宇宙航空研究開発機構特別資料
JAXA Special Publication
第 42 回流体力学講演会╱
航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム 2010 論文集 Proceedings of 42nd Fluid Dynamics Conference /
Aerospace Numerical Simulation Symposium 2010
開 催 日:平成 22 年 6 月 24 日(木)〜 25 日(金)
開催場所:米子コンベンションセンター BiG SHiP 24 June 〜 25 June, 2010
Yonago Convention Center BiG SHiP
2011 年 2 月
February 2011
宇宙航空研究開発機構
Japan Aerospace Exploration Agency
本年度、
ANSS2010
は、風光明媚な米子市での開催となりました。例年に倣って、日本航空宙学会空力部門の企画による流体力学講演と同日、同会場開催 で進められました。
ANSS
側、学会側からの企画セッション、都合7
件、特別講演3
件、一般講演
136
件、5会場を用意しての大変活気のあるシンポジウム、講演会となりました。特別講演としては、鳥取大学名誉教授の神近牧男先生から「鳥取砂丘ものがたり」、筑波大 学名誉教授の村上正秀先生から「超流動ヘリウムの熱流体現象とその赤外
/X
線観測望遠鏡 冷却への応用」、ドイツ国のDLR
のJens Nitzsche
氏から「Recent Progress in Simulation of Transonic Unsteady Aerodynamics and Fluid-Structure Interaction
」の話題で貴重な お話しを伺うことができました。最近の
CFD
の分野では、航空宇宙機の空力設計での最大の課題である、CFD
、風洞試験、実飛行の
3
者のギャップを埋め、空力設計の合理化を図るEFD/CFD
融合を目指して努力 がなされているところです。本シンポジウムでも企画セッションが設けられ有意義な研究 発表と討論がなされました。また、本シンポジウムでは、騒音・音響解析、燃焼シミュレーションに関する研究発表 が数多く見られました。近年の
CFD
分野の傾向として航空宇宙機の空力解析、あるいはエ ンジン内部流解析といった航空宇宙機の設計に必要な1
次的なツール開発から脱却し、環 境問題を解決するための、騒音・音響解析、エンジン内の燃焼数値シミュレーションとい った航空機のさらなる付加価値につなげる設計ツールの実用化に向けて研究開発が進めら れています。本シンポジウムをとおして世界に通用する関連の研究成果が発信されること を期待します。最後に、本シンポジウムの運営に当り、日本航空宇宙学会空気力学部門委員長の川添博 光鳥取大学教授をはじめ同部門委員の方々のご努力に感謝しますとともに、本シンポジウ ムの開催に当り、資金的な支援をいただいた鳥取市コンベンションセンターに謝意を表し ます。
平成
23
年2
月吉日航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム(
ANSS
) 委員長中道二郎
ANSS
運営委員会委員中道二郎(委員長)、村上桂一(幹事)、相曽秀昭、阿部浩幸、池田友明、齋藤健一、佐藤 茂、嶋英志、清水太郎、新城淳史、高木亮治、中村孝、野崎理、長谷川進、牧野好和、松 尾裕一、松山新吾、山根敬、山本一臣、吉田正廣
1 .障害物励起音の特性に関する実験的数値的検討………
1
蔵居慧之(大同大院),白石裕之(大同大)2 .Building-Cube法による
JAXA
主脚騒音模型の非定常流体解析 ………7
佐々木大輔,恩田博,石田崇,中橋和博(東北大院),高橋俊(東京農工大院)3 .ジェット騒音低減デバイスの基礎研究……… 13 石井達哉,生沼秀司(JAXA),田中望,大庭芳則,大石勉(IHI)
4 .ハイブリッド有限要素
-
波動ベース法に基づいた音響構造連成解析による音響透過予測 ……… 19 高橋孝(JAXA),金田英和(計算力学研究センター),青山剛史(JAXA)5 .正方形角柱まわりの流れの数値計算……… 25 黒田眞一(IHI)
6 .低
Re
数翼周り流れの境界層不安定と音響変動との相関について ……… 31 跡部隆,池田友明(JAXA)7 .慣性力影響下での旋回噴流の挙動についての研究……… 37 丸山祐一(岡山理科大)
8 .航空宇宙の剥離流への時間スケールに着目した乱流モデルの適用……… 43 松尾裕一,阿部浩幸,吉澤微(JAXA)
9 .ロケットエンジン燃焼器安定性解析に向けた予備的燃焼解析……… 49 溝渕泰寛,清水太郎(JAXA),内藤大貴(ヴァイナス)
10.高解像度コンパクト差分法を用いた超臨界圧極低温流体の乱流混合解析に向けて……… 55 寺島洋史(JAXA),河合宗司(Stanford University),山西伸宏(JAXA)
11.直交格子積み上げ法による大規模流体計算データの圧縮に関する研究……… 61 坂井玲太郎,佐々木大輔,中橋和博(東北大院)
12.斜め平板に衝突する超音速ジェットと発生音響波の超大規模
LES 解析
……… 67 野々村拓,藤井孝藏(JAXA)13.JAXA Supercomputer System(JSS)の運用における現状と課題 ……… 73 染谷和広,藤岡晃,藤田直行(JAXA)
14.高速流体ソルバ
FaSTAR
