• 検索結果がありません。

―― 香川県観音寺市五郷地区を対象として ――

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "―― 香川県観音寺市五郷地区を対象として ――"

Copied!
41
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

中山間地における地域資源保全に向けた 住民意識調査と活用策検討

―― 香川県観音寺市五郷地区を対象として ――

西 成 典 久

.は じ め に

県内中山間地に位置する五郷地区(観音寺市)では,近年の人口減少や高齢 化の進行に伴い,地域の活力が低下しつつある。五郷地区には,自然環境・文 化資源等といった農村地域の有する公益的な役割

!

や様々な地域資源

"

が存在して いるが,今後,そのような資源を地域の活性化にどう結びつけていくかが重要 な課題となっている。また,近年( 年度)の市町村合併により, 年続 いた五郷小学校が廃校となり,五郷地区は教育機関の要を失うとともに,小学 校を介した大人同士のつながりも霧散する状況となり始めている。そこで本調 査では,五郷地区における地域資源の現状把握および住民の地域づくりに対す る意識調査を実施し,地域資源の保全・活用を通じた地域活性化策の検討を行 うことを目的とする。

以下, 章では五郷地区の地理歴史,人口推移,地区の現状と課題を整理す

( ) ここでいう農村の公益的役割とは,農業を通じた農作物の供給のみならず,雨水を一 時的に水田や畑にためる洪水防止機能,土砂流出防止機能,その他にも,地下水の涵養,

温暖化の緩和,生態系の保全,文化の伝承,農村景観の保全,などが挙げられる。

( ) 日本国語大辞典によれば,「資源」とは「ある目的に利用され得る物資や人材」と定 義されている。また,経済産業省は地域資源活用事業( )のなかで,「地域資源」と は,「地域の特産物として相当程度認識されている農林水産物,鉱工業品及びその生産 技術,観光資源」としている。本稿では,「資源」はそれを捉えようとする主体(およ び社会的背景)によってその価値は変化しうる,という前提を踏まえたうえで,「地域 資源」とは「ある目的に利用されうる地域の環境,食,文化といった有形・無形の所産」

と定義したい。

(2)

五郷地区

る。 章では,地区の活性化に向けた住民の意識調査および地域資源に対する 認識をアンケートにより把握する。 章では,前章でのアンケート調査および 現地踏査により,それぞれの集落に残る地域資源を整理する。 章では,これ らの調査を受けて,地域資源の保全・活用に向けた活性化策の考察を行う。

.五郷の地域概要

− .地理・歴史

五郷地区の歴史は古く,少なくとも中世から山郷の暮らしが続いている。五 郷という正式な地名は明治以降につけられ,それ以前は五箇山という地名で呼 ばれていた。五郷,五箇山という地名のごとく,五つの集落を総称してそのよ うに地名がつけられた

!

。それぞれの集落は,井関,内野々,田野々,有木・落

( ) 大野原町誌編纂委員会( )『新修大野原町誌』大野原町,P.

( ) 国土地理院による電子国土

Web

の地図画像( 万分の 地形図)に一部加筆。

地図 五郷地区の位置"

(3)

合,海老済・石砂という名の集落で,五郷・五箇山としてのまとまりは,少な くとも江戸時代中期から存在しており,その発生は丸亀藩が五つの集落を管理 するために,五郷・五箇山としてのまとまりがつくられたと考えられる。それ ぞれの集落は,その履歴からして異なる歴史と文化を有している。

五郷は地理的に柞田川上流域に位置し,現在は井関池,豊稔池,五郷ダムと つの水瓶が存在している。それぞれつくられた年代は異なり,井関池は 年,豊稔池は 年,五郷ダムは 年に完成している。特に,井関池が下 流の大野原地域に果たした役割は大きく,江戸時代を通じて決壊と復旧を繰り 返すも,大野原地域に広大な耕地をつくりだすことに成功した。その後,近代 に入ってからは豊稔池と五郷ダムがつくられ,柞田川下流域に対して水が安定 供給されることとなり,大野原は香川県を代表する農業地帯となった。

なお, 年の大野原町と観音寺市の合併により,五郷という行政上の地 名は消失することとなる。また,この合併を受けて, 年に五郷小学校が 廃校となり,近代教育制度が始まってから長い間五郷の絆を結びつけてきた場 所が事実上失われることとなった。

− .人口調査

①現状

年 月現在の五郷地区の人口は, 名である。男女別年代別に集計す れば,以下の通りである。

五郷は全人口 名のうち, 歳以上が 名で全体の .%を占めてい る。ちなみに日本全体では, 歳以上が全人口の .%( 年)である。

また, 歳未満の人口でみれば,五郷は全人口の .%であるのに対し,

日本全体でいえば全人口の .%を占めている。五郷地区は,日本の中山間

地域にみられる典型的な高齢少子の人口構成となっている。図 および図 に

て,五郷地区と日本全体の年代別人口をグラフにて比較する。

(4)

70−79 60−69 50−59 40−49 30−39 20−29 10−19 80−

0−9

0 50 100 150 (人)

(歳)

年代 男 女 計

− 計

年代別五郷地区人口( 年 月)

五郷の年齢別人口( 年)

(5)

70−79 60−69 50−59 40−49 30−39 20−29 10−19 80−

0−9

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000

(千人)

(歳)

このグラフからも明らかなように,五郷地区は日本全体と比較して,高齢者 の割合が高く,若年者の割合が低い状況となっている。

続いて,五郷地区の各集落・各自治会の世帯数および人口を表 に示す。

世帯当たりの人口は五郷地区で . 人,日本全体では . 人( 年 月)となっており,日本全国と比べれば,五郷地区は 世帯当たりの人口は 多い水準となっている。なお,内野々に特別養護老人施設があるため, 世帯 人の世帯が多い状況となっており,実数としては五郷地区の 世帯当たり人 口は 人程度と考えられる。また,五郷地区のなかでも 世帯をきっている 自治会が つ存在していることがわかる。

日本の年齢別人口( 年)

(6)

②推移

続いて,五郷地区各集落のここ 年程度( 年〜 年)の人口推移を 表 および図 に示す。

五郷地区は 年から徐々に人口減少が進んでいるが,集落毎にみれば,

井関と内野々で人口が増加しており,そのぶん,田野々,有木・落合,海老 済・石砂では人口の減少具合が著しい。

特に,海老済では 年に 人だったのに比べ 年現在は 人と なっており,ここ 年間で %程度人口が減少している。また,田野々では 年 人に比べ 年は 人となっており, 年間で %程度人口 が減少している。

集落 自治会 世帯 男 女 計

海老済・石砂 海老済 海老済石砂 有木・落合 有木本村

有木落合

田野々

田野々上 田野々旭 田野々中 田野々下 尾合谷 内野々 内野々上

内野々下

井関

井関川東 井関谷上 井関谷下上 井関谷下下 井関団地 五郷

各集落における五郷地区の世帯・人口( 年 月)

