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台湾現存中の最も古い台南県善化牛墟を事例として

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(1)

廟と共存する伝統的フリーマーケットの 観光資源としての可能性

台湾現存中の最も古い台南県善化牛墟を事例として

蕭 玉 燕

・鳥 飼 香代子

The Possibilities for the community service of traditional flea market co-existing with Temple in Taiwan

The Case of the Sanwa market, the existing oldest flea market in Taiwan Yu-yen H

SIAO

and Kayoko T

ORIKAI

Received by October 29, 2010

We already proved that Yanshuei Market and Peikann Market, two of the three biggest traditional flea markets in Taiwan, were attractive for the tourists also they increased their tourists along with the nearby Temples. This article researched about the Sanwa Market, which is the oldest traditional flea market in Taiwan. We could prove this market also has possibilitiy for the tourist attraction like two others.

Taiwan Tourism Board appealed night markets as tourist spots in Taiwan. However we would like to prove amalgamation of the Temples and Markets make more understanding of the Taiwanese culture. Because these properties appeared, existed and sustained by the history of immigration to Taiwan as well as specific rural history and culture. We would like to report todayʼs conditions of the three biggest Taiwanese traditional flea markets and proved the possibilities of the Tourist Attractions. This is our research purpose of this article.

Key words: Temple, traditional flea markets, tourist attraction

1.研究の背景と目的

筆者らは多くの「市」は廟所属でかつ,廟の経済 基盤を支えており,あわせて廟と同じようにコミュ ニティ機能も持っていることを一連の研究で示した

(参考文献1,2).廟に属している「市」や廟の管 理運営と連携している場合の「市」であれば,互い の支援と協力ができると考えられる.さらに,その

「市」はたとえ廟に所属していない場合であっても,

共に来訪者を呼ぶため,近くにあれば廟と共存共栄 していく相乗効果があることを二つの事例で示した

(参考文献3,4).

筆者らは台湾現存の三大「牛墟」(塩水鎮,北港鎮,

善化鎮にあるかつての牛の取引所を母体として発展 してきた伝統的フリーマーケット)に注目した.そ れぞれの「牛墟」と近くにある「市」は廟所属でも,

廟と管理運営で協力関係にあるわけでもない独立し た存在であるため,個別の事例として調査をした.

塩水鎮の「牛墟」のすぐ傍に,関係のない小さい廟 が2軒あった(「53将軍廟」,「竹安宮」).しかし廟の 庭は「牛墟」の開催日にフリーマーケットの一部と して使われていた.利用は無償であったが,廟に とっては,利用者がいると賽銭も入るため,共存関 係が成立しているといえた(参考文献3).さらに,

「北港牛墟」は近くにある有名な観光廟「朝天宮」の おかげで,外来観光客が多い.このように「北港牛 墟」と「朝天宮」の近隣での存在は,魅力のある観 光資源を形成しているといえる(参考文献4).

台湾現存の三大「牛墟」である「塩水牛墟」と「北 港牛墟」は廟と共存して訪問者を増やし,観光資源 として魅力的であることを実証したが,「牛墟」の中 で一番古く,規模も大きい「善化牛墟」はどうであ ろうか.本稿では,上記の2か所と同じように観光 資源の可能性があることを確認したい.

台湾南栄技術学院准教授,教育学部外国人客員研究員

(2)

2.善化鎮と「慶安宮」について

善化鎮は台南県の中心に位置し,面積約55㎢,台 南市からは約20㎞離れている場所で,嘉南平野に属 している平坦地である(図1,2参照).台南県政府 出版の『南瀛采風』によると,善化鎮は1623年前に

も伝授されたと指摘されている.その後,明朝末期 鄭成功時代,地方学者の沈光文もこの場所で講義を したため,清朝の始め頃,郷民達はここに学問の神 の「文昌帝君」を祭るようになった.但し,清朝同 治元年(1862年),大地震に襲われ,文昌廟は倒壊し たため,郷民達は「媽祖廟」として再建した.日本 植民地時代の1905年に,皇民化運動を実施し,北白 川宮記念碑を作るため,慶行宮の一部を強制的に破 壊したこともあった.ちなみに,現存の建築は1991 年に建て直したものである.

現在の「慶安宮」は地方の歴史や文化の証だと言 われ,1997年に国の3級古跡として認定された.善 化鎮の街の中心に立地し,台南県の三大「媽祖廟」

として信仰されるほかに,学問の神様「文昌帝君」

も祭られ,地方では日本の天満宮のような大切な存 在である.

