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長期の高脂肪食摂取がラット骨格筋における Glycogen Supercompensationに及ぼす影響

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

長期の高脂肪食摂取がラット骨格筋における Glycogen Supercompensationに及ぼす影響

著者 南岡 宏樹, 西川 徹朗, 水本 大樹, 中谷 昭

雑誌名 奈良教育大学紀要. 自然科学

巻 55

号 2

ページ 37‑42

発行年 2006‑10‑31

その他のタイトル Effect of High Fat Diet on Glycogen

Supercompensation in Rat Skeletal Muscle

URL http://hdl.handle.net/10105/233

(2)

長期の高脂肪食摂取がラット骨格筋における Glycogen Supercompensationに及ぼす影響

南 岡 宏 樹

*

・ 西 川 徹 朗

**

・ 水 本 大 樹

***

・ 中 谷 昭

奈良教育大学保健体育講座(運動生理学)

(平成18年5月8日受理)

Effect of High Fat Diet on Glycogen Supercompensation in Rat Skeletal Muscle

Hiroki MINAMIOKA

*

, Tetsurou NISHIKAWA

**

, Daiki MIZUMOTO

***

and Akira NAKATANI

(Department of Physical Education, Nara University of Education, Nara 630-8528, Japan) (Received May 8, 2006)

Abstract

The purpose of this study was to examine the effect of high fat diet on glycogen supercom- pensation in rat skeletal muscle. Male Wistar rats, 5weeks old, were assigned to either a high fat (60% calories as fat and 18% calories as carbohydrate)diet or a low fat (14% calories as fat and 56% calories as carbohydrate)diet. They ate their diets ad libitum for 5weeks. After overnight fast, the rats were exercised using a swimming protocol with a weight equal to 2% of their body weight for 2hours to deplete muscle glycogen. The rats were given the low fat diet plus 5%

sucrose in their drinking water ad libitum during the recovery period. There were no significant differences in serum glucose and insulin levels before and after exercise between the high fat and the low fat diet. The concentration of glycogen in vastus lateralis muscle averaged 9.2±4.6μ mol/g in the high fat group and 13.6±8.9μmol/g in the low fat group before exercise. Although there were remarkable increases in glycogen concentration 4h after exercise in both diet groups, there was no significant difference in glycogen concentrations between the high fat fed and the low fat fed rats (28.8±6.6and 23.7±6.5μmol/g, respectively). There was no significant difference in glycogen synthase %I activity 4h after exercise between the high fat and the low fat group.

There was no significant difference in GLUT-4glucose transporter protein in epitrochlearis mus- cles. These results suggest that long term feeding of high fat diet may not influence GLUT4con- tent and glycogen synthase activity in skeletal muscle and then the magnitude of glycogen super- compensation in rat skeletal muscle.

Key Words: glycogen supercompensation, high fat diet, GLUT4

キーワード: glycogen supercompensation,

高脂肪食,GLUT4

*御所市立大正中学校 **奈良市消防署 ***(財)社会保険健康事業団(兵庫支部)

(3)

1.緒 言

片足による自転車運動を疲労困憊まで行い,筋グリコ ーゲンを枯渇した後,高糖質食を摂取すると,運動した 足にのみ筋グリコーゲン含量が正常値の2〜3倍に増加 す る 現 象 が 見 ら れ る( 1 ). こ の 現 象 はG l y c o g e n Supercompensationと呼ばれ,この現象の起こる条件と して,1)運動による筋グリコーゲンの枯渇(1),2)筋 グリコーゲン枯渇後の高糖質食摂取(3)及び3)インス リンの正常な反応(10)の3つがあげられる.

また,持久的運動においてはエネルギー源として主に 糖質と脂質が利用されるが,特に骨格筋グリコーゲンは 重要なエネルギー源であり,運動前の筋グリコーゲン含 量が高いほど持久力が増大することから,持久的運動選 手の間では,glycogen supercompensationを利用し,

筋グリコーゲン含量を高めるグリコーゲンローディング という食事法が盛んに行われている(2)

一方,長期の高脂肪食摂取は,筋グリコーゲン含量を 低下させるものの,骨格筋の酸化系酵素活性を増大し,

運動時の脂質代謝を亢進することから,運動時の筋グリ コーゲン利用の節約がおこり,持久力を増大させること が報告されている(12).従って,長期の高脂肪食摂取に より骨格筋の脂質代謝を高めた上に,試合数日前より高 糖質食に切り替えることによりグリコーゲン含量を高め ると,持久力が著しく増大するものと考えられる.