(7)

1,080 1,060 1,040 1,020 1,000 980 960 940 1,100

920

1,087

1998

(人)

1,088

1999 2000 2001

1,068

2002 2003

1,067

2004

1,043

2005 2006

1,049

2007 2008

1,006

2009 2010

979

2011 (年)

1,071 1,055

1,074

1,036

1,015

996 年 海老済 有木落合 田野々 内野々 井関 五郷全体

五郷地区各集落の人口推移(

五郷地区の人口推移(

(8)

井関と内野々は地理的に観音寺市や国道 号ならびに高速道路と近接して おり,中山間地域とはいえ交通は至便な方である。一方で,田野々,有木・落 合,海老済・石砂の 集落は井関池や豊稔池といったダムの上流に位置してお り,井関から車で 分から 分程度山地に入ったところに位置している。こ うした地理的な要因が,人口減少著しい集落とそうではない集落の差だと考え られる。ちなみに,大正時代には , 人,戦後直後( 年)には , 人が五郷に住んでいた。戦後の一時期と比べて,人口が半数以下に減っている ことがわかる。

− .地域を取り巻く現状と課題

近年の五郷地区を取り巻く現状と課題は以下の つの点に集約できる。最初 の 点は日本全国の中山間地区に共通している問題であるが,最後の 点につ いては五郷地区が抱える特有の問題といえる。

ⅰ.人口減少・高齢少子化が進み,農山村としての持続可能性が問われている 前項でも見てきたように,一時は , 人を擁していた五郷地区の人口で あるが,現在( 年 月)は 人と往時の半分以下となっている。ここ 年程度の推移でみれば,井関,内野々では人口が微増しているが,田野々,

有木・落合,海老済・石砂では人口減少が顕著に見受けられ,五郷地区全体 としても人口減少が進んでいる。また,年齢構成も高齢化が進行しており,

歳以上の人口( 年時点)が五郷全体の .%(日本全体では .%)

となっている。こうした人口減少と高齢化の進行により,耕作放棄地や山林 の環境保全など,農山村としての持続可能性が問題視されている。

ⅱ.地区の基幹産業であったミカン栽培が構造的な不況に陥っている

五郷地区では,当初,薪や炭,木材など,林業を主産業としていたが,明

治に入ってから徐々にミカン栽培が広がり,戦後には五郷地区の基幹産業と

なった。しかし, 年代以降,アメリカとの貿易摩擦が激しくなり,農産

(9)

物の輸入自由化枠が広げられ,対米に対する農産物の輸出規制も進められ た。その結果,国内でも価格競争が深刻化し,ミカン栽培の売り上げ規模は 減少の一途を辿ることとなった。五郷の主産業が立ち行かなくなれば,若年 層の就業場所が減少し,結果として若年層の流出が進行していくことにな る。

ⅲ.近年,五郷地区のつながりが弱体化している

五郷小学校の廃校,五郷という地名の消失など,近年,五郷という地域の 存在基盤を揺るがす大きな出来事が起こった。 年 月, 年続いた五 郷小学校が廃校した。五郷に小学校がなくなったことは,単に五郷から子供 たちの教育機関がなくなったということだけを意味せず,子供たちを通じて 培ってきた大人たちのつながりも同時に失うこととなった。

また, 年 月,大野原町と観音寺市との合併により,住所から「五 郷」という地名がなくなることとなった。例えば,これまで「大野原町五郷 有木」と表記していた住所が「観音寺市大野原町有木」という表記になった。

こうした変化により,「五郷」という地名を介してゆるやかにつながってき た つの郷のアイデンティティ(存在基盤)が揺らいでいるといえよう。

こうした つの出来事を通じて,五郷がこれまで培ってきたつながりを,

今後,どのように担保していくかが問題視されている。

.住民意識調査

− .住民意識調査概要

本調査では,五郷地区住民の地区に対する問題意識や地域資源の認識を知る ため,全世帯に向けたアンケート調査を行った。アンケート調査の概要は以下 の通りである。

・アンケート対象者:五郷地区全世帯(回答者は各世帯代表者 人)

・調査期間:平成 年 月 日〜 月 日

(10)

・配布回収方法:各自治会長に全戸配布回収を依頼

アンケート調査は記述式を中心として構成し,具体的な質問項目は以下の通 りである。

『五郷地区地域資源アンケート調査内容』

ⅰ.ご自身についてお伺いします。

⑴ 性別 (男性・女性)

⑵ 年齢 ( 歳)※ 年 月 日時点での年齢

⑶ 同居している人数 ( 人)※ つの家にお住まいの人数

⑷ 所属している自治会の名前 ( )

ⅱ.五郷地区の現状についてお伺いします。

⑴ 五郷地区の現状は,以下のどれにあてはまると思いますか? 以下のう ち, つお選びください。

.非常に危機的 (すぐに対処しなければならない問題がある)

.危機的 (大きな問題が出始めている)

.やや危機的 (小さな問題はあるが大きな問題があるわけではない)

.なんとなく不安(気になる小さな問題が出始めている)

.健全な状態 (危機的状況はなく,それほど問題も見えない)

⑵ 現在の五郷地区では,どのような問題があるとお考えですか? 箇条書 きでご記入ください。

⑶ それでは逆に,五郷地区にはどのような魅力があるとお考えですか?

箇条書きでご記入ください。(住んでいて いいなぁ と思うところ,五

(11)

郷地区を訪れた人々にご紹介したい魅力,など)

⑷ 五郷地区の つの地区について,それぞれの特徴や魅力を言葉で表すな ら,どんな地域と言えますか? 文章でもキーワード(単語)でも結構で すので,以下にご記入ください。(複数回答可)

ⅲ.五郷地区の食と農についてお伺いします。

⑴ 「五郷地区ならではの味覚」と言えば何でしょう(料理名・食材・調理 法など箇条書きでご記入ください)

例:○○で採れたみかん,山菜の天ぷら,いたどり

⑵ 五郷地区で山や川から採れる食物・食材があれば,採れる時期や場所も 合わせてご紹介ください。

⑶ 農業をやっている方にお伺いします。

現在,どのような作物(林業,園芸,畜産含む)を作っていますか?

箇条書きでご記入ください。また,特に収入を得るために出荷している作 物があれば,以下にご記入ください。

ⅳ.今後宣伝していきたい五郷地区の魅力についてお伺いします。

⑴ お住まいの地区でオススメの場所や風景を教えてください。(箇条書き でご記入ください)

例:○○から見る夕日,○○から見る集落,○○川のホタル,など

⑵ お住まいの地区に伝わる祭りや風習,民話や伝説があれば教えてくださ い。(箇条書きでご記入ください)

例:雨乞い,魚初穂,など

(12)

⑶ お住まいの地区,もしくはご家族の中で,特技や技能をお持ちの方がい らっしゃれば,ご紹介ください。

例:竹細工名人,餅つき名人,山菜に詳しい,地区の歴史に詳しいなど

ⅴ.五郷地区のこれからについてお伺いします。

⑴ 年後,どのような五郷地区を望みますか?

