教授用簡易熱処理炉の授業への適用
機械第1研究室 小 島 勤 1.緒言
中学校技術・家庭 男子2の教科書では,中学校学習指導要領にもとずき,熱処理についての題材 がある。これについては,文部省発行の中学校技術・家庭科 研究の手びきや,各県で独自に発行さ れている技術・家庭科の手びきなどがある。
茨城県教育庁指導課で発行している中学校技術・家庭科 学習指導の手びき(男子向き)第2学年 金属加工領域をみていくと,指導上の問題点とその解明例として,② 熱処理のしかたや,そのはた
らきが関連的にとらえにくい。とあり,生徒達は,焼入れということばは一般的に聞いたことはある と思われる。しかし,焼入れとはどんなことか,焼入れすると金属はどのように変化するか,焼入れ はどんな金属にでもできるのか,焼入れとはどんなことをするのかなど,焼入れひとつをとっても,
なかなかとらえにくい。とある。さらに手びきには,熱処理の実習(実験)をさせる。として Q 材質によって(炭素量の多少)焼入れ効果のちがいをとらえさせる。
。 冷却方法による焼入れ効果のちがいをとらえさせる。
・ 熱処理の熱源としては,つぎのようなものがある。
・木炭 ・煉炭 ・軽油バーナー(以hいずれも強制送風につき,煉炭の場合は1時間ほど前に
「こんろ」で火をおこしておき,使用時に送風する。) ・ガスバーナー ・トーチランプ(2台 を15〜20㎝1ほど離しておき,炎を90度くらいに交叉させ,交叉点に素材をあてる。) と書 かれている。授業時間の関係で,なかなか手びき通りには,いかないにしても,この程度のことは やる必要があるであろう。ところが実際には,熱処理をするに十分な熱源と,それの保持およびコン トロールする装置が簡単には得られない。手びきのように,煉炭を1時間ほど前に「こんろ」で火を おこしておき,使用時に送風することも困難なことであるし,ガスバーナーやトーチランプを2台使 って,素材にほのおを当ててみても,一定時間素材を均一に加熱することは不可能である。
このようなことから,熱処理の指導は現場では一番やりにくい箇所とされている。
そこで,簡単にしかも安く,熱処理に必要な温度が得られ,一定温度で一定時間素材を均一に加熱 することのできる小型実験炉ができないものだろうかと考え,ここに教授用簡易熱処理炉を試作して みた。教授用としたのは,現状ではグループでこれを使う必要はないと考えたからである。そして次 の諸点を満足するよう設計した。
一31一
、
1)家庭用100Vのコソセソトから電源がとれること。
2)低電力でしかもすみやかに所定の温度まであげられること。
3)素材を金火箸やヤットコなどでつかむことなく,そのまま冷却液の中に入れて熱処理ができるこ
と。
41j金ノコなどの刃が長いままで入れられること。
5)持ち運びが楽にできること。
6)簡単に作れ,しかも安くできること。
7)素材の加熱状態(色と温度との関係)が容易にわかること。などである。
試作品の容量は400W,1時間以内にgoO℃まで上昇させることができ,耐熱材として中に石 綿をつあた場合は約1万aoOO円,石綿のかわりに普通の砂で代用した場合には,わずか3500 円程度で作ることができた。しかも砂で代用した場合でも,普通の電気炉と同じ程度の性能が得られ ることが実験の結果からわかった。ただ砂で代用した場合には,重いという穴点がある。
次にこれを実際に中学校の授業で何回か使用してみた結果,いずれも効果があがったので,これを 使っての授業を中心に報告する次第である。
2 熱処理についての現場の状況
以上緒言でものべたように,熱処理は各中学校で指導しなければならないのであるが,これに対処 するための実験装置が,どの程度ととのっているか。をまず調査してみた。
まず県下の中学校を全部書き出し,更に各市町村から50校を選び,調査を依頼した。現在までに 26校から回答があった。調査内容は次のようなものである。
熱処理についての調査
学習指導要領〔第2学年〕金属加工では,
ア.