ところで,Nakataniら(13)は,持久的トレーニングが Glycogen Supercompensationに及ぼす影響について検 討した結果,非トレーニング群に対して,トレーニング 群でより大きな筋グリコーゲン含量の増大がみられたこ とを報告している.これは持久的トレーニングが骨格筋 における糖輸送担体(GLUT4)含量の増大をもたらし,

血中からの糖の取り込み能を増加させたためであると考 えられる(16)

しかし,長期に高脂肪食を摂取すると骨格筋における

GLUT4含量が低下すること(14)から,長期の高脂肪食摂

取はGlycogen Supercompensationの大きさを低下する 可能性がある.

そこで本研究ではラットを対象に長期の高脂肪食摂取 が骨格筋のGLUT4含量及びGlycogen Supercompensation に及ぼす影響について検討した.

2.方 法

2.1.実験動物

実験動物として5週齢のWistar系雄ラット(日本エル エスシー)50匹を用いた.これを低脂肪食摂取群(L 群;n=25),高脂肪食摂取群(H群;n=25)に分け,

5週間飼育した.飼料に含まれる脂質カロリー%はL群

13.6% ,H群60.2% と し ,1n当 り の カ ロ リ ー はL群 3.98kcal,H群5.53kcalであった.

実験動物は,飼育条件が室温22±1℃,湿度55±5%,

明期と暗期を12時間サイクルとする動物飼育室で飼育 した.飼育期間中,飼料及び水は自由摂取とした.筋摘 出は一過性の運動の前,運動直後,運動4時間後,運動 24時間後に実施した.一過性の運動は,体重の2%に 相当する負荷になるように尾に錘を付け,水温35±

1℃,水深50bの水槽の中で30分の水泳運動を5分の 休憩を挟み4セット,計2時間行わせた.水泳運動終了 後,直ちに普通食と5%ショ糖溶液を自由摂取させ,筋 摘出までは安静状態を保たせた.pentobarbital sodium 麻酔下骨格筋の摘出及び採血を行った.骨格筋は摘出後 直ちに液体窒素で凍結し,測定に用いるまで−80℃で 冷凍保存した. 採血は腹部大動脈より行い,採血後遠 心分離により血清を得,血糖及びインスリンレベルの測 定に用いた.

2.2.測定方法

2.2.1.筋のグリコーゲン含量の測定

筋 グ リ コ ー ゲ ン 含 量 の 測 定 に は ,Lowry and Passonneauの方法(11)を用いた.

均等化した溶液中のグルコース濃度を,グルコース測 定キット(Fキット;ベーリンガー・マンハイム社製)

を用い分光蛍光光度計(F-2500 Spectrofluorometer;日 立製作所)により測定した.単位はμmol/nで示した.

2.2.2.グリコーゲン合成酵素活性の測定

グリコーゲン合成酵素活性の測定には, Passonneau and Lowryの方法(15)を用いた.

グリコーゲン合成酵素は活性型のI型と不活性型のD 型からなり,本測定ではグリコーゲン合成酵素の全活性 値及びグリコーゲン合成酵素I活性値を求めた.本研究 では全活性値に対するI型の比率(%I form)でグリコ ーゲン合成酵素活性値を示した.

2.2.3.GLUT4含量の測定

骨格筋のGLUT4含量はWestern Blotting法により定量 した(18)

筋サンプルを電気泳動後,125IでラベルしたGLUT4タ ンパクでインキュベートし,GLUT4タンパクを含む部 分をγカウンターで計測し,GLUT4含量を求めた.

2.2.4.血糖値及びインスリンレベルの測定

血糖値及び血清インスリン濃度は自動分析により測定 した(株式会社ファルコバイオシステム).

南 岡 宏 樹 ・ 西 川 徹 朗 ・ 水 本 大 樹 ・ 中 谷 昭 38

(4)

2.3.統計処理

統計量は,平均値±標準偏差で算出した.各グループ における時間経過に伴う変動については分散分析によ り,また,各時点におけるグループ間の差はStudent t- testを用い統計処理を行った.有意水準は5%未満とし た.尚,1ケージ当り2〜3匹の割合で飼育したため,

飼料摂取量及び摂取カロリーについては,平均値のみを 求め群間の比較は行わなかった.

3.結 果

3.1.飼料摂取量,摂取カロリー及び体重

5週目の飼料摂取量はL群16.0n,H群11.3nと,H 群で低い値を示した. 計算により求めた摂取カロリー はL群63.7kcal,H群62.5kcalと,食餌の違いによる差は 見られなかった.

5週目の両群の体重はL群206±14nに対し,H群 206±12nと,食餌による差は認められなかった.

3.2. 骨格筋グリコーゲン含量

図1は運動前後における外側広筋のグリコーゲン含量 を示したものである.

