目次 はじめに 1 開発援助とローカルガバナンス 1─1 開発援助におけるガバナンスの概念 1─2 「グッドガバナンス」概念の浸透と批判 1─3 ガバナンス研究とローカルガバナンス 2 政策実施過程の分析手法 2─1 政策対象と政策の実効性 2─2 政策実施過程分析の理論 2─3 仮説の設定 3 分析対象の概要 3─1 南太平洋島嶼地域の特性及び先行研究 3─2 フィジーの統治機構 3─3 フィジーの地方自治制度 3─4 政策実施過程におけるフィジーの地方 自治体の位置付け 4 固形廃棄物管理政策におけるフィジーの行 政機能 4─1 フィジー政府による固形廃棄物管理の 政策体系及び所管 4─2 地方レベルにおける固形廃棄物行政の 現状 4─3 廃棄物管理行政にかかわる主なアクター の関係性 (以下,本号) 5 事例分析によるフィジーにおけるローカル ガバナンスの把握 5─1 分析の手順 5─2 中央レベルでの固形廃棄物管理政策の 実施状況 5─3 地方自治体における固形廃棄物管理政 策の実施状況 5─4 政策実施過程における各アクターの特 徴 5─5 政策実施を促進させるその他の要素 6 結論 おわりに 参考文献 前章まで,ガバナンス研究や分析枠組の整理 を行ったうえで,分析対象であるフィジーの統 治機構や行政制度を確認し,固形廃棄物管理分 野における中央地方政府による政策実施の現状 及び関係アクターについて分析を行った.以下 では,フィジーにおけるローカルガバナンスの 把握に向け,固形廃棄物管理分野における政策 実施過程を事例に,政策立案主体である中央政 府,政策実施主体 で あ る 地方自治体,そ し て 政策実施に協力するコミュニティへのインタ ビュー調査を通じて,実施の有効性に寄与する
フィジーにおけるローカルガバナンスと
政策実施の有効性
──固形廃棄物管理政策を事例として── (2・完)
鴻 巣 玲 子
要素の分析を行う.そして,フィジーの事例か らは,住民に身近な政策実施の有効性は,行政 サービスを担うストリートレベルの公務員の能 力や政策実施にかかわるアクターの協力,対象 となるコミュニティにおける規範の存在といっ た要素に左右される,という結論が導かれるこ とを示す. 5 事例分析によるフィジーにおけるローカル ガバナンスの把握 5―1 分析の手順 ここでは,事例分析として,フィジーの固形 廃棄物管理分野における具体的なプログラムで ある 3R(Reduce, Reuse, Recycle)の政策実施 過程について,中央及び地方レベルの行政機構 及び政策実施内容,そしてアクター間の関係性 について分析を行う. 事例分析で取り上げる政策実施過程の主要な アクターは,中央レベルでは固形廃棄物管理政 策を立案し執行管理を行う環境局廃棄物管理担 当1),地方レベルではコミュニティに対しごみ 処理サービスの提供やごみ減量化の取組を行う 都市部の地方自治体の保健衛生担当部局,そし てサービスの受け手であるとともに,地域にお いて固形廃棄物管理の実施の一端を担い,3R の意識向上に向けた協力を行う地域コミュニ ティ及び学校である.これらのアクターを対象 に,主に市民の協力・参加によるローカルレベ ルでの政策実施というボトムアップ型活動の実 施状況についてインタビュー調査を通じて分析 し,フィジーのローカルガバナンスの特徴につ いて考察する. フィジーにおける 3R の取組は,JICA による 固形廃棄物管理政策に関する技術支援の一環と して導入されたもので,2008 年から 2016 年ま で環境局及び地方自治体をカウンターパートと して事業が実施された2).現在では 3R の取組は フィジー国内の全自治体に拡大しており,環境 局が作成中の次期廃棄物管理戦略ドラフトにお いても主要な位置付けとなっている3).約 8 年 間の JICA 及び受託事業者の活動内容について は,各プロジェクトの実施報告書や評価報告書 等を通じて概要確認が可能であるが,プロジェ クトにおいて策定された各種計画案が実際に公 式なものとして最終化されているのか否か,最 終化されている場合は支援先機関においてどの ような位置付けにあるのか,自治体担当職員は JICA の技術支援が終了した現在,何を規範と して業務を遂行しているのか,さらに,サービ スの受け手であるコミュニティは 3R の取組を 実際にどのように理解し実践しているのかな ど,ローカルレベルにおける取組の現状は残 念ながら報告書からは明らかではない.そのた め,実際に実施現場を確認したうえで実施に直 接関わっているアクターへのインタビュー調査 を実施し分析を行った4). 1)2017 年7月から環境省(Ministry of Environment) へと組織変更されたが,それまでは地方自治体・ 住宅・環境・インフラ・交通省(Ministry of Local Government, Housing, Environment, Infrastructure and Transport)の下部組織である環境局(Department of Environment)が担当であった.なお,環境担当 大臣に変更はない. 2)環境局,ラウトカ市役所及びナンディ町役場 の廃棄物管理にかかるキャパシティを強化するこ とを目的に,2008 年から 2012 年にかけて 4 期間に 分けて実施された「フィジー国廃棄物減量化・資 源化促進プロジェクト」及びこの技術協力の後継 プロジェクトとして太平洋地域環境計画(SPREP) 及びフィジーを含め大洋州 11 カ国を対象に実施さ れ た「大洋州地域廃棄物管理改善支援 プ ロ ジェク ト(J-PRISM)」である. 3)2017 年 10 月現地調査における環境局担当者 によるコメント.なお,ドラフト自体は外部には 公表されていない. 4)関係者への事前ヒアリングを 2017 年 6 月に 実施したうえで,各機関における固形廃棄物管理 及び 3R の取組に関する基本資料の提供を依頼し, 2017 年 10 月 23 日 か ら 27 日 ま で の 5 日間 の 日程 で統一形式の質問書を用いて自治体及びコミュニ ティの 3R 担当者へインタビュー調査を実施した.