3.「善化牛墟」の場所の変遷について

「牛墟」の設立について,現存の文献「彰化県誌」

には,清朝の道光十年(西暦1830年),既に「牛墟」

の運営があったと記載されている.その後,光緒二 十四年前後(西暦1894年),農村社会の必要に応じて,

台湾の各地で続々と「牛墟」が設立されたと言われ る.塩水鎮と北港鎮の「牛墟」の設立もほぼそのと きと推測される.即ち1830年から今日に至って,「牛 墟」の歴史は少なくとも180年である.なお「善化牛 墟」の設立は同治九年(西暦1870年)であり,現存 する3箇所の「牛墟」(三大「牛墟」といわれている)

の中で一番古いと言われている.

三大「牛墟」の管理運営について,「善化牛墟」だ けは民間の経営で,塩水鎮と北港鎮の「牛墟」は公 営であり,北港鎮は「北港鎮公所」という役場の管 理運営で,塩水鎮は「塩水鎮農協」の運営である.

現在実際に牛の取引をしているのは,「善化牛墟」だ けである(写真7参照).しかも取引数は極めて少 ない.

図1:現存3大「牛墟」の分布

(Google mapより)

図2:一番古い「牛墟」の所在地台南県善化鎮

(善化鎮公所ホームページより)

(3)

塩水鎮と北港鎮の牛墟は公営のため,場所は昔か ら現在まで殆ど同じエリアである.ところが,民間 の「管理委員会」で管理運営している「善化牛墟」

は植民地時代から現在まで既に4回の場所変更が あった(図2,3参照).1936年生まれの地方大老蘇 金寶の話によると,日本植民地時代の「善化牛墟」

は現在の善化図書館近くにある文昌路(南関里に属 す)にあったが,まず光華路に移し(東関里),その 後また,慶安宮後ろ側の中正路の端へ移し(六分里),

2002年から現在までは街はずれの什乃里の田圃エリ アにある(図3,4,写真6参照).しかし,近いう ちに土地の賃貸契約が期限切れになるので,移すか もしれないと言われている.「善化牛墟」の場所は 管理員会所持の土地ではなく,農民に未使用の農地 を借りて運営している.土地の賃貸は長期契約だが,

値上がりや売却という地主の事情で,移転せざるを 得ないこともあり,不安定な立地を続けている.

「善化牛墟」は4回の移転したが,善化鎮はそんな に大きくない農村であるため(約55㎢),どこへ移っ ても,「慶安宮」廟からバイクで3-5分くらいの場 所である(図4参照).「善化牛墟」が開催されてい ない日は(日付け2,5,8の日に開催),郷民達(近 隣の農村住民たち)は廟の周りにある飲食店や屋台 に来て(写真2参照),食事や会話をして,交流をし ている.

週に2回開催される「善化牛墟」は「三大牛墟」

の中で規模が一番大きいと言われるだけあり,塩水

鎮と北港鎮の「牛墟」(フリーマーケット)は屋台コー ナーが約200軒であるが,善化鎮の「善化牛墟」は屋 台コーナーが約300軒ある.食材や日常用品,農業 用道具など,幅広く販売されているので,地域住民 にとって楽しみを兼ねた商業施設である.

4.利用者,販売者についての意識調査

フリーマーケットでの,地域住民の利用状況や要 望を以下の方法で検討する.

●調査対象:

①ヒヤリング:利用者100名.

②ヒヤリング:販売者50名.

●調査の時間:

①利用者のヒヤリング:2009年11月8,15日,

朝9-12時,6月21日 朝9-12時.晴れ.

② 販売者のヒヤリング:2009 年 11 月 8 日,朝 9-12時.晴れ.

(一)100人利用者のヒヤリング調査

まず利用者の性別年齢をみると(図6参照),

30-40代の中年層が一番多く,63%を占める.10-20 代の若い年齢層が25%いて,50-60代の中老年層が 12%だけである.また,男女別は半々ぐらいである.

他の2か所(塩水鎮と北港鎮)のと比べてみると(塩 水鎮:10-20代45%,30-40代33%,50-60代以上21%.