五郷地区が向かうべき道筋,これからの五郷地区に必要なことなど,ご 自由にお書きください。

⑵ 旧五郷小学校の活用策について,どのような案が考えられますか?(複 数選択可)

.林間学校等の合宿所

.自然体験ができる宿泊施設

.五郷の食が味わえるレストラン

.五郷の特産物が買える店舗

.道の駅

.その他,思いつく案を以下に箇条書きでお書き下さい

⑶ これからの五郷地区を皆で一緒に考える会があるとすれば,そうした活 動にあなたは参加したいですか?( つお選びください)

.積極的に参加したい

.可能なかぎり参加したい

.興味はあるので情報はほしい

.あまり興味がない

(13)

− .住民意識調査の結果と考察

まず,アンケート調査対象の全世帯 世帯のうち,特別養護老人施設の世 帯数を除いた 世帯にアンケートを配布した。その結果, 世帯の回答を 得た。アンケート回収率は .%である。

男 女 無回答 計

井関 内野々 田野々 有木・落合 海老済・石砂

代 代 代 代 代 代 代 代 代 無回答 計 井関

内野々 田野々 有木・落合 海老済・石砂

人 人 人 人 人 人 人 人 無回答 計 井関

内野々 田野々 有木・落合 海老済・石砂

アンケート回答者の集落別男女別人数

アンケート回答者の年代別人数

アンケート回答者の世帯構成人数

(14)

50

40

30

20

10

1 健全な状態

2

9

60

(人)

海老済・石砂

0 2

なんとなく不安

24 13 6

3 やや危機的

19 3

8

4 危機的

17 10

66 77

4

5 非常に危機的

3

無回答

44 7 17

17 17

56

45 46

88

13

有木・落合 田野々 内野々 井関

2 2

44

11 11 11

99

88

33

ⅰ.アンケート回答者の属性

それでは,集落毎にアンケートを回収できた世帯の属性をみていく。

回答者は, 歳代の方が最も多く, 歳代から 歳代までの方で 人

(全回答者の .%)を占めている。回答者のうち,最も多い世帯は 人世帯 であった。 世帯当たりの人員を平均すれば,回答者は . 人であり,これ は日本全国の 世帯当たり人員 . 人を大きく上回っていることがわかる。

ⅱ.五郷地区の現状について

⑴ 問題意識度数

五郷地区に対する住民の問題意識の度数(P. ,ⅱ⑴参照)の結果を以下の グラフで示す。

総数では選択肢 の「なんとなく不安」が最も多く,次いで選択肢 の「危 機的」,選択肢 の「やや危機的」の順に多い結果となった。

五郷地区に対する住民の問題意識度数

(15)

80 70 60 50 40 30 20 10

(人) 90

0

まとまりが悪い 人柄がよい 五郷という地名の消失

4

治安が不安

自然破壊

22

災害の危険

病院が遠い

10

買物が不便

交通の便が悪い

3

勤め人が多い

4

経済活性化・収入減少

職場がない

30

鳥獣害

農林業の衰退

10

小学校・幼稚園の廃校

13

独居老人の増加

独身者増加・核家族化

過疎化・人口減

82

人口について

経済面

生活面

その他 環境

少子高齢化 その他

18 17

47 56

2 2 2

6 2 6 7

また,無回答を除いた回答者の問題意識度数平均値は . となった。この 数値は五郷地区の問題意識を平均的にみた数値で,五郷住民は五郷地区に対し て「やや危機的」までの認識はいかないまでも「なんとなく不安」という認識 はすでに超えていることがわかる。

集落別に見れば,有木・落合地区では選択肢 の「危機的」が最も多く,そ れ以外の集落では選択肢 の「なんとなく不安」が最も多い結果となった。

⑵ 五郷地区で感じる問題(自由記述)

回答は自由記述のため,結果をキーワードで抽出して集計し,問題種別ごと にグルーピングした結果,以下のようなグラフとなった。

五郷地区にどのような問題があるか?(グルーピング)

(16)

70 60 50 40 30 20 10 80

0

2

雪景色

2

井関池

2

5

軒組 2

五郷山公園

2

郷土を活かした努力

2

市の中心部に近い

2

瀬戸内海の景色

2

山の風景

3

ツツジ

3

五郷渓

3

新緑・若葉

3

星がよく見える

4

動物や野鳥が多い桜ホタル紅葉

10

おいしい農作物が採れる

11

旧五郷小学校︵桜・ツツジ︶

12

景観美・見晴らし

14

雲辺寺・ロープウェイ豊稔池︵ダム︶

23

法泉寺

49

住民の性格がよい

73

住みやすい

80

豊富な自然 その他

28 16

8 5 5

(人)

アンケートでは「少子高齢化」に関する問題記述が最も多い回答となった。

続いて,「過疎化・人口減」に関する記述が多く, 番目には耕作放棄地の増 加や後継者不足などによる「農林業の衰退」が問題であるとする回答者が多かっ た。

また,問題を種別ごとにグルーピングした結果,「少子高齢化」や「過疎化・

人口減」といった『人口動態』に問題を感じている回答者が最も多いことがわ かった。続いて,「農林業の衰退」,「鳥獣害」,「職場がない」といった『経済・

産業的な問題』が多く挙げられている。次に,「交通の便」 「買物が不便」といっ た『生活面』,「災害の危険」及び「自然破壊」といった『環境』に関する問題 点が挙げられている。

⑶ 五郷地区で感じる魅力(自由記述)

前項と同様に,自由記述の回答からキーワードを抽出して集計し,以下の結 果を得た。

五郷地区にはどのような魅力があるか?

(17)

景観美

山深い土地

平家落人伝説

住民の性格がよい

山深い土地

住民の性格がよい

豊稔池︵ダム︶

法泉寺

住みやすい

雲辺寺・ロープウェイ住民の性格がよい まとまりがある

住みやすい

井関池

五郷の中心地 住みやすい

19 15

23 27

10 18 35

11 10

海老済・石砂 有木・落合

田野々 内野々

井関

35

30 25 20 15 10 5 40

(人)

0

28 28

12

8 13

7

各地区のイメージ ベスト

多くの回答者が「豊富な自然」に関する魅力を挙げていた。続いて,空気が 澄んでいる,水がおいしいといった「住みやすさ」に関する魅力が多く挙げら れており,「住民の性格がよい」といった意見も多く目立ち,実際に住んでみ て初めてわかるような魅力が多く挙げられた。また,法泉寺や豊稔池,雲辺寺 ロープウェイといった,すでに観光資源として認識されているような魅力も多 く挙げられている。その他,「おいしい農産物」や「紅葉,桜,ホタル」など,

