1. 理科を使うことが含まれる職業に つきたい. 20.3. 56.2. 校. 謝辞 統計的な処理について助言をいただいた関西学院大学 総合政策学部教授. 客野尚志氏および非常勤講師. 長谷. 川太一氏に感謝を申し上げる。 また、今回の調査に協力していただいた県立神戸高校 教諭. 繁戸克彦氏、県立三田祥雲館高校教諭. 氏、県立篠山鳳鳴高校教諭 教諭 教職(理科)を目指す本学の学生に、表の結果を踏 まえて学校の授業に対する具体的な提案をあげてもらう. 景山嘉祐. 篠谷和彦氏、県立有馬高校. 土居恭子氏に感謝の意を表すとともに、回答して. いただいた各学校の生徒諸君ならびに関西学院大学、 年生の学生諸君に御礼申し上げる。. と、 「理科が社会に貢献している事実を伝える」 「授業の 中で実験や体験を多く取り入れる」「理系の職業人の話 を聞く」 「生徒に自信を与える」「グループ学習を行う」 「理科教師のスキルを高めて先生を好きにさせる」など があった。 この課題解決の一つとして「大人の理科離れ」を防ぐ ことが考えられる。本稿でも見られたように、学校にい るときは、かなりの学力があったにもかかわらず、大人 になると、あまり科学基礎知識が残っていない。調査対 象の理系の大学生でも生徒に比べて圧倒的に科学基礎知 識が良いわけではない。人数が少なかったが文系の大学 生は高校生よりも低い状況であった。 今回の調査では、大学生として主に理工系の大学、 年生からデータを得たが、彼らは「ゆとり世代」の大 学生であり、新課程で学んだ大学年生とは異なってい るかもしれない。また、教職(理科)という限られた集 団でもあった。さらに、十数年前の高校生や大人との比 較も教育課程の影響、男女数の違い、学校間の違い、文. 注) )科学技術に関する意識調査 ―科学技術・学術政策研究 所(NISTEP) http: //www. nistep. go. jp/achiev/ftx/jpn/rep072j/pdf/ rep072j.pdf. )国民の科学技術に対する関心と科学技術に関する意識と の関連 http://hdl.handle.net/11035/2966 )国際数学・理科教育動向調査の2011年調査 (TIMSS2011)国際調査結果報告(概要) http://www.nier.go.jp/timss/2011/T11_gaiyou.pdf )科学技術に対する国民意識の変化に関する調査―イン ターネットによる月次意識調査および面接調査の結果か ら― http://hdl.handle.net/11035/1156 )中西敏昭,2003, 「 「総合的な学習の時間」における環境 調査体験活動」,兵庫県高校教育部会「生物部会誌」第 27巻 p. 9〜13 )市川伸一,1995, 「学習動機の構造と学習観との関連」 , 日本教育心理学会第37回総会発表論文集,p. 177 )国立教育政策研究所 2013 生きるための知識と技能 OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)2012年調査国際 結果報告書 明石書店 p. 21,p. 231. 系理系の影響などグループ間での多くの差異も検討しな ければならないところである。今後はこの点についても 分析をしていくつもりである。 最後に、現行の学習指導要領では、「言語活動の充実」 「道徳教育の充実」「体験活動の充実」 「小学校における 外国語活動」などをはじめ「理数教育の充実」も主な改 善事項にあげられている。 日本が科学技術立国として発展していくために、初等 中等学校での理科教育だけでなく、大学での理科教育、 卒業後の理科教育のあり方を見直し、「大人の理科離れ」. 参考文献 国立教育政策研究所 2004 生きるための知識と技能. OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)2003年調査国際 結果報告書 ぎょうせい 内田 治 2007 SPSS によるアンケートの多変量解析 東 京図書 左巻健男・市村浩 2009 授業に生かす!理科教育法 中学 校・高等学校編 東京書籍 国立教育政策研究所 2013 生きるための知識と技能 OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)2012年調査国際 結果報告書 明石書店. を防ぐことが大事である。大人が科学に興味・関心を示 せば、理系の職業に就く人も増え、子どもも大人といっ. (なかにし. としあき・関西学院大学教授). しょに科学に興味・関心を抱くはずである。 その結果、学校を卒業しても一般市民の科学技術に関 する意識が高まり、表の TIMSS2011のようなことに はならないと考えられる。そのためにも、教育への財政 的な支援や理系の職業人の社会的な地位の向上を図る政 策が必要になると思われる。. ― 74 ―. Page 76. 16/07/29 12:09.

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参照

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