図3:最初から現在までの善化牛墟変遷所在位置図(行政図は善化鎮公所ホームページより)

(4)

北港鎮:10-20代25%,30-40代53%,50-60代以上 21%),中年層の利用が一番多く,老年層が一番少な いといえる.利用者の年齢層が一番若いのは塩水鎮 であった.すぐ隣に大学(南栄技術学院)があるか

らであろう.

利用者の住所について,8割は善化鎮民であった.

県外の利用者は1割しかいなかった(図7参照).

「善化牛墟」は地域利用型と言えよう.ちなみに,塩 図4:「善化牛墟」所在地の変遷図

写真1:最初善化牛墟所在地の記念碑 図5:現在善化牛墟の位置図

(5)

水鎮民の利用は59%,北港鎮民は43%であることか らみると,この2か所の利用者は半分が外来住民で ある.「北港牛墟」の近くに全国的に有名な2級古 跡の「朝天宮」があるため,外来住民が多いと考え られる.

利用者の職業はサラリーマンが44%で一番多く,

次は主婦の24%で,その次のサービス業と自営業と も7%である(図8参照).調査日は土曜日という

休日であったので,無職の人だけでなく,働いてる 人達もフリーマーケットに買い物や休息に来ること から,「善化牛墟」は地域住民にとって休日に楽しめ る場所の一つだと考えられる.この日の利用者は

「たまに来る」のが69%で,「よく来る」が20%であ る(図9参照).

買い物の内容について,他の2か所の「牛墟」と 同様に,果物や食材,日常用品などの買い物が多い 写真2:善化鎮中心街にある「慶安宮」

写真3:「慶安宮」の正面

写真4:善化牛墟屋台コーナーの入り口

写真5:善化牛墟の屋台と利用者

写真6:田んぼの界隈にある善化牛墟

写真7:取引に来る牛滞在用の「牛小屋」

(6)

(図10参照).この「牛墟」の存在について,92%の 利用者は必要と考えている(図11参照).他の2か所 より極めて高い評価である(塩水鎮87%,北港鎮 69%).地域住民の帰属感が強いといえよう.さら に,この「牛墟」は地域の観光の発展に役立つと思 う人は88%であり(図12参照),観光フリーマーケッ トに発展していく観光資源の可能性についても87%

の人が認めている(図13参照).観光に役立つと思 う塩水鎮の「牛墟」利用者は66%で,北港鎮は55%

である.さらに,観光資源の可能性について認めて いる塩水鎮の利用者は62%で,北港鎮は53%しかい ない.一番古く,歴史のある「善化牛墟」は地域住 民の大切な存在だと分かる.

地域活性化のため,観光客を招く企画をする場合,

「環境の美化と改善」は一番望まれており,次は「喫 茶店や休憩所の増設」である(図14参照).「その他」

の12人の意見をまとめてみると,「①宣伝して,イベ ントをする.②統一企画をする.③地方の特色を出 す.④道路状況の改善.」などである.そして,役場

墟」になった,すなわち日常品のマーケットとなっ たといわれる.昔の伝統的な「市」であるため,全 体の運営管理や企画や雰囲気などは殆ど昔のまま 残ってきた.社会の流れや時代の変化に追いついて いない.100年前,車やバイクなどの現代の交通手 図7:利用者の住所

利用者の職業

図8:利用者の職業

買い物の内容

図10:買い物内容

図11:フリーマーケットの存在について 善化フリーマーケットを回る頻率

図9:利用率

存在する必要(N=100)

(7)

段は殆どなかった.現代になると,車やバイクなど が急増してきて,昔のままの「牛墟」は混雑する交 通状況に対応できないのは当然であり,対策が必要 である.現存三大「牛墟」のどれも上記の問題があ る.外来の観光客を招く場合,役場がもっと利用者 の意見を聞き,対策を講じる必要がある.

(二)販売者50人のヒヤリング調査について 性別年齢からみると,30-40代の中年層が8割以 上を占める.男女とも半々である(図18参照).9 割以上の人は「よく商売に来る」人々である.しか も半分以上は善化鎮の住民である(図19参照).さ らに多くの販売者は来客が多くて,商売しやすいと 考えている(図20,21参照).一日の売上金額は 1000-2000元のところが多い.98%の販売者はこの 市の存在は必要だと考えていることが分かった(図

22参照).「地域の観光に役立つ」と8割以上の販売 者が思っている.但し,観光資源としての可能性に ついて,自信があるのは4割だけである(図23参照).