の開発 ……… 79 橋本敦,村上桂一,青山剛史(JAXA),菱田学,大野真司(菱友システムズ),坂下雅秀(大興電子通信),ラフール パウルス(計算力学研究センター),佐藤幸男(アドバンスソフト)
15.高速非構造
CFD
ソルバFaSTAR
における新勾配制限関数 ……… 85 菱田学(菱友システムズ),橋本敦,村上桂一,青山剛史(JAXA)坂下雅秀(大興電子通信),松尾裕一,橋本敦,青山剛史(JAXA)
17.自動格子生成手法を用いたロケットプレーン技術実験機の空力設計……… 97 高間良樹,石本真二,橋本敦(JAXA)
18.リスケール・リサイクル法を用いた平板乱流境界層
DNS
データベースの構築 ………103 阿部浩幸,溝渕泰寛,松尾裕一(JAXA)19.シャトルコックの空力特性………105 板倉嘉哉,古村文音(千葉大)
20.マッハ6飛行条件における複合エンジン・ラムジェットモードの数値計算………111 小寺正敏,谷香一郎,植田修一(JAXA)
21.ロケットーラム複合サイクルエンジンのインレット設計のための数値計算………117 長谷川進,植田修一,谷香一郎(JAXA)
22.スクラムジェットエンジン内に形成される衝撃波の効果に関する考察………125 佐藤茂(JAXA),宗像利彦(日立東日本ソリューションズ),石河深雪(スペースサービス)
23.次期固体ロケット空力特性についての数値解析………131 北村圭一,藤本圭一郎,葛生和人,野中聡,入門朋子,福添森康,嶋英志(JAXA)
24.誘導磁場を考慮した
MHD Flow Control
の 2 次元電磁流体解析 ………137 榊原諒,吉野智之,藤野貴康,石川本雄(筑波大院)25.溝付き平板上の極超音速流れに関する研究………143 大道勇哉,鈴木宏二郎(東大新領域)
26.超音速流中における噴流の乱流混合の
LES 解析
………149 渡部潤也,河内俊憲,滝田謙一,升谷五郎(東北大)27.直交格子ベースの全速度対応
Euler ソルバーの開発
………155 橋場道太郎(東北大院),佐々木大輔(東北大工),中橋和博(東北大工)28.低レイノルズ数における矩形翼とデルタ翼の空力特性比較………161 野々村拓(JAXA),小嶋亮次,福本浩章(東大院),大山聖,藤井孝蔵(JAXA)
29.ロータ模型を用いた風洞実験データベースの構築と検証………167 田辺安忠(JAXA),菅原瑛明(菱友システムズ),齊藤茂(JAXA)
30.静粛超音速研究機基本全機風試における模型静的空力弾性変形効果について………173 牧野好和(JAXA),大平啓介,牧本卓也(菱友システムズ),三友俊輝(富士重工業)
31.Discontinuous Galerkin法による主翼変形を考慮した
ONERA-M5 標準模型周りの流れ場解析
………179 保江かな子(JAXA),澤田恵介(東北大)荻野純(菱友システムズ),渡辺重哉,口石茂,加藤裕之(JAXA),山本寛,大海謙一(菱友システムズ)
33.Cell/B.E.を用いたステレオ
PIV
計測の準リアルタイム処理 ………191 冨田明彦,加藤辰哉(フィックスターズ),加藤裕之,藤田直行,渡辺重哉(JAXA)34.翼周計算におけるデータ同化手法の適用性について………197 名古屋靖一郎,木野由也(アーク情報システム),相曽秀昭(JAXA)
35.流体計測手法の進展と流れの理解の深化について -雑感- ………203 李家賢一(東大)
36.EFD/CFD 融合技術に基づくアブレーション熱防御システム評価手法の研究 ………205 鈴木俊之,藤田和央(JAXA),酒井武治(名大),奥山圭一(愛知工大),加藤純郎(琉球大)
西尾誠司(川崎重工)
37.極超音速希薄風洞を用いた希薄空力現象の計測および数値解析………213 小澤宇志,鈴木俊之,藤田和央(JAXA)
38.スペースシャトルおよび宇宙往還機のソニックブーム強度予測と低減化………219 村上直哉,久保田弘敏(帝京大)
39.ソニックブーム波形推算精度向上のための
Shock Function
を用いた解適合細分化法 ………225 大木裕介(東北大院),佐々木大輔(東北大工),中橋和博(東北大工)
40.ソニックブーム最小化を考慮した機体設計における超音速複葉翼の有用性………231 内海雄紀,大林茂(東北大)
41.構造/非構造重合格子法を用いたコンコルド模擬形状のソニックブーム解析………237 石川敬掲(三向ソフトウェア開発),牧野好和,吉田憲司(JAXA),大平啓介(菱友システムズ)
42.静圧レールを用いた機体近傍場圧力波形計測の課題………243 牧野好和,野口正芳(JAXA),牧本卓也(菱友システムズ)
43.模型内蔵型データロガーによる力計測法………249 佐藤和雄,丹野英幸,小室智幸,伊藤勝宏(JAXA)
44.触媒効率計測用誘導加熱装置気流の非対称分布………255 髙栁大樹(JAXA),大澤弘始(東北大),鈴木俊之,藤田和央(JAXA)
45.風洞壁面上の単一孔を通過する流れに関する研究………261 石橋孝介,香山寛人(名大院),森浩一,中村佳朗(名大工)
46.DBDプラズマアクチュエータを用いた低レイノルズ数領域における
NACA0012 翼の空力特性の改善 …………267
簗瀬祐太,木田大穂(日大院),大竹智久,村松旦典,本橋龍郎(日大)47.大気圏突入を想定したイトカワ型小惑星の極超音速空力特性に関する研究………271 和泉有祐,鈴木宏二郎(東大新領域)
Yoh MURAKAMI, Yasutada TANABE, Shigeru SAITO (JAXA), Hideaki SUGAWARA (Ryoyu Systems)
49.低