イ.
ウ.同じ材質でも熱処理の方法によって性質が異なることを知る。
とあり,教科書でも 開隆堂 p70 1頁分 実 数 〃 〃
熱処理についての説明があります。そこで次の項目について調査したいと思いますので,よろしく御 協力のほどお願いいたします。
調 査 項 目
1.熱処理実験の設備がありますか。
1.熱処理炉 あ る な い
2 高温計 あ る な い (1000℃くらい計れるもの)
a 熱電対 あ る な い
皿.熱処理については,どの程度説明しておりますか。
1.教科書の説明だけ
2 実験もする。(具体的にかいて下さい)
皿.熱処理をどの程度学ばせたらよいと思いますか。
押.熱処理実験装置が安く作ることができるならば,試作したいと思いますか。
V.焼入れするとなぜ硬くなるか。などの質問を受けたことが今まで何回くらいありますか。
゜ 以 上
次にその結果についてのべてみる。
1.では熱処理炉をもっている学校は少なかったが,中にはダルマストーブを改艮して熱処理炉を 作った学校,木炭利用のファソ付火床をもっている学校,美術科の炉を借用している学校があった。
高温計,熱電対をもっている学校は,調査した中では皆無であった。
∬.の指導の項目については,トーチラソプを用いて熱処理の実験をしてみせているという学校が 多かった。
皿.の熱処理をどの程度学ばせたらよいかについては,ほとんどの学校が焼入れと焼なましがわか ればよいという程度であった。中には,生徒は現象面の説明や実験だけではものたらないことは事実 である。しかしその理由については,原子配列など理論が高度になるので取りあつかわない方がよい だろうという意見があった。
W.の簡易熱処理炉を試作してみたいかについては,26校中24校が試作してみたいと回答して おり,是非講習会を開いてほしいと希望している学校もかなりあった。
V.の焼入れするとなぜ硬くなるかの質問については,ほとんどの学校が受けたことがないと回答 してきた。しかし中には生徒から質問がでるよう指導計画をたてて授業しているので,質問がでると いう学校もあった。
a熱処理炉の製作
1)ニクロム線を焼なましする
購入したニクロム線は非常にかたく,そのままでは炉心管に巻くことが非常に困難であるので,あ らかじめ約900℃に加熱したのち炉冷して軟化させておくと便利である。
2)炉心管にニクロム線を巻く
長さ300㎜,外径37㎜の炉心管に,両端15㎜を残して,5㎜間隔に印をつけ,ニクロム線を 巻いていくと54巻できる。1巻が37π㎜であるから,取出部を両方合わせて300㎜と考えても,
約α6〃泌要となる。
3)炉心管に巻いたニクロム線をカオリソで固定させる。 一 一33一
lI 脚
、
カオリン!陶磁器の原料)を水で固めにとき,一様にやや厚めに(8〜10㎜の厚さ)ぬり,半日 程陰干しする。こうしてカナリソがまだ完全に乾かないうちに,水でぬらしたアスベスト(手で軽く にぎって水がきれる程度)をカオリンの上に厚めに(10㎜くらいの厚さ)つけていくのであるが,
アスベストが水を含みすぎていると,カオリンを溶かしてしまうおそれがあるので注意しなければな
らない。
ニクロム線を購入したままで(焼なましをしないで)巻いた場合は,アスベストを均一にぬり終っ た後,アスベストが乾燥しないうちに,布切れで何回も巻き約1週間陰干しするとよい。こうしない とニク・ム線のもどる力で・カオリンやアスベストにひび割れを起す危険性がある。
4)外わくの製作
鋼板で作った150x150x300㎜のわく本体の中に炉心部を入れ,アスベス て突き固め,炉心部を本体中心に固定させる。電源に入る2本のニクロム線は,
の2箇所にあけられた穴から出す。両わきの部分は,炉心管の外経と同じ大きさにく
わく本体にはめねじ止めする。 \