5―2 中央レベルでの固形廃棄物管理政策の実 施状況 まず,中央レベルにおける固形廃棄物管理に関 連する政策の立案及び関連計画・法令等の執行は 環境局廃棄物管理担当が所掌し,担当者の最終学 歴は化学専攻の大学卒(Bachelor in Chemistry) である.この担当者は,地方自治体から 3R に 関する活動や住民の不法投棄の取り締まりに関 する報告を受けるほか,自治体との定例的な会 議の運営や事業者が環境汚染を行う恐れのある 経済活動を行う際の許可の申請手続を担当して いる. 環境局 が 所管 し て い る 廃棄物管理関連法規 は,2005 年制定 の 環境管理法,2007 年制定 の 環境管理規則(廃棄物処理及 び リ サ イ ク ル), 2008 年制定(2010 年改正)のごみ大統領令で ある.また,廃棄物管理に係る計画については, 国家廃棄物管理戦略 2011 の 次期戦略 の 策定作 業が行われているところである. しかしながら,2008 年度に策定された固形廃 棄物管理戦略 2008 及び 2011 年に改訂された同 戦略 2011,さらに現在策定作業中の 2016 年か ら 2026 年までをターゲットとした新戦略(非公 表)において,フィジー政府が認識している環 境課題,取組の優先順位,加盟している国際条 約等の内容は確認できるが,当初設定した目標 の多くは達成されていない状況である.特に政 策の立案及び執行を所管する立場として課題と 思われるのが,計画策定そのものがスケジュー ルどおりに行われていないことである.JICA による技術協力において予定されていた固形廃 棄物管理戦略 2011 の 改定及 び 3R 政策 の 最終 化が 2017 年 10 月の現地調査の時点で達成され ていないほか,2011 年の戦略で明記されてい た国連開発計画(UNDP)支援による容器デポ ジット制度の導入についても,法制化の準備段 階のまま施行されていない5).戦略の改定作業 も調査時点で既に 1 年遅れている. 一方で,進展している取組も散見される.そ のひとつはごみの不法投棄の取締り強化である. 各自治体に専属の不法投棄防止担当官(Litter Prevention Officer)が複数名配置され,住民か らの通報により現場を確認し不法投棄の証拠 (例えば自動車から投げ捨てた場合,その車両番 号等から不法投棄した人物)が特定できれば, 本人 あ て に 違反通知 を 送付 し,期限内 に 罰金 40FJD を納付させるという仕組が徹底されてい る.また,スーパーなどで商品の購入時に配布 されるビニール製レジ袋(プラスチックバッグ) の 有料化 の 取組 に つ い て,固形廃棄物管理戦 略 2011 では制度化についての記載があるのみ で進展が見られなかったが,2017 年 8 月に法 制化され執行が開始されている.この取組は, 2016 年 1 月 1 日に施行された環境課税法の改 正法「特定のサービス,品目,収入に対する環 境及び気候適応課税」に基づき,気候変動に応 じた取組としてサービス消費やポリエチレン 製レジ袋への課税が制度化されたものである. 法律 の 所管 は 歳入関税庁(Fiji Revenue and Customs Service)であるが,環境への負荷を 軽減させるためビニール製レジ袋の流通量を減 らし有機ごみ袋の導入を目指していた環境局の 政策目標もあわせて達成されることとなった. その他の環境局が所管する政策の執行状況を 整理すると,環境局は主体的な政策形成に向け た意欲は有しているものの,その立案内容の多 くは開発援助機関等の外部機関に依拠している ほか,立案された計画や法制度が最終的に施行 されていない状況である.したがって,環境局 の政策執行の達成度は低く,総体的な行政能力 は高くはないといえる.その背景には,業務の 5)2011 年環境管理規則(容器 デ ポ ジ ッ ト) (Environment Management(Container Deposit)
Regulation 2011)が 2012 年 1 月から施行される予 定であった(国際協力機構 2012: 29).複数の自治 体関係者によれば,大手飲料水メーカーがすでに 独自の容器回収制度を運用しており,その反対が 大きく導入できていない.
対象範囲に比して十分なスタッフがいないこと や,政府内の意思決定手続の長期化がある6). また,環境局は廃棄物管理行政の政策立案・執 行の管理者という立場にあり,関連情報の入手 は基本的に実施主体である自治体からの報告に 依拠するため,受動的な体制とならざるを得な い.一方で,前述のレジ袋への課税など,政府 内で地球環境対策として認知される政策につい ては,政治的・経済的理由から,環境局ではな く首相府及び経済関係省庁によるトップダウン で実施されている.したがって,固形廃棄物管 理政策の分野において,環境局は他省庁や自治 体と協働して政策の執行を図らざるを得ない立 場にあるといえる. 5―3 地方自治体における固形廃棄物管理政策 の実施状況 次に,政策実施主体である地方自治体の実施体 制について,フィジーの主要自治体であるスバ市 役所,ラウトカ市役所,ナンディ町役場を対象 に,各自治体の年次法人計画(Annual Corporate Plan),固形廃棄物管理マスタープラン,担当者 への聞き取り調査によって得た情報を用いて,そ れぞれの実施体制や関連計画,人材配置について 整理した. まず,首都スバ市における取組状況について である.スバ市役所の廃棄物管理の所管は保健 局であり,本庁及び作業場の職員約 30 名が従事 している.運営担当と衛生担当の 2 課体制の下, 主に運営担当がごみ収集や 3R の推進を,衛生 担当が不法投棄の取締りを担当している.地方 自治体に必置の衛生検査官(Health Inspector) の資格を持つ職員は CEO,保健局長,運営担当 課長,3R 担当者の 4 名おり,有資格者の運営担 当課長及 び 3R 担当者 の 2 名 に 健康教育担当者 及び不法投棄防止担当者の 2 名を加えた 4 名が チームを組み 3R の取組を総合的に推進してい る.スバ市役所は,JICA の J-PRISM による技術 協力開始前から独自に 3R に取り組んでおり,保 健局に配属された青年海外協力隊員と連携した 堆肥づくり,UNDP の支援による家庭用コンポ スト容器の購入・配布や,市内学校向けプログ ラムなどの取組を実施してきた.現在は,納税者 向けに補助金額を差し引いた価格で家庭用コン ポスト容器を積極的に販売するとともに,市場 ごみコンポストヤードの拡充,市内全学校にお ける「クリーンスクールプログラム」と呼ばれる Reduce, Reuse, Recycle 活動の実施など,3R の 取組を拡充させている.また,健康教育事業とし て,地域コミュニティとのごみ処理費用や感染 症に関する打ち合わせ,関係機関や職員・住民 向けの環境教育研修をそれぞれ 2 か月に一回程 度実施している.2018 年 2 月には,初の固形廃 棄物管理マスタープラン(Suva City Council Solid Waste Management Master Plan 2018─2027)を 策定したところである. 次に,フィジー第 2 の都市ラウトカ市の取組 状況についてである.ラウトカ市役所における 固形廃棄物管理部門は保健局であり,市役所本 庁では局長を含む 6 名の衛生検査官及び 4 名の 不法投棄防止担当者,秘書及びアメリカ平和部 隊ボランティアの合計 12 名体制で業務を行っ ている.また,スバ市役所とは異なり,3R の 取組は部門全体で推進している.この他に市が 運営を行うブナト(Vunato)最終処分場にも 職員がおり,処分場に出入りする車両の運搬廃 棄物の重量を測る計量台オペレーターや処分場 内の作業員として業務に従事している.ラウト カ 市役所 に 対 し て は,2008 年 か ら JICA の 対 フィジー技術支援協力が行われており,固形廃 棄物管理に係るマスタープラン及び 3R 推進ア クションプランが市職員の参加により作成済み である.ラウトカ市における現状の 3R の取組 は,スバ市役所と同様に補助金により価格を下 げた家庭用コンポスト容器の販売及びモニタリ ング,市場ごみのコンポスト化,学校における 6)現在,政府内 で の 計画策定等 の 際 の 最終意 思決定手続がより煩雑化しているという(2017 年 10 月時の環境局職員インタビュー結果).