Re
数でのNACA0012 翼上に見られる層流剥離・剥離泡を伴う流れ場
………283 大竹智久(日大),中江雄亮(トヨタ自動車),村松旦典,本橋龍郎(日大)50.非構造格子
CFD
ソルバーによる内部対流冷却翼列の流体・熱伝導連成数値計算 ………287 吉新哲也,佐々木大輔,中橋和博(東北大院)51.全速度数値流束スキームの改良について………293 嶋英志,北村圭一(JAXA)
52.アンサンブルカルマンフィルタの適応型熱解析への適用………299 秋田剛,高木亮治,嶋英志,石村康生(JAXA)
53.宇宙機熱モデルにおけるパラメータ推定への粒子フィルターの適用………305 高木亮治,秋田剛,嶋英志(JAXA)
54.移動格子を適用した任意多面体非構造圧縮性ソルバーによる振動翼解析………311 葛生和人,北村圭一,藤本圭一郎,嶋英志(JAXA)
障害物励起音の特性に関する実験的数値的検討
蔵居慧之,白石裕之 大同大学大学院,大同大学
Experimental and Numerical Study of Excited Sound from a block
Satoshi Kurai and Hiroyuki Shiraishi(Daido University) by ABSTRACT
Though edge tone and aeolian tone are both treated as excited sounds from blocks, they are often to be done by different approaches to numerical analyses because an edge tone only has feedback loop caused by sound waves. In experimental apparatus, however, these phenomena can be generated simultaneously. Therefore, we have constructed the new soundproof room made by sound arresting walls considering of TV studio, in order to study the transition from edge tone to aeolian tone. As a numerical approach, Finite Difference Lattice Boltzmann Method (FDLBM), which is authorized as generalized numerical analysis, is also applied for evaluating the effect of the gas species in the transition.
1.はじめに
流れが原因で発生する音には障害物励起音があり,図1 の模式図に示す通り,障害物後方より発生するカルマン渦 が原因であるエオルス音や,ノズルからの噴流がエッジに 衝突し発生するエッジトーンなどが挙げられる.特に後者 は音波が上流のノズルへ伝播しフィードバックループを形 成し,特定の周波数を発生させると考えられているものの,
音波と噴流を同時に計測,解析する必要があるため研究報 告が少ない.このようにエオルス音とエッジトーンとは異 なる発生機構を要するが,現実にはエオルス音発生条件に おいて上流からの一様流れを用いる事は難しい.そのため,
上流の条件については様々に配慮するべき点がある.例え ば上流出口と障害物との距離もその一つで,両者の距離が 小さい場合にはエッジトーンを発生させてしまうことにな る.そのような原因もあり,それぞれに限定された研究報 告が多く,両者を共に考慮に入れた研究報告はほとんど見 られない.
そこで本研究室においては,木材と吸音材により防音室 を構築し,エオルス音及びエッジトーンの実験結果をもと に両者の発生条件の相違についての知見を得ることを目的 とした.その際近年音響解析で用いられる差分格子ボルツ マン法(
Finite Difference Lattice Boltzmann Method
,以下FDLBM
法1)と記す)を用いた数値解析結果と実験結果との比較を行った.
図
1
エオルス音(上)とエッジトーン(下)の 発生機構2.防音室の製作及び実験結果 2.1 実験システムの概略
本研究室で構築した防音室(図
2
)について説明する.本防音室設計は,共振を防止するために非正五角形であり,
天井を斜めにした形状となっている.なお,防音室の骨組 みは木材で,接続部は木造住宅同様の蟻継ぎ手であり,各 木材の継ぎ手部にはホゾ加工を施した.
図
3
に,テレビ局スタジオの防音機構を参考にした壁構 造を示す.本防音室の壁面の全体厚は114mm
で,防音室 外側から合板,遮音シート,グラスウール,空気層,合板,吸音材という構造になっている.遮音シートは遮音性能や 施工性に優れ,特定の周波数で共振がないことから採用し,
グラスウールは機械設備などに用いられる密度
24.0kg/m
3 のものを使用して二重に敷き詰めた.また,壁内部の空気 層は吸音効果を高めるために40mm
設け,室内部から見え る吸音材については録音スタジオなどで使用されているス ポンジタイプの吸音材を用いることとした.本図に示され るように吸音材の厚さは51mm
でくさび形状になっている ことから反響音や残響を極力抑える仕組みとなっており,これらの壁構造によってかなりの防音効果が見込まれる.