図1長期の高脂肪食摂取が一過性運動に伴う外側広筋の グリコーゲン含量に及ぼす影響

a; 運動前との有意差(P<0.01)

b; 運動前との有意差(P<0.05)

運動前ではL群13.6±8.9μmol /n(n=6)に対し,HS 群9.2±4.6μmol/n(n=3)と,H群でやや低い値を示し たが,有意差は認められなかった.

運動直後ではL群3.2±2.3μmol /n(n=5),H群6.2± 5.2μmol/n(n=5)と,両群とも運動前に比較し著しく 低い値を示した.しかし,両群間において有意差は認め られなかった.

運動4時間後ではL群23.7±6.5μmol /n(n=5),H群 28.8±6.6μmol /n(n=6)と,両群とも運動前と比較し 高い値を示し,両群ともglycogen supercompensation が認められた.H群は運動前の値と比較し有意(P<0.05)

な増加であった.

運動24時間後ではL群32.2±4.9μmol /n(n=6),H群 22.7±7.8μmol /n(n=6)と,4時間後同様運動前と比 較し高い値を示した(L群はP<0.01で有意な増加).し かし両群間に有意な差はなく食餌の影響が認められな かった.

3.3.グリコーゲン合成酵素

図2は外側広筋のグリコーゲン合成酵素活性(%I form)を示したものである.

図2長期の高脂肪食摂取が一過性運動に伴う外側広筋の グリコーゲン合成酵素活性(%I活性)の変動に及 ぼす影響

a; 運動直後との有意差(P<0.01)

b; 運動直後との有意差(P<0.05)

運動前ではL群28.8±9.8%に対し,H群27.1±10.9%

と,ほぼ同じ値を示した.

運動直後ではL群50.8±17.0%,H群43.7±8.7%と,

運動による筋グリコーゲンの低下にともない活性値は上 昇したが,両群間に有意差は認められなかった.H群で は運動前と比較し有意(P<0.01)な増加であった.

運動4時間後ではL群17.7±4.8%,H群20.2±3.6% と,グリコーゲンの増加に伴い活性値は低下した.運動 直後の%I formと比較すると,両群とも有意な低下であ った(L群はP<0.001,H群はP<0.05)が,食餌による 違いは認められなかった.

運動24時間後ではL群15.6±8.2%,H群17.0±5.1% と,H群でやや高い値を示したが有意差は認められなか った.

3.4.GLUT4含量

図3はepitrochlearis筋のGLUT4含量を示している.

L群42.4±5.0cpm/μnタンパク質(n=6)に対し,H群

では36.4±5.8cpm/μnタンパク質(n=5)とやや低い 値を示したが,両群間に有意差は認められなかった.

(5)

図3長期の高脂肪食摂取が骨格筋の糖輸送担体

(GLUT4)含量に及ぼす影響

3.5.血糖値及び血清インスリン濃度の変動

図4は血糖値の変動を示したものである.運動前では L群182±16m/qに対し,H群220±12m/qと,H群で やや高い値を示したが有意差は認められなかった.

運動直後では,両群とも低下を示し,H群では有意

(P<0.01)な低下であった.

運動4時間後では両群ともほぼ運動前の値に回復し,

24時間後も同じような値を示した.いずれの時点にお

いても食餌による違いは認められなかった.

図5は血清インスリン濃度の変化を示したものであ る.運動前ではL群21.6±7.9μU/pに対し,H群20.9±

1.6μU/pと,ほぼ同じ値を示した.

運動直後ではL群6.7±4.0μU/p,H群5.3±2.3μU/p と,両群とも低下を示したが,運動後には時間経過とと もに回復した.血糖同様いずれの時点においても食餌に よる違いは認められなかった.

4.考 察

マラソンのような持久的運動時にはエネルギー源とし て主に糖質と脂質が利用される(17)が,特に骨格筋グリ コーゲンは重要なエネルギー源であり,筋グリコーゲン が枯渇する時点で持久的運動の継続できなくなることが 知られている(9).また,運動前の筋グリコーゲン含量 が高ければ高いほど持久力が増大するため,持久的運動 選手の間ではレースや試合数日前から高糖質食を摂取す るグリコーゲンローディングという食事法が盛んに行わ れている(2)

一方,長期の高脂肪食摂取は,筋グリコーゲン含量を 低下させるものの,運動時の脂質代謝を亢進するため,

筋グリコーゲンを節約にするため持久力を増大すること が知られている(12)

従って,長期の高脂肪食を摂取した後,試合数日前よ り高糖質食に切り替えることにより,それぞれの食事法 を単独に行うより,持久力増大に大きな効果が得られる ものと考えられる.