クリーンスクールプログラムの実施,リサイク ルごみの分別推進である.これらは基本的に JICA の技術支援時から開始されたものである が,分別収集については,2009 年にパイロッ トプロジェクトを開始し,当初は住民の参加率 も 4 割程度と高かったものの,次第に参加率が 低迷し,最終的には 2015 年に中止されている. しかしながら 3R の認知度を向上していくこと は重要であることから,2016 年に市内中心部の 公園の一角にリサイクルセンター(ペットボト ル及びカン・ビンの分別回収コーナー)を設置 し,分別廃棄に協力的な住民の 3R 行動を後押 しするスキームを継続している.2011 年に取組 を開始したクリーンスクールプログラムについ ては,市内小中学校に加え市域外の近郊地域の 学校も対象としており,2017 年度は合計 32 校 が参加している.毎年優秀校には表彰を行って おり,トロフィー,コンポスト容器,3R 推進グッ ズなどを市側で副賞として提供するなどして, 市役所も学校側も積極的に取り組んでいる. 国際空港に近接するナンディ町は,スバ市役 所,ラウトカ市役所に比べればはるかに組織規模 が小さい.固形廃棄物管理を担当する環境・保健 局の所掌事務は,公衆衛生,廃棄物管理,環境管 理,不法投棄の取締り,食物の安全衛生であり, うち廃棄物管理に関する業務が占める割合は全体 の 3 分の 1 程度である.局全体の体制は,衛生検 査官の資格を持つ局長代理の下に,同じく衛生検 査官である職員が 2 名,不法投棄防止担当者が 2 名,その他雑用を担当する職員の 6 名に作業員 4 名を加えた合計 10 名の体制であり,3R の推進は 局長代理及び担当衛生検査官の 2 名が主に担って いる.ナンディ町役場においても,ラウトカ市役 所と同様,2008 年から JICA による技術協力が導 入されており,固形廃棄物管理に係るマスタープ ラン及び 3R 推進アクションプランが市職員の参 加により作成されている.ナンディ町では直営の 処分場を持たないことから,町内で収集した廃棄 物の最終処分費用には,輸送費及び処分場持ち 込み手数料等のコストが上乗せされており,他の 自治体よりもリサイクルごみの分別や家庭用コン ポスト容器を活用したごみの減量化へのインセン ティブが強く働いている.ナンディ町で排出され るごみの約 65% は有機ごみであるため,3R 推進 の取組として特に補助金を活用した家庭ごみのコ ンポスト容器販売による減量化推進に力を入れて おり,担当職員がコンポスト容器が設置されてい る家庭へ定期的に訪問し,モニタリングを通じて 住民と情報共有を行うなど,地域と顔の見える関 係性を築いている.また,クリーンスクールプロ グラムはナンディ町役場の担当者が JICA ボラン ティアと合同で考案し作成したものが現在全国 展開されるようになったものであり,町内外の学 校を対象に力を入れて実施している.教育年度当 初に各学校と意見交換を行ったうえで学校側から 計画書の提出を受け,その後学校訪問によるモニ タリングを 2 回実施し,年度末の 11 月に表彰す るというスケジュールに沿って事業を執行してお り,各学校の担当教員との信頼関係も築かれて いる. 以上のように各自治体における固形廃棄物管 理行政の執行体制及び 3R の取組に関する現状 を概観すると,それぞれの自治体の運営体制に 差はあるものの,人材配置や予算配置はどの自 治体でもある程度確保されていることが明らか である.さらに,自治体運営は本来であれば公 選議員で構成される議会及び議会選出首長が担 うところであるが,2006 年のクーデター後地方 選挙が実施されていない状況下であり,政府直 轄の特別行政官及び CEO が自治体運営を担い, 自治体幹部が実質的に政策審議に参加するなど, トップダウンによる意思決定が強化されている. また,各自治体では,コミュニティへの訪問や 関係者への説明会などを業務の基本として環境 教育の実施や 3R 活動の促進を担う担当者を複 数名配置するなど,ごみの減量化やリサイクル の推進に向け,地域と一緒に取り組んでいる.
5―4 政策実施過程における各アクターの特徴 5―4―1 3R の推進に従事する自治体職員の特 性及び意識 表 4 は,各自治体で 3R を担当する職員のポ スト,年齢,学歴及び専門知識,3R 活動への 従事年数についてまとめたものである.調査を 行った合計 6 名の職員のうち,衛生検査官の資 格を持って業務に従事している者は 5 名であ り,うち 4 名が同一大学での同一名称の学士の 学位「環境衛生」(Environmental Health)を 取得している.残る 1 名についても,同コース 設置前に国内の他大学で同等の学位を取得して いる.また,衛生検査官ではない職員も公衆衛 生(Public Health)の Diploma を取得しており, 3R の担当職員は全て関連施策の実施に必要な 学歴を有している. フィジーでは,衛生検査官となるためには最 低 で も 環境衛生分野 で Diploma の 学位 を 取得 し,衛生実務者として国家登録をしなければ業 務を行うことができない7).現在の会員数は 300 名前後であり,自治体側が毎年の登録料を負担 している.フィジー国内でこの学位を取得でき る高等教育機関は一校しかないことから,衛生 検査官の OB/OG としての人間関係は組織を超 えた人脈として形成されていると考えられる. また,5 名の衛生検査官の勤続年数は,一番若 い 30 代の職員でも 12 年,局長クラスでは 33 年 と,同一自治体内での経験年数が長い.彼ら(彼 女ら)はまた,JICA による技術協力の開始時か ら 3R の取組に直接関わっており,パイロットプ ロジェクトの実施や,そこで得られた教訓を踏 まえたマスタープラン作成等の政策形成,地域 住民や学校への説明・打ち合わせ等の企画・開 催など,3R 関連業務の従事経験も 3 年から 8 年程度有している.長期間同一自治体の専門ポ ストに在籍し環境衛生管理の業務にあたってい るということからも,彼ら(彼女ら)が必要な 専門知識と併せて所属自治体や地域に関する幅 広い情報を有し,自治体内外で幅広い人脈を形 成しながら経験値を高めていることが明らかで ある. また,3R 担当者に対するインタビュー調査 では,個人の自由意見という前提条件の下,ど のような行動規範や専門意識に基づき廃棄物管 理業務に従事しているかについても確認した. 表 5 は前述の 6 名の担当者からのコメント概要 を整理したものである.いずれの担当者も,自 らの行動と知識について前向きに評価してお り,他者へ積極的に働きかけようとする強い意 志を有している.また,自らがモニタリングを 行っている家庭用コンポスト容器の設置場所や 設置者について熟知し,リサイクル活動に積極 的に取り組む個人やコミュニティへの訪問を定 期的に行っており,プライドと情熱を持って活 動に従事している. このような士気の高さの背景には,これらの 担当者が,J-PRISM の事業を通じて環境局が 国内自治体を対象に定例的に実施する合同会 議に出席し,取組内容報告などを行う一方で, 3R の取組を開始して日が浅い他の自治体や大 洋州国向けの研修講師として,自らも技術協力 を行う機会があることなども強く影響している と考えられる.特に,3R の先進自治体とされ るラウトカ市役所及びナンディ町役場の担当職 員は,環境衛生を学ぶ学生を対象とした大学講 義への講師としての参加や,他の自治体からの 相談や問い合わせへの電話やメールによる対応 などを日常的に行っており,これらを通じて担 当職員自らの専門性に対する自信と誇りが醸成 されている. 5―4―2 学校における 3R 活動と担当教員の意識 次に,3R を地域レベルで実践するアクター の事例として,環境教育活動の一環としてク リーンスクールプログラムを実施している小中 学校 3 校の取組概要について整理した(表 6). 調査先の小中学校の教員は教育省から派遣され ている公務員であり,いずれも校長のリーダー
7)Allied Health Practitioners Decree 2011 第 6 条第 41 項及び第 9 条第 65 項.