以上の防音室を用いて図
4
に示す実験システムを構築し た.空気はコンプレッサーで圧縮し,フィルタを通して水 分などを除去した上でレギュレーター,流量計を通じて音 響発生装置2)へと流れが導かれる様になっている.なお,音響発生装置はノズル部を固定している固定モデル(図
5
)とノズル幅及び出口面積を3
種類変更可能な可変モデル(図
6
)を用いている.音はマイクロホンで集音し,PC
に 入力しリアルタイムアナライザによってFFT
解析を行う.図
7
は本防音室以前に使用していた防音室との比較結果で あり,これによって本防音室製作方法による有意な効果が 示された.図
2
防音室外観図
3
防音室壁構造図
4
防音室の形状と実験装置概要(平面図)図
5
音響発生装置(固定モデル)図
6
音響発生装置(可変モデル): :
全体図(上),ノズル部(下)200 0 400 600 800 1000
10 20 30 40
50
旧防音室本防音室
周波数[Hz]
音圧レベル
[d B ]
図
7
防音室の結果2.2 実験条件
今回の実験条件はノズル部固定モデルにおいてノズル流 速
U=15
,20
,25m/s
,ノズル幅D=0.006m
,くさび幅d=0.006m
とした.またノズル部可変モデルにおける流速は20m/s
としている.ノズル―障害物間距離L
は0.015m~0.090m
として実験を行った.また,計測位置は最も音圧レベルの高い位置,すなわちくさび頂点から流れに 対して
60
°,距離は0.5m
離れた位置とした.2.3 実験結果
前節までに述べた実験条件での結果を図
8
に示した.な お,縦軸は周波数をくさび幅d
で無次元化したストローハ ル数St
dとしている.エッジトーン周波数は過去の研究よ りノズル―障害物間距離が大きくなるほど低くなることが 知られており以下の式で表すことができる3).) L .
)( 1 - U 0.466J(
=
f j 40 0 07 J=1,2.3,3.8,5.4
…
(1)
ここで,f
はエッジトーン周波数,J
はエッジトーンの特 徴を表す周波数ジャンプのStage
を表している.また,U j
はノズル噴流速度である.
本実験においても
L
=40mm
未満では式(1)
に示す様な傾 向が見られた.しかしながら,L
=60mm
以遠においてはSt d
が約0.1
で安定している.エオルス音のSt d
は円柱が約0.2
,角柱(迎え角α=45
°)は約0.14
4)というように定まっ た値を取るとる事から,今回のくさび実験結果についてもL
=60mm
以遠ではエオルス音が卓越していると考えられる.0 20 40 60 80 100
0 0.1
0.2 15m/s
20m/s 25m/s
ノズル―障害物間距離
[mm]
St
d0 20 40 60 80 100
0 0.1 0.2 0.3
ノズル―障害物間距離
[mm]
St
d出口面積
300mm
2 出口面積180mm
2 出口面積60mm
2図
8
ノズル―障害物間距離とSt d
の関係:
ノズル部固定モデル(上),ノズル部可変モデル(下)3.エオルス音とエッジトーンとの発生条件の比較 3.1 数値解析の方法と条件
前章の実験結果において,流速変化の他にノズル幅を含 めたすべての実験ケースについてエッジトーン卓越からエ オルス音卓越への遷移条件が同じであることが示された.
これに関して,エッジトーンにおいてはエオルス音とは異 なり近距離場ゆえの擬似音波が作用していると考えられる.
その場合に音波のパワーは距離の
2
乗に反比例する一方で 擬似音波は距離の4
乗に反比例する.そのため,その作用 はごく近傍に限られることになり,これがノズル―障害物 間距離が離された場合にエッジトーンが減衰する理由と考 えられる.両者のパワーが等しくなる点はr
を音波発生位 置からの距離,f
を周波数,a
を音速としてf
r 2 a
…(2)
となる4).また,エッジトーンにおいて
J
をStage
数,p
を位相差,T 1
をノズルから障害物までの擾乱の伝播時間,T 2
を障害物 からノズルまでの擾乱の伝播時間とすると,2
1
T
T p f J
…(3)
であり,
T 1
≫T 2
であることからf
は音速の影響が極めて小 さい5).これと式(2)
より,周波数f
が音速a
と正の相関の ある事が推察される.これを確かめるための一手法として,数値流体解析において気体種による影響について検討する こととした.
数値解析には数値解析ソフトウェア
ACE-Flow
(アメリ オ社製)を用いた.ACE-flow
は近年流体音響解析などでよ く用いられるFDLBM
法による流体音響解析ソフトウェア である.計算条件は実験と同一とし,圧力変動が規則的な変動を 示している
0.01s
から0.06s
の値をFFT
解析により処理を行 った.また,本研究の計算格子は図
9
に示すようにノズル障害 物近傍を細かくしており,総格子点数は約5
万点である.
図
9
本研究で用いた計算格子及び拡大図3.2 FDLBM 法における気体種と比熱比の数値モデル
一般的な
FDLBM
法において,比熱比γ
は粒子運動の自由度より次式で表される.