5)炉のふた
耐火粘土で炉のふたを作るのであるが,一方は熱電対が入るので,その経に合わせて,穴のあいた ふたを作らなければならない。耐火粘土は空気中で乾燥した場合は,全体の約10%,素焼した場合 は,ほとんど収縮がない。実際には成形後1週間陰干をし完全に固化した後,布ヤス
がり寸法まで加工し,電気炉又は焼窯に入れて焼く。素焼をするに際しては,最初の300℃までは できるだけ時間をかけて(4時間程度)温度をあげていき,その後も1000℃くらいまでは,注意 しながら温度を少しずつあげていき,全部の所要時間が8時間くらいになるように加熱をおこなう。
なおはじめのうちは,100℃くらいまでは炉のふたは開けておき,粘土中の水蒸気を逃がした方が よい。冷却もできるだけおそい方がよく,電気炉を使って焼いた場合であるならば,
ままで電源を切ればよい。
こうしてできたふたには,熱電対をさしこみ,炉本体にはこれを回転させるためのスタンドおよび 取手を取り付けて完成させる。第1図は完成した試作電気炉を示したものである。
取手 300 }一一一 先一卿 150
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第1図 試 作 電 気 炉
4電気炉の性能
試作電気炉に熱電温度計を取り付け,電流計,電圧計,小型スライダックを通して通電する。ここ
でスライダックにより電圧を100V,110V,120V,130V, とかえていったとき,炉内 電 圧 (V) 電 流 (A) 900℃になるまでの時間(分)
100 40 120
110 4.15 95
120 4.3 65
130 4.5 30
第1表 電圧の変化と炉内温度がqoO℃になるまでの時間
の温度が900℃になるまでに,どのくらい時間を要するかを測定したところ,第1表のようであっ た。(p.41の註を参照。)
なお電圧を130Vにあげると,goo℃までに30分というスピードであげることができる。し かも,いったん炉内の温度が900℃まであがってしまうと,その後の温度上昇はきわめてゆるやか であるため,高価な熱電対および高温計,電圧,電流計など使用しなくても実験はできるのである。
(測定器具が中学校にない場合)
この急速加熱能力は,この試作電気炉のもっとも大きな特長であって,他のいかなる市販電気炉の 一 場合であっても,このよ
うな急加熱はできないで 900
あろう。いま電圧130
800キ V,電流5Aの場合の時
700x 間と炉内温度との関係を
⑪600 グラフに示せば,第2図
↑500 のようになる。次に熱処
400 理に使用する試料として,
300 直径8㎜,長さ35㎜の
硬鋼(SK2)を用いて,
200 焼入れ(常温水,90℃
100 水,1 o%食塩水,植物
0 性食用油10 20
)の実験をおこ ない,硬さの変化をロヅ 第2図 電圧130Vの場合の時間と炉内温度との関係 クウェル硬度計により測
定してみた。
冷却液硬度
水(常温) 水(go℃) 食塩水(10%) 食用油(植物性)
HRC
621 55.8 623 443第2表 各種冷却液を用いての焼入れ結果 一35一
その結果は第2表に示すとおりである。これは市販電気炉の場合と何らかわることなく,完全に実用 化されることを意味するものである。
5試作電気炉の授業への適用
授業にさきだ:ち,生徒がどの程度熱処理についての知識があるかを調査してみた。
1)調査内容と集計結果
以下はある中学校(2校)で男子2年生 143名について調査した結果である。0内の数字は人数。
L あなたは,焼入れという言葉を聞いたことがありますか。
イ)聞いたことがある(62)
ロ)聞いたことがない(81)
イ)と答えた人に対して,焼入れはどうすることですか。
