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論文審査の結果の要旨

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

氏名:五十嵐 憲太郎

博士の専攻分野の名称:博士(歯学)

論文題名:地域在住高齢者における咀嚼機能の評価と運動機能との関連

審査委員:(主 査) 教授 近藤 信太郎

(副 査) 教授 河相 安彦 教授 野本 たかと

咀嚼機能の維持は,健康寿命の延伸や高齢者のQOLと関連があり,咀嚼機能の低下がフレイルや死亡 のリスクファクターであることが疫学調査により報告されている.これまで,咀嚼機能の評価方法が種々 検討され,咀嚼機能がサルコペニアと関連するという報告や,咬筋厚と四肢骨格筋量との関連も報告さ れている.間接的な評価法である咬合力では,握力との関連が報告されてきた.しかしながら,歩行な ど日常生活に直接関係する下肢筋力と咬合力との関係については不明な点が多い.さらに,加齢による 筋力低下は上肢より下肢に早期に起こるとされており,咬合力と下肢筋力の関係を明確にすることは,

健康寿命における咀嚼機能を筋力の観点から理解する上で重要である.

そこで本論文の著者は,来場型健診を受診した地域在住高齢者を対象に咀嚼機能の評価方法,および 運動機能との関連を明確にするために,研究Ⅰで咀嚼機能のうち間接的な評価法である咬合力と下肢筋 力の指標である膝伸展トルクとの関連を検討している.対象者は,東京都板橋区に在住する65歳以上の 男女742名(男性315名,女性427名,平均年齢73.3± 5.5歳)とし,対象者の年齢・性別・既往歴 などの基礎情報のほか,口腔機能関連項目である咬合力,残存歯数および機能歯数,運動機能関連項目

としてBMI,四肢骨格筋量,握力,膝伸展トルクおよび歩行速度を,その他の項目として認知・精神機

能や生活機能関連項目,転倒不安感尺度を実測およびアンケート調査にて実施している.膝伸展トルク に関する各指標との関連を検討し,有意に強い相関を認めた指標の膝伸展トルクへの影響を検討してい る.その結果,咬合力と膝伸展トルクは有意に強い相関が認められ,重回帰分析より,咬合力は膝伸展 トルクに有意に影響する要因として抽出している.

一方,咬合力は咀嚼機能を間接的に評価する静的な指標であり,直接的な咀嚼機能を評価していない ことから今後,歩行速度など動的な運動機能指標との関連を検討するには,動的要素を加えた咀嚼機能 の評価が必要である.来場型健診のように多人数を対象とする高齢者を対象にした咀嚼機能評価は,い くつかの評価法がある.そのうちグミゼリーの粉砕程度から視覚的に咀嚼能力を判定する視覚スコア法 は機器を用いず簡便に測定が可能である.しかしながら,視覚スコア法を用いた疫学調査は実施されて おらず,精度の高い機器を使用する方法を対照とした妥当性の検証は明らかではない.

そこで,著者は研究Ⅱでは咀嚼機能を直接的に評価出来るグミゼリーを用いた視覚スコア法の疫学調 査における妥当性の検証を行っている.対象者は東京都板橋区に在住する70歳以上の男女1,234名(男 504 名,女性730名,平均年齢77.1 ± 4.8歳)としている.グミゼリーを用いた咀嚼能力測定は,

嚥下をしないよう30回自由咀嚼を指示し,咀嚼後ガーゼに吐出されたグミゼリーを測定会場にて歯科医 師2名が視覚スコア法の基準に従い 0 ~ 9 の10段階にて判定し,実測時の咀嚼スコア(以下,実測ス コア)としている.また,吐出されたグミゼリーは写真撮影され,後日,実測時の判定者とは異なる歯 科医師2名それぞれが,視覚スコア法の基準に従い咀嚼スコアを判定した(以下,写真スコア).さらに,

吐出されたグミゼリーを咀嚼能力測定装置に投入し,グミゼリーから溶出したβカロテン量を計測する ことで咬断片表面積増加量を算出した(以下,全自動法).実測スコアおよび写真スコアと全自動法との 間の関連,および実測スコアと写真スコアとの判定者間の一致度について評価を行い,以下のような結 果を得ている.

(2)

1) 実測スコアと全自動法との間に有意な相関を認めた (r = 0.86; p < 0.001).

2) 写真スコアと全自動法との間に有意な強い相関を認めた(r = 0.86, 0.87; p < 0.001).

3) 実測スコアと写真スコアとの判定者間の一致度を示す級内相関係数は0.93(p < 0.001; 95%CI:

0.88 -0.95)と高い値を示した.

以上のことから,間接的な咀嚼機能の評価法である咬合力と下肢筋力の指標である膝伸展トルクとの 関連が示され,筋力の点での咀嚼機能と運動機能の関連が明らかであることを示している.また,グミ ゼリーを用い,かつ簡便的な直接的咀嚼機能の評価法である視覚スコア法が,実測または写真のいずれ の方法においても機器を用いた全自動法咀嚼能力評価法の結果と強い相関を認め,かつ視覚スコアの判 定者間の一致度も高いことから大規模疫学調査において咀嚼能力を評価する上で妥当性を有する方法で あることを示唆している.

本研究は、咀嚼機能と運動機能の関連をより明確にし,またグミゼリーを用いた咀嚼機能評価法の有 用性や特性を明らかにしたものであり,高齢者における口腔機能低下の診断・評価および全身との関連 の解明に大きく寄与し,老年歯科医学および歯科補綴学の臨床・研究に貢献すると考えられる.

よって本論文は,博士(歯学)の学位を授与されるに値するものと認められる。

以 上 平 成31年2月21日

参照

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