D D 2
…(4)
しかしながら,式(4)
ではγ
は次元のみの依存であり,こ れ以外のγ
を持つ流体を扱えない.そこで田村ら1)は粒子 に内部自由度を持たせるために,並進エネルギーの他に回 転エネルギーを導入した粒子分布を提案している.これに より比熱比の異なる流体での解析が可能となった.本研究ではこの手法を利用し,比熱比,密度及び粘度を 変えることによって気体種として空気の他に実験の困難な ヘリウムの場合を設定した.なお,ヘリウムの場合は比熱 比,密度,粘度がそれぞれ
5/3
,0.1785kg/m
3,1.96
×10
-5Pas
となる.また,流速U
は20m/s
で統一している.3.3 解析結果(気体種の影響)
図
10
には周波数f
を流速とノズル―障害物間距離L
で無 次元化したSt L
数5)を用いて結果を示す.前章とは異なり,ストローハル数における無次元化の対象が異なることに注 意されたい.なお,これは式
(1)
で示したStage
数1~4
に対 応して0.5
,1.0
,1.5
,2.0
程度の値を取ることが知られてい る5).まず空気については,
L
=40mm
,50mm
でStage1
でのピ ークが見られ,L=70mm
ではStage2
にピークが確認でき,L
の増大に伴ってStage
の遷移が見られる.しかしながら,L
=60mm
以遠のピークは顕著ではなく,エッジトーンとし ての特性は微弱であることが分かる.このことは,L=60mm
以遠ではエオルス音が卓越するという図8
で示された実験結果と一致するものである.
次にヘリウムについては,図
10
においてL
=40mm
ではStage1
にピークが見られ,L=70
,80mm
ではStage2
にピー クが見られる.このように,ここで見られるStage
遷移の 様子は,空気の場合との差異が見られないことが分かる.ただし,ヘリウムにおける
Stage2
の兆侯は本図(d)
及び(e)
か らも分かる様に空気に比べて顕著であり,これは図7
と同 様の実験をヘリウムで行った場合,エッジトーンの影響を 除くには長い距離が必要であることを示している.本図
(f)
と(g)
はそれぞれL
=120mm
及びL=200mm
におけ る結果を示す.この結果より,空気においてはL
=120mm
でピークが見られなくなるのに対し,ヘリウムにおいては まだピークが残っているのが確認できる.なお,ヘリウム においてもL=200mm
ではピークが見られなくなった.こ れよりヘリウムにおいてもノズル―障害物間距離を大きく することにより,空気の場合よりもエオルス音が卓越する ことが確認できた.これらの結果より,空気とヘリウムにおいてエッジトー
ンの
Stage1
からStage2
への遷移は変わりはないと言える.しかし,エッジトーンよりもエオルス音がするという距離 条件については音速と正の相関があるという
3.1
節におけ るオーダー評価と同様の傾向が確認できた.3.4 解析結果(音源の調査)
図
11
~図13
に気体種を空気とした場合の圧力分布図を 示す.なお,圧力分布図の値は,圧力値を基準圧力で引く ことにより変動を求め,これを圧力基準値により無次元化 したものである.図
11
は障害物励起音の圧力分布図であり,時刻3.09
×10
-2
[s]
での結果を示している.なお,左側はL
=40mm
,右側は
L
=120mm
での結果であり,図中上方の○印は圧力の測定位置である.まず
L
=40mm
においては,強い圧力変動 がノズル―障害物間にあることが分かり,それが遠方の測 定位置にまで伝播しているのが分かる.次に,L
=120mm
においてはL
=40mm
で確認できたノズル―障害物間の強 い圧力変動は見られず,障害物後方のみに強い圧力変動が 確認できる.図
12
は図11
の結果をノズル及び障害物近傍で拡大した ものである.まずL
=40mm
においては,ノズル―障害物 間で生じた圧力変動がノズル近傍の上方に及んでいる.こ れが,フィードバックループによるエッジトーンの特性を 表していると考えられる.次にL
=120mm
においては,障害物近傍の圧力変動は確認できるもののノズル出口近傍で の圧力変動は見られず,エッジトーンの兆侯が見られない.
図
13
には気体種を空気とヘリウムとした場合のL
=120mm
における障害物励起音の圧力分布図を示す.空気の場合と比較すると,ヘリウムにおいては障害物後方の圧力 変動値が小さくなっており,エオルス音の影響が弱いこと が分かる.これが,距離の増大によってエッジトーン卓越 からエオルス音卓越とならなかった原因と考えられる.
0 1 2
0 0.001 0.002
St
LSP L
He Air
(a) L=40mm
0 1 2
0 0.001 0.002
St
LSP L
He Air
(b) L=50mm
0 1 2
0 0.001 0.002
SP L
St
LHe Air
(c) L=60mm
0 1 2
0 0.001 0.002
St
LSP L
He Air
(d) L=70mm
0 1 2
0 0.001 0.002
St
LSP L
He Air
(e) L=80mm
0 1 2
0 0.001 0.002
St L
SP L
He Air
(f) L=120mm
0 1 2
0 0.001 0.002
SP L
St
L(g) L=200mm
(ヘリウム)図
10
障害物励起音の周波数特性4.まとめ
障害物励起音に関して,ノズル―障害物間距離
L
による エッジトーン卓越からエオルス音への卓越条件について実 験と数値解析を用いて考察した.まず実験においては,くさび幅で無次元化したストロー ハル数
St d
による整理から,L
=60mm
~70 mm
以遠におい てエオルス音が卓越している事が判明した.なお,流れ条 件の相違に関わらず距離の差異は見られなかった.次に,その理由を調べるため,
FDLBM
法による数値流体解析
(Ace-flow)
によって音速との関連性を調べた.対象は空気と実験困難なヘリウムであり,両者の解析結果の比較を 行った.その結果,ノズル―障害物間距離で無次元化した ストローハル数
St L
による整理から,Stage
遷移の距離条件 は同一であることが判明した.また本結果においては,エ オルス音卓越の距離条件が音速と正の相関があるというオ ーダー評価と同様の傾向が確認できた.最後に,圧力分布図により音源の位置の特定を行った.