。まっかに焼くこと(22),。まっかに焼いた鉄を急に冷す(10),。熱して強くする(10),
。鉄を焼いてたたく(18)
解答した者62名中,まっかに焼いた鉄(鋼のこと)を急に冷す。と答えたものを一応正解とする と,これは全体(143名)の7%しかなかった。鉄を焼いてたたく(これは鍛造である)と答えた 人が18名ほどいたが,これは今までに鍛冶屋などで,そのようなことを見たことがあるためであろ
う。
2. 日本刀はどのようにして作るかを聞いた(読んだ)ことがありますか。もし聞いたり,読んだり していたら,簡単に答えなさい。
解答者は57名で内訳は次の通りであった。
。鉄をまっかに焼いて,たたいたり,冷したりすることをくり返しながら作る(18)
。鉄をとかして打つ(30),。とかした鉄を刀の型に流し込む(2),。焼く(4),
。焼いてたたく(31)
答えた者57名のうち,ほぼ妥当な答を出した者が18名。これは解答者の32%にあたる。
a 次のもので鋼と思うものに○印をつけなさい。
イ)普通の釘(85) ロ)ナイフ(59) ハ)ハンダ(29) 二)水道の蛇口(30)
ホ)木工用キリ(41) → ブリキ板(35) ト)ベントウ箱(21) チ)電線(21)
リ)ノコギリ (51) ヌ)鉄道の線路(56) ル)胸豫などの美術品(4) オ)ミシソの踏 み板(27)
これは多少むつかしかったかも知れなかったが,電線,ベントウ箱など金属ならすべて鋼と間違え ている者もかなりいた。
4.火事場から捨ってきた刃物などは,そのままで使えると思いますか。
イ)そのままでとげば使える(44) し ロ)そのままでは,といでも使えない(46)
ハ)わからない(55)
a そのままでは使えないと答えた人は,再び焼入れなどすることによって,使えるようになると思 いますか。
イ)いったん,だあになったものは,どんなことをしても使えない(16)
司再び使えるようになる(28)
ハ)わからない(2)
何らかの状態によって焼戻された工具類も,再び焼入れなどの熱処理をすることによって,使える ようになる。と答えた者は28名,全体の1a6%にあたる。 ド
a 鋼の原料(或は鉄の原名の名前でもよい)は何であるかわかりますか。
。 鉄(18) 。鉄鉱石(28) 。砂鉄(6) ・銅(4) ・鉄鋼(2)
鋼の原料として,鉄鉱石,鉄,砂鉄と答えた者は52名おり,これは全体の36%にあたる。
2)原子模型の製作
瀦糠二夏1灘;諜蒸蟻難麟難歩一、
蟹麓粛灘鵬瀞二麺諺蒐r馨雛鰯…傭
謠J綴撚趨農一 鱗撫麟霧韓素量が増加すると,それにともなってパーライト 鷺懇一 灘 押 蕎量が増加することを示すために,α1%C,α2
%C,α3%C,α4%C,α5%Cの焼なまし 第3図 原 子模 型
馬 ハ真を生徒にくばった。 左;面心立方格子 右;体心立方格子
これにより,微視的な世界に生徒達を誘導し,
巨視的には同じに見える金属材料も,微視的には 全く異った組織をもつものであることに気づかせ
思考をその本質に迫まらせようとしたものである。
矯 各一一…写真 噛黛灘灘プリント,図表などをもって,実際に中学校で授業 等. 撚、をおこなってみた.第4図は授業中の一場面を示 ∵葉羅・轡 磯したものである・(旧型試作炉を使用した・) 灘匹還雛職攣 轟謙膿讐 嘱擦∵書鷲 ㌔ ㍉ 鍮麟毒
第4図 授 業 風 景
一37一
第2学年 技術・家庭科学習指導案
指導者小島 鋤
1.題 材 ドライ・ミーの製作
2 目 標 。主として棒材で構成する金属製品の設計と製作を通して,使用目的,使用条件に合 った製品を得るために必要な金属材料の選択や,熱処理などによる性質の改善,設計 にしたがって,正確で精密な測定や加工ができるようにする。
。製作に必要な金工具や工作機械,測定具などが,正しく安全に操作できる能力を養