五郷の自然環境から生み出される魅力が挙げられており,五郷住民が認識する 五郷の魅力としては,すでに観光資源化されているものよりも,自分たちが暮 らしている環境そのものに対する魅力を見出していることがわかる。

⑷ つの集落それぞれの特徴や魅力(自由記述)

この問いの結果は,集落毎にキーワードを抽出し,それぞれの集落に対する イメージベスト をグラフ化した。

各集落に対するイメージベスト をまとめた。地理的条件や観光資源に対す

るイメージが多く挙げられている一方で,「住みやすい」という回答が少なか

(18)

50

40

30

20

10 60

(人)

0

2

サツマイモ

2

さつま汁

2

シイタケ

2

ヨモギ

2

ハス︵レンコン︶

2

ミニトマト

3

サトイモ

3

お寿し

3

お茶︵桜茶︶

3

だんご汁

3

クリ︵栗ご飯︶

3

キュウリ

4

野菜

4

フナ︵テッポウ︶

4

タマネギ

4

ツクシ

6

雑柑・柑橘類

6

山菜

7

マツタケ

10

ゼンマイ

12

イノシシ肉

15

フキ

15

タケノコタラノメ

20

コメ

33

イタドリ

46

ワラビ

ミカン その他

49

19

39

らず見受けられた。五郷の問題点として「交通の便が悪い,買物が不便」といっ た声がある中で,それでも「住みやすい」と考えている住民が一定数いると考 えられる。

ⅲ.五郷地区の食と農について

⑴ 五郷地区ならではの味覚(自由記述)

五郷地区ならではの味覚として,まずは五郷の基幹産業でもある「ミカン」,

続いて「ワラビ」や「イタドリ」が多く挙げられた。また,「その他」が多くを 占めているが,これは「アケビ」「ヤマウド」「トウフ汁」など 票しか入らな かった食が 種類も挙げられたことを示しており,数多くの食の種類が挙げ られた。また,集落別に見ると,田野々地区では「コメ」と答えた回答者が最 も多く,水がきれいで,寒暖の差が大きいことが特徴として挙げられていた。

五郷地区ならではの味覚

(19)

2

シジミ

2

コイ

2

ウメ

2

クリ

2

雑柑・柑橘類

3

エビ

3

ウド

3

シイタケ

3

山菜

4

フナ

4

イノシシ肉

4

カニ

5

ヨモギ

5

アケビアカマツツクシマツタケ

12

ミカン

13

ゼンマイフキタケノコ

21

タラノメイタドリ

69

ワラビ

23

その他

60 50 40 30 20 10 70

(人)

0

8

8 6

18 16 37

⑵ 自然から採れる食物・食材(自由記述)

「五郷地区で山や川から採れる食物・食材」では,「ワラビ」,「イタドリ」,

「タラノメ」といった山菜を挙げた回答者が多かった。作物としては「ミカン」

や「シイタケ」が挙げられた程度であった。

⑶ 現在の作物(林業,園芸,畜産含む)について(自由記述)

作物としては「コメ」,「ミカン」,「タマネギ」が特に多く挙げられ,「タマ ネギ」が意外にも多く作られていることがわかった。

また,コメ,タマネギ,ダイコンなどの「コメ・野菜」,ミカン,雑柑など の「果物」,シキビ,ハナマツなどの「花卉・花木」に分類してみると,総数 では「コメ・野菜」が最も多くなっている。集落別に見れば,海老済・石砂に 限ってシキビ,ハナマツといった「花卉・花木」が飛び抜けていることが特徴 的である。

「収入を得るために出荷している作物」については,「ミカン」,「タマネギ」

が多く挙げられている。「コメ」については,作物としては最も多く挙げられ

五郷地区で採れる食物・食材

(20)

コメ タマネギ 野菜︵特記なし︶ ダイ ハクサイ レタス・サニーレタス キャベツ ナスビ キュウリ 青ネギ ニンニク ホウレンソウ ナノハナ ハナマツ イチゴ ブロッコリー ニンジン モロヘイヤ トマト・ミニトマト シイタケ ワラビ ゴーヤ ヤマイモ サトイモ カブラ イモ類 カボチャ その他 ミカン 雑柑・柑橘類 クリ ウメ その他 シキビ・ハナシバ シャシャキ 花卉・園芸 キク その他 畜産 40

35 30 25 20 15 10 5 45

(人)

0 43

32 コメ・野菜

10 10 10

8 8 8 7 6 6 6 5 5 4 3 3 3 3 3 2 2 2 2 2 2 2 13

40

花卉・花木 果物

11 2 2

6 11

5 3 2 4 2

ハクサイ

モロヘイヤ

畜産

キュウリ

キャベツ

ブロッコリー

ハナマツ

トマト・ミニトマト

ニンニク

イチゴ

シャシャキ

ナノハナ

ナスビ

雑柑・柑橘類

青ネギ

シキビ・ハナシバ

レタス・サニーレタス

コメ

タマネギ

ミカン その他

2 2 2 2 2 3 2 3 3 4 3 5 4 5 6 5 7 12 24

20 15 10 5 25

(人)

0

8 23

ているものの,出荷作物としてはそれほど多く挙げられておらず,これは「コ メ」がおおむね自家消費用として作られているためと考えられる。

作っている作物

収入を得るために出荷している作物

(21)

平家落人伝説

三部神社︵モミジ︶

星空

五郷ダム

夜景

集落の景観

三島川之江の景観美

五郷山公園

五郷の山並み

旧五郷小学校︵桜・ツツジ︶

三豊平野の景観

法泉寺

井関池

夕日・朝日

瀬戸内海の景観

豊稔池

ホタル

雲辺寺・ロープウェイ その他

40 35 30 25 20 15 10 5

(人) 45

0

2 4 2 6 5 8 7 13 11

15 13 17 16 21 24 32 39

12 14

オススメの場所,風景

ⅳ.今後宣伝したい五郷地区の魅力について

⑴ お住まいの地区でオススメの場所や風景(自由記述)

五郷地区のオススメの場所・風景としては,「雲辺寺・ロープウェイ」から 見る風景が最も多く,次いで様々な場所で見られる「ホタル」が多く挙げられ た。「豊稔池」はダムの景観だけではなく,周囲の草花・紅葉などについても 指摘している回答者もいた。

オススメの場所・風景を集落別に見ると,井関,内野々は「雲辺寺・ロープ ウェイ」が多く挙げられているが,田野々,有木・落合,海老済・石砂では「ホ タル」が多く挙げられている。

また,特徴的な結果としては,「朝日・夕日」「井関池」「集落の景観」につ

いては,井関と内野々在住の回答者のみが挙げている。

(22)

40 30 20 10 50

(人)