その結果,障害物後方の圧力変動がエオルス音源を示す一 方で,エオルス音が卓越する場合にはノズル出口近傍に圧 力変動をもつというエッジトーン発生の機構も確認できた.
参考文献
1)
田村明紀,蔦原道久:格子ボルツマン非熱流体モデル の空力音シミュレーションへの適用性,第21
回数値流 体力学シンポジウム,A4-2, pp.1-7.
2)
大薮一憲,白石裕之:離散渦法を用いたエオルス音に関する音響解析手法の検討,第
40
回流体力学講演会/航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム
2008
講演論文集,pp.185-188.
3) G.B.Brown,Proc.Phys.Soc(London),The vortex motion causing edge tones, 49(1937), pp.493-507.
4)
吉川茂,和田仁:音源の流体音響学,コロナ社,p.56,p.77.
5)
野々村拓,村中洋子,藤井孝蔵:エッジトーンの発生機構における幾何学パラメータの影響の解析,第
19
回 数値流体力学シンポジウム, C9-5, pp.1-8.
図
11
障害物励起音の圧力分布図: L=40mm
(左),120mm
(右)(a) 3.09
×10
-2[s]
(b) 3.14
×10
-2[s]
(c) 3.18
×10
-2[s]
図
12
障害物励起音の圧力分布近傍図:
L=40mm
(左),120mm
(右)(a) 3.09
×10
-2[s]
(b) 3.14
×10
-2[s]
(c) 3.18
×10
-2[s]
図
13
障害物励起音の圧力分布図:
空気(左),ヘリウム(右)
Building-Cube 法による JAXA 主脚騒音模型の非定常流体解析
佐々木大輔,恩田博,石田崇,中橋和博 東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻
高橋俊
東京農工大学大学院工学研究院先端機械システム部門
Unsteady Flow Analysis of JAXA Landing Gear Model by Building-Cube Method
Daisuke Sasaki, Hiroshi Onda, Takashi Ishida, Shun Takahashi, Kazuhiro Nakahashi by ABSTRACT
Landing gear is one of critical noise sources at landing, thus it is expected to develop CFD and CAA solvers to estimate the aerodynamic noise. In this study, block-structured Cartesian-based CFD solver, Building-Cube Method, is applied to predict the flowfield around the JAXA Landing gear Evaluation Geometry model. The capability of three-dimensional unsteady incompressible flow solver for a landing gear has been demonstrated through simple and complicated landing gear models.
1.緒言
近年,世界各国の空港で航空機の離発着時の騒音規制が 強化される方向にあり,今後騒音の大きい機体の運航は制 約が増えていくことが予想される.日本においても,騒音 による空港運用時間の制限や機体の騒音レベルに応じた離 発着料が徴収されている.そのため,航空機メーカーは離 発着時に生じる騒音の低減を目指して様々な開発を進めて きた.その結果,主要な騒音源であったエンジン騒音(フ ァン騒音・ジェット騒音)の低減が可能となってきた.エ ンジン騒音の低下に伴い,従来あまり検討されてこなかっ た機体から生じる騒音も無視できなくなりつつある.その ため,代表的な機体騒音源である高揚力装置や降着装置の 騒音削減を目的とした研究が盛んに行われている
[1-8]
. 宇宙航空研究機構(JAXA
)では,図1
に示す主脚騒音 計 測 用 モ デ ル (LEG
形 状 ,Landing gear noise Evaluation
Geometry
)により,実験的・数値解析的に脚から生じる騒音に関しての研究を行っている
[6-8]
.図より分かるようにLEG
モデルには多数の部品が存在しており,これらすべて の部品を考慮した解析を構造格子で行うことは難しい.非 構造格子では複雑形状を取り扱うことができるが,格子生 成に必要な時間は大きく,各部品の影響を考慮する場合な ど,前処理にかかる時間を無視できない.そのため,降着 装置周りの解析には直交格子法に基づく手法が望ましい.直交格子法では,空間精度を上げることが容易であり,後 流を精度よくとらえるという意味でも都合が良い.ただし,
単純な直交格子法を用いると格子数が莫大となってしまう 問題がある.