表 4 3R 活動に従事する自治体職員の概要
ポスト 年 代 最終学歴 当該自治体での勤続経験
自治体 A
職員 1 Acting Health Inspector 40 代 Bachelor in Environmental Health 20 年 職員 2 Assistant Health Educator 30 代 Diploma in Public Health 3 年
自治体 B
職員 1 Director 50 代 Bachelor in Environmental
Science 33 年 職員 2 Senior Health Inspector 40 代 Bachelor in Environmental Health 17 年 自治体 C
職員 1 Senior Acting Health
Inspector 50 代
Bachelor in Environmental
Health 25 年 職員 2 Health Inspector 30 代 Diploma in Environmental
Health 12 年 出所 インタビュー調査より作成 表 5 3R 活動に従事する自治体職員の意識 年 代 当該自治体での勤続経験 行動規範や専門家意識について 関連法令や計画に関する 知識を十分有していると 思うか 自分の知識が政策実施に 役立っていると思うか 自治体 A 職員 1 40 代 20 年 学生時代から廃棄物管理 に関心を有している ― 20 年の勤務経験の中で 協力者も獲得し,組織内 でもチームでの活動が可 能となっている 職員 2 30 代 3 年 他人を教育する前にまず 自分から.自費で家庭用 コンポスト容器を購入し 実践 し て か ら コ ミュニ ティへ説明を行っている そう思う そう思う 自治体 B 職員 1 50 代 33 年 専門的なパブリック・リ レーションとステイクホ ル ダーと の 良好 な 関係, 清潔なまちであるという こと 十分そう思う 十分そう思う 職員 2 40 代 17 年 専門的に固形廃棄物管理 は持続可能な未来に不可 欠なものであると考えて おり,日常生活の一部で ある 熟知している そう思う 自治体 C 職員 1 50 代 25 年 JICA プロジェクトを通 じてパッションを持って 固形廃棄物管理に取り組 むようになり自分自身が 変化した ― 大学の講義で 3R の取組 を説明する機会もある 職員 2 30 代 12 年 JICA プロジェクトを通 じて真剣に取り組むよう になった 知らないと業務に ならない 十分そう思う 出所 インタビュー調査より作成
シップの下,3R 推進の担当教員を置き,彼ら を中心に熱心に 3R 活動に取り組んでいる. また,3R 担当教員が抱いている 3R 活動の重 要性や実施に際しての課題認識についてのコメ ントをまとめたものが表 7 である.どの教員も, 3R の取組の重要な要素としてごみの減量化や 身近な取組をあげており,クリーンスクールプ ログラムの目的をよく理解したうえで,学校の カリキュラムや状況に沿って工夫した取組を進 めている. 3 校とも地元自治体との関係は良好である が,特にナンディの学校は定期的に町役場の 担当職員とやりとりを行っており,問題が発生 した場合には職員に相談し,できること・でき ないことを協議したうえで双方が協力して解 決を図るなど,長期間に渡る協力の中で培わ れた対話による合意形成とそれに基づく信頼 関係が存在する.このような学校と担当者の間 の信頼関係構築の背景には,対等なパートナー シップに基づく継続した取組の蓄積に加え,担 当者個人の資質によるところも大きいと考えら れる8). 以上のように 3 自治体における学校の 3R の 取組状況等の調査により導き出された共通事項 8)通常の行政職員が法令・マニュアルや管理職 の指示に従って仕事を進めるのに対し,ストリート レベルの官僚の仕事は対人的な業務であり,人間関 係や現場の状況に応じた判断が求められ,職員の判 断や対応を尊重せざるを得ないため,組織方針や 規律と職員の裁量の調和が課題となる(磯崎 2014: 98).今回の事例では,明示的な職員の行動規範は 調査対象自治体において見当たらなかったが,職員 自身が管理的なポスト又は管理者と密接に行動して いるため,いわゆるストリートレベルの官僚のディ レンマには陥っていないと推察できる. 表 6 各学校の概要及び 3R の取組内容
学校の名称 MethodistChurchDudleyIntermidiate(Suva) LautokaAryaSamajPrimarySchool(Lautoka) NadiCentreforSpecialEducation(Nadi) 学校の概要 Class 7─8 の生徒 440 名及び教員等22 名 生徒の 9 割が先住系フィジー人 生徒 330 名 先住系 フィジー人及 び イ ン ド 系 フィジー人それぞれ 5 割の構成 政府が運営する特別支援学校 生徒 158 名,教員 11 名及び支援員 7 名 3R の担当教員 環境委員会の担当教員(学校美化,清掃,地球温暖化教育等を担当) 環境コーディネーター担当教員 クリーンスクールプロジェクト担当教員 担当教員の
年代及び学歴 30 代,Diploma in Primary Education 30 代,Bachelor of Education 20 代,Diploma in Primary Education
学校の 3R 取組期間 2015 年から取組開始昨年度のスバ参加校の中で第 1 位を獲得 2011 年から取組開始 過去 3 年連続してラウトカ参加 校の中で 1 位を獲得 過去数回 ナ ン ディ参加校 の 中 で 第 1 位を獲得 主な取組内容 ・担当教員 の ク ラ ス 生徒 3 名 が 委員会 で 生徒 リーダーと し て ボ ラ ン タ リーに 活動,年度末 に Relationship Award 表彰 ・毎年 Awareness 教室を実施 ・各教室内に分別ごみ箱を用意 ・環境担当の生徒はクラス内の分 別ごみを校内の分別ごみ箱へ整理 ・紙類やペットボトルなどのリ サイクルごみは校内の共通ごみ 箱へ廃棄 ・3R 活動で得られたお金は学校の 3R プロジェクトに充てている ・裏庭でコンポストを生成 ・焼却炉の使用を廃止 ・環境委員会 の 教員 6 名及 び 生 徒 6 名が 3R を担当 ・毎週新しいプロジェクトを実 施し,全ての生徒がクラス単位 で活動に参加している ・独自に学校内でリサイクルコ ンペティションを実施 ・学年ごとにコンポストを活用 して野菜を育てている ・廃材を活用して遊具や教育ツー ルを生徒と教員合同で作成 ・幅広い取組は教員自らインター ネットなどで先進事例を探して実 践している ・生徒のボランタリーな行動を 見守るよう心がけている ・COP23 Awareness にも関連し た取組 ・シラバスにも環境教育の記載 があるが学校で独自の取組を実 施 ・学校建築廃材 を 活用 し て 職業 訓練の一環として生徒がベンチ を製作 ・特別支援学校のため野菜の栽培 やごみの分別等には教員も従事 ・教員同士で知恵を出し合って廃 材を活用した教材を積極的に作成 ・Community Teacher Parents Supporting Meeting において意 見交換を実施 ・弁当を持参する際,保護者に容 器に入れて持たせるよう指導しご みを 100%出さない取組を実施 出所 インタビュー調査より作成
は,次のようなものである. ⑴ 各学校 で は 熱心 な 若手教員(30 歳前後) が 3R の推進を担当しており,3R の目的及び 取組内容を正確に理解し,環境学習の一環とし て積極的に授業や学校活動に取り入れている. ⑵ 3R 担当教員だけではなく校長や主任教員 も内容を理解し,学校全体で話し合いを行いな がら取組を進めている. ⑶ 数年以上に渡る取組により自治体との間 に良好な信頼関係が醸成されている. 特に ⑶ の学校と自治体との信頼関係の醸成 については,自治体 3R 担当職員の特性につい て確認したように,自治体側の実施体制が確立 されており,同じ職員が継続して学校を訪問す ることが可能となっているため,学校側の体制 が定期異動で変更となっても人間関係が後任に 引き継がれ,取組の質を低下させることがなく 移行することができていることが大きい. 5―4―3 地域コミュニティにおける取組とその 特性 次に,政策実施の協力者である地域コミュニ ティにおける取組状況について概説する.フィ ジーにおける地域コミュニティは,まずその種 類,次にその所在や民族構成,さらに所得階層 や世帯構成,周辺の社会インフラなどによって その特性や制度が大きく異なるため,ある政策 がその地域コミュニティでどのように実施され ているかを正確に把握するには,本来であれば, さまざまな要素の影響を考慮し,綿密に設計さ れた大規模な社会調査が必要である.しかしな がら,開発途上国であるフィジーでは,参考と なるようなコミュニティ全般に関する基礎調査 や国民意識調査は行われておらず,開発援助機 関等による実態把握のための調査が行われてい る程度である9).また,地域コミュニティにお ける廃棄物管理に関する先行研究についても, 表 7 各学校 3R 担当教員の取組に対する認識
学校の名称 MethodistChurchDudleyIntermidiate(Suva) LautokaAryaSamajPrimarySchool(Lautoka) NadiCentreforSpecialEducation(Nadi)
取組への考え方 学校と家庭との取組は真逆であり家庭の取組を変えないと 3R の 達成は困難 3R の取組によりごみを減らすこ とができるし,ごみから何かを 生み出すことができる ・世界のためにまず自分たちが できることからという気持ちで 取り組んでいる ・特別支援学校 だ が 他 の 学校 と 同様に競争してそれ以上のこと もできるということを 3R の取組 で体現している 課 題 ・生徒によって考え方が異なり, 協力しない生徒は協力しない ・隣接高校の生徒は取組に関わっ ていないためポイ捨てをする ・目に見える部分は改善されてき ているが人々の考え方を変えるに は時間がかかる ・法の執行も必要 保護者や事業者が廃材の調達に 協力してくれているが,廃タイ ヤなどの輸送費に実費がかかる ― 3R の取組で最も重要 と思うこと ごみの減量化 ごみの減量化と子どもたちの教育,大気汚染の減少 ― 3R の実践における 自治体の役割への評価 もともとカリキュラムにはあっ たが,スバ市役所のイニシアチ ブによる支援を受けて学校 3R に 取り組めるようになった 3R の取組は全国で実施されるべ き 町役場 と の 関係 は と て も よ い,できる範囲で協力してくれる 出所 インタビュー調査より作成 9)廃棄物管理分野に関する意識調査としては, EU の支援により SPREP がスバ市住民に対して 実施した廃棄物の意識に関する基礎調査(A-N-D Consultants 2000),JICA による技術協力の際のラ ウトカ市及びナンディ町パイロット地域住民への 意識調査がある.