う。
。日常生活における金属製品の選択について考えさせ,金属と生活についての関係を 知らせる。
a 指導計画 (27時間扱い)
L 設 計 7時間 2 製作の準備 2時間
a 製 作 15時間(本時はその3・4時)
4.評価と反省 1時間 5 金属と生活 2時間 生 本時の目漂 1.炭素鋼および炭素工具鋼の概要を知る。
a 炭素鋼は,同じ材質でも,熱処理のしかた(焼入れ,焼なましなど)によって,
鋼の性格がかわること,その性質を利用したものが種々あることを知る。
丘 展 開
学 習 内 容 準 備・資 料 指 導 上 の 留 意 点 1.本時の学習内容について説明
をする。
2 炭素鋼の分類は,炭素の含有 ・プリント ・ 炭素量の多いものが,刃もの,工 量で行なわれていることを資料 ・図・表 具などに使われていることに気づか
を通して理解させる。 せる。
a 熱処理の意味と方法を理解さ ・プリント ・ 熱処理の意味と必要性を十分にと
せる。 ・図・表 らえさせる。
・焼入れ温度と色
・冷却のしかた ・ 熱処理のしかたや,そのはた
・その結果 らきが関連的にとらえにくい。
・焼なまし温度
・冷却のしかた
。その結果
学 習 内 容 準 備・資 料 指 導 上 の 留 意 点 4 実験1.弓のこの刃(焼なま ・弓のこ ・ 切断結果に疑問をもたせて,刃も L
したもの,しないもの)を使っ ・同 刃 の,工具などの加工法に気づかせる て軟鋼棒を切断して,その結果 ・軟鋼棒
を考える。 ・やすり
5 実験2 弓のこの刃および軟 ・電気炉 ・ やけどやけがに十分注意させる。
針金を焼入れ,焼なましをおこ ・ブソゼンパーナ ・ 加熱温度は,加熱された鋼の色で ない曲げてみる。 ・弓のこの刃 判断させる。
・弓のこの刃を850℃まで上 ・軟針金 ・ 工具鋼は焼入れすることにより硬 げた後,水で急冷(焼入れ) ・やっとこ 化したこと(焼もどしの必要性につ
・弓のこの刃を850℃まで上 。皮てぶくろ いてもふれる)又,焼なましにより げた後,空気中でゆっくり冷や ・ばけつ 軟化したことに気づかせる。
す(焼なまし) ・ 軟針金は焼入れしてもかたさがか
・軟針金についても同様の実験 わらない。
を行い曲げてみる。
6. 炭素鋼は炭素の含有量ばかり ・ 炭素鋼では,熱処理できるものと でなく,熱処理によって性質が できないもの(軟鋼)があることが
かわることを理解させる。 わかり,また熱処理できる材質でも
熱処理の方法で性質がかわることに 唖 気づかせる。
乳 なぜ炭素鋼は焼入れするとか ・原子模型 ・ 巨視的には同じに見える金属材料 たくなるのかを考える。 体心立方格子 でも,微視的にはまったく異った格 面心立方格子 子配列や顕微鏡組織をもつものであ
・顕微鏡写真 ることを気づかせる。
・鉄一炭素系状態図 8 次時予告
6.評 価 L 炭素鋼の性質と用途がわかったか。
2 熱処理(焼入れ,焼もどし,焼なましなど)により,炭素鋼の性質が変化するこ とがわかったか。
5)評価
授業の結果については,次の技術・家庭科の時間に評価をおこなった。(調査人員17名)
評価は炭素の含有量による分類と用途,それに熱処理を中心として出題した。以下それについて示 す。( )内の数字は人数。
工 鋼の焼入れおよび焼なましの温度は何度くらいが適当ですか。又その時の色は何色ですか。に対
しては,
一39一
。850℃から900℃くらい(15), 。800℃(1),1,800℃(1)
又その色については,
。だいだい色又はオレンジ色又は朱色など(15),赤(1),赤紫(1)
2.鋼の焼入れについて説明しなさい。に対しては
。鋼をだいだい色になるまで(或は850℃くらいまで)加熱してから水中に入れる(15),