筆 者 ら は こ れ ま で ブ ロ ッ ク 型 直 交 格 子 法 と し て ,
Building-Cube
法(BCM
)を開発してきた[9-12]
.Buidling- Cube
法では,流れ場を様々なサイズのCube
と呼ばれる立 方体領域に分割し,各Cube
内には同数の等間隔直交格子Cell
を配置する.解析ソルバの単純性を保つために物体は 階段状表現で表され,物体境界の幾何学精度を保つため,また境界層内の粘性領域を解くために物体近傍では非常に 細かい格子が必要である.図
2
に,円柱の空力音解析に用 いたBCM
格子を示す[13]
.物体近傍では円柱形状を解像す るために十分に細かい格子を生成した結果,空力音に対し て実験値や他者の計算値と十分な一致を見た.一方,円柱 から離れた領域ではCube
サイズを大きくすることで,格 子点数の削減を図っている.本アプローチにより,各Cube
における計算負荷は均一となり,大規模並列計算環境時で も十分な並列性能を上げることが期待できる.本研究では,
3
次元非圧縮性流体解析ソルバをJAXA
のLEG
形状に適用する.図3
に示すタイヤのみ存在する単純な形状(
Simple
形状)と脚扉・サイドブレース・トルクリンク等が付属した複雑な形状(
DST
形状)の二つの形状を 用いて計算を行い,今村らの結果[6,8]
との比較を通して本 手法の有効性の検証を行うと共に,今後の空力音解析に向 けての知見を得る.図
1 Landing Gear Noise Evaluation Geometry [6-8]
図
2
円柱まわりのBCM
格子(太線はCube
境界を表し,細線は
Cell
を表す)[13]
図
3
解析に用いる主脚形状(左:
Simple
形状,右:DST
形状)2.解析手法
本解析で用いる
Building-Cube
法は,等間隔直交格子法に 基づく手法であり,解析領域は流体の特性によりサイズの 異なる立方体領域Cube
に分割される.Cube
内は更に同数 の等間隔直交格子Cell
によって離散化される.物体近傍や 後流域ではCube
サイズを小さくし,一方遠方においてはCube
サイズを大きくしている.計算には,スタガード格子有限差分法非圧縮性ソルバ
[11]
を用いた.流れの支配方程式は連続の式および非圧縮性
Naver-Stokes
方程式である.空間方向の離散化について,移流項には
3
次精度上流差分,拡散項には2
次精度中心差 分を用いている.時間方向の積分にはFractional Step
法を 用い,仮の速度場の解法にはAdams-Bashforth
時間2
次精 度陽解法を用いている.なお,異なるサイズのCube
間で の情報交換には単純な線形内挿を用いている.3.解析条件
計算に用いたのはタイヤのみの脚(
Simple
形状)と,脚 扉 ・ サ イ ド ブ レ ー ス ・ ト ル ク リ ン ク 等 が 付 属 し た 脚
(
DST
形状)の2
種類である.Reynolds
数はタイヤ直径を 代表長として1.8
×106
である.計算空間はタイヤ直径をD
として
x, y
方向にそれぞれ30D
,z
方向に15D
である.境界条件は表
1
のように与えた.対流流出速度には流出面の 速度のキューブ内平均値を用いている.また,脚の配置は 図4
に示すようにz
軸負側に支柱,z
軸正側にタイヤがく るようにしている.z
軸負側の境界条件(支柱付け根)は 実験を模擬するためにスリップ境界とした.計算はそれぞれの脚につき
Coarse
,Fine
の2
種類の格子 で実行した.それぞれの格子の諸元は表2
に示す通りであ り,多数の部品が存在しているDST
形状の格子数は,Simple
形状の約2
倍であり,約1
億に達している.計算においては,
Coarse, Fine
ともに,まず非定常な流れ場を発達 させるために無次元時間10
だけ計算し,その後時間平均流 れを得るために,Coarse
は無次元時間50
だけ,Fine
では無 次元時間10
だけ計算した.表
1
外部境界条件velocity B.C. pressure B.C.
X-
一様流ノイマン
X+
対流流出ディリクレ
Z-
スリップノイマン
Z+
対流流出ディリクレ
Y-
対流流出ディリクレ
Y+
対流流出ディリクレ
表
2
格子諸元(a) Simple
形状Coarse Fine
# of cubes 2,560 12,760
# of cells per cube 16 16
total # of cells 10,485,760 52,264,960 minimum grid spacing 9.7×10 -3 4.8×10 -3
(b) DST
形状Coarse Fine
# of cubes 4489 23151
# of cells per cube 16 16
total # of cells 18,386,944 94,826,496 minimum grid spacing 9.7×10 -3 4.8×10 -3
(a) Simple
形状(b) DST
形状図
4 y=0
断面における主脚近傍のCube
境界図
5 Fine
形状におけるタイヤ周りの格子4.結果
4.1 タイヤ周方向圧力係数分布
Simple
形状の解析結果の時間平均を行い,図6
にCoarse
格子と
Fine
格子におけるタイヤ中心(y=0.363
)における 周方向圧力係数分布を示す.ここで,図7
に示すように0
度位置を後方淀み点,90
度位置をタイヤの設置点の反対側,180
度位置を淀み点,270
度位置をタイヤ設置点とした.こ の図より,格子解像度が上がるとCp
最小値がより小さく なり,かつタイヤ後方でのCp
回復がより大きくなること が分かる.この結果は図8
に示す今村らの論文[6]
の計算結 果(マルチブロック構造格子ソルバUPACS
によるLES
計 算,非構造格子ソルバTAS
によるRANS
計算)や実験値と 定性的に一致している.しかし,Cp
の最小値が一致してお らず,これは今回用いたFine
格子であっても境界層の格子 解像度が不足していたため,剥離位置が前方になってしま ったためであると考えられる.DST
形状においても,同じタイヤ位置における周方向の 時間平均圧力係数分布を求めた.図9
に示すように,Simple
形状と同様の傾向を示しており,Fine
格子での改善は見られるものの剥離が前方で始まっていることが分かる.