そこで,本研究では,長期に高脂肪食を摂取したラッ トを対象に,一過性の運動後の高糖質食摂取がglycogen supercompensationに及ぼす影響について検討した.そ の結果,運動終了4時間後及び24時間後ではL群及びH 群において運動前より筋グリコーゲン含量が正常値を超 えて増加するglycogen supercompensation が見られた.

しかし,その大きさに食餌による違いが見られなかった

(図1参照).

筋グリコーゲンの合成にはグリコーゲン合成酵素が働 いている.グリコーゲン合成酵素は活性型であるI型と 不活性型であるD型が存在し,グリコーゲン合成時には D型がI型に変化することにより合成が促進する.図2 に見られるように,筋グリコーゲンが低下した運動直後 においては両食餌群とも%I formが増加し,筋グリコー ゲンの合成が盛んに行われていることが推測される.し かしグリコーゲン合成酵素活性には食餌による違いが見 られなかった.

また,筋グリコーゲンの回復には糖質の摂取とインス リンの分泌が必要であることが知られている.図3及び 図4に見られるように,糖質摂取により運動4時間目に 南 岡 宏 樹 ・ 西 川 徹 朗 ・ 水 本 大 樹 ・ 中 谷 昭

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図4長期の高脂肪食摂取が一過性運動に伴う血糖値の変 動に及ぼす影響 a; 運動前との有意差(P<0.01)

図5長期の高脂肪食摂取が一過性運動に伴う血清インス リンレベルの変動に及ぼす影響

(6)

は両群とも血糖値は正常レベルに回復し,それに伴いイ ンスリンレベルも回復している.しかし,血糖値及びイ ンスリンレベルの運動前後の変動には食餌による違いが 見られなかった.

Nakataniら( 13)は 持 久 的 ト レ ー ニ ン グ がglycogen supercompensationに及ぼす影響を検討したところ,ト レーニング群で著しく大きなglycogen supercompensa- tionが見られたことを報告している.これはGLUT4含量 の増大により骨格筋への糖の取り込み能が増大したため

である(4)(16).これに対し,高脂肪食を長期に摂取する

とGLUT4含量の低下が起こり,骨格筋における糖取り 込み能が低下することが報告されている(14).従って,

高脂肪食を長期に摂取すると,運動後のグリコーゲン回 復が抑制される可能性がある.しかし,本研究では骨格 筋のGLUT4含量は高脂肪食群でやや低い値を示したも のの,有意な差は認められなかった(図5参照).この ことから,運動後の骨格筋における糖の取り込みに,食 餌による違いが見られないものと考えられ,その結果 glycogen supercompensationの大きさに差が認められ なかったものと考えられる.

以上の結果から,5週間の高脂肪食摂取は骨格筋のラ ット骨格筋のglycogen supercompensationに影響を及 ぼさないことが分かった.従って,持久的運動選手の食 事法として高脂肪食摂取の有用性が示唆されるが,高脂 肪食摂取は体脂肪量の増加や高脂血症を発現する可能性 があり,今後さらに検討する必要がある.

5.摘 要

本研究では,長期の高脂肪食摂取がラット骨格筋にお けるGlycogen supercompensationに及ぼす影響につい て検討した.実験動物として,5週齢のWistar系雄ラッ ト50匹を用いた.これらを低脂肪食摂取群(L群)及び 高脂肪食摂取群(H群)に分け5週間飼育した.

飼育期間終了後,筋グリコーゲンを枯渇させる目的で,

体重の2%に相当する錘りを尾に付け,5分の休息をは さみ,30分の水泳運動を4セット負荷した.その後,

直ちに普通食と5%ショ糖溶液を自由摂取させ,運動前,

運動直後,運動4時間後,運動24時間後に筋摘出と採血 を行った.

結果は以下の通りである.

1)水泳運動後の筋グリコーゲン含量は両食餌群とも運 動前の値より増加し,glycogen supercompensationが 見られたが,その大きさに食餌による違いが見られな かった.

2)グリコーゲン合成酵素活性(% I form)は両食餌群 とも運動直後で最も高くなり,運動4時間後及び24時 間後では低くなったが,食餌の違いによる有意差は認

められなかった.

3)運動後の血糖及びインスリン濃度に食餌による違い が認められなかった.

4)筋GULT4含量は高脂肪食摂取でやや低下したが,

有意な低下ではなかった.

以上の結果から,5週間の高脂肪食摂取は一過性運動 後のラット骨格筋におけるGlycogen Supercompensation のレベルに影響を与えないものと考えられる.

本研究は科学研究費補助金(基盤研究 C 課題番号 13680028)を用いて行った.

GLUT4含量の定量に協力を得た,国立健康・栄養研 究所の田畑泉氏及び早稲田大学大学院 寺田新氏に深謝 いたします.

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