。かたい鋼をやわらかくすること(1),。わからない(1)
a 火事場などから捨ってきた刃物は,そのままでは使えません。これはなぜですか。に対しては
。焼なましされたため(13),。火事で再び加熱されてやわらかくなった(1),。温度が焼入 れ温度よりも高かったから(1),。焼入れされたため(2) 〜
↓ これをもとの刃物のように使える状態にするにはどうすればよいですか。に対しては
。焼入れをする(13),。焼なおす(1),。焼もどしをする(1),。焼なましをする(1),
。わからない(11
5 鋼は鉄中に含まれる炭素の含有量(%)がα04%からL7%までをいいます。炭素の含有量の 少ないものは,かたいですか,やわらかいですか。に対しては,
。やわらかい(15),。かたい(2)
α かみそりの刃とかのこぎりの刃などは,炭素の含有量が多いですか少ないですか。に対しては
。多い(15),。少ない(2)
乳 ブリキ板,トタソ板,やわらかい針金あるいは釘などは,炭素の含有量が多いですか少ないです か。に対しては
。少ない(15),。多い(2)
& 鋼は熱したり,ひやしたりすると,やわらかくなったり,かたくなったりして性質がかわりまし た。性質をかえるための操作を熱処理といいました。熱処理には,焼入れのほかに,どのようなも のがありましたか。に対しては
。焼もどしと焼なまし(12),。焼もどし(1),・焼なまし(2),。焼まわし(1),。焼 直し(1)
以上のようであるが,17名中15名くらいは大体理解できたとみてよいであろう。
以上授業を通して気がついた点をいくつかあげて結論とする。6結論
1)授業に使用した炉はタテ型であるため,素材をとりだすことは大変便利であったが(第4図参照),
炉内の状態(色)が外から見えないという声があったので,これはただちに第1図に示すようなヨ コ型に改艮した。改艮したものも回転式としたために,素材を取出すときは,取手を上げれば,炉 はタテになり,自動的にふたは開き,素材は下に落ちる。
2)試作電気炉はあくまでも教師実験用として使用し,取出した素材の色から,熱処理温度を指導し た。なお,グループごとにも指導した。(第5図・第6図)
炉軍融
.中… 毎 訳郭
璽 ゴ隠 。鐵
・ 瓢, ・賭
識為 灘・燃
@ 毛
@ 灘@ 華ォ 轍蒙 撫藁蟹聖パ ・瞭
第5図 鋼の温度と色との関係 第6図 熱処理実験
3)試作電気炉は第7図のように,のこ刃全体を長いまま均一 に焼なましておくのに大変役にたった。(のこ刃には焼なま
しによる黒かわのあとが見える。)これからグループによる 鴨譜:犠、
焼入れ読もどし説なましの実験がはじまる・各試料は・ @ 紹瞬瓢犀臆瀞
蛯P三lll灘欝1三1飯讐灘れればすぐに所定の温度まで加熱されるので便利である. …摂鐸婁 ㌃寸
5)顕微鏡写真は,炭素含有量とパーライト組織の関係から, 瀞 海甜 炭素の含有量が増加すると,それにともなってパーライト量
も増加して,かたさに影響をおよぼすこと。および同じ材質
でも焼入れしたとき(マルテソサイド組織)と焼なましした 第 7 図 とき(パーライト組織)では,組織が変化するということ。
これらが性質を異にする要因になっていることなど理解させるには,原子模型と併用して効果をあ げることができた。
顕微鏡組織は決して高度の教材ではなく,理科における植物教材など,生徒達は小学校時代から,
高い興味を示していることから考えても,これを使用することにより,学習の効果をいっそう上げ ることが期待できると思われる。
註)最近完成した炉は,… V,43・Wの容量をもち,これ1・よると・コー儒ドを直接1°°V コソセソトに差し込むだけで,900℃上昇をわずか60分で得ることができる。スライダック を用いれば,更に時間を短縮することができる。
一41一