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5
0 90 180 270 360
Cp
Theta (deg.) Fine Coarse
図
6
タイヤ周方向の時間平均圧力係数分布(
Simple
形状)図
7
タイヤ周方向圧力係数分布の定義図
8
今村らによる計算及び実験におけるタイヤ 周方向圧力係数分布[8]
-2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 1.5
0 90 180 270 360
Cp
Theta (deg.) DST_Fine DST_Coarse
図
9
タイヤ周方向の時間平均圧力係数分布(
DST
形状)4.2 時間平均流線
Simple
形状とDST
形状の時間平均流線及び圧力分布を図
10
,図11
に示す.タイヤ外部の流線は大きく乱れてお り,流れが剥離している様子が確認できる.脚扉の前方も全体的に流線が乱れており,角を回る部分 で流れが剥離していることが確認できる.なお,
DST
形状 においてはタイヤ間に存在する部品の影響により,Simple
形状とは若干流れの様相が異なる.図
10 Simple
形状の時間平均流線と圧力分布図
11 DST
形状の時間平均流線と圧力分布4.3 断面速度分布
脚扉等の部品の存在する
DST
形状のFine
格子における 時間平均の地面に水平な断面上の速度分布を図12
に示す.支柱付け根を
0% Z max
,タイヤ先端を100% Z max
としてあ る.比較のため,図13
に今村らの定常計算結果[8]
である 断面マッハ数分布を示す.今村らは非構造格子ソルバであ るTAS (Tohoku university Aerodynamic Simulation)
を用いてRANS
計算を行っている.主脚付け根近傍(
Z=20%
~30% Z max
位置)においては,サイドブレースと支柱の間の流れや脚扉と支柱の間に加速 領域が生じており,今村らの結果と定性的に一致している.
ただし,その加速は小さく,支柱や脚扉の先端から生じた 剥離が影響していると考えられる.
タイヤ断面位置(
Z=70%
~90% Z max
位置)においては,部品との干渉により位置毎に流れ場が大きく異なる.
70%
Z max
位置では,支柱の後流がトルクリンクに衝突している 様子が確認でき,流れ場は今村らの結果と定性的に一致し ている.しかし,今村らの結果ほどの加速は観測されていない.
90% Z max
位置ではタイヤ間の流れに関して今村らの結果と大きく異なっており,タイヤ後方で減速している様 子が確認できる.これらの結果は,解像度不足によりタイ ヤ入口で剥離が生じ,タイヤ間に入る流れが減速してしま ったことに起因すると思われる.今後,高
Reynolds
数の 流れに対しての乱流モデル等のアプローチが必要である.最後に,
Simple
形状のFine
格子における時間平均の断 面速度分布を図14
に示す.70% Z max
位置では,支柱後流 を遮るトルクリンクがないため,タイヤと支柱の間での加 速が大きくなっていることが確認できる.80%
や90% Z max
位置においては,流れ場は
DST
形状の断面速度分布とほ ぼ同じとなっている.5.結言
BCM
非圧縮性流体解析ソルバを用いて,タイヤのみの 脚と脚扉やサイドブレース等各種部品の存在している脚 の2
種類について計算した.タイヤ周方向の表面圧力係数 分布は,既存の結果と定性的に一致するものの,剥離が 前方で始まっていることが分かった.z
軸の各断面での時 間平均主流方向速度分布より,付属物が複雑な流れを誘 起していることが確認できた.既存の結果と異なり脚扉 の前面で剥離が生じたため,加速領域の大きさが制限さ れ,実際の流れ場と異なっていることが分かる.本手法では,直交格子を用いていることから複雑な主 脚周りの解析を行うことは容易であり,各付属物の影響 を評価する際には非常に有効である.しかし計算結果か ら明らかなように,境界層内の格子解像度不足により実 際よりも早く剥離が生じる.現在の計算機環境では,更 なる格子解像度の向上は難しいため,今後乱流モデルを 導入するなどの対処によって,より解析の信頼性を上げ る必要がある.
(a) 20% Z max
(b) 30% Z max
(c) 70% Z max
(d) 80% Z max
(e) 90% Z max
図
12 DST
形状の断面速度分布(Fine
格子)図
13 TAS
による断面マッハ数分布[6]
(a) 70% Z max
(b) 80% Z max
(c) 90% Z max
図
14 Simple
形状の断面速度分布(Fine
格子)謝辞
本研究で使用した脚形状は
JAXA
より提供を受けた.ま た,本研究はJSPS
科学研究費(21226018)
の助成を受けて いる.本研究では,東北大学サイバーサイエンスセンター 大規模科学計算システムを利用して計算を行った.参考文献
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今村太郎,浦弘樹,横川譲,山本一臣,“高揚力装置騒音計測用模型を用いたスラット騒音低減デバイ スの研究”,第
40
回流体力学講演会/航空宇宙数値 シミュレーション技術シンポジウム2008
論文集,2008.
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講演論文集,2009
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今村太郎,平井亨,雨宮和久,横川譲,榎本俊治,山本一臣,“簡素化した航空機主脚周りの非定常流 体解析”,第