SPREP による村落部廃棄物管理政策策定の参 考とするための調査報告書 (Lal, Tabunakawai, and Singh 2007),スバ市内のスクワッター地区 住民の廃棄物処理の実態に関する事例研究(Will 2007)があるが,これらは特定の地域の廃棄物 管理の実態把握を目的としたものであり,直接 の参考となるものではない.したがって本稿で は,現地調査 を 行った 4 種類 の 地域 コ ミュニ ティの概要を整理したうえで,現地 NGO が運 営する低所得者向けコミュニティにおける 3R の取組について詳しい分析を行い,目的の共有 手法や行動の規範となっている要素を抽出する. 表 8 は,スバ市内の先住系フィジー人村及び スクワッター地区,ラウトカ市郊外の NGO が 運営するコミュニティ,ナンディ町内の地域コ ミュニティの 4 つの地域コミュニティについ て,それぞれ種類,適用される地方自治制度, 運営手法,地方自治体の関与等について整理し たものである.まずスバ市の事例は伝統的ビ レッジとスクワッター地区である. 先住系フィジー人村のタマブア村は,スバ市 北部の丘陵部タマブア行政区に位置しており, 同行政区内には米国大使館や高級スーパーが立 地するほか,スバ港を臨む地域には外交官の住 居など高級住宅も多く立地している.タマブア 村の幹線道路向いや周辺は一般の住宅地である が,村の敷地は境界を示す標識で周辺と区切ら れ,敷地内には集会所を中心に簡素な住居が 立ち並び,先住系フィジー人の慣習を尊重した 運営が行われている.村では村の自治が尊重さ れ,集会所で開かれる意見交換には村の男性が 集まり,市役所職員も共に膝を突き合わせて協 議を進める.スバ市役所では,依頼があれば先 住民ビレッジへも所管課職員が夜間に出向いて 対応しているが,村内での打ち合わせは通常先 住民族の言語であるフィジー語10)でやりとりさ れることから,インド系フィジー人の職員は参 加せず先住系フィジー人の職員が対応している. 次に,スクワッターが居住するライワンガ・ ジットゥー地区については,内部に立ち入るこ とはできなかったが,整地されていない傾斜林 地にトタン組みの住居が無秩序に建てられ,歩 道上にスキップビンが無造作に置かれている状 況である.スクワッター地区では一般的にイン フラ整備も遅れており,衛生面や環境面でのリ スクも高い.ジットゥー地区では広いエリアに スキップビンは 2 つしか設置されておらず,道 路沿いに居住していない住民がスキップビンま でごみを捨てに来るには相当のインセンティブ が必要となる.スバ市内 3 か所のスクワッター 地区におけるごみの廃棄行動についてアンケー ト調査を行った A. ウィルの研究では,住民の ほとんどが,野焼き,埋め立て,地区内での投 棄などの従来の廃棄方法を行っており,その理 由として自宅の近くにごみ廃棄場所がないこと や,不注意,不安全な廃棄物投棄手法がもたら す結果に関する知識の欠如などがあると指摘し て い る (Will 2007: 132)11).ス バ 市役所 は,こ の地域で新たに建て替えられた低所得者向け団 地において 3R の取組を推進しようとしたが, 住民の協力が得られず計画が頓挫した経緯があ る. 一方,ナ ン ディ町 で は,住宅街 で あ る マー ティンタール地区ノーザンプレイスの数十世帯 で構成する住民組織の会長へのインタビュー調 査により,一般的な住宅地の住民コミュニティ における取組を確認した.この地域では戸建て で庭を有する家庭も多く,コンポスト容器を設 置して生ごみを堆肥化し,マンゴーやパパイヤ などの果物や草花の土壌改良に活用している. インタビュー対象者は自身が長年教員をしてお り,3R のコンセプトをよく理解し,町職員と 10)フィジーの公用語は,英語,フィジー語,ヒ ンドゥー語である. 11)この研究では,スバ市内の Lalilagi,Namadai, Muanivatu の 3 か所のスクワッター地区を対象に,各 地区 20 世帯程度,合計 67 世帯に対するインタビュー 調査を行っている.
の関係も非常に良好である. これらの事例からは,地域コミュニティの様 態により,自治体による政策実施手法や地域住 民との関わり方も大きく異なっていることが確 認できる.すなわち,先住系フィジー人の村に おいては,住民はほぼ先住系フィジー人であり, コミュニティ内に慣習的チーフや村長を中心と した意思決定の仕組や慣習が存在していること から,慣習的手続の中で廃棄物管理への取組も 進めていくこととなる.村を監督する機関は, 制度上は先住民関係省及び関連機関であるが, 実態では,自治体担当大臣からの指示によりス バ市役所も市域内外の村からの相談に応じて協 力を行っており,村側の主体性を踏まえて実施 内容が決定されている.したがって,先住系フィ ジー人の村では,基本的に村の自治体制に廃棄 物管理への対応がゆだねられることとなる. 一方,首都圏のスクワッター地区は,急速な 都市部の人口増加により適切な土地や住居,公 共サービスの整備が追い付かない状況下で拡 大している地区であり,住民は災害への脆弱 性を抱えながら貧弱なインフラの下での生活 を余儀なくされている (People’s Community Network 2016: 2).スクワッター地区における 主要な関心事項の中で廃棄物に関する優先順位 は低く12),スバ市役所による 3R の取組は進展 しなかったと考えられる. 表 8 現地調査を実施した地域コミュニティの概要 地域コミュニティの 所在 スバ市内 スバ市内 ラウトカ市郊外(市外) ナンディ町内 地域コミュニティの
名称 Tamavua Village Jittu Settlement, Raiwaqa Koroipita Northern Place Road, Martintar
地域コミュニティの 種類 先住系フィジー人村 スクワッタ―地区 市域外の借地に建設され た低所得者向けコミュニ ティ 住民コミュニティ 対象地域に適用され る地方自治制度 先住民関係法 地方自治体法 公衆衛生法他 地方自治体法 地域コミュニティの 運営手法 慣習的チーフ及び村長を中心とした伝統的自治 なし NGO が 設定 す る コ ミュ ニティ内の自治ルールを 順守 地域住民で構成する自治 組織,組織内で会長を選 出し毎月会議を開催 廃棄物管理に関する 自治体関与の概要 ・手数料を徴収してごみ 収集を実施 ・村の要請に基づき相談 等に随時対応 ・スキップビンを無償で 設置 ・手数料を徴収してごみ 収集を実施 ・3R の取組を指導 ・リサイクルごみを無償 回収 ・家庭用コンポスト容器 の無償供与 ・販売した家庭用コンポ スト容器のモニタリング ・コミュニティミーティ ングを通じた 3R の取組 の指導 廃棄物管理に関する 関係省庁等の関与 先住民関係省の関与はない 近接地区に低所得者向け 住宅を建設している住宅 供給公社と保健省,市役 所が合同で 3R 推進を実 施 なし 廃棄物に限定せず地域全 体について警察をはじめ とした諸機関が参加する 会議を定期的に開催 現地調査時点での 地域コミュニティに おける 3R に関する 取組概要及び課題 村の美化(排水溝の清掃, 樹木の植栽)に向けた支 援に関する相談 地方からの移住者が多く, 個人主義 が 強 く 3R の 取 組に協力的ではない ・適正な廃棄物処理が順 守事項の一つとなってい るため住民全体が協力 ・数軒で一つの家庭用コ ンポスト容器を共有し野 菜等を育成することを奨 励 ・家庭毎に家庭用コンポ スト容器を活用,リサイ クルごみ回収への協力 ・コミュニティミーティ ングを通じて住民の理解 が進展 出所 インタビュー調査より作成 12)PCN の調査では,フィジー国内の 28 のスク ワッターコミュニティが考える優先プロジェクトの