0

2

犬神さん祭り

2

伝説・昔話︵弘法大師︶

2

夏祭り

2

七観音祭

2

辰巳正月

3

魚初穂

3

法泉寺

4

孫嫡子︵杓子︶神社祭り

4

瀧宮神社

8

平有盛伝説

百々手

雨乞い踊り

54

秋祭り・獅子舞

12

その他

15 27

地区に伝わる祭りや風習,民話や伝説など

⑵ お住まいの地区に伝わる祭りや風習,民話や伝説(自由記述)

それぞれの集落に伝わる祭りや風習,民話や伝説などでは,「秋祭り・獅子 舞」,「雨乞い踊り」,「百々手」を挙げる回答者が多かった。なお,「秋祭り・

獅子舞」の項目の中には,太鼓も含んでいる。

集落別に見れば,全ての地区で「秋祭り・獅子舞」が地域の伝統行事として 認識されていることがわかる。また,田野々では「雨乞い踊り」を一番に挙げ ており,有木・落合地区では多くの回答者が「平有盛伝説」を挙げている。

⑶ 五郷地区で特技や技能をお持ちの方(自由記述)

ここでは個人名は伏せるが,以下のような特技や技能を持っている名人が挙 げられた。(順不同)

すい星の発見者,郷土史家,平家の伝説,百々手的づくり 詩吟,スポーツ選手,書道,習字,パソコン

盆栽,旭窯,紙,藁を使った円座,しめ縄,古木細工,わら草履

(23)

30 25 20 15 10 5 35

(人)

0

2

災害の防止

森林資源の有効利用

16

自然保護

2

道の駅・産直市の整備

2

医療サービスを受けやすい地区

2

空家の利用

観光地のPR

コミュニティバスの改善

企業の誘致・職場の整備

5

経済的な発展︵所得の向上︶

7

特産物の開発・販売

7

買物をしやすくして欲しい

10

農業の活性化・鳥獣害防止

10

地域を挙げた事業︑行事

12

交通網の整備

2

伝統︵行事︶を引き継いでいく

2

五郷という名前の復活

活気のある山間

5

教育センターの有効利用

7

小学校の復活

暮らし 経済面 環境

平和で静かな山村であること

高齢者が暮らしやすい町

17

人口の増加・過疎化の抑止

17

地区民のふれあいの強化

32

若者・子供が暮らしやすい町

7

その他

3 3

3 4 3

9 14

年後,どのような五郷地区を望むか

うどん,しいたけ,いちご,豆腐,ミカン,イタドリ料理,そば打,餅つ き,シクラメン

ⅴ.五郷地区のこれからについて

⑴ 年後,どのような五郷地区を望みますか?(自由記述)

五郷地区が向かうべき道筋,これからの五郷地区に必要なことなど,ご自由 にお書きください。

「 年後,どのような五郷地区を望むか」については,「若者・子供が暮ら

しやすい町」が最も多く,続いて「地区民のふれあいの強化」,同数で「人口

の増加・過疎化の防止」と回答した方が多かった。 歳以上の人口が全人口

の 割を占める五郷地区において,子供や若者が暮らし続けられる環境をどの

ように生み出すかが大きな課題として認識されている。また,「地区民のふれ

あいの強化」が多く挙げられているが,これは五郷小学校が廃校したことによ

(24)

80 70 60 50 40 30 20 10 90

(人)

0

53

1 合宿所

80

2 宿泊施設

29

3 レストラン

43

4 店舗

5 道の駅

48

6 その他

45

無回答

36

旧五郷小学校の活用策

り,子供を中心とした五郷地区の様々な催しが減ってしまったことに つの原 因があると考えられる。

また,回答をそれぞれ『暮らし』 『経済面』 『環境』としてグルーピングした。

その結果,『暮らし』と『経済面』に関する回答割合が圧倒的に多いことがわ かる。

⑵ 旧五郷小学校の活用策について,どのような案が考えられますか?(複 数選択可)

.林間学校等の合宿所

.自然体験ができる宿泊施設

.五郷の食が味わえるレストラン

.五郷の特産物が買える店舗

.道の駅

.その他,思いつく案を以下に箇条書きでお書き下さい

(25)

1

入浴施設

1

図書館

1

店舗︵フリマ︶

1

児童クラブ

美術館

5

文化センター

7

小学校の復活

12

地区民の交流場所

高齢者のための施設

1

産直市の拠点

20 15 10 5 25

0

(人)

4 23

旧五郷小学校の活用策(その他の記述内容)

「旧五郷小学校の活用策」では,選択肢 の「自然体験ができる宿泊施設」が 最も多く,続いて「林間学校等の合宿所」が多い結果となった。レストランや 店舗,道の駅に比べて宿泊を伴う利用方法に支持が広まった。

続いて,選択肢 の「その他」で記述された内容を示す。

その他の内訳を見れば,福祉施設や老人ホームなどの「高齢者のための施 設」,「地区民の交流場所」が多い結果となった。「小学校の復活」を望む声も 少なからず認められた。

⑶ これからの五郷地区を皆で一緒に考える会があるとすれば,そうした活 動にあなたは参加したいですか?( つお選びください)

.積極的に参加したい

.可能なかぎり参加したい

.興味はあるので情報はほしい

.あまり興味がない

(26)

1 積極的に参加

5 4 2 3 2 2

4

2 可能なかぎり参加

21 11 11 15 7 88

11

3 情報はほしい

30 11 11 12 2 44

11

4 あまり興味がない

12 6 5 44

6

無回答

10

5 3

2 2

5

海老済・石砂 有木・落合 田野々 内野々 井関 50

40 30 20 10 60

(人)

0

五郷地区の将来を考える活動に参加したいかについては,選択肢 の「可能 なかぎり参加したい」が最も多く,続いて「興味はあるので情報は欲しい」が 多い結果となった。

特筆すべきは,「積極的に参加したい」と回答した方が 名おり,集落別に みれば各集落からまんべんなく「積極的に参加したい」と回答した方が存在し ていることである。

以上,五郷地区の住民アンケート調査の結果と考察を示した。

.地域資源調査

ここでは,五郷で行った独自のフィールド調査と五郷地区住民に対するアン ケート結果をもとにまとめる。以後,五郷地区全体の資源と五郷各集落の資源 に分けて記述する。

− .五郷地区全体の資源

五郷地区は つの山村が集まって つの地区を形成しており,程度の差はあ

五郷地区の将来を考える活動に参加したいか(集落別)

(27)

れ,五郷地区は山とともに暮らしを続けてきた。五郷地区全体の資源は,この 山と人の暮らしの間に存在しているといえる。具体的な資源としては,以下に 掲げる。

①五郷地区全域で採れる山菜,果物,川の幸など

・春

ワラビ,ゼンマイ,イタドリ,タラノメ,さんしょう(木の芽),フキ,

タケノコ,ウド,ツクシ,フキノトウ,ヨモギ アカマツ(川魚),ハゼ,川エビ( 〜 月)