利用者の8割以上は地元の人のため,観光資源とし ての可能性に自信がないのであろう.

観光客を招く企画について,利用者と同じく「環 境の美化改善」が一番望まれる(図24参照).さらに,

「その他」の内容をまとめてみると「①屋台や市の場 所などを新たに企画する.②混雑するため,歩行者 を一方通行にする.③周りの環境を改善する.④市 での車両出入りを禁止する」などである.また,役 観光フリーマーケットに発展していく可能性(N=100)

図13:観光資源の可能性について 地域の観光に役立つ(N=100)

図12:地域の観光に役立つ可能性

役場がするべきこと

図15:役所がするべきことについて 観光客を招く企画

図14:観光客を招く企画について

嫌いなところ

図17:フリーマーケットの嫌いなところ 惹かれるところ

図16:フリーマーケットに惹かれるところ

(8)

場がすべきことについて,「交通状況の改善と歩道 の企画と増設」以外にも,積極的に,41人が意見を 表明していた(図25参照).例えば,「①道路を拡幅 する.②衛生的な環境とエコロジー観念のアピール.

③駐車場を新たに企画する.④車両通行量の管理や

通行時間の規制.⑤トイレの設置.⑥屋台コーナー を新たな企画」などの意見である.積極的な提案か ら,「牛墟」を重視していることが分かる.魅力的な 点について,興味深いのは「人情味が溢れる」と半 数以上の販売者が示した(図26参照)ことである.

図18:販売者の性別年齢 住所&商売に来る頻率

図19:住所と商売に来る頻率 販売内容と来客状況

図20:販売内容と来客状況

図21:販売状況と一日の売り上げ金額 存在する必要

図22:存在の必要性について

地域観光に役立つ可能性&観光 フリーマーケットになる可能性

図23:観光に役立つ可能性と観光資源の可能性

(9)

問題点は上記の「その他」で示したのとほぼ同じ内 容で,「交通混雑と環境が汚い」を最も気にしている

(図27参照).

5.ま と め

台湾現存の三大「牛墟」は2つが台南県にあり(塩 水鎮と善化鎮),1つは中部の雲林県北港鎮にある.

台南県と雲林県は農業県として知られており,工業 化や商業化が進んでいる台湾の北部にはない.かつ て,農業県に,農業と密切に関連していた牛の取引 フリーマーケットの存在が残ったと考えられる.現 在の牛の取引は一番大きい「善化牛墟」だけに少し 残っているが,ここも現在はすでに利用客で賑わっ ている「人墟」になってきたと冗談で言われるほど である.

ではなぜ,「人墟」として残ったのか,この理由は 一つには農業県であるから近隣農民が生産したもの を売る,つまり,農産物が新鮮で,安いいわば「地 産地消」のためである.さらに,もう一つの理由は,

昔からの地方の濃厚な人情味も安心して買えるとい う,客にとっての魅力である.このように市場とし

て魅力的な存在であるから,問題を解決していけば,

地方の重要な賑わう場所となりうる.

「牛墟」のある塩水鎮と善化鎮は隣の町である.

同じ台南県にあるため,県政府側はこの2つの「牛 墟」の問題点を改善すれば,「廟と牛墟」を一体とし た新しい位置付け,つまり,移民社会と台湾農村文 化を残した観光資源として期待できる.

参考文献

1.蕭玉燕,鳥飼香代子:道教廟の利用内容と廟空間の考察

−台南市における道教廟の集い機能に関する研究(その 1),日本建築学会計画系論文集,第585号,2004.11 2.蕭玉燕,鳥飼香代子:廟の集い利用を進める管理運営に

ついて−台南市における道教廟の集い機能に関する研 究(その2),日本建築学会計画系論文集,第597号,2005.

11

3.蕭玉燕・鳥飼香代子:台南県塩水鎮の廟周辺にある「市」

と観光振興について,「生活文化,言語文化,教育,体験 交流」国際交流研究集会―熊本大学教育学部主催,2009 年8月1日.

4.蕭玉燕・鳥飼香代子:廟と共存する伝統的フリーマー ケットの観光資源としての可能性―台湾北港鎮「朝天

嫌いなところ

図27:フリーマーケットの嫌いなところ 観光客を招く企画

図24:観光客を招く企画について 役場がするべきこと

図25:役所がするべきことについて

好きなところ

図26:フリーマーケットに惹かれるところ

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参照

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