これに対し一般的な住宅地では,地域コミュ ニティ内において 3R の重要性に対する理解と 協力が得られる体制が整っていれば,コミュニ ティの主体性に応じて実施の有効性が高まると いえる.ナンディ町の事例では,地域コミュニ ティの会長は 2005 年から現在まで会長を務め ており,家庭用コンポストの活用もすでに 12 年に渡るなど,長期間積極的な取組を行ってい る.本島西部地域 で は,2006 年 の クーデ ター の発生後,警察が犯罪撲滅のためさまざまな関 係機関が参加する会議を開催しており,会長自 身もこれらに出席し,地域課題について意見交 換を行っている.自治体をはじめとした外部機 関とも定例的に情報共有を行う地域コミュニ ティであるからこそ,3R の活動に積極的に取 り組んでいるといえる. 自治体による政策実施が極めて有効に行われ ている事例として,ここではラウトカ市郊外の コロイピタ(Koroipita)と呼ばれるコミュニティ における 3R の取組内容を詳しく取り上げる. 本コミュニティは,1985 年にオーストラリア 人 Peter Drysdale 氏により設立されたフィジー の公益信託 “Model Towns Charitable Trust”13) (以下,「モデルタウン NGO」という.)が運営 する低所得者向け住宅提供プロジェクトにより 2002 年に開設されたコミュニティである.ラ ウトカ市外近郊の村から土地をリースしてモデ ルタウン NGO が運営を行っており,住民はコ ミュニティのルールに従って生活し,働ける年 代の者は職業訓練を受け,子どもは学校に通学 し,子どもが卒業して巣立つまでの間に世帯が 自立できるよう,共同生活を送りながら社会生 活を学び,生活能力を養う.このコミュニティ の最大の特徴は,モデルタウン NGO が導入す る独自のコミュニティガバナンスシステムで ある.モデルタウン NGO ではコミュニティ独 自の規則を定め,コミュニティ内の事務所に常 駐する人物を「コミュニティクラーク」,選挙 で選ばれた 18 ブロックのそれぞれの代表 18 名 を「カウンシルメンバー」としてコミュニティ カウンシルを設置し,疑似自治体のような仕組 でコミュニティを運営している.また,住民 は入居時に “Occupation License”と呼ばれる書 類に署名をし,コミュニティのルールを順守す る義務を負うこととなっており (Model Towns Charitable Trust 2017: 4),誰もがコミュニティ 内で何らかの役割を担うよう設計されている. コロイピタが立地する地域は “peri-urban” と 呼ばれる市境地域にあるため,本来であればラ ウトカ市役所ではなく保健省下の地方衛生機関 の管轄地域であるが,現状ではラウトカ市役所 が廃棄物管理行政の一環としてコロイピタコ ミュニティ内での 3R の推進を指導している. 集会所近くにはごみの分別センターが設置され ているほか,住民は市役所や JICA 研修修了生 から無償で提供された家庭用コンポスト容器を 活用して庭先でコンポストを生成し,育てた野 菜をコミュニティ内の市場で販売し売り上げ収 入を得ている.1 世帯あたり週 8FJD 徴収され るタウンフィーからラウトカ市役所へごみ処理 費用(ブナト最終処分場への処分手数料)の支 払いを行っているが,処分場への持ち込み総量 が減れば支払い手数料も減りコミュニティに残 る金額が増える,ということを 3R に取り組む インセンティブとしている.3R を含む廃棄物 の処理に関し,コロイピタコミュニティにおけ る住民と行政の役割分担を整理すると表 9 のよ うになる.コミュニティの自治運営を行ってい く仕組が厳格に担保されている分,自治体側の 役割よりコミュニティ側の自助として実施する うち,アクセス(道路や道)改善が最も多く(8 コ ミュニティ),廃棄物を優先プロジェクトとしてい るコミュニティは 4 コミュニティと,コミュニティ 施設や排水溝整備(各 3 コミュニティ)などと並 んで中程度である(People’s Community Network 2016: 41).
13)2011 年 に フィジー国内 で 公益信託団体 と して登録されており,それ以前は,ラウトカロー タリークラブの活動の一部である “Fiji Rotahomes Project” として活動を行っていた (Model Towns Charitable Trust 2017: 1).
役割の比重が高い. コロイピタにおける 3R の取組事例は,フィ ジー国内でも特徴的な事例である.モデルタウ ン NGO が運営するコミュニティという確立さ れた枠組の中で,入居者はルールを順守するこ と,コミュニティの一員としての責務を果たす こと,近隣と助け合いながら生活すること等を 入居時に誓約し,コミュニティに居住している 間はこれらに従うことを求められる.これをよ り一般的に言い換えれば,⑴ 地域コミュニティ 内に順守しなければならないルールが存在し, ⑵ そのルールを順守しなければならないこと 及びルールに従って行動することが生活の向上 につながるということが構成員に広く認知さ れ, ⑶ ルールを順守する仕組がある程度地域 コミュニティ内で担保される,という条件が整 えば,3R の取組は地域コミュニティにおいて 効果的に実施され得る,と推論することができ る. 5―4―4 3R 活動を支える各アクターと規範の 存在 小中学校における 3R の推進プログラム「ク リーンスクールプログラム」の事例は,3 校と もそれぞれの自治体のモニタリングによって各 学校が設定した目標が適正に実施されているこ とが確認されているベストプラクティスの事 例であった.同プログラムは当初のナンディ 町での取組開始から 10 年近くが経過し,スケ ジュール及び実施内容に関する枠組及び指導書 がすでに確立し,モニタリングを通じて客観的 に評価することが可能な制度として運営されて いる.学校教育のカリキュラムにも導入されて おり,学校側も環境教育の一環として取り組み やすい内容となっている.特に教員にとっては, 毎年優秀校が表彰されるというモチベーション の仕組が用意されていることに加え,教材だけ では伝えにくい環境保全の大切さについて,コ ンポストを使用した野菜づくりや廃棄物を再利 用した作品づくりなどによって生徒の自発的な 3R の取組を促し,実践を通じて生徒の認識や 行動が変わっていく様子を目の当たりにするこ とで,毎年工夫してプログラムに取り組むとい う動機付けが強く働いている.さらに廃棄物そ のものが教材となるため,3R 推進のための教 材や材料を購入する必要がなく実施コストがほ ぼかからないなど,実践を阻害する要素がほと んど存在しない.そのため,同プログラムに取 り組むためのハードルは低く,プログラムの目 的も達成しやすい.さらに,学校という個別の 規律的コミュニティの中では,校長と教員,教 員と生徒という上下の規律関係が存在するた め,決定された取組は学校全体で協力して実践 することが可能である.したがって,学校にお ける 3R の取組は,学校長のリーダーシップの 表 9 コロイピタコミュニティにおける廃棄物処理の役割分担 コロイピタコミュニティの役割 ・コミュニティ内のルールに基づく清掃やごみ排出に関 する自助努力の実施 ・コンポストを活用した自給自足,野菜販売 ・コ ミュニ ティコーディネーター(NGO 職員)の 監督 の下,グリーンスカウトと呼ばれる小学生(Year 9─13) 30 名によるごみの排出 ・リサイクルごみ分別支援 ラウトカ市役所の役割 ・コンポスト容器の無償提供 ・コンポストのモニタリングや分別方法など 3R に関す る活動の指導 ・自治体によるごみの無償での収集(※埋立処分場手 数料は徴収) 出所 インタビュー調査より作成
下,教員間で共通の理解と協力体制が確保され れば,比較的容易に実施が達成されると結論付 けることができる. 一方,地域コミュニティにおける 3R 活動の 推進は,コミュニティ内の住民の行動を規律す る仕組に実施の成果を依存せざるを得ない.そ れぞれの地域コミュニティにより,構成員を縛 るルールの有無やルールの強弱,順守しなかっ た場合の対応が異なる.例えば,ナンディ町と スバ市スクワッター地区の事例では個人の主体 性に実施の判断をゆだねているため,前者では すでに関係性が確立された地域コミュニティ団 体内において会長が率先して 3R を実施するこ とにより地域コミュニティ内での理解と協力が 進んでいるのに対し,後者での取組は失敗に終 わっている.今回の調査では伝統的ビレッジ内 部での 3R の取組状況を確認できなかったが, 伝統的ビレッジでは村ごとに村人の生活様式や 集団活動への協力状況も異なるため,基本的に は村人の行動様式を規定する村独自の規律が実 施の成否の前提条件となる.したがって,地域 コミュニティの種類によって適用される法制度 や担当機関が異なるフィジーのような開発途上 国では,構成員を対象とした規律が存在しない コミュニティや規律が弱いコミュニティにおい て,3R 活動の実施の成否は,個人の主体性と コミュニティ活動への参加を促す仕組に左右さ れるといえる. 5―5 政策実施を促進させるその他の要素 本稿では,立案された政策が実行されたこと をもって政策実施が有効であるとしており,数 値等をその判断基準に使用していない.一方, JICA の技術支援プログラムである J-PRISM 事 業における成果の確認では,家庭用コンポスト 容器の場合であれば住民への販売数を成果指 標として設定し,設定した販売目標数に対す る実際の販売数によって成果を判断している. J-PRISM 事業完了報告書によれば,2016 年 3 月 までのラウトカ市役所の家庭用コンポスト容器 の販売目標数は 350 基,2015 年 12 月時点での 販売実績は 339 基と,目標はほぼ達成されてい る.しかしながら,そのうち実際にモニタリン グが行われている数は 54 基に過ぎない(国際 協力機構・国際航業株式会社 2016:16).販売 後のコンポスト容器の経年ごとの利用率や住民 の 3R への認知度状況の変化などの確認は行わ れておらず,現状の実施状況においてアウトカ ムを定量的・定性的に把握することは極めて困 難である.実際には,固形廃棄物管理マスター プランで掲げている目標値の達成も現実的に困 難であり,担当職員もそれについては認識して いる. しかしながら,先の表 4 からも明らかなよう に,3R 担当職員による自らの役割についての 認識は肯定的である.ラウトカ市役所職員は, 市場コンポストの生成量から推計する有機ごみ の減量分とコンポスト販売収入により,3R の 取組がどの程度自治体のごみ処理費用の軽減に 貢献しているかを計算して「見える化」すると ともに,処分場にも毎日足を運んで組織内での データ管理や情報共有を密にしている.また, ナンディ町役場職員は,住民の取組状況が必ず しも十分ではないことを認識したうえで,個別 訪問により地域住民と密接な人間関係を構築し ながら家庭用コンポストのモニタリングを実施 している.担当職員の能力及び士気が極めて高 い現場では,関係アクターの 3R の取組への積 極性や実行力も高いなど,プラスの影響を強く 及ぼしていることも重要な点であり,個人の主 体性やコミュニティの活動の積極性を高める仕 組として,自治体職員との良好な信頼関係に基 づく情報の共有や活動内容の承認といった要素 が作用していると捉えることもできる.ただし, この点についてはより広範なサンプルを対象と した詳細調査が必要である. また,担当職員の積極性や情熱は,長期間に 渡る定期的な意見交換の場やノウハウの共有・ 伝授を通じてコミュニティのカウンターパート にも伝播し,さらにそれがコミュニティ内の環
境委員会や活動に直接かかわる構成員にも伝播 していくことで,コミュニティ全体での取組の 推進へとつながっている14).3R の取組が有効 に実施されているコミュニティでは,自治体職 員とコミュニティとの間に強固な信頼関係が醸 成されている.さらに,自治体職員の廃棄物管 理への熱い思いは,コミュニティだけではなく 他の自治体の職員間でも共有されている.彼ら (彼女ら)は,このような士気や情熱をどのよ うに維持しているのであろうか. その一つの要因として考えられるのが,3R に関する合同会議という全国的な情報共有の場 の存在である.合同会議とは,2008 年の JICA の技術協力開始時より,円滑なプロジェクト運 営等を目的に JICA 専門家及びラウトカ市役 所・ナンディ町役場のカウンターパート等によ る週例会議として運営されていたものが,続く J-PRISM において対象自治体が拡大し,2015 年以降は全 13 自治体を対象に実施されるよう になったものである (国際協力機構・国際航業 株式会社 2016).参加者は,合同会議への出席 だけではなく,研修への参加や説明会の開催, コンポスト生成研修や処分場の視察などの合同 開催などを通じて,専門知識の習得だけではな く,仲間意識も醸成していった.この会議の役 割については,J-PRISM によるカウンターパー トを対象とした第 2 回キャパシティ・アセスメ ントにおいても高く評価されている (国際協力 機構・国際航業株式会社 2016: 66).現在では, 合同会議の開催事務局である環境局が開催費用 や自治体職員の出張費用を負担し,全国の地方 自治体 3R 担当者を構成メンバーとして四半期 毎に会議を開催している.自治体の 3R 担当者 はこの場で最新の取組状況の報告や情報共有を 行い,環境局側はこの場を活用して各自治体の 取組状況を把握し,関係省庁である自治体局等 へ情報提供を行っている.自治体や環境局の 3R 担当者が定期的に顔を合わせ情報共有する 場が機能していることは,確実な政策実施を補 完する仕組として極めて有効である.フィジー の地方自治制度は画一的であり,財政規模の大 小にかかわらず各地方自治体の基本的な業務内 容は同一であるため,特に先進自治体の取組を 参考に新たな事業を開始したい自治体にとっ て,専門知識や事例を担当職員間で共有できる 場があることは重要である.また,実施内容を 変容し制度化する必要がある場合には,実施者 である自治体側から政策立案者である環境局に 対して政策形成に向けた提案を行い,政策変更 を促す役割としても機能している. 一方で,3R 担当職員の士気の高さや専門性 への自負は,自らの裁量や政策立案に対する立 場を示しているものではないことも指摘でき る.固形廃棄物行政における自治体の役割は あくまで国が立案する政策の「実施者」であ る.表 10 は,自治体廃棄物行政における環境 局との関係性及び自治体にとっての環境局の存 在について,先述の自治体職員 5 名の回答をま とめたものである.まず,環境局との関係性に ついては,4 名の職員から,「5(極めて良好) 又は「4(良好)」との回答を得た.同様の質 問に対する環境局職員の回答も「5(極めて良 好)」で あった.JICA に よ る 技術協力開始時 から現在までの間,両者が合同で 3R に関する 研修や会議を実施してきている経緯から,3R の取組に関する国と地方の関係者間に顔の見え る関係が構築され,互いに信頼関係が醸成され ていることが分かる.次に,自治体にとっての 環境局の存在について,5 名の自治体職員全て から,「政策立案者」として「リーダーシップ」 を発揮するのが環境局であり,自治体は固形廃 棄物管理の「実施者」であるとの回答を得た. 同様に環境局の職員に環境局にとっての自治体 の存在について尋ねたところ,「自治体は実施 14)具体的には,コンポスト容器の使用方法(ご みの投入方法等)や温度管理,コンポストを活用 した野菜・果物の育成,さらにはそれらを販売す ることで得られる現金収入などのサイクルと併せ, 担い手も行政から住民へとシフトしていく.
主体者として大変重要である」との回答を得て おり,環境局及び自治体の職員の双方が,政策 立案者及び実施者という明確な中央地方政府の 役割分担を認識していることが明らかである. これらを総合すると,フィジーにおける固形 廃棄物行政は,政策立案及び立法化などの制度 設計を国が担い,定められた制度の範囲内で自 治体が実施を担うという役割分担が固定化さ れ,その枠組認識の下で自治体による積極的か つ主体的な実施が行われていると整理するこ とができる.さらにこのことは,実施者である 自治体側の取組が自治体の条例立案や改正に反 映されるという政策経路が存在せず,実施結果 は,当該政策の担当省庁を通じて国レベルにお ける政策変容にフィードバックされる経路しか 存在していないことを示唆している.したがっ て,政策実施の結果を次の政策形成へと展開で きるか否かは,担当省庁の政策形成に関する能 力次第であるといえる. 6 結 論 本稿では,フィジーにおける固形廃棄物管理 政策について,政策実施過程の分析手法である ボトムアップ・アプローチを用いて,自治体及 びコミュニティにおける 3R の取組に関する政 策実施過程を確認し,実施の有効性に寄与する 要素の分析を行った.現地調査に基づく分析結 果からは,政策形成主体である環境局は,立案 された計画や規則が最終的に施行されていない などの執行能力の弱さから,他省庁や自治体と 協働して政策の執行にあたらざるを得ない立場 にあると結論付けることができる.一方,実 施主体である地方自治体は,運営体制に差はあ るものの,いずれの自治体にも必要な人員や予 算が配置されるなど十分な行政機能を有し,コ ミュニティの協力を得て組織全体で 3R の取組 を行っていること, 3R 担当者は衛生検査官と いう資格を有し,高い士気と専門能力を有して 業務にあたっていることが確認された.また, コミュニティについては,まず 3R に取り組む 学校にはいずれもカウンターパートが置かれ, 取組目的が十分に理解されたうえで環境学習の 一環として教員と生徒が一体となって取り組ん でおり,自治体担当者との間にも良好な信頼関 係が構築されている.地域コミュニティにおい ては,伝統的ビレッジに該当する場合やスク ワッター地区など地域の属性によって取組協力 に差が見られるが,地域コミュニティ内に順守 すべきルールがあり,それが構成員によって理 解され,順守される仕組が存在していれば政策 は有効に実施されている. 事例分析に向けて前稿で設定した仮説を検証 した結果,フィジーにおける固形廃棄物管理政 策は,次のような条件があれば実施が有効とな 表 10 環境局との関係性及び役割に関する自治体担当職員の認識 環境局との関係性の 評価(5 が最高) 自治体にとって環境局はどのような存在か 自治体 A 職員 1 5 環境局は政策策定者,地方自治体は実施者 職員 2 4 固形廃棄物管理行政における主導的な役割 自治体 B 職員 1 5 固形廃棄物管理そのものには深く関わっていないが 3R にはよく取り組んでいる 職員 2 5 3R 関連会議に関する指導,補助金,戦略, リーダーシップ 自治体 C 職員 2 ― 環境局は先導的役割であり,自治体は環境局の 実施部隊 出所 インタビュー調査より作成
るといえる. ⑴ 実施主体である自治体職員の士気と専門知 識,それを担保する行政機構 政策の実施主体である地方自治体において, 実施担当者であるストリートレベルの公務員は 業務に必要な専門知識を有し,それを十分に活 用して高い士気を持って業務にあたっている. また,彼ら(彼女ら)は専門家ネットワークを 形成し,ネットワークを通じて情報や知識の交 換を行っている.彼ら(彼女ら)を支える行政 組織が存在し,基本的な行政機構として権限, 財源,責任のピラミッド型組織という基本構造 が機能していれば,民主政治のガバナンスが確 立されていなくても政策の有効な実施は可能で ある. ⑵ 自治体職員とコミュニティとの間の信頼関 係の存在 政策実施の対象となるコミュニティにおい て,コミュニティ側のカウンターパートが政策 目的や取組内容を正確に理解し,自治体職員と コミュニティとの間に信頼関係が醸成され,コ ミュニティに政策実施への協力体制が構築され ていれば,政策実施の有効性は高まる. ⑶ コミュニティ内における規範の存在とその 役割 コミュニティの構成員間に行動規範(ルール) が形成され,その順守の重要性が構成員に十分 理解されているとともに,順守を担保する仕組 がコミュニティ内に構築されており,十分に機 能していれば,政策実施の有効性が高まる. さらにフィジーの廃棄物管理行政に見る中央 地方政府関係の政策実施に対する影響につい て,次のように結論付けた. ⑷ フィジーの中央地方政府関係は法体系的に は中央集権的であるが,個別の政策実施を 地方自治体にゆだねている場合には,地方 政府が政策実施に強い影響力を持ちうる. まず,現在のフィジーでは,政府による自治 体の直接統制や機能強化が進んでいる.地方自 治体と主たる所管庁である地方自治体局は上下 の関係にあり,自治体は定められた枠の中で行 政活動を行っている.次に,廃棄物行政におけ る中央政府の省庁関係は,所管局である環境局 が省庁の中で強い調整能力を有しておらず,所 管業務の執行力も弱い.3R の取組にあたって は,環境局は政策決定者,地方自治体は政策実 施者,という明確な役割分担があるが,実質的 には環境局と地方自治体の水平的な協力関係に 基づいて政策実施が行われている.さらに,地 方政府レベルでは,地方自治体は政策実施主体 としてはもとより,関係アクター間の協力関係 を引き出す調整機関として自治体の領域を超え て主体性を発揮している.このように,地方自 治体が多様な地域コミュニティや関係省庁と連 携し,所管する領域を超えて政策実施に対応し ているローカルガバナンスの現状を踏まえる と,廃棄物行政を担う地方自治体の活動領域は 法体系から確認できる領域よりはるかに広いと いえる.これらのことから,政策分野によって は,地方政府は政策実施効果に強い影響力を持 つということができる. 以上のように,事例分析を通じて政策実施の 有効性に寄与する条件について仮説を検証する ことができた.次に,「グッドガバナンス」の 要素と政策実施の有効性への関係については, 次のように結論付けることができる. ⑸ 「グッドガバナンス」と政策実施の有効性 の関係 政策実施の有効性は,「グッドガバナンス」 概念を構成する諸条件ではなく,地域に固有の ガバナンス(ローカルガバナンス)に左右され る. 事例分析からは,フィジーでは地方自治体へ の権限委譲は進んでおらず,地方自治制度上は 地方分権から逆行している状態であること,し かしながら,廃棄物管理政策分野では,環境局 の能力が低く,自治体側が主体的な調整機能を 果たしながら政策実施を担っていることが確認 された.このことから,フィジーでは地方自治 の本来の趣旨からではなく,機能面において地