・夏

ミョウガ,ヤマモモ,ナシ ウナギ

・秋

カキ,ミカン,アケビ,マツタケ,シイタケ,クリ カニ,モクズカニ

・冬

ウメ,ナシ フナ,コイ

山菜は五郷地区全域で採れる。山が荒れているため,イノシシやハクビシン などに農作物を荒らされる獣害が多発しているのが問題である。一方,イノシ シを捕まえ,シシ鍋などにして食べている。

また,五郷地区には「魚初穂(さかなばっつお)」という風習があった。魚 初穂とは,五郷地区に嫁に来た女性が, 月に五郷地区でとれた初物の魚を,

お礼として実家に持っていく慣習である。近年はこうした慣習もなくなりつつ

ある。

(28)

②五郷地区の郷土料理

・さつま汁(五郷の人は略して「さつま」と呼ぶ)

鯛の身をばらばらにほぐし,すり鉢ですりつぶす。味噌を加えて混ぜる。

鯛のあらで出汁をとり,この出汁を加えて混ぜる。最後にあつあつのご飯に のせて食べる。

・だんご汁

昔は住民の主食だった。五郷地区でも小麦は作られていた。里芋(ずいき)

とかんぴょうを煮こんだもの。これを母親に飲ませると母乳がよく出ると言 われる。

− .五郷各集落の地域資源

続いて,五郷の集落毎に地域資源を挙げていく。

(29)

①井関

五郷の玄関口となる集落で,江戸時代には阿波や伊予との往来を管理する番 所が設けられていた。五郷が栄えていた頃には,役場,診療所,郵便局,お店 があり,五郷銀座とも呼ばれていた。五郷地区の中心的存在であった五郷小学 校があり, 年の廃校以来,小学校校舎は観音寺市の教育センターが設置 されている。大野原扇状地の要に位置しており,下流の農地を潤す井関池があ る。龍宮神社を中心として,のどかな農村風景が広がっている。

・井関池の歴史と景観美

井関池は江戸時代初期,西島八兵衛によって築造され,これまで荒野で あった土地が農地へと開墾された。現在,大野原は香川を代表する一大農業 地帯であるが,こうした大野原農業の発展は,この井関池によって生み出さ れたといえる。井関池の堤防にはツツジが , 株植えられている。井関池 の桜もきれいに咲く。冬は池のほとりに目白が来て,爽やかである。

・五郷地区の中心地

井関は,江戸の頃から五郷地区の「行政的役割」を担ってきた。また,五 郷地区の玄関口とも言われる。戦前から戦後,役場,診療所,郵便局,バス 停,お店がたくさん並んでいた(五郷銀座,古い街並)。旧五郷小学校は,

現在,観音寺市の教育センターとなっており,不登校生徒の学び直しの場と なっている。

・四季折々の景観美

旧五郷小学校の前に植えられている桜の木(吉野桜)は美しく有名である。

静かでのんびりとしており,散歩に適している道(古道など)がたくさんあ る。山の中に入り込む前の集落であり,池や橋が魅力。

・水神様(龍王宮)

水神様を祭っていた祠を元の場所から移動したところ,水組合長の 人が

次々と原因不明の死をとげる。祠を元の位置に戻し,きちんとお祀りをした

ところ,祟りはおさまったと言われている。

(30)

・孫嫡子神社

孫嫡子神社は,昔から天然痘を癒す神社として有名である。また,孫嫡子 神社は日本に二つしかなく,もう一つは福井県今里市にある。

・ 軒組制度が残っている。

・龍宮神社の秋祭り,井関獅子舞,子供太鼓

②内野々

緩やかな傾斜地に広がる集落で,大野原を前景として伊吹島と燧灘に沈む夕 日が眺められる絶景ポイントが多い。四国八十八箇所の札所・雲辺寺まで行く ロープウェイがあり,ロープウェイ駅では地元の産品が一部販売されている。

明治 年,内野々村の藤川和之助がミカン栽培を手掛けたことが契機となっ て,五郷にミカン栽培が定着した。近年,内野々の三部神社にて,太鼓台を担 ぐ秋祭りが始められている。

・ミカン畑

ミカンは五郷全体の特産物であるが,内野々はミカン畑が多く目につく。

しかし現在は,住民の高齢化,後継者不足などにより,田畑は荒廃してい る。耕作放棄地の増加が深刻な問題となっている。

・タマネギ

内野々地区ではミカンの他にタマネギを出荷している農家が多い。

(31)

・段々畑,傾斜地の風景

内野々は柞田川の支流沿いの傾斜地に広がる集落で,以前は山林地であっ た場所を切り開いて集落が形成された。傾斜地のため,段々畑や眼下に広が る大野原の風景が眺められる。

・三部神社

三部神社からの風景。三部神社で行われている秋祭り。

・米

水がきれいなので,上質なお米ができる。

・雲辺寺ロープウェイ

雲辺寺ロープウェイから望む瀬戸内海の夕日は美しいと評判。また,駐車 場から見る燧灘も絶景。雲辺寺の雪景色も美しい。

・西山北尾からの風景

西山北尾から望む伊吹島,西山北尾から見る瀬戸大橋としまなみ海道の 橋,西山北尾から見る瀬戸内海と観音寺の夜景。

・内野々村池のホタル

ダムとは直結していない清流が残り,近年ホタルがよく見える。

・観音堂

寺子屋として使用していた。今は簡略化しているが,昔は地区であんこを 炊いて皆で食べたり,集会をしていた。月 回持ち回りで掃除をしている。

・トーチカ

日清・日露戦争のときの修練場。今もその跡がのこっている。見張り台の 跡もある。

・雲辺寺のスキー場

香川で唯一のスキー場。地元の人にはあまり利益はないとのこと。スキー 場の雪は人工雪のため,山の下にある内野々には寒風が吹く。

・正月の行事,しめ縄,門松,あん餅雑煮

月 日にくわ染めがあり,めざしの頭や柿をたんぼに供える(豊作祈

願)。 月 日は七草粥。ただこれは家庭により異なる。雑煮の中に七草を

(32)

入れる家庭もある。 月 日はとうど祭りがあり,朝に男が雑煮を作る。

③田野々

豊稔池ダムの上流,山中にあって盆地状の平野にたたずむ桃源郷のような集 落。その昔,弘法大師によって大伽藍が営造されようとした伝説が残ってい る。名刹法泉寺では,毎年もみじ祭りを催しており,色鮮やかな三色もみじを 目当てに多くの見物人で賑わっている。また,毎月第 日曜には田野々の入り 口付近にてやまびこ市が開かれており,地元産品が販売されている。ダムの上 流にあることから,水の流れが清らかにて,近年ではホタルの舞いが名物と なっている。

・柞田川上流のホタル

〜 月ごろが見頃。(豊稔池の上流から見るホタル)

・美しい桃源郷のような景観

豊稔池の上流,穏やかな山々に囲まれた盆地には,日本のふるさとを代表 するような美しい景観が広がる。

・法泉寺もみじ祭り

月 〜 日ごろ見頃。約 本のもみじの紅葉(三色もみじなど)が 見られ楽しめる。

・弘法大師伝説(谷,湧き水)

空海が田野々に大伽藍を営造しようとした伝説が残っている。

(33)

・田野々米

川鶴酒造と契約し,田野々で作った田野々産山田錦を使用して純米吟醸を 作っている。

・ミカン

昔はミカンの栽培が盛んだったが,現在は減少している。

・田野々の雨乞い踊り

香川県の指定無形民俗文化財に指定されている。

・山びこ市 (毎月第 日曜日 : 〜 : 豊稔池堤前広場)

生鮮野菜,果物,おはぎ,赤飯,コロッケ,じゃこ天,ポテト,大判,た こ判,ジュース,盆栽類,花,田野々米などが売られている。

・百々手祭(鎌倉神社)

家内安全,大漁,豊作を祈願して,的に向かって矢が射られる。全国的に は大人が矢を射るのが一般的だが,鎌倉神社では子供たちが矢をいる。昔は 男子のみだったが,現在は少子化のため,女子も矢を射っている。鎌倉神社 の百々手は,かわらけが取り付けられた大的に子供達が矢を射り,終わると お菓子等が入った袋をもらう。

・豊稔池石積式アーチダム

五郷で最も全国的に名の知れた観光資源であり,近代土木遺産。国の重要 文化財に指定されている。

・田野々パイロットの頂上から北側西側に観る瀬戸内海の風景

・四国中央市との境目から観る愛媛県東予の風景。県境から見る川之江の夜景

は絶景。

(34)

④有木・落合

時は源平合戦の頃,平有盛が隠れ住んだことからこの村の歴史が語り継がれ ている。五郷ダムの上流,山深い山中の西斜面に有木集落は存在している。落 合集落は五郷ダムの下流にあり,豊稔池水系と落ち合う谷間に佇んでいる。山 深い土地柄,ワラビ,タケノコ,ゼンマイ,イタドリなど豊富な山菜で溢れて いる。 月の第 日曜には,有木で採れたよもぎを使い,雲辺寺でよもぎもち のお接待をしている。

・有木住民の 割の住民は,名字に「平」がつく

屋島の源平合戦で敗れた平有盛が有木に隠れ住んでいたという言い伝えか ら,住民の名字の多くに「平」の漢字が入る。有木住民は一生懸命有盛の食 事の世話をしたことから,褒美として「平」を名乗ることを許された。

・三部神社の「阿弥陀如来像」「名剣小烏丸」「陣太鼓」

平有盛が屋島から逃れてきたときに携えてきたもの。平家落人伝説を証拠 付けている。「阿弥陀如来像」と「陣太鼓」は大切に保管されているが,「小 烏丸」は明治の頃に盗難にあい,現在も所在不明となっている。(この 点 が保管されていた場合,国の重要文化財に相当する。)

・「白色」を嫌った歴史

平家の旗が赤色で源氏の旗が白色だったことから,白色を嫌った歴史が語

り継がれている。五郷ダムにかかる有盛橋が赤色なのはそのため。また,有

(35)

盛が黍畑で討死したと言われることから,有木住民は決して黍畑を作らな かったといわれている。

・五郷ダムの景観

春,山桜が満開の五郷ダムの橋から見る風景。有木橋から見る紅葉。

・三部神社

地元の方からは「ありもりさん」と呼ばれている。秋祭りの獅子舞が有名。

・山菜

ワラビ,タケノコ,ゼンマイ,イタドリ,フキ,松茸,つくし,タラノ メ,豊富な山菜が採れる。

・イノシシの肉,シシ鍋

地元の方たちが趣味で狩猟をしている。捕まえ,血抜きをした後,シシ鍋 などにしている。

・お接待の習慣

月の第 日曜日に,有木で採れたよもぎを使い,雲辺寺でよもぎもちの お接待をしている。約 人に配布。

・大般若経

健康祈願・家内安全を祈るもの。

・シャシャキ,ハナマツの栽培

落合では深い山々に囲まれ,日当たりがあまり良くないことから,シャ シャキやハナマツを栽培している。

・前田川のホタル,魚

・魚初穂の慣習

(36)

⑤海老済・石砂

五郷ダムの上流,徳島と愛媛の県境に位置し,徳島に抜ける曼陀峠手前の谷 合に集落が広がる。谷間にあることから日差しが届きにくく農業には不向きで あるが,こうした地形条件を利用して,古くから神仏に供えるサカキ(シャ シャキ)やシキビ,ハナマツの栽培が盛んである。山菜も多く,春にはワラビ やタラノメ,夏にはミョウガが採れる。畑を荒らすイノシシを狩猟し,一部で はシシ肉の販売もしている。

・シャシャキ,シキビ,ハナマツの栽培

五郷地区の中でもっとも多く栽培している。これで生計をたてられるほど の規模。日当たりが悪い集落であるためシャシャキ,シキビ,ハナマツなど は良く育つが,農業には不向き。曼陀峠にシャシャキの群生地がある。

・四季折々の美しい景観

山に囲まれている集落であるため,四季折々の美しい景観を楽しめる。 (若 葉,紅葉,雪景色など)

・カジカカエル

清流域でしか生存しない「カジカカエル」が美しい声で鳴いているのが初 夏にきこえる。

・山菜

春にはワラビ,ゼンマイ,イタドリ,タラノメ,さんしょう(木の芽)が

(37)

採れ,夏にはミョウガが採れる。

・犬神大明神の祭り

その昔,犬を生け贄にして願掛けをした。生け贄になった犬の御霊を鎮め るお祭り。 年に一度行われ,旧 月 日にお祭りする。旧 月に行う 為,霜月祭りとも言う。荒神さんのお祭りであり男性のみ参加でき,女性は 参加できない。

・獅子舞

月第 日曜日,「青年」と呼ばれる 〜 歳くらいまでの男性が行う。

以前は 〜 歳くらいまでだった。

・捧賀神社のイチョウの木(海老済)

・ 県(香川,徳島,愛媛)の境である集落

・前田川のホタル(元温泉の橋周辺,自治会の中項の橋周辺)

・石砂観音様のもみじ

・一時期には温泉で賑わっていた。

.まとめと考察

本調査では,中山間地に位置する五郷地区を対象として,五郷が近年置かれ ている地域の現状を把握し,地区住民に対するアンケート調査およびヒアリン グ調査を伴う現地踏査を行った。

その結果,まず,五郷という地域に対する住民の危機意識を問題意識度数

(38)

90,000 80,000 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 100,000

0

(年)

収穫量(t)

200820072006200520042003200220012000199919981997199619951994199319921991199019891988198719861985198419831982198119801979197819771976197519741973197219711970196919681967196619651964196319621961196019591958195719561955 2009

( 段階評価)として数値化した結果,その平均値は . となった。この数値 は,問題意識度 (やや危機的)と問題意識度 (なんとなく不安)の間の数 値であり,地区住民は五郷地区に対して「やや危機的」までの認識はいかない までも「なんとなく不安」という認識はすでに超えているということがわかる。

集落別に見れば,有木・落合地区では選択肢 の「危機的」が最も多く,それ 以外の集落では選択肢 の「なんとなく不安」が最も多い結果となった。

特に近年,大野原町と観音寺市との合併を受けて,五郷という地名の消失,

五郷小学校の廃校という五郷地区のつながりを担保してきた基盤が失われる出 来事があった。少子高齢過疎化の進行とともに,こうした五郷地区のつながり が霧消していっている状況についても,地区住民の問題意識は共通している。

また,住民へのアンケート調査で五郷の問題点についてお伺いしたところ,

「高齢少子化」「過疎化」といったキーワードを記入する住民が最も多かった。

続いて,「農林業の衰退」「鳥獣害の増加」といった地域産業に関わる問題点の 指摘が多かった。

地域の基幹産業であるミカン栽培の売上は, 年代に入ってからその後下

香川県におけるミカン収穫量の推移(香川県水産統計年報より作成)

(39)

降曲線をたどっている(図 )。これは,ミカン栽培の生産技術改良によりど こでも生産可能となったことによる供給過多の市場状況,あるいは海外との貿 易摩擦による輸入自由化政策等が原因となっており,これは五郷だけの問題で はなく,日本の中山間地全体が抱えている地域産業の課題といえる。

地域で産業が興れば,確かに若者の就業場所も確保でき,若年層が減り続け るという問題も緩和されるであろう。しかし,中山間地全体が潤うような地域 産業を興すことは容易ではない。

五郷の定住人口は減り続け,しかも高齢少子化が進行している。定住人口を 増やすためには,移住政策あるいは少子化や育児に対する支援施策が必要とな る。しかし,これも最終的には地域での就業場所が問題となってくる。

地域での就業場所をつくる施策として,その地域に企業や工場を誘致する施 策も考えられうる。これまでにも,人口増加・経済成長の時代には,各地方に 企業や工場を誘致する施策がとられてきた。しかし,経営主体となる企業の業 績が悪化すれば,各地に配置された企業や工場はそのときの経営判断でなくな る危険性が常に存在しており,持続可能な施策とは言い難い。

章でみてきたように,五郷地区には多くの地域資源が存在している。こう した地域資源は,五つの集落がその発祥から現在まで培ってきた歴史と文化の 厚みがある。五郷にしかない,五郷のオリジナルの資源であるが,これらが地 域に存在しているだけでは,五郷の活性化に寄与することは難しい。

そこで,こうした地域資源を利活用し,結果として経済的な効果を生み出す 仕組みを考えていく必要がある。五郷に存在している地域資源の多くは,五郷 の長い歴史のなかで育まれてきたものであり,五郷地区が潜在的に有している ものであるがゆえに,すぐになくなるものではなく,持続可能な利活用が考え られうる。

ここで注目したいのは交流人口という概念である。日本全体の人口が中長期

的に減少・停滞するなかで,五郷の定住人口を増やすことは困難であったとし

ても,一時的に人々が五郷地区を訪れ,そこで経済活動を行う仕組みができれ

ば,五郷にあった既存の地域資源を活かしつつ,持続可能な経済活動を模索す

(40)

ることが可能なのではないか。交流人口を増やすためには,外部の人々にわざ わざ五郷まで訪れてもらう魅力を創り出し,それを訪れてくれるであろう人々 に知ってもらわなければならない。つまり,「魅力を生み出す」ことと「魅力 を伝える」ことが必要となってくる。

それでは,こうした活動を「誰が」やるのか,五郷の魅力づくりに励み,そ の魅力を地区外の人々に伝えていく活動の「活動主体」「活動チーム」の形成 について考えを巡らす必要がある。持続可能で,かつ,主体性のある活動を求 めるのであれば,五郷地区と深い関わりのある周辺住民のなかに,こうした

「活動主体」を求めていく必要があろう。

では,どうすればそのような「活動主体」の担い手を見出し,協働のチーム として結びつけることができるか。そのためには,五郷地区周辺住民(コミュ ニティ)との継続的な対話が必要といえる。コミュニティの対話相手を大学が 担うことによって,コミュニティの「活動主体」の形成支援に取り組みたいと 考えている。五郷では,すでに「わらび会」という任意の活動が始められ,イ タドリを中心とした五郷の地域資源を外部に対して売り出そうと試みている。

こうした活動の火が消えることなく,むしろその他の活動へと広がっていくよ うに,活動している方々の想いを勇気づけていく必要がある。

本調査では,単に地域資源を調査するのみに終わらず,こうした地域資源 を,まずは五郷の住民の方々に知ってもらうことを最大の狙いとして調査を 行った。そこでの戦略は,まず,単に地域資源を羅列した文書を住民の方々に 見ていただいたとしても,次の行動へとつながることは困難であろうという認 識から始まった。そこで,本調査では,調査した地域資源を五郷の地域住民の 方々に対して有効に伝えるために,雑誌形式での編集デザインを試みた

!

。編集 デザインの方針を一言で表すならば,「五郷で暮らすことに誇りを取り戻すた めの小冊子」である。小冊子では,五郷地区が地理的に有している公益的な役 割を前面に押し出すこととした。すなわち,五郷は柞田川の下流域を潤す水源

( ) 作成した小冊子は『五郷読本』として五郷里づくりの会公式

Web(http://gogou.jp/)に

て公開している。

(41)

地であること,また,五郷には現代人が忘れている何百年と培ってきた山と人 の暮らしが存在していること,こうした公益的な役割を編集し,魅力的に伝え ることを狙いとした。この小冊子は,五郷の自治会を通じて全戸配布すること となったが,こうした小冊子配布の効果や活動主体づくりを支援する一連の取 り組みについては,次稿に譲りたい。

*本研究は香川県農村整備課「ふるさと水と土保全対策事業」より研究助成を受け て遂行したものである。調査にご協力いただいた五郷の住民有志の方々には,あ らためて感謝の意を表したい。

参照

関連したドキュメント

近年、日本のスキー・スノーボード人口は 1998 年の 1800 万人をピークに減少を続け、2020 年には 430 万人にまで減 少し、20 年余りで 4 分の

はありますが、これまでの 40 人から 35

人間は科学技術を発達させ、より大きな力を獲得してきました。しかし、現代の科学技術によっても、自然の世界は人間にとって未知なことが

当法人は、40 年以上の任意団体での活動を経て 2019 年に NPO 法人となりました。島根県大田市大 森町に所在しており、この町は

都内人口は 2020 年をピークに減少に転じると推計されている。また、老年人 口の割合が増加し、 2020 年には東京に住む 